タイトル: | 特許公報(B2)_エマルジョンの製造方法 |
出願番号: | 2000201059 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | B01F 3/08,B01J 13/00,C07C 231/22,C07C 233/05 |
橋本 明彦 奥田 敏行 宇佐見 弘 JP 3740001 特許公報(B2) 20051111 2000201059 20000703 エマルジョンの製造方法 中京油脂株式会社 596000154 後呂 和男 100096840 ▲高▼木 芳之 100097032 橋本 明彦 奥田 敏行 宇佐見 弘 20060125 B01F 3/08 20060101AFI20060105BHJP B01J 13/00 20060101ALI20060105BHJP C07C 231/22 20060101ALI20060105BHJP C07C 233/05 20060101ALI20060105BHJP JPB01F3/08 AB01J13/00 AC07C231/22C07C233/05 B01J 13/00 B01F 3/00 B41M 5/00 C07C233/00 特開平11−128721(JP,A) 特開平01−155941(JP,A) 4 2002018254 20020122 7 20020701 山本 吾一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、水中に分散された脂肪酸アミドの平均粒子径が微細かつ均一であり、安定性が良好なエマルジョンの製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】一般的に、有機物の水中油型エマルジョンを得る方法としては、種々の界面活性剤または保護コロイドを分散剤として用い、油相を水相中でコロイドミルなどの機械力によって粉砕する事によって水中油型エマルジョンを得る湿式粉砕法、または種々の界面活性剤または水溶性高分子などを乳化剤として用い、油相の融解温度以上の水相に融解温度以上の油相をホモジナイザーなどを用いて高剪断力で乳化分散した後、それを徐冷または熱交換器等を用いて冷却する事によって水中油型エマルジョンを得る乳化法が知られている。【0003】しかし、油相として脂肪酸アミドを使用する場合、前者の方法では、脂肪酸アミドの濃度を15重量%以上とすると平均粒子径が1ミクロン以下の安定な分散体を得るために膨大な処理時間が必要となったり、分散粒子の粒子径分布が広いため安定性の悪いエマルジョンしか得られないという問題がある。一方後者の方法においても、脂肪酸アミドの濃度を10重量%以上とすると、脂肪酸アミドの融解温度以上では良好な乳化状態をとるものでも、冷却時に増粘したり液全体がゲル化または固化してしまい、良好なエマルジョン得ることができない。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、分散された脂肪酸アミドの平均粒子径が微細かつ均一であり、安定性が良好な脂肪酸アミドエマルジョンを得ることができるエマルジョンの製造方法を提供することを目的とするものである。【0005】【課題を解決するための手段・作用および効果】 上記目的を解決するためになされた請求項1の発明は、エマルジョンの製造方法であって、脂肪酸アミドを水中でその融解温度以上の温度で剪断力を加えて乳化する第1工程と、この第1工程で生成された融解温度よりも高温のエマルジョンを脂肪酸アミドの融解温度以下の水相中に投入して混合する第2工程とを順に行うところに特徴を有する。【0006】上記請求項1の発明によれば、まず第1工程において高温の水中に溶融した脂肪酸アミドが微細な液滴となって分散したエマルジョンが生成される。これは、第2工程において脂肪酸アミドの融解温度以下の水相中に投入・混合されるから、その温度が急速に低下する。このようにエマルジョンを急冷すると、エマルジョン中の脂肪酸アミドの濃度が高い場合でも、冷却されたエマルジョンが増粘したり、ゲル化または固化してしまうことがなく、微細で均一な平均粒子径の脂肪酸アミドが分散した、良好なエマルジョン得ることができる。またこのエマルジョンは、長時間放置した場合でも粒子同士の凝集・凝結やエマルジョンの増粘が起こることがなく、安定性にも優れる。さらに、第2工程においてはエマルジョンが均一な状態となるように混合すればよいだけであり、第1工程のような強力な剪断力を必要としないので、製造装置および作業が簡単である。第2工程に使用される水相としては、水、水に各種の安定化剤や界面活性剤等の助剤を添加した水溶液、水系エマルジョン等が可能である。【0007】また、上記第2工程において、水相としては、既に得られた脂肪酸アミドエマルジョンを利用することもできる(請求項2の発明)。この場合、第1工程で得られる脂肪酸アミドエマルジョンと同一濃度の脂肪酸アミドエマルジョンを使用すれば、全行程で同一濃度の脂肪酸アミドエマルジョンを扱うことになり、濃度管理が簡単になる。【0008】上記第1工程において、水を大気圧以上の圧力下で加熱してもよい(請求項3の発明)。大気圧以上の雰囲気下では、水を100℃以上に昇温させることが可能であるので、脂肪酸アミドの融解温度が100℃以上の場合でも、水を100℃以上にして脂肪酸アミドを融解温度以上にできるからである。【0009】さらに、上記第2工程における水相の温度は、脂肪酸アミドの融解温度より30℃以上低温であることが望ましい(請求項4の発明)。第1工程で生成された高温のエマルジョンを30℃以上の温度差で急冷すると、より安定的に良好なエマルジョンを得ることができる。【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明をより詳細に説明する。本発明のエマルジョンの製造方法によれば、上述したように、まず第1工程において、脂肪酸アミドを水中でその融解温度以上の温度で剪断力を加えて乳化する。例えば、乳化容器にて脂肪酸アミドの融解温度以上で脂肪酸アミドと水と乳化剤とを混合し、例えばホモジナイザーと称される高圧式乳化分散機で高剪断力を与えることにより、乳化分散を行う。この時、乳化させる脂肪酸アミドの融解温度が100℃を上回る場合には、乳化容器を密閉状態として加圧し、温度を100℃以上に昇温させるとよい。このようにすると、融解した脂肪酸アミドの粒子は微細かつ粒子径が均一な状態で水中に分散され、良好な脂肪酸アミドエマルジョンが調製される。【0011】そして、この第1工程において得られた高温の脂肪酸アミドエマルジョンを、第2工程において、脂肪酸アミドの融解温度より低温に保持された水相内へ徐々に投入して、均一に混合する。このようにすると、水相内に投入された高温のエマルジョンは、低温の水相に取り囲まれて急速に冷却されつつ、間もなく均一に混合される。なお、この時の水相の温度は、脂肪酸アミドの融解温度より30℃以上の低温に保持しておくことが好ましい。このように、脂肪酸アミドの融解温度以上の脂肪酸アミドエマルジョンを急却すると、水中に分散された脂肪酸アミドの粒子が互いに凝集・凝結したり、エマルジョンがゲル化したりすることがなく、平均粒子径が1μm以下の微細かつ均一な脂肪酸アミド粒子が分散した、安定性の良好なエマルジョンを得ることができるのである。【0012】なお、脂肪酸アミドエマルジョンの濃度は、第1工程において調製した高濃度のエマルジョンを第2工程において水または低濃度のエマルジョン等の水相と混合・希釈することにより調整してもよいが、第1工程において所望の濃度のエマルジョンを調製し、予め調製した同一濃度のエマルジョンを冷媒としての水相中に投入するようにしてもよい。後者の方法を採用する場合には、全行程で同一濃度の脂肪酸アミドエマルジョンを扱うことになり、連続的に所望の濃度の脂肪酸アミドエマルジョンが得られるので、生産性がよい。【0013】本発明において水中で分散される脂肪酸アミドの種類は、一般に使用されているものでよい。具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミド類、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド類、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド等の不飽和脂肪族ビスアミド類、m−キシリレンビスステアリン酸アミド等の芳香族系ビスアミド類等が挙げられる。これら脂肪酸アミドは、単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。【0014】なお本発明は、これら中でも融解温度が約85℃〜120℃の範囲であるラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類を使用する場合に特に好適である。【0015】本発明の脂肪酸アミドエマルジョンの製造方法によれば、最終的に得られる冷却後のエマルジョン中の脂肪酸アミドの平均粒子径は、1μm以下である。【0016】本発明において、脂肪酸アミドエマルジョンの濃度は特に限定されないが、好ましくは10〜40重量%である。10重量%以下であると、高温エマルジョンをそのまま冷却するだけで、増粘・固化することなく脂肪酸アミドエマルジョンが得られる。また、40重量%以上の高濃度になると、高温エマルジョンが冷却用水相に十分素早く拡散しないために、凝集物が多くなったり、増粘したりして、良好なエマルジョンが得られない。【0017】また、必要に応じて乳化剤、乳化安定剤、防錆剤、防かび剤、消泡剤等の添加剤を混合してもよい。乳化剤は特に限定されるものでなく、アニオン系、カチオン系、両性系、非イオン系等の界面活性剤を使用することができる。【0018】アニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン等の硫酸エステル類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、スルホコハク酸ジエステル等のスルホン酸エステル類、高級アルコールリン酸エステル類等の燐酸エステルとアルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいはアミン等との塩などが挙げられる。【0019】カチオン系あるいは両性系の界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、塩化アルキルピリジウム塩、あるいはアルキルベタインなどが挙げられる。【0020】非イオン系界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型、あるいはグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリストールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型などが挙げられる。これらの界面活性剤は単独または2種類以上を組み合わせて使用される。【0021】また、乳化安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、でんぷん、ゼラチン、高級アルコール等が挙げられる【0022】これらの添加剤の混合割合は、脂肪酸アミド100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは3重量部〜50重量部である。0.1重量部以下では、安定なエマルジョンを得ることができ難かったり、分散粒子が粗大化し易い傾向がある。また、100重量部以上加えても分散安定性は向上せず、無駄である。【0023】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。<実施例1>圧力容器に、パルミチン酸アミド4000g、ラウリン酸294g、25重量%アンモニア水104g、水11800gを投入し、加圧下にて120℃に加熱後、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で混合した後、更に高圧ホモジナイザー(A.P.V.Gaulin、Inc製)にて均質圧力20MPa下で均質化処理を行い、高温のパルミチン酸アミドエマルジョンを得た。次に冷媒として20℃の水5000gを冷媒槽に入れ、60℃以下になるよう冷却しつつ、冷媒中に上記高温のパルミチン酸アミドエマルジョンを徐々に混合した。その後さらに30℃まで冷却することにより、パルミチン酸アミド濃度20重量%のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの粒子径をレーザー散乱式粒子径測定装置(株式会社堀場製製作所製LA920)にて測定したところ平均粒子径が0.3μmであり、また20℃における粘度は12mPa・sであった。なお、粒子径分布を図1に示す。【0024】<実施例2>圧力容器に、パルミチン酸アミド4000g、パルミチン酸300g、25重量%アンモニア水80g、水7400gを投入し、実施例1と同様の方法で、高温のパルミチン酸アミドエマルジョンを得た。次に冷媒として20℃の水1774gを冷媒槽に入れ、同じく実施例1と同様の方法で冷媒中に上記の高温パルミチン酸アミドエマルジョンを徐々に混合して、30℃の30重量%のパルミチン酸アミドエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの平均粒子径は0.6μmであり、また20℃における粘度が18mPa・sであった。【0025】<実施例3>圧力容器にパルミチン酸アミド3000g、ラウリン酸221g、25重量%アンモニア水76g、水12903gを投入し、実施例1と同様の方法で、高温のパルミチン酸アミドエマルジョンを得た。次に、冷媒として水の代わりに実施例1で得られた20重量%のパルミチン酸アミドエマルジョンを使用し、同じく実施例1と同様の方法で冷媒中に上記の高温パルミチン酸アミドエマルジョンを徐々に混合して、30℃の20重量%のパルミチン酸アミドエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの平均粒子径は0.4μmであり、また20℃における粘度が11mPa・sであった。【0026】<実施例4>パルミチン酸アミドの代わりにステアリン酸アミドを用いること以外は実施例1と同様に行い、ステアリン酸アミド20重量%のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの平均粒子径は0.3μmであり、また20℃における粘度が13mPa・sであった。【0027】<実施例5>パルミチン酸アミドの代わりにベヘン酸アミドを用いること以外は実施例1と同様に行い、ベヘン酸アミド20重量%のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの平均粒子径は0.8μmであり、また20℃における粘度が12mPa・sであった。【0028】<比較例1>実施例1と同様にして高温エマルジョンを得た後、そのまま冷却行ったところ、液全体が固化し、液状のエマルジョンを得ることができなかった。【0029】<比較例2>実施例1と同様にして得た高温エマルジョンを、プレート式熱交換器を通し冷却しながら加圧乳化槽より抜き出したところ、液が増粘しペースト状となり、液状のエマルジョンを得ることが出来なかった。【0030】<比較例3>ステアリン酸アミド200g、ジオクチルスルホ琥珀酸エステルソーダ塩8g、水798gを混合し、1.5mmのガラスビーズを使用したバッチ式ビーズミルにて湿式粉砕を行った。これにより得られた分散体の平均粒子径は2.5μmであった。粒子径分布を、図2に示す。【0031】上記実施例で示したように、本発明の製造方法により調整した脂肪酸アミドのエマルジョンは、いずれのものも分散された脂肪酸アミドの平均粒子径が1μm以下と微細であり、増粘やゲル化あるいは固化が起きることがなかった。これに対し比較例ものでは、脂肪酸アミドの平均粒子径が大きくなってしまったり、エマルジョンが増粘あるいは固化してしまい、良好な状態の脂肪酸アミドエマルジョンを得ることができなかった。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1の粒子径分布を示すグラフ【図2】比較例3の粒子径分布を示すグラフ 脂肪酸アミドを水中でその融解温度以上の温度で剪断力を加えて乳化する第1工程と、この第1工程で生成された融解温度よりも高温のエマルジョンを前記脂肪酸アミドの融解温度以下の水相中に投入して混合する第2工程とを順に行うことを特徴とするエマルジョンの製造方法。 前記第2工程における水相は、脂肪酸アミドエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョンの製造方法。 前記第1工程において、水を大気圧以上の圧力下で加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエマルジョンの製造方法。 前記第2工程における水相の温度は、前記脂肪酸アミドの融解温度より30℃以上低温であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。