タイトル: | 特許公報(B2)_モナコリンKの抽出方法 |
出願番号: | 2000212079 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12P 17/06,C12N 1/14,C12R 1/645 |
廉屋 巧 田邊 伸和 西村 稔 JP 4049975 特許公報(B2) 20071207 2000212079 20000713 モナコリンKの抽出方法 グンゼ株式会社 000001339 廉屋 巧 田邊 伸和 西村 稔 20080220 C12P 17/06 20060101AFI20080131BHJP C12N 1/14 20060101ALI20080131BHJP C12R 1/645 20060101ALN20080131BHJP JPC12P17/06C12N1/14 BC12P17/06C12R1:645C12N1/14 BC12R1:645 C12P 17/06 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JMEDPlus/JST7580/JSTPlus(JDream2) 特開2000−60536(JP,A) LAZAROVA V. et al.,Studies on the extraction and the lactonization of lovastatin in the process of isolation from the fermentation broth of Aspergillus terreus,Pharmazie,1998年,53(10),pp.727-728 1 2002027996 20020129 5 20050608 植原 克典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、コレステロールの低下作用を有するモナコリンKを、これを含む紅麹から効率的に抽出する方法を提供するものである。【0002】【従来の技術】紅麹は穀類にモナスカス属の菌株を繁殖させて得た麹であり、中国、台湾などでは紅酒、老酒、紅腐乳などの醸造原料として利用されており、また、消化を助け、血行を良くする漢方生薬としても古くから用いられている。かかる紅麹のある種の菌がコレステロール低下物質であるモナコリンKを生産することが知られ(特公昭59−25599号公報)、また、紅麹自体にもコレステロール低下作用があることが示されている(特公昭60−44914号公報)ことから、紅麹の上記した作用は主にモナコリンKによるものと考えられる。よって、モナコリンKを紅麹より抽出濃縮したエキスは、紅麹のコレステロール作用を濃縮したものとなり、紅麹以上の作用を有し、食品素材として用いる場合は少量の使用で効果が期待でき、紅麹以上に食品への使用範囲が広がる素材となり得る。【0003】モナコリンKはメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼンに可溶であり、水、ヘキサン、石油エーテルに不溶な物質であることは知られている。よって、紅麹からのモナコリンK抽出に用いる溶媒は、食品としての安全性も考慮した場合、エタノールが最も優れるといえる。しかしながら、単にエタノールを用いても効率良くモナコリンKを得ることができなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる点、ある特定条件によって効率良くモナコリンKを抽出することが可能であることを見出し、その結果、高濃度のモナコリンKを含むエキスを得ることを可能としたものである。【0005】【課題を解決するための手段】しかるに、本発明は抽出溶媒として、エタノール含量が40〜80%(v/v)の範囲内にある含水エタノールを用いることに特徴を有するモナコリンKの抽出方法の提供に関する。【0006】【発明の実施の形態】本発明で用いることができる紅麹は、モナコリンKを含む紅麹であれば如何なるものでも良く、従って、その製造に用いた紅麹菌、麹原料、製造方法(固体培養法、液体培養法)、製造後の処理(熱処理、乾燥、粉末化)等、種類、条件等を問わないが、特に好ましい紅麹を例示するなら、紅麹菌にモナスカス・ピローサス(Monascus pilosus)IFO4520、IFO4480、モナスカス・プビゲレス(Monascus pubigerus)IFO4521、モナスカス・パープレウス(Monascus purpureus)ATCC16385、あるいはモナスカス・エスピー(Monascus sp.)ATCC16370を用い、麹原料に米や胚芽を使用し、無菌的に7日以上静置培養した紅麹が挙げられる。しかしながら、これに限定されるものではない。また、抽出に際し、他の抽出原料、例えば、モナコリンKは含まないが、モナスカス・アンカ(Monascus anka)を麹菌に用い、モナスカス色素を多く含有した紅麹とともに抽出を行ってもよい。【0007】モナコリンKの抽出に用いる溶媒はエタノール含量が40〜80%(v/v)の含水エタノールであり、水にエタノールを加えたり、エタノールに水を加えることにより調整を行なう。また、既に何かのために使用した含水アルコールを回収するなどの方法もある。上記した濃度は、その範囲を下回っても、上回っても共に抽出効率が悪くなるため好ましくない。モナコリンKを含む麹が40〜80%(v/v)の含水エタノールに接触している時間は、1分以上であれば良く、望ましくは15分以上である。かかる点から、全抽出時間中必ずしも40%(v/v)から80%(v/v)のエタノール含量である必要はなく、例えば、エタノールで抽出した後、40%(v/v)から80%(v/v)の含水エタノールで再抽出しても、また、原料に水を添加後、撹拌しながらエタノールを少しずつ加えてエタノール含量を上げ、最終的には80%(v/v)以上としてもよい。即ち、本発明は抽出操作中、何れかの過程において、40%〜80%(v/v)の含水エタノールで処理すれば、目的を達成することが可能である。なお、液体培養物の場合においては、培養物に対し0.67倍から4倍量のエタノールを添加すればよい。即ち、液体培養の場合、基本的には培地全体が水であり、よって、水(培養物)1に対して0.67倍のエタノールを添加すると、液全体はエタノール含量40%(v/v)になり、同様に4倍量のエタノールを添加すると80%(v/v)になる。【0008】抽出時の温度は室温でよいが、40〜80゜Cに加熱することにより効率を上げることができる。即ち、抽出に用いる紅麹全体に、仮に100のMKがあった場合、室温でその回収率が70%であったとすれば、加熱により80%以上が可能となる。また、溶媒の量は特に制限はないが、紅麹が充分に抽出溶媒に浸かることが好ましい。よって、原料に対し5倍量以上の溶媒を加えることが好ましい。さらに、撹拌の有無、液循環の有無などは、管理面、生産性、コスト等を考慮し、適宜の方法を選択すればよい。抽出後の液と残渣との分離方法、抽出液の濃縮方法、抽出液または濃縮液の粉末化方法も通常よく知られている如何なる方法も用いてもよい。以下、具体的に本発明の実施例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されない。【0009】【実施例1】精白米を12時間水に浸漬した後、30分間水切りし、それに浸漬米に対し7%重量%の割合で米胚芽粉末を添加し、121゜C,1時間蒸煮滅菌し、蒸し米を得た。これにモナスカス・ピローサスIFO4520を無菌的に植菌し、水分率を35〜42%に維持しつつ、30゜Cで4日間、続いて25゜Cで3日間、計7日間静置培養した。こうして得られた紅麹を110゜C,20分間の熱処理により菌および酵素を失活させた後、60゜Cで送風乾燥し、粉砕機にて粉末化した。この米紅麹粉末を用いてエタノール含量が異なる含水エタノール7種により抽出試験を実施した。紅麹5gに対し含水エタノールを50ml添加し、室温にてマグネットスターラーで撹拌しながら30分間抽出した。抽出後、抽出液3mlをサンプリングし、遠心分離機にかけ、その上清をメンブランフィルターで濾過し、その濾液のモナコリンK含量を高速液体クロマトグラフィーにかけて計測した。その結果、50%または60%のエタノール含量でモナコリンK濃度が最も高く、その含量は79μg/mlであった。この濃度を100とし、その他の溶媒での濃度比を図1に示す。かかる図より明らかなように、100%エタノールに比べ50%(v/v)および60%(v/v)のエタノール含量ではモナコリンKが2.6倍抽出されていた。【0010】【実施例2】粒状焙煎米胚芽1kgに水を460ml添加し、121゜C,1時間蒸煮滅菌した。これにモナスカス・ピローサスIFO4520を無菌的に植菌し、34゜Cで4日間、続いて23.5゜Cで24日間、計28日間培養した。なお、培養3日目に86mlの補水を行った。培養後、紅麹を60゜Cで送風乾燥し、粒状の乾燥米胚芽紅麹を得た。この紅麹のモナコリンK含量を高速液体クロマトグラフを用いて測定した結果、912mg/100gであった。この粒状紅麹を用いてエタノール含量が異なる含水エタノール8種を用い、抽出試験を実施した。紅麹20gに対し含水エタノールを1リットル添加し、室温にてマグネットスターラーで撹拌しながら30分間抽出した。抽出液と残渣を吸引濾過により分離し、抽出液をエバポレーターにて濃縮し、さらに一晩吸引乾燥した。こうして得られたエキスのモナコリンK含量を測定し、得られたモナコリンKの収率を求めた。その結果を図2に示す。かかる結果より、50%(v/v)エタノール含量での収率が83%で最も高く、これに対し、30%(v/v)エタノール含量では17%、100%エタノールでは僅かに6%であった。【0011】【発明の効果】本発明により、紅麹より効率よくモナコリンKが得られる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1におけるエタノール含量とモナコリンKの相対濃度の関係を示した図。【図2】実施例2における各エタノール含量とモナコリンKの収率の関係を示した図。 モナスカス属に属する菌株を培養して得た紅麹からモナコリンKを抽出する方法であって、抽出溶媒としてエタノール含量が40〜80%(v/v)の含水エタノールを用いて行なうことを特徴とするモナコリンKの抽出方法。