タイトル: | 特許公報(B2)_アルケン類の選択的水素添加方法並びにこれに用いる触媒及び触媒構造体 |
出願番号: | 2000340644 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 41/20,B01J 23/44,B01J 23/89,B01J 35/04,B01J 37/16,C07C 43/205,C23C 18/31,C25D 7/00,C07B 61/00 |
小泉 恵 錦 善則 古田 常人 牧 昌次郎 丹羽 治樹 JP 4612942 特許公報(B2) 20101022 2000340644 20001108 アルケン類の選択的水素添加方法並びにこれに用いる触媒及び触媒構造体 ペルメレック電極株式会社 390014579 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 小泉 恵 錦 善則 古田 常人 牧 昌次郎 丹羽 治樹 20110112 C07C 41/20 20060101AFI20101216BHJP B01J 23/44 20060101ALI20101216BHJP B01J 23/89 20060101ALI20101216BHJP B01J 35/04 20060101ALI20101216BHJP B01J 37/16 20060101ALI20101216BHJP C07C 43/205 20060101ALI20101216BHJP C23C 18/31 20060101ALI20101216BHJP C25D 7/00 20060101ALI20101216BHJP C07B 61/00 20060101ALN20101216BHJP JPC07C41/20B01J23/44 ZB01J23/89 ZB01J35/04 301AB01J37/16C07C43/205 BC23C18/31 AC25D7/00 YC07B61/00 300 C07C 41/20 B01J 23/44 B01J 23/89 B01J 35/04 B01J 37/16-37/18 C07C 43/205 C23C 18/31 C25D 7/00 C07B 61/00 特開2000−328278(JP,A) 特開2001−316315(JP,A) 特開平11−061423(JP,A) Shojiro Maki et al.,SELECTIVE ALKENE HYDROGENATION WITH ATOMIC HYDROGEN PERMEATING THROUGH A Pd SHEET ELECTRODE,SYNTHETIC COMMUNICATIONS,2000年 9月19日,Vol.30, No19,p.3575-3583 3 2002145818 20020522 8 20070725 江間 正起 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アルケン類の選択的水素添加方法に関し、特に、ベンジルオキシアルケンに対して水素添加を行う際に、ベンジル基の加水素分解を伴うことなく、アルケン類の不飽和結合のみに選択的に水素を添加し、水素化反応の完結後、そのまま分離精製等の処理をすることなしに、続く所望の反応を行うことを可能にする選択的水素添加方法、並びにこれに用いる触媒及び触媒構造体に関する。【0002】【従来の技術】水性ガスと触媒(Pt、Pd、Rh、Ni等)を用いて、活性化されていない多重結合に水素を付与させる接触水素化反応方法では、以下に記載するような機構によって反応が進行する。まず、活性な触媒金属表面に、水素とアルケンが吸着されてヒドリド並びにアルケン−金属錯体を形成し、触媒から水素原子の移動による半水素化中間体を経た後、水素原子が移動して還元体を生成する。反応選択性は、触媒の種類及び反応条件によって変動する。【0003】最も活性が高い触媒は、Pt(PtO2 )で、ベンゼン環の二重結合さえも水素化できる。Pd−C、 Raney Niなどの触媒を用いると活性化されていない多重結合のみを還元することができる。Lindlarの触媒を用いると、アルキンを選択的にシス−アルケンに還元することができる。また、Birch還元(後出)を用いると、トランス−アルケンが選択的に得られる。ベンジル基は、酸にもアルカリにも安定な中性条件で除去できる大変便利な保護基であるが、式(1)に示すように、ベンジルオキシアルケンを白金などの触媒を用いて水素添加反応を行った場合、アルケンの水素反応と同時にベンジル基の脱離反応も起こる。【0004】【化1】【0005】【発明が解決しようとする課題】このため、ベンジルオキシアルケンの不飽和部のみを選択的に還元する場合、一般的にはロジウム錯体を用いたり、水素量やPd触媒活性をコントロールする等の方法を用いるが、目的とする収率が得られなかったり、異性化や副反応が伴うことが多いため、通常、反応生成物の精製が必須となる。また、反応完結後に次工程へ移行する際、触媒の分離が必要であり、このため時間的な損失が大きいという、解決されなければならない問題もあった。本発明は、斯様な問題に対処して、ベンジル基の脱離を伴わずに、非プロトン性の溶媒に溶解させたベンジルオキシアルケンを白金族金属触媒と接触させることにより、ベンジル基を保護したままの状態で、アルケンの不飽和基のみを高収率で、かつ、選択的に水素添加し、そのうえ、三次元構造体に析出した触媒を用いることにより、反応完結後の触媒の分離精製工程を設けることなしに、続く所望の反応を行うことのできる水素添加方法および触媒とその構造体を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明の大きな特徴は、三次元構造体に析出させた金、白金族金属、好ましくは白金族黒を触媒として水素ガスを注入するか、または、水素吸蔵合金から脱着する活性な水素の存在下において、ベンジルオキシアルケン類の選択的水素添加反応後、そのまま分離精製の処理を行うことなしに、続く所望の反応を行うことが可能な点にある。【0007】 すなわち、本発明は、下記の手段により前記の課題を解決した。(1)パラジウム黒を触媒として水素ガスを注入するか、或はまた、あらかじめ水素を吸蔵した水素吸蔵金属から脱着する活性な水素により、ベンジルオキシアルケンのベンジル基の加水素分解を伴うことなく、不飽和結合のみを選択的に水素添加する際に、該化合物を溶解させる溶媒として、アセトンを用いることを特徴とするアルケン類の選択的水素添加方法。【0008】 (2)前記(1)に記載のアルケン類の選択的水素添加方法を行う際に用いるための、化学的還元、電気化学的還元及び水素吸蔵金属から脱着する活性な水素原子による還元の群から選択されたいずれか1種の還元手段により析出させたことを特徴とするパラジウム黒触媒。 (3)前記(2)に記載のパラジウム黒触媒を、パラジウム、パラジウム合金、ニッケル、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、カーボン及び希土類を含む水素吸蔵合金層を持つ支持体の中から選択される三次元構造体に析出させたことを特徴とする前記(1)記載のアルケン類の選択的水素添加方法に用いる触媒構造体。【0009】 本発明は、前記化合物のベンジル基を脱離することなしに、アルケンの不飽和基のみを選択的に、かつ、副反応を伴うことなしに還元を行うことを特徴とするアルケン類の選択的水素添加方法において、被水素化物を溶解させる溶媒としては、選択された非プロトン性の溶媒を用いるものであり、具体的にはアセトンを用いることを特徴とする方法である。【0010】有機化学合成系において、溶媒は、反応速度、選択性を左右する因子として一般的に認識されている。基質および攻撃試薬に相当する水素吸蔵金属上の水素原子に対して、炭素二重結合部位やアリル位、エーテル結合の酸素原子等が、活性化された水素原子の付加反応、あるいは、加水素分解反応を進行するとき、溶媒は、該基質の反応部位の電子密度を減少させるような分極性、誘電性、双極性および立体構造を有していることが好ましく、それらの結合軌道の生成を促進する溶媒が好ましい。また、結合が遷移状態の活性錯合体が安定に溶媒化されていること、脱離した生成物が溶媒和されて安定化することが重要である。【0011】 例えば、ベンジルオキシ基とアルケンがエーテル結合した化合物(ここでは化合物Aという)であるときには、アセトンを用いることが好ましい。 前記触媒(三次元構造体に析出させたパラジウム黒)は、少なくとも置換反応や還元剤による化学的還元、電気化学的還元、水素吸蔵金属から脱着する活性な水素原子による還元(特開平11−61423)のいずれか1つの方法により析出させたパラジウム黒、ならびに少なくとも置換反応や還元剤による化学的還元、電気化学的還元、水素吸蔵金属から脱着する活性な水素原子による還元(特開平11−61423)のいずれか1つの方法により析出させたパラジウム黒を用いることを特徴とする。【0012】 なお、具体的には、パラジウム黒を挙げることができる。 ベンジルオキシアルケンの選択的水素化にあたっては、被水素化物との接触の度合いを高めるために、大きな表面積を容易に形成できる触媒であることが望ましい。 このような観点から、光沢の出ないパラジウム黒が最も好ましい。パラジウム黒は大きな表面積を有し、不飽和基の飽和反応触媒としても極めて優れた選択性を有する触媒層を形成するからである。パラジウムには、このような性質の他、水素の吸蔵、脱着機能をも有しているので好ましい。【0013】また、触媒を析出させる溶液としては、特に制限はなく、単に塩酸や硫酸等の酸に、目的とする金属を含む塩を溶解したものでもよい。例えば、置換反応による化学的還元や電気化学的還元、あるいは、水素吸蔵金属から脱着する活性な水素による還元により、パラジウム黒を析出させる場合には、塩濃度としては1〜100g/リットルが好ましく、また、酸濃度としては同様に1〜100g/リットルが好ましい。例えば、塩化パラジウムが5g/リットル、塩酸36.5g/リットルのような組成の溶液で、パラジウムの析出を行った場合、光沢のないパラジウム黒が生じ、きわめて反応選択性の良い触媒が形成する。また、還元剤による化学的還元の場合は、例えば、アンミン錯イオンを含む溶液で支持体にパラジウムを吸着させた後、蟻酸、ホルムアルデヒド、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いることで、反応選択性に優れた触媒層を形成することができる。【0014】また、上記の触媒を三次元構造を有する支持体に析出させる手段を取ると、それにより、触媒の固定化が可能となり、水素化反応の完結後、そのまま触媒の分離処理なしに続く所望の反応を行うことを可能にするので好ましい。前記の三次元構造を有する支持体としては、従来から知られている各種の素材、形状を使用することができ、例えば、パラジウム、パラジウム合金をはじめ、ニッケルやチタン、ジルコニウム、アルミニウムおよびその合金、その他、所謂、Mm(ミッシュメタル)に代表される希土類を含む水素吸蔵合金やカーボンであり、形状としては発泡体や多管体、ペレット、粉末や繊維などの燒結体等が挙げられる。【0015】 支持体の電気伝導度は必ずしも必要ではなく、無電解メッキ等で樹脂繊維の表面に水素吸蔵金属層と活性な触媒を形成させてもよい。 被水素化物に水素ガスを注入するか、或は高圧下や電気分解などの方法にてあらかじめ水素を吸蔵した水素吸蔵金属から脱着する活性な水素が存在する雰囲気で、パラジウム黒を析出させた三次元構造体に接触させると、以下の式(2)に示したように、該化合物のベンジル基を保護したまま、不飽和基のみが選択的に水素添加される。【0016】【化2】【0017】【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により制限されるものではない。【0018】実施例1パラジウム板1で2分したH型セル2の一方の室に塩化パラジウム水溶液3、他方の室に水の電気分解を行うための電解液(6M−KOH水溶液)4を入れ、陽極にはニッケル板5を使用し、前記セルを隔てたパラジウム板1を陰極として水の電気分解を行った。パラジウム板1で生成し、背面へ透過してきた水素原子により、パラジウム黒6を還元析出させた後、このパラジウム黒6を付着したパラジウム板1を管状に成形した。【0019】参考例1 実施例1の方法で作製した、パラジウム黒を付着したパラジウム板からなる三次元触媒構造体を反応容器に充填し、水素ガスを注入しながら、反応基質として、ベンゼン溶媒中にベンジルオキシ基とアルケンがエーテル結合した化合物である化合物Aを溶解させて入れ、室温で下記条件で水素添加反応を行った。 反応基質:7.0mM・化合物A 反応時間:4時間 反応終了後、溶液の分析を行ったところ、未反応の化合物Aと、不飽和基のみが水素化を受けた化合物Bのみが検出され、化合物Bの収率は80%であった。【0020】【化3】【0021】実施例2 溶媒にアセトンを用いたこと以外は参考例1と同様の反応を行ったところ、未反応の化合物Aと不飽和基のみが水素化を受けた化合物Bのみが検出され、60%の収率で化合物Bが得られた。参考例2 実施例1の方法で作製したパラジウム黒を付着したパラジウム板からなる三次元触媒構造体を陰極として、電気分解によりあらかじめ水素を吸蔵した。水素を吸蔵した触媒構造体を反応容器に入れ、反応基質としてベンゼン溶媒中にベンジルオキシ基とアルケンがエーテル結合した化合物である化合物Aを溶解させて加え、参考例1と同じ基質濃度で、パラジウム内に吸蔵した活性な水素を用いて室温にて水素添加反応を行った。三次元触媒構造体中の水素が無くなった場合は、別容器で電気分解により触媒構造体に再び水素を吸蔵し、化合物Aがなくなるまでこの操作を繰り返した。 反応終了後、溶液の分析を行ったところ、不飽和基のみが水素化を受けた化合物Bのみが検出され、化合物Bの収率は100%であった。【0022】比較例1 溶媒にメタノールを使用した以外は、参考例1と同様の条件で化合物Aの水素添加を行った。 反応終了後に得られた溶液の分析を行ったところ、未反応の化合物Aと、ベンジル基の加水素分解と不飽和基の水素化を受けた化合物Cの2種が検出された。得られた化合物Cの収率は、100%であった。【0023】実施例3 円筒状に成形した発泡ニッケル体を塩化パラジウム水溶液中に浸漬し、該発泡ニッケル上に化学的還元により、パラジウム薄膜を形成し、さらに塩化パラジウム水溶液で電気化学的還元により、パラジウム黒を析出した三次元触媒構造体を作製した。参考例3 実施例3の方法で作製した三次元触媒構造体を反応容器に入れた他は、参考例1と同様の条件にて化合物Aの水素化を行った。反応終了後に溶液の分析を行ったところ、未反応の化合物Aと、不飽和基のみが水素化を受けた化合物Bのみが検出された。化合物Bの収率は100%であった。【0024】実施例4 カーボン多孔体を支持体として、その上に化学的還元によりパラジウムを析出させてパラジウム薄膜を形成させ、さらに、実施例1と同様のセルで、パラジウム板に前記パラジウム薄膜付きカーボン多孔体を接合し、電解により背面に透過してきた水素原子による還元で、パラジウム黒を析出させたものを三次元触媒構造体とした。実施例5 実施例4の方法で析出させた三次元触媒構造体を反応容器に充填し、実施例2と同様の条件にて化合物Aの水素化を行った。 反応終了後に溶液の分析を行ったところ、未反応の化合物Aと、不飽和基のみが水素化を受けた化合物Bのみが検出された。95%の収率で化合物Bが得られた。【0025】比較例2 実施例4の方法で作製した三次元触媒構造体を反応容器に入れ、溶媒にメタノールを使用した以外は、実施例2と同様の反応基質濃度、反応時間、水素添加方法にて、化合物Aとベンジル基の加水素分解と不飽和基の水素化を受けた化合物Cの2種が検出された。得られた化合物Cの収率は25%であった。比較例3 Pd−C触媒を析出した三次元触媒構造体を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて化合物Aの水素化を行った。反応終了後に溶液の分析を行ったところ、未反応の化合物Aと不飽和基のみが水素化を受けた化合物Bとベンジル基の加水素分解と不飽和基の水素化を受けた化合物Cの3種が検出された。得られた化合物Bの収率は15%、化合物Cの収率は35%であった。【0026】【発明の効果】陽極及び水素吸蔵材料からなる陰極を有する電解槽の前記陽極との反対面に、ベンジルオキシアルケンを接触させ、電解によって前記陰極で発生し吸蔵、透過した水素原子により、該化合物に対し、ベンジル基を脱離させずにアルケンの不飽和基のみを選択的に、かつ連続的に水素添加を行うことを特徴とするアルケン類の選択的水素添加方法であり、ベンジルオキシアルケン化合物の種類によって溶媒を選択することにより、反応速度を増大できることを示したものである。本発明は、ベンジルオキシアルケンに対して水素添加を行う際に、ベンジル基を保護したまま、アルケンの不飽和基のみに選択的に水素を添加し、水素化反応完結後、そのまま分離精製操作をすることなしに、続く所望の反応を行うことを可能にした。【図面の簡単な説明】【図1】本発明に使用するパラジウム板にパラジウム黒を形成させるのに用いる電解槽の概略図を示す。【符号の説明】1 パラジウム板2 H型セル3 塩化パラジウム水溶液4 電解液5 陽極6 パラジウム黒 パラジウム黒を触媒として水素ガスを注入するか、或はまた、あらかじめ水素を吸蔵した水素吸蔵金属から脱着する活性な水素により、ベンジルオキシアルケンのベンジル基の加水素分解を伴うことなく、不飽和結合のみを選択的に水素添加する際に、該化合物を溶解させる溶媒として、アセトンを用いることを特徴とするアルケン類の選択的水素添加方法。 請求項1に記載のアルケン類の選択的水素添加方法を行う際に用いるための、化学的還元、電気化学的還元及び水素吸蔵金属から脱着する活性な水素原子による還元の群から選択されたいずれか1種の還元手段により析出させたことを特徴とするパラジウム黒触媒。 請求項2に記載のパラジウム黒触媒を、パラジウム、パラジウム合金、ニッケル、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、カーボン及び希土類を含む水素吸蔵合金層を持つ支持体の中から選択される三次元構造体に析出させたことを特徴とする請求項1記載のアルケン類の選択的水素添加方法に用いる触媒構造体。