生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_マイクロカプセル及びその製造方法
出願番号:2000089744
年次:2011
IPC分類:A61K 8/11,A61K 8/06,A61K 8/73,A61K 8/97,A61K 9/50,A61Q 1/00,A61Q 1/08,A61Q 17/00,A61Q 19/00,B01J 13/06


特許情報キャッシュ

宮沢 和之 金田 勇 梁木 利男 JP 4637993 特許公報(B2) 20101203 2000089744 20000328 マイクロカプセル及びその製造方法 株式会社資生堂 000001959 岩橋 祐司 100092901 宮沢 和之 金田 勇 梁木 利男 JP 1999212373 19990727 20110223 A61K 8/11 20060101AFI20110203BHJP A61K 8/06 20060101ALI20110203BHJP A61K 8/73 20060101ALI20110203BHJP A61K 8/97 20060101ALI20110203BHJP A61K 9/50 20060101ALI20110203BHJP A61Q 1/00 20060101ALI20110203BHJP A61Q 1/08 20060101ALI20110203BHJP A61Q 17/00 20060101ALI20110203BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20110203BHJP B01J 13/06 20060101ALI20110203BHJP JPA61K8/11A61K8/06A61K8/73A61K8/97A61K9/50A61Q1/00A61Q1/08A61Q17/00A61Q19/00B01J13/02 E A61K 8/00-8/99 A61Q 1/00-99/00 特開平9−302379(JP,A) 特開平8−259451(JP,A) 特開平10−306073(JP,A) 特開平1−268620(JP,A) 特開平9−255562(JP,A) 特開2001−97819(JP,A) 11 2001096146 20010410 18 20050114 2007016456 20070613 内田 淳子 森井 隆信 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロカプセル、特にカプセルの安定性、使用感、内包油滴の保持性の改良に関する。【0002】【従来の技術】カプセル中に内包油滴を有するマイクロカプセルは、食品、医薬品、化粧品等の分野で検討され、例えば、カプセル内に薬剤を内包して配合することにより、製品中での薬剤の安定性を改善しようとする試みがなされている。マイクロカプセルの製造方法としては、内包油滴となる油相と、カプセル化剤を含む水相とからO/Wエマルジョンを調製し、このエマルジョンを微粒子に成形、カプセル化する方法がある。例えば、O/Wエマルジョンをさらに外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、水相を硬化させてカプセル化する方法、O/Wエマルジョンを空気中で噴霧しながら硬化させるスプレークーリング、O/Wエマルジョンをノズルから滴下して気体中あるいは液体中で硬化させる滴下法などがある。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、通常の乳化方法ではO/Wエマルジョンの乳化粒子を1μm以下とすることは困難であり、例え1μm以下の乳化粒子径を持つO/Wエマルジョンができたとしてもその安定性が十分でないため、その後の工程で油滴同士が融合し、マイクロカプセルの内包油滴径が大きくなってしまう傾向がある。そして、このような場合、内包油滴のカプセル化効率を上げるためにマイクロカプセル径を大きくせざるを得ないという問題があった。【0004】特に、O/W/Oエマルジョンを経由する方法では、O/Wエマルジョンがさらに外油相に分散乳化されるので、内包油滴同士の融合に加えて内包油滴と外油相の合一が起こりやすい。このため、O/W/O乳化の際に温度や攪拌速度が制限され、マイクロカプセルの粒径のコントロールが非常に難しく、また得られたカプセルの安定性も十分でないという問題があった。また、製造時の内油相のロスを抑制することも望まれていた。【0005】さらに、他の基材に配合した場合のマイクロカプセルの安定性や、肌上での使用感、内包油滴の保持性も重要である。例えば、乳液やクリームなど粘性媒体中で高速攪拌して得られるような製品においては、その製造工程にマイクロカプセルを添加するとカプセルが破壊されやすい。このような製品の製造工程中でもカプセルが壊れず、また肌上にのばして塗布した場合にも内包油滴がカプセル内に保持されて放出されないようなマイクロカプセルの開発が望まれていた。このようなマイクロカプセルは、例えばサンスクリーン化粧料やメークアップ化粧料等において有用である。すなわち、これらの化粧料では酸化亜鉛や酸化チタン等の無機顔料が配合されることが多いが、有機紫外線吸収剤を無機顔料と併用すると、無機顔料中に含まれる金属イオンと有機紫外線吸収剤との錯体形成により、経時的に着色が起こり、製品が変色することがある。よって、このような有機紫外線吸収剤をマイクロカプセル中に内包させて製品中に配合し、且つ製品基材中や、塗布後においても有機紫外線吸収剤がカプセル内に保持されれば、変色や、紫外線吸収剤が直接皮膚に接触することを防ぐことができる。【0006】例えば、特開平9−255562号公報には、水相に親水性高分子、外油相に有機変性粘土鉱物を配合したO/W/Oエマルジョンが報告されているが、このような場合でもO/W/Oエマルジョンからカプセルを固形分として取り出し、あるいは油性分散物のまま、他の基剤と一緒に仕込んで製品とする場合には、製品の製造工程中での機械的剪断やベース組成の変化によりカプセルが壊れてしまうことがあった。また、肌上に塗布した場合の内包油滴の保持性にも劣ることがあった。【0007】本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、一つには、他の基剤に配合して製品化した場合や、製品保存中、塗布後においてもカプセル内に内包油滴が安定に保持されるマイクロカプセルを提供することであり、一つにはこのようなマイクロカプセルを、簡便且つ効率的に製造でき、しかも、カプセル粒径を幅広い範囲で容易にコントロールできるマイクロカプセルの製造方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】 前記従来技術の課題に鑑み、本発明者らが検討を行った結果、親水性高分子ゲル化剤をカプセルの破断強度が特定の範囲となるよう用いたマイクロカプセルにおいて、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明にかかるマイクロカプセルは、平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つカプセル化剤が寒天又はカラギーナンであり、水相に前記カプセル化剤を溶解したO/W/Oエマルジョンの水相を冷却固化して得られ、前記水相から調製されるゲルの破断強度が2,000〜5,000g/cm2であることを特徴とする。【0009】 本発明において、マイクロカプセルが親水性非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒とを含むことが好適である。 また、本発明にかかるマイクロカプセル油性分散物は、前記何れかに記載のマイクロカプセルが、油相中に分散していること特徴とする。【0010】 本発明のマイクロカプセル油性分散物において、内油相と、寒天又はカラギーナンを含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、 前記O/Wエマルジョンを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンを調製し、 前記O/W/Oエマルジョンの水相を固化させて得られることが好適である。 また、前記O/Wエマルジョンが、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、 該水溶性溶媒中油型エマルジョンに、寒天又はカラギーナンの水溶液を添加して調製されるO/Wエマルジョンであることが好適である。【0011】また、本発明のマイクロカプセルは、前記何れかに記載のマイクロカプセル油性分散物の外油相を除去して得られるものであることが好適である。また、本発明のマイクロカプセル又はその油性分散物において、カプセル内に有機紫外線吸収剤を含有することが好適である。また、本発明にかかる化粧料は、前記何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする。また、本発明にかかるサンスクリーン化粧料は、前記のカプセル内に有機紫外線吸収剤を含有するマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする。【0012】 また、本発明にかかるマイクロカプセルの製造方法は、内油相と、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤である寒天又はカラギーナンを予め加熱溶解しておいた水相とから、該ゲル化剤の固化温度以上で平均粒子径が0.01〜3μmのO/Wエマルジョンを調製するO/Wエマルジョン調製工程と、 前記O/Wエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以上で外油相中に分散乳化するO/W/Oエマルジョン調製工程と、 前記O/W/Oエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以下に冷却して水相を固化するカプセル化工程と、を備え、前記水相から調製されるゲルの破断強度が2,000〜5,000g/cm2であることを特徴とする。 また、前記製造方法において、O/Wエマルジョン調製工程が、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相成分を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、 該水溶性溶媒中油型エマルジョンと、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤である寒天又はカラギーナンを予め加熱溶解しておいた水溶液とを該ゲル化剤の固化温度以上で混合する工程を含むことが好適である。【0013】【発明の実施の形態】本発明のマイクロカプセルは、内包油滴となる内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、これを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、O/W/Oエマルジョンの水相を固化してカプセル化することにより得ることができる。図1は、本発明のマイクロカプセルの概念図であり、マイクロカプセル2内には、内包油滴(内油相)1を有している。【0014】 親水性高分子ゲル化剤としては、寒天、カラギーナンなどの加熱冷却により固化してゲルを形成するものは、イオンの影響を受けにくく、また製法が簡便で均一に固化できるという点で好ましい。本発明においては、このような加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤である寒天又はカラギーナンをカプセル化剤の主成分とする。中でも、ゲルの性質、安定性、使用感等の点から、特に好ましくは寒天である。寒天としては、例えば、伊那寒天PS−84、Z−10、AX−30、AX−100、AX−200、T−1、S−5、M−7(伊那食品工業社製)等の市販品を用いることができる。 本発明においては、親水性高分子ゲル化剤の2種以上を併用してもよい。加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤と共に、アルギン酸やカードラン、ヒアルロン酸等のように、Ca等のイオンや、その他の凝固剤により固化する親水性高分子ゲル化剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。【0015】また、必要に応じてその他の親水性高分子、例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースをはじめとする合成高分子や、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の天然高分子を本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。特に、ケルトロールを寒天と併用すると、カプセルが軟らかくなる傾向がある。水相としては、水の他、水に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。【0016】本発明の内油相、外油相としては、水相と混合せず、製造時に全体として液状であれば極性油〜非極性油まで、通常使用され得る幅広い油分の中から選択することができる。例えば、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、天然油脂、シリコーン油等が挙げられる。また、これら油分に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。なお、内包油滴の外油相への浸潤防止の点から、内油相と外油相の極性に差がある方が好ましい。【0017】本発明のマイクロカプセル製造の第1段階であるO/Wエマルジョンの調製においては、平均粒径が0.01〜3μm、好ましくは0.01〜1μmと非常に微細で、しかも安定なエマルジョンとすることが必要である。粒径が大きすぎると、その後のO/W/O乳化で内油相同士の融合や、内油相と外油相との合一を生じやすく、十分な乳化を行うことができない。また、内油相のロスが大きくなる傾向がある。【0018】このようなO/Wエマルジョンを容易に得る方法として、例えば、親水性非イオン界面活性剤と水溶性溶媒とを用いた乳化法(特公昭57−29213号公報)が有効である。すなわち、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを製造し、該エマルジョンに親水性高分子ゲル化剤水溶液を添加して、O/Wエマルジョンを得る。親水性高分子ゲル化剤の添加については、水溶性溶媒中油型エマルジョンに水を加えてO/Wエマルジョンとしてから、親水性高分子ゲル化剤水溶液で希釈してもよい。また、特に問題を生じない限り予め水溶性溶媒中に親水性高分子ゲル化剤を添加しておくことも可能である。【0019】前記水溶性溶媒としては、親水性非イオン界面活性剤を溶解し、その後に添加する内油相との界面に効率よく配向させる効果を持つものであり、低級一価アルコール類、低級多価アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、エーテル類、アミン類、低級脂肪酸類、その他親水性で非イオン界面活性剤を溶解するものであれば極めて広い範囲の物質から選択することができる。具体的には、特公昭57−29213号公報記載のものが例示されるが、化粧料や医薬品において好ましくはエタノール、プロパノール等の低級一価アルコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級多価アルコールである。なお、水溶性溶媒中に少量の水、例えば水溶性溶媒に対して15重量%以下の水を含有していてもよい。【0020】また、親水性非イオン性界面活性剤としては、POE付加型、又はPOE・POP付加型非イオン性界面活性剤が好ましく、具体的には特公昭57−29213号公報記載のものが例示される。第2段階のO/W/Oエマルジョンの調製は、O/Wエマルジョンを外油相に分散乳化することにより行う。このとき用いる乳化機は特に限定されず、通常乳化に用いられる攪拌装置を適宜用いればよい。なお、外油相中には、乳化剤として親油性界面活性剤を配合しておくことが好ましい。親油性界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の何れも用いることができ、外油相成分の種類等に応じて公知のものから適宜選択して用いればよい。【0021】このようなO/W/Oエマルジョンの水相を固化することにより、微細な内包油滴を多数含有するマイクロカプセルとすることができる。本発明のマイクロカプセルの好ましい製法としては、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め水(問題のない限り他の水性成分を含んでいてもよい)に加熱溶解してゲル化剤水溶液を調製しておき、これを前記水溶性溶媒中油型エマルジョンにゲル化剤の固化温度以上で添加してO/Wエマルジョンとし、系の温度を固化温度以上に維持しながらO/W/Oエマルジョンまで調製した後、固化温度以下に冷却して水相を固化し、カプセルとする方法が挙げられる。例えば、寒天やカラギーナンの場合、固化温度は約30℃であり、ゲル化剤水溶液の調製温度は90〜100℃、エマルジョンの調製温度は約50〜90℃とすることが好適である。なお、イオン等の添加により固化するものを併用する場合には、冷却前にO/W/Oエマルジョンに、そのイオンを含む金属塩またはその水溶液を添加後、冷却すればよい。【0022】本発明のマイクロカプセルは、O/Wエマルジョンの段階で内油相を上記のように微細且つ安定に分散しているので、O/W/Oエマルジョン調製時の乳化条件を自由に設定でき、カプセル径のコントロールが容易である。例えば、O/W/O乳化時の温度は室温〜約90℃、攪拌速度は約100〜10,000rpmの広い範囲で行うことができ、このような場合でも、内油相のロスがなく、内油相の融合による内包油滴径の増大もほとんどない。O/W/O乳化時の温度、攪拌速度が高い程、カプセル径は小さくなり、親水性ゲル化剤濃度や外油相の粘度が高いほど、カプセル径は大きくなる傾向がある。本発明の方法によれば、マイクロカプセル径は5〜1000μmの幅広い範囲で制御可能である。【0023】本発明のマイクロカプセルの破断強度は2,000〜5,000g/cm2、好ましくは2,200〜4,500g/cm2である。破断強度が小さすぎると耐剪断性が十分でなかったり、塗布した際に内包油滴が保持されずに放出されてしまうことがある。また、破断強度をこれ以上大きくしても効果の増大は期待できない。なお、カプセルそのものの破断強度を直接測定することはできないので、水相組成で調製したゲルについてレオメーターで測定を行い、これをカプセルの破断強度とした。【0024】従来のマイクロカプセルでは、乳化工程などに添加するとカプセルが破壊されてしまうことがあり、マイクロカプセルを乳化系に配合する場合には、予め乳化物を調製し、その後ゆっくりと攪拌しながらマイクロカプセルを配合する必要があり、工程が煩雑であった。本発明のマイクロカプセルは、高速攪拌を伴う乳化工程に添加した場合でもカプセルの破壊がほとんど起こらないという、非常に優れた耐剪断性を有する。従って、乳化系に配合する場合には、マイクロカプセルを固形分として、あるいは油性分散物のまま他の成分とともに仕込んでから、乳化を行うこともできる。また、その他種々の基剤にも配合できる。【0025】また、本発明のマイクロカプセルは、保存中、内包油滴が経時的にカプセル内に浸潤して内油相が外油相中にしみ出したり、マイクロカプセルが壊れたりすることがほとんどない。従って、内包油滴中に安定性の悪い油性薬剤を配合しておけば、薬剤の安定性を改善することができる。例えば、レチノール、ビタミンE等の易酸化性薬剤や、シクロスポリン、ビタミンCパルミテート、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン等の易結晶性油性薬剤が挙げられる。【0026】特に、O/Wエマルジョン調製時に油性ゲル化剤として油相に高級脂肪酸グリセリル、デキストリン脂肪酸エステル等を配合すると、内包油滴の浸潤を顕著に抑制することができる。なお、これら油性ゲル化剤の配合量としては、内油相中0.05〜5重量%、好ましくは0.2〜1重量%である。少なすぎるとこれら油性ゲル化剤の浸潤防止効果が十分に発揮されず、多すぎる場合には他の成分に影響を及ぼすことがある。【0027】また、ゲルの弾力について、一般にヤング率が小さいほど軟らかくて弾力があり、ヤング率が大きいほど硬くて弾力がないゲルであるといえるが、このヤング率を本発明のマイクロカプセルを塗布した時の使用感の指標の一つとすることができる。本発明においては、マイクロカプセルのヤング率を30〜500N/cm2とすることが好ましく、特に、30〜300N/cm2、好ましくは30〜200N/cm2とすれば、なめらかな使用感が得られる。また、カプセルのヤング率を300〜500N/cm2とすると、マッサージ効果(スクラブ効果)が得られる。なお、カプセルのヤング率は、カプセルの破断強度と同様、水相組成で調製したゲルについてレオメーターで測定を行い、これをカプセルのヤング率とした。【0028】マイクロカプセル配合化粧料としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、ローション、美容液、マッサージ料、スクラブ料等の基礎化粧料、ボディソープ、クレンジング料等の洗浄料、ファンデーション、フェイスパウダー、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、マスカラ、フェイスパウダー等のメークアップ化粧料、ヘアークリーム、へアートニック、トリートメント、育毛料、シャンプー、リンス等の毛髪化粧料等が挙げられるが、特に好ましくは有機紫外線吸収剤を内包するマイクロカプセルを配合したサンスクリーン化粧料、メークアップ化粧料である。また、その性状としては乳化状、可溶化状、液状、固形状、ジェル状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。これらは、本発明の効果が損なわれない限り特に制限されない。また、本発明の化粧料には、通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。【0029】なお、本発明のマイクロカプセルは、油性分散物の状態で、あるいは、遠心分離、濾過等の常法により外油相3の一部あるいは全部を除去してから他の基剤に配合することもできる。また、ファンデーションや口紅等の固形化粧料や、ローション等の水性基剤に配合することも可能である。なお、本発明のマイクロカプセルを固形分のまま長期にわたって放置すると収縮を生じることがあるので、水性基剤又は油性基剤中でストックすることが好ましい。以下、具体例を挙げて本発明を説明する。なお、配合量は特に指定のない限り重量%で示す。【0030】試験例1(マイクロカプセル処方)内油相:香料 5 重量%セバシン酸ジオクチル 15水相:1,3−ブチレングリコール 10POE(60)硬化ヒマシ油 1寒天 表1参照イオン交換水 to100外油相:POEメチルポリシロキサン共重合体 1オクタメチルシクロテトラシロキサン 49【0031】(マイクロカプセル製法)内油相を、1,3−ブチレングリコール及びPOE(60)硬化ヒマシ油の混合物に徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。寒天をイオン交換水に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記寒天水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョン(平均粒子径0.5μm)を得た。O/Wエマルジョンを外油相に添加して50℃×500rpmで乳化し、O/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却し、水相の寒天を固化させることにより、マイクロカプセル油性分散物(カプセル平均粒子径100μm、内包油滴平均粒子径0.5μm)を得た。【0032】なお、本発明において、内包油滴の平均粒子径は動的光散乱法(大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−700使用)により測定し、またマイクロカプセルの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製)で測定した粒度分布から求めた。【0033】(カプセルの破断強度、ヤング率)水相を90℃で加熱溶解し、冷却して厚さ32mmのゲルを調製した。このゲルの破断強度及びヤング率をレオメーター(不動工業製NRM−2010−CW)により測定し、カプセルの破断強度、ヤング率とした。測定条件は下記の通り。【0034】(耐剪断性)マイクロカプセルを乳化工程に添加した場合の安定性(耐剪断性)について、次のように調べた。すなわち、下記の処方でマイクロカプセルを配合したW/Oクリームを調製した。W/O乳化はホモミキサーで70℃×9000rpmで行った。得られたクリーム中のマイクロカプセルの破壊の有無を顕微鏡にて観察し、カプセルの破壊が認められた場合は耐剪断性×、破壊が認められなかった場合には耐剪断性○とした。【0035】耐剪断性被験クリーム:マイクロクリスタリンワックス 9.0重量%固形パラフィン 2.0ミツロウ 3.0ワセリン 5.0スクワラン 34.0ヘキサデシルアジピン酸エステル 10.0プロピレングリコール 5.0モノオレイン酸グリセリン 3.5POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0精製水 22.5マイクロカプセル油性分散物 5.0防腐剤 適量香料 適量【0036】(保持試験)マイクロカプセル油性分散物、及び5%香料含有エタノール溶液(コントロール)各0.1gをそれぞれ左右の手首内側にへらでのせた。これを指先でのばす直前(塗布直前)、のばした直後(塗布直後)及び3時間経過後に、におい(香料臭)の有無を下記の基準で評価した。評価基準○:においがほとんどしない。×:においあり。【0037】【表1】【0038】試料1は、耐剪断性が十分でない。試料2〜3は耐剪断性は良好であるが、塗布によりカプセルから香料が放出されてにおいが感じられた。これに対して、試料4〜6は塗布してもにおいがほとんど感じられず、カプセルから香料が放出されずに保持されていることが示唆された。従って、耐剪断性と塗布後の内包油滴の保持性を発揮するためには、カプセルの破断強度は2,000〜5,000g/cm2、特に2,200〜4,500g/cm2であることが好適である。【0039】【実施例】実施例1試験例1と同様、二段階乳化法を用いて調製したマイクロカプセル(実施例)と、従来法により調製したマイクロカプセル(比較例)について、比較を行った。なお、何れの場合もO/Wエマルジョンの平均粒子径は、0.5μmとした。また、水相で調製したゲルの破断強度は何れも2,300g/cm2であった。結果を表2に示す。【0040】【表2】【0041】実施例の内包油滴径はO/Wエマルジョン調製時の乳化粒子径とほとんど同じであるのに対し、比較例の内包油滴径は10μmにまで大きくなった。これは、比較例ではO/Wエマルジョンが不安定で、O/W/O乳化時に内油相の融合が著しく生じたためと考えられる。【0042】また、実施例では、O/W/O乳化条件が50℃×500rpm(マイルドな乳化条件)及び70℃×2500rpm(シビアな乳化条件)何れの場合にも、カプセル化効率はほぼ100%であり、内油相のロスがなかった。これに対し、比較例では、50℃×500rpmの乳化条件でさえ、カプセル化効率は低く、内油相のロスが著しい。さらに高温あるいは高速攪拌してシビアな条件でO/W/O乳化を行うと、O/W/Oエマルジョンは得られなかった。このことから、比較例では内油相同士の融合に加えて、内油相と外油相の合一も起こっていることが示唆された。また、実施例のマイクロカプセルは乳化工程に添加しても壊れず耐剪断性に優れていたが、比較例のマイクロカプセルは破壊が多かった。さらに、実施例のマイクロカプセル油性分散物の50℃2ヶ月保存後の内油相カプセル化率は、ほぼ100%を維持していた。【0043】以上のように、本発明のマイクロカプセルはその製造における乳化条件を自由に設定できるので、マイクロカプセルの粒径のコントロールが容易である。また、内油相のカプセル化率が高く、製造時のロスがないことが理解される。なお、表2のマイクロカプセルの処方および製法、内油相カプセル化率測定法は次の通りである。【0044】【0045】製法:(1)と(2)とを混合して内油相とした。(3)、(4)及び(6)0.5%の混合物に内油相を徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。(5)を(6)26%に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記寒天水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョンを得た。O/Wエマルジョンを、所定の温度を維持しながら(7)と(8)の混合物に添加して乳化し、O/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却し、水相の寒天を固化させることにより、マイクロカプセル油性分散物を得た。【0046】【0047】製法:(1)と(2)とを混合して内油相とした。(3)、(4)及び(6)13%の混合物に内油相を添加して乳化し、O/Wエマルジョンを得た。(5)を(6)15%に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記O/Wエマルジョンに、寒天水溶液を混合した。以下、上記実施例と同様に行った。【0048】(内油相カプセル化率)内油相にγ-リノレン酸エチル0.2重量%を配合し、得られたマイクロカプセル油性分散物を遠心分離して、外油相中のγ-リノレン酸エチル量を高速液体クロマトグラフィーにより定量した。γ-リノレン酸エチルの配合量、外油相中のγ-リノレン酸エチル量から、下記計算式によりカプセル化率を算出した。カプセル化率(%)=[(配合量−外油相中の含有量)/配合量]×100【0049】【0050】(製法)(1)と(2)とを混合して内油相とした。(3)、(4)及び(6)0.5%の混合物に内油相を徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。(5)を(6)の残部に90℃で加熱溶解してカラギーナン水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記カラギーナン水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョンを得た(平均粒子径0.5μm)。O/Wエマルジョンを、(7)、(8)、(9)の混合物に加え、50℃×7000rpmで乳化してO/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却して、水相のカラギーナンを固化させることにより、マイクロカプセル油性分散物を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は10μm、内包油滴の平均粒径は0.5μmであり、内油相のカプセル化率は100%であった。また、カプセルの破断強度は2,400g/cm2であった。【0051】配合例1 O/Wファンデーション(マイクロカプセル処方)内油相:4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン 5 重量%セバシン酸ジオクチル 15水相:1,3−ブチレングリコール 10POE(60)硬化ヒマシ油 1寒天(M−7) 3アスコルビン酸2-グルコシド 5イオン交換水 11外油相:POEメチルポリシロキサン共重合体 1オクタメチルシクロテトラシロキサン 49【0052】(カプセル製法)試験例1と同様にしてマイクロカプセル油性分散物を調製し、これを濾過してマイクロカプセルを得た(破断強度3,500g/cm2)。【0053】(ファンデーションの調製)【表3】【0054】常法によりO/Wファンデーションを調製し、50℃で1ヶ月間保存後の変色の有無を肉眼で観察した。その結果、有機紫外線吸収剤(4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン)を単に配合したファンデーションBは変色が認められたが、紫外線吸収剤を内包するカプセルを配合したファンデーションAでは変色は認められなかった。従って、本発明のマイクロカプセルは内包油滴の保存安定性に優れるものである。また、試験例1で示されたように、塗布後も内包油滴がカプセル内に保持されので、紫外線吸収剤が直接皮膚に接触することを防ぐことができる。【0055】配合例2 W/Oサンスクリーンクリーム【表4】【0056】配合例1と同様、有機紫外線吸収剤(4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン)を単に配合したサンスクリーンクリームBでは変色が認められのに対し、有機紫外線吸収剤を内包するカプセルを配合したサンスクリーンクリームAでは変色は認められなかった。【0057】配合例3 口紅二酸化チタン 5 重量%赤色201号 0.6赤色202号 1赤色223号 0.2キャンデリラロウ 9固形パラフィン 8ミツロウ 5カルナバロウ 5ラノリン 11ヒマシ油 5.22−エチルヘキサン酸セチル 20イソプロピルミリステート 10配合例1のマイクロカプセル(固形分) 20酸化防止剤 適量香料 適量【0058】配合例4 頬紅カオリン 20 重量%二酸化チタン 4.2酸化鉄(赤) 0.3赤色202号 0.5セレシン 15流動パラフィン 15イソプロピルミリステート 5配合例1のマイクロカプセル(固形分) 20酸化防止剤 適量香料 適量【0059】配合例5 スクラブ洗顔料(マイクロカプセル処方)内油相:スクワラン 3 重量%水相:1,3−ブチレングリコール 10POE(60)硬化ヒマシ油 1寒天(M−7) 5イオン交換水 31外油相:POEメチルポリシロキサン共重合体 1デカメチルシクロペンタシロキサン 49【0060】(カプセル製法)試験例1と同様にして、マイクロカプセル油性分散物を調製し、これを濾過してマイクロカプセルを得た(破断強度5,000g/cm2)。【0061】(スクラブ洗顔料の調製)A部:ステアリン酸 12 重量%ミリスチン酸 14ラウリン酸 5スクワラン 3ソルビット(70%ソルビトール水溶液) 15グリセリン 101,3−ブチレングリコール 10B部:水酸化カリウム 5イオン交換水 15C部:POE(20)グリセロールモノステアリン酸エステル 2アシルメチルタウリン 4D部:マイクロカプセル(固形分) 5【0062】A部を加熱溶解し、70℃に保った。B部をA部に攪拌しながら添加し、十分に中和後、さらに50℃でC部を添加した。D部を加えてさらに混合し、脱気、濾過、冷却してスクラブ洗顔料を得た。【0063】【発明の効果】本発明によれば、微細な内包油滴を有し、カプセルの安定性、塗布後の内包油滴の保持性に優れるマイクロカプセルが得られる。本発明のマイクロカプセルの製造は簡便で内油相のロスがなく効率的であり、カプセル径を容易にコントロールできる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明にかかるマイクロカプセルの概念図である。【符号の説明】1 内包油滴(内油相)2 マイクロカプセル3 外油相 平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つカプセル化剤が寒天又はカラギーナンであり、水相に前記カプセル化剤を溶解したO/W/Oエマルジョンの水相を冷却固化して得られ、前記水相から調製されるゲルの破断強度が2,000〜5,000g/cm2であることを特徴とするマイクロカプセル。 請求項1記載のマイクロカプセルにおいて、マイクロカプセルが親水性非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒とを含むことを特徴とするマイクロカプセル。 請求項1又は2記載のマイクロカプセルが、油相中に分散していること特徴とするマイクロカプセル油性分散物。 請求項3記載のマイクロカプセル油性分散物において、 内油相と、寒天又はカラギーナンを含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、 前記O/Wエマルジョンを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンを調製し、 前記O/W/Oエマルジョンの水相を固化させて得られることを特徴とするマイクロカプセル油性分散物。 請求項4記載のマイクロカプセル油性分散物において、前記O/Wエマルジョンが、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、 該水溶性溶媒中油型エマルジョンに、寒天又はカラギーナンの水溶液を添加して調製されるO/Wエマルジョンであることを特徴とするマイクロカプセル油性分散物。 請求項1又は2記載のマイクロカプセルにおいて、請求項4又は5のマイクロカプセル油性分散物の外油相を除去して得られることを特徴とするマイクロカプセル。 請求項1〜6の何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物において、カプセル内に有機紫外線吸収剤を含有することを特徴とするマイクロカプセル又はその油性分散物。 請求項1〜7の何れかに記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とする化粧料。 請求項7記載のマイクロカプセル又はその油性分散物を配合したことを特徴とするサンスクリーン化粧料。 請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法であって、内油相と、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤である寒天又はカラギーナンを予め加熱溶解しておいた水相とから、該ゲル化剤の固化温度以上で平均粒子径が0.01〜3μmのO/Wエマルジョンを調製するO/Wエマルジョン調製工程と、 前記O/Wエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以上で外油相中に分散乳化するO/W/Oエマルジョン調製工程と、 前記O/W/Oエマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以下に冷却して水相を固化するカプセル化工程と、を備え、前記水相から調製されるゲルの破断強度が2,000〜5,000g/cm2であることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。 請求項10記載の製造方法において、O/Wエマルジョン調製工程が、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相成分を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、 該水溶性溶媒中油型エマルジョンと、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤である寒天又はカラギーナンを予め加熱溶解しておいた水溶液とを該ゲル化剤の固化温度以上で混合する工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る