生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)及びその製造方法
出願番号:2000074926
年次:2008
IPC分類:C07C 49/92,C07C 45/77,C07F 9/94,C23C 16/18


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門倉 秀公 JP 4086219 特許公報(B2) 20080229 2000074926 20000210 高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)及びその製造方法 株式会社高純度化学研究所 000143411 木下 茂 100101878 石村 理恵 100113561 門倉 秀公 20080514 C07C 49/92 20060101AFI20080417BHJP C07C 45/77 20060101ALI20080417BHJP C07F 9/94 20060101ALN20080417BHJP C23C 16/18 20060101ALN20080417BHJP JPC07C49/92C07C45/77C07F9/94C23C16/18 C07C 49/92 C07C 45/77 C07F 9/94 国際公開第99/023103(WO,A1) 特開平09−067197(JP,A) 特開平05−271253(JP,A) 特開平06−234779(JP,A) 特表2002−534431(JP,A) 特開平11−343572(JP,A) 4 2001226314 20010821 6 20050131 中島 庸子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ビスマス含有の強誘電体薄膜や酸化物高温超電導体薄膜をCVD法で形成するための原料として好適なビスマス化合物およびその製造方法に関する。【0002】【従来の技術】酸化ビスマスを含んだ誘電体である、SrBi2Ta2O9、Bi3Ti4O12、Bi3.25La0.75Ti3O12などの強誘電体薄膜やBi2Sr2CaCu2O8などの酸化物超電導体薄膜を、CVD法で製造することが試みられている。この場合ビスマス原料化合物としては、トリフェニルビスマス、トリメチルビスマス、トリターシャリアミロキシビスマスなどが多く検討されており、ビスマストリス(ジピバロイルメタネート)(以下Bi(dpm)3と略す)は少ない。しかし他の元素化合物がdpm塩の場合には、ビスマス化合物と配位子交換が起きないように、Bi(dpm)3を採用するのが好ましい。しかし従来のBi(dpm)3は、揮発性や熱安定性が低く、NaやClなどの不純物が多く、好ましいものではなかった。これらの不純物が多く含まれていると、強誘電体のリーク電流が増したり、欠陥が増したり、耐久性が低下するという問題が発生する。【0003】従来のBi(dpm)3の製法と物性について以下に記す。M−C.Massiani et al.Polyhedron Vol.10,437(1991)は、THF溶媒中でBiCl3とNa(dpm)とを反応させて生成する白い沈殿物をヘキサンまたはジクロロメタンで抽出し、高真空で未反応のNa(dpm)を昇華分離し、次いで110℃、4×10−4Torrで昇華し、Bi(dpm)3を得た。これの融点は78℃であり、単結晶を得ようとしてアンプル内で110℃で昇華を試みたが、熱分解してしまった。そのためBi(dpm)3は熱的に不安定で昇華しにくいと記している。S.Yuhya et al.Mol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.184,231(1990)は、Bi(dpm)3が熱分解し、揮発せずにBi2O3となったことを記している。【0004】一方、最近 US5859274 は無水の単量体Bi(dpm)3をクレイムしている。その融点は139℃である。酸素のない雰囲気中、オクタン、THF、トルエンなどの中性溶媒中で、Na(dpm)とBiCl3を反応させる製造方法をクレイムしている。その精製法として例えば再結晶法を記載している。しかしながら、こうして得られたBi(dpm)3の収率やNaやClの不純物濃度は記載されていない。また二量体である[Bi(dpm)3]2のTGAは開示されているにもかかわらず、この発明の単量体Bi(dpm)3のTGAは開示されていない。原料としてNa(dpm)と塩化物を使用すると、再結晶や昇華で精製しても生成物のNaやClの不純物濃度をppmオーダーにすることは、通常では難しい。【0005】本発明者は、Na(dpm)とBiCl3の反応によりBi(dpm)3を合成し、再結晶あるいは昇華で精製を試みたが、最終精製品の収率は0〜20%と低く、かつNa、Clが30〜100ppm含まれており、高純度とは言い難いものであった。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、不純物濃度としてNa、K、Cl、Brが各5ppm以下である高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)を提供することである。さらに、本発明は、その化合物の製造方法を提供することである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、不純物濃度としてNa、K、Cl、Brが各5ppm以下であることを特徴とする高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)である。本発明は、この高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)の製造方法であり、ビスマストリターシャリアミロキシドとβ−ジケトンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、副生物、未反応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発あるいは昇華により精製する方法である。本発明は、不純物濃度としてNa、K、Cl、Brが各5ppm以下である高純度ビスマストリス(ジピバロイルメタネート)である。本発明は、この高純度ビスマストリス(ジピバロイルメタネート)の製造方法であり、ビスマストリターシャリアミロキシドとジピバロイルメタンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、副生物、未反応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発あるいは昇華により精製する方法である。【0008】【発明の実施の形態】本発明のBi源としては、ビスマストリターシャリアミロキシドBi(OC(CH3)2C2H5)3(以下Bi(OtAm)3と表す)を用いる。Bi(OtAm)3は単量体であり、融点90℃、87℃で0.1Torrの蒸気圧があり、蒸留精製が可能なほぼ唯一のビスマスアルコキシドである。蒸留精製することにより、容易に不純物濃度としてNa、K、Cl、Brをppmオーダーにすることが可能である。【0009】Bi(OtAm)3は以下の二方法で製造される。M.A.Matchett,M.Y.Chiang,W.E.Buhro,Inorg.Chem.Vol.29,(1990)360は、ジメチルアミノビスマスBi(N(CH3)2)3とターシャリアミルアルコールHOC(CH3)2C2H5と反応させ、次いで、昇華することにより、収率90%以上でBi(OtAm)3を得ている。本発明者らは、臭化ビスマスBiBr3とナトリウム(ターシャリアミロキシド)Na(OtAm)と反応させ、次いで、蒸留することにより、収率70%以上で高純度のBi(OtAm)3を得る方法を開発している。【0010】ビスマスターシャリブトキシド〔Bi(OC(CH3)3)3〕は単量体で蒸気圧が高いが、融点が150℃で蒸留精製が難しいので、本発明の原料としては、好適ではない。ビスマスイソプロポキシド〔Bi(OCH(CH3)2)3〕やビスマスエトキシド〔Bi(OC2H5)3〕は多量体なので、蒸気圧は低く、蒸留精製はしにくく、高純度のものは得難い。ビスマスイソプロポキシドまたはビスマスエトキシドをジピバロイルメタンC11H20O2(以下dpmHと表す)と反応させても、Bi(dpm)3の蒸発精製工程で熱分解してしまい、ほとんどBi(dpm)3を得ることはできなかった。この原因はビスマスイソプロポキシドやビスマスエトキシドは単量体でないためにアルコキシド基がdpmHで完全に置換するのが難しいためか、不純物のNaやClが熱分解を促進しているためかは、不明である。いずれにせよビスマスイソプロポキシドやビスマスエトキシドは本発明の原料としては使えない。【0011】本発明の高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)のβ−ジケトネートとしては、ジピバロイルメタネート(=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオネート、2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオネート、6−エチル−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネートなどである。【0012】反応溶媒としては、トルエンやオクタンなどのイナートな有機溶媒が使える。反応条件は100〜120℃程度で2〜10時間である。副生するターシヤリアミルアルコールを反応蒸留により留出できれば最も好ましい。しかしdpmH/Bi(OtAm)3の仕込みモル比を3より大きい3.3〜5にしておけば、Bi−OtAmが未反応で残ることはない。反応後、溶媒や副生したターシヤリアミルアルコールを常圧で留去し、さらに、減圧で未反応のdpmHなどを留去する。残った生成物を蒸発管に仕込み、0.1Torr下で、加熱浴を140℃程度にすると、その生成物は融解し、150〜170℃で蒸発し空冷された管壁に結晶として析出する。無色(白色)の結晶で収率は70%以上と高い。蒸発中に熱分解が進行して、収率が大きく低下するという現象はおこらない。より高真空下で行えば、昇華精製ができる。上記のように蒸発あるいは昇華で得たBi(dpm)3は、すべて一度は蒸気化したものであり、不揮発分を全く含まないので、CVDの原料としては最適である。全てが蒸発するものであることは、溶液フラッシュ法の場合には必須である。【0013】実施例1で得たBi(dpm)3の不純物は、Na 2ppmK <1ppmCl 1ppmBr 1ppmと少なく、高純度であった。そのTG−DTAを図1に示す。測定条件は次のとおりである。Ar1気圧下試料重量 26.5mg昇温速度 10.0deg/min【0014】【図1】【0015】この図より融点は約140℃である。200℃付近から減量が始まり、330℃で50%減量し、340℃で93.5%減量し一定となった。1気圧下のTGAでは、蒸発温度が高くならざるを得ず、その結果、少し熱分解が起きているが、10Torr程度の減圧下であれば、熱分解が起きる温度より低い温度で蒸発が完了するので、100%の減量となるはずである。これからわかるように、従来の文献に記されているような、熱安定性が低いという現象は起こらない。これは、本発明のBi(dpm)3が分子構造的にも、化学純度的にも、高純度であるためと推定される。【0016】【実施例1】高純度Bi(dpm)3の製造リフラックスコンデンサー、温度計、攪拌子を備えた300ml四つ口フラスコを真空置換しアルゴン雰囲気とし、トルエン180mlを仕込み、次いでBi(OtAm)320.2g(43mmol)、ジピバロイルメタンdpmH32g(174mmol)を仕込んだ。次いで攪拌下昇温し、加熱還流状態で6時間反応した。次いで1気圧下で、溶媒、副生ターシヤリアミルアルコールなどを留去し、最後に1Torr、120℃にして未反応のdpmHなどの揮発分を留去した。フラスコ内の淡黄色の固形物を回収し、粉砕し、蒸発管に仕込んだ。0.3Torrに減圧し、昇温していくと加熱浴温140℃付近でこの粉体は融解し、さらに温度を上げていくと、165℃付近から蒸発し、空冷された管壁に白い結晶として析出し、175℃までで大半が蒸発析出した。白い結晶は、23.5g(31mmol)で収率72%であった。この結晶を湿式分解し、ICP発光分析により定量した結果、Bi含量は、26.8%(計算値27.5%)であった。さらに不純物分析の結果、Na 2ppmCl 1ppmK <1ppmBr 1ppmFe 1ppmSi 4ppmであり高純度であった。【0017】【発明の効果】SrBi2Ta2O9などの強誘電体薄膜やBi2Sr2CaCu2O8などの酸化物超電導体薄膜をCVD法で作製するためのビスマス原料として、供給時に、熱安定性が高く、よく昇華する高純度のBi(dpm)3を提供できる。【図面の簡単な説明】【図1】Bi(dpm)3のTG−DTAによる測定結果を示す図である。 不純物濃度としてNa、K、Cl、Brが各5ppm以下であることを特徴とする高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)。 ビスマストリターシャリアミロキシドとβ−ジケトンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、副生物、未反応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発あるいは昇華により精製することを特徴とする請求項1の高純度ビスマストリス(β−ジケトネート)の製造方法。 β−ジケトネートがジピバロイルメタネートである請求項1の高純度ビスマストリス(ジピバロイルメタネート)。 ビスマストリターシャリアミロキシドとジピバロイルメタンを有機溶媒中で反応し、次いで溶媒、副生物、未反応物を留去し、次いで減圧下で、蒸発あるいは昇華により精製することを特徴とする請求項3の高純度ビスマストリス(ジピバロイルメタネート)の製造方法。


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