タイトル: | 特許公報(B2)_N−アルキルマレイミドの精製方法 |
出願番号: | 2000114508 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07D 207/448,C07B 63/04 |
植田 義弘 守屋 篤 岸野 和夫 入口 治郎 JP 4198863 特許公報(B2) 20081010 2000114508 20000417 N−アルキルマレイミドの精製方法 株式会社日本触媒 000004628 植田 義弘 守屋 篤 岸野 和夫 入口 治郎 20081217 C07D 207/448 20060101AFI20081127BHJP C07B 63/04 20060101ALN20081127BHJP JPC07D207/448C07B63/04 C07D 207/448 C07B 63/04 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平08−198846(JP,A) 特開平04−128264(JP,A) 特開平03−056463(JP,A) 特開平03−048659(JP,A) 特開昭61−229862(JP,A) 特開昭61−022065(JP,A) 2 2001302627 20011031 6 20061127 安藤 倫世 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ABS、PMMA、PVC等の樹脂の耐熱性向上剤や、医薬、農薬の中間体として有用なN−アルキルマレイミド類およびN−アルキルマレイミド類の精製方法に関する。【0002】【従来の技術】N−アルキルマレイミドの製造方法としては古くから幾つかの方法が知られている。その中で最も一般的な製造方法は、例えば米国特許第2444536号明細書にも開示されているように無水マレイン酸と一級アミンとを反応させ、生成するマレインアミド酸を無水酢酸および酢酸ナトリウムの存在下で脱水閉環し、イミド化する方法である。【0003】また、特開昭53−68770号公報明細書のように、無水マレイン酸と一級アミンとを有機溶媒中で反応させて生成したマレインアミド酸を単離することなしに、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒及び酸触媒の共存下に脱水閉環させる方法がある。【0004】さらに、特公平6−23195号公報明細書に開示されているようにマレインアミド酸類を水不溶性または水不混和性の不活性有機溶媒中で酸触媒の存在下に加熱し、閉環イミド化させることによりマレイミド類を製造する方法がある。【0005】【発明が解決しようとする課題】前記したN−アルキルマレイミドの製造方法において副生する副生成物は、一般的に水洗によって水層に抽出し、除去される。N−アルキルマレイミドの副生成物としてはマレイン酸、フマール酸、N−アルキルマレアミン酸、N−アルキルフマレアミン酸、N−アルキルアミノ無水コハク酸、2−アルキルアミノ−N−アルキルコハク酸イミド、2−N−アルキルマレアミン酸−N−アルキルコハク酸イミド、2−アルキルアミノ−N−アルキルマレアミン酸、N,N−ジアルキルマレアミン酸などであり酸性物質が多い。【0006】それゆえ、水洗に使用される水層は通常pH7以上の弱アルカリ性又はアルカリ性である。このアルカリ水溶液で副生成物の酸性物質を中和し、水溶性塩とすることで水層に抽出し、除去している。しかし、N−アルキルマレイミドは加水分解しやすい性質を持っており、特にアルカリ性での加水分解速度は速い。従って、アルカリ性水溶液で水洗すると副生成物が効率良く除去できるが、同時に主生成物であるN−アルキルマレイミドの加水分解が起こり、水洗時の収率ロスが大きくなるという問題を有している。【0007】また、N−アルキルマレイミドの加水分解による水洗時の収率ロスを小さくしようとすると中性の水で水洗すれば良いが、副生成物の除去率が低くなるという問題を有している。上記の何れの方法で水洗を行ってもN−アルキルアミノ無水コハク酸だけは殆ど除去できずに残存し、最終的に製品中に混入し製品純度が下がる。また、N−アルキルアミノ無水コハク酸の製品中含有量を下げる為に、蒸留工程で精製を行っても、蒸留時のロスが大きくなり、総合収率が下がるという問題を有している。【0008】本発明は、上記の様な問題点を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、水洗時のN−アルキルマレイミドの加水分解を抑制し、なおかつ従来は除去することが困難であったN−アルキルアミノ無水コハク酸を水洗により除去できるN−アルキルマレイミドの精製方法を提供することである。【0009】また本発明の他の課題は、N−アルキルアミノ無水コハク酸の含有量が少なく純度の高いN−アルキルマレイミド組成物を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者は上記問題を解決する為に鋭意検討したところ、脂肪族アルデヒドの存在下に水洗を行うとN−アルキルマレイミドの加水分解を抑制し、さらにN−アルキルアミノ無水コハク酸が選択的に水層に抽出されることを見出し、この発明を完成させるに至った。【0011】 すなわち、本発明は、粗製のN−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液を、ホルムアルデヒドを含む水溶液と攪拌混合させることを特徴とするN−アルキルマレイミドの精製方法に関する。【0012】前記攪拌混合後に生成する油層と水層とを分離し、該油層から精製されたN−アルキルマレイミドを得ることが好ましい。【0015】【発明の実施の形態】本発明に用いられるN−アルキルマレイミドとしては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−(n−プロピル)マレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−(n−ブチル)マレイミド、N−(sec−ブチル)マレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−(t−ブチル)マレイミド、N−(n−ヘキシル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−(n−オクチル)マレイミド、N−(n−ドデシル)マレイミド等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。【0016】これらの中でもN−シクロヘキシルマレイミドの精製の場合、副生成物である2−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸が分離困難であることから、特に本発明に好適に用いられる。【0017】 ホルムアルデヒドは市販のホルマリン水溶液を使用しても良い。また、ホルムアルデヒドの重合体であるパラホルムアルデヒドを水に溶解して、所望の濃度の水溶液に調製しても良い。また、市販のホルマリン水溶液を使用する場合には安定剤としてのメタノールが含有されていても良い。【0018】 前記ホルムアルデヒドの水洗時の濃度は、N−アルキルアミノ無水コハク酸の除去効果および経済的な面で、0.1〜50重量%が好ましい。【0019】本発明の精製方法における水洗時の液温は20〜100℃であるのが好ましい。その中でも30〜90℃がより好ましい。水洗時の液温が20℃に満たない場合は水洗後の水分離に多大な時間を要し、水洗時間が伸び、生産性が下がる場合がある。また、100℃を越える場合は水層と油層の界面が乱れ、水分離が不十分となる場合がある。【0020】本発明の精製方法における水洗時間は5〜90分が好ましい。その中でも10〜60分がより好ましい。水洗時間が5分に満たない場合は副生成物の除去率が小さくなる場合がある。また、90分を越える場合は水洗時間が伸び、生産性が下がる場合がある。また水洗のための攪拌は、一般的な攪拌方法で行える。【0021】本発明の精製方法に溶剤として使用される炭化水素としては、水不溶性ないし水不混和性の溶剤が好適に用いられる。例えば、ベンゼン、トルエン、沸点50〜120℃の石油留分、キシレン類、エチルベンゼン、クメン、プソイドクメン、メシチレン、t−ブチルベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、クロルベンゼン等が挙げられる。【0022】本発明の精製方法に使用されるN−アルキルマレイミド溶液の濃度は1〜100重量%が好ましい。その中でも10〜50重量%がより好ましい。【0023】本発明に精製方法に使用される洗浄水溶液のN−アルキルマレイミド溶液に対する比率は1〜200重量%が好ましい。その中でも5〜150重量%がより好ましい。【0024】以上の様にして水洗された液は、油層と水層の2相が生成するので、該油層と水層を通常の手段で分離し、分離された油層から蒸留等の手段により、精製されたN−アルキルマレイミドを得ることが好ましいものである。【0027】【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、N−シクロヘキシルマレイミドの純度及び、2−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の除去率については高速液体クロマトグラフにより定量し、算出した。【0028】製造例1(粗製N−シクロヘキシルマレイミドの合成)温度計および水分離器を備えた冷却管と、滴下ロートと攪拌機とを備えたフラスコに、オルソキシレン100gを仕込み、これに無水マレイン酸98.1gを加えてフラスコ内の温度を100℃にして無水マレイン酸を溶解した。【0029】次いで、上記溶媒600gにシクロヘキシルアミン99.2gを溶解した溶液を撹拌下に1時間で全量滴下してN−シクロヘキシルマレアミン酸の上記溶媒のスラリー液を合成した。【0030】次に、上記スラリー液にオルソリン酸85g、ジブチルジチオカルバミン酸銅0.1gを加えて加熱して撹拌下147℃に保ち、反応により生成する水を溶媒と共に系外に留去せしめながら7時間反応させた。反応終了後、147℃で反応液から下層に分離した酸触媒層を分離除去し、粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液が865.3g得られた。【0031】粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液中の固形分(固形分:マレイン酸、フマール酸、N−シクロヘキシルマレアミン酸、N−シクロヘキシルフマレアミン酸、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の総和)重量は165.3gであり、固形分濃度は19.1重量%であった。高速液体クロマトグラフで分析した結果、粗N−シクロヘキシルマレイミド中のN−シクロヘキシルマレイミドの純度は83重量%(対固形分)であり、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸が3.2重量%(対固形分)含まれていた。この粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液を用いて、以下の実施例および比較例に供した。【0032】実施例1温度計と冷却器と攪拌機とを備えたジャケット及び水分離用コック付き1000mlセパラブルフラスコに、製造例1で得られた粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液500gを仕込み、ジャケットに温水を流して液温を80℃に調節した。【0033】次にあらかじめ80℃に調節した35%ホルマリン110gを一括投入し、30分間撹拌し、洗浄を行った。洗浄後10分間静置し、下層の水層をフラスコ下部から抜き出した。【0034】水洗浄後の油層を高速液体クロマトグラフにて分析した結果、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の除去率は45.4重量%であった。【0035】続いて、油層に水を110g投入して液温80℃で30分間撹拌水洗し、水層を分離した。この操作を2回繰り返した後、有機層から10mmHg(abs)の減圧下溶媒を留去した。【0036】次に、フラスコ中に新たに0.3gのジブチルジチオカルバミン酸銅を加え、5mmHg(abs)の減圧下、内温130〜150℃に保ちながら30分かけてN−シクロヘキシルマレイミドの蒸留を行った。【0037】その結果、143.4gのN−シクロヘキシルマレイミドの白色結晶を得た。このものの純度は99.8重量%であり、収率は原料シクロヘキシルアミンに対して80.0モル%に相当する。結果を表1に示す。【0038】実施例2〜8実施例1とホルマリン濃度、水洗温度、水洗時間を表1の様にした以外は、同様の実験を行った。結果を表1に示す。【0039】比較例1実施例1と同様の装置で、35%ホルマリンの代わりに5重量%炭酸ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。結果を表1に示す。【0040】比較例2〜4実施例1とは、水層への添加物質、濃度、水洗温度、水洗時間を表1に記載した様にした以外は同様の操作を繰り返した。結果を表1に示す。【0041】【表1】【0042】【発明の効果】本発明によれば、N−アルキルマレイミドの加水分解を抑制し、なおかつ水洗により分離困難な不純物であるN−アルキルアミノ無水コハク酸の水洗除去が可能となる。 したがって、N−アルキルマレイミド類に含まれる不純物であるN−アルキルアミノ無水コハク酸を簡便に効率よく除去することができる。【0043】 本発明のN−アルキルマレイミドは、各種重合反応用単量体として、また、ABS、PMMA、PVC等の樹脂の耐熱性向上剤や、医薬、農薬の中間体として有用である。 粗製のN−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液を、ホルムアルデヒドを含む水溶液と攪拌混合させることを特徴とするN−アルキルマレイミドの精製方法。 攪拌混合後に生成する油層と水層とを分離し、該油層から生成されたN−アルキルマレイミドを得る請求項1に記載の精製方法。