タイトル: | 特許公報(B2)_酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法 |
出願番号: | 2000083143 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 31/00,C23C 18/31,G01N 21/27,G01N 21/77 |
小林 義和 JP 4558883 特許公報(B2) 20100730 2000083143 20000324 酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法 小林 義和 593071546 小原 二郎 100082153 小林 義和 20101006 G01N 31/00 20060101AFI20100916BHJP C23C 18/31 20060101ALI20100916BHJP G01N 21/27 20060101ALI20100916BHJP G01N 21/77 20060101ALI20100916BHJP JPG01N31/00 TC23C18/31 ZG01N21/27 ZG01N21/77 B G01N 31/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平04−276082(JP,A) 特開平04−276081(JP,A) 特開平05−133903(JP,A) 特開平04−021799(JP,A) 特開平06−272048(JP,A) 2 2001272389 20011005 7 20070323 海野 佳子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法に係り、特にめっき装置と共にシステム化され自動化の可能な酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法に関する。【0002】【従来の技術】酸性無電解錫めっき液は一般に2価の錫とチオ尿素、有機酸、その他の添加剤を含む組成からなり、このめっき液中に金属銅を浸漬すると、銅と錫の置換反応により銅表面に錫が析出する。Sn2+ + 2Cu → 2Cu2+ + Sn【0003】めっき工程ではめっき液中に銅イオンが増加するので銅濃度の管理が非常に重要である。一般に、銅を定量する方法としては、(1)ヨウ化カリウムと銅を反応させ、遊離ヨウ素を還元剤(チオ硫酸ナトリウム)で滴定する方法、(2)銅を錯化し、EDTAで滴定する方法、(3)銅アンモニウム錯塩を作り、特定波長の吸光度を測定する方法および(4)直接特定波長の吸光度を測定する方法等がある。【0004】しかし、これらの銅についての一般的な分析方法はいずれも酸性無電解錫めっき液の特性からそのめっき液中の銅の定量には適していない。すなわち、酸性無電解錫めっき液には多量の錫(2価、4価)が存在するのでヨウ素滴定法やEDTAによる滴定法では直接銅を測定することはできない。また酸性無電解錫めっき液のスペクトルを示す図1にみられるように、めっき液中に銅が溶解していても特定波長での吸収がおこらず、また酸性無電解錫めっき液にアンモニアを加えると白濁を生じるためこれらの方法による光学的な測定も不可能である。【0005】したがって、従来酸性無電解錫めっき液中の銅の定量は一般には原子吸光分析法によって定量されているが、高感度のため試料の希釈操作が必要とし、かつフレームを用いるため自動化(無人化)には危険を伴い、また装置自体が非常に高価なためめっき工場等に設置して用いるのには適していない。【0006】本発明者は酸性無電解錫めっき液の銅の定量に銅をアンモニウム錯塩とした状態で吸光度測定法を用いることを前提とし、その際アンモニアの添加によって液中に生じる白濁を回避する手段について研究した結果、正確で迅速な酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法およびそのための定量装置の開発に成功し本発明を完成した。【0007】 すなわち、前記本発明の課題は、酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法において、めっき液試料をメタノール、錫マスキング剤および銅錯化剤としてのアンモニアと混合して測定用試料を調製し、前記測定量試料中の銅濃度を所定波長での吸光度法によって定量することを特徴とする酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法(請求項1)によって解決される。【0008】 前記請求項1記載の酸性無電解錫めっき液の銅の定量方法は、酸性無電解錫めっき液中の銅濃度をめっき液試料の吸光度に基づいて光学的に測定する銅の定量装置において、めっき液試料、メタノール、錫隠蔽剤およびアンモニアを攪拌混合して測定用試料を調製する反応容器と、前記調製された測定用試料の特定の波長における吸光度を測定して対応する銅濃度を求めるフォトセルと、前記フォトセルからの銅濃度信号に基づいて銅濃度値を演算して表示しおよび/またはめっき浴の濃度管理装置の動作を制御する処理装置とを有することを特徴とする酸性無電解錫めっき液中の銅の定量装置を用いることによって実施することができる。【0009】吸光度測定法の障害となる有機酸等に原因すると考えられ白濁を防止するためには、酸性無電解錫めっき液中にかかる有機物を溶解する有機溶媒を加えることが考えられる。しかし、本発明者が各種の溶媒を用いて試験した結果、ジエチルエーテル、ジオキサン、エタノール、アセトン等のほとんどの一般的な有機溶媒ではいずれも液中に白沈を生じて白濁した。これに対して、その理由は必ずしも明らかではないが、溶媒としてメタノールを使用すると前記白濁が全く生じないことが発見された。尚銅の定量の際の妨害成分となる錫はたとえばトリエタノールアミンでマスキングすることができる。【0010】メタノールに酸性無電解錫めっき液を加え、さらにトリエタノールアミンを加えてもその溶液は無色透明を保つ。この溶液にアンモニア水を加えると、銅が溶解している場合には銅アンモニウム錯塩特有の青色を呈する。水酸化ナトリウムを加えてpHを高くすると青色はさらに強まる。一方銅を溶解していない建浴液は、無色透明を保つ。【0011】図1は銅を溶解していない酸性無電解錫めっき液のスペルトルを、図2は1g/Lの銅を溶解している酸性無電解錫めっき液のスペクトルを、図3は2g/Lの銅を溶解している酸性無電解錫めっき液のスペクトルを夫々示す。【0012】銅を溶解していない酸性無電解錫めっき液では吸収波長に山がなく(図1)、1g/Lの銅を溶解している酸性無電解錫めっき液では吸収波長670nmに山があり、ABS値は0.207である(図2)。さらに2g/Lの銅を溶解している酸性無電解錫めっき液では前記吸収波長670nmにおける山のABS値が0.419であり(図3)、銅の溶解量が2倍の場合にABSが約2倍となっており、以下同様にして銅の溶解量の増加に伴って対応するABS値の増加が認められた。したがって試料の670nmでの吸収を測定することにより銅の定量が可能となる。【0013】酸性無電解錫めっき液の銅の分析手順の具体例を以下説明する。200mLのトールビーカに50mLのメタノールを入れ、これに1mLのめっき液試料をホールピペットで加えて攪拌する。こゝに10mLのアンモニア水を加えて約5分間攪拌する。この段階で試料が青色に発色すれば銅が溶解していることを示す。【0014】銅を含まない建浴液(ブランク液)と予め原子吸光分析計で測定した銅濃度既知の試料を夫々前記と同様の操作で調製し、分光光度計において波長670nmでのブランク液と既知の濃度液を校正し、その後波長670nmで試料の銅濃度を測定する。尚、測定試料の調製を簡略化するため、前記メタノール、トリエタノールアミン、アンモニア水を予め所定の割合で混合して専用の緩衝液を調製しておいてもよい。【0015】以上のように、本発明による酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法によれば、銅アンモニウム錯塩の形成による吸光度測定方法を用い、この場合液中の有機物によると思われる白沈をメタノールを加えることで防止し、かつ共存する錫イオンをマスキングすることによって簡単な方法で銅を正確に定量することができる。またこの方法で調製した測定試料は通常の方法で吸光分析することができ、そのための装置はめっきシステムに容易に組込んで自動化することができる。【0016】図5は本発明による酸性無電解錫めっき液中の銅の定量のための自動化装置の一例を示すフロー図である。【0017】図5の酸性無電解錫めっき液中の銅濃度の定量装置では、ロードセル2に支持された反応容器3がめっき槽1に対して試料ポンプ4、試料電磁弁5を介して接続されており、この反応容器3にはメタノールのタンク9、注入ポンプ10、注入電磁弁11、トリエタノールアミンのタンク12、注入ポンプ13、注入電磁弁14、アンモニア水のタンク18、注入ポンプ19、注入電磁弁20が夫々接続されている。これらの試料調製薬剤とめっき液とは反応容器3中に設けられた攪拌機6によって攪拌下に反応され、得られた測定用試料は反応容器3から排出電磁弁7を介して吸光度測定用のフォトセル23に送出される。【0018】フォトセル23の両面には光源23および受光部24が対向して設けられ、受光部の出力はADコンバータ25を介してCPU28に接続され、CPUは演算処理の結果を表示部27に送って濃度表示をさせ又はめっき液槽1のめっき液の管理機構(図示せず)の動作部に送られる。【0019】測定に際しては、まず電磁弁8を介して送られる洗浄水によって反応容器3の内部が洗浄され、洗浄水は電磁弁7、フォトセル23を通してポンプ21により排出される。次いでメタノールのタンク9からメタノールをポンプ10および電磁弁11を介して、次いでめっき槽1からめっき液をポンプ4と電磁弁5を介して、またトリエタノールアミンのタンク12からトリエタノールアミンをポンプ13と電磁弁14を介して夫々所定量で反応容器3に注入する。【0020】さらにアンモニア水のタンク15からアンモニアをポンプ16と電磁弁17を介してまた水酸化ナトリウムのタンク18から水酸化ナトリウムをポンプ19と電磁弁20を介して夫々所定量で反応容器3に注入する。これら各試料調製薬剤およびめっき試料の注入量は反応容器3を負荷されたロードセル2によって正確に計量され、各ポンプや電磁弁の逐次作動はCPU28によりインターフェイス26を介して所定のプログラムにしたがって制御される。反応容器3の内部を攪拌機6によって所定時間充分に攪拌し、ポンプ7によりフォトセル23に送り出す。【0021】フォトセル23では光源22からの所定波長の光がセル内部用測定の試料を透過して受光部23に入り、受光部23からの試料濃度に対応する濃度信号がADコンバータ25で変換されてCPU28に送られる。CPU28では予め測定したブランクと既知濃度の銅試料の吸光度に基いてフォトセル内の試料の銅濃度を演算しその値が表示部25に表示される。一方この値が予め設定された基準濃度を超えると、めっき液の補給信号や希釈信号が出力され、また所定の管理範囲を超えると警報信号が出力される。【0022】以上のように本発明の酸性無電解錫めっき液中の銅濃度定量装置によれば吸光度測定用の試料の調製、この試料による銅濃度の定量およびそれに基く液管理等の手順をすべて支障なく自動化することができる。尚、前記のようにメタノール、アンモニア、トリエタノールアミン等の試料調製薬剤を予め所定割合で混合して単一の緩衝液としておく場合には、前記各薬剤の供給系統を一体化して装置を更に簡略化することができる。【0023】【発明の効果】本発明によれば酸性無電解錫めっき液中の銅濃度をメッキ液中に含まれる有機物や共存する錫イオンの影響を受けずに正確にかつ迅速に自動的に定量することができ、かつこの方法を具体化した装置によれば、かゝる銅の定量を液濃度の管理を含めてめっきシステムの一環として簡単な構成によって組込み自動化することが可能である。【図面の簡単な説明】【図1】酸性無電解錫めっき液の吸光スペクトルを示す図である。【図2】本発明に用いる銅を含まない酸性無電解錫めっき液の吸光スペクトルを示す図である。【図3】本発明に用いる1g/Lの銅を含む酸性無電解錫めっき液の吸光スペクトルを示す図である。【図4】本発明に用いる2g/Lの銅を含む酸性無電解錫めっき液の吸光スペクトルを示す図である。【図5】本発明の酸性無電解錫めっき液中の銅濃度定量装置のフロー図である。【符号の説明】1 めっき槽2 ロードセル3 反応容器4 ポンプ5 電磁弁6 攪拌機7 電磁弁8 電磁弁9 メタノールタンク10 メタノール注入ポンプ11 メタノール注入電磁弁12 トリエタノールアミンタンク13 トリエタノールアミン注入ポンプ14 トリエタノールアミン注入電磁弁15 アンモニアタンク16 アンモニア注入ポンプ17 アンモニア注入電磁弁18 水酸化ナトリウムタンク19 水酸化ナトリウム注入ポンプ20 水酸化ナトリウム注入電磁弁21 排出ポンプ22 光源23 フォトセル24 受光部25 ADコンバータ26 インターフェイス27 表示部28 CPU 酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法において、めっき液試料をメタノール、錫マスキング剤および銅錯化剤としてのアンモニアと混合して測定用試料を調製し、前記測定量試料中の銅濃度を所定波長での吸光度法によって定量することを特徴とする酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法。 前記測定用試料中に発色促進のためpH調節剤をさらに混合する請求項1記載の酸性無電解錫めっき液中の銅の定量方法。