タイトル: | 特許公報(B2)_(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法 |
出願番号: | 2000270903 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 41/01,C07C 43/13,C08G 65/34,C07C 41/03 |
小石川 直己 JP 4658296 特許公報(B2) 20110107 2000270903 20000907 (ポリ)グリセリルエーテルの製造方法 株式会社ADEKA 000000387 曾我 道治 100110423 池谷 豊 100071629 古川 秀利 100084010 鈴木 憲七 100094695 大宅 一宏 100122437 小石川 直己 20110323 C07C 41/01 20060101AFI20110303BHJP C07C 43/13 20060101ALI20110303BHJP C08G 65/34 20060101ALI20110303BHJP C07C 41/03 20060101ALN20110303BHJP JPC07C41/01C07C43/13C08G65/34C07C41/03 C07C 41/01-41/46 C07C 43/13 C08G 65/34-65/48 特開昭54−106456(JP,A) 特開昭54−133346(JP,A) 3 2002080416 20020319 10 20070725 江間 正起 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】天然のアルキルグリセリルエーテルとしては、パルミチルグリセリルエーテル(キミルアルコール)、ステアリルグリセリルエーテル(バチルアルコール)やオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が知られており、魚類及び鯨の脂質の不鹸化物中にスクワレンと共に存在している。こうしたアルキルグリセリルエーテルは、低毒性、低刺激性、保湿性に富む等の特性があり、化粧料又は軟膏等に広く使用されている。また、近年では、グリセリンモノ脂肪酸エステルに類似した構造と性質を持ち、加水分解に対して安定であることから洗浄剤や潤滑油添加剤としての用途も出てきており、今後、需要はますます伸びるものと予想されている。【0003】こうしたアルキルグリセリルエーテルの工業的な製造方法としては、例えば、(1)アルコール類にエピクロルヒドリン等のα−エピハロヒドリンを酸触媒で付加してハロヒドリンエーテルとした後、アルカリで閉環してグリシジルエーテルとする方法(特開昭52−12109号公報参照)、このグリシジルエーテルから加水分解する方法(特開平5−43501号公報、特開平9−124532号公報参照);(2)アルコール類と4級アンモニウム塩等の相間移動触媒の存在下、アルカリで反応させてグリシジルエーテルとしてから加水分解する方法(特開昭56−108781号公報、特開昭56−108782号公報、特開平5−255293号公報参照);(3)アルコール類にグリシドールを反応させる方法(特公昭57−58333号公報、特公昭63−66295号公報参照)等が知られている。【0004】しかしながらこれらの方法ではいくつかの欠点がある。即ち、(1)の方法は工程が煩雑であるうえ、α−エピハロヒドリンの過剰付加やβ付加が起こり易く、生成物の塩素含量が多くなってしまう。化粧料や潤滑剤として使用する場合には塩素含量が問題となるため、塩素を除去するために蒸留等による精製が必要となり、生産工程が長くなり収率も下がってしまう。また、一般的には、グリシジルエーテルの加水分解は水の存在下、酸触媒で行うが、不均一反応であるためグリシジルエーテル同士の付加反応が起こり収率が低くなる。(2)の方法は、(1)の方法より工程が簡略化されているが、依然として煩雑であり、生成物の塩素含量も(1)の方法より少ないがまだ十分とは言えない。また、グリシジルエーテルの加水分解における収率低下の問題もある。(3)の方法は、工程は簡素であり、塩素含量も低いものが得られるが、原料のグリシドールが高価であり、価格上、用途の制約が出てくる。また、グリシドール同士の重合が起こりやすく、反応の制御が難しいという問題がある。【0005】【発明が解決しようとする課題】以上のように従来のグリセリルエーテルの製造方法は、低塩素含量であるグリセリルエーテルを、簡便に、高収率で得るためには、いずれも十分に満足できる製造法ではない。従って、本発明の目的は、従来法に比べて簡単な方法で、安価に、しかも塩素等の含有量が低い(ポリ)グリセリルエーテルを製造する方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】 即ち、本発明は、アルコール又はフェノール、及びアルカリ物質の存在する系内に、1−クロロ−2,3−プロパンジオールを滴下又は複数回に分けて加えることを特徴とする(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法である。【0007】更に詳しくは、次の一般式(1)【0008】【化3】【0009】[式中、Mはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わし、AOはオキシアルキレン基を表わし、nは0又は1以上の数を表わし、mはMの価数を表す。]で表わされるアルコール又はフェノール、及びアルカリ物質の存在する系内に、1−クロロ−2,3−プロパンジオールを滴下又は複数回に分けて加えることを特徴とする(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法であり、より具体的には、得られる(ポリ)グリセリルエーテルは、次の一般式(2)で表わされる。【0010】【化4】【0011】[式中、Mはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わし、AOはオキシアルキレン基を表わし、nは0又は1以上の数を表わし、sは1以上の数を表わしmはMの価数を表す。]【0012】【発明の実施の形態】一般式(1)及び一般式(2)において、Mはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わす。本発明においては、モノオールまたはポリオールとしては、種々の脂肪族1価アルコール、脂肪族多価アルコール、1価フェノール又は多価フェノールを使用することができる。【0013】モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2級ブタノール、ターシャリブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2級ペンタノール、ネオペンタノール、ターシャリペンタノール、ヘキサノール、2級ヘキサノール、ヘプタノール、2級ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2級オクタノール、ノナノール、2級ノナノール、デカノール、2級デカノール、ウンデカノール、2級ウンデカノール、ドデカノール、2級ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、2級トリデカノール、テトラデカノール、2級テトラデカノール、ヘキサデカノール、2級ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ミリシルアルコール、ラッセロール、テトラトリアコンタノール、2―ブチルオクタノール、2―ブチルデカノール、2―ヘキシルオクタノール、2―ヘキシルデカノール、2―オクチルデカノール、2―ヘキシルドデカノール、2―オクチルドデカノール、2―デシルテトラデカノール、2―ドデシルヘキサデカノール、2―ヘキサデシルオクタデカノール、2―テトラデシルオクタデカノール、2―ヘキサデシルエイコサノール、アリルアルコール、ブテニルアルコール、イソブテニルアルコール、ペンテニルアルコール、イソペンテニルアルコール、ヘキセニルアルコール、ヘプテニルアルコール、オクテニルアルコール、ノネニルアルコール、デセニルアルコール、ウンデセニルアルコール、ドデセニルアルコール、テトラデセニルアルコール、オレイルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール等のアルコール;フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、スチレン化フェノール、p―クミルフェノール、α―ナフトール、β―ナフトール等のフェノールが挙げられる。【0014】ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の2価アルコール、ソルバイド等の2価アルコール;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の2価のフェノール;グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4−ヘキサントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、ペンタメチルグリセリン(2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール)、等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン等4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグレセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;蔗糖等8価アルコール等が挙げられる。【0015】mはモノオールまたはポリオールの価数を表わす。これらのモノオールまたはポリオールの中でも脂肪族1価アルコールが好ましく、特に炭素数6〜24の脂肪族1価アルコールが好ましい。従って、この場合はmは1である。【0016】一般式(1)及び一般式(2)において、(AO)nは、1種類のアルキレンオキサイドの単独又は複数のアルキレンオキシドの共重合によって構成されたポリオキシアルキレン鎖を表わす。こうしたアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキサイド)、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド等が挙げられる。重合度nは0又は1以上の数を表わす。AOで表わされるアルキレンオキサイドの種類及びその重合度nは、本発明の(ポリ)グリセリルエーテルを使用する用途又は性能によって選択される。重合度nがあまりに大きいものはグリセリル基の効果が出にくくなるため、アルキレンオキサイドの重合度nは0〜30が好ましく、0〜20がさらに好ましい。【0017】一般式(2)において、sはグリセリン単位の重合度であり、1以上の数を表わす。本発明の方法で製造が可能な範囲としては、グリセリン単位の重合度sは、1以上10程度までであり、好ましくはsは1〜6、より好ましくは1〜4である。【0018】本発明に使用するアルカリ物質は、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、金属カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸セシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機アルカリ化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等の低級アルコールアルコキシドが上げられる。このうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドが好ましい。なお、無機アルカリ化合物は固体(フレーク状、粒状)でも、液体(水溶液等)でも良い。【0019】本発明において、反応器に前記一般式(1)のアルコール又はフェノールとアルカリ物質を仕込み、次いで1−クロロ−2,3−プロパンジオールを添加して反応させる。アルカリ物質は、1−クロロ−2,3−プロパンジオールに対して1.0〜1.2倍当量使用することが好ましい。【0020】アルコール又はフェノールとアルカリ物質を混合後、そのまま、ここに1−クロロ−2,3−プロパンジオールを添加しても良いが、添加前に、加熱減圧して、アルカリ物質由来の水又は低級アルコールを除去し、アルコール又はフェノールをアルコキシド又はフェノキシドとしてから添加しても良い。この場合、50〜170℃で減圧することが好ましく、80〜150℃がより好ましい。アルコキシド又はフェノキシドとした場合、高粘度となる場合があるので、必要に応じて、イソオクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤やジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒を使用しても良い。【0021】 1−クロロ−2,3−プロパンジオールの反応は発熱反応であるので、滴下又は分割して徐々に添加する。添加温度および反応を完結させるための熟成温度は30〜170℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。温度が低い場合には反応が遅く、温度が高い場合には1−クロロ−2,3−プロパンジオール同士の重合等の副反応が起こる。【0022】炭酸塩以外のアルカリ物質を用いた場合は、前記一般式(1)で表わされるアルコール又はフェノールの水酸基に対して当量の1−クロロ−2,3−プロパンジオールを使用することにより、ほぼs=1のグリセリルエーテルが得られ、アルコール又はフェノールの水酸基に対して当量を越える1−クロロ−2,3−プロパンジオールを使用することによりsが1より大のポリグリセリルエーテルが得られる。この反応比率を変えることによる種々のグリセリン重合度のポリグリセリルエーテルが得られる。【0023】 なお、一般式(2)において、重合度sが2よりも大きいポリグリセリルエーテルを製造する場合には、1−クロロ−2,3−プロパンジオール同士の重合等の副反応を抑えるため、アルカリ物質及び1−クロロ−2,3−プロパンジオールの反応を分割して行なう。アルカリ物質としての炭酸塩は、他のアルカリ物質に比べて反応性が低い。このためアルカリ物質としての炭酸塩を用いた場合は、クロライドはアルコール性の水酸基とはほとんど反応がおこらず、選択的にフェノール性の水酸基とのエーテル化反応が起こる。したがって、アルカリ物質として炭酸塩を用いた場合は、フェノールの水酸基に対して当量以上の1−クロロ−2,3−プロパンジオールを用いた場合でも、ほぼs=1のグリセリルエーテルが得られる。【0024】反応終了後、反応によって生成した塩を、ろ過又は水を添加して分液水洗等を行うことにより除去して、本発明の(ポリ)グリセリルエーテルを得る。生成した(ポリ)グリセリルエーテル中の塩の除去前又は除去後に、必要に応じて、酸又は吸着剤により反応物のpHを中性に調整しても良い。pHの調整に用いる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸や酢酸、クエン酸、乳酸等の低分子量の有機酸が好ましい。また、吸着剤としては、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム又はこれらの複合物が好ましい。【0025】反応によって生成した塩は、ろ過又は水を添加して分液水洗等を行うことにより除去することができる。分液水洗を行なう場合には、水層と油層の分離を良くするため、ヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ブタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤を添加しても良い。このようにして本発明の方法により得られた(ポリ)グリセリルエーテルの有機塩素含量は、好ましくは0.1重量%以下であり、ゼロであることが最も好ましいが、通常は0.01〜0.05重量%程度で使用され、従来の方法で得られたグリセリルエーテルの塩素含量が1程度であるのに比べて非常に少ないものが得られる。【0026】本発明の(ポリ)グリセリルエーテルは、従来法により合成されたグリセリルエーテルと比較し塩素含量が十分低いので、保湿剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、湿潤剤、浸透剤、平滑剤、防錆剤、帯電防止剤、摩擦調整剤等として、化粧品、洗浄剤、フィルムの結露防止剤、農薬乳化剤、繊維油剤、塗料添加剤、合成樹脂添加剤、潤滑油添加剤等に使用できる。特に、潤滑油添加剤としての用途では、炭素数10〜24の脂肪族1価アルコールの(ポリ)グリセリルエーテルが、摩擦低減作用が高いにもかかわらず、従来の塩素含有化合物の潤滑油添加剤に見られるような摩耗が少なく、好適に使用される。【0027】【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。例中の%及びppmは何れも重量基準である。【0028】実施例1:攪拌機、窒素導入管、温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、オレイルアルコール(新日本理化製アンジェコール90N 水酸基価209mgKOH/g)268gと48%水酸化ナトリウム水溶液104.2gを仕込み、100℃で2時間、1.3kPa(10mmHg)で減圧脱水を行った。その後、70℃まで冷却し、系内を70〜100℃に保ちつつ1−クロロ−2,3−プロパンジオール132.6gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた。その後リン酸でpHを7に調整し、トルエン200mLを加えてから、水250mLで2回水洗した。トルエンを除くために減圧下に100℃に加熱し、終了後にろ過してオレイルポリグリセリルエーテル328gを得た。得られたオレイルポリグリセリルエーテルの重合度は1.2の淡黄色の液状物であり、粗収率は92%であった。【0029】実施例2:実施例1と同様の装置に、ラウリルアルコール186gと水酸化カリウム(粉末状)61.6gを仕込み、窒素気流下、70℃で2時間攪拌した。次いで、系内を70〜100℃に保ちつつ1−クロロ−2,3−プロパンジオール110.5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた。以下、実施例1と同様の精製を行ないラウリルグリセリルエーテル214gを得た。得られたラウリルグリセリルエーテルは重合度が1の淡黄色の液状物であり、粗収率は89%であった。【0030】実施例3:実施例1と同様の装置に、オレイルアルコール268gと48%水酸化ナトリウム水溶液183.3gを仕込んだ。100℃で2時間、1.3kPa(10mmHg)で減圧脱水を行った。その後、70℃まで冷却し、系内を70〜100℃に保ちつつ1−クロロ−2,3−プロパンジオール221gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させ、その後、更に48%水酸化ナトリウム水溶液166.7gを加え、100℃で2時間、1.3kPa(10mmHg)で減圧脱水を行った。脱水終了後、70℃まで冷却し、系内を70〜100℃に保ちつつ、再度1−クロロ−2,3−プロパンジオール221gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた。以下、実施例1と同様の精製を行ない、オレイルポリグリセリルエーテル491gを得た。得られたオレイルポリグリセリルエーテルは、重合度4の淡黄色の液状物であり、粗収率は87%であった。【0031】実施例4:実施例1と同様の装置に還流管を取り付け、ノニルフェノール220g、炭酸ナトリウム160g及び溶媒としてアセトン300gを仕込み、加熱してアセトンを還流(約57℃)しながら、1−クロロ−2,3−プロパンジオールを122gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間還流を続け、熟成させた。その後、減圧にしてアセトンを除去し、実施例1と同様の方法で精製を行ない、ノニルフェニルグリセリルエーテル258gを得た。得られたノニルフェニルグリセリルエーテルは重合度が1の淡黄色の液状物であり、粗収率は88%であった。(フェノールとアルキルクロライドの炭酸塩によるエーテル化は選択性が高いので、グリセリルエーテルの理論重合度を1とした。)【0032】実施例5:実施例1と同様の装置に、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物(分子量1000)200gと48%水酸化ナトリウム26.4gを仕込み、70℃で2時間攪拌した。次いで、系内を70〜100℃に保ちつつ、1−クロロ−2,3−プロパンジオールを66.3gを1時間かけて滴下した。以下、実施例1と同様の方法で精製を行ない、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物の末端グリセリルエーテル210gを得た。得られたグリセリルエーテルは重合度が1の淡黄色の液状物であり、粗収率は86%であった。【0033】比較例1:攪拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、オレイルアルコール268gと三フッ化ホウ素(47%エーテル溶液)1gを仕込んだ。系内を70〜80℃に保ちつつエピクロロヒドリン111gを2時間かけて滴下した後、70〜80℃で2時間熟成した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液100gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、70〜80℃で6時間熟成しエポキシ閉環反応を完結させた。水250mLで2回水洗し、生成した塩を除去した後、酢酸300g、水100g、75%リン酸水溶液0.5gを添加し90℃で5時間反応した。反応終了後、減圧して酢酸と水を除去した。次いで、48%水酸化ナトリウム水溶液50g、水150gを加え40℃で2時間処理した後、2層に分離した処理液から水酸化ナトリウム水溶液層を除いた。以下、トルエンを加え、実施例1と同様の精製を行ないオレイルポリグリセリルエーテル275gを得た。得られたオレイルポリグリセリルエーテルは、重合度1.2の淡黄色の液状物であり、粗収率は77%であった。【0034】以上の本発明品(実施例1〜5)及び比較品の(ポリ)グリセリルエーテルについて、以下の方法により水酸基価及び有機塩素含量を測定した。また、水酸基から(ポリ)グリセリルエーテルへの転化率を求めた。【0035】<水酸基価の測定方法>基準油脂分析試験法2.3.6.2 ヒドロキシル価(ピリジン−無水酢酸法)に準拠して水酸基価を測定した。【0036】<有機塩素含量(重量ppm)の測定方法>三菱化学製微量塩素分析装置TS−03型を使用して有機塩素含量を求めた。試料を不活性気流中で熱分解し、気化した後、酸素気流中で燃焼して生成した塩化水素を銀イオンで滴定する。【0037】<(ポリ)グリセリルエーテルへの転化率>測定した水酸基価より下式から、生成物に対しての1−クロロ−2,3−プロパンジオール又はエピクロルヒドリンから(ポリ)グリセリルエーテルへの転化率を求めた。A:原料アルコールの水酸基あたりの分子量B:得られたグリセリルエーテルの水酸基価(mgKOH/g)C:得られたグリセリルエーテルの水酸基あたりの分子量nT:グリセリルエーテルの理論重合度nR:得られたグリセリルエーテルの実測重合度C=56100/BnR=(A−C)/(C−74)転化率=100×nR/nTこれらの測定結果を表1に示す。【0038】【表1】【0039】本発明の方法は、比較例のエピクロルヒドリンを使用する方法に比べて、反応が容易で短時間で完結し、しかも高収率で(ポリ)グリセリルエーテルを得ることができる。また、本発明品の実施例1〜5はいずれも、有機塩素含量が低く、(ポリ)グリセリルエーテルへの転化率も高い。【0040】<潤滑性の評価>本発明品(実施例1〜3)及び比較品の(ポリ)グリセリルエーテルについて、その塩素含量の相違による潤滑性への影響を、高速四球試験機を用いた潤滑性試験により、下記の試験条件での摩耗痕径と摩擦係数で評価した。尚、摩耗痕径は、シェル式高速四球試験機の固定して測定に使用した3球の平均値を採用し、摩擦係数は測定時間の間での平均の摩擦係数を求めた。【0041】(試験条件)試験油 :実施例1〜3又は比較例1の(ポリ)グリセリルエーテルを各5%溶解したパラフィン系鉱物油(40℃動粘度:18.3mm2/s、粘度指数(VI)=126)評価機器:シェル式高速四球試験機測定温度:室温測定時間:30秒回転数 :1500rpm荷 重 :100kg(980N)【0042】【表2】【0043】本発明品を配合した試験油(実施例1〜3)は、摩擦係数が低く摩耗も少ない良好な潤滑性を示した。一方、比較品を配合した試験油(比較例1)は、摩擦係数は低いものの摩耗が大きい。【0044】【発明の効果】本発明の方法によれば、従来の方法に比べて簡単な方法で、安価に、しかも塩素等の含量が低い(ポリ)グリシジルエーテルを収率良く製造することができる。 アルコール又はフェノール、及びアルカリ物質の存在する系内に、1−クロロ−2,3−プロパンジオールを滴下又は複数回に分けて加えることを特徴とする(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法。 アルコール又はフェノールが、下記の一般式(1)[式中、Mはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わし、AOはオキシアルキレン基を表わし、nは0又は1以上の数を表わし、mはMの価数を表す。]で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法。 得られた(ポリ)グリセリルエーテルが、下記の一般式(2)[式中、Mはモノオール又はポリオールから水酸基を除いた残基を表わし、AOはオキシアルキレン基を表わし、nは0又は1以上の数を表わし、sは1以上の数を表わし、mはMの価数を表す。]で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の(ポリ)グリセリルエーテルの製造方法。