タイトル: | 特許公報(B2)_改良された発酵麦芽アルコール飲料とその製造方法 |
出願番号: | 2000126603 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12C 5/02,C12G 3/02,C12G 3/04 |
山下 博司 井関 潤治 尾崎 裕美 JP 4248123 特許公報(B2) 20090123 2000126603 20000426 改良された発酵麦芽アルコール飲料とその製造方法 アサヒビール株式会社 000000055 友松 英爾 100094466 川島 利和 100100664 山下 博司 井関 潤治 尾崎 裕美 20090402 C12C 5/02 20060101AFI20090312BHJP C12G 3/02 20060101ALI20090312BHJP C12G 3/04 20060101ALI20090312BHJP JPC12C5/02C12G3/02C12G3/04 C12C 5/02 C12G 3/02 C12G 3/04 特開平11−056336(JP,A) 特開平08−019390(JP,A) 特開平07−143872(JP,A) 特開2000−004868(JP,A) 特開2000−023699(JP,A) 5 2001299322 20011030 8 20070420 今村 玲英子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規香味を有するビールや発泡酒等の発酵麦芽アルコール飲料およびその製造方法に関し、詳しくはトレハロースを添加することで、従来にはない、すっきりとした後味、すなわち「キレ」を増強させたビールおよび好ましくない香味をマスキングさせた発泡酒とそれらの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】ビールを中心とする酒類において新しい香味を創造する試みがしばしば行われてきた。【0003】特開平6−237750号公報には、もろみ、その発酵液および発酵終了液のいずれかにサイクロデキストリンを添加するか、あるいは澱粉質副原料を含むもろみにサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させサイクロデキストリンを生成させ、味にコク味を有する発泡酒の製造法が記載されている。【0004】特開平7−51045号公報には、ビールや発泡酒等の酒類を製造するにあたり、その製造工程においてイソマルトオリゴ糖を添加することによってすっきりとした味とコク味のある発泡酒を製造する方法が記載されており、特開平10−113162号公報には、糖重合度が4および5のマルトオリゴ糖含量の総和が0.5g/100ml以下、かつ糖重合度6および7のマルトオリゴ糖含量の総和が0.2〜1.0g/100mlである原料液を、酵母により発酵させることにより、さわやかさとまろやかさを両立させたビール等の発酵麦芽アルコール飲料の製造法が記載されている。【0005】特開平8−249号公報には、酒類を製造するにあたり酵母難資化性食物繊維を副原料に使用することで、コク味に優れた新しいタイプの酒類の製造法が記載されている。また、特開平11−127839号公報には、エリスリトールを発泡酒等の酒類の製造過程に添加することにより、コク味やうま味を増強させる製造法が記載されている。【0006】これらの公報に記載されているようにビールや発泡酒等の発酵麦芽アルコール飲料においては、添加剤により発酵麦芽アルコール飲料を改質しようとする試みは、種々行われている。とくに、ビール等においては後味がすっきりしているか否かが、その商品の特徴付けに大きく寄与している。一方、発泡酒においては、発泡酒特有のビールにはない、好ましくない香味(以後発泡酒臭と呼ぶ)が存在する。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的は、ビール等の発酵麦芽アルコール飲料に対する消費者の多様化する嗜好性からくるニーズに対応すべく、新たなすっきりとした後味すなわち「キレ」を有する発酵麦芽アルコール飲料を提供する点にあり、本発明の第2の目的は、発泡酒等がもつ好ましくない香味(以後発泡酒臭と呼ぶ)を低減させた発酵麦芽アルコール飲料を提供する点にある。【0008】【課題を解決するための手段】 本発明の第一は、トレハロースを全量に対して0.1〜1.0wt/vol%を含有することを特徴とする発酵麦芽アルコール飲料に関する。【0009】 本発明の第二は、発酵麦芽アルコール飲料の製造工程において、最終製品中にトレハロースが0.1〜1.0wt/vol%含有されるようなトレハロースを配合することを特徴とする発酵麦芽アルコール飲料の製造方法に関する。【0010】トレハロースは、二単糖であり、ショ糖の45%の甘味を持つことで知られており、チップス、ジャーキー、薩摩揚げ、穀類、豆スナック、金時豆などのノンフライ調理に利用されており、穀物臭やでんぷん臭がほとんど感じられず、本来の甘味を生かす効果があると報告されている(「食品と開発」vol.33,No.11.7〜10頁参照)。しかし、発酵麦芽アルコール飲料の改質にトレハロースを利用するということは全然知られていない。【0011】 本発明者等は、発酵麦芽アルコール飲料に最終製品中における濃度が0.1〜1.0wt/vol%になるようトレハロースを配合したところ、従来にはない、すっきりとした後味、すなわち「キレ」を与える発酵麦芽アルコール飲料が得られること、また、発泡酒等の発酵麦芽アルコール飲料にトレハロースを含有させたところ、発泡酒臭を低減させた発酵麦芽アルコール飲料が得られるという驚くべき効果を発見したのである。【0012】【発明の実施の形態】本発明は、ビールや発泡酒等の発酵麦芽アルコール飲料の任意の製造工程中で所定量のトレハロースを添加すればよい。とくに、麦汁の仕込工程の煮沸処理中に添加することが好ましい。麦汁の煮沸処理は、通常100℃で1〜2時間実施するので、この工程でトレハロースを添加すれば、トレハロースの消毒、殺菌工程が不要となる。トレハロースは、醸造用酵母によっては、ほとんど資化されないため、添加したトレハロースのほとんどが最終製品中に移行する。【0013】このようにして得られた麦汁を冷却後、酵母を加えて発酵させる。さらに、発酵終了後の熟成工程を経た後、濾過器により酵母を分離して、最終製品を得る。このようにして目的とするビールや発泡酒等の発酵麦芽アルコール飲料を製造することができる。【0014】 ビールや発泡酒には、元来少量のトレハロースが含有されており、その含有量は、ビールの場合は0.002〜0.008wt/vol%、発泡酒の場合は0.0088〜0.04wt/vol%のトレハロースが含有されているが、この程度の含有量では不充分である。本発明では最終製品中にトレハロースを0.1〜1.0wt/vol%含有させるものであるが、トレハロースの量が0.1wt/vol%を下回った場合には、本発明の所期の目的であるビールにキレを与えたり、発泡酒の好ましくない香味をマスキングすることができなくなる。また、トレハロースの量が2.0wt/vol%を上回る場合には、製品が甘くなりすぎ、不快な味となる。好ましくは、トレハロースを1.0wt/vol%程度を含有させるものがよい。 また、トレハロースには、α,α−トレハロースとα,β−トレハロースがあるがα,α−トレハロースの方が好ましい。【0015】【実施例】以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例ではトレハロースとして市販のα,α−トレハロース(林原商事社製)を使用した。【0016】テスト1(ビールへのトレハロースの添加)通常市販されているピルスナータイプのビールにトレハロース(林原商事社製)を種々の濃度で添加して製造したものについて、それぞれの香味をパネリスト12名により評価した。評価項目はキレおよび甘味であり、評価基準は以下の通りである。【表1】【0017】 12人のパネリストの評点(平均値)を下表2に示した。【表2】 表2のテスト1から、ビールに0.1〜1.0wt/vol%の濃度でトレハロースを添加した場合、キレの評価が良いことが判った。0.05wt/vol%の添加では効果は認められなかった。一方、2.0wt/vol%を越えると甘味が強くなりすぎ、キレの評点は無添加に比較して低下する。【0018】テスト2その1:発泡酒臭の評価通常市販されているピルスナータイプのビールと発泡酒について、ビールと発泡酒を香味による識別試験をパネリスト12名により実施した。【表3】表3に示すテスト2.その1の判定結果からも判るように、発泡酒には特有の好ましくない香味(発泡酒臭)が存在することが明らかである。【0019】その2:発泡酒へのトレハロースの添加通常市販されているピルスナービールタイプの発泡酒にトレハロース(林原商事社製)を種々の濃度で添加して製造したものについて、それぞれの香味をパネリスト12名により評価した。評価項目は、発泡酒臭および甘味であり、その評点は以下の通りである。【表4】【0020】 12人のパネリストの評点(平均値)を下表5に示した。【表5】 表5に示すテスト2評価結果から、ビールに0.1wt/vol%以上の濃度でトレハロースを添加した場合、発泡酒臭の評価が無添加に比べて低いことが判った。2.0wt/vol%を越えると甘味が強くなりすぎるため、0.1〜1.0wt/vol%の範囲で添加するのが有用である。【0021】実施例1(本発明のビールの製造例)200Lの醸造設備を用いてビールを製造した。200L醸造設備は、仕込釜、仕込槽、濾過槽、煮沸釜、ワールプールおよび発酵タンクからなっている。粉砕麦芽30Kg、コーンスターチ8Kg、ホップ130gおよびトレハロース200gを用いて、200Lの醸造設備によってビールを製造した。トレハロースは煮沸開始時に添加した。【0022】同様にトレハロース無添加のビールも製造し、両ビールについて12名のパネリストによる官能検査に供した。評価項目は、キレおよび甘味であり、その評点は以下の通りである。【表6】【0023】12人のパネリストの評点(平均値)を下表7に示した。【表7】【0024】実施例2(本発明の発泡酒の製造例)粉砕麦芽15Kg、コーンスターチ1Kg、水あめ30Kg、ホップ130gおよびトレハロース200gを用いて、200Lの醸造設備によって発泡酒を製造した。トレハロースは煮沸開始時に添加した。【0025】同様にトレハロース無添加の発泡酒も製造し、両発泡酒について12名のパネリストによる官能検査に供した。評価項目は、発泡酒臭および甘味であり、その評点は以下の通りである。【0026】【表8】【0027】12人のパネリストの評点(平均値)を下表9に示した。【表9】【0028】【発明の効果】発酵麦芽アルコール飲料に特定量のトレハロースを添加した結果、ビールであればキレを増強させることができ、発泡酒であれは発泡酒臭の低減が実現できた。 トレハロースを全量に対して0.1〜1.0wt/vol%を含有することを特徴とする発酵麦芽アルコール飲料。 発酵麦芽アルコール飲料がビールである請求項1記載の発酵麦芽アルコール飲料。 発酵麦芽アルコール飲料が発泡酒である請求項1記載の発酵麦芽アルコール飲料。 発酵麦芽アルコール飲料の製造工程において、最終製品中にトレハロースが0.1〜1.0wt/vol%含有されるようなトレハロースを配合することを特徴とする発酵麦芽アルコール飲料の製造方法。 前記配合時点が、仕込み工程の煮沸処理中である請求項4記載の発酵麦芽アルコール飲料の製造方法。