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タイトル:特許公報(B2)_3−ビニル−セフェム化合物の製造方法
出願番号:2000111448
年次:2010
IPC分類:C07D 501/04,C07D 501/22,A61K 31/546,A61P 31/04


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亀山 豊 深江 一博 JP 4544692 特許公報(B2) 20100709 2000111448 20000413 3−ビニル−セフェム化合物の製造方法 大塚化学株式会社 000206901 田村 巌 100081536 亀山 豊 深江 一博 20100915 C07D 501/04 20060101AFI20100826BHJP C07D 501/22 20060101ALI20100826BHJP A61K 31/546 20060101ALN20100826BHJP A61P 31/04 20060101ALN20100826BHJP JPC07D501/04C07D501/22 114A61K31/546A61P31/04 C07D 501/04 C07D 501/22 CA/REGISTRY(STN) CASREACT(STN) 特表2000−502700(JP,A) 特開昭59−089689(JP,A) 特表平11−501017(JP,A) 1 2001294590 20011023 7 20070406 谷尾 忍 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、経口用抗生物質として幅広く使用されているセフジニル化合物の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】セフジニル化合物は、通常アミノ基、オキシム水酸基、カルボキシル基の少なくとも一つを保護した形で誘導される場合が多い。これらは最終段階で脱保護反応を行い(6R,7R)−3−ビニル−8−オキソ−7β−[(Z)−2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−1−アザ−5−チアビシクロ[4.2.0]オクタン−2−カルボン酸(セフジニル)へと導かれる。しかしながら、これらの化合物の脱保護反応は分子内に種々の官能基を持つセフジニル化合物では未だ決め手になる脱保護方法が確立していない。例えば特公平1−49273号においては、式(1)で表される化合物でR1=R2=H, R3=CHPh2の化合物が、アニソール/酢酸中、三フッ化ホウ素エーテレートを用いて脱保護反応を受けているが、反応収率が35%と低いばかりか、危険な三フッ化ホウ素化合物を多量に用いなければならず、とても工業的な方法とは言えない。また、特開昭62−294687号ではセフェム系抗生物質の脱保護反応として広く用いられている脱保護方法、即ちアニソール存在下トリフルオロ酢酸による脱保護を行う方法が紹介されているが、その揮発性、取り扱いの煩雑さ及び高価であるという理由から、工業的に使用しにくいトリフルオロ酢酸を多量に使用しなければならず、またこのような方法でさえ反応収率が28%という低収率であり、とても工業的に実施できる方法ではない。【0003】セフジニルの合成方法としては紹介されていないがカルボン酸保護基の脱保護方法として、99%蟻酸を溶媒として用いる方法[Chem. Pharm. Bull., 30, 4545(1982)]、アニソール存在下に塩化アルミニウムと反応させる方法[Tetrahedron Lett.,2793(1979)]、フェノール類を用いる方法[J. Org,Chem.,56,3633(1991)]も知られている。蟻酸を使用する方法では高価な99%蟻酸を反応溶媒として大過剰に使用する必要があり、その回収、再使用工程で酸に不安定なβ−ラクタム誘導体が分解するため生成したカルボン酸化合物の収率が低下する。また、アニソール存在下塩化アルミニウムを使用する方法では塩化アルミニウムの酸性度の強さからセフジニルの合成には適用できない。また、フェノール類を使用する方法では蟻酸やトリフルオロ酢酸を多量に使用した場合と同様、強酸性条件下で不安定なセフジニルでは収率良く反応を進行させることが出来ない。また、これらすべての反応において最終セフジニルではオキシム基が水酸基となるため多量のプロトン酸や強力なルイス酸のもとではシン/アンチの異性化が進行し不適切な不純物を増加させるためこれらの脱保護方法は使用できない。このようにβ−ラクタム化合物における一般的な酸加水分解による脱保護反応では目的のセフジニル化合物を収率及び選択性良く製造することは極めて困難な状況にあったため、工業的に安価且つ効率の良い脱保護方法の出現が望まれていた。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、式(1)で表される保護された3−ビニル−セフェム誘導体から式(2)で表される3−ビニル−セフェム化合物を高価な試薬を使用することなく、効率良く製造し得る新規な技術を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は式(1)で表される保護された3−ビニル−セフェム誘導体を有機溶媒中過ハロゲン化酸および有機プロトン酸の存在下に処理して式(2)で表される3−ビニル−セフェム化合物を得ることを特徴とする3−ビニル−セフェム化合物の製造方法に係る。【0006】【化3】(式中R1,R2及びR3は水素原子または置換基を有することのあるアリールメチル基を示す。但し、R1,R2及びR3は同時に水素原子ではない。)【0007】【化4】【0008】本発明では、酸に不安定なセフジニル化合物の脱保護反応を効率良く行うため有機溶媒中において、原料骨格中のアミド基およびアミノ基に対し弱い有機プロトン酸を水素結合させ、強力な過ハロゲン化酸を必要量のみ使用することにより、セフジニル化合物を安定にまた収率良く合成することが可能となった。本反応では反応に寄与できる強力な過ハロゲン化酸は必要最小限の量のみしか使用しないため反応系で安定にセフジニル化合物が存在し得る。また、多量の酸を必要としないため、後処理も使用した酸の量にあわせて必要量の塩基で有機溶媒中から抽出するのみで簡単に単離操作が行えるのも特徴で、工業的に簡便且つ安価に製造可能な製造方法を確立することに成功した。【0009】本発明において、R1、R2、R3で表される置換基を有することのあるアリールメチル基としては、置換基を有してもよいベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、アニシルメチル基、ナフチルメチル基等をあらわす。置換していても良い置換基としては、ヒドロキシ基、メチル、エチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4の低級アルキル基、メトキシ、エトキシ等の炭素数1〜4の低級アルコキシ基等を挙げることが出来る。ジフェニルメチル基には、置換又は非置換のフェニル基がメチレン鎖あるいはヘテロ原子を介して分子内で結合しているタイプのものも含有される。具体例としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、3,4,5−トリメトキシベンジル基、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、ジトリルメチル基等を挙げることができる。【0010】本発明で使用できる有機プロトン酸としては、pKa=3〜5のものが好ましく、例えば蟻酸、酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸等の置換もしくは無置換の低級アルキルカルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の置換もしくは無置換の芳香族カルボン酸等が幅広く利用できる。【0011】有機プロトン酸の使用量としては、上記式(1)の化合物に対し、通常1〜20倍モル当量、好ましくは2.5〜10倍モル当量、特に好ましくは3〜5倍モル当量である。【0012】過ハロゲン化酸としては、過塩素酸、過ヨウ素酸、過臭素酸等が例示できる。その使用量としては通常触媒量用いれば良いが、式(1)の化合物に対して通常0.1〜5倍モル当量使用するのが好ましい。過ハロゲン化酸の濃度としては通常市販されている60%の物がそのまま使用できるが、反応系により10〜50%の範囲で希釈して用いることも出来る。【0013】本発明で使用できる有機溶媒としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の低級カルボン酸の低級アルキルエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の置換もしくは未置換の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジブロモエタン、プロピレンジクロライド、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類を挙げることができる。特に好ましい溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。またこれらの有機溶媒には、必要に応じて水が含有されていてもよい。これらの溶媒は、式(1)の化合物1kg当たり、通常2〜200L程度、好ましくは3〜100L程度使用されるのがよい。反応は−20〜100℃、好ましくは0〜50℃の範囲で行なわれる。【0014】式(2)の化合物は、反応終了後、通常の抽出操作或いは晶析操作を行なうことによりほぼ純品として得ることができるが、その他の方法によっても勿論精製することができる。【0015】【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。【0016】実施例1式(1)の化合物(R1が水素原子、R2がトリチル基、R3が水素原子、1a)1gを塩化メチレン10mlに溶解し、この溶液に98%(w/w)蟻酸0.18ml(3当量)および60%(w/w)過塩素酸0.16ml(1.6当量)を加え、30℃で1時間反応させた。この反応液に飽和重曹水7mlを加えて目的物を抽出した。得られた水層に2規定塩酸を加えてpH=3.0に調整し、0〜3℃に冷却した。1時間後、析出した結晶を吸引ろ過、減圧乾燥を行って目的の式(2)のセフジニル化合物を0.59g(収率95%)得た。1H NMR (DMSO−d6) 3.32(s,1H),3.53(d,J=18Hz,1H),3.81(d,J=18Hz,1H),5.16(d,J=4.8Hz,1H),5.29(d,J=11.7Hz,1H),5.56(d,J=17.1Hz,1H),5.76(dd,J=4.8,8.1Hz,1H),6.64(s,1H),6.89(dd,J=11.7,17.1Hz,1H),7.11(s,2H),9.47(d,J=8.1Hz,1H),11.3(s,1H).【0017】実施例2原料化合物に式(1a)の化合物のp−トルエンスルホン酸−2ジメチルアセトアミド塩を用いて、実施例1と同様に反応を行った結果、収率96%で式(2)のセフジニル化合物を得た。得られたセフジニル化合物の1H NMRは実施例1のそれと一致した。【0018】実施例3〜8反応溶媒を変え、それにあわせて反応時間を調整した以外は実施例1と同様の反応を行った結果を表1に示す。【0019】【表1】【0020】実施例9〜12過塩素酸の濃度を変え、反応時間を調整した以外は実施例1と同様の反応を行った結果を表2に示す。【0021】【表2】【0022】実施例13〜16プロトン酸を以下の酸に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った結果を表3に示す。【0023】【表3】【0024】実施例17化合物(1a)を化合物(1b, R1=トリチル基,R2=トリチル基,R3=水素原子)に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、収率91%で式(2)のセフジニル化合物が得られた。得られたセフジニル化合物の1H NMRは実施例1のそれと一致した。【0025】実施例18化合物(1a)を化合物(1c, R1=水素原子,R2=トリチル基,R3=p−メトキシベンジル基)に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、収率92%で式(2)のセフジニル化合物が得られた。得られたセフジニル化合物の1H NMRは実施例1のそれと一致した。【0026】実施例19化合物(1a)を化合物(1d,R1=水素原子,R2=トリチル基,R3=ジフェニルメチル基)に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、収率94%で式(2)のセフジニル化合物が得られた。得られたセフジニル化合物の1H NMRは実施例1のそれと一致した。【0027】実施例20化合物(1a)を化合物(1e,R1=トリチル基,R2=トリチル基,R3=p−メトキシベンジル基)に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、収率89%で式(2)のセフジニル化合物が得られた。得られたセフジニル化合物の1H NMRは実施例1のそれと一致した。【0028】実施例21化合物(1a)を化合物(1f,R1=トリチル基,R2=トリチル基,R3=ジフェニルメチル基)に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った結果、収率91%で式(2)のセフジニル化合物が得られた。得られたセフジニル化合物の1H NMRは実施例1のそれと一致した。【0029】【発明の効果】本発明によれば、酸に不安定なセフジニル化合物を水素結合に必要な量の有機プロトン酸と、少量の過ハロゲン化酸の組み合わせにより、弱酸による水素結合と強酸による脱保護を有機溶媒中で巧妙に組み合わせ、酸に不安定なセフジニル化合物を高収率、高純度で製造することが可能となった。また必要最小限の酸を用いるため後処理も簡便で工業的に極めて容易なセフジニル化合物の製造方法を提供することが可能である。 式(1)で表される保護された3−ビニル−セフェム誘導体を有機溶媒中過ハロゲン化酸および有機プロトン酸の存在下に処理して式(2)で表される3−ビニル−セフェム化合物を得ることを特徴とする3−ビニル−セフェム化合物の製造方法。(式中R1,R2及びR3は水素原子または置換基を有することのあるアリールメチル基を示す。但し、R1,R2及びR3は同時に水素原子ではない。)


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