生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_大環状ケトンの製造方法
出願番号:2000176913
年次:2007
IPC分類:C07C 45/65,B01J 27/135,B01J 31/02,C07C 49/385,C07C 67/317,C07C 67/343,C07C 69/738,C07C 69/757,C07B 61/00


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田辺 陽 JP 3957954 特許公報(B2) 20070518 2000176913 20000613 大環状ケトンの製造方法 株式会社ジャパンエナジー 304003860 藤吉 一夫 100096367 田辺 陽 20070815 C07C 45/65 20060101AFI20070726BHJP B01J 27/135 20060101ALI20070726BHJP B01J 31/02 20060101ALI20070726BHJP C07C 49/385 20060101ALI20070726BHJP C07C 67/317 20060101ALI20070726BHJP C07C 67/343 20060101ALI20070726BHJP C07C 69/738 20060101ALI20070726BHJP C07C 69/757 20060101ALI20070726BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070726BHJP JPC07C45/65B01J27/135 ZB01J31/02 102ZC07C49/385 EC07C67/317C07C67/343C07C69/738 ZC07C69/757 ZC07B61/00 300 C07C 45/65 C07C 49/413 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平10−175882(JP,A) Journal of the American Oil Chemists’ Society, 71(8), 911-3, 1994 Tetrahedron Letters, 40, 4227-30, 1999 3 2001354609 20011225 7 20061215 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、香料等の製品やその中間体として利用される大環状ケトンを高効率で製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】大環状ケトン、例えば、次の一般式(1)で示されるシベトンは麝香の香気成分として知られ、非常に高価で取引されている。【化1】【0003】このシベトンの製造方法は、これまでに数多くの報告されて(Alvin S. Williams, Synthesis, 1999(10), 1707-1723)おり、例えば、オレイン酸エステルのメタセシスで製造した9-オクタデセン二酸ジエステルを原料とし、クライゼン縮合(ディークマン縮合)により分子内環化させて、α-アルコキシカルボニル大環状ケトンとした後、これを加水分解してα-カルボキシ大環状ケトンとし、次にこのα-カルボキシ大環状ケトンを脱炭酸する(Choo, Yuen et al., J. Am. Oil Chem. Soc. 1994, 71(8), 911-913)方法が知られている。【0004】最近、本発明者らは、四塩化チタン(TiCl4)、トリブチルアミン(Bu3N)および必要に応じてクロロトリメチルシラン(TMSCl)触媒を使用する新しいクライゼン縮合方法を報告し(Y. Tanabe et al., Tetrahedron Letters 1999, 40 4227-4230)、さらにこの方法を用いて、炭素数18〜21の長鎖ジカルボン酸のジエステルから効率的に大環状ケトンを製造する方法を提案した(特願平2000-101905号)。【0005】本発明者は、この新たに見出したクライゼン縮合について、さらに鋭意、研究を進めた結果、驚くべきことに、末端に二重結合を有するアルケン酸のエステルを出発原料とすると、高収率で、両末端にそれぞれ二重結合を有するアルカジエニルのβ-ケト酸エステルを得ることができ、これをメタセシス反応により分子内環化させて大環状ケトンを合成できること、及びこの一連の反応がワンポットで進行することを見出した。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を解決するもので、本発明の目的は、高収率で、しかも効率よく大環状ケトン類を製造する方法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、炭素数9〜12を有するω-アルケン酸のエステルを四塩化チタン又は四塩化ジルコニウム及びトリアルキルアミンの存在下に縮合させてβ-ケト酸エステルとし、これをメタセシス反応により分子内環化してα-アルコキシカルボニル大環状ケトンを製造する方法、及びこの方法で得られたα-アルコキシカルボニル大環状ケトンを、加水分解した後、脱炭酸して大環状ケトンを製造する方法、または前記ω-アルケン酸エステルを四塩化チタン又は四塩化ジルコニウム、トリアルキルアミン及びメタセシス触媒の存在下に反応させて大環状ケトンを製造する方法からなる。【0008】【発明の実施の態様】本発明の反応スキームを次に示す。【化2】【0009】原料である炭素数9〜12を有するω-アルケン酸のエステルは、上記スキーム中の化学式(2)で表されるものであり、この式中のnが6〜9のものを意味している。上記化学式(2)中のRは炭化水素基であれば何ら支障はないが、特には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどの炭素数1〜4の低級アルキル基、ベンジル基、フェネチル基が好適である。【0010】特に好適な炭素数9〜12を有するω-アルケン酸のエステルの具体例としては、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸、11-ドデセン酸等のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ベンジルエステル、フェネチルエステル等を挙げることができる。【0011】また、トリアルキルアミンとしては、炭素数1〜4の低級アルキル基のアミンが好ましく、特には、Bu3Nが好適である。【0012】これらのアルケン酸エステルを原料としてクライゼン縮合(A)を行うには、以下の方法が特に好ましい。(1)アルケン酸エステルとトリアルキルアミンとの溶媒希釈液に、TiCl4(または溶媒希釈液でもよい)を混合する方法。(2)アルケン酸エステルとTiCl4の溶媒希釈液にトリアルキルアミンを混合する方法。(3)ZrCl4の懸濁液に、アルケン酸エステル(または溶媒希釈液でもよい)、次いでトリアルキルアミン(または溶媒希釈液でもよい)を混合する方法。【0013】この場合のトリアルキルアミンの使用量は、原料1モルに対し0.6〜3モル、好ましくは1.5〜2.5モルで、TiCl4またはZrCl4の使用量は、原料1モルに対し0.6〜2.5モル、好ましくは1.2〜2モルである。【0014】溶媒は、本反応に不活性なものならいずれも使用できるが、炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素が良く、特にジクロロメタン、トルエンが好ましい。【0015】溶媒の使用量は原料の種類によって、適宜選択されるが、一般的には、原料の濃度が0.2〜2モル/リットルになるような範囲から選ぶと良い。【0016】反応温度は−20〜80℃、好ましくは−10〜30℃で反応させる。また、反応時間は反応液の濃度、混合速度などを考慮して適宜選定すればよい。【0017】このクライゼン縮合反応によって、一般式(3)に示すような両末端にそれぞれ二重結合を有するω,ω’-アルカジエニルのβ-ケト酸エステル、例えば、9-デセン酸メチルエステルを原料とした場合は、3-オキソ-2-(7-オクテニル)-11-ドデセン酸メチルエステルが生成する。【0018】このようにして得られるβ-ケト酸エステルをメタセシス反応(B)に供し、分子内環化を行う。このメタセシス反応は、有機溶媒中、メタセシス触媒の存在下に行われる。この場合の溶媒は、本反応に不活性なものならいずれも使用できるが、炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素が良く、特にジクロロメタン、トルエンが好ましい。また、溶媒の使用量は、原料の種類によって、適宜選択されるが、一般的には、原料の濃度が0.001〜0.2モル/リットルになるような範囲から選ぶと良い。【0019】メタセシス触媒としては、一般に用いられているMo、W、Re、Ru等、4A〜8族の遷移金属の酸化物やカルボニル化合物等をアルミナやシリカゲル等に担持した触媒や前記遷移金属塩にアルキル金属を共触媒として加えたチーグラー型触媒をはじめ、リングクロージングメタセシス(RCM)に使用可能な触媒(Susan K. Armstrong, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1998, 371-388)等を用いることができるが、特には、グルブス触媒(Grubb’s reagent:(Cy3P)2Cl2Ru=CHPh)を用いることが、分子内環化反応が効率よく進行し、好ましい。この触媒の使用量は、触媒の種類によって異なるため一概には決めることはできないが、グルブス触媒を用いる場合は、原料アルケン酸エステルに対し1〜20モル%の範囲になるように適宜選定すると良い。【0020】反応温度は20〜200℃、好ましくは40〜150℃の範囲で適宜選定し、また、反応時間は反応液の濃度、混合速度などを考慮して適宜選定すればよい。【0021】このメタセシス反応によって、一般式(4)に示すようなα-アルコキシカルボニル大環状ケトン、例えば、3-オキソ-2-(7-オクテニル)-11-ドデセン酸メチルエステルからは、2-メトキシカルボニル-9-シクロヘプタデセノン(α-メトキシカルボニルシベトン)が生成する。【0022】これらの方法で得られるα-アルコキシカルボニル大環状ケトンは、E体とZ体が3:1の混合物であり、これを、公知の方法(例えばChoo, Yuen et al., J. Am. Oil Chem. Soc. 1994, 71(8), 911-913)にしたがって加水分解、脱炭酸することにより、E体とZ体が前記割合の大環状ケトンを得ることができる。【0023】なお、上記のクライゼン縮合反応とメタセシス反応は、ワンポット反応(C)により行うことができる。この場合は、脱α-アルコキシカルボニル化まで反応が進行し、大環状ケトン(5)が得られる。【0024】このワンポット反応(C)は、先ず、前述のクライゼン縮合反応条件で反応を行い、この反応が終了した時点で、この反応液に、新たに所定の有機溶媒を加え、メタセシス触媒、特に好ましくは、グルブス触媒の所定量を添加し、反応温度を上げて、メタセシス反応を行わせる。また、反応の当初から、反応原料、溶媒、四塩化チタン又は四塩化ジルコニウム及びトリアルキルアミン、さらにはメタセシス触媒を加えておき、反応温度をクライゼン縮合条件の低温で反応させ、ついで、メタセシス反応条件の高温で反応させる方法で行っても特に支障はない。【0025】以下に、具体例を挙げ、本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。【0026】【実施例1】シベトン0〜5℃で9-デセン酸メチルエステル(1.84g, 10.0mmol)とBu3N(3.34g, 18.0mmol)のトルエン(16.0ml)溶液を撹拌している中に、TiCl4(1.65ml, 15.0mmol)のトルエン(4.0ml)溶液を滴下した。さらに、同温度で1時間間撹拌した。反応混合物に水(20ml)を加え撹拌後、エーテル抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル=40/1)により精製し、3-オキソ-2-(7-オクテニル)-11-ドデセン酸メチルエステル(1.43g, 93%)を得た。Pale yellow oil.1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.21-1.43 (16H, m), 1.51-1.63 (2H, m), 1.78-1.89 (2H, m), 1.99-2.07 (4H, m), 2.39-2.60, (2H, m), 3.43 (0.97H, t, J = 7.4 Hz; keto form), 3.71 (2.91H, s; keto form), 3.75 (0.09H, s; enol form), 4.90-5.03 (4H, m), 5.72-5.87 (2H, m).13C-NMR (75 MHz, CDCl3) δ 23.37, 27.37, 28.19, 28.70, 28.78, 28.83, 28.91, 29.11, 29.13, 33.62, 33.67, 41.77, 52.14, 58.94, 114.14, 114.18, 138.89, 138.96, 170.34, 205.27.【0027】次に、グルブス触媒(25mg, 0.03mmol)のトルエン(1.0ml)溶液を、110℃の3-オキソ-2-(7-オクテニル)-11-ドデセン酸メチルエステル(101mg, 0.3mmol)のトルエン(79ml)溶液に数分間で滴下し、2時間攪拌反応させた。溶媒を減圧留去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1→20/1)により精製し、2-メトキシカルボニル-9-シクロヘプタデセノン(78mg, 84%;E:Z=ca. 3:1)を得た。Pale yellow oil ; E : Z = ca. 3 :1.1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ 1.14-1.45 (16H, m), 1.51-1.71 (2H, m), 1.73-2.11 (6H, m), 2.45-2.56 (2H, m), 3.49 (0.25H, dd, J = 9.0 Hz, J = 5.4 Hz; Z form), 3.51 (0.75H, dd, J = 8.7 Hz, J = 6.2 Hz;E form), 3.70 (3H, s), 5.25-5.39 (2H, m).13C-NMR (100 MHz, CDCl3) E-form; δ 23.40, 27.19, 27.37, 27.41, 27.84, 28.30, 28.40, 28.60, 28.70,28.84, 31.84, 41.43, 52.20, 58.35, 130.85, 131.08, 170.16, 206.73. Z form; δ 23.35, 26.58, 26.79, 27.05, 27.96, 28.00, 28.08, 28.15, 28.35,28.45, 28.98, 29.01, 41.54, 52.24, 58.42, 130.07, 130.15, 170.24, 206.36.【0028】上記で得た2-メトキシカルボニル-9-シクロヘプタデセノン(247mg, 0.8mmol)を5%NaOH水溶液-MeOH-THF(6.5ml-13ml-6.5ml)混合液に加え、70℃で5時間撹拌した。0℃に冷却後、10%硫酸水溶液を微酸性になるまで加え、10分環流させた。【0029】溶媒を減圧留去した後、エーテル抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル=30/1→20/1)により精製し、シベトン(190mg, 95%;E:Z = ca. 3:1)を得た。Colorless oil ; E : Z = ca. 3 :1.1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.16-1.41 (16H, m), 1.53-1.67 (4H, m), 1.95-2.07 (4H, m), 2.37 (1.5H, t, J = 7.1 Hz; E form), 2.40 (0.5H, t, J = 6.7 Hz; Z form), 5.25-5.39 (2H, m).13C-NMR (100 MHz, CDCl3) E-form; δ 23.98, 27.38, 28.32, 28.74, 28.79, 31.91, 42.45, 130.93, 213.13. Z-form;δ 23.83, 26.66, 28.10, 28.18, 28.57, 29.00, 42.41, 130.12, 212.50.【0030】【実施例2】シベトン0〜5℃で9-デセン酸メチルエステル(111mg, 0.6mmol)とBu3N(200mg, 1.08mmol)のトルエン(2.6ml)溶液を撹拌している中に、TiCl4のトルエン溶液(1.0M, 0.90ml, 0.9mmol)を滴下した。トルエン(76ml)を加えた後、さらに同温度で 1時間間撹拌した。次に、この溶液を110℃に昇温し、グルブス触媒(49mg, 0.06mmol)のトルエン(0.5ml)溶液を、数分間で滴下し、TLCでモニターしながら8時間攪拌反応させた。水(20ml)を加え、溶媒を減圧留去した後、エーテル抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮した粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル=30/1→20/1)により精製し、シベトン(36mg, 48%)を得た。【0031】【実施例3】3-オキソ-2-(7-オクテニル)-11-ドデセン酸メチルエステルアルゴン気流下、0〜5℃で、ZrCl4(350mg, 1.5mmol)のトルエン懸濁液(1.2ml)に methyl 9-decenoate(184mg, 1.0mmol)のトルエン溶液(0.4ml)、次いで Bu3N(334mg, 1.8mmol)のトルエン溶液(0.4ml)を加えた。さらに、同温度で、1時間撹拌した。反応混合液に水を加え撹拌後、エーテル抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン / エーテル = 40 / 1 → 20 / 1)により精製し、3-オキソ-2-(7-オクテニル)-11-ドデセン酸メチルエステル(138mg, 82%)を得た。【0032】【発明の効果】本発明は、ω-アルケン酸エステルを四塩化チタン等とトリアルキルアミンの存在下に縮合させ、これをメタセシス反応により分子内環化させるようにしたため、高収率で、しかも効率よく大環状ケトン類を製造できるという格別の効果を奏する。 炭素数9〜12を有するω-アルケン酸のエステルを四塩化チタン又は四塩化ジルコニウム及びトリアルキルアミンの存在下に縮合させてβ-ケト酸エステルとし、これをメタセシス反応により分子内環化することからなるα-アルコキシカルボニル大環状ケトンの製造方法。 上記請求項1に記載の方法において得られるα-アルコキシカルボニル大環状ケトンを、加水分解した後、脱炭酸することからなる大環状ケトンの製造方法。 炭素数9〜12を有するω-アルケン酸のエステルを四塩化チタン又は四塩化ジルコニウム、トリアルキルアミン及びメタセシス触媒の存在下に反応させることからなる大環状ケトンの製造方法。


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