タイトル: | 特許公報(B2)_鋼材の水素脆化感受性評価方法および耐水素脆性に優れた鋼材 |
出願番号: | 2000081196 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N17/00,C22C38/00,G01N27/62,G01N33/20 |
湯瀬 文雄 中山 武典 JP 3631090 特許公報(B2) 20041224 2000081196 20000323 鋼材の水素脆化感受性評価方法および耐水素脆性に優れた鋼材 株式会社神戸製鋼所 000001199 本田 ▲龍▼雄 100101395 湯瀬 文雄 中山 武典 20050323 7 G01N17/00 C22C38/00 G01N27/62 G01N33/20 JP G01N17/00 C22C38/00 301F G01N27/62 V G01N33/20 L G01N33/20 Q 7 G01N 17/00 C22C 38/00 301 G01N 27/62 G01N 33/20 特開平07−003368(JP,A) 特開平07−003369(JP,A) 特開平07−300653(JP,A) 特開平10−204612(JP,A) 特開昭55−117961(JP,A) 6 2001264240 20010926 9 20040401 特許法第30条第1項適用 平成12年3月1日 社団法人日本鉄鋼協会発行の「材料とプロセス Vol.13 No.3」に発表 本郷 徹 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、自動車関係ではバンパー,ドアの補強部材など、土木建築関係では足場材,ボルト等の締結部材など、あるいはタイヤスチールコードや橋梁用ケーブルなどの各種ケーブル,ワイヤ材など、軽量でかつ高強度、高耐食性が要求される各種高強度鋼材における水素脆化の危険度を評価する方法に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、自動車の燃費向上のため車体の軽量化が進み、バンパー、ドア等の補強部材などに高強度薄鋼板の採用が検討されるようになってきた。高強度化の流れは、鋼構造物の大形化を招来し、これに伴い継ぎ手の接合強度の向上が求められ、ボルト等の締結治具類にも高強度化が求められている。また、タイヤスチールコードや橋梁用ケーブルなどの各種ケーブル、ワイヤ材なども同様の傾向がある。【0003】しかし、高強度鋼は、主に腐食環境下で実機使用中の腐食反応にともなって鋼中に浸入する水素に起因した水素脆化(遅れ破壊)が問題となる。また、薄肉高強度化のために材料自体の耐食性向上が求められ、その目的のために鋼板の表面に亜鉛めっきなどのめっき皮膜を形成すると、さらに脆化が起こりやすくなることが知られている。例えば、電気めっきでは、めっき前の酸洗工程及びめっき工程などで、陰極反応により発生する水素が鋼板中に浸入し、また溶融めっきの場合では、そのラインの加熱雰囲気中の水素が鋼板中に浸入し、いずれにおいても鋼板中に浸入した水素によって水素脆化(めっき脆化)が引き起こされる。従って、実機使用を検討する際に、水素脆化感受性(鋼中水素による脆化の危険度)を評価することは非常に重要である。【0004】水素脆化感受性は、従来から定歪み試験法や、定荷重試験法における破断時間などによって評価されてきたが、最近の研究で、水素脆化に関与する水素は拡散性水素と呼ばれる、室温で鋼中を拡散できる水素と考えられるようになった。このため、特開平2−267243号、特開平5−255738号、特開平6−25745号に記載されているように、鋼中水素量は真空加熱法により測定されるようになった。【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法により鋼中の拡散性水素量を測定して、これによって水素脆化感受性を評価しても、水素脆化が原因と考えられる亜鉛めっきボルトなどの破断事故例は絶えない。このことから、従来の水素脆化感受性評価試験では正確で実用的な評価がなされていないことがわかる。【0006】その理由は以下のように考えられる。従来の鋼中水素分析では、例えば亜鉛めっき鋼材などでは、亜鉛めっき皮膜が形成されたまま分析されるので、めっき処理の際にめっき皮膜中に導入された多量の水素が測定された水素量に含まれてしまい、測定水素量が水素脆化に関与する鋼中拡散性水素を正確に反映していない。また、めっき皮膜を除去することも行われているが、除去方法が機械的除去や酸浸漬による溶解に依っている。機械的除去の場合、研磨や研削の際に発生した熱により鋼中の水素が放出されてしまう。また、ボルトやネジなどの複雑な形状の対象材では除去に限界がある。一方、酸浸漬による溶解では、腐食による水素が発生する。いずれの場合も正確な鋼中の拡散性水素の分析ができていない。【0007】また、鋼中の水素量が正確に測定されたとしても、従来の水素脆化感受性評価試験は、定歪み法、定荷重法、実際にボルトを締め付ける実体試験によって行われていたため、次の問題がある。評価に長時間を有し、また評価に多数の試験片が必要である。さらに、めっき処理や実機使用時に浸入するような微量な水素量では、試験片が破断に至らないので水素脆化による危険度が判断し難い。【0008】図3は、1380MPa強度の鋼板(○、●)、1180MPa強度の鋼板(△、▲)、780MPa強度の鋼板(□、■)について、従来法で求めた鋼中の拡散性水素量とループ型定歪み試験による破断までの時間との関係を示したものであり、図中の●、▲、■で示した鋼中拡散性水素量では水素脆化により破断したが、拡散性水素量が0.1ppm 程度以下の微量な範囲では、100hrかけて試験しても、いずれの材料も破断せず、一応水素脆化が起こらないものとされる。しかし、実際には水素脆化により破断するものがあり、従来法では正確には水素脆化感受性を評価できないことがわかる。【0009】上記図3の結果は、以下の試験によって得たものである。焼き入れ焼き戻し処理により引張強さを1380MPa、1180MPa、780MPa前後に変化させた厚さ1.5mmの高張力鋼板に電気亜鉛めっき処理を行い、めっき鋼板試料を作製した。めっき条件は、陰極電流効率を変化させる目的で硫酸浴を用い、浴温:室温〜50℃、電流密度:0.1〜100A/dm2、pH:1〜5と変化させて行った。その後、得られためっき鋼板を酸(塩酸)浸漬してめっき皮膜を溶解除去した後、真空加熱法(昇温速度:12℃/min )にて鋼中の水素量を測定した。一方、前記めっき鋼板から試験片を採取し、ループ型定歪み遅れ破壊試験機を使用して、応力(引張強さの0.9倍)を負荷し、100hrを限度として破断時間を測定した。前記定歪み遅れ破壊試験機は、従来からボルト試験などで行われているものである。【0010】本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、めっき鋼板を含む各種鋼材に対して、迅速かつ高感度の水素脆化感受性を評価することができる方法、および耐水素脆性に優れた鋼材を提供することを目的とするものである。【0011】【課題を解決するための手段】本発明の鋼材の水素脆化感受性評価方法は、請求項1に記載したように、予め評価対象である鋼材と同種の鋼材について、鋼中に存在する拡散水素量と、歪み速度が1×10−4/sec 以下の低歪み速度引っ張り試験によって下記式で求めた水素脆化危険度指数(%)との相関関係を求めておき、評価対象である鋼材の鋼中に存在する拡散水素量を測定し、測定した拡散水素量に基づいて前記相関関係からこの鋼材の水素脆化危険度を評価する方法である。水素脆化危険度指数(%)=100×(1−E1/E0)ここで、E0は実質的に鋼中に拡散性水素を含まない鋼材の試験片の破断時の伸び、E1は鋼中に拡散水素を含む鋼材の試験片の破断時の伸びである。【0012】前記鋼中の拡散水素量は、鋼材を室温から250℃まで1〜20℃/minの昇温速度で昇温する間に放出される水素の全量とするのがよい。また、拡散水素量は質量分析計を用いて昇温分析により測定することが好ましい。【0013】めっき皮膜が被覆されためっき鋼材の場合、請求項4に記載したように、鋼中の拡散水素量を測定するに際し、測定前にめっき皮膜をpH10以上のアルカリ溶液中でアノード電解して溶解除去することが好ましい。めっき鋼材としては、引張り強さTS≧780Mpa以上で、めっき皮膜が亜鉛又は亜鉛合金によって形成された鋼材が含まれる。【0014】また、本発明の耐水素脆性に優れた鋼材は、請求項6に記載したように、TS≧780Mpa以上で、亜鉛又は亜鉛合金めっき皮膜が形成されためっき鋼材であって、請求項4に記載した水素脆化感受性評価方法によって水素脆化危険度指数が30%以下と評価されたものである。【0015】【発明の実施の形態】発明者らは、めっき皮膜の有無や種類、下地の鋼材組成や成分などによらず、水素脆化に影響を及ぼす鋼中の拡散性水素の正確な定量方法を確立し、それにより鋼材の水素脆化を正確に迅速に評価できる方法、ひいては、優れた耐水素脆化を確実に発揮しうるような鋼材の開発を期して研究を進めた結果、(1) 鋼中の拡散性水素量の正確な定量(2) 微量水素含有鋼材の短時間での高感度の水素脆化感受性評価試験法を確立するに至り、本発明を完成したものである。【0016】まず、鋼中の拡散性水素量の測定方法について説明する。本測定で重要な点は、測定する水素量は鋼材中の拡散性水素である点であり、この水素量は、好ましくは室温から250℃まで昇温速度を1〜20℃/min として昇温分析を行い、昇温する間に放出される水素の全量とするのがよい。具体的な測定手法としては、質量分析計にて昇温分析を行い、前記温度範囲で放出される水素の積分値を拡散性水素量とすればよい。【0017】昇温分析の際の昇温速度として1〜20℃/min が推奨されるのは、1℃/min 未満では分析時間が遅すぎて効率が悪く、一方20℃/min 超では鋼材の内部からの水素放出が不十分となるからである。また、250℃までの放出量を測定するのは、250℃超で放出される水素は、室温で鋼中を拡散できないため、水素脆化には関与しないと考えられるからである。【0018】放出水素量を測定する手法としては、グリセリン法等の方法もあるが、高い測定精度が得られる質量分析計を用いることが好ましい。特に、大気圧イオン化質量分析計(APIMS)は好適である。この質量分析計は、大気圧の下でArガス雰囲気中で水素を検出するものであるが、大気圧下で測定することができるために、一般的な真空雰囲気で水素を検出する質量分析計と異なり、真空引きに要する時間が省けるうえ、真空引き時における鋼材からの水素放出を抑制できる利点があり、検出精度に優れる。【0019】ところで、例えば亜鉛めっき皮膜等のめっき皮膜を有する鋼材では、めっき皮膜そのものにも非常に多量の水素が含まれており、皮膜と鋼材とを同時に測定すれば、水素脆化に関与する鋼中の拡散性水素量を求めることができない。このため、本発明では、めっき皮膜を有する鋼材については、めっき皮膜を除去して鋼中の拡散性水素量を測定することが必要である。【0020】めっき皮膜の除去方法としては、pH10以上のアルカリ溶液中でのアノード電解によって溶解除去することが好ましい。pHを10以上とするのは、pH10以上のアルカリ溶液では鋼材が腐食しないために水素発生を伴わないからである。この場合、pHの上限としてはpH14、より好ましくはpH13.5とすることが望ましい。また、アノード電解によれば、電流密度などを制御することによりめっき皮膜の厚さや性状が異なっても皮膜をきれいに除去することができる。すなわち、単にアルカリ溶液に浸漬するだけでは、めっきネジのネジ底部等の微小凹部に付着しためっき皮膜は除去できないが、アノード電解によれば電位や電流を制御することにより、かかる部分のめっき皮膜も容易に除去することができる。【0021】次に、微量水素を含有した鋼材の水素脆化の危険度に対する短時間、高感度の評価試験法について説明する。本発明では、低歪み速度引っ張り試験法(SSRT)を行い、下記式にて定義される水素脆化危険度指数(%)によって水素脆化感受性を評価する。水素脆化危険度指数(%)=100×(1−E1/E0)ここで、E0は実質的に鋼中に拡散水素を含まない鋼材の試験片の破断時の伸び、E1は鋼中に拡散水素を含む鋼材の試験片の破断時の伸びである。【0022】SSRTは負荷応力を増加させながら試験片を破断させるために、定加重試験法、定歪み試験法と異なり、短時間で迅速かつ高感度に水素脆化に対する危険度を評価することができる。SSRT試験片の形状は、板状、棒状、切り欠きの有無などいずれの形状でもよいが、破断領域となる試験片の平行部における歪み速度が1×10−4/sec 以下の歪み速度を用いる。この歪み速度を超える速度で試験を行うと感受性が低下する。一方、歪み速度は遅いほど感受性が向上するため遅いほうが良いが、試験効率を考慮して適宜決定することができる。なお、水素脆化危険度指数は、試験片の伸びを測定して、破断時の伸び値を用いて算出するようにしたが、棒状試験片を用いる場合では、伸び値の代わりに絞り値を用いることができる。【0023】評価対象の鋼材と同種(成分、組織、機械的特性が同等)の鋼材について鋼中の拡散性水素量を種々変化させた試験鋼材を準備し、この試験鋼材について上記SSRTを行うことによって、この種の鋼材における鋼中の拡散性水素量と水素脆化危険度指数(%)との相関関係が求まる。この相関関係は図(グラフ)で示すことができる。一旦、前記相関係が求まれば、それ以降は同種の鋼材については、適宜、評価すべき鋼材の鋼中の拡散性水素量を前記手法で測定するだけで、水素脆化危険度指数を容易に知ることができ、水素脆化感受性評価を迅速、正確に行うことができる。【0024】例えば、亜鉛めっき工場では、予め母材鋼板について前記相関関係を求めておくことにより、めっき後の鋼材の鋼中の拡散性水素量を測定するだけで、水素脆化危険度指数を直ちに知ることができ、この水素脆化危険度指数を水素脆化管理指標とすることができる。【0025】具体的には、後述する実施例において得られた図1の相関関係によれば、1380MPa強度の亜鉛めっき鋼板では、鋼中拡散性水素量を水素脆化を起こすか否かの基準指数値(30%)と比較することにより、鋼中拡散性水素量を0.05ppm以下にすればよいことがわかり、この値以下になるように水素量を管理すればよい。【0026】亜鉛めっき工程中の、鋼中への水素浸入量を低減させるには、めっき条件、具体的には陰極電流効率を変化させることが有効である。例えば、めっき工程中の初期に陰極電流効率を80%以上(望ましくは95%以上)にし、水素発生を抑えて鋼表面に緻密なめっき皮膜を形成させることで、水素の鋼材中への浸入を防止することができる。【0027】本発明の水素脆化感受性評価方法によれば、鋼材の成分や組織、まためっきの種類に依存しないため、亜鉛(合金)めっき鋼材等の種々の鋼材に対して水素脆化感受性を有効に評価することができる。さらに、めっき工程、酸洗い工程で浸入する水素のみならず、実機使用中において鋼材中に浸入する水素のいずれの水素に対しても評価することができる。このため、めっき皮膜のない鋼材に対しても有効である。【0028】本発明を利用することにより、従来では評価できなかった微量の拡散性水素含有鋼材に対しても、高感度かつ迅速に定量評価が可能となる。そして、使用する環境下での水素浸入量などを把握することによって、適切な材料の選択が可能となる。また、従来では危険とされていた高強度鋼材でも本発明によりその水素脆化感受性を正確に評価することで、実機使用が可能となる場合があり、新たな高強度鋼材選択の評価基準として極めて有効である。【0029】以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。【0030】【実施例】実施例1焼き入れ焼き戻し処理により引張強さを1380MPa、1180MPa、780MPa前後に変化させた厚さ1.5mmの高張力鋼板に電気亜鉛めっき処理を行い、めっき鋼板試料を作製した。めっき条件は、陰極電流効率を変化させる目的で硫酸浴を用い、浴温:室温〜50℃、電流密度:0.1〜100A/dm2、pH:1〜5と変化させて行った。【0031】得られためっき鋼板をpH13のNaOH溶液中でアノード電解を3〜10分間行って、めっき皮膜を完全に溶解除去した後、大気圧イオン化質量分析計(APIMS)を用いて室温〜250℃までの昇温分析(昇温速度12℃/sec)を行い、その間に発生した水素量(すなわち拡散性水素量)を測定した。また、同めっき鋼板試料より試験片を採取し、SSRT(歪み速度:9.7×10−6/sec )により破断時の伸びを測定し、水素脆化危険度指数(%)を求めた。【0032】各強度毎に、拡散性水素量と水素脆化危険度指数との関係を整理し、グラフにした。その結果を図1に示す。図中、○,●は1380MPa強度の鋼板を、△,▲は1180MPa強度の鋼板を、□,■は780MPa強度の鋼板を示す。●,▲,■は水素脆化を起こすか否かの基準指数30%を超える不適格なものを示す。図1より、従来法では評価できなかった0.1ppm 以下の低水素量の範囲でも水素脆化感受性を高感度に定量評価できることがわかる。また、図1より、例えば1380MPaのめっき鋼板では、鋼中拡散性水素量をa=0.05ppm以下、1180MPaの鋼板ではb=0.07ppm以下、780MPaの鋼板ではc=0.09ppm以下にめっき条件を管理することで、水素脆化を起こさないめっき鋼板を得ることができることがわかる。【0033】実施例2引張強さが1200MPaになるように熱処理条件を調整して製作したボルトに、めっき条件を変化させて亜鉛めっきを行い、20本を一組として、締め付け試験を行った。締め付け直後、室温で4日間放置、7日間放置、30日放置の段階で、破断しているボルトの数を測定した。【0034】一方、同一条件で作製したボルトについて、実施例2と同様にして鋼中拡散性水素量と水素脆化危険度指数との関係を求めた。その結果を表1、図2に示す。これらの結果より、早期に破断したボルトは水素脆化危険度指数が高く、30日放置でも破断しないボルトの水素脆化危険度指数はいずれも30%以下であることがわかる。この水素脆化危険度指数が30%に相当する拡散性水素量は概ね0.07ppm である。これより、同種のめっきボルトの鋼中拡散水素量を測定し、その値が0.07ppm 以下であれば水素脆化を起こさないものと評価することができる。【0035】【表1】【0036】なお、30日経過後も破断せず、鋼中拡散性水素量が低い試料は、めっき時の陰極電流効率を高くしたものである。従って、陰極電流効率を制御することで鋼中拡散性水素量を制御可能なことがわかる。【0037】【発明の効果】本発明の評価方法によれば、特に引張り強さが780以上の高強度を有する鋼材に対して、めっき皮膜の有無にかかわらず、鋼材の水素脆化感受性を短期間で高感度かつ定量評価することができ、さらに従来法では評価できなかった微量の水素量域でも高感度で評価することができる。このため、本発明の評価方法によって得られた水素脆化危険度指数はめっき工場の製造管理指標として、あるいは実機を構成する鋼材の破断予測の指標として有効に利用することができる。また、本発明の鋼材は、水素の浸入が避けられない亜鉛系のめっき皮膜を有する鋼材でありながら、水素脆化危険度指数が30%以下であるので、水素脆化を起こさず、高信頼性の高強度亜鉛系めっき鋼材として利用することができる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1における鋼中拡散性水素量とSSRTによって求めた水素脆化危険度指数との関係を3種の鋼材について示したグラフである。【図2】実施例2のボルト締め付け試験における破断日数と水素脆化危険度指数との関係を示すグラフである。【図3】従来法により測定した鋼中拡散性水素量とループ型定歪み試験によって測定した破断時間との関係を示すグラフである。 予め評価対象である鋼材と同種の鋼材について、鋼中に存在する拡散水素量と、歪み速度が1×10−4/sec 以下の低歪み速度引っ張り試験によって下記式で求めた水素脆化危険度指数(%)との相関関係を求めておき、評価対象である鋼材の鋼中に存在する拡散水素量を測定し、測定した拡散水素量に基づいて前記相関関係からこの鋼材の水素脆化危険度を評価する鋼材の水素脆化感受性評価方法。水素脆化危険度指数(%)=100×(1−E1/E0)ここで、E0は実質的に鋼中に拡散性水素を含まない鋼材の試験片の破断時の伸び、E1は鋼中に拡散水素を含む鋼材の試験片の破断時の伸びである。 鋼中の拡散水素量は鋼材を室温から250℃まで1〜20℃/minの昇温速度で昇温する間に放出される水素の全量とする請求項1に記載した鋼材の水素脆化感受性評価方法。 拡散水素量は質量分析計を用いて昇温分析により測定する請求項2に記載した鋼材の水素脆化感受性評価方法。 鋼材は表面にめっき皮膜が形成されためっき鋼材であり、鋼中の拡散水素量を測定するに際し、測定前にめっき皮膜をpH10以上のアルカリ溶液中でアノード電解して溶解除去する請求項1〜3のいずれか1項に記載した鋼材の水素脆化感受性評価方法。 めっき鋼材は、引張り強さTS≧780Mpa以上で、めっき皮膜が亜鉛又は亜鉛合金によって形成された鋼材である請求項4に記載した鋼材の水素脆化感受性評価方法。 請求項5に記載した方法によって評価されためっき鋼材であって、水素脆化危険度指数が30%以下である耐水素脆性に優れた鋼材。