タイトル: | 特許公報(B2)_構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法 |
出願番号: | 2000122192 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/38 |
瀬古 繁喜 大野 定俊 米澤 敏男 呂 俊民 石黒 武 JP 4487276 特許公報(B2) 20100409 2000122192 20000424 構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法 株式会社竹中工務店 000003621 渡辺 一豊 100076598 瀬古 繁喜 大野 定俊 米澤 敏男 呂 俊民 石黒 武 20100623 G01N 33/38 20060101AFI20100603BHJP JPG01N33/38 G01N 33/38 G01N31/00〜31/22 G01N21/75〜21/83 特開平11−118681(JP,A) 特開平10−197511(JP,A) 5 2001305129 20011031 7 20070329 三木 隆 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法に関する。【0002】【従来の技術】構造体コンクリートから発生するアンモニアガスは、油絵の変色などの被害を引き起こす可能性がある主な原因といわれており、美術館、博物館などの建設にあたっては発生するアンモニアガスが低減する(枯れる)までの枯らし期間を設けることがほとんどである。室内のアンモニアガス濃度の目標は約30ppb以下といわれているが、室内の空気質がこの目標値を満たすことを確認するには、扉を閉めたような実際の運用状態を再現して枯らし期間を測定しなければならない。【0003】しかし、建設途中における室内の空気質環境の計測は、計測を実施する時期によっては扉が未装着であったり、または仕上げ材の施工による室内の状態の変化などによって、内外からのノイズ混入で正確な構造体コンクリートのみから発生のアンモニアガスの数値を得ることが難しい場合が多い。そのため、従来は計測の際には工事中断の不便を甘んじて空気の出入を制限するため開口部の閉鎖などを行なったりして計測している。【0004】【発明が解決しようとする課題】それでも、叙上の計測方法の場合、開口部閉鎖後の室内のアンモニアガス濃度の上昇を待つまでの所定時間の工事中断が強いられる不便さや、施工工程での室内状態が変化(アンモニアを発生する可能性を有する内装材等の設置等)した場合には、コンクリートのみのアンモニアガス発生の枯れが寄与した濃度低下は正確に把握し得ない。【0005】本発明は叙上の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、叙上の工事中断の不便や不正確な測定を解消した構造体コンクリートのみを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の正確な推定方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明の構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法は、構造体コンクリート表面に閉空間形成用の計測容器を被せ、当該容器にアンモニアを含まない気体を供給して該容器を正圧に保ちつつ、容器よりアンモニアガスを含む空気を一定流量で吸引して取り込むアンモニアガス収集装置において、該容器を正圧に保つために、該容器への気体の流量(流入空気量)を該容器より吸引する気体の流量(流出空気量)より大きく設定し、当該空気中のアンモニアガス量を捕集・計測して、前記構造体コンクリート単位面積当りのアンモニアガス発生量を知り、これから室内構造体コンクリート表面のアンモニアガス発生量を知る作業を継続的に実行して、アンモニアガス濃度変化を推定するとしたものである。【0007】計測容器に供給するアンモニアを含まない気体はN2ガスボンベからの供給とするとよい。【0008】もしくは、アンモニア吸着フィルターを通して吸引したところの空気でもよい。【0009】アンモニアガス収集装置におけるアンモニアガスの捕集は、イオン交換した純水への溶解とするとよい。【0010】もしくは、アンモニアガス濃度計への取り込みとするとよい。【0011】【作用】開口部の閉鎖で工事中断をする必要もなく、また、他のアンモニア発生材の設置にも影響されることなく、純粋に構造体コンクリート表面のみからのアンモニアガス発生量を計測し得て室内空気の空気環境評価を可能とし、かつ、継続的な計測によってコンクリートから発生しているアンモニアガスの枯れによる濃度低下の予測を可能とする。【0012】【発明の実施の形態】本発明の実施の態様を図1、2に示す。【0013】図に示される各機器は、一定流量の空気を流入させる供給部として窒素ガスボンベ1、流量計2、および構造体コンクリート3表面に閉空間を形成するための計測容器4、当該容器4からの排出空気を一定流量で取り込むアンモニアガス収集装置としての溶解液を収めたインピジャー5、吸引ポンプ6から成る。【0014】図1、図2aはそれぞれ床が平面の場合、壁及び柱のような鉛直部に対しての吸引盤による治具7を介して(押し付ける)の場合を示す。図2bは該治具7の詳細を示し、吸引盤7aを介して構造体コンクリート3に固定の固定架台7bの先端部に配された押えパッド7cが該容器4をコンクリート3面に押し付けている。【0015】窒素ガスボンベ1から供給されるアンモニアを含まない媒体空気(窒素ガス)の流量は、流量計2より毎分2リットルとして一定の状態を保つ。窒素ガスボンベ1の代わりに、吸引側にアンモニア吸着フィルターを取り付けたポンプを配して周辺の空気を供給する(図示省略)ことにより、構造体コンクリート3から発生するアンモニアガスを捕集する媒体空気としてもよい。【0016】測定容器4内に供給された窒素ガスは、構造体コンクリート3表面から発生するアンモニアガスを取り込んだ状態で捕集装置側に排出される。排出されたアンモニアガスを含む空気は、インピンジャー5内の溶解液5aにバブリングさせることでその成分を溶解することができ、この溶解液5aの成分を定量分析して溶液中の濃度を得、さらに通過した総空気流量から気中の成分濃度(つまり構造体コンクリートからの発生量)を算定することができる。また、溶解液5aを満たしたインピンジャー5の代わりに、極微小濃度を検出することができるアンモニアガス濃度計を設けることができる。【0017】当該アンモニアガス濃度計8は、図3に紹介の如くアンモニアと反応して変色作用を起こす酸性化合物(例えば硫黄化合物など)8aを使用し、変色範囲と濃度計8を通過した空気量から濃度を算定する装置で、ppbの精度で迅速に測定可能なものである。【0018】当該酸性化合物8aは真空ポンプ8b、積算流量計8c、流量計8dから成る吸引系を背後に配した該測定容器4に接続の管路8e途中の封入部8fに充填されている。【0019】 溶解液5aにバブリングする際等の空気の流量は下流側のポンプ6、8bによって毎分1リットルに制御することにより、総流量を計算することが可能となる。ここで測定容器4に対しては、上流側の流入空気量が毎分2リットルであるのに対し、下流側の排出空気量が毎分1リットルと小さいのは、コンクリート面の不陸によって測定容器4が密着しないために起こる周辺部からの外気の流入を、測定容器4内部を正圧に保つことで防ぐことを目的としている。【0020】測定時間は2時間から6時間が望ましい。構造体コンクリート3表面からの発生量が少なく測定時間が短い場合には、分析装置による濃度分析が可能な下限値を下回り測定不能となること、また6時間以上の測定時間の場合には窒素ガスの低湿度によってインピンジャー中の溶解液が揮発して減少し、実際の濃度よりも高い分析結果となる問題等があるからである。【0021】【実施例】本発明の実施例を以下に示す。測定対象として構造物の規模は平面の縦方向が44mで横方向が22m、高さ5.57mの収蔵庫(容積5392m3)である。コンクリート構造体の面積は、床918m2、壁及び柱942m2であった(天井は鋼製デッキのため除外)。【0022】図4は、コンクリート施工後からの経過時間と測定容器4を用いて2時間で測定した構造体コンクリート3表面からの発生量の関係を示したものである。基本的にコンクリートから発生するアンモニアガスは時間経過による含水率の低下と共に減少するものの、気温の高い夏季では生成反応が活発化して発生量が大きくなることも知られている。図中の8ヶ月経過時の暦は6月、及び11ヶ月経過時の暦は9月であり、気温の高い夏季にアンモニア発生量が大きくなることが測定結果に表われている。外気温の推移を図6に示す。【0023】閉鎖された状態における室内のアンモニアガス濃度の算出は以下の式による。【0024】C=Co+(M/Q)ここで、Cは室内の濃度、Coは外部から流入する空気(外気)のアンモニア濃度、Mは室内のアンモニアガス発生源からの発生総量、Qは室内の空気の入れ替わり流量(換気量)である。Coは外気のアンモニア濃度測定値3.2μg/m3を与える。換気量Qは、閉鎖状態の室内の換気回数0.5/hrより、5392m3×0.5/hr=2696m3/hrを与える。アンモニアガスの総発生量は単位面積当りの発生量に面積を乗じたものである。【0025】図4の測定データから推定した室内のアンモニアガス濃度と、開口部分を閉鎖して測定したアンモニアガス濃度の測定値を図5に示す。この結果より、推定したアンモニアガス濃度は、実際の室内のアンモニアガス濃度を再現できることがわかる。【0026】【発明の効果】本発明のコンクリートを発生源とするアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法によれば、実際の室内のアンモニア濃度を測定することなく、構造体コンクリート表面からのアンモニアガス発生量を直接計測して、室内空気質の環境を推定することにより簡便に閉鎖状態の空気質環境評価、及び継続的な計測によってコンクリートから発生しているアンモニアガスの枯れによる濃度低下の評価が可能となる。【0027】しかして、開口部閉鎖での工事中断や他部材による影響を一切受けることなく構造体コンクリートについてのみの推定が可能である。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の床面についての実施態様説明図である。【図2】aは本発明の鉛直部についての実施態様説明図、bは要部の説明図である。【図3】アンモニアガス濃度計の説明図である。【図4】本発明実施例としての単位面積当りの発生量測定結果のグラフである。【図5】本発明における室内濃度の測定結果と測定値の比較を示すグラフである。【図6】外気温の推移図である。【符号の説明】1 ; 窒素ガスボンベ2 ; 流量計3 ; 構造体コンクリート4 ; 計測容器5 ; インピンジャー5a ; 溶解液6 ; 吸引ポンプ7 ; 治具7a ; 吸引盤7b ; 固定架台7c ; 押えパッド8 ; アンモニアガス濃度計8a ; 酸性化合物8b ; 真空ポンプ8c ; 積算流量計8d ; 流量計8e ; 管路8f ; 封入部 構造体コンクリート表面に閉空間形成用の計測容器を被せ、当該容器にアンモニアを含まない気体を供給して該容器を正圧に保ちつつ、容器よりアンモニアガスを含む空気を一定流量で吸引して取り込むアンモニアガス収集装置において、 該容器を正圧に保つために、該容器への気体の流量を該容器より吸引する気体の流量より大きく設定し、当該空気中のアンモニアガス量を捕集・計測して、前記構造体コンクリート単位面積当りのアンモニアガス発生量を知り、これから室内構造体コンクリート表面のアンモニアガス発生量を知る作業を継続的に実行して、アンモニアガス濃度変化を推定するとしたことを特徴とする構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法。 計測容器に供給するアンモニアを含まない気体はN2ガスボンベからの供給とした請求項1記載の構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法。 計測容器に供給するアンモニアを含まない気体は、アンモニア吸着フィルターを通して吸引したところの空気とした請求項1記載の構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法。 アンモニアガス収集装置におけるアンモニアガスの捕集は、イオン交換した純水への溶解とした請求項1〜3記載の構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法。 アンモニアガス収集装置におけるアンモニアの捕集は、アンモニアガス濃度計への取り込みとするとした請求項1〜3記載の構造体コンクリートを発生源としたアンモニアガスによる室内空気質環境の推定方法。