タイトル: | 特許公報(B2)_ガラナエキスを有効成分とする肝機能改善予防剤及び腫瘍免疫賦活剤並びにこれらの製造方法 |
出願番号: | 2000289739 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 36/18,A23L 1/30,A23L 2/52,A23L 2/38,A61P 1/16,A61P 35/00,A61P 37/04 |
渡辺 隆司 渡辺 康之 川原 重治 JP 4054170 特許公報(B2) 20071214 2000289739 20000925 ガラナエキスを有効成分とする肝機能改善予防剤及び腫瘍免疫賦活剤並びにこれらの製造方法 三重化糧株式会社 397046445 西尾 章 100109597 渡辺 隆司 渡辺 康之 川原 重治 20080227 A61K 36/18 20060101AFI20080207BHJP A23L 1/30 20060101ALI20080207BHJP A23L 2/52 20060101ALI20080207BHJP A23L 2/38 20060101ALI20080207BHJP A61P 1/16 20060101ALI20080207BHJP A61P 35/00 20060101ALI20080207BHJP A61P 37/04 20060101ALI20080207BHJP JPA61K35/78 CA23L1/30 BA23L2/00 FA23L2/38 CA61P1/16A61P35/00A61P37/04 A61K 36/18 A23L 1/30 A23L 2/38 A23L 2/52 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CAplus(STN) JMEDPlus(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開平10−245342(JP,A) 特開平09−132533(JP,A) 特開平06−298660(JP,A) 特開平07−255474(JP,A) 中村和光 他,ブラジル産Guarana水抽出物の滋養強壮作用 ,和漢医薬学雑誌,1998年,Vol.15 No.5,pp.356-357 10 2002104981 20020410 16 20070829 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、ガラナ果実の粉砕物に糖質分解酵素を作用させて得られるガラナエキスを有効成分とする肝機能障害改善予防剤及び腫瘍免疫賦活剤並びにこれらの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】 蔓状の低灌木の一種であるブラジル産ガラナ(Paullinia cupana)の果実は、カフェインと類似の分子構造を有するグアラニンを含有しており、古来からアマゾン川流域に先住しているグアラン族が興奮性飲料として愛用していたのが始まりといわれている。このようなガラナ果実は、カテキンやタンニン(ポリフェノール)などを含有しているため、飲用による好ましい薬理活性が期待され、これまでに種々のガラナエキスが添加された飲料が提供されている。【0003】 ところで、従来よりガラナ果実からガラナエキスを抽出する方法にアルコール抽出法と高温水抽出法とがある。アルコール抽出法はエチルアルコールを主にした有機溶媒によりガラナ果実を抽出する方法で、ガラナ果実に含有される親油性(疎水性)組成成分を複雑な操作によることなく容易に抽出でき、また抽出・分画が効率的に行えるという長所がある反面、(1)親水性組成成分残渣が多いため収率が悪く(30〜50%)、(2)ガラナ果実に含有されるデンプン質がアルコールにより変性されやすい、(3)ガラナ果実に含有される親水性組成成分が十分に抽出されない、という短所があった。一方、高温水抽出法は塩類を含む高温水によりガラナ果実を抽出する方法で、ガラナ果実の組成成分にとって極めて温和な抽出法であり、また高度の技術が不要で抽出操作が簡便であるという長所がある反面、(1)親油性組成成分残渣が多いため収率が悪く(25〜35%)、(2)ガラナ果実に含有される親油性組成成分の抽出が困難で、抽出されるのは主として親水性組成成分であるカフェイン(グアラニン)、カテキン、タンニンなどであり、一般的に好ましい薬理活性を有するとされるフラボン系やテルペン系などの複雑な環状構造の組成成分の回収は不十分である、という短所があった。【0004】 また、従来より飲料として提供されているガラナエキスの薬理活性については、ガラナ果実に含有されるカテキンやタンニンなどについての研究報告がなされているにすぎず、これまでにガラナエキス固有の薬理活性についての研究報告は皆無である。【0005】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記従来のガラナエキスの抽出法の問題点を解決し、ガラナ果実に含有される親油性組成成分と親水性組成成分のいずれをも高収率で回収し、簡便な操作で行えるガラナエキスを有効成分とする肝機能障害改善予防剤及び腫瘍免疫賦活並びにこれらの製造方法を提供することを課題とする。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、肝機能障害・機能低下マウスをモデルにGOTとGPTの酵素活性値を指標としてガラナエキスの新規な薬理活性を検討すると共に、マウス・サルコーマ180癌細胞を移植したマウスをモデルにガラナエキスの新規な薬理活性を検討し、本発明に想到した。すなわち、本発明は、ガラナ果実の粉砕物に糖質分解酵素を作用させて得られるガラナエキスを有効成分とすることを特徴とする肝機能障害改善予防剤及び腫瘍免疫賦活剤に関する。これらの発明において、糖質分解酵素は液化酵素、セルラーゼ及び糖化酵素としてもよい。【0007】 上記の発明では、ガラナ果実に含まれる親油性組成成分、親水性組成成分、糖質分解酵素の作用を受けない残存高分子多糖体、アミロペクチンや繊維質などにより肝機能改善予防作用や腫瘍免疫賦活作用を発揮するものと推測される。【0008】 また、本発明者らは糖質分解酵素の性質に着目して、ガラナ果実に含まれる繊維質やデンプン質などを効率よく分解すると共に、残渣物を減らし高収率でガラナエキスを得ることができることに想到し本明を完成した。すなわち、本発明は、ガラナ果実の粉砕物に液化酵素、セルラーゼ及び糖化酵素を作用させ、以下の工程によりガラナエキスを得ることを特徴とする上記の肝機能障害改善予防剤又は腫瘍免疫賦活剤の製造方法に関する。 (1)ガラナ果実を粉砕して粉末化する工程 (2)高温水にガラナ果実の粉末を加え、さらに液化酵素を添加してデンプン質を液化する工程 (3)前記で得た酵素液化溶液にセルラーゼと糖化酵素を添加して糖化処理する工程 (4)前記で得た糖化処理液を濾過する工程 (5)前記で得た濾液を濃縮する工程 これらの製造方法の発明において、液化酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ及びイソアミラーゼから選ばれる1種又は2種以上であり、糖化酵素はα−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼから選ばれる1種又は2種以上としてもよい。また、これらの製造方法で得られたガラナエキスに所定量のブドウ糖を添加してガラナエキス結晶粉末とする上記の肝機能障害改善予防剤又は腫瘍免疫賦活剤の製造方法に関する。【0009】 上記の製造方法では、主として細胞壁の構造を維持するセルロースがセルラーゼにより分解され、またガラナ果実に含まれる多糖体は糖化分解されるので、リグニン、フラボン系組成成分その他の組成成分が遊離し易くなる。【0010】【発明の実施の形態】 ガラナ果実は主として種子を用いるが、果肉などを用いることもできる。予め十分に乾燥したガラナ果実をミルなどの粉砕機により粉砕し粉末化する。ガラナ果実の粉末はその重量のおよそ8〜12倍量の高温水に加える。高温水の水温は通常80〜90℃であるが、使用する糖質分解酵素に応じて適宜変更してもよい。また、ガラナ果実の粉末が加えられた高温水のpHは通常6〜7に調整するが、使用する糖質分解酵素に応じて適宜変更してもよい。【0011】 次いで、上記の調整液に液化酵素を加えてガラナ果実に含まれるデンプン質を液化する。液化酵素はアミラーゼを用い、動物由来、植物由来、微生物由来を問わず用いることができる。アミラーゼには、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ及びイソアミラーゼがあり、これらのアミラーゼを単独であるいは併用して用いることができ、特に加水分解効率の高いエンド型のα−アミラーゼが好ましく、また高温水に添加されるので耐熱性のα−アミラーゼがさらに好ましく、このようなアミラーゼは市販品を容易に入手することができる。さらに、デンプン質の液化は調整液にアミラーゼを添加後、使用する糖質分解酵素に応じ適宜変更してもよいが、通常80〜90℃で50〜70分間十分に撹拌して行う。なお、液化酵素はガラナ果実の粉末1000kgに対し約600g前後の割合で添加するのが好ましい。【0012】 上記の処理により得た酵素液化溶液は、使用する糖質分解酵素に応じて適宜変更してもよいが、通常pHを4〜6に調整した後、セルラーゼと糖化酵素を添加し、通常40〜50℃で45〜52時間酵素処理する。添加されるセルラーゼは市販品を容易に入手でき、動物由来、植物由来及び微生物由来を問わず用いることができる。また、糖化酵素も動物由来、植物由来及び微生物由来を問わず種々の酵素を用いることができ、特にα−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、これらの糖化酵素も市販品を用いることができる。また、ガラナエキスの甘味性を高めるためグルコースイソメラーゼなどの異性化酵素を添加してもよい。なお、セルナーゼと糖化酵素は出発原料たるガラナ果実の粉末1000kgに対して各々約600g前後の割合で添加するのが好ましい。【0013】 上記の処理で得た糖化処理液は、公知の操作により濾過を行い残渣と濾別する。この濾過操作は、所望により複数回繰り返される。さらに、得られた濾液は公知の操作により濃縮され、ガラナエキスを製造することができる。ガラナエキスは、白糖を加えてガラナエキスシロップに加工したり、あるいは凍結乾燥品とすることができる。また、ガラナエキスにブドウ糖を添加してガラナエキス結晶粉末に製することができ、製剤化にあたり打錠が容易となる。なお、ブドウ糖の添加量(容量)は、ガラナエキス2〜3に対して8〜7の割合が好ましい。【0014】 以上のようにして製造されたガラナエキスは、肝機能改善予防剤あるいは腫瘍免疫賦活剤として投与することができる。投与形態は、経口投与が一般的であるがこれに限定されない。また、剤型も用途に応じて適宜選択でき、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、軟膏基剤などを用いて散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、座剤、軟膏剤などの剤型とできる。さらに、本発明の肝機能改善予防剤及び腫瘍免疫賦活剤はそれらの薬効を失わない限り他の薬効を有する製剤(動植物由来を含む)を配合して医療用製剤として供することができ、例えば抗菌剤、制癌剤あるいはサイトカイン類を配合することができる。【0015】 上記製造方法で得られた肝機能改善予防剤あるいは腫瘍免疫賦活剤は、連用効果と効果の持続性に優れるので、その投与量は健常者であれば肝機能低下予防・機能促進のために1日1〜10mg/kgが好ましい。肝機能が低下している患者や悪性腫瘍の罹患者は適宜増量でき、前記の5倍量を投与するのが好ましい。【0016】【実施例】 次に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において特に断らない限り%は重量%を意味する。【0017】 実施例1(ガラナ果実からのガラナエキスの製造) ガラナ果実(種子)を粉砕機で粉砕し粉末化した粉末150g(水分量:7.5±0.5%)を90℃に加温した滅菌蒸留水1500mlに加えた後(pH5.5)、炭酸カルシウムにてpHを6.5に調整し、得られた約1500mlの調整液にBacillus subtillis由来のα−アミラーゼ(アミラーゼAD「アマノ」、天野製薬社製)90mgを添加し、90℃で60分間撹拌しながらガラナ果実粉末に含まれるデンプン質を液化した。得られた約1500mlの酵素液化溶液にシュウ酸を加えてpHを4.5に調整した後、Aspergillus niger由来のα−グルコシダーゼ(α−グルコシダーゼ「アマノ」、天野製薬社製)とAspergillus niger由来のセルラーゼ(セルラーゼA「アマノ」、天野製薬社製)を各々90mgずつ添加し、45℃で48時間酵素処理した(液化工程)。この酵素処理によって、植物繊維質(セルローズ)はブドウ糖にまで分解される(糖化工程)。さらに、糖化された約1500mlの糖化処理液を表面に濾過剤(パーライト)が張り付けられたヒダ付き濾紙により吸引濾過を2回繰り返した。このようにして得られた濾液を回転式真空濃縮装置を用いて濃縮し、固形分62.7%、水分37.3%からなる約350mlのガラナエキスを得た。【0018】 上記製造方法により得られたガラナエキスの収率は約70%で、同時に行ったアルコール抽出法の収率約45%と高温水抽出法の収率約30%に比べ極めて高い収率であった。 また、ガラナエキスの100ml当たりのカフェイン含有量は4.65g、タンニン含有量は12.6gで、高温水抽出法で得た含有量とほぼ近似し、本発明のガラナエキスの製造方法によりガラナ果実に含まれる親水性組成成分を十分に回収できることが分かった。さらに、ガラナエキスの固形分100gについて、各組成成分の含有比率を分析したところ、表1に示したようにセルラーゼとα−グルコシダーゼの分解による繊維由来ブドウ糖が最も大きな割合であった。なお、カフェインはHPLC法、タンニンはフォーリン・デニス法、糖質はフェノール・硫酸法により分析した。【0019】【表1】【0020】 参考例1(肝機能障害・機能低下マウスの作製) 肝臓の機能障害・機能低下が惹起される肝機能障害・機能低下マウスは、Contiらの方法(Jpn.J.Pharmacol.,60:315,1992)に準じて行った。すなわち、後記実施例2の各実験群毎に3匹宛の5週齢の正常ddY系雌マウス(平均体重:25g)を準備し、生理食塩水で60mg/mlの濃度になるように溶解させたD−ガラクトサミン塩酸塩(以下、Gal−Nという)試薬液0.2mlをマウスの腹腔内に投与(480mg/kg)することにより肝機能障害・機能低下マウス(以下、Gal−N処理マウスという)を作製した。【0021】 参考例2(GOT及びGPT活性値の測定法) GOT(AST)及びGPT(ALT)の活性値の測定は、GOTあるいはGPT測定用キット試薬(アズウエル社製)をセットしたマルチ自動分析機(東芝マルチ60M型)によるUV−Rate法(主波長:340nm/副波長:375nm)により行った。すなわち、血清10μlに酵素液(R1)300μlを添加後、37℃で3分間インキュベートし、その後、基質液(R2)75μlを加え、1〜5分間に340nm付近での1分間当たりの吸光度の変化(NADH→NAD+への減少速度)を測定し、NADH分子吸光係数からGOTあるいはGPTの活性値(単位:IU/l)を算出した。なお、以下の各実施例における有意差検定(危険率5%以下、p∠0.05、有意差有り)はStudent t−test法により算出した。【0022】 実施例2(ガラナエキスのGOT及びGPT活性値に与える効果の検討)(ガラナエキスの濃度効果)上記参考例1で作製されたGal−N処理マウスにガラナエキスを投与し、Gal−N処理マウスのGOT活性値及びGPT活性値に与えるガラナエキスの濃度効果を検討した。すなわち、Gal−N処理後、4時間目に投与量が100mg/kg、200mg/kg、400mg/kg、800mg/kgとなるように実施例1で得られたガラナエキスの濃度を各々調整し、Gal−N処理マウスに各々0.5ml経口投与した後、48時間目にエーテル麻酔下マウスの眼球を摘出し、流血液をエチレンジアミン四酢酸ナトリウム添加小試験管に採取した。この血液を遠心分離(4℃、5000rpm、10分間)後、血清を採取(200〜300μl)し、GOT及びGPTの活性値を参考例2の方法で測定した。【0023】 上記のようにしてGOT及びGPTの活性値を測定したところ、表2に示したように、非投与対照群(正常マウス)のGOT活性値は平均92IU/lであったが、Gal−N単独投与群では、GOT活性値は著しく上昇(平均3135IU/l)した。このGal−N処理マウスに、ガラナエキス(100〜800mg/kg)を経口投与した後、48時間目にGOT活性値を測定したところ、投与濃度に依存して酵素活性値は低下し、ガラナエキスの200mg/kg投与で有意差が認められ(危険率5%以下)、400mg/kg以上の投与では顕著な有意差(危険率1%以下)が認められた。また、GPT活性値においても、表3に示したようにGOTと同様にガラナエキスの投与濃度に依存して酵素活性値の低下が認められた。このように、ガラナエキスの投与濃度を高めることにより、GOTとGPTの活性値が正常の酵素活性閾値に近づく傾向を示したことから、ガラナエキスには機能障害・機能低下を招いた肝機能を緩解・回復させる組成成分が含まれていることが示唆された。なお、興味あることに、Gal−N処理によって、GOT活性値は正常値の約34倍まで上昇したのに対して、GPT活性値は14IU/lから2182IU/lまで上昇し、約156倍にまで上昇したことから、D−ガラクトサミン塩酸塩は肝由来GOT活性値に対するよりもGPT活性値に対してより強く作用することが示唆された。【0024】【表2】【0025】【表3】【0026】 (ガラナエキスの投与回数効果) Gal−N処理後、2時間毎にガラナエキス(200mg/kg)を経口投与(計3回)した後、48時間目に上記のガラナエキスの濃度効果の実験群と同様の方法で血清を採取し、GOT及びGPTの活性値を測定した。その結果、表4と表5に示したようにGal−N処理によって著しく上昇したGOTとGPTの活性値は投与回数の増加に伴い低下し、2回投与によって危険率5%以下の有意差が認められ、3回投与によっては危険率1%以下の有意差が認められ、投与回数を重ねることによりガラナエキスの肝機能改善予防効果が増強されることが示唆された。【0027】【表4】【0028】【表5】【0029】 (ガラナエキスの持続効果) GAL−N処理後、4時間目にガラナエキス(400mg/kg)を経口投与した後、24、48及び72時間目に上記のガラナエキスの濃度効果の実験群と同様の方法で血清を採取し、GOTとGPTの活性値を測定した。その結果 、表6と表7に示したように、Gal−N+ガラナエキス投与群での両酵素活性値は共にGal−N単独投与群における活性値よりも著しく低値であり(24〜48時間後の危険率5%以下、72時間後の危険率1%以下)、しかも時間と共に徐々に減少したことから、1回の投与によって機能障害・機能低下した肝機能に対するガラナエキスの緩解・回復効果が体内でかなりの間持続することが明らかになった。【0030】【表6】【0031】【表7】【0032】 GPTはGOTに比べ、正常肝細胞に限局しており、しかも肝細胞の細胞質由来のGPT活性値はGOT活性値よりも高いことが知られており、ヒトが急性肝炎に罹患した場合にはGPT活性値の方がGOT活性値よりも急激に上昇することから、マウスをGal−N処理することによりヒトにみられる急性肝炎と類似の肝機能障害が誘発されたものと考えられ、上記の各実験結果からガラナエキスはヒトの急性肝炎に対し極めて有効であろうことが示唆された。【0033】 参考例3(肝ホモジネートの作製) 参考例1に記載の方法でマウスをGal−N処理(480mg/kg)し、その60分後にガラナエキス(400mg/kg)を経口投与した。投与後、6、24及び72時間目にエーテル麻酔下のマウスを屠殺し、肝臓を摘出・細断した。次いで、肝の細断片を150mM塩化ナトリウム、1.0mMEDTA添加10mMトリス塩酸緩衝液に入れ、ガラスホモジナイザーにて肝ホモジネートを作製した。肝ホモジネート中の蛋白質濃度は、ローリー法にて定量し、肝ホモジネート1ml当たり100mg蛋白量に調整した。【0034】 実施例3(ガラナエキスの肝脂肪過酸化抑制作用(抗酸化作用)) 肝脂肪の過酸化実験法は、Camposらの方法(Planta Medica,55:417,1989)に準じて行った。すなわち、参考例3に記載の方法でガラナエキスの経口投与後(400mg/kg)、6、24及び72時間目の肝ホモジネート(肝ホモジネート1に対しトリス緩衝液4を加え、終濃度を20mg蛋白質/mlに調整)にマロンアルデヒド(以下、MDAという)・チオバルビタール酸複合体を添加し、産生されるMDA濃度をイムノアッセイ自動分析機(Behring ELISA P−2型)にて535nmで測定し、E=1.56×1051000ml/mole/cmの条件係数を用いて計測した(単位:nmole/mg蛋白質)。なお、本法での標識物は、NAD+−ATP補酵素を用い、NADPH−Fe+−ADP産生現象を利用した測定方法である。結果は表8に示したように、非投与対照群の正常マウス肝内におけるMDA産生量は実験期間(72時間)を通じてほぼ一定(50〜68nmole/mg蛋白質:平均56.8nmole/mg)であったが、Gal−N処理によって4倍量以上のMDAの増加がみられ、肝脂肪の酸化が著しく亢進されていることが認められた。これに対して、ガラナエキスを経口投与することによって、MDAの産生は時間の経過と共に軽減され、投与24時間後では危険率1%以下、72時間後では0.1%以下の著しい有意差が認められた。このことより、肝機能の低下によって生じ易くなる脂肪(特に、中性脂肪、脂肪酸)の酸化や過酸化に対して、ガラナエキスは抑制的に作用することが明らかになった。一方、ヒトの肝機能障害・肝機能低下時における肝内での過酸化脂肪の生成・蓄積は、肝癌発症の重要な要因となることからも、ガラナエキスには発癌予防効果をも有するであろうことが十分考えられる。また、脂肪酸の酸化などを防ぐことにより加齢変化に伴う生活習慣病の発症を予防する効果が期待される。【0035】【表8】【0036】 実施例4(ガラナエキスの肝内の活性酸素抑制作用(フリーラジカル・スカベンジャー) 肝障害や肝炎等の発症に伴い増加する肝マクロファージであるクッパー細胞に起因する活性酸素(フリーラジカル酸素)は、Videlaらの方法(Biochem.Pharmacol.,34:2209,1985)に準じて測定を行った。すなわち、参考例3に記載した方法でガラナエキスを経口投与後(400mg/kg)、6時間目の肝ホモジネート(肝ホモジネート1に対してトリス緩衝液200を加え、終濃度0.5mg蛋白質/mlに調整)をバイアル瓶(13×30mm)に採取し、肝ホモジネート中に発生するケミルミニセンス(化学的発光量)の1分間当たりの発光数値(単位:cpm/mg蛋白質)を液体シンチレーション測定装置(Beckmann LS−3150P型)にて測定した。 なお、本法での化学発光標識物には、イソルミノール誘導体のひとつであるN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールを用いた。結果は表9に示したように、Gal−N処理によって、正常マウス肝内に産生された活性酸素(フリーラジカル酸素)は平均1178cpm/mg蛋白質から2.3倍(平均2675cpm/mg蛋白質)にまで増加し、肝機能の低下が確実に惹起されていた。すなわち、Gal−N処理によって受けた損傷あるいは破壊された肝細胞や肝由来細胞を体外へ排除するために、クッパー細胞内に存在する活性酸素による殺細胞(殺細菌)システムが異常に亢進し、その結果、クッパー細胞からの活性酸素が多量に産生されたことに起因していることが立証された。このようなマウスにガラナエキスを投与することによって、活性酸素は正常閾値(1280cpm/mg蛋白質)にまで低下し、肝細胞等の損傷や障害が著しく軽減されたことを示している(危険率1%以下の有意差)。これらのことから、ガラナエキスにも脂溶性ビタミン類、セルロプラスミンあるいはスーパーオキシドデスムターゼ(SOD)等と同様の強い活性酸素消去作用をすることが示唆された。このことにより、ガラナエキスには活性酸素に一因があるといわれる発癌や老化の予防効果が期待される。【0037】【表9】【0038】 参考例4(ガラナエキスの低中分子組成成分画分の分離と精製) 実施例1で製造したガラナエキスを30%ガラナエキスに調整し(400mg/ml)、冷却高速遠心機にて1000rpm、60分遠心した後、その上清液を限外濾過用メンブランを装着した限外濾過器にて吸引濾過し濾液を採取した。この濾液中に含まれる分子量5000以下の低中分子組成成分画分を凍結乾燥し、さらに生理食塩水にて10mg/mlの濃度に調整し低中分子組成成分画分液を得た。このガラナエキスの低中分子組成成分画分液中には、カフェイン、カテキン、タンニン、リンゴ酸、α−グルコシダーゼ分解繊維質由来ブドウ糖、二糖類などが含まれており、これを以下の悪性肉腫形成・肥大抑制作用の実験に供試した。【0039】 実施例5(ガラナエキスの悪性肉腫形成・肥大抑制作用) イーグルMEM培養液1ml当たり5×105コのマウス・サルコーマ180癌細胞浮遊液0.2ml(1×105コ/マウス)をマウス背部皮下に移植(各群8匹宛)する2日前、移植直後(0日)、移植後1日目、2日目、5日目及び8日目に参考例4で得られたガラナエキスの低中分子組成成分画分液0.5ml(400mg/kg)及び実施例1で得たガラナエキス0.5ml(400mg/kg)を各々癌細胞移植周辺背部皮下に計6回投与した。移植後28日に腫大化した肉腫を摘出し、重量を計測した。その結果、表10及び図1に示したように非投与対照群の移植後28日目における肉腫の平均重量は15.35gであったのに対して、ガラナエキスの低中分子組成成分画分液を投与した場合には、肉腫の形成と肥大は多少とも抑制されていたものの、有意差は認められなかった(平均重量:12.44g)。一方、ガラナエキスを投与した場合には、肉腫に対する著しい形成・肥大抑制効果が認められ(平均重量:9.88g)、しかも危険率1%以下の有意差であった。このように、ガラナエキスの遠心上清画分中に含まれる低〜中分子量組成成分、例えばカテキンやタンニンの抗腫瘍効果の報告があるが、低分子量から高分子量のすべての組成成分を含有するガラナエキスそのものの方がマウス・サルコーマ180肉腫に対して極めて強い抗腫瘍効果を示したことから、本実験で得られたガラナエキスの強力な抗腫瘍効果は、カテキンやタンニンなどによる直接的な癌細胞傷害作用のみに起因するというより、むしろ糖質分解酵素で分解されなかったガラナ果実に由来する高分子多糖体、アミロペクチンや植物繊維などによる動物体内の免疫監視機構中の非特異性免疫系や腫瘍免疫系の活性化、すなわちナチュラルキラー(NK)細胞、キラーTリンパ球やマクロファージの活性化と免疫関連因子であるインターロイキン12やγ−インターフェロンの産生亢進に基づいた間接的な癌細胞傷害作用との相乗効果によるものであろうことが推測された。さらに、実施例3と実施例4で示したように、ガラナエキス中には脂肪に対する抗酸化作用と活性酸素消去作用を有する組成成分が含まれていることからも、ガラナエキスのマウス・サルコーマ180悪性肉腫に対する抗腫瘍効果は、免疫学的実験結果からも裏付けられたものと考えられる。【0040】【表10】【0041】 実施例6(ガラナエキスの急性毒性試験(LD50)) ddY系雌及び雄マウス(5週齢)を1群5匹宛準備し、2倍段階希釈ガラナエキス0.5mlを各々経口(最大濃度:80mg/マウス)あるいは皮下(最大濃度:120mg/マウス)投与した後、5日間に亘り死亡匹数を記録し、これら投与法によるLD50をベーレンス・カーバー法に従って計算した。その結果、ガラナエキスの経口投与における雌マウスに対するLD50は2857mg/kg、雄マウスに対しては2560mg/kgであった。一方、皮下投与における雌及び雄マウスに対するLD50は、各々4284mg/kgと3840mg/kgであり、経口、皮下投与を問わず、雌マウスに対するガラナエキスの急性毒性は雄マウスに対するよりも低い濃度であった。【0042】 実施例7(錠剤) ガラナエキス(凍結乾燥品) 60mg デンプン 40mg カルボキシメチルセルロースカルシウム 20mg 全量 120mg を混合し常法により錠剤を製した。【0043】【発明の効果】 上記で詳述した本発明によれば以下の効果を奏する。すなわち、本発明の肝機能障害改善予防剤は、ガラナエキスを有効成分とし、肝機能の治療と予防に用いることでき、また、本発明の腫瘍免疫賦活剤は、ガラナエキスを有効成分とし、悪性腫瘍の治療と予防に用いることができると共に、さらに抗酸化作用と活性酸素消去能を有するので、加齢変化に伴う代謝機能の低下を予防ができ、医薬として極めて有用である。また、本発明の肝機能障害改善予防剤又は腫瘍免疫賦活剤の製造方法は、ガラナ果実に含まれる親油性組成成分と親水性組成成分のいずれも高収率で回収でき経済性に優れるばかりか、種々の薬理活性を有する組成成分を取得でき操作が簡便で有用である。【図面の簡単な説明】【図1】肉腫癌細胞の移植28日目に摘出された肉腫の写真像【符号の説明】 1:非投与対照群 2:低中分子組成成分画分液投与群 3:ガラナエキス投与群 ガラナ果実の粉砕物に糖質分解酵素を作用させて得られるガラナエキスを有効成分とすることを特徴とする肝機能障害改善予防剤。 糖質分解酵素は、液化酵素、セルラーゼ及び糖化酵素とからなることを特徴とする請求項1に記載の肝機能障害改善予防剤。 ガラナ果実の粉砕物に糖質分解酵素を作用させて得られるガラナエキスを有効成分とすることを特徴とする腫瘍免疫賦活剤。 糖質分解酵素は、液化酵素、セルラーゼ及び糖化酵素とからなることを特徴とする請求項3に記載の腫瘍免疫賦活剤。 ガラナ果実の粉砕物に液化酵素、セルラーゼ及び糖化酵素を作用させ、以下の各工程によりガラナエキスを得ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の肝機能障害改善予防剤の製造方法。 (1)ガラナ果実を粉砕して粉末化する工程 (2)高温水にガラナ果実の粉末を加え、さらに液化酵素を添加してデンプン質を液化する工程 (3)前記で得た酵素液化溶液にセルラーゼと糖化酵素を添加して糖化処理する工程 (4)前記で得た糖化処理液を濾過する工程 (5)前記で得た濾液を濃縮する工程 液化酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ及びイソアミラーゼから選ばれる1種又は2種以上であり、糖化酵素はα−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の肝機能障害改善予防剤の製造方法。 請求項5又は請求項6に記載の製造方法により得られたガラナエキスに所定量のブドウ糖を添加してガラナエキス結晶粉末とすることを特徴とする肝機能障害改善予防剤の製造方法。 ガラナ果実の粉砕物に液化酵素、セルラーゼ及び糖化酵素を作用させ、以下の各工程によりガラナエキスを得ることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の腫瘍免疫賦活剤の製造方法。 (1)ガラナ果実を粉砕して粉末化する工程 (2)高温水にガラナ果実の粉末を加え、さらに液化酵素を添加してデンプン質を液化する工程 (3)前記で得た酵素液化溶液にセルラーゼと糖化酵素を添加して糖化処理する工程 (4)前記で得た糖化処理液を濾過する工程 (5)前記で得た濾液を濃縮する工程 液化酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ及びイソアミラーゼから選ばれる1種又は2種以上であり、糖化酵素はα−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項8に記載の腫瘍免疫賦活剤の製造方法。 請求項8又は請求項9に記載の製造方法により得られたガラナエキスに所定量のブドウ糖を添加してガラナエキス結晶粉末とすることを特徴とする腫瘍免疫賦活剤の製造方法。