生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_二塩基酸類の製造方法
出願番号:2000023577
年次:2010
IPC分類:C07C 51/31,B01J 31/04,C07C 55/02,C07B 61/00


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田中 克利 松岡 有二 清水 敦 JP 4475715 特許公報(B2) 20100319 2000023577 20000201 二塩基酸類の製造方法 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 松井 佳章 100151965 武井 英夫 100103436 伊藤 穣 100095902 鳴井 義夫 100108693 田中 克利 松岡 有二 清水 敦 20100609 C07C 51/31 20060101AFI20100520BHJP B01J 31/04 20060101ALI20100520BHJP C07C 55/02 20060101ALI20100520BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100520BHJP JPC07C51/31B01J31/04 XC07C55/02C07B61/00 300 C07C27/00-71/00 特開昭46−002647(JP,A) 特公昭44−026283(JP,B1) 特開平10−286467(JP,A) 2 2001213841 20010807 9 20070129 野口 勝彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シクロヘキサノンを分子状酸素によって酸化し、二塩基酸類を製造する方法に関する。ここでいう二塩基酸類とは、炭素数6以下の脂肪族二塩基酸を指す。【0002】【従来の技術】シクロヘキサノンを分子状酸素によって酸化し二塩基酸類を製造する方法としては、例えば、マンガン等の触媒および酢酸溶媒の存在下、分子状酸素により酸化する方法が知られている。特公昭44−26283号公報によれば、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールを含む混合物を酢酸等を溶媒として分子状酸素を用いてアジピン酸を製造する方法において、反応当初に0.3重量%以上8重量%未満の水を反応系に添加することが記載されている。この方法によれば、最も高いアジピン酸収率は71モル%である。【0003】フランス国特許第2541993号明細書によれば、シクロヘキサノンまたはシクロヘキサノン/シクロヘキサノールの混合物を酢酸マンガンと強酸とからなる触媒系にて酢酸等を溶媒として分子状酸素を用いてアジピン酸を製造する方法が記載されている。この方法によれば、アジピン酸と同様に有用なグルタル酸およびコハク酸の各選択率を合わせた合計選択率は90モル%以下に留まる。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、シクロヘキサノンを分子状酸素によって酸化し、アジピン酸を主体として有用なグルタル酸およびコハク酸を含めた二塩基酸類を高い収率で製造する方法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは、二塩基酸類の収率を高めるべく検討を続けた結果、シクロヘキサノンを(A)マンガン化合物およびコバルト化合物、(B)水、(C)酢酸より酸解離指数の小さい酸類、の存在下、酢酸溶媒にて、分子状酸素を用いて酸化反応を行うと、二塩基酸類の収率が改善されることを見出し、本発明をなすに至った。即ち本発明は、マンガン化合物およびコバルト化合物を組み合わせて使用する。マンガン化合物またはコバルト化合物のどちらか一方だけが多いかまたは一方のみの場合では、二塩基酸類、すなわちアジピン酸の収率が低くなることから、その割合はマンガンとコバルトとのモル比が、一般には0.25〜4であり、好ましくは0.5〜2である。【0006】本発明のマンガン化合物とは、一般的には化合物におけるマンガンの酸化数が2価または3価の塩であり、好ましくは、酢酸マンガン、マンガンアセチルアセトナート、安息香酸マンガン、ナフテン酸マンガン、塩化マンガン、過塩素酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガンなどであり、より好ましくは酢酸マンガン、マンガンアセチルアセトナート、安息香酸マンガンである。これらのマンガン化合物は単独または混合して用いることができる。【0007】本発明のマンガン化合物の使用量は、反応速度およびアジピン酸を主とする二塩基酸類の収率の観点から、反応液におけるマンガンとしての濃度が好ましくは0.1〜1.8重量%、より好ましくは0.2〜1.6重量%である。本発明のコバルト化合物とは、一般的には化合物におけるコバルトの酸化数が2価または3価の塩であり、好ましくは、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート、安息香酸コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化コバルト、過塩素酸コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルトなどであり、より好ましくは酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート、安息香酸コバルトである。これらのコバルト化合物は単独または混合して用いることができる。【0008】本発明のコバルト化合物の使用量は、マンガンと同様に反応速度およびアジピン酸を主とする二塩基酸の収率の観点から、反応液におけるコバルトとしての濃度が好ましくは0.1〜1.8重量%、より好ましくは0.2〜1.6重量%である。本発明においては、マンガン化合物およびコバルト化合物に、さらに第三金属成分を加えた構成とすることができる。ここでいう第三金属成分とは、例えば鉄、ニッケル、銅、鉛、バリウム、モリブデン、タングステンなどの金属化合物が挙げられる。【0009】本発明の水は、反応中間体から二塩基酸類への主反応を選択的に進めるために必要である。本発明の水の使用量は、二塩基酸類が高い収率で得られ、中でもアジピン酸が高い収率で得られることから、反応液中の濃度が好ましくは1〜20重量%、より好ましくは5〜16重量%である。この濃度は反応進行中において殆ど一定に保たれる。【0010】本発明の酢酸より酸解離指数(pKa = -log(Ka ) )が小さい酸とは、水溶液中の25℃における酸解離指数が4.56より小さい値をもつ酸であり、例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、パラキシレンスルホン酸、メタニトロベンゼンスルホン酸、パラニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸;硫酸、塩酸などの無機酸、などが挙げられる。また、スルホン酸基をもつ強酸性陽イオン交換樹脂やH型ゼオライトなどの固体酸を組み合わせることができる。これらの酸は単独または混合して用いることができる。本発明の酸類の使用量は、反応速度や反応収率の観点から、反応液に対し好ましくは0.1〜2重量%である。【0011】本発明の溶媒は、酢酸を主体とするものであるが、有機溶媒などの第三成分を任意に混ぜ合わせることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などのカルボン酸類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;ベンゾトリフルオリドなどのハロゲン化炭化水素類;及びこれらの混合物が挙げられる。また、反応を促進する第三成分にはラジカルを発生する化合物として、例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトアルデヒド、プロピオアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類;N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド類;これらの混合物、を添加してもよい。【0012】本発明のシクロヘキサノンには、シクロヘキサノンを製造する際同時に得られるか若しくは出発原料として用いられるシクロヘキサノールがある程度存在していても構わない。本発明のシクロヘキサノンの濃度は、溶媒である酢酸と第三成分および水の使用量により変動しうるが、副反応の抑制および反応熱除去の観点から、反応液に対し通常3〜50重量%であり、好ましくは5〜30重量%である。【0013】本発明の分子状酸素は、純粋な酸素の状態、または窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等で希釈されている状態であってもよく、供給ガス中の酸素濃度を1〜100%の範囲内で選択することができる。酸素含有ガスとしては、酸素を低濃度で用いることが安全性の観点から好ましく、例えば、空気、7体積%の酸素を含有した不活性ガス、などが挙げられる。本発明の分子状酸素の使用量は、反応が十分に進行しうるために、通常、シクロヘキサノン1モルに対し1時間当たり0.1モル以上である。反応開始直後および/または反応温度が高い場合には、シクロヘキサノンに対し過剰モルの分子状酸素を供給することが好ましい。【0014】本反応を実施する際の反応温度は、広い範囲にわたり変化させ得るが反応速度や副反応抑制の観点から、50℃〜80℃が好ましい。なお、反応開始時は発熱が大きいことから温度上昇を抑えることが重要である。また、シクロヘキサノンが殆ど転化してからは、反応中間体の酸化を促進するために、100℃まで上げることができる。本発明を実施する際の反応圧力は、常圧で反応を進行させ得るが、加圧とすることができる。【0015】本発明を実施する反応器としては、例えば、気泡塔、撹拌槽、充填塔などである。実施する反応器の容積が小さいときは、気泡の合体が優勢となることから、気相を微細化するための工夫を要し、例えば撹拌槽においては撹拌羽根の高速回転や邪魔板の設置により撹拌を激しくすることが好ましい。本発明の二塩基酸類は、一般的に知られた方法により分離・精製することができ、例えばアジピン酸は反応液から晶析により得て、グルタル酸やコハク酸などはアジピン酸を分離した残液を直接蒸留することで酸無水物として得るか、またはアルコールなどでエステル化し蒸留することでエステルとして得ることができる。【0016】【発明の実施の形態】以下に、実施例などによって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものでない。【実施例1】酸素含有ガス吹き込み管、冷却器、撹拌器、温度計を備えた4ツ口フラスコに、シクロヘキサノン8g、酢酸マンガン(II)四水和物1.4g、酢酸コバルト(II)四水和物1.4g(Mn/Co=1)、水8g、ベンゼンスルホン酸一水和物0.46gおよび酢酸61gを仕込んだ。次いで酸素ガスを4リットル/時間で供給しながら、この混合物を70℃に加熱し反応を行った。撹拌回転数1500回/分で激しく撹拌しながら反応を続け、5時間後に反応を停止した。反応液の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。この結果、シクロヘキサノンの転化率99.4%であり、二塩基酸類の選択率はアジピン酸が80%、グルタル酸が12%、コハク酸2%であり、合計94%であった。【0017】高速液体クロマトグラフィーによる分析条件は、以下の通りである。移動相;水とアセトニトリルを体積比9対1で混合しリン酸を15ミリモル/リットルの濃度となるように添加して調製した液固定相;オクダデシル基結合シリカゲル(ODS)を充填したカラム検出器;示差屈折検出器および/またはUV吸光光度検出器【0018】【実施例2〜8】実施例1と同様の方法にて、酸の種類を変えて、7時間反応した結果を表1に示す。【比較例1】強酸を添加しない以外は実施例1と同様の方法にて実施した結果を表1に示す。表1から、スルホン酸類のような酢酸より強い酸の添加は、二塩基酸類の収率の向上に効果がある。また、反応速度を上げることができる。【0019】【実施例9】実施例1と同様の方法にて、酢酸に対して6重量%のアセトアルデヒドを加えた溶媒にて7時間反応したところ、シクロヘキサノンの転化率99.9%であり、二塩基酸類の選択率はアジピン酸が79%、グルタル酸が12%、コハク酸2%であり、合計93%であった。二塩基酸類の収率を落とすことなく酢酸溶媒に第三成分を混ぜ合わせることができる。【実施例10】実施例1と同じ装置を用い、シクロヘキサノン8g、酢酸マンガン四水和物1.4g、酢酸コバルト四水和物1.4g、水3.2g、パラトルエンスルホン酸一水和物0.5gおよび酢酸65gを仕込んで、反応した結果を表2に示した。【0020】【比較例2】実施例10と同様の方法にて、酢酸マンガン四水和物2.8gとし、酢酸コバルト四水和物を抜いて、反応した結果を表2に示した。【比較例3】実施例10と同様の方法にて、酢酸コバルト四水和物2.9gとし、酢酸マンガン四水和物を抜いて、反応した結果を表2に示した。表2から、マンガンとコバルトがどちらか一方のみでは二塩基酸類の収率は低くなることがわかる。【0021】【比較例4】実施例10と同様の方法にて、マンガンおよびコバルトと使用量をそれぞれ2重量%にして反応した結果を表2に示す。【比較例5】実施例1と同様の方法にて、マンガンおよびコバルトと使用量をそれぞれ0.4重量%にして反応した結果を表2に示す。比較例4と5により、マンガンとコバルトの使用量には二塩基酸類が高収率で得られる最適な範囲があることがわかる。【0022】【実施例11】実施例10と同様の方法にて、結晶水以外の水を加えず(反応液中の水の割合は1重量%)、5時間反応した結果を表3に示す。【実施例12】実施例10と同様の方法にて、水の割合を16重量%にして9時間反応した結果を表3に示す。【0023】【比較例6】実施例10と同様の方法にて、水の割合を21重量%にして9時間反応した結果を表3に示す。表3から、水を加えることにより二塩基酸類が高い収率で得られることがわかる。また、水の割合は二塩基酸類が高い収率で得られる最適範囲が存在することがわかる。【0024】【実施例13】酸素含有ガス吹き込み管、冷却器、撹拌器、温度計、圧力計、安全弁を備えた300ミリリットルのステンレス製オートクレーブに、シクロヘキサノン10g、マンガン(II)アセチルアセトナート二水和物2.1g、コバルト(II)アセチルアセトナートニ水和物2.0g(Mn/Co=1)、水10g、ベンゼンスルホン酸一水和物0.58gおよび酢酸76gを仕込んだ。次いで7%酸素含有の窒素ガスを60リットル/時間で供給しながら、この混合物を70℃に加熱し、圧力を1.3MPaに設定して反応を行った。撹拌回転数1500回/分で激しく撹拌しながら反応を続け、5時間後に反応を停止した。反応液中の生成物を、高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、シクロヘキサノンの転化率99.4%で、二塩基酸類の選択率はアジピン酸が80%、グルタル酸が12%、コハク酸2%であり、合計94%であった。【0025】【実施例14】実施例13と同様の方法にて、温度55℃にて14時間反応したところ、シクロヘキサノンの転化率98.0%で、二塩基酸類の選択率はアジピン酸が79%、グルタル酸が12%、コハク酸2%であり、合計93%であった。【比較例7】実施例13と同様の方法にて、温度83℃において4時間反応したところ、シクロヘキサノンの転化率100%で、二塩基酸類の選択率はアジピン酸が30%、グルタル酸が7%、コハク酸13%であり、合計50%であった。【0026】【表1】【0027】【表2】【0028】【表3】【0029】【発明の効果】本発明により、シクロヘキサノンから分子状酸素によりアジピン酸が高い収率で得られ、かつ有用なグルタル酸およびコハク酸を含めた二塩基酸類が高い収率で得られる。 シクロヘキサノンを、(A)マンガン化合物およびコバルト化合物、(B)水、(C)酢酸より酸解離指数の小さい有機酸、の存在下、酢酸溶媒にて、分子状酸素を用いて酸化することを特徴とする二塩基酸類の製造方法。 反応液中の水の濃度が、1〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の二塩基酸類の製造方法。


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