タイトル: | 特許公報(B2)_細胞表面に存在する抗原に対するモノクローナル抗体融合蛋白質及びその製造方法 |
出願番号: | 2000158575 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 15/09,C07K 14/00,C07K 16/28,C07K 19/00,C12P 21/02,C12P 21/08 |
清水 信義 高柳 淳 JP 4669981 特許公報(B2) 20110128 2000158575 20000529 細胞表面に存在する抗原に対するモノクローナル抗体融合蛋白質及びその製造方法 学校法人慶應義塾 899000079 田村 爾 100116687 杉村 純子 100098383 清水 信義 高柳 淳 20110413 C12N 15/09 20060101AFI20110324BHJP C07K 14/00 20060101ALI20110324BHJP C07K 16/28 20060101ALI20110324BHJP C07K 19/00 20060101ALI20110324BHJP C12P 21/02 20060101ALI20110324BHJP C12P 21/08 20060101ALI20110324BHJP JPC12N15/00 AC07K14/00C07K16/28C07K19/00C12P21/02 CC12P21/08 C12N 15/00-15/90 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 臨床免疫, (2000.04.25), 33, [4], p.469-474 臨床科学, (1986), 22, [7], p.850-859 J. Mol. Biol., (1992), 224, [2], p.487-499 Immunol. Today, (1993), 14, [6], p.243-246 11 2001333780 20011204 19 20070405 柴原 直司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規の遺伝子キャリアーであるヒト型一本鎖イムノポーターモノクローナル抗体蛋白質融合蛋白質及び当該融合蛋白質とDNA の複合体に関する。【0002】【従来の技術】現在、遺伝子治療のための遺伝子キャリアーとして実用化されているのは組換えウィルスベクターや合成リポソームである。しかし、ウィルスベクターは、遺伝子導入効率は高いものの、細胞特異性が低いこと、免疫原性の可能性があるなどの欠点がある。また、リポソーム法も細胞特異性が低い欠点がある。このため臨床治験では限られた効果しか報告されていない。遺伝子治療の潜在的な能力を引き出すためにはこれらベクターの欠点を克服しなければならない。【0003】近年、そのような欠点を克服することが可能であり、正確に癌細胞を標的として捕らえることができる癌の化学療法の開発が強く望まれている。その目的のために、今日では、トランスフェリンレセプター、神経増殖因子レセプターなどのレセプターだけでなく、乳癌細胞、前立腺癌細胞など種々の癌細胞に対するモノクローナル抗体も、種々のタンパクトキシンに結合されるイムノトキシンとして使用されている。扁平上皮癌は上皮細胞増殖因子(epidermal growth factor:EGF )レセプターを過剰に産生し、生体内での増殖が極めて速い。また細胞表面のEGF レセプターは抗体と結合して共に嵌入されることが知られているので、EGFレセプターは扁平上皮癌に対する療法のための優れた標的と考えられる。【0004】上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)は細胞表面レセプターの一つであり、上皮細胞の表面に局在していることが判明している。一方、EGF については、その生理学的役割が、歯の発育、胃、肺の発達などにおいて広範に研究されている。EGF は、特異的な細胞表面のレセプターと相互作用して、生体内および生体外において、種々の細胞の増殖を刺激している。そのEGF レセプターは、内在性タンパクチロシンキナーゼ活性を持つ1186個のアミノ酸からなる170,000 ダルトンの膜貫通性グリコプロテインである。このEGF レセプターの発現は、増殖中の細胞に限定され、その発現は細胞が分化し、増殖を停止したときに終了する。またEGF の発現は、増殖中の細胞が腺細胞に分化した後に起こる。更に、腫瘍の中心部の末梢細胞では、DNA 合成が盛んに行われていて、その細胞が急激に増殖している。従って、EGF レセプターの発現と悪性腫瘍細胞の生育とは直接的な因果関係があるといえる。【0005】EGF レセプターに対するモノクローナル抗体(以下、「抗EGF レセプターモノクローナル抗体」ともいう)は、主に、EGF レセプターを過剰産生する扁平上皮癌の細胞において過剰産生される低親和性のEGF レセプターと免疫反応をする。本発明者らは、EGF レセプターに対するモノクローナル抗体を、60S リポゾーム不活化蛋白質であるゲロニンに結合させたものを既に報告している(Hirota,N.,et al.;CANCER RESEARCH;49,7106-7109,Dec.15,1989 )。このモノクローナル抗体−ゲロニン複合体は、EGF レセプターの数に比例して細胞表面に結合する。この結合体は、細胞内に嵌入し、蛋白質合成を阻害し、EGF レセプターを過剰産生する癌細胞を死滅させることができる。更に、この結合体は、通常のヒト繊維芽細胞に対して僅かに細胞毒性を示すが、EGF レセプターが欠失している小細胞肺癌細胞とマウス繊維芽細胞を死滅させることはない。これに対して、遊離のゲロニンおよびこれらの混合物では、EGF レセプターを過剰産生する細胞を死滅させることはなかった。これらの結果から、このモノクローナル抗体−ゲロニン結合体は、EGF レセプターを過剰産生する扁平上皮癌に対する標的療法に使用できることを示唆した。【0006】一方、本発明者らはEGF レセプターを認識するモノクローナル抗体と、扁平上皮癌に対する抗癌剤であるペプロマイシンとを結合させた結合体も報告している(Osaku,M,.et al.;ANTICANCER RESEARCH,11;1951-1956,1991 )。この結合体は、PEP 単独よりも低濃度で、EGF レセプターを過剰産生する扁平上皮癌のA431細胞を死滅させる。また、この結合体は、EGF レセプターが扁平上皮癌における多くの症例で過剰産生されていることから、EGF レセプターを利用する処置のための有用な武器となりうると報告した。【0007】上述したように、抗EGF レセプターモノクローナル抗体と不活化蛋白質や抗癌剤との結合体が作製され、臨床での効果が期待されている。しかしながら、癌という病気の多様性を考慮すると、多種多様な癌療法を開発することも強く望まれているのが現状である。【0008】かかる要請に応えて、本発明者は、EGF レセプター媒介エンドサイトーシスによって、遺伝子と一緒に内部移行されるモノクローナル抗体を利用する新規なジーンデリバリーシステムを完成した。このモノクローナル抗体を、癌の遺伝子治療へのジーンデリバリーシステムに応用する取り組みを提案した。つまり、本発明者は特開平7−216000に係る発明において、EGF レセプターに対するモノクローナル抗体と、ポリリジンとをジスルフィド結合を介して結合させて得られた結合体をジーンデリバリーシステムに利用することを提案している。【0009】しかしながら、特開平7−216000に係る発明において提案された結合体は、トランスフェクションの効率があまり高くなくまた安定性も高いとはいえない。そのために、トランスフェクションの効率が高く、より安定性の優れた結合体が望まれた。そこで、本発明者は特開平10−84959において、EGF レセプターに対するモノクローナル抗体のFab 断片をポリリジンと非分解性のスペーサーで結合させることにより、より高いトランスフェクション活性とより一層安定した結合体を得た。そしてこの結合体と遺伝子と結合させた複合体が、該レセプターを過剰生産する癌細胞を標的とするジーンデリバリーシステムを構築することを示した。【0010】この特開平10−84959に係る発明においては、抗体の種としてはマウスモノクローナル抗体を化学修飾して用いているため、異種動物に由来する事による免疫反応のために臨床応用するには至らなかった。また、DNA 結合部としての荷電性アミノ酸であるリジンと化学修飾して結合させて作製したモノクローナル抗体であるために、安定して大量生産する事には困難があった。【0011】【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者の課題は、上記ジーンデリバリーシステムであるモノクローナル抗体/DNA 複合体(イムノジーン)を実用に供するために改良を行う事にある。具体的には、免疫原性の問題を解決する事と、DNA 結合ドメインの改良を行うことにより大量生産を可能にすることにある。【0012】【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、本発明者はイムノジーン法の以下の改良を行った。まず、DNA 結合ドメインの設計・培養条件・精製法に関する幾多の技術的課題を解決し、抗体分子の化学的修飾を必要としない一本鎖抗体を利用した「組換えイムノジーン法」による遺伝子導入に成功した。【0013】本発明のイムノポーターは、特開平10−84959に係る発明と比較して、モノクローナル抗体の一本鎖抗体を作製した後にアミノ酸テイルをコードする遺伝子を付加し、細菌内で発現させた組み換え蛋白質であるという特徴を有する。通常の抗体分子は重鎖(H 鎖)と軽鎖(L 鎖)からなる二本鎖の蛋白質であり、抗体結合部位である可変部分が複数ある。ここで一本鎖抗体とは、抗体の可変部だけを取り出してリンカーで結合し、一本鎖の蛋白質が抗体としての機能を有するように改変した抗体蛋白質のことである。この様な抗体蛋白質の一本鎖抗体をコードする遺伝子を作製することにより、抗体蛋白質を細菌内で発現させた組み換え蛋白質として発現させて大量に生産することができるという利点を有する。【0014】また本発明のモノクローナル抗体融合蛋白質(イムノポーター)においては、抗体分子のフレームワーク部分をヒト型に改変することに成功した。そのために異種動物に由来する事による免疫反応の問題は解決し、イムノジーン法を実用化する上での最大の問題は解消された。ヒト型化抗体の抗原認識能を検討したところマウス型と同様であった。【0015】特開平10−84959に係る発明において、DNA 結合部として荷電性アミノ酸であるリジンの連続配列を付加したが、リジンの連続配列の付加は一本鎖抗体産生において酵母でも分泌効率を著しく下げ、大量産生は困難であった。そのため、本発明において産生効率と遺伝子導入効率を向上させる目的で、DNA との複合体形成のために抗体のカルボキシ末端又はアミノ末端に結合させる種々のアミノ酸テイルを設計し、それを組み込んだ一本鎖抗体融合蛋白質の遺伝子を作製した。それらの大腸菌・酵母での発現効率を検討し、分泌効率が改善したことを確認できた。荷電性アミノ酸テイルをもつ一本鎖抗体は、通常の精製法ではカラムに吸着することが判明し、試行錯誤の末精製する事が可能となった。精製した抗体を用いてin vitroで抗体特異的な遺伝子導入に成功し、その遺伝子導入効率はFab イムノジーンと同等かそれ以上であった。【0016】【発明の実施の形態】本発明は、細胞表面に存在するレセプターに対するヒト型のモノクローナル抗体にDNA 結合部位であるペプチド(以下、アミノ酸テイルともいう)が結合した構造からなる、細胞表面に存在するレセプターに対するモノクローナル抗体融合蛋白質(イムノポーター)ならびに当該抗体融合蛋白質と治療用遺伝子との複合体である、細胞表面に存在するレセプターに対するモノクローナル抗体融合蛋白質の複合体(イムノジーン)である。本発明のイムノジーンを用いることにより、例えばEGF レセプターの様な細胞表面レセプターを介して、エンドサイトーシスを利用して細胞内に導入し、標的とする癌細胞を治療することができる。本発明はそのようなジーンデリバリーシステムを提供するものである。【0017】本発明のイムノポーターにおけるDNA 結合部位であるペプチド(アミノ酸テイル)は、電荷によりDNA と結合する。即ち、当該イムノポーターにおけるペプチドは、正電荷又は負電荷で荷電した90個以下のアミノ酸からなるペプチドである。このペプチドが正電荷で荷電している場合には、DNA と直接結合する事が可能である。このペプチドが、負電荷で荷電している場合には、正電荷高分子でDNA を被覆することによりDNA と結合することが可能となる。【0018】より詳細には、本発明のイムノポーターにおけるアミノ酸テイルの構造は、[X n Y] m で示される構造である。なお、ここで、X はリジン、アルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Y はリジン、アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を除いたアミノ酸であり、n は1ないし8、m は1ないし10である。または、本発明のイムノポーターにおけるアミノ酸テイルの構造は、 X nで示される構造である。ここで、X はリジン、アルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、n は2ないし8である。【0019】X で示されるアミノ酸がリジン、アルギニンであれば、このアミノ酸テイルは正電荷を有し、負電荷を有するDNA,RNA 等の核酸と直接結合することができる。X で示されるアミノ酸がアスパラギン酸、グルタミン酸であれば、このアミン酸は負電荷を有する。その場合には、負電荷を有するDNA,RNA 等の核酸をポリリジン、ポリエチレンイミンなどの正電荷を有するポリマーで包含する事により、核酸・ポリマー複合体を正電荷過剰な状態にすることができる。それにより、[X n Y] m という構造からなるアミノ酸テイルは上記核酸・ポリマー複合体に結合可能となり、更に抗体・ポリマー・核酸複合体を形成することが可能となる。【0020】本発明のアミノ酸テイルの場合、電荷によりDNA と結合するので、荷電性アミノ酸が可能な限り連続して長い方が有利である。一方、酵母における分泌効率という意味では荷電性アミノ酸が長いと分泌効率が著しく低下するので、両者のバランスが大切である。リジンが8個連続した配列でも分泌可能であることから、電荷を有するアミノ酸の数であるn の値が8以下ならば分泌可能である。また、テイルの長さが長くなると、分泌されるときに通過する細胞膜の厚みを越えるために細胞分泌障害が生じる可能性も考えられる。しかしm の値が5の場合、DNA結合部の長さは分泌されるときに通過する細胞膜の厚みを越えているにもかかわらず分泌障害性は示さない。よって、DNA 結合部の長さによる分泌障害性はこれ以上の繰り返しでも同等であり、m の値が10以下ならば分泌可能である。n の値が8以下であってm の値が10以下であることを考えると、[X n Y] m の構造を有するアミノ酸テイルは、90個以下のアミノ酸からなる。また、[X n Y] mの機能は抗体分子と独立であるために、その位置はアミノ末端側でもカルボキシル末端側でもDNA 結合部として機能することができる。【0021】更に、本発明は上記細胞表面に存在するレセプターに対するモノクローナル抗体融合蛋白質(イムノポーター)の製造方法である。本発明のイムノポーターは、以下の過程により製造をすることができる。(1)前記細胞表面に存在するレセプターに対するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として用いて、マウス型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子をPCR 法で増幅し、(2)前記マウス型モノクローナル抗体のフレームワーク部分を変換することによりヒト型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子を作製し、(3)前記ヒト型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子にアミノ酸テイルをコードする遺伝子を付加することによりヒト型一本鎖イムノポーター遺伝子を作製し、(4)前記ヒト型一本鎖イムノポーター遺伝子を細菌内で発現させることによりヒト型一本鎖イムノポーターの組み換え蛋白質を得る。【0022】ここで、ヒト型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子を作製するとは、マウス由来の配列から、ヒトの抗体遺伝子由来の配列に置き換えることである。上述した様に、一本鎖抗体とは抗体分子の可変領域(VH, VL)をリンカーでつないだ構造を有する抗体である。VHとVLは抗体の内部を形成し、形を保つ働きのフレームワーク領域(FR)と、異物である抗原を認識するためのCDR (超可変領域)から成る。EGF レセプターの抗体分子は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4という構造を有している。そこでEGF レセプターを例にとると、ヒト型化という作業はVHとVLにそれぞれ4カ所ずつ、合計8カ所あるフレームワーク領域をヒト由来の配列に置換することである。フレームワーク中のアミノ酸の幾つかは、CDR 中のアミノ酸と相互作用して、CDR の立体構造を保つために重要であることが知られている。これまでの知見からその様なアミノ酸配列の位置は予測され、そのような部分を除いて置換する事が重要である。【0023】このようにして得られた本発明の抗体融合蛋白質(イムノポーター)は、次いで遺伝子との複合体を形成し、イムノジーンとなる。モノクローナル抗体と遺伝子であるDNA とは、電荷により結合している。即ち、本発明のイムノポーターには上述したアミノ酸テイルが結合しており、そのアミノ酸テイルを介してモノクローナル抗体と遺伝子は結合する。上述した様にアミノ酸テイルは正電荷テイル又は負電荷テイルであり、正電荷テイルの場合には直接DNA と結合し、負電荷テイルの場合にはDNA を正電荷で分子を被覆したあと負電荷/抗体を結合させる。【0024】原理的にはあらゆるDNA をイムノポーターに結合して複合体を作製することができ、この複合体をイムノジーンとして標的とする細胞内に、嵌入(エンドサイトーシス)の機構を介して移行させることができる。このようにイムノジーンによって細胞内に導入できる遺伝子は特に限定されるものでなく、使用目的に応じて、いずれの遺伝子をも本発明のイムノポーターに結合し、癌治療などを行う事ができる。本発明は、EGF レセプターに対するモノクローナル抗体は当然のことながら、細胞表面に存在するその他のレセプターを標的とするモノクローナル抗体についても、エンドサイトーシスの機構を介して細胞内に導入することができる限り、同様に応用することができる。【0025】本発明の目的に最も適うものの1つとして、本発明はEGF レセプターを過剰発現している扁平上皮癌細胞などの癌細胞に応用することができる。この種の癌細胞には、例えば、ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子を効率よく導入した後に、ガンシクロビルを投与すれば、癌細胞を選択的に死滅させることができる。その他の癌抑制遺伝子としては、例えば、ウイルムス腫瘍にはWT-1、網膜芽細胞にはRbなどが挙げられる。【0026】更には、癌遺伝子(オンコジーン)が過剰発現しているものには、アンチセンス発現ベクターなどを導入して、抑制することもできる。更にまた、本発明にかかる複合体ならびにエンドサイトーシスを適用することができるその他の癌としては、例えばBeckwith-Wiedemann症候群(例えば、ヘパトーマ、横紋筋肉腫、ウイルムス腫瘍など)、膀胱癌、Ewing 肉腫などが挙げられる。つまり、本発明は、当該遺伝子を結合させて癌細胞に導入して、所謂遺伝子治療に応用することができる。【0027】更に本発明は、配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号1−258で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチドである。当該配列はB4G7抗体から得た、上皮細胞レセプターに対するマウス型の一本鎖抗体のアミノ酸配列である。配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1ないし数アミノ酸が欠失、置換若しくは付加された構造からなるポリペプチドもまた、上皮細胞増殖因子レセプターと結合する活性を有する限り、本発明の範囲内である。ここで、1ないし数アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたとは、10個以内のアミノ酸の変換を意味する。尚、当該配列のアミノ酸番号 39-44、58-74 、107-115 、165-175 、191-197 及び231-238 の部分は抗原認識部位であり、この部分を変換することは上皮細胞増殖因子レセプターと結合する活性を失わせることであり、不適切である。【0028】更に本発明は、配列表の配列番号2に示す、アミノ酸番号1−258で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチドである。当該配列は、上記のマウス型抗体のフレームワーク領域をヒト抗体型に変換した、ヒト型の一本鎖抗体(後述するCaC 型)の配列である。配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列において、1ないし数アミノ酸が欠失、置換若しくは付加された構造からなるポリペプチドもまた、上皮細胞増殖因子レセプターと結合する活性を有する限り、本発明の範囲内である。ここで、1ないし数アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたとは、10個以内のアミノ酸の変換を意味する。マウス型の抗体と同様に、当該配列のアミノ酸番号 39-44、58-74 、107-115 、165-175 、191-197及び231-238 の部分は抗原認識部位であり、この部分を変換することは上皮細胞増殖因子レセプターと結合する活性を失わせることであり、不適切である。本明細書においてはEGF レセプターに対するモノクローナル抗体を例に挙げて説明するが、本発明はその範囲に限定されるものではない。【0029】【実施例】(一本鎖抗体遺伝子の作製)ファルマシア社組換え一本鎖抗体作製キットを用い、B4G7抗体産生ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型に用いて一本鎖抗体遺伝子をPCR 法で増幅した。ファルマシア社ベクターpCANTAB5E に組み込みキットのマニュアルに従い一本鎖抗体発現ファージを得た。ファージは、ホルマリン固定したA431細胞を抗原としてスクリーニング・濃縮(4回)を行ったのち、クローニングし、強陽性クローンを同定した。クローンからプラスミドを調製し(pCANTAB5E-scB) 、塩基配列決定後、さらにHis タグを組み込む改変を行い、発現ベクターpBH を得た。図1にpBH の一本鎖抗体部分の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。なお、ベクターのその他の部分はほぼ同一である。図1において、下線部は一本鎖抗体遺伝子(VH-Linker-VL)を、3カ所の斜体字部分は上からg3分泌シグナル配列、一本鎖抗体内部リンカーアミノ酸配列及びE-tag アミノ酸配列を、それぞれ示す。【0030】(一本鎖抗体遺伝子の発現及び精製)上記のpBH を大腸菌HB2151株に導入し、IPTG 1mMを添加し4 時間発現誘導を行った。大腸菌を回収して4 ℃、PBS,1mM EDTA,0.1% tween20 中で撹拌し、抽出液を得た。それをPBS に対して透析し、透析液中に存在する一本鎖抗体であるscBHをQiagen社Ni-NTAカラムで精製した。【0031】(一本鎖抗体の抗体価の評価)西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP )で標識したB4G7抗体と、未標識B4G7抗体、一本鎖scBH抗体または後述する組換えイムノポーターscHBFLを混合し、ホルマリン固定したA431細胞を抗原として競合ELISA を行った。結果を図2に示す。図2に示すように、一本鎖scBH抗体はB4G7抗体と同じ抗原(EGFレセプター)を認識し、抗体一価あたりの結合力は約1/3 であった。【0032】(一本鎖抗体遺伝子のイムノポーター遺伝子への変換)一本鎖抗体遺伝子scBHを改変して、種々のイムノポーター遺伝子を作製した。scBHに以下の塩基配列を付加して、正電荷テイルを有するイムノポーターをコードするscHBFL遺伝子を作製した。即ち、scBH遺伝子の5'末端及び3'末端に、図3(1)に示す配列を付加して、scHBFLを作製した。5'末端においては、scBH遺伝子のVH領域であるCAGGTGCAGCTGCAGCAG(GlnValGlnLeuGlnGln)に、ヒスチジンタグをコードする遺伝子を付加した。3'末端においては、scBH遺伝子のVL領域であるAAGTTGGAAATAAAA (LysLeuGluIleLys )に、テイルの運動性を保つためのリンカーであるGATTATAAAGAT(AspTyrLysAsp)、テイルであるLysLysLysLysLysLysLysLys(即ち (Lys)8 )をコードする遺伝子、及びベクターへ組み込むための制限酵素EcoRI 切断部位(GAATTC)を付加した。【0033】scBHに図3(2)に示す塩基配列を付加して、やはり正電荷テイルを有するイムノポーター遺伝子であるscHBFL20を作製した。scBH遺伝子の5'末端及び3'末端に、以下の配列を付加して、scHBFLを作製した。5'末端においては、scBH遺伝子のVH領域であるCAGGTGCAGCTGCAGCAG(GlnValGlnLeuGlnGln)に、ヒスチジンタグをコードする遺伝子を付加した。3'末端においては、scBH遺伝子のVL領域であるAAGTTGGAAATAAAA (LysLeuGluIleLys )に、リンカーであるGATTATAAAGATGACGATGAC (AspTyrLysAspAspAspAsp )、テイルであるLysLysLysLysHisLysLysLysLysHisLysLysLysLysHisLysLysLysLysHisLysLysLysLysHis (即ち [(Lys)4His]5 )をコードする遺伝子、及びベクターへ組み込むためのEcoRI 切断部位(GAATTC)を付加した。【0034】更に、下記の方法により新規一本鎖抗体遺伝子(scHBH )を作製し、更に負電荷テイルをコードする遺伝子を接続することにより、負電荷イムノポーター遺伝子であるDS4x5 を作製した。scHBH 遺伝子は、上記の一本鎖抗体遺伝子であるscBH遺伝子に、図3(3)に示す塩基配列を付加することにより作製した。5'末端においては、scBH遺伝子のVH領域であるCAGGTGCAGCTGCAGCAG(GlnValGlnLeuGlnGln)に、ヒスチジンタグをコードする遺伝子を付加した。3'末端においては、scBH遺伝子のVL領域であるACAAAGTTGGAAATAAAA(ThrLysLeuGluIleLys)にリンカー(CATCACCATCACCATCACGGTGGCGGTTCT)及びベクターへ組み込むためのEcoRI 切断部位(GAATTC)を付加して、大腸菌発現ベクターに組み込める様にした遺伝子を作製した。また、3'末端にscBH遺伝子のVL領域であるACAAAGTTGGAAATAAAA(ThrLysLeuGluIleLys)にヒスチジンタグをコードする遺伝子及びショートリンカーであるGGTGGCGGTTCT(GlyGlyGlySer)を付加して、Pichia菌に組み込めるようにした遺伝子もまた作製した。【0035】scBHに上記の塩基配列を付加して作製したscHBH の3'末端に、図3(4)に示す構造の塩基配列を付加して負電荷イムノポーター遺伝子であるDS4x5 を作製した。scHBH 遺伝子に結合した上記のショートリンカー(GGTGGCGGTTCT)に、負電荷テイルであるAspAspAspAspSerAspAspAspAspSerAspAspAspAspSerAspAspAspAspSerAspAspAspAspSer ([(Asp)4Ser]5)、及びベクターへ組み込むためのEcoRI 切断部位(GAATTC)を付加した。付加した配列の詳細を、図3(4)に示す。【0036】上記のscHBFL、scHBFL20及びD4Sx5 について遺伝子発現を試みた。尚、その他に正電荷テイルである(Lys)8Ser (K8S )、(Arg)8Ser (R8S )、[(Arg)8Ser]2(R4Sx2 )、[(Arg)8Ser]5(R4Sx5 )、[(Lys)4Ser]5(K4Sx5 )、[(Lys)4His]5(K4Hx5 )及び負電荷テイルである(Gln)8Ser (E8S )、(Asp)8Ser (D8S )、[(Asp)4Ser]2(D4Sx2 )を作製した。【0037】(組換えイムノポーター遺伝子の発現)Invitrogen社製Pichia発現キットを用いて、組換えイムノポーター遺伝子の発現を行った。まず部位特異的変異導入法によりInvitorogene社製pPIC9Kのneomycin耐性遺伝子領域内のXho I 切断部位ctcgag配列をcttgagに、ampicillin耐性遺伝子領域内のSca I 切断部位agtact配列をagtattに置換することにより、pPIC9Kdel の作製を行った。得られたpPIC9Kdel の全塩基配列を図4に示す。【0038】そして、scHBFL、scHBFL20およびD4Sx5 遺伝子の5'端にPCR 法により以下の配列を付加した。即ち、scHBFLにつきCTC GAG AAA AGA 、scHBFL20およびD4Sx5 につきCTC GAG AAA AGA GAG GCT GAA GCT を付加した。そして、Invitrogen社製pPIC9 (scHBFL遺伝子)、pPIC9Kdel (scHBFL20およびD4Sx5 遺伝子)のXho I-EcoRI 部位に挿入した。キットに従い、作製したプラスミドを制限酵素Bgl IIで切断し、Pichia pastrisGS115 株にエレクトロポレーション法で導入し最少培地で選択し形質転換株を得た。形質転換株をメタノール含有寒天培地で生育させ、メタノール耐性度から、MetS( 感受性株)とMet+(耐性株)の二群に分類した。キットに従い、培地にメタノールを添加し発現を誘導した。scHBFL20およびD4Sx5に関して、分解産物と思われるものが多く正常な産物が得られなかった。そこで、形質転換株を0.5Mないし1M NaCl を含む培地に馴化させてから、0.5Mないし1M NaCl を含む培地中で発現誘導を行うと、正常産物の収量を増大させることが可能となった。発現誘導した培地の培養上清を用いてタンパクを抗Flag抗体で検出したウェスタンブロットの結果を図5に示す。図5において、目的とする抗体蛋白質の位置を矢印で示す。測定したどのクローンにおいても、抗体蛋白質が検出された。【0039】(組換えイムノポーターの精製)以下のようにして、組換えイムノポーターの精製を行った。scHBFLについては、発現誘導した培地から菌体を遠心分離し、上清をPBS に対して透析した。それをQiagen社製Ni-NTAレジンを用いてアフィニティ精製しさらにPBS に対して透析した。scHBFL20およびD4Sx5 については、0.5M NaCl 含有培地で発現誘導した培地上清を、20mM Tris HCl (pH7.5)-250mM NaClで3 倍に希釈し、ファルマシア社イオン交換レジンSTREAMLINE-S(D4Sx5 の場合は-Q) に吸着させ、同緩衝液で洗浄後、20mM Tris HCl (pH7.5)-1M NaCl で溶出した。ついで、クロンテック社製TALON レジンに吸着させ、100mM EDTA (pH8.0)で溶出した。溶出サンプルに濾過膜への吸着を防ぐために0.5M NaCl を添加し限外濾過濃縮を行った。濃縮サンプルを、イムノポーターのレジンへの吸着を防ぐために1M Arginine HCl-5% Glycerol (D4Sx5の場合は1M Sodium Glutamate -5% Glycerol) で平衡化したファルマシア社superdex 75 ゲル濾過カラムで精製した。イムノポーターを含む分画を、0.6M NaCl に対して透析し、さらに限外濾過濃縮を行った。【0040】(組換えイムノポーターによる遺伝子導入)以下のようにして、組換えイムノポーターによる遺伝子導入を行った。schBFLについては、精製したscHBFLとプラスミド(β−ガラクトシダーゼ発現ベクター)を混合し30分放置し、さらにポリ-L- リジンを混合し30分放置してから、10%血清を含む培養液に添加した。二日後に細胞を固定しX-Gal 染色を行い、青染細胞を計数し遺伝子導入効率を検討した。NA細胞及びA431細胞による結果を図6に示す。schBFLについては、ポリ-L- リジンを添加しないと遺伝子導入は観察されなかった。ここでポリ-L- リジンは、DNA が分解することを防ぐ保護剤として作用していると思われる。【0041】scHBFL20については、以下の標準的遺伝子導入法を用いた。まず、DNA(0.25μg)とscHBFL20(2.5μg)を15μL HBS[20mM Hepes(pH7.4), 150mM NaCl]中で混合し30分放置、その後PEI(ポリエチレンイミン:平均分子量25K)溶液(15μL,HBS )と素早く混合し、さらに30分放置した。そして、20% コンフルエント状態のA431細胞を植えたウェルあたり0.5mL の[DMEM,10%FBS, Kanamycin]を含む24well-culture dish に滴下した。更に、40時間後、X-gal 染色を行い、青染した細胞を計数した。scHBFL20/DNA/PEI複合体形成をHBS で行うとscHBFL20依存的に遺伝子導入された(図7)。また、scHBFL20/DNA/PEI複合体形成をPBS[20mM Na-PO4(pH7.4), 150mM NaCl] 下で行うと遺伝子導入のscFv依存性がなくなった(図8)。ここでPEI はポリ-L- リジンと同様に、保護剤として作用していると思われる。【0042】(一本鎖抗体遺伝子のマウス型からヒト型への変換)B4G7抗体より得たマウス型一本鎖抗体であるscBH抗体の配列を基にして、scBH抗体の可変ループドメイン(抗原認識部位;下図下線部)以外のフレームワークアミノ酸配列に類似したヒト抗体フレームワークアミノ酸配列をデータベースで検索した。それらのうちCDR ループ立体構造維持に重要だと推定されるアミノ酸およびVL/VH 境界面で保存されているアミノ酸をできるだけ置換しないフレームワークを選択することによりヒト型化を行った。また、ヒト型に変換することにより抗原結合能が変化した場合を想定し、VH・VL領域のどちらかがマウス型(scBH抗体由来)のキメラ抗体も作製した。【0043】ここで、キメラ抗体作製用にscBH抗体遺伝子に各種制限酵素部位を導入した、マウス改変型(BB 型) 遺伝子の塩基配列及びアミノ酸を図9に示す。図9において、アミノ酸番号 9-126までがVH領域であり、イタリックで示すアミノ酸番号127-141 がリンカー配列であり、アミノ酸 142-248までがVL領域である。マウス型であるB 型を基にして、そのVH領域のフレームワーク部分をヒト由来の配列に置き換えたD 型を設計した。また、D 型においてマウス型フレームワーク部分中において重要だと思われるアミノ酸を残した配列であるCa型,Cv 型を設計した。これら3つの構造を比較し、よりヒト抗体に近い順番に並べると、D 型が一番ヒト抗体に近く、次いでCa型、Cv型の順番になる。また、ヒト型VL領域の配列であるC 型も設計した。【0044】その様にして作製した、マウス・ヒトキメラ抗体を図10から図13に示す。図10に示すCvB 型はVH領域がヒト型であるCv型、VL領域がマウス型であるB 型のキメラである。図11に示すCaB 型はVH領域がヒト型であるCa型、VL領域がマウス型であるB 型のキメラである。図12に示すDB型はVH領域がヒト型であるD型、VL領域がマウス型であるB 型のキメラである。更に、作製したヒト型抗体を図14から図16に示す。即ち、図14に示すCvC 型はVH領域がCv型、VL領域がC 型のヒト型抗体である。図15に示すCaC 型はVH領域がCa型、VL領域がC 型のヒト型抗体である。図16に示すDC型はVH領域がD 型、VL領域がC 型のヒト型抗体である。図9から図16において、斜体字は抗体遺伝子に付加した配列およびVHとVLを連結するリンカー配列を、下線部は可変ループドメインを、それぞれ示す。【0045】(ヒト型一本鎖抗体遺伝子の発現)上記において得たヒト型一本鎖抗体遺伝子の両端に制限酵素部位(Nco IおよびEco RI) を導入し、Novagen 社製大腸菌発現ベクターpET22bを高コピー型に改変したpET22bhcのNco I-Eco RI部位に導入した。作製した発現ベクターをNovagen社製大腸菌株BL21(DE3) に導入し、IPTGで発現誘導を行った。大腸菌全タンパク中の一本鎖抗体を抗5xHis 抗体(Qiagene 社製)を用いてウエスタンブロット法で検出した。ウエスタンブロットの結果を、図17に示す。Novagen 社製pET22bのPsh AI-Sca I領域をSTRATAGEN 社製pBluescript II SK(-)の Pvu II-Sca I 断片と置換することにより、pET22bhcを作製した。pET22bhcの全塩基配列を、図18に示す。【0046】(ヒト型一本鎖抗体の精製)発現誘導した大腸菌菌体を可溶化バッファー(6M Guanidine HCl, 20mM Tris HCl (pH8.0), 10mM b-mercatoetanol, 25mM Imidazol)に懸濁し、可溶化タンパクを遠心分離した。可溶化タンパクを含む上清中の一本鎖抗体をCLONTEC 社製TALON レジンに吸着・0.1M EDTA を含む可溶化バッファーで溶出することによりアフィニティー精製した。精製した一本鎖抗体溶液をリフォールディングバッファーで透析し、最後にPBS で透析しタンパク巻き戻しを行った。リフォールディングバッファーは20mM Tris HCl (pH7.4), 0.5M NaCl, 1mM b-mercatoetanol 中に尿素を6M,4M,2M,1M 含むものを用意し、尿素濃度の高いものから低いものに対して順番に透析を行った。【0047】(ヒト型一本鎖抗体の抗体価の評価)西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP )で標識したB4G7抗体と未標識B4G7抗体または一本鎖scBH抗体を混合し、ホルマリン固定したA431細胞を抗原として競合ELISA を行った。上記のマウス型、キメラ型、ヒト型抗体の抗体価を測定した結果を図19に示す。図19に示すように、D 型をのぞきキメラ型およびヒト型化一本鎖抗体はマウス型(BB 型:VH・VL部分のアミノ酸配列はscBHと同一)とほぼ同様の結合能を有していた。【0048】(ヒト型一本鎖抗体遺伝子のイムノポーター遺伝子への変換)部位特異的変異導入法によりpPIC9Kdel のHis4遺伝子領域内のNco I 切断部位ccatgg配列をccatagに置換した。D4Sx5 遺伝子を組み込んだpPIC9Kdel にも同様の変異を導入し、pPIC9Kdd-D4Sx5を得た。pPIC9Kddの全塩基配列を、図20に示す。【0049】ヒト型化一本鎖抗体遺伝子のPCR 法により5'端にCTC GAG AAA AGA GAG GCT GAA GCT という塩基配列を導入し、3'のHis タグ部の塩基配列を5'-GTTGACATCAAACACCATCACCATCACCATGGTGGCGGTTCTTAAGAATTCと変更した。Xho I とNco I の制限酵素部位を用いて,pPIC9Kdd-D4Sx5の同部位に導入した。それ以降の方法は組み換えイムノポーター遺伝子の発現及び精製において前に記載した方法に準じた方法を用いて、ヒト型一本鎖抗体のイムノポーターを得た。【0050】【発明の効果】本発明により、新規のDNA 運搬システムである、ヒト型一本鎖イムノポーターモノクローナル抗体蛋白質融合蛋白質及び当該融合蛋白質とDNA の複合体が与えられた。【0051】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】 図1はpBH の一本鎖抗体部分の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図2】 図2は一本鎖抗体の抗体価を示すグラフである。【図3】 図3は作製したイムノポーターを作製するために付加した配列の構造を示す図である。【図4】 図4はpPIC9Kdel の全塩基配列を示す図である。【図5】 図5は発現誘導した培地中の蛋白質を抗Flag抗体で検出したウエスタンブロットを示す写真である。【図6】 図6はschBFLによる遺伝子導入効率を示す図である。【図7】 図7はHBS 下における、scHBFL20による遺伝子導入効率を示す図である。【図8】 図8はPBS 下における、scHBFL20による遺伝子導入効率を示す図である。【図9】 図9はBB型のマウス改良型の一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図10】 図10はCvB 型のマウス・ヒトキメラの一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図11】 図11はCaB 型のマウス・ヒトキメラの一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図12】 図12はDB型のマウス・ヒトキメラの一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図13】 図13はBC型のマウス・ヒトキメラの一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図14】 図14はCvC 型のヒト型抗体の一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図15】 図15はCaC 型のヒト型抗体の一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図16】 図16はDC型のヒト型抗体の一本鎖抗体遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列を示す図である。【図17】 図17は一本鎖抗体遺伝子の発現を検出したウエスタンブロットを示す写真である。【図18】 図18はpET22bhcの全塩基配列を示す図である。【図19】 図19はヒト型一本鎖抗体の抗体価を示すグラフである。【図20】 図20はpPIC9Kddの全塩基配列を示す図である。 遺伝子と結合することによって当該遺伝子を運搬する事が可能である融合蛋白質であって、細胞表面に存在する抗原に対するヒト型の一本鎖モノクローナル抗体と、遺伝子結合部位であるペプチドを含む融合蛋白質であって、前記ペプチドは正電荷または負電荷に荷電している90個以下の荷電性アミノ酸であり、[XnY]m(ここで、Xはリジン、アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択されたアミノ酸であり、Yはリジン、アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を除くアミノ酸であり、nは1ないし8、mは1ないし10)又はXn(ここで、Xはリジン、アルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、nは2ないし8)で示される構造であることを特徴とする、細胞表面に存在する抗原に対するモノクローナル抗体融合蛋白質。 前記細胞表面に存在する抗原が上皮細胞増殖因子レセプターである、請求項1記載のモノクローナル抗体融合蛋白質。 請求項1または2記載のモノクローナル抗体融合蛋白質とDNAとの複合体であることを特徴とする、モノクローナル抗体融合蛋白質の複合体。 前記遺伝子が抗癌作用を有する遺伝子である、請求項3記載のモノクローナル抗体融合蛋白質の複合体。 前記ペプチドが正電荷に荷電している90個以下のアミノ酸からなるペプチドであり、遺伝子と直接結合していることを特徴とする、請求項3又は4記載のモノクローナル抗体融合蛋白質の複合体。 前記ペプチドが負電荷に荷電している90個以下のアミノ酸からなるペプチドであり、正電荷高分子で被覆した遺伝子と結合していることを特徴とする、請求項3又は4記載のモノクローナル抗体融合蛋白質の複合体。 細胞表面に存在するレセプターに対するモノクローナル抗体融合蛋白質を作製する方法であって、(1)前記細胞表面に存在するレセプターに対するモノクローナル抗体に対するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として用いて、マウス型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子をPCR法で増幅し、2)前記マウス型モノクローナル抗体のフレームワーク部分を変換することによりヒト型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子を作製し、(3)前記ヒト型モノクローナル抗体の一本鎖抗体遺伝子に、[XnY]m(ここで、Xはリジン、アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択されたアミノ酸であり、Yはリジン、アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を除くアミノ酸であり、nは1ないし8、mは1ないし10)又はXn(ここで、Xはリジン、アルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、nは2ないし8)で示される構造を有する、正電荷または負電荷に荷電している90個以下の荷電性アミノ酸テイルをコードする遺伝子を付加することによりヒト型一本鎖イムノポーター遺伝子を作製、(4)前記ヒト型一本鎖イムノポーター遺伝子を細菌内で発現させることによりヒト型一本鎖イムノポーターの組み換え蛋白質を得る過程により構成される、モノクローナル抗体融合蛋白質の作製方法。 請求項3〜6いずれかの項記載のモノクローナル抗体融合蛋白質の複合体を、細胞表面レセプターを介して細胞内に導入する方法(但しヒトは除く)。 エンドサイトーシスにより細胞内へ遺伝子を導入する事を特徴とする、請求項8記載の方法。 ヒト型の一本鎖モノクローナル抗体が、(a)配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号1−258で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチド、又は(b)上皮細胞増殖因子レセプターと結合する活性を有し、(a)のアミノ酸番号39−44,58−74,107−115,165−175,191−197及び231−238で示されるアミノ酸以外の(a)のアミノ酸の1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された、ポリペプチドからなる、請求項1又は2記載のモノクローナル抗体融合蛋白質。 ヒト型の一本鎖モノクローナル抗体が、(c)配列表の配列番号2に示す、アミノ酸番号1−258で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチド、又は(d)上皮細胞増殖因子レセプターと結合する活性を有し、(c)のアミノ酸番号39−44,58−74,107−115,165−175,191−197及び231−238で示されるアミノ酸以外の(a)のアミノ酸の1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された、ポリペプチドからなる、請求項1又は2記載のモノクローナル抗体融合蛋白質。