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タイトル:特許公報(B2)_高分子材料のグレード識別方法
出願番号:2000275693
年次:2010
IPC分類:G01N 21/35,G01N 33/44


特許情報キャッシュ

田辺 和俊 松本 高利 佐伯 和光 天野 敏男 JP 4581039 特許公報(B2) 20100910 2000275693 20000911 高分子材料のグレード識別方法 オプト技研株式会社 396017486 富山県 000236920 大谷 嘉一 100114074 田辺 和俊 松本 高利 佐伯 和光 天野 敏男 20101117 G01N 21/35 20060101AFI20101028BHJP G01N 33/44 20060101ALI20101028BHJP JPG01N21/35 ZG01N33/44 G01N 21/17-21/61 特開2000−159897(JP,A) 特開2000−214084(JP,A) 特開2000−140619(JP,A) 特開平10−232166(JP,A) 1 2002090299 20020327 16 20070723 尾崎 淳史 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、近赤外線スペクトルのデータに基づいて、プラスチック、繊維、ゴム、塗料、接着剤等の高分子材料のグレードを識別する高分子材料のグレード識別方法に関するものである。【0002】【従来の技術】高分子材料はプラスチック、繊維、ゴム、塗料、接着剤等として国内では毎年1500万トン以上生産されているが、近年では環境問題からそのリサイクルが必須の課題となっている。高分子材料のリサイクルにおいては、再生材料の特性を向上させるために、高分子材料を種類によって分別するだけでなく、同一種類の高分子材料をその特性、すなわちグレードによって分別することも要求されている。なぜならば、再生材料はそのグレードによって製品価格が大きく異なるからであり、たとえば高密度のポリエチレン(HDPE)は低密度のポリエチレン(LDPE)より2倍以上価格が高いからである。【0003】従来、実験室的レベルにおいて高分子材料のグレードを識別する方法として、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)、熱分解ガスクロマトグラフィー(Pyrosis-GC、PyGC)、光散乱、浸透圧、蒸気圧、超遠心分離、電子顕微鏡、X線及び中性線回折、NMRスペクトル(13C-NMR及び固体NMR)、赤外線スペクトル(IR)、元素分析、原子吸光度分析、X線光電子分光法、2次イオン質量分析、熱重量測定(TG)、示差熱分析(DTA)、示差走査熱量測定(DSC)等の破壊・非破壊測定を組み合わせた分析方法が使用される。しかしながら、これらの方法は、高分子材料のグレードの識別が可能ではあるものの、測定及びグレードの識別における迅速性が欠けるため、現時点で、実際のリサイクルの際に用いることができる実用化レベルに達しているものはなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】上記高分子材料のグレード識別方法の中で最も実用化レベルに近い有望な方法は、赤外線を利用する方法であると考えられる。赤外線の波長を変えながら高分子材料に照射すると、波長によって高分子材料に吸収されたり反射されたりする赤外線の割合が変化する。この赤外線の吸収率又は反射率を照射光の波長を変えながら測定すると、赤外線スペクトルが得られる。この赤外線スペクトルは高分子材料原料に用いられているモノマーの種類やグレードの違いによって変化するため、赤外線スペクトルの違いから高分子材料の種類やグレードを識別することができる。【0005】赤外線スペクトルは、照射する赤外線の波長によって近赤外線スペクトル(波長範囲:1.0〜2.5μm)、中赤外線スペクトル(波長範囲:2.5〜25μm)、遠赤外線スペクトル(波長範囲:25〜100μm)に大別することができる。これらの中で、中赤外線は高分子材料のグレードによって吸収率が異なるため、中赤外線スペクトルに基づき高分子材料のグレードを割と精度よく識別することができると考えられている。しかしながら、この中赤外線の波長範囲では、高分子材料による光の吸収率がかなり高いため、試料(測定対象物)の厚さを薄くする前処理を行った上で透過法測定を行う必要がある。したがって、中赤外線の波長範囲での赤外線スペクトルを測定する方法では、破壊検査となってしまい、しかも上記試料の前処理という煩雑な作業が必要となるため、簡便で迅速なグレード識別方法とはいえなかった。【0006】高分子材料のグレードを簡便、且つ迅速な方法で識別するという課題は、プラスチック、繊維、ゴム、塗料、接着剤等のすべての高分子材料を効率的にリサイクルしようとする場合について、同様に発生し得るものである。【0007】本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、従来の中赤外線スペクトルを測定するものに比して、より簡便、且つ迅速な高分子材料のグレード識別方法を提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の発明は、グレード識別対象の高分子材料について近赤外線の波長範囲における近赤外線スペクトルを測定し、該近赤外線スペクトルのデータに対してケモメトリックスにおけるデータ解析手法を適用し、該データ解析手法で取得された情報に基づいて該高分子材料のグレードを識別することを特徴とする高分子材料のグレード識別方法である。ここで、上記「ケモメトリックス」とは、数学的手法や統計学的手法を適用し、最適手順や最適実験計画の立案・選択を行うとともに、化学データから得られる化学情報量の最大化を目的とする化学の一分野をいう(例えば、相島鐵郎著「ケモメトリックス−新しい分析化学−」丸善、p.1」参照、)。また、上記「ケモメトリックスにおけるデータ解析手法」としては、ニューラルネットワークのほか、主成分分析法、PLS(Partial Least Squares Regression)法、PCR(Principal Components Regression)法、階層的クラスター分析法、SIMCS(Soft Independent Modeling of Class Analogy)法、KNN(k nearest neibors)法、等を挙げることができる(例えば、宮下芳勝・佐々木愼一共著「ケモメトリックス 化学パターン認識と多変量解析」共立出版参照)。【0009】 高分子材料のグレードの違いにより光の吸収率や反射率が異なる波長を含む近赤外線(波長範囲:1.0〜2.5μm)を用いて測定することにより、高分子材料のグレードに関する情報を含む近赤外線スペクトルのデータを得ることができる。しかも、上記近赤外線は、中赤外線(波長範囲:2.5〜25μm)とは異なり、高分子材料に対して過度に吸収されることがなく、また適度な強度の透過光や反射光となるので、測定対象の高分子材料について前処理を行う必要がなく、十分な強度の赤外線スペクトルのデータを得ることができる。そして、上記近赤外線スペクトルのデータに対してケモメトリックスにおけるデータ解析手法を適用することにより、近赤外線スペクトルのデータから高分子材料のグレードに関する情報を抽出する。このデータ解析手法で取得された情報に基づいて、高分子材料のグレードを識別する。このケモメトリックスにおけるデータ解析手法に対しては、コンピュータを用いたデータ処理を容易に適用できるので、簡便で且つ迅速なグレード識別が可能となる。【0010】 上記ケモメトリックスにおけるデータ解析手法として、上記近赤外線スペクトルのデータについてピークの先鋭化、ベースラインの傾き補正及び規格化を含む処理を行なう前処理と、該前処理を施した近赤外線スペクトルのデータについて、ニューラルネットワークによるデータ処理とを行うことを特徴とするものである。ここで、上記「ニューラルネットワーク」とは、脳の行なう情報処理をまねた数学的モデルであり、神経細胞の行なうデータ処理をユニットと呼ばれる処理要素に置き換え、相互に結合させて情報処理を行なうネットワークである。上記近赤外線スペクトルのデータ処理に対しては、特に、階層型パーセプロトロンモデルが採用された、入力層、中間層及び出力層からなる3層構造のニューラルネットワークであって、エラーバックプロパゲーション方式で学習したニューラルネットワークが好適である。【0011】 上記近赤外線スペクトルのデータについて2次微分処理及び規格化処理を含む前処理を行うことにより、近赤外線スペクトルにおけるピークの先鋭化を行うとともに、グレード識別対象の複数の高分子材料間でのデータのバラツキを抑え、最終的なグレード識別の精度を高める。そして、この前処理を施した近赤外線スペクトルのデータを、ニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力されたデータによりグレード識別を行う。このニューラルネットワークを用いた解析手法の場合は、ニューラルネットワークのパラメータの最適化を図ることにより、グレード識別の精度が高まり、高分子材料が細分化されたグレードに分類されるときでも各グレードの識別が可能となる。また、上記近赤外線スペクトルのデータの非線形性が強い場合でも、高分子材料のグレードを精度よく識別することができる。【0012】 上記ケモメトリックスにおけるデータ解析手法として、上記近赤外線スペクトルのデータについてピークの先鋭化、ベースラインの傾き補正及び規格化を含む処理を行なう前処理と、該前処理を施した近赤外線スペクトルのデータについて主成分分析法、PLS分析法、階層的クラスター分析法及びSIMCA法の少なくとも一つによるデータ処理とを行う。【0013】 上記前処理を行うことにより、近赤外線スペクトルにおけるピークの先鋭化を行うとともに、グレード識別対象の複数の高分子材料間でのデータのバラツキを抑え、最終的なグレード識別の精度を高める。そして、この前処理を施した近赤外線スペクトルのデータについて、上記主成分分析法、PLS法、階層的クラスター分析法及びSIMCA法の少なくとも一つによるデータ処理を行い、その出力結果に基づいてグレード識別を行う。特に、上記主成分分析法、PLS法、階層的クラスター分析法及びSIMCA法の2つ以上を組み合わせ、各分析結果を比較することにより、高分子材料のグレード識別の精度を高めることができる。【0014】 上記近赤外線スペクトルのデータの波長範囲が1.6〜2.0μmであり、上記グレード識別対象の高分子材料がポリエチレンであってもよい。【0015】 ポリエチレンの密度の違いによって光学特性が大きく異なる部分が存在する波長範囲1.6〜2.0μmの近赤外線スペクトルのデータを用いることにより、ポリエチレンの密度の違いによるグレードを識別する。【0016】 上記近赤外線スペクトルの波長範囲が1.6912〜1.7783μmであるとよい。 ポリエチレンからなるリサイクル材料の近赤外線スペクトルを測定し、波長1.6958〜1.6999μm,1.7050〜1.7091μm,1.7416〜1.7459μm,1.7462〜1.7503μmの4つの領域の平均スペクトルを用いることでポリエチレンのグレードが容易に分別できる。【0018】【発明の実施の形態】以下、本発明をポリエチレンのグレードを識別するグレード識別方法に適用した実施形態について説明する。ポリエチレンは、高分子材料である汎用プラスチックの1つとして大量生産されている。ポリエチレンは、軽く(比重:0.91〜0.97)、透明〜半透明であり、耐寒性(使用可能な温度範囲:−60〜80°C)が良く、電気絶縁性は特に優れており、耐電圧が大きく、高周波特性も良い。吸水・透水はしないが、空気は通すという特性を有している。また、ポリエチレンは、耐水、耐油、耐酸(濃硝酸は除く)、耐アルカリ性、耐有機溶剤(高温の場合を除く)に優れており、低コストである。ポリエチレンは、強度、合成、表面硬度、耐熱性においては劣るものの、これらを上回る特性を有しているため、大量に利用されている。これと同時に、大量消費・大量廃棄されているのも事実である。【0019】一方、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法の本格施行により、プラスチックをリサイクルする必要性に迫られている。このような状況下で、大量消費・大量廃棄されているポリエチレンについてもリサイクルの必要性が迫られている。ところが、このポリエチレンは用途により物理的性質や化学的性質が異なるもの、すなわちグレードが異なるものが使用されている。このようにグレードが異なるポリエチレンが存在するのは、ポリエチレンの製法によっては分岐が生じ、これに伴い結晶化度が低下する場合があるからである。この結晶化度の低下は、剛性の低下や透明性の向上につながる。このようにポリエチレンの剛性(柔軟性)や透明性のような外見的な特性は、結晶化度により大きく変動する。結晶化度の指針として密度を用いて、高密度ポリエチレン(HDPE:High Density PolyEthylene)と低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density PolyEthylene)といったように分類されている。更に、最近では、新しいタイプのエンジニアプラスチックとしてのポリエチレンが開発され、単純に密度だけでは特定しきれない面もある。このような密度が異なる複数グレードのポリエチレンはそれぞれ特性が異なるため、前述のように、リサイクルを行なう場合は、グレードごとにポリエチレンを分別する必要がある。【0020】本実施形態では、上記ポリエチレンをグレードごとに分別するために、ポリエチレンの近赤外線スペクトルを測定し、近赤外線スペクトルのデータに対してケモメトリックスにおけるデータ解析手法を適用し、このデータ解析手法で取得された情報に基づいてポリエチレンのグレードを識別するグレード識別方法を用いている。【0021】ここで、近赤外線領域の波長を用いるのは、ポリエチレンの光学的特性によるものである。CH伸縮振動の第1、第2、第3・・・等の倍音によるバンドはどれもダブレットのようになっているが、いずれも長波長側がメチレン基によるものであり、短波長側がメチル基によるものである。1、2、3と倍音の次数が上がるにつれ強度は弱くなるものの、バンドの分離能は良くなるので、化合物の同定には、次数の高い振動に対応する近赤外線領域は極めて有効である。この近赤外線領域を用いることのもう1つの長所としては、大きな非調和定数をもつ振動だけがこの領域に残り、小さな非調和定数を持つものは観測されないので、スペクトルが比較的に簡単になるという利点がある。【0022】本実施形態におけるポリエチレンの近赤外線スペクトルの測定には、オプト技研社製の近赤外線スペクトル測定装置(商品名:PlaScan)を用いた。この近赤外線スペクトル測定装置は、音響光学変調フィルター(AOTF:Acoustro-Optical Tunable Filter)分光方式を使用しており、近赤外線領域(1.0〜2.5μm)における拡散反射スペクトルを迅速かつ高分解能(0.0005μm)で測定できる分光測定装置である。この近赤外線スペクトル測定装置を用いて、まず標準試料であるセラミックについて波長領域1.1〜2.2μmの2400点における拡散反射光の強度を積算回数20回で測定した。次に、グレード識別対象の複数のポリエチレンについて、同じ波長領域1.1〜2.2μmの2400点における拡散反射光の強度を積算回数20回で測定した。そして、各測定波長ポイントについて、セラミックの反射光強度に対するポリエチレンの反射光強度の比である相対反射率の対数を、吸光度として算出することにより、波長領域1.1〜2.2μmにおける近赤外線スペクトルのデータを得た。なお、上記近赤外線スペクトルの測定は、日常生活で使用されているプラスチックなどのポリエチレン(HDPE:6種,LDPE:8種)のフィルム及びシートの70サンプルについて行なった。【0023】次に、上記波長と吸光度との関係を示す近赤外線スペクトルの測定データについてニューラルネットワーク等のデータ処理を行なう前に、ノイズ除去のための平滑化、ピークの先鋭化、及び規格化のデータ処理として、次の(1)乃至(4)のようなデータの前処理を行なった。(1) 波長領域1.1〜2.2μmの2400点の実測スペクトルデータについて、最小値を0、最大値を1となるように規格化を行った。(2) 2400点の規格化スペクトルを10点毎に平均を取り、240点のデータを作成した。(3) 240点のデータを用いて、2次微分スペクトルの計算を行った。(4) 波長領域1.6〜2.0μmの89点のデータのみを取り出し、絶対値の最大値が1となるように、再度規格化を行った。【0024】ここで、上記データの平均化処理を行なったのは、ノイズ除去のためである。また、2次微分処理を行ったのは、ピークの先鋭化とベースラインの傾き補正のためである。この種のデータの前処理としては、他にMSC(Multiplicative Scatter Correction)法等もあるが、本実施形態においては、計算の簡便な2次微分法を主に使用した。なお、上記データの前処理には、データ処理装置としてのコンピュータ(富士通社製のFMV-6233N/A、OS:Microsoft社製のWindows95)にインストールしたMicrosoft社製のソフト「Microsoft Excel98」を使用した。【0025】図1及び図2はそれぞれ、波長領域1.1〜2.2μmにおける高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の平均の近赤外線スペクトル及びその2次微分スペクトルのグラフである。また、図3及び図4はそれぞれ、図1及び図2のスペクトルを波長領域1.6〜2.0μmでプロットしたグラフである。これらのグラフからわかるように、高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)との間での近赤外線スペクトルの顕著な差異が1.6〜2.0μmの領域で見られる。この波長領域における近赤外線スペクトルの相違を用いて、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の識別を行った。【0026】本実施形態では、上記近赤外線スペクトルのデータを解析するケモメトリックスにおけるデータ解析手法の一つとして、階層型パーセプトロンモデルが採択されたニューラルネットワークを用いた。このニューラルネットワークによるデータ処理は、上記コンピュータ(富士通社製のFMV-6233N/A、OS:Microsoft社製のWindows95)にインストールした富士通社製のソフトウェア(商品名:NEUROSIM/L)を用いた。【0027】このニューラルネットワークは、図5に示すように、入力層、中間層及び出力層がそれぞれ1層である3層構造から構成され、ニューラルネットワークの学習には、エラーバックプロパゲーション方式を用いた。このニューラルネットワークの入力層に、上記前処理を施した各ポリエチレンの近赤外線スペクトル(2次微分スペクトル)のデータを入力し、出力層にそのポリエチレンの識別コード(HDPE:1,LDPE:0)を教師データとして入力して学習を行った。また、本実施形態においては、HDPE又はLDPEのいずれかを識別するためにデータ解析を行なったので、出力層を1ユニットに設定した。また、他の条件としては、入力層を89ユニット、中間層と3ユニットに設定し、学習定数としてe=5.0,a=0.1を用い、初期乱数シードを1とし、収束判定条件を0.1とした。図6は、上記条件で学習を行なった後のニューラルネットワークの模式図である。【0028】上記ニューラルネットワークのHDPEとLDPEに対する識別能力判定は、Leave-one-out法により行なった。具体的には、70個の全試料から5つの試料を抜き取り、65個の試料を学習後に5つの試料について識別能力を判定した。これを全部で14回繰り返し、その正誤能力により上記ニューラルネットワークのHDPEとLDPEの識別能力とした。その結果、上記ニューラルネットワークの識別能力は100%であり、HDPEとLDPEとを完全に識別できることがわかった。【0029】また、本実施形態では、上記近赤外線スペクトルのデータを解析するケモメトリックスにおける他のデータ解析手法として、主成分分析法、PLS分析法、階層的クラスター分析法及びSIMCA法を用いた。これらのデータ解析手法によるデータ処理は、上記コンピュータにインストールしたInfoMetrix社製のソフトウェア(商品名:Pirouette Ver.2.6)を用いた。このソフトウェアを用いて、上記ニューラルネットワークの場合と同様に、70個のポリエチレン試料についてデータ解析を行なった。【0030】図7は、上記70個のポリエチレン試料について、波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いて主成分分析したときの第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフであり、図8は、同様な主成分分析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフである。この図7及び図8の結果により、HDPEの解析データとLDPEの解析データは互いに独立のクラスターに分類することができ、HDPEとLDPEを十分に識別可能であることがわかる。【0031】また、図9は、上記70個のポリエチレン試料について、波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いてPLS解析したときの第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフであり、図10は、同様なPLS解析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフである。この図9及び図10の結果により、上記主成分分析の結果と同様に、HDPEの解析データとLDPEの解析データは互いに独立のクラスターに分類することができ、HDPEとLDPEを十分に識別可能であることがわかる。【0032】また、図11は、上記70個のポリエチレン試料について、波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いて階層的クラスター分析法で解析した結果を示すデンドログラムである。また、図12は、高密度ポリエチレン試料(HDPE)について、波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いてSIMCA法で解析した結果を示すグラフであり、図13は、低密度ポリエチレン試料(LDPE)について、同様なSIMCA法で解析した結果を示すグラフである。これらの図11並びに図12及び図13の結果からも、上記主成分分析の結果と同様に、HDPEの解析データとLDPEの解析データは互いに独立のクラスターに分類することができ、HDPEとLDPEを十分に識別可能であることがわかる。【0033】次に、本実施形態では、上記波長領域1.6〜2.0μmの89点のデータを更に絞り込んで、ポリエチレンのグレードを識別する能力をより向上させることを目的として上記ニューラルネットワークに入力するデータの波長範囲を更に絞り込むために、上記波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルの分散統計処理を行った。その結果、図14のグラフに示すように、波長1.6912〜1.7783μmの範囲に分散の主要なピークが存在しているので、ポリエチレンのグレード識別には、この波長範囲1.6912〜1.7783μmの近赤外線スペクトルのデータを用いるだけで十分であることがわかる。【0034】そこで、波長領域1.6912〜1.7783μmの20点のデータのみを取り出し、絶対値の最大値が1となるように再度規格化を行った。そして、図15に示すように、この20点のデータを上記ニューラルネットワークの入力層に入力し、前述の入力データ数が89個の場合と同様な条件で学習を行ない、HDPEとLDPEの識別能力判定を行なった。その結果、この20個のデータを用いた場合も、ニューラルネットワークの識別能力は100%を示し、HDPEとLDPEとを完全に識別することができた。なお、図16は、入力データ数が20個の場合における学習後のニューラルネットワークの模式図である。【0035】更に、上記波長領域1.6912〜1.7783μmの20点のデータについて、前述と同様に主成分分析法、PLS分析法、階層的クラスター分析法及びSIMCA法を用いてデータ解析を行なったところ、図17、図18、図19、図20、図21、図22及び図23に示すように、LDPEの解析データとHDPEの解析データは互いに独立のクラスターに分類することができ、HDPEとLDPEを十分に識別可能であることがわかった。また、これらの場合について、上記データの前処理を一部変更し、MSC(Multiplicative Scatter Correction)法を含めて同様のデータ解析を行っても、HDPEとLDPEとを識別可能なことがわかった。【0036】更に、本実施形態では、上記波長領域1.6912〜1.7783μmにおいて、データ解析に用いる入力データ数を13個、10個、6個、5個、4個と順次減らしていきながら、学習後のニューラルネットワークを用いてパラメータースキャンを行なうともに、上記ニューラルネットワークや主成分分析等のデータ解析を行なった。その結果、上記入力データが89個の場合と同様に学習を行なったニューラルネットワークを用いることにより、図24及び図25に示すように最終的に入力データ数(入力層のユニット数)を4個(1.69785μm、1.70702μm、1.74368μm、1.74827μm)に減らした場合でも、上記入力データ数が89個及び20個の場合と同様にLeave-one-out法により識別能力の性能を調べた結果、100%の的中率が得られた。また、上記主成分分析、PLS解析及び階層的クラスター分析についても、図26、図27、図28、図29及び図30に示すように、最終的に入力データ数を4個に減らした場合でも、HDPEの解析データとLDPEの解析データは互いに独立のクラスターに分類することができ、HDPEとLDPEを十分に識別可能であることがわかった。【0037】ここで、上記入力層が4ユニットのニューラルネットワークにおいてパラメータースキャンを行なったところ、HDPEとLDPEの識別には、1点(1.7116μm)が関与していないと考えられる。各入力値が0の場合の挙動から、定数項の値で全体に上にシフトしているものと考えることもできる。もしくは感度の閾値が上昇しているものと考えることもできる。そこで、バイアスを導入して、閾値を下げる働きを負わせ、ニューラルネットワークを再学習させる必要があるものと考えられる。【0038】そこで、図31に示すように、入力層にバイアスの分のユニットを追加し、全部で5ユニットのニューラルネットワークを構成した。このニューラルネットワークで学習し、前述のLeave-one-out法によりニューラルネットワークの識別性能を調べた結果、100%の的中率が得られた。なお、図32は、上記バイアス分のユニットを追加した場合における学習後のニューラルネットワークの模式図である。【0039】また、図33及び図34はそれぞれ、上記バイアスを含んで入力層を5つのユニットにした場合のニューラルネットワークが識別している波長領域における、実際の2次微分スペクトルの分散を示すグラフ、及び実際のHDPE及びLDPEの平均スペクトルを示すグラフである。なお、図33及び図34において、符号P1〜P4で示している波長が、入力データに対応している。この結果より、ニューラルネットワークは、分散の最も大きな部分と2番目に大きな部分を認識している。残りの2つについては、必ずしも分散の広がり具合が大きいとはいえない領域である。しかし、実際のHDPE及びLDPEの平均スペクトルで見直してみると、最大ピークから右下がりの部分ではっきりと差異が認められる。この部分をニューラルネットワークが認識したものと考えることができる。【0040】以上、本実施形態によれば、近赤外反射スペクトル測定とケモメトリックスにおける各種データ解析手法とを組み合わせることにより、ポリエチレンの2つのグレード(HDPE,LDPE)の識別が可能かどうか検討した結果、ケモメトリックスにおける主成分分析等の線形解析でも十分識別可能であることがわかった。また、非線形解析であるニューラルネットワークを用いたデータ解析でも十分に識別でき、その的中率が100%であることがわかった。特に、ニューラルネットワークを用いたデータ解析では、人間が近赤外線スペクトルを見てポリエチレンの2つのグレード(HDPE,LDPE)を識別するように、実際のスペクトル領域(1.6958〜1.6999μm、1.7050〜1.7091μm、1.7416〜1.7457μm、1.7462〜1.7503μm)の平均スペクトルを見て識別していることがわかった。これは、ポリエチレンの使用されている炭化水素ユニットの末端の伸縮運動の状態を見ているものと考えることができる。このように近赤外線スペクトルの上記特定の4箇所の波長におけるデータを利用して、十分にポリエチレンのグレードを識別することは可能である。したがって、より簡便、且つ迅速なポリエチレンのグレード識別が可能となる。また、上記近赤外線スペクトル測定装置やコンピュータを組み合わせて、グレードの異なるポリエチレンの識別するシステムを構成する場合は、識別システムの小型化が可能となる。【0041】なお、上記実施形態においては、ポリエチレンのグレードを識別する場合について説明したが、本発明は、ポリスチレン(GP:General Purpose,HI:High Impact)やポリプロピレン等の他の高分子材料のグレードを識別する場合にも適用できるものである。【0042】 本発明によれば、近赤外線スペクトル測定前に高分子材料を前処理する必要がないとともに、コンピュータを用いたデータ処理を容易に適用できるので、従来の中赤外線の波長領域で測定する場合に比してより簡便、且つ迅速に高分子材料のグレード識別が可能となるという優れた効果がある。【0043】 また、線形モデルを採用するデータ解析手法に比して、近赤外線スペクトルのデータの非線形性が強い場合でも、高分子材料のグレードをより精度よく識別することができるという優れた効果がある。【0044】 本発明によれば、ポリエチレンの結晶化度(密度)の違いによるグレードを精度よく識別することができるという優れた効果がある。【0045】 本発明によれば、ポリエチレンのグレードの結晶化度(密度)の違いによる光学特性の変化が大きな波長範囲である1.6912〜1.7783μmに限定して、近赤外線スペクトルの測定及びデータ処理を行うことができるので、より簡便、且つ迅速なポリエチレンのグレード識別が可能となるという優れた効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】波長領域1.1〜2.2μmにおける高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の平均の近赤外線スペクトルのグラフ。【図2】波長領域1.1〜2.2μmにおける高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の2次微分スペクトルのグラフ。【図3】図1の近赤外線スペクトルの波長領域1.6〜2.0μmについて拡大したグラフ。【図4】図2の近赤外線スペクトルの波長領域1.6〜2.0μmについて拡大したグラフ。【図5】入力層に89ユニットを持つニューラルネットワークの模式図。【図6】学習後における同ニューラルネットワークの模式図。【図7】波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いて主成分分析したときの第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフ。【図8】同主成分分析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフ。【図9】波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いてPLS解析したときの第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフ。【図10】同PLS解析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフ。【図11】波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いて階層的クラスター分析法で解析した結果を示すデンドログラム。【図12】高密度ポリエチレン試料(HDPE)について、波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いてSIMCA法で解析した結果を示すグラフ。【図13】低密度ポリエチレン試料(LDPE)について、波長領域1.6〜2.0μmの2次微分スペクトルにおける89個のデータを用いてSIMCA法で解析した結果を示すグラフ。【図14】波長領域1.6〜2.0μmにおける2次微分スペクトルの分散を示すグラフ。【図15】入力データ数が20個の場合におけるニューラルネットワークの模式図。【図16】学習後における同ニューラルネットワークの模式図。【図17】波長領域1.6912〜1.7783μmの2次微分スペクトルにおける20個のデータを用いて主成分分析したときの第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフ。【図18】同主成分分析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフ。【図19】波長領域1.6912〜1.7783μmの2次微分スペクトルにおける20個のデータを用いてPLS解析したときの第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフ。【図20】同PLS解析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフ。【図21】波長領域1.6912〜1.7783μmの2次微分スペクトルにおける20個のデータを用いて階層的クラスター分析法で解析した結果を示すデンドログラム。【図22】高密度ポリエチレン試料(HDPE)について、波長領域1.6912〜1.7783μmの2次微分スペクトルにおける20個のデータを用いてSIMCA法で解析した結果を示すグラフ。【図23】低密度ポリエチレン試料(LDPE)について、波長領域1.6912〜1.7783μmの2次微分スペクトルにおける20個のデータを用いてSIMCA法で解析した結果を示すグラフ。【図24】入力データ数が4個の場合におけるニューラルネットワークの模式図。【図25】学習後における同ニューラルネットワークの模式図。【図26】4個のデータを用いた主成分分析における第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフ。【図27】同主成分分析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフ。【図28】4個のデータを用いたPLS解析における第1主成分と第2主成分との関係を示すグラフ。【図29】同PLS解析における第2主成分と第3主成分との関係を示すグラフ。【図30】4個のデータを用いて階層的クラスター分析法で解析した結果を示すデンドログラム。【図31】バイアス入力がある場合のニューラルネットワークの模式図。【図32】学習後における同ニューラルネットワークの模式図。【図33】波長領域1.68〜1.78μmにおける2次微分スペクトルの分散を示すグラフ。【図34】波長領域1.68〜1.78μmにおける高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の平均の近赤外線スペクトルのグラフ。 ポリエチレンからなるリサイクル材料の近赤外線スペクトルを測定し、波長1.6958〜1.6999μm,1.7050〜1.7091μm,1.7416〜1.7459μm,1.7462〜1.7503μmの4つの領域の平均スペクトルを用い、ニューラルネットワークを用いたデータ解析により、HDPEとLDPEの2つのグレートを識別し、分別することを特徴とするポリエチレングレードの分別方法。


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