生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_創傷治癒促進剤
出願番号:2000044635
年次:2006
IPC分類:A61K 36/18,A23K 1/16,A23L 1/30,A61P 17/02,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

堤 晴彦 間藤 卓 井口 浩一 伊藤 良一 橋爪 秀一 亀井 優徳 JP 3817404 特許公報(B2) 20060616 2000044635 20000222 創傷治癒促進剤 森永製菓株式会社 000006116 松井 茂 100086689 堤 晴彦 間藤 卓 井口 浩一 伊藤 良一 橋爪 秀一 亀井 優徳 20060906 A61K 36/18 20060101AFI20060817BHJP A23K 1/16 20060101ALI20060817BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060817BHJP A61P 17/02 20060101ALI20060817BHJP A61P 43/00 20060101ALI20060817BHJP JPA61K35/78 CA23K1/16 304CA23L1/30 BA61P17/02A61P43/00 107 A61K 36/18 A23K 1/16 A23L 1/30 特開平07−000107(JP,A) 特開平07−031387(JP,A) 特開平10−257867(JP,A) 2 2001233779 20010828 6 20011003 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、カカオマス中に含まれるココア分を有効成分とする創傷治癒促進剤に関する。【0002】【従来の技術】外科的切開、消化管潰瘍、火傷、裂傷又は皮膚潰瘍(褥瘡など)などの表面組織の損傷、いわゆる創傷の治療は、潰瘍面の切除、植皮、縫合等の外科的処置又は抗生物質含有軟膏等の外用剤を主体とした保存的治療に大別される。【0003】しかし、これら従来の創傷の治療法は、結局は生体の自然回復力によって創傷が治癒するのを待つだけというものであるため、その回復までには長期間を要し、また痛みなどの苦痛を伴なうものであった。【0004】そこで、このような自然治癒に頼ることなく、創傷部の組織の修復・再生を積極的かつ直接的に促進させるために、細胞の分化、増殖過程等を刺激あるいは促進する薬剤が開発され、頻用され始めている。【0005】例えば、保存的治療における局所療法では、創面の保護、壊死組織の除去、二次感染の防止等の創面浄化後、肉芽形成促進、局所循環改善、表皮形成促進等の作用を有する外用剤が使用されており、このような外用剤としては、幼牛血液抽出物(ソルコセリル)(応用薬理、22巻、565〜579頁、1981年)やトコレチナート(オルセノン軟膏)(応用薬理、43巻、121〜127頁、1992年)等が知られている。また、内用剤としては、ラクトフェリン類分解物(特開平8−81387号)、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン及びその誘導体(特開平11−193236号)等が提案されている。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記薬剤は、その治癒効果、安全性、製造コスト等の全てについて充分に満足するものではなかった。例えば、上記外用剤は治癒効果が充分とは言えず、また、ラクトフェリン類分解物はラクトフェリンの精製に手間とコストがかかり、デヒドロエピアンドロステロンは安全性の問題があった。【0007】 したがって、本発明の目的は、創傷治癒効果を有し、より安全で、かつ安価な創傷治癒促進剤を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ココアの生理機能の研究を行なう中で、意外にもカカオマス中に含まれるココア分が創傷の治癒を促進する効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。【0009】すなわち、本発明の一つは、カカオマス中に含まれるココア分を有効成分とする創傷治癒促進剤を提供するものである。【0010】この場合、上記創傷治癒促進剤としては、ココア及び/又はカカオマスを含有するものであることが好ましい。【0013】 本発明の創傷治癒促進剤によれば、カカオマス中に含まれるココア分により、創傷の治癒が促進されるという効果がもたらされる。【0014】 また、カカオマス中に含まれるココア分を含有することにより、動物における創傷の治癒の促進効果がもたらされる。【0015】【発明の実施の形態】本発明において、ココア分とは、カカオマスからココアバターを除いた成分を意味し、主として、蛋白質、澱粉、食物繊維(水溶性難消化性多糖類、ヘミセルロース、セルロース、リグニン等)、リン脂質、無機質(リン、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウム、ナトリウム等)、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE(各種トコフェロール等)、ナイアシン、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、タンニン(エピカテキン、カテキン、ケルセチン等のポリフェノール類)、無水カフェイン、テオブロミンなどを含有している。【0016】本発明において、カカオマス中に含まれるココア分の摂取による創傷治癒促進効果の作用機序については明らかではないが、ココア分は豊富な栄養成分や生理活性物質を含んでおり、これらの成分の相乗的な効果によるものと考えられる。【0017】本発明の創傷治癒促進剤に用いられるココア分としては、好ましくは、例えばカカオマスからココアバターを搾油して得られるココアパウダーが用いられ、カカオマス自体を用いてもよい。【0018】なお、本発明でいう「創傷」とは、皮膚及びその他の組織(臓器)に生じた擦過傷、裂傷、切創、挫傷等のほか、潰瘍や火傷も含む意味である。【0019】本発明の創傷治癒促進剤の形態は、特に限定されず、錠剤、粉末(顆粒)、カプセル剤、ドリンク剤、軟膏、貼薬等が挙げられる。また、カカオマスやココアパウダーを原料として製造される各種の飲食品、例えばココアドリンク、調整ココア、チョコレートなどとして本発明の創傷治癒促進剤を摂取することもできる。【0020】さらには、普通の食事が摂取できない病態にある人、例えば頭部、顔面、口腔部損傷、意識障害、食欲不振等があって、かつ、消化器官はある程度正常な人などには、経腸栄養食品として摂取させてもよい。【0021】経腸栄養食品は、上記ココア分と、他の栄養源とを含有させたものからなる。この場合、ココア分としては、前述したようにココアパウダーやカカオマスなどが好ましく用いられる。【0022】この場合、他の栄養源としては、特に限定されないが、乳蛋白、大豆蛋白等の蛋白質、植物性油脂等の脂質、砂糖、デキストリン等の糖質、ビタミン類、ミネラル類などが好ましく用いられる。【0023】経腸栄養食品は、上記ココア分と他の栄養源とを、栄養所要量/日を目安にして配合し、そのまま混合粉末として、あるいは適当量の水等に溶解させることによって調製することができる。【0024】経腸栄養食品を摂取させる方法としては、例えば飲食が可能な人であれば経口的に摂取させ、飲食が不可能な人の場合には、チューブを使用して鼻などから、あるいは胃や腸に孔を開けて投与する方法(経管投与)が採用される。【0025】本発明の創傷治癒促進効果を得るための上記ココア分の有効投与(摂取)量は、カカオマス換算で一日当り0.8〜40gである。【0026】本発明の創傷治癒促進剤を飲食品として摂取する場合には、上記飲食品中に、上記ココア分(カカオマスからココアバターを除いた成分)が、固形分換算で0.1〜10質量%含有されていることが好ましい。【0027】 また、通常の飼料に上記ココア分を、固形分換算で1〜15質量%添加することにより創傷治癒促進効果を有する飼料を得ることができる。【0028】上記通常の飼料としては、特に制限はなく、犬、猫、ラット、マウス、ハムスター、ニワトリ、ブタ、牛などの飼料として市販されている各飼料や、通常飼料原料として用いられているものを適宜配合して調製したものを用いることができる。具体的には、例えば大豆粕、ホワイトフィッシュミール等の蛋白源、大豆油等の脂肪源、アルファルファミール等の繊維源、小麦、トウモロコシ、フスマ、胚芽、酵母、脱脂米糠、マイロ等の炭水化物源、ビタミンA、D3、E、B1、B2、B3、B12、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、塩化コリン等のビタミン類、CaCO3、NaCl、FeSO4、MnCO3、CoSO4・7H2O等のミネラル類を含有するものが好ましく用いられる。【0029】また、上記ココア分の添加方法は、特に制限はなく、市販の飼料にふりかけたり、他の飼料原料と一緒に混合して粉末飼料としたり、ペレット状に加工したりしてもよい。【0030】【実施例】実施例1(飼料の調製)飼料「CE−2」(商品名、日本クレア製、以下同じ)に、ピュアココア(商品名:MORINAGA PURE COCOA、森永製菓(株)製)を12.5%添加した固形飼料を調製(日本クレアに依頼)した。なお、上記「CE−2」は、蛋白源として大豆粕、ホワイトフィッシュミール、脂肪源として大豆油、繊維源としてアルファルファミール、炭水化物源として小麦、トウモロコシ、フスマ、胚芽、酵母、脱脂米糠、マイロ、ビタミン類としてビタミンA、D3、E、B1、B2、B3、B12、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、塩化コリン、ミネラル類としてCaCO3、NaCl、FeSO4、MnCO3、CoSO4・7H2Oを含有するものである。【0031】試験例11週間予備飼育を行なったWister系雄ラット6匹(6週齢)を2群(各群3匹)に分け、試験期間中コントロール群には飼料として「CE−2」を、試験群には実施例1で得たココア分含有固形飼料をそれぞれ自由摂取させた。そして、上記飼料摂取させ始めてから2週間後にペントバルビタール麻酔下で各ラットの背部の毛を除毛した後、該除毛部の皮膚を約1cm四方切除した。そして、この創傷面の状態を毎日観察(写真撮影)し、創傷面の大きさ(面積)を測定した。その結果を表1に示す。【0032】【表1】【0033】表1から、創傷面の大きさは、コントロール群及び試験群の両群共に経時的に縮小しているが、特に試験群において、創傷面の残存率が小さく、創傷治癒が早いことが分かった。【0034】さらに、皮膚切除後3日目、7日目、12日目に各群のラットの正常部分を含めた創傷面の組織を採取して中性緩衝ホルマリン中に保存した。そして、常法により採取した組織のパラフィン包埋切片を作製し、アザン(変法)染色(病理組織標本の作り方、渡辺陽之輔他2名監修、医学書院)を行ない、顕微鏡観察(倍率100倍)した。その結果、12日目の試験群のラット(No.6)の創傷面には、全体的に表皮組織が再生しており、炎症などの症状は認められなかったが、コントロール群のラット(No.3)の創傷面には、僅かに表皮組織が再生しているのみであり、また、炎症の症状が認められた。【0035】以上の結果から、ココア分を摂取することにより、創傷治癒が促進されることが分かった。【0036】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、カカオマス中に含まれるココア分により、創傷の治癒が促進されるという効果がもたらされる。このため、本発明の創傷治癒促進剤、あるいはそれを含有する飲食品を摂取することにより、安全、かつ効果的に創傷の治癒を促進することができる。【0037】更には、人間以外の動物においても同様に、飼料にカカオマス中に含まれるココア分を添加することにより、その創傷治癒を促進することができる。 カカオマス中に含まれるココア分を有効成分とする創傷治癒促進剤。 ココア及び/又はカカオマスを含有するものである請求項1記載の創傷治癒促進剤。


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