生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_シクロペンタノンの製造方法
出願番号:2000161254
年次:2010
IPC分類:C07C 45/29,C07C 49/395,B01J 23/72,C07B 61/00


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三木 英了 太田 玄一 藤澤 浩 JP 4453790 特許公報(B2) 20100212 2000161254 20000530 シクロペンタノンの製造方法 日本ゼオン株式会社 000229117 三木 英了 太田 玄一 藤澤 浩 20100421 C07C 45/29 20060101AFI20100401BHJP C07C 49/395 20060101ALI20100401BHJP B01J 23/72 20060101ALN20100401BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100401BHJP JPC07C45/29C07C49/395B01J23/72 ZC07B61/00 300 C07C 45/29 C07C 49/395 B01J 23/72 CA(STN) 国際公開第99/032224(WO,A1) 国際公開第98/000233(WO,A1) 特開平10−296093(JP,A) 1 2001335527 20011204 8 20060307 品川 陽子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はシクロペンタノンの製造方法に関する。さらに詳しくは、活性成分として銅を含む触媒の存在下に、シクロペンタノールの気相脱水素反応を行い、シクロペンタノンを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、銅を含む触媒の存在下にシクロヘキサノールやシクロペンタノールを脱水素して、対応するシクロヘキサノンやシクロペンタノンを得る方法は公知である。【0003】例えば、特開昭56−20541号公報、特開昭58−157741号公報には、シクロヘキサノールを脱水素してシクロヘキサノンを製造する方法において、触媒として銅−クロム系酸化合物を使用することが提案されている。特開昭61−282334号公報には、酸化銅および酸化亜鉛を含有する触媒を用いてシクロヘキサノールをシクロヘキサンノンへ転化する方法が提案されている。【0004】また、特開昭58−203932号公報には、シクロペンタノールを銅系脱水素触媒の存在下に高温で脱水素することによりシクロペンタノンを製造するに際し、n−ペンタナールの共存下にシクロペンタノールを脱水素せしめたのち、反応生成物を蒸留精製してn−ペンタナールを塔頂部から回収し、その一部を反応系に循環する一方、シクロペンタノンを含む塔底成分を再度蒸留してシクロペンタノンを塔頂成分として収得するシクロペンタノンの製造方法が記載されている。【0005】さらに、特開昭59−7129号公報には、シクロペンタノールを銅系脱水素触媒の存在下に高温で脱水素することによりシクロペンタノンを製造するに際し、炭素数4以下または7以上の1級アルコールおよびアルデヒドの共存下にシクロペンタノールを脱水素するシクロペンタノンの製造方法が開示されている。【0006】ところで、銅−クロム触媒、銅−亜鉛触媒に代表されるような活性成分として銅を含む触媒は、安価で高活性であるという利点を有している。しかしながら、シクロヘキサノンやシクロペンタンの製造に適用すると、概して副生成物が生成しやすく、反応選択性が低いという問題点があった。【0007】また、活性成分として銅を含む触媒をシクロペンタノンの製造に用いた場合には、触媒活性の持続性に問題があった。そこで前記特開昭58―203932号公報や前記特開昭59−7129号公報の製造方法では、反応系に別種のアルコールやアルデヒドを共存させて、触媒活性の持続性を改良している。しかしながら、かかる方法では製造プロセスが複雑になるという欠点があった。【0008】【発明が解決しようとする課題】従来技術の上記のような問題点に鑑み、本発明の目的は、活性成分として銅を含む触媒を用い、シクロペンタノールから高い反応選択率で、しかも簡単なプロセスで工業的有利にシクロペンタノンを製造する方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成すべく、活性成分として銅を含む触媒の存在下に、シクロペンタノールを気相脱水素反応してシクロペンタノンを製造する方法において、触媒の性状と反応成績の関係について鋭意検討した結果、触媒に含有される酸化銅または銅の結晶粒径、および触媒の比表面積がシクロペンタノンの選択率に大きく関与することを見出した。また、酸化銅または銅の結晶粒径、および触媒の比表面積を特定の範囲で組合わせることにより、触媒が失活することなく、極めて効率よくシクロペンタノンを製造できることを見出して、本発明を完成するに到った。【0010】 かくして、本発明によれば、活性成分として銅を含む触媒の存在下にシクロペンタノールを気相脱水素反応してシクロペンタノンを製造する方法において、前記触媒として、含有される酸化銅または銅の結晶粒径が0.13nm以下であり、且つ比表面積が15m2/g以上である触媒を用い、気相脱水素反応の前に触媒の還元処理を行わないことを特徴とするシクロペンタノンの製造方法が提供される。【0011】【発明の実施の形態】(原料のシクロペンタノールおよび希釈剤)本発明において、原料として使用するシクロペンタノールは、沸点139〜140℃の公知物質である。シクロペンタノールの製造方法は特に限定されないが、例えば、シクロペンテンの水和反応により得られたシクロペンタノールを使用することができる。【0012】シクロペンタノールは単独で使用しても、脱水素反応に支障をきたさない希釈剤、すなわち不活性ガスおよび/または不活性溶媒で希釈して使用してもよい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などが挙げられるが、窒素、ヘリウムなどが好ましい。不活性溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族アルコール、芳香族炭化水素、芳香族エーテルなどが挙げられるが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが好ましい。【0013】希釈剤として用いる脂肪族炭化水素は特に限定されないが、通常、炭素数1〜15、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは炭素数5〜8の脂肪族炭化水素である。その具体例としてはn−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロオクタンなどが挙げられる。【0014】希釈剤として用いる芳香族炭化水素は特に限定されないが、通常、80〜200℃の沸点を有するものである。また、単環の芳香族炭化水素であることが好ましい。その具体例としては、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン(プソイドクメン)、1,2,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)などが挙げられる。これらの中ではベンゼン、トルエン、キシレンなどが好ましく、トルエンがより好ましい。【0015】かかる希釈剤の使用量は特に限定されない。不活性ガスの使用量は、通常、シクロペンタノール1モルに対して0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モル、より好ましくは0.5〜5モルである。また、不活性溶媒の使用量は、通常、シクロペンタノール100重量部に対して5〜3000重量部、好ましくは10〜2000重量部、より好ましくは20〜1000重量部である。希釈剤は単独で用いても、任意の2種以上を併用してもよい。【0016】原料のシクロペンタノールを気化させる方法は特に限定されない。工業的に通常用いられる気化装置を利用すればよい。また、希釈剤を使用する場合は、シクロペンタノールを気化させる前に混合してもよいし、シクロペンタノールを予め気化させた後に混合してもよい。【0017】 (銅を含む触媒)本発明に用いる触媒は必須元素として銅を含むものである。触媒に含有される酸化銅または銅の結晶粒径が0.13nm以下(=1.3Å以下)であり、且つ触媒の比表面積が15m2/g以上であることを特徴とする。銅の酸化還元状態は特に限定されないが、後述する気相脱水素反応に触媒を使用する前に、還元処理を行なわない。すなわち、必須元素である銅は、酸化銅として反応に用いる。【0018】本明細書の文脈において「結晶粒径」とは、触媒の粉末をX線回折して求められる回折線幅をもとにデバイ・シェラー式で算出した結晶粒径をいう。「比表面積」とは、BET法により測定した触媒1g当りの表面積をいう。【0019】また、「酸化銅または銅の結晶粒径が0.13nm以下」とは、反応開始前、反応中、反応終了後のいずれにおいても、触媒に含まれる酸化銅または銅の結晶粒径が0.13nm以下であることを意味する。すなわち、前述したように触媒は還元処理することなく使用するのが好ましいので、必須元素としての銅は酸化銅の形で反応に供されるが、この酸化銅の結晶粒径が0.13nm以下であることを意味する。また、本発明の反応においては、反応系内に水素が副生し、酸化銅が水素還元されて徐々に銅に変化するが、このようにして生成する銅の結晶粒径も0.13nm以下であることを意味する。【0020】本発明に用いる触媒は、通常、銅を15重量%以上含むものであるが、銅のほかに亜鉛、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、鉛、錫、モリブデンやアルカリ金属、アルカリ土類金属などの助触媒作用を示す金属元素を含んでいてもよい。これらの金属元素は、金属単体として使用しても、金属酸化物として使用してもよい。シクロペンタノンの選択率を考慮すると、銅と併用する金属元素としては亜鉛、クロムなどが好ましく、亜鉛がより好ましい。【0021】触媒の調製法は特に限定されず、例えば、蒸発乾固法や共沈法、混練法、含浸法、ラネー合金展開法、金属微粉末焼結法などを採用することができる。また、触媒の形状は特に制限を受けるものではなく、触媒調製過程の適当な段階で粉末状としたり、打錠、押出し、転動など公知の方法に従って成形して使用することができる。【0022】触媒はそのまま使用してもよいし、公知の担体に担持して使用することもできる。担体としては、目的物であるシクロペンタノンの自己アルドール縮合(副反応)に触媒活性を示さない担体が好ましく、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、珪藻土、軽石、珪酸アルミニウム、活性炭、炭素質担体などが挙げられる。【0023】触媒の粒径は、後述する反応管の内径等によって適宜選択すればよいが、平均粒径は1mm〜40mmが好ましく、2mm〜20mmがより好ましい。【0024】(気相脱水素反応)本発明の反応は、原料シクロペンタノール中の水酸基を、目的物シクロペンタノン中のカルボニル基に変換する脱水素反応である。【0025】反応温度は特に限定されないが、通常140℃〜450℃の範囲であり、好ましくは160℃〜300℃である。反応温度が過度に低いと、十分な触媒活性が得られなかったり、原料のシクロペンタノールが反応管内で凝縮するおそれがある。一方、反応温度が過度に高いと、触媒活性成分である銅のシンタリングによる結晶成長が促進されて、シクロペンタノンの選択率が低下したり、触媒寿命が著しく低下する。【0026】反応圧力は特に限定されず、減圧から加圧まで広範囲の圧力を選択できるが、0〜0.3MPaが好ましい。反応圧力が過度に高いと、反応の平衡面で不利となるため、十分に高いシクロペンタノール転化率が得られない。【0027】本反応は気相回分(バッチ)反応、または原料を連続的に反応器へ供給し、反応生成物を連続的に反応器から抜出す気相流通反応が採用されるが、気相流通反応が好ましい。触媒床は固定床式、流動床式のいずれであってもよいが、固定床式が好ましい。使用する反応器は、その形状や材質によって限定されず、回分反応の場合は耐圧反応器であり、流通反応の場合は直列に連結した1個またはそれ以上の反応器、例えば多管式固定床流通反応器である。【0028】本反応を固定床流通気相反応で行う場合、反応管の内径は特に制限を受けないが、好ましくは6mm〜100mm、より好ましくは10mm〜70mmである。また、反応管の長さは、好ましくは0.1m〜10m、より好ましくは0.3m〜7mである。【0029】反応管内における原料シクロペンタノールの液空間速度(供給した原料の1時間当りの総流量(液容量基準)を触媒の充填容積(空筒基準)で除した値。以下、LHSVという。)は特に限定されないが、通常0.5hr―1〜200hr―1、好ましくは1.5hr―1〜50hr―1の範囲である。LHSVが過度に大きいと、十分に高いシクロペンタノール転化率が得られない。LHSVが過度に小さいと、生産効率が低下する。【0030】反応生成物は冷却して捕集し、蒸留などの通常の精製方法によって、シクロペンタノンを単離することができる。このようにして製造されるシクロペンタノンはジャスミン系香料などの製造原料として有用である。【0031】【実施例】以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、実施例中の%は、特に断りのない限りモル基準である。【0032】実施例および比較例中の反応成績を示すシクロペンタノールの転化率(%)とシクロペンタノンの選択率(%)および収率(%)は、反応で得られた凝縮液(粗生成物)をガスクロマトグラフィーで分析して求めた組成比に基づき、次式により算出した。【0033】シクロペンタールの転化率(%)=[1−(反応管出口におけるシクロペンタノールの流量(モル/分))÷(導入したシクロペンタノールの流量(モル/分))]×100シクロペンタノンの選択率(%)=(反応管出口のシクロペンタノンの流量(モル/分))÷[(導入したシクロペンタノールの流量(モル/分))−(反応管出口におけるシクロペンタノールの流量(モル/分))]×100シクロペンタノンの収率(%)=(上記転化率)×(上記選択率)÷100【0034】実施例1 シクロペンタノールの脱水素反応および触媒の分析(脱水素反応)外径3.18mmのステンレス製熱電対保護管を断面中央に装備したステンレス製反応管(内径23mm、長さ400mm)に、銅−亜鉛系触媒(酸化銅47.9重量%、酸化亜鉛44.0%、グラファイト8.1%を含有する直径6mm長さ5.8mmの円柱状ペレット)を40.7ml充填し、電熱炉で190℃に加温した。触媒の還元処理を行うことなく、この反応管にシクロペンタノール(純度99.2%)をLHSV=1.6hr―1の速度で供給し、反応管出口圧力を常圧に保って10時間連続反応を行なった。反応管から流出するガスを冷却捕集し、凝縮液(粗生成物)を得た。連続反応を開始して10時間後、すなわち反応停止直前に採取した凝縮液をガスクロマトグラフィー分析して求めた反応成績を表1に示す。【0035】(触媒の分析)上記の反応に使用する前および使用した後の触媒を粉末にして、触媒に含まれる酸化銅(使用前)または銅(使用後)の結晶をX線回折装置(理学ロータフレックス社製)で分析した。その回折線幅をもとにデバイ・シェラー式で算出した酸化銅または銅の結晶粒径を表1に示す。また、反応に使用する前、使用した後の触媒の比表面積をBET法により測定した結果を表1に示す。【0036】実施例2 シクロペンタノールの脱水素反応および触媒の分析実施例1と同じ反応管に銅−亜鉛系触媒(酸化銅47.9重量%、酸化亜鉛44.0%、グラファイト8.1%を含有する直径3mm長さ3mmの円柱状ペレット)を32.5ml充填し、反応管を電熱炉で200℃に加温した。触媒の還元処理を行うことなく、シクロペンタノール(純度:99.2%)をLHSV=4.8hr―1の速度で反応管に供給し、300時間の連続反応を行なった。反応開始55時間後および300時間後(反応停止直前)の反応成績を表1に示す。また、実施例1と同様に触媒を分析した結果を表1に示す。【0037】比較例1 触媒の還元、シクロペンタノールの脱水素反応および触媒の分析(触媒の還元)実施例1と同じ反応管と触媒を用いた。電熱炉で反応管を140℃に加温し、ガス空間速度(供給ガスの1時間当りの総流量(ガス容積基準)を触媒の充填容積(空筒基準)で除した値)=560hr−1で、窒素と水素の混合ガスを供給した。混合ガスの初期水素濃度は10体積%とし、反応管の内温が200℃を越えないように水素濃度および加熱温度を徐々に上昇させた。その後、水素ガスのみを供給して180℃で30分間、触媒の水素還元を行なった。【0038】(脱水素反応および触媒の分析)次に反応管を電熱炉で190℃に加熱した。シクロペンタノール(純度:99.2%)をLHSV=1.6hr―1の速度で供給し、実施例1と同様に10時間連続反応を行なった。反応開始10時間後の反応成績および触媒の分析結果を表1に示す。【0039】【表1】【0040】表1において、「CPL」はシクロペンタノールを、「CPN」はシクロペンタノンを指す。「使用前」および「使用後」の表示は、触媒を気相脱水素反応に使用する前および使用した後という意味である。但し、比較例1の欄の「使用前」とは、前記した触媒の水素還元処理のみを行った触媒のことである。表1の「結晶粒径」の欄において、実施例1と実施例2の「使用前」の数値は酸化銅についてX線回折分析した結果である。また実施例1、実施例2および比較例1の「使用後」、並びに比較例1の「使用後」は、銅についてX線回折分析した結果である。【0041】表1に示されるように、実施例1〜2の触媒は使用前、使用後の酸化銅または銅の結晶粒径が0.13nm以下であり、比表面積は使用前、使用後ともに15m2/g以上である。そして、実施例1〜2の反応は、高いシクロペンタノン選択率を維持したまま、長時間にわたって安定的に目的物シクロペンタノンを生成している。一方、水素還元処理を施した比較例1の触媒は、実施例1の触媒と比べて比表面積が小さくなり、結晶粒径が大きくなっている。そして、反応のシクロペンタノン選択率が著しく低下している。【0042】【発明の効果】本発明の方法は、原料のシクロペンタノールから高い反応選択率で、しかも簡単なプロセスで工業的有利にシクロペンタノンを製造できるという効果を奏する。 活性成分として銅を含む触媒の存在下に、シクロペンタノールを気相脱水素反応してシクロペンタノンを製造する方法において、前記触媒として、含有される酸化銅または銅の結晶粒径が0.13nm以下であり、且つ比表面積が15m2/g以上である触媒を用い、気相脱水素反応の前に触媒の還元処理を行わないことを特徴とするシクロペンタノンの製造方法。


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