タイトル: | 特許公報(B2)_ビール醸造設備用酸性洗浄剤 |
出願番号: | 2000014539 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C11D 3/04,C11D 1/10,C11D 1/72,C11D 1/90,C11D 3/20,C12C 13/00 |
秋本 竜二 中嶋 啓子 斎藤 浩 JP 4301382 特許公報(B2) 20090501 2000014539 20000124 ビール醸造設備用酸性洗浄剤 ジョンソンディバーシー株式会社 598028648 川上 宣男 100098844 秋本 竜二 中嶋 啓子 斎藤 浩 20090722 C11D 3/04 20060101AFI20090702BHJP C11D 1/10 20060101ALI20090702BHJP C11D 1/72 20060101ALI20090702BHJP C11D 1/90 20060101ALI20090702BHJP C11D 3/20 20060101ALI20090702BHJP C12C 13/00 20060101ALI20090702BHJP JPC11D3/04C11D1/10C11D1/72C11D1/90C11D3/20C12C13/00 C11D 3/04 C11D 1/10 C11D 1/72 C11D 1/90 C11D 3/20 C12C 13/00 特表2002−540253(JP,A) 5 2001207190 20010731 8 20061206 中島 庸子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ビール醸造設備の洗浄に使用する酸性洗浄剤、詳しくは、リン酸を主成分とし、さらに有機酸及び界面活性剤を有効成分として含有する新規なビール醸造設備用酸性洗浄剤に関するものである。【0002】【背景技術】ビール醸造設備の洗浄は、洗浄するタンクの近傍に設置された洗浄剤タンクから洗浄剤が醗酵タンク、貯酒タンク、充填タンクの各上部に順次送られ、タンク内に設置された上部ノズルからスプレイする循環洗浄方法によって行われ、この洗浄方法を定置洗浄法(Cleaning In Place、以下、CIP洗浄法と略記する)と呼んでいる。CIP洗浄法には、苛性アルカリとキレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)との混合物を主成分とするアルカリ洗浄剤が広く使用されており、このアルカリ洗浄によってビール醸造設備内の主たる汚れの成分である蓚酸カルシウム及び蛋白を除去した後、中和、殺菌、水洗等を行って洗浄を終了する。【0003】しかしながら、ビール製造後の各醸造設備の内部には多量の炭酸ガスが存在するため、苛性ソーダを主成分とするアルカリ洗浄剤を用いて洗浄を行うと、苛性ソーダに炭酸ガスが吸収されて炭酸ソーダを生成し、結果洗浄剤中のアルカリ濃度が減少して、洗浄性能を著しく低下せしめることになる。この洗浄性能の低下を避けるためアルカリ洗浄剤のさらなる追加使用は、キレート剤であるEDTAの使用量(濃度)が増加することになって、排水中のCODが高くなる等の環境面への影響の原因となる。加えて、アルカリ洗浄液に炭酸ガスが吸収されるということは設備内部の圧が陰圧となり、貯酒タンク等の破損という大きな事故を引き起こす原因ともなりかねない。その為、CIP洗浄を行う際には、事前に、醸造設備内に存在する炭酸ガスを長時間かけて排出する必要がある。【0004】アルカリ洗浄おける問題を回避する手段として、酸性洗浄剤の使用が考えられるが、酸性洗浄剤は、アルカリ洗浄剤に比べると、ビール醸造時に生成する蛋白汚れに対しては洗浄力が劣り、また実用レベルにも達していないため、ビール醸造用設備の洗浄にはほとんど用いられていない。したがって、当業界においては、蛋白質等の汚れに対する洗浄性に優れた酸性洗浄剤の開発が期待されている。【0005】【発明の開示】本発明者らは、上記期待に答えるべく酸性洗浄剤について鋭意研究を進めたところ、リン酸を主成分とする洗浄液に、有機酸と界面活性剤とを配合した酸性洗浄剤は、蛋白等に対する除去性が高められて、ビール醸造設備用の洗浄剤として実用に供し得る洗浄能を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。【0006】 すなわち、本発明は、リン酸を主成分とする酸性洗浄剤であって、(a)リン酸が1〜5重量%、(b)乳酸、クエン酸又はコハク酸から選択された少なくとも1種の有機酸が0.2〜2重量%及び(c)下記式(I)で表される非イオン界面活性剤及び下記式(II)又は式(III)で表される両性界面活性剤から選択された少なくとも一種の界面活性剤が0.01〜0.2重量%の範囲で含有する、特に、ビール醸造設備内の内面に付着している蓚酸カルシウム、蛋白質等の汚れに対する洗浄性に優れた新規なビール醸造設備用酸性洗浄剤を提供するものである。【0007】【化4】(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基を表し、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは5〜12の数を表し、mは0〜6の数を表す)【0008】【化5】(式中、Rは炭素数10〜14のアルキル基を表す)【0009】【化6】(式中、Rは炭素数6〜10のアルキル基を表し、Mは水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム又は有機アミンを表す)以下、本発明を詳細に説明する。【0010】本発明にかかるビール醸造設備用酸性洗浄剤における(a)成分のリン酸は、当該洗浄剤の主成分であり、洗浄能を奏する必須成分である。他の無機酸である塩酸及び硫酸はいずれもステンレス材質への侵食の問題があり使用できない。また、硝酸はステンレス材質への侵食はないものの、蛋白に対する洗浄性能がリン酸に比べて劣っているため不適である。他方、有機酸は、蓚酸カルシウム及び蛋白除去性が低くビール醸造設備用の酸性洗浄剤の主成分とはなり得ない。【0011】また(b)成分の有機酸は、リン酸との併用効果により洗浄性を高めるもので、クエン酸、乳酸及びコハク酸による併用効果が顕著である。特に乳酸が併用効果に優れており、さらに環境問題を考えた場合、生分解性が高く廃水処理をし易いL−乳酸が最も適している。また、乳酸は、リン酸及び界面活性剤と混合して高濃度の洗浄液として調製することができるという利点も有している。【0012】(c)成分の界面活性剤としては、特に、式(I)で表される非イオン界面活性剤及び式(II)で表されるアルキルベタイン型又は式 (III)で表されるアルキルイミダゾリニウムベタイン型の両性界面活性剤が洗浄性を高める好適な物質である。また、式(I)で表される非イオン界面活性剤として、直鎖又は分岐鎖を有する1級アルコールのほか、2級アルコールに酸化エチレン及び・又は酸化プロピレンが付加されたエーテル化合物で、その末端が水素であるもの、あるいはアルキル基で封鎖されたタイプのものも使用することができる。特に好ましい非イオン界面活性剤は、酸化エチレンが付加した、式(I)中のR1がC12〜C14のアルキル基、R2が水素、酸化エチレンの平均付加モル数がn=7〜10モルの化合物であり、これに相当する界面活性剤として、アデカトールSO−135、アデカトールLA−875(いずれも旭電化工業(株)製)などが市販されている。また、酸化エチレン及び酸化プロピレンが付加した、式(I)中のR1がC13〜C15のアルキル基、R2がメチル基、酸化エチレンの平均付加モル数(n)が5〜7モル、酸化プロピレンの平均付加モル数(m)が3〜5モルの化合物であり、これに相当する界面活性剤として、プルラファックLF431(BASFジャパン(株)製)が市販されている。【0013】他方、両性界面活性剤としては、式(II)及び式 (III)で表される化合物のいずれも洗浄性を高めるが、洗浄時の発泡性の低い式 (III)のアルキルイミダゾリニウムベタイン型の両性界面活性剤が使い易く適している。【0014】本発明に係るビール醸造設備用酸性洗浄剤における各成分の配合割合は、(a)リン酸が1〜5重量%、好ましくは1〜4重量%であり、また(b)有機酸が0.2〜2重量%、好ましくは0.3〜1重量%、そして(c)界面活性剤が0.01〜0.2重量%、好ましくは0.02〜0.1重量%である。勿論配合割合は、有機酸及び界面活性剤については化合物の種類によって変動することが有り得る。さらに、本発明に係るビール醸造設備用酸性洗浄剤には、所望により、洗浄剤の添加剤として一般に使用されている分散剤、抑泡剤あるいは殺菌剤等を加えることは可能である。次に、実施例及び比較例を掲げ、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。【0015】【実施例】ビール醸造設備の内表面に付着している代表的な汚れ成分として、蓚酸カルシウム及び蛋白汚れとして酵母からなる2種の汚れ板を作製し、これを試験片として洗浄能を評価した。【0016】1.試験片の調製イ.蓚酸カルシウム汚れ板蓚酸カルシウムを高温の硝酸水溶液に溶解した。この硝酸溶液中にステンレス製のテストピースを浸し、低温条件下でテストピース上に蓚酸カルシウムを再結晶させ、この蓚酸カルシウム付着ピースを高温度で熟成してこれを蓚酸カルシウム人工汚れ板として洗浄力試験に供した。【0017】ロ.蛋白汚れ板酵母の分散液中にステンレス製のテストピースを浸し、この酵母分散液が付着したテストピースを室温で長時間放置して、表面に酵母が付着したものを蛋白汚れ板として洗浄力試験に供した。【0018】2.洗浄方法及び洗浄条件CaCO3100ppmの硬水に被試験洗浄剤を溶解し、この洗浄液を上記の方法で調整した汚れ板上に毎分3Lの流量でスプレーして洗浄した。洗浄後のテストピースを蒸留水ですすぎ、乾燥させた後、表面の光沢度を測定した。なお、洗浄条件は洗浄剤水溶液の水温30℃、洗浄時間60秒とした。【0019】3.洗浄効率の算出【数1】【0020】4.洗浄試験結果上記洗浄試験により得られた試験の結果を表1に示す。【0021】【表1】【0022】比較例1〜7の結果から明らかなように、リン酸に比べ、硝酸は酵母汚れの洗浄性に劣り、また、その他の酸は、蓚酸カルシウム及び酵母汚れの双方の洗浄性が劣る。さらにリン酸に界面活性剤を併用してもやはり洗浄性の大きい向上は認められない。他方、実施例1〜9の結果から明らかなように、リン酸に乳酸等の有機酸及び式(1)〜式(3)の界面活性剤を併用すると、蓚酸カルシウム及び酵母の各人工汚れ板に対する洗浄性は著しく向上した。さらに、実施例1−5を見ると、リン酸濃度を低くしても、その洗浄性は同等以上であった。【0023】【発明の効果】以上詳細な説明から明らかなように、本発明にかかる酸性洗浄剤は、リン酸、有機酸及び界面活性剤の併用により蓚酸カルシウム及び蛋白に対する高い洗浄効果が得られ、現在使われているアルカリ洗浄剤に変わるCIP洗浄用の酸性洗浄剤として極めて有用のものである。加えて、本発明にかかるビール醸造設備用酸性洗浄剤は以下の特性を備えている。▲1▼有機酸及び界面活性剤の併用により洗浄性が高められる結果、栄養付加の要因となるリン酸の使用量を削減することができる。▲2▼さらに、有機酸及び界面活性剤は生分解性が高いので、環境に与える影響が少ない。▲3▼特に、L−乳酸とリン酸及び界面活性剤との系は濃縮型の液剤に調製することができるので輸送する場合に有利となる。 リン酸を主成分とする酸性洗浄剤であって、(a)リン酸が1〜5重量%、(b)乳酸、クエン酸又はコハク酸から選択された少なくとも1種の有機酸が0.2〜2重量%及び(c)下記式(I)で表される非イオン界面活性剤及び下記式(II)又は式 (III)で表される両性界面活性剤から選択された少なくとも一種の界面活性剤が0.01〜0.2重量%の範囲で含有することを特徴とするビール醸造設備用酸性洗浄剤。(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基を表し、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは5〜12の数を表し、mは0〜6の数を表す)(式中、Rは炭素数10〜14のアルキル基を表す)(式中、Rは炭素数6〜10のアルキル基を表し、Mは水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム又は有機アミンを表す) (b)有機酸が、L−乳酸である請求項1記載のビール醸造設備用酸性洗浄剤。 (c)界面活性剤が、上記式(I)で表される非イオン界面活性剤であって、式中の(A)R1が炭素数12〜14のアルキル基であり、R2が水素、nが7〜10の数、mが0から選択された少なくとも1種以上のものである請求項1又は2記載のビール醸造設備用酸性洗浄剤。 (c)界面活性剤が、上記式(I)で表される非イオン界面活性剤であって、式中のR1が炭素数13〜15のアルキル基であり、R2がメチル基であり、nが5〜7の数、mが3〜5の数から選択された少なくとも1種以上のものである請求項1〜3のいずれかに記載のビール醸造設備用酸性洗浄剤。 (c)界面活性剤が、上記式(III)で表される両性界面活性剤から少なくとも1種のものである請求項1〜4のいずれかに記載のビール醸造設備用酸性洗浄剤。