タイトル: | 特許公報(B2)_コハク酸モノグリセリド塩のミセル分散液、およびこれを配合した洗浄剤 |
出願番号: | 2000030067 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 8/37,A61K 8/04,C11D 1/04 |
國枝 博信 小川 晃弘 葛城 俊哉 JP 3921907 特許公報(B2) 20070302 2000030067 20000208 コハク酸モノグリセリド塩のミセル分散液、およびこれを配合した洗浄剤 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 國枝 博信 小川 晃弘 葛城 俊哉 JP 1999296838 19991019 20070530 A61K 8/37 20060101AFI20070510BHJP A61K 8/04 20060101ALI20070510BHJP C11D 1/04 20060101ALI20070510BHJP JPA61K8/37A61K8/04C11D1/04 A61K 8/37 A61K 8/04 C11D 1/04 特開昭59−160523(JP,A) 特開平04−218597(JP,A) 特開平03−145416(JP,A) 特開平03−181413(JP,A) 特開平08−012995(JP,A) 特開平11−279117(JP,A) 3 2001187719 20010710 7 20030827 岩下 直人 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、高濃度領域で低い粘性を示すコハク酸モノグリセリド塩のミセル分散液、およびこれを配合した洗浄剤に関するものである。【0002】【従来の技術】従来から、人体の皮膚や毛髪に使用されたり、人体や皮膚に接触する物を洗浄するために使用される洗浄剤として、ボディーシャンプー、洗顔用洗浄剤、シャンプー、シェービングフォーム、食品及び食器用洗浄剤等が知られているが、これらの洗浄剤においては、人体、皮膚への接触という点から、用いられる界面活性剤の界面活性能のみならず、皮膚への低刺激性、人体に対する高い安全性が求められている。また、最近では、廃棄された洗浄液による環境汚染を防止するために、生分解性の高い界面活性剤が要望されている。しかし、従来から使用されている一般的な洗浄剤は、必ずしもこのような要件を満たしているとは言い難い。【0003】例えば、アニオン性界面活性剤である石鹸は、使用時に水の存在下で脂肪酸とアルカリ金属の水酸化物に分解するため、皮膚を荒らすことになり好ましくない。また、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどは洗浄力は強いものの、人体、環境に対しては必ずしも安全とは言えない。他方、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルは皮膚には穏やかであるが、単独で用いられる場合、洗浄力・起泡力が不十分であることから、人体に対して安全性が高く、生分解性に優れ、かつ洗浄能力が高いものが要望されていた。さらに、界面活性剤濃度が高くなると、皮膚に対する刺激性がさらに強くなるのは勿論であるが、それ以外に、界面活性剤が粘性の高い会合体を形成するため、水溶液の粘度が上昇し、原料供給の際に送液が困難となり、作業性が低下する問題があった。このため、高濃度の界面活性剤水溶液を高温に加熱して、粘度を低下させた状態で送液するか、或いは低濃度の界面活性剤水溶液を使用する必要があった。【0004】一方、コハク酸モノグリセリド塩はアニオン性界面活性剤であり、食品用乳化剤として認可されていることから、物性改良剤としてパン、麺類、ケーキなどの蛋白質、澱粉を主体とした食品に、さらにはミルクコーヒー、ミルクティーなどの乳飲料に対しても使用されている。また、口腔用洗浄剤組成物(特開平3−145416号公報、特開平3−181413号公報、特開平4−59736号公報など)や育毛成分として頭髪化粧料にも使用されている(特開昭61−15816号公報、特開平4−342515号公報など)。【0005】【発明が解決しようとする課題】このように、コハク酸モノグリセリド塩は、高い安全性と優れた生分解性を有するために、食品や化粧料、洗浄剤の分野に使用されているが、化粧品や洗浄剤では食品と比較して、コハク酸モノグリセリド塩の使用量が多いために、高濃度で添加したり、配合したりする場合に、コハク酸モノグリセリド塩が粘性の高い会合体を形成し、高粘性ゲル状となるために、送液などが困難となる可能性があった。また、現在流通しているコハク酸モノグリセリドの塩は構成脂肪酸としてパルミチン酸やステアリン酸が用いられていることから、高濃度側では結晶が水に分散したコアゲルと称される白濁液となり、これを溶解するためには水溶液を加熱しなければならず、作業性、経済性の面で問題があった。そこで、市場では、毛髪用シャンプー等の洗浄剤への配合上の都合から、コハク酸モノグリセリド塩を高濃度に含有してなる均一なミセル分散液の開発が求められていた。【0006】【課題を解決するための手段】 このような問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、コハク酸モノグリセリド塩の中でもラウリン酸を構成脂肪酸とするものが、水に高濃度で含有されても、室温でミセルを形成するために、その液の粘度が低く、さらに、室温以下の温度条件下においても結晶が析出しないことから、原料供給の際において作業性が優れることを見出した。また、このコハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩が、現在流通しているコハク酸モノグリセリドの塩と比較して起泡力が高く、泡の安定性に優れているために、各種洗浄用途に使用できることを見出し、本発明に到達した。 本発明の第1の要旨は、コハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩と水からなる組成物であって、コハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩の含有量が15〜35重量%であり、かつコハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩がミセルを形成して分散していることを特徴とする均一なミセル分散液に存する。 第2の要旨は、このミセル分散液を配合することを特徴とする洗浄剤の製造方法に存する。 第3の要旨は、このミセル分散液を配合することを特徴とする毛髪用シャンプーの製造方法に存する。【0007】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、コハク酸モノグリセリド塩を15〜35重量%の高濃度で含有してなる均一なミセル分散液である。本発明のミセル分散液に含有されるコハク酸モノグリセリド塩の構成脂肪酸は、通常、炭素数8〜14のものであり、中でもラウリン酸またはミリスチン酸が好ましい。ミリスチン酸は室温付近までの温度領域において結晶が析出するために作業温度が限定されるので、ラウリン酸が更に好ましい。これより脂肪酸鎖長が短いカプリル酸、カプリン酸は、洗浄性が劣る。また、脂肪酸の炭素数が16以上では、高温領域まで結晶が析出するために水溶液を加熱する必要があり、好ましくない。【0008】本発明に用いられるコハク酸モノグリセリド塩は、一般的にはコハク酸の酸無水物とモノグリセリドを反応させることにより得られるコハク酸モノグリセリドをアルカリ金属塩などで処理することにより得られる。反応は通常、無溶媒条件下で行われ、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。このとき、モノグリセリドが完全に融解してから無水コハク酸を添加するのが好ましい。また、無水コハク酸とモノグリセリドの比率は重量比で1/1〜2/1がよく、無水コハク酸が少ない場合は未反応のモノグリセリドが多量に存在し、一方無水コハク酸が多すぎるとモノグリセリドにコハク酸が2分子結合したものや他のエステル化など多数の副反応がおこることから好ましくない。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換してもよい。かくして得られた無水コハク酸とモノグリセリドの反応混合物は、コハク酸モノグリセリドの他にコハク酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、その他オリゴマーを有している。本発明においては、このような混合物をそのまま用いても構わないが、コハク酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、蒸留モノグリセリドとして市販されているものが使用できる。【0009】このようにして得られたコハク酸モノグリセリドをアルカリ金属塩、例えば炭酸水素カリウム、炭酸カリウムなどのようなカリウム塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムのようなナトリウム塩と混合することにより、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物と混合することによりコハク酸モノグリセリド塩が得られる。アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物はコハク酸モノグリセリドに対して当量中和できる量だけ添加するのが好ましく、添加量が少なすぎる場合はコハク酸モノグリセリドのカルボン酸部分のイオン化が不十分であるために水中で上手く溶解せず、液滴となって水中に分散する可能性があり、一方、添加量が多すぎる場合は、系全体のpHに悪影響をおよぼすことがある。【0010】本発明のコハク酸モノグリセリド塩を15〜35重量%の濃度で含有してなるミセル分散液は、コハク酸モノグリセリド塩と水を、通常、25℃以下で撹拌混合することにより調製される。この液は、室温において高濃度でも均一なミセル分散液を形成するので、粘度が低く送液が容易であり、他の成分と混合した場合に均一性が保たれることから作業性が向上する。また、ミセル分散液の粘度が広い温度領域において一定であるので、加熱の必要がなく、コスト面でも有利である。コハク酸モノグリセリド塩のミセル分散液中の濃度は、20〜30重量%であることが、毛髪用シャンプー等の洗浄剤に配合する上でより好ましい。【0011】本発明に用いられるコハク酸モノグリセリド塩と水の混合物はこれらの量比、温度変化により様々な相状態をとることが可能である。図1には、本発明者らがコハク酸ラウリン酸モノグリセリドナトリウム塩と水の量比を変化させ、各温度における相挙動について実験を行った結果の相図を示す。該相図中のコハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩の濃度35重量%以下の領域はミセルを形成しており、低い粘性を示すが、それ以外の領域では、ヘキサゴナル、キュービック、ラメラといった高粘性液晶を形成することから粘性が高い。従って、作業性、経済性を考慮した場合、コハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩の分散液は、コハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩の濃度が35重量%以下であることが好ましいことがわかる。このミセル分散液の温度は、50℃以下の領域に存することが好ましい。一方、コハク酸モノグリセリド塩の構成脂肪酸の鎖長が長いもの、例えばコハク酸ステアリン酸モノグリセリド塩の場合、温度が50℃以下ではコアゲルとなり結晶が析出する(図2)。本発明のミセル分散液は、毛髪用シャンプー、ボディーシャンプー、洗顔用洗浄剤、シャンプー、シェービングフォーム、食品及び食器用洗浄剤等の洗浄剤に配合することができ、中でも毛髪用シヤンプーへの配合に適している。【0012】本発明の洗浄剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、通常の洗浄剤に使用されている他の界面活性剤を配合することができる。このような配合成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、カルボキシベタイン型、イミダゾリニウム型、スルホベタイン型、アミノ酸系界面活性剤などが挙げられる。さらに、洗浄力を充分に発揮するために、キレート剤を配合してもよい。このようなキレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、トリポリリン酸、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩など従来使用されているものが挙げられる。この他にも、アミンオキシドのような増泡剤、高分子エマルションなどの乳濁剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの流動性向上剤、油脂、高級アルコールエステル類、プロテイン誘導体などの保湿剤、セルロース誘導体などの増粘剤、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸などの防腐剤、リン酸ナトリウムなどのpH調整剤、色素、香料、酵素などを目的にあわせて1種または2種以上組み合わせて使用することができる。【0013】また、毛髪用シャンプーに対しては、上記成分に加えて、従来毛髪用シャンプーに慣用されている各種成分、例えば紫外線吸収剤、フケ取り剤、育毛成分などを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。毛髪用シャンプー等の洗浄剤中に、本発明のコハク酸モノグリセリド塩のミセル分散液は、通常、5〜50重量%の割合で含まれる。本洗浄剤は、通常、50℃以下の温度で使用される。【0014】【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、比、%および部はいずれも重量比、重量%および重量部を表す。【0015】[コハク酸ラウリン酸モノグリセリドナトリウム塩の合成]反応器に撹拌棒および還流管を取り付け、ラウリン酸モノグリセリド(ポエムM−300 理研ビタミン製)59.5重量部を入れ、撹拌しながらオイルバスにより徐々に温度を上昇させた。ラウリン酸モノグリセリドが溶解し始めた時に、無水コハク酸40.5重量部を投入し、120℃で90分間反応させ、室温まで冷却してコハク酸ラウリン酸モノグリセリド反応混合物を得た。このうち、13重量部を脱塩水43.5重量部に溶解し、1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調製した。これに酢酸エチル43.5重量部を加え振とう後、放置すると酢酸エチル相と水相に分離した。水相を分液し、3N塩酸を加え、水溶液のpHを2に調整した。この時点で油状物が分離してきたので、この水溶液1重量部に対して0.77重量部の酢酸エチルを加え、振とうすることで逆抽出を行い、酢酸エチル相と水相の2相を得た後、酢酸エチル相を分液した。この酢酸エチル相1重量部に対して脱塩水0.5重量部を加えて洗浄後、酢酸エチルを減圧留去し、さらに減圧乾燥することにより、白色粉末としてコハク酸ラウリン酸モノグリセリドを得た。この白色粉末を脱塩水に分散し、1N水酸化ナトリウム水溶液で当量中和することでコハク酸ラウリン酸モノグリセリドナトリウム塩を合成した。【0016】[相図(相平衡図)の作成] 相図の作成は、コハク酸モノグリセリドナトリウム塩と再蒸留水の所定の組成の試料をアンプルに封入し撹拌後、恒温水槽中で振とう後静置し、溶解平衡に達した液相を観察した。高濃度側のサンプルの場合は、サンプル管を倒置させて、遠心分離を繰り返すことにより、撹拌を促進させた。相分離の状態は目視により観察し、液晶の型は小角X線散乱、偏光顕微鏡のパターンにより決定した。図1には、コハク酸ラウリン酸モノグリセリドナトリウム塩の水系での相図を、図2には、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドナトリウム塩(ポエムB−10 理研ビタミン製を1N水酸化ナトリウム水溶液で当量中和したもの)の相図を示す。 図1では、濃度35%以下においてミセルを形成するが、図2では濃度40%以下且つ温度50℃以上の領域のみミセルを形成する。【0017】[参考例;起泡力の評価]コハク酸モノグリセリドナトリウム塩の1%水溶液を4倍に希釈して0.25%水溶液を調整し、10mLを50mL試験管に入れた後、振とう機により1分間(振とう速度は約200回/分)振とうした。停止30秒後に泡の高さを測定した。評価結果を表1に示す。コハク酸ラウリン酸モノグリセリドナトリウム塩を用いた場合の方が高い起泡力を有していた。【0018】【表1】【0019】【発明の効果】 本発明のコハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩を高濃度に含有したミセル分散液は、粘性が低く、室温以下の温度であっても結晶が析出する恐れがないことから原料供給時の送液が容易であり、作業性が向上する。 さらに、本発明の洗浄剤は人体に対して高い安全性を有すること、弱酸性または中性であることから皮膚に対して刺激性が低いこと、かつ起泡力および泡の安定性に優れることから、特に食品・食器用洗浄剤、洗顔用洗浄剤、ハンドソープ、シェービングフォーム、ボディーシャンプー、毛髪用シャンプーとして好適である。【図面の簡単な説明】【図1】コハク酸ラウリン酸モノグリセリドナトリウム塩の水系での相図である。Wm はミセル、H1 はヘキサゴナル液晶、V1 はキュビック液晶、Lαはラメラ液晶、Sは固体をあらわす。【図2】コハク酸ステアリン酸モノグリセリドナトリウム塩の水系での相図である。Wm はミセル、Lαはラメラ液晶、Sは固体をあらわす。 コハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩と水から成る組成物であって、コハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩の含有量が15〜35重量%であり、かつコハク酸ラウリン酸モノグリセリド塩がミセルを形成して分散していることを特徴とする均一なミセル分散液。 請求項1記載のミセル分散液を配合することを特徴とする洗浄剤の製造方法。 請求項1記載のミセル分散液を配合することを特徴とする毛髪用シャンプーの製造方法。