生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤
出願番号:2000007994
年次:2004
IPC分類:7,A61K31/4152,A61P19/02,A61P21/00,A61P25/00,A61P25/14,C07D231/26


特許情報キャッシュ

池田 憲 JP WO2002034264 20020502 JP2000007994 20001113 筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤 三菱ウェルファーマ株式会社 000006725 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 池田 憲 JP 2000324476 20001024 7 A61K31/4152 A61P19/02 A61P21/00 A61P25/00 A61P25/14 C07D231/26 JP A61K31/4152 A61P19/02 A61P21/00 A61P25/00 A61P25/14 C07D231/26 EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),JP,US 再公表特許(A1) 20040304 2002537315 16 技術分野本発明は、運動ニューロン疾患の治療薬並びに運動ニューロン増強剤に関する。より詳細には、本発明は、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患の治療薬並びに運動ニューロン増強剤に関する。背景技術運動ニューロン疾患には、一次運動ニューロン及び二次運動ニューロンの両方が障害される筋萎縮性側索硬化症(ALS)、二次運動ニューロンのみが障害される脊髄性筋萎縮症(SMA)があり、その他、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)などが知られている。これらの中でも、ALSは、中年以後に発症することが多く、数年の経過で筋萎縮、筋力低下が急速に進行し、最終的には呼吸不全等で死亡するという致死性の難病疾患であるが、その病因及び病態はまだ十分には解明されていない。ALSの主な病因としては、(1)自己免疫説(Caチャンネルに対する自己抗体の出現)、(2)興奮性アミノ酸過剰・中毒説(細胞外グルタミン酸の増加とグルタミン酸の運搬障害)、(3)酸化的ストレス障害説(Cu/Zn superoxide dismutase(SOD)遺伝子異常とフリーラジカルによる神経細胞障害)、(4)細胞骨格障害説(運動神経細胞へのneurofilamentの蓄積や封入体の出現、(5)神経栄養因子の欠損などが仮説として提唱されている。これらのALSに対する病因仮説の中で、酸化的ストレス障害説に基づき、antioxidantsがALSに有効かどうかが着目され、例えば、レシチン化SOD療法が試みられている(脳神経50(7):615−624,1998)。しかしながら、ヒト組み換え型Cu/ZnSODをALS患者に髄注投与した場合でも有効な治療効果は得られないことが判明している(脳神経50(7):615−624,1998)。また、既存のALS治療剤としては、リルゾール(特表平7−504655)(商品名:リルテック(ローヌ・プーラン・ローラー社))が存在する。この治療剤はベンゾチアゾール系化合物であり、グルタミン酸作動性神経においてグルタミン酸伝達を抑制し、神経変性に対する神経保護作用を有することが認められており、ALSを対象とした臨床試験も進められ、医薬品として承認されている。しかし、ALSに対する有効性が確認できない試験結果の報告もあり、さらに有効なALS治療剤の開発が望まれていた。発明の開示本発明の課題は、運動ニューロン疾患を治療することができる新規な医薬を提供することである。より具体的に言うと、本発明の課題は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)などの運動ニューロン疾患の進行を遅延させたり、あるいはその症状を緩和することができる新規な医薬を提供することである。本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを運動ニューロン疾患モデル動物(wobblerマウス(Ikeda K.ら、Ann.Neurol.34巻,304頁(1993年);Mitsumoto H.ら、Ann.Neurol.36巻,142−148頁(1994年);Mitsumoto H.ら、Science,265巻,1107−1110頁(1994年)))に投与した場合に、対照群に比し、前肢筋拘縮の進行および筋力の低下が遅延し、さらに上腕二頭筋の重量、筋肉繊維の平均直径および運動ニューロンの数が増加することを見い出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。即ち、本発明によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患の治療薬が提供される。本発明の好ましい態様では、本発明の治療薬は、運動ニューロン疾患の進行を遅延させるために使用される。本発明の別の側面によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン増強剤が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の有効量を患者に投与する工程を含む、運動ニューロン疾患の治療方法が提供される。本発明の好ましい態様では、本発明の治療方法は、運動ニューロン疾患の進行を遅延させるものである。本発明のさらに別の側面によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の有効量を患者に投与する工程を含む、運動ニューロンを増強する方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、運動ニューロン疾患の治療薬の製造のための3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の使用が提供される。本発明の好ましい態様では、運動ニューロン疾患の治療薬は運動ニューロン疾患の進行を遅延させる治療薬である。本発明のさらに別の側面によれば、運動ニューロン増強剤の製造のための3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の使用が提供される。本発明において好ましくは、運動ニューロン疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)であり、特に好ましくは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。発明を実施するための最良の形態本発明の医薬は、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含み、運動ニューロン疾患の治療薬又は運動ニューロンの増強剤として用いられることを特徴としている。本発明の医薬において有効成分として用いる3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンは、脂質過酸化を抑制するフリーラジカルスカベンジャーの1種である。3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンは、例えば、特公平5−31523号公報第7欄の合成例に記載された方法により製造できる。上記化合物については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報、例1の化合物)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)、眼疾患抑制作用(特開平7−25765号公報)、急性腎不全治療・予防作用(特開平9−52831号公報)、移植臓器保存作用(特開平9−52801号公報)、皮膚組織障害の予防・治療作用(特開平10−279480号公報)、並びに移植皮膚又は移植組織の壊死防止作用(特開平11−79991号公報)が知られている。しかしながら、これらの各刊行物には、上記化合物の運動ニューロン疾患に対する作用は示唆も教示もされていない。本発明の医薬の有効成分としては、遊離形態の上記化合物の他、生理的に許容されるその塩を用いることができる。また、それらの任意の水和物又は任意の溶媒和物を用いてもよい。なお、上記化合物には特公平5−31523号公報第5欄上段の化学構造式に示されるような互変異性体が存在するが、本発明の医薬の有効成分には、これらの異性体のすべてが包含されることはいうまでもない。上記化合物の塩としては、酸付加塩または塩基付加塩を用いることができる。例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、若しくはリン酸塩などの鉱酸塩;メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、若しくはフマル酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、若しくはマグネシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;又は、エタノールアミン若しくは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどの有機アミン塩などを用いることができるが、生理的に許容されるものであれば塩の種類は特に限定されることはない。本発明の医薬は、運動ニューロン疾患を罹患するヒトを含む任意の動物に投与することができるが、好ましくはヒトに投与される。本明細書で言う運動ニューロン疾患の治療とは、該疾患の治癒を目的とした治療のみならず、該疾患の進行を遅延することを目的とした治療、あるいは該疾患の症状の緩和・軽減を目的とした治療の全てを含む広い意味を有する。本発明で言う運動ニューロン疾患(motor neuron disease)とは、運動ニューロン障害(運動神経障害、motor neuropathy)をも包含する最も広義の意味を有する。運動ニューロン疾患は、随意運動神経系が選択的に侵される疾患群の総称である。運動ニューロン疾患は神経性の退行疾患で疾病により進行度は異なるものの増悪する傾向が強い。運動ニューロン疾患の具体例としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)等を挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、中年以降に発症し、筋萎縮と線維束攣縮を主な特徴とする原因不明の疾患である。病理所見は、脊髄前角細胞および延髄運動核の変性と、錐体路の変性である。初発症状は、主として手の脱力、手指の運動障害、および上肢の線維束攣縮であるが、発症部位により上肢型、球型、下肢型および混合型に分けられる。いずれの型でも症状の進行とともに全身の筋群が侵される。脊髄筋萎縮(SMA)は、筋肉の萎縮にかかわる進行性の対称的四肢及び体幹麻痺を招く脊髄の前角細胞の変性を特徴とする、、嚢胞性線維症後の常染色体劣性障害である(6000人の新生児のうち1人)。子供のSMAは一般に、発症年齢及び臨床経過に基づいて3つの臨床グループに分類される。急性のウェルドニグ・ホフマン(Werdnig−Hoffmann)病(I型)は、重症の全身化筋肉虚弱並びに誕生時及び生後3ヶ月内での緊張低下を特徴とするものであり、呼吸困難による死亡が2年以内に通常起こる。残りの2つは、中間型(II型)及び若年型(III型、クーゲルベルグ−ウェランダー(Kugelberg−Welander)障害)である。進行性球麻痺は、延髄の運動神経核の進行性萎縮に起因するもので、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄筋萎縮(SMA)と密接な関連を有する。中年以降の男性に多く発症し、時に家族性に出現する。経過の進行とともに、上位および下位運動ニューロンの変性を合併するため、最終的には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床症状を呈するようになる。原発性側索硬化症(PLS)はALSの変種であり、高齢の散在性障害として認められる。PLSにおける神経病理上は皮質脊髄(ピラミッド)管の変性があり、これは脳幹レベルではほぼ正常であるが、それらが脊髄を下ると萎縮性が高まる。下肢は初期において、且つ最もひどく侵される。先天性多発性関節拘縮症(AMC)は先天的な関節固定(新生児3000人のうちの1人)を特徴とし、子宮内での胎児運動低下に由来する症状である。AMCは羊水過少症か、又は中枢神経系、骨格筋もしくは脊髄にかかわる様々な障害の何れかを原因とする。神経変性及び神経細胞侵食は前角において生ずるため、神経原起源のAMCは急性脊髄筋萎縮、即ちI型SMAウェルドニグ−ホフマン障害に関連しうるものと仮定されている。本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的(例えば、静脈内、筋肉内、皮下又は皮内等への注射、あるいは吸入等)に投与することができる。本発明の医薬としては、有効成分である上記化合物又はその塩をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分と薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物とを含む医薬組成物の形態の製剤として投与すべきである。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、又はシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、又は坐剤などを挙げることができる。経口投与に適する製剤には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。注射あるいは点滴用に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を用いることができる。本発明の医薬の投与量は、治療の対象となる疾患の種類、疾患の進行状況又は症状の程度、患者の年齢や体重などの諸条件に応じて適宜選択可能であるが、一般的には、成人に対して一日当たり0.01μg/kg〜10mg/kg、好ましくは0.1〜100μg/kg程度を注射または点滴により投与することが好ましい。注射剤としては、例えば、特開昭63−132833号公報に記載されたものが好適である。なお、本発明の医薬の有効成分である上記化合物は安全性が高く(マウス腹腔内投与LD502012mg/kg;ラット経口投与LD503,500mg/kg:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances,1981−1982)、発癌性もないことが証明されている(National Cancer Institute Report,89,1978)。実施例以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されることはない。(A)材料と方法(1)動物Wobblerマウス(Ikeda K.ら、Ann.Neurol.34巻,304頁(1993年);Mitsumoto H.ら、Ann.Neurol.36巻,142−148頁(1994年);Mitsumoto H.ら、Science,265巻,1107−1110頁(1994年))を使用した。(2)薬物投与Wobblerマウスは3〜4週齢で身体が震える症状を呈し、これを発病と診断した。発病診断の直後に、罹患マウスに本発明の薬物(3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;図中ではMCI−186とも称する)(10mg/kg)または対照群としてビヒクルを、盲検法により連日4週間経口投与した。薬物の投与は生後7〜8週齢で完了し、各実験群はn=10で実施した。(3)症候学的評価前肢の筋拘縮の程度(forelimb deformity)は、1(肢の萎縮、paw atrophy)、2(足指の彎曲、curled digits)、3(足首の彎曲、curled wrists)、および4(前肢の胸側に屈曲、forelimb flexion to chest)の4段階に分類して評価した。1から4に進むにつれて症状が悪化することを示す。また、前肢の筋力(grip strength)を測定した(Ikeda,他、Neuromusc.Disord.,5(1995)383−390;K.Ikeda.他、J.Neurol.Sci.,160(1998)9−15;K.Ikeda,他、Neurosci.Lett.,250(1998)9−12;K.Ikeda.他、Muscle Nerve,18(1995)1344−1347;K.Ikeda.他、Neurol.Res.,17(1995)445−448;K.Ikeda.他、Ann.Neurol.,37(1995)505−511;K.Ikeda.他、Brain Res.,726(1996)91−97;H.Mitsumoto.他、Ann.Neurol.,36(1994)142−148;及びH.Mitsumoto.他、Science,265(1994)1107−1110)。これらの評価は、薬物投与の開始(投与前)から薬物投与の終了時まで毎週行なった。(4)右上腕二頭筋の形態学的検討薬物投与終了後に、Wobblerマウス(n=10/各群)をエーテルで麻酔し、右上腕二頭筋を解剖顕微鏡下で切除した。切除した二頭筋は正確に計量し、凍結した。10μmの連続切片を作成し、ATPase又はNADHで染色した。筋繊維の平均直径を既報の通り測定した(Ikeda,他、Neuromusc.Disord.,5(1995)383−390;K.Ikeda.他、J.Neurol.Sci.,160(1998)9−15;K.Ikeda,他、Neurosci.Lett.,250(1998)9−12;K.Ikeda.他、Muscle Nerve,18(1995)1344−1347;K.Ikeda.他、Neurol.Res.,17(1995)445−448;K.Ikeda.他、Ann.Neurol.,37(1995)505−511;K.Ikeda.他、Brain Res.,726(1996)91−97;及びH.Mitsumoto.他、Ann.Neurol.,36(1994)142−148)。(5)脊椎運動ニューロンの数右上腕二頭筋の形態学的検討に使用したWobblerマウス(n=10/各群)に、リン酸緩衝生理食塩水、続いて4%パラホルムアルデヒド/1%グルタルアルデヒド/0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を心臓内カテーテルにより灌流させた。椎弓切除を行い、頸部脊髄を解剖顕微鏡下で除去した。二頭筋を刺激する頸髄C5−6レベルを運動ニューロンの分析のために摘出後、パラフィン封埋し、横断面において8μmで連続的に切断・クレジルバイオレットで染色し、大型脊椎運動ニューロンの数を既報の通り測定した(Ikeda,他、Neuromusc.Disord.,5(1995)383−390;K.Ikeda.他、J.Neurol.Sci.,160(1998)9−15;K.Ikeda,他、Neurosci.Lett.,250(1998)9−12;K.Ikeda.他、Muscle Nerve,18(1995)1344−1347;K.Ikeda.他、Neurol.Res.,17(1995)445−448;K.Ikeda.他、Ann.Neurol.,37(1995)505−511;及びK.Ikeda.他、Brain Res.,726(1996)91−97)。(6)統計分析前肢の筋拘縮の程度のスケールはノンパラメトリックなWilcoxon符号付順位和検定により分析した。筋力、二頭筋重量、筋肉繊維の平均直径、及び運動ニューロン数の統計分析は対応のないStudent’s t−検定により行なった。いずれの検定においても有意水準は両側5%とした。(B)結果(1)症候学的評価前肢の筋拘縮の程度を1〜4の4段階に分類して評価した結果を図1に示す。ベースライン(生後3〜4週齢)での評価は各群の間で差異はなかった。前肢の筋拘縮は、対照群のマウスでは進行的に悪化したが、本発明の医薬を投与することにより筋拘縮の進行は遅延した(図1)。前肢筋力の測定結果を図2に示す。筋力は、対照群では徐々に低下したが、本発明の医薬を投与することにより筋力の低下は遅延した(図2)。(2)右上腕二頭筋の重量および筋肉の形態学的検討右上腕二頭筋の重量の測定結果を図3に示す。二頭筋の重量は、本発明の医薬による処置により、対照群と比較して有意に増加した(図3)。筋肉繊維の平均直径も、対照群(平均±SEMで16.8±0.6μm、P<0.01)と比較して、本発明の医薬による処置群(平均±SEMで20.3±0.8μm、P<0.01)の方が有意に増加していた。(3)脊椎運動ニューロンの数運動ニューロンの数の測定結果を図4に示す。本発明の医薬で処置した群における運動ニューロンの数は、対照群と比較して、増加していた(図4)。(4)まとめWobblerマウスは、常染色体劣性遺伝形式を呈する運動ニューロン疾患のモデル動物である。本動物は生後3〜4週間に全身の震えで発症し、生後7〜8週間までに前肢を主体とした筋力低下や筋拘縮が急速に進行する。その後、これらの神経筋症状は緩徐に進行し寿命は約1〜1.5年間である。同マウスの神経筋病理学的な特徴は、頸髄を中心とした運動神経細胞の空胞変性、運動神経の軸索変性と骨格筋の神経原性変化である(H.Mitsumoto.他、Brain,105(1982)811−834)。従って、3〜4週齢から7〜8週齢の本マウスにおいて治療薬の神経保護作用を評価することは、運動ニューロン疾患に対する該治療剤の効果を評価する上で有用である。本実施例では、Wobblerマウスを3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンで処置することにより、前肢筋拘縮及び筋肉の弱体化が緩和し、上腕二頭筋の重量が増加することが実証された。従って、本発明の医薬は運動ニューロン疾患治療薬として有用である。産業上の利用の可能性本発明による3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬は、運動ニューロン疾患の治療薬として有用である。また、本発明の医薬は、低分子化合物を有効成分として使用するため、脳への移行性が比較的良好であるという利点を有する。【図面の簡単な説明】図1は、前肢の筋拘縮の程度を1〜4の4段階に分類して評価した結果を示す。上段のグラフは本発明の医薬の投与群の結果を示し、下段の3個のグラフは対照群の結果を示す。図2は、前肢筋力の測定結果を示す。図3は、右上腕二頭筋の重量の測定結果を示す。図4は、脊椎運動ニューロンの数の測定結果を示す。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患治療薬。 運動ニューロン疾患の進行を遅延させるための、請求項1に記載の治療薬。 運動ニューロン疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)である、請求項1又は2に記載の治療薬。 運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である請求項1から3の何れかに記載の治療薬。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン増強剤。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の有効量を患者に投与する工程を含む、運動ニューロン疾患の治療方法。 運動ニューロン疾患の進行を遅延させる、請求項6に記載の治療方法。 運動ニューロン疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)である、請求項6又は7に記載の治療方法。 運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である請求項6から8の何れかに記載の治療方法。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の有効量を患者に投与する工程を含む、運動ニューロンを増強する方法。 運動ニューロン疾患の治療薬の製造のための3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の使用。 運動ニューロン疾患の治療薬が運動ニューロン疾患の進行を遅延させる治療薬である、請求項11に記載の使用。 運動ニューロン疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)である、請求項11又は12に記載の使用。 運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項11から13の何れかに記載の使用。 運動ニューロン増強剤の製造のための3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の使用。 本発明の目的は、運動ニューロン疾患を治療することができる新規な医薬を提供することである。本発明によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患の治療薬が提供される。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る

特許公報(B2)_3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法
出願番号:2000007994
年次:2010
IPC分類:C07D 307/20,C07C 29/147,C07C 31/42


特許情報キャッシュ

木下 浩一 諸島 忠 柳田 義文 長嶋 伸夫 坂 泰宏 本田 達也 布施 佳秀 上田 恭義 JP 4503754 特許公報(B2) 20100430 2000007994 20000117 3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法 株式会社カネカ 000000941 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 安富 康男 100086586 古谷 信也 100104813 木下 浩一 諸島 忠 柳田 義文 長嶋 伸夫 坂 泰宏 本田 達也 布施 佳秀 上田 恭義 JP 1999107398 19990415 20100714 C07D 307/20 20060101AFI20100624BHJP C07C 29/147 20060101ALI20100624BHJP C07C 31/42 20060101ALI20100624BHJP JPC07D307/20C07C29/147C07C31/42 C07D 307/00-307/94 C07C 29/147 C07C 31/42 CA/REGISTRY(STN) CASREACT(STN) 特開平09−077759(JP,A) 特開平06−312987(JP,A) 43 2000355587 20001226 19 20060510 荒木 英則 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン、とりわけ光学活性な高品質の3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフランを高収率で、簡便かつ工業的に有利な方法で製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】3−ヒドロキシテトラヒドロフランは、医薬品や農薬等の合成中間体として極めて有用な化合物である。その製法としては、入手容易な4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを還元し、得られた4−ハロ−1,3−ブタンジオールを環化させて合成する方法が知られている。具体的には、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを、テトラヒドロフラン(以下、THFともいう)等の水と相溶性のある有機溶剤中で水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元し、得られた4−ハロ−1,3−ブタンジオールを塩酸水溶液中で環化させて、3−ヒドロキシテトラヒドロフランを製造する方法[特開平9−77759号公報、リービッヒ・アナーレン/レクイル(Liebigs Ann./Recl.)1877頁(1997年)等]が知られている。【0003】これらのうち代表的な製造方法としては、例えば、第一工程:4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルを、THF中で水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元し、第二工程:反応混合物を濃縮して得られた残留物に塩酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した後、固体乾燥剤による抽出液の脱水処理、乾燥剤の濾過分離、及び、抽出溶剤の濃縮除去を経て、4−クロロ−1,3−ブタンジオールを油状物として取得し、第三工程:これを塩酸水溶液に溶解し、加熱して環化反応を行い、第四工程:反応混合物を中和し、水を濃縮除去して得られる残留物にメタノールを加え、析出している無機塩を濾別除去し、第五工程:濾液を濃縮・蒸留して、3−ヒドロキシテトラヒドロフランを取得することからなる方法が記載されている。【0004】しかしながら、このような方法では、複数回の濃縮操作や固液分離操作といった煩雑な工程を要する。もし濃縮操作を省略して反応混合物に直接水を加えると、溶剤が水と相溶性があることから、溶剤と水が混和し合った混合溶剤になる。このような溶剤中で次の環化反応を行うと、反応速度の低下や不純物の増加等が生起し好ましくないことが、本発明者らによる検討の結果わかった。このことから、水と相溶性のある有機溶剤を用いて還元反応を行った場合には、反応混合物に水を加える以前に、この有機溶剤を除去する工程が不可欠である。従って、従来法は生産性が低く、工業的規模での実施において有利な製造方法とはいえなかった。【0005】また、従来法では、目的物の収率が、還元工程で86%、環化工程で68〜79%、両工程を併せると58〜68%と必ずしも満足できる数字ではない。更に、還元反応時に3,4−エポキシ−1−ブタノールが副生したり(16〜21%程度副生、特開平2−174733号公報)、環化反応時に2,5−ジヒドロフランが副生する[約15%副生、リービッヒ・アナーレン/レクイル(Liebigs Ann./Recl.)1877頁(1997年)]ことが知られており、従来法は目的物の品質に関しても問題を有していた。【0006】以上のように、従来、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを還元し、生成した4−ハロ−1,3−ブタンジオールを環化させて、高品質の3−ヒドロキシテトラヒドロフランを高収率で取得する、簡便で効率的な製造方法、とりわけ工業的規模での実施に有利な製造方法は知られていなかった。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑み、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)を還元し、得られた4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)を環化させて、高品質の3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を高収率で製造する簡便で工業的に有利な方法を提供することを目的とするものである。【0008】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、一般式(1):【0009】【化8】【0010】(式中、Rはエステル型保護基を表す。Xはハロゲン原子を表す)で表される4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを還元し、得られる一般式(2):【0011】【化9】【0012】(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表される4−ハロ−1,3−ブタンジオールを環化することによる、式(3):【0013】【化10】【0014】で表される3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法であって、第一工程:4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)を、水と相溶性のない有機溶剤中で水素化ホウ素化合物及び/又は水素化アルミニウム化合物を還元剤として用いて還元し、第二工程:得られた反応混合物を酸及び水を用いて処理して、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)に変換するとともに、該化合物を含有する水溶液を取得し、第三工程:上記水溶液において、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)の環化反応を行い、第四工程:得られた3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を含有する水溶液から、水と相溶性のない有機溶剤を用いて3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を抽出し、第五工程:得られた溶液を濃縮及び/又は蒸留して、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を単離することからなる、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法である。【0015】本発明は、また、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)を、水と相溶性のない有機溶剤中で水素化ホウ素化合物及び/又は水素化アルミニウム化合物を還元剤として用いて還元し、得られた混合物を酸及び水を用いて処理して4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)に変換するとともに、該化合物を含有する水溶液を取得することからなる、4−ハロ−1,3−ブタンジオールの製造方法でもある。【0016】本発明は、更に、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)を水溶液中で環化させることによる、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の製造方法であって、環化反応を弱酸性〜中性条件で実施する製造方法でもある。【0017】本発明は、また、3−ヒドロキシテトラヒドロフランを含有する水溶液から、水と相溶性のない有機溶剤を用いて40℃以上の温度で3−ヒドロキシテトラヒドロフランを抽出する、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの取得方法でもある。【0018】本発明は、更に、3−ヒドロキシテトラヒドロフランを含有する水溶液から、炭素数4〜8の一価アルコール類を用いて3−ヒドロキシテトラヒドロフランを抽出する、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの取得方法でもある。【0019】また、本発明は、ホウ素化合物及び/又はアルミニウム化合物が混入している3−ヒドロキシテトラヒドロフランを蒸留することによる、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの取得方法であって、蒸留にあたって、上記ホウ素化合物及び/又はアルミニウム化合物が混入している3−ヒドロキシテトラヒドロフランを、炭素数1〜3の一価アルコール類又は炭素数6以上の多価アルコール類を用いて処理する取得方法でもある。【0020】最後に、本発明は、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの蒸留(精留を含む)を塩基共存下に実施する、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの取得方法でもある。以下に本発明を詳述する。【0021】【発明の実施の形態】以下では、5つの工程からなる3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法について説明する。本発明の他の製造方法は以下の記載と同様の手法で実施することができる。【0022】この製造方法の第一工程では、上記一般式(1)で表される4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル[本明細書中、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)ともいう]を、水と相溶性のない有機溶剤中で水素化ホウ素化合物及び/又は水素化アルミニウム化合物を還元剤として用いて還元して、上記一般式(2)で表される4−ハロ−1,3−ブタンジオール[本明細書中、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)ともいう]を形成させる。【0023】上記一般式(1)におけるRは、エステル型保護基を表す。ここでエステル型保護基とは、エステルとしてカルボン酸を保護しうる基のことをいう。エステル型保護基としては特に限定されず、一般的なエステル型保護基を使用することができるが、好ましくはアルキル基である。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはエチル基である。【0024】上記一般式(1)及び(2)におけるXは、一般式(2)の1位の水酸基と4位の炭素原子との間でエーテル結合が形成する際に脱離する脱離基であり、ハロゲン原子を表す。好ましくは、塩素、臭素又はヨウ素を表し、より好ましくは塩素である。【0025】反応基質である4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)は、入手容易な4−ハロアセト酢酸エステルを還元して得るのが一般的である。特に医薬・農薬分野の合成原料として有用な光学活性体を得るには、不斉還元剤又は微生物や酵素を用いて還元する方法が知られており、例えば、特開平1−211551号公報、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)105巻、5925頁(1983年)や、特公平4−7195号公報等に記載された方法を用いて調製することができる。本発明の製造方法では、この化合物が光学活性なものであっても、光学活性を保持したままで4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)及び3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を得ることができる。例えば、4−ハロ−3−(S)−ヒドロキシ酪酸エステルを用いて本製造方法を実施すると、3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフランを高純度かつ高収率で取得することができる。【0026】用いられる還元剤は、水素化ホウ素化合物及び/又は水素化アルミニウム化合物である。具体的には、例えば、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素アルカリ土類金属塩、水素化アルミニウムアルカリ金属塩、水素化ジアルキルアルミニウム、ジボラン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。還元剤が塩を形成しているアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムであり、アルカリ土類金属としては、カルシウム又はマグネシウムである。なかでも、取り扱いの容易さ等の面から、水素化ホウ素アルカリ金属塩が好ましく、水素化ホウ素ナトリウムがより好ましい。これら還元剤とともに、一般的に知られている活性化剤を併用して、還元剤の還元力を向上させることもできる。【0027】還元剤の使用量としては特に限定されないが、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)に対して水素供与量が化学量論量以上となるような量が好ましい。例えば、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)1モルに対して、水素化ホウ素ナトリウムは0.5モル以上で実施することもできるが、好ましくは0.75モル以上である。経済性の面から、10.0モル以下の使用が好ましく、より好ましくは5.0モル以下であり、更に好ましくは2.0モル以下である。【0028】反応溶液での4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)の濃度は反応溶剤の種類によって異なることから一概には規定できないが、例えば、一般的に1〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。【0029】反応温度は、用いる還元剤や反応溶剤の種類により異なることから一概には規定できないが、通常、用いる反応溶剤の凝固点〜沸点の範囲の温度である。好ましくは20〜80℃であるが、反応を効率的に進行させ、特に、工業規模での生産に適した反応時間とするには、40℃以上であることがより好ましい。一方、副反応や分解を抑制する上では、反応温度を高めすぎないことが重要であり、例えば、80℃以下、好ましくは60℃以下での実施が好ましい。反応時間は通常、最大24時間程度までである。【0030】本発明における還元反応は、発熱反応であり、特に反応初期には急激な発熱をともなうことから、反応を適正にコントロールして、円滑に進行させることが重要である。このような観点から、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)及び/若しくは前記還元剤を逐次添加して、又は分割添加して反応を行うことが好ましい。具体的には、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)及び還元剤のどちらか一方を添加しながら反応させてもよく、又は、両化合物を同時に添加しながら、還元反応を行うこともできる。一般的に、工業的規模で簡便かつ安全に還元反応を実施するには、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)の溶液に還元剤を逐次添加することが好ましい。この添加に要する時間としては、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは5時間以上である。【0031】この還元反応で溶剤として用いられる水と相溶性のない有機溶剤とは、一般に、1気圧下20℃で、同容量の純水と緩やかにかき混ぜた場合に、流動がおさまった後も当該混合物が不均一な外観を呈するような物性を持つ有機溶剤のことをいう。水に対する溶解度は特に限定されないが、例えば、一般的には30重量%以下、特に10重量%以下である有機溶剤が好ましく、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である有機溶剤である。【0032】上記の水と相溶性のない有機溶剤は、沸点が40℃以上であることが好ましく、更に好ましくは50℃以上である。沸点が40℃未満の溶剤を使用した場合には、還元反応温度を高めることができないことから反応時間の遅延を招いたり、また、還元反応は急激な発熱をともなうことから突沸等を招きやすくなって反応を適正にコントロールすることを困難にする等の問題があることが分かった。これは、工業規模での生産では特に重要な生産性や安全性を確保する面から不利である。【0033】このような観点から好ましい水と相溶性のない有機溶剤としては、具体的に例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert−ブチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類を挙げることができる。なかでも、炭化水素類(特に、芳香族炭化水素類)及び酢酸エステル類が好ましく、トルエン、及び、酢酸の炭素数1〜4のアルキルエステルがより好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。水と相溶性のない有機溶剤は、水と相溶性のない非プロトン性有機溶剤であることもまた好ましい。【0034】上記溶剤を使用して還元反応を行うと、従来知られている3,4−エポキシ−1−ブタノール(特開平2−174733号公報)等の不純物の副生を抑制して、高収率で4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)を製造することができる。【0035】本発明の製造方法の第二工程では、第一工程で得られた反応混合物を酸及び水を用いて処理し、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)を生成させ、該化合物を水相に移行させて、これを含有する水溶液を取得する。ここで用いる酸としては特に限定されないが、実用性の点から、鉱酸が好ましく、なかでも、塩酸及び硫酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、酸及び水としては、濃塩酸や濃硫酸等を水で希釈することによって得られた水溶液でもよい。【0036】酸の使用量は、第一工程で用いた還元剤に由来する塩基性成分を中和して、中性の無機塩とすることが可能な量であり、通常、還元剤と同モル当量以上である。還元剤と同モル当量以上の酸を用いることで、反応混合物を中性〜酸性条件に調整することが好ましい。水の使用量は、得られた4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)が充分に水相に移行しうる量が好ましい。【0037】第一工程で得られた反応混合物の酸及び水による処理は、一般に、酸及び水を同時に反応混合物に混合することで行われるが、まず酸と混合してから次に水を混合することで行うこともできる。これら混合方法は特に限定されず、反応混合物に酸を添加することもできるが、酸に反応混合物を添加することも好ましい。これら操作は低温での実施が好ましく、室温〜溶剤の氷結するまでの温度で実施することが望ましい。【0038】本発明の製造方法では第一工程で水と相溶性のない有機溶剤を用いるので、酸及び水と混合すると二相に分離し、この水溶液はこのまま第三工程に使用することもできる。また、ここから有機相を分液除去することで、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)を含有する水溶液を簡便に取得することもできる。更には、分離した有機相を水で抽出して、収率を更に高めることもできる。【0039】収率を高めるためには、有機相の分液除去は低温で実施することが好ましい。これにより4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)の有機相中への移行を抑制して、収率の低下を防ぐことができる。具体的な操作温度としては、30℃〜溶剤が氷結するまでの温度で実施することが好ましく、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下である。【0040】このように有機相を分離して除去することは、第一工程で得られた反応混合物に僅かに存在する不純物や副生物の低減等の観点からも好ましい。しかしながら、有機相を濃縮することで有機溶剤を除去し水溶液を取得してもよい。この工程で得られる水溶液には、第三工程の環化反応に悪影響のない範囲で有機相が共存してもよく、この際、有機相と水相が二相を形成してもよい。【0041】次に、第三工程では、第二工程で得られた水溶液において、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)の環化反応を行う。第二工程で得られた水溶液には、第一工程で用いた還元剤が分解して生成したホウ素化合物、アルミニウム化合物やその他の無機塩類等が共存するが、この環化反応では3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を高収率で得ることができる。【0042】第二工程で水と相溶性のない有機溶剤を除去しないで、そのまま上記有機溶剤が共存する二相系で環化反応を行った場合でも、環化反応は円滑に進行し、高い収率で3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を得ることができる。これはまた、不純物を有機相へ移行させて、環化反応が実質的に優位に進行する水相中の不純物濃度を低減し、副反応を抑制して不純物副生量を低減する効果もある。更に、環化生成物3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)は、環化する前の化合物4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)に比べて、水と相溶性のない有機溶剤相への分配率が一般的に低いことから、有機相の分離除去を環化反応後に実施しても有機相への目的物のロスが少なく、より高い収率を得ることができる点からも有利である。【0043】環化反応時の操作温度としては特に限定されない。室温付近でも環化反応は進行するが、反応速度を高め反応を短時間で完了させるには、室温以上に加熱して反応を行うことが望ましい。すなわち、40℃以上で環化反応を行うことが好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上である。一般的には、用いる反応系の沸点付近まで温度を高めて反応することが有利である。【0044】この環化反応は酸性〜中性条件下で実施されることが好ましい。塩基性条件下でも環化反応は進行するが、一般的に、不純物が副生しやすいため好ましくない。従って、一般的には、中性〜酸性条件下から反応を開始することが好ましい。しかし、環化反応の進行とともに生成する酸成分(例えば、ハロゲン化水素)によって反応液は徐々に酸性化される。酸性が強すぎると不純物を副生し易いことから、酸成分の悪影響を少なくするため、例えば、環化反応を中性条件から開始することがより好ましい。このようにすると、従来より知られる強い酸性条件下から環化反応を開始する方法で実施した場合に副生し易い不純物である2,5−ジヒドロフランの副生[リービッヒ・アナーレン/レクイル(Liebigs Ann./Recl.)1877頁(1997年)]を抑制して、より高収率で3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を得ることができる。【0045】また、更に好ましくは、環化反応時の酸による悪影響を最小化する観点から、反応の進行とともに生成する酸成分(例えば、ハロゲン化水素)を塩基で中和しながら、適切な酸性度を保ちつつ、弱酸性〜中性条件下で環化反応を実施することにより、最も高い収率、品質で3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を製造することができる。この場合の適切な酸性度は、環化反応の操作温度や濃度、共存する無機塩等の種類や量により異なることから、一概には規定できないが、好ましくはpH2〜7であり、更に好ましくはpH2〜6となる範囲に酸成分を中和しながら実施することが好ましい。【0046】上記酸成分を中和するために用いる塩基としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩等の無機塩基;並びに、2級アミン、3級アミン及び4級アンモニウムヒドロキシド等の有機塩基を挙げることができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化マグネシム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアルミルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等の3級アミン;テトラメチル、テトラエチル、テトラプロピル、テトラブチル、テトラアミル、テトラヘキシル、ベンジルトリメチルのそれぞれの4級アンモニウムヒドロキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら塩基のうち、安価であること、取扱易さ、廃水処理の容易さ等の観点から、無機塩基、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、とりわけ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。【0047】上記無機塩基は、操作性等の観点から水溶液として使用するのが好ましい。例えば、2〜20N、好ましくは5〜20Nのアルカリ金属水酸化物の水溶液として使用するのが有利である。なお、上記塩基は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。これら塩基は、反応液を適切なpHに維持する速度で逐次添加しながら反応を行うことができるが、また、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム又はリン酸水素二ナトリウム等を添加して、それらの持つpH緩衝性を利用することもできる。【0048】環化反応を行う際の4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)水溶液中の濃度としては特に限定されないが、濃度が高すぎると反応速度が低下するため好ましくない。一般的には、1〜50重量%であるが、好ましくは1〜35重量%であり、より好ましくは1〜20重量%である。また、上述のように、環化反応を適切な酸性度に保ちつつ行うことにより、反応速度を低下させることなく、反応濃度をより高めることができ、例えば、1〜30重量%、好ましくは5〜30重量%の濃度で好適に環化反応を行うことができる。【0049】3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を医薬品製造等、僅かな不純物も低減して高品質化を図ることが望まれる分野で使用する場合には、第三工程から得られた水溶液を水と相溶性のない有機溶剤で洗浄することも好ましい。これは、水相に僅かに含まれる不純物を低減して、得られる3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の品質を高める効果がある。【0050】また、環化反応を水と相溶性のない有機溶剤が共存する二相系で実施した場合には、環化反応後に有機相を分液除去して3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の水溶液を分離するだけで、水相から不純物を低減して品質を高めることができる。【0051】これら操作(洗浄及び有機相の分液除去)は、低温で実施することが好ましい。これにより3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の有機相への分配率を低下させ、有機相へのロスを低減して収率を高めることができる。具体的には、30℃以下に操作温度を低めて実施することが好ましく、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下の、溶剤が氷結するまでの温度で実施することが好ましい。【0052】第四工程においては、第三工程で得られた3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を含有する水溶液から、水と相溶性のない有機溶剤を用いて3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を抽出する。この抽出操作により、水溶液中に共存する無機塩類、還元剤に由来するホウ素化合物やアルミニウム化合物を目的物から分離して、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の有機溶液を得ることが出来る。【0053】ここで用いられる水と相溶性のない有機溶剤としては特に限定されず、例えば、上述した還元反応で用いられる水と相溶性のない有機溶剤から選択して用いることができるが、これらに加えて、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール等のブタノール類等の炭素数が4〜8の一価アルコール類を用いることができる。好ましくは、芳香族炭化水素類、酢酸エステル類、又は、炭素数4〜8の一価アルコール類であり、より好ましくは酢酸エステル類であり、なかでも、酢酸の炭素数1〜4のアルキルエステルが更に好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。【0054】第三工程で得られた水溶液は一般的には酸性化されているが、その酸性条件のままで抽出してもよいし、塩基を用いて中和した後に抽出してもよい。抽出操作は、一般的には中性条件下での実施が好ましい。中和の際に用いられる塩基としては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化アルカリ土類金属塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。その他、アンモニア水、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類等の有機塩基類を用いてもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。【0055】また、第三工程で得られた水溶液は、塩基を用いて一旦塩基性化した後に酸で中和して抽出することも好ましい。これは、含まれる不純物を水相に移行しやすい不純物に変換処理して、中和後の抽出で不純物を水相中に残りやすくすることにより、抽出された目的物の純度を高めることができる。この塩基性化は、例えば、上記塩基を用いて実施することができる。処理効果を高める上ではpH10以上とすることが好ましく、より好ましくはpH12以上であるが、これに限定されるものではない。これら操作は溶剤の氷結する温度以上で実施することができるが、また室温〜溶剤の沸点の範囲で温度を高めて、処理時間を短縮化することもできる。処理時間はpHや温度にもよるが、一般的には0.1時間〜24時間程度である。塩基処理後、水相は中和して、抽出することが好ましい。【0056】第四工程の抽出の操作温度は、用いる有機溶剤の種類によって異なることから一概には規定できないが、用いる溶剤の凝固点から沸点以下において実施することができる。一般的には20〜100℃であるが、特に高温での抽出が好ましい。すなわち、40℃以上での抽出操作が好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上である。特に、例えば、溶剤として炭化水素類や酢酸エステル類等を用いる場合、抽出効率を高めるために高温での抽出が望ましい。【0057】上述した炭素数が4〜8の一価アルコール類を溶剤として用いると、室温付近でも高い抽出効果を得ることができる。しかしながら、液温を上げて抽出効果をより高めて実施することもできる。具体的には、40℃以上の温度で炭素数が4〜8の一価アルコール類を用いて抽出することもできる。【0058】第五工程においては、第四工程で得られた抽出された溶液を濃縮及び/又は蒸留して、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を単離する。すなわち、抽出液を濃縮して有機溶剤を除去するか、又は、抽出液を蒸留(精留を含む)することで、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を単離する。また、抽出液を濃縮して溶剤を除去した後に、更に蒸留(精留を含む)を行って3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を単離してもよい。この場合、濃縮後の残留物をそのまま減圧下に加熱して蒸留を行うことができる。【0059】蒸留(精留を含む)を行って3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を精製単離する場合には、第四工程で得られた抽出液に僅かに混入している還元剤由来物質等のホウ素化合物やアルミニウム化合物のために蒸留収率が低下することがある。従って、最終的な蒸留収率を極限まで高めるために、第五工程で蒸留を行うにあたっては、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の溶液及び/又は濃縮物を、アルコール類を用いて処理することにより、これらを除去しておくことが好ましい。例えば、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の一価アルコール類を添加すると、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)より低沸点の化合物を形成させて先に留去することができる。一方、ポリエチレングリコールやソルビトール等の炭素数6以上の多価アルコール類を添加すると、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)より高沸点の化合物を形成させて残留させることができる。本工程は、上述のホウ素化合物やアルミニウム化合物が混入している3−ヒドロキシテトラヒドロフランを蒸留して精製単離する場合に好適に用いることができる。【0060】これらアルコール類の使用量としては、用いるアルコールの種類や混入した還元剤由来物質の種類や量により異なることから一概には規定できないが、特に制限はなく、一般的には、還元剤由来物質の混入量と同モル当量以上を使用する。また、還元剤由来物質の混入量に対して過剰に用いてもよく、特に炭素数1〜3の一価アルコール類を用いる場合には、共存する水分の影響などを考慮して、処理効果を高める上で過剰に用いることが好ましい。具体的には、例えば、炭素数1〜3の一価アルコール類では、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)に対して50重量%以上、より好ましくは同重量以上である。また炭素数6以上の多価アルコール類では、20重量%以上、より好ましくは30重量%以上を用いて処理する。以上のことにより、共存するホウ素化合物及び/又はアルミニウム化合物を効果的に低減除去できるが、処理後のホウ素化合物及び/又はアルミニウム化合物の残存量としては、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの10モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。これにより、蒸留収率を極限まで高めて好適に蒸留を実施することができる。【0061】3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を工業的規模で蒸留(精留を含む)して精製を行う場合には、長時間の加熱操作を要することから、例えば、不純物として僅かに含まれる4−ハロ−3−ヒドロキシ酢酸エステル(1)や4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)及びそれらの類縁不純物などが徐々に熱分解を受け、生じた分解物が蒸留中に亘って目的物を含む留分に混入し、品質を低下させるといった問題を生じやすい。またこれら熱分解には酸成分の放出を伴い、酸性化が進行して熱分解が促進される傾向を示すことが分かった。この様な観点からは、例えば、薄膜蒸留装置など、熱履歴を低減することにより熱分解を抑制して蒸留を行える装置を用いることも好ましい。【0062】しかし、汎用される一般的な蒸留装置を用いて蒸留を行う場合には、例えば、蒸留を行うにあたって、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の溶液及び/又は濃縮物に酸を添加して処理を行い、好ましくは酸添加後に加熱処理して蒸留前に予め熱分解を促進しておくことも好ましい。これは蒸留操作中の新たな不純物の副生を抑制して、蒸留精製効果を安定的に高めることに寄与する。この酸処理には溶剤を用いることも好ましく、例えば、炭素数1〜3の一価アルコール類の溶液として酸処理した後に蒸留を行うことも好ましい。【0063】添加する酸の種類としては特に限定されず、無機酸類や有機酸類を用いることができるが、実用性の点からは無機酸類が好ましく、特に塩酸及び硫酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸の使用量としては特に限定されないが、好ましくは3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の0.1重量%以上であり、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上である。酸を加えて加熱処理する場合の操作温度は特に限定されないが、例えば室温〜用いる系の沸点以下である。酸処理の時間は、通常、0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上である。【0064】3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の蒸留(精留を含む)精製は、塩基共存下に実施することも好ましい。これは、上記の様な共存する不純物の熱分解により放出された酸成分を中和して、酸成分の影響を抑制しながら蒸留精製効果を高める効果がある。更には、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の熱安定性を優位に高めることにも寄与する。このようにして蒸留(精留を含む)精製を行うことにより、目的物の品質、収率を高めることができる。【0065】この際に用いられる塩基としては特に限定されないが、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)より高い沸点を持つ塩基が好ましく、中でも無機塩基がより好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化アルカリ土類金属塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、特にアルカリ金属炭酸水素塩、中でも炭酸水素ナトリウムが好ましい。これらは単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。これら塩基の使用量は特に限定されず、一般的には被蒸留物の0.1〜30重量%であるが、経済性や操作性の観点からは10重量%以下の使用が好ましく、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2重量%以下である。【0066】ここで、反応基質として4−クロロ−3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチルを用いた場合の本発明の好ましい実施形態を記述する。4−クロロ−3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチルを水素化ホウ素ナトリウムを用いてトルエン中で還元し、塩酸水溶液と混合して、4−クロロ−1,3−(S)−ブタンジオールの水溶液を取得する。この水溶液をそのまま加熱することにより環化反応を行うが、好ましくは、反応で発生する酸成分を適度に中和しつつ環化反応を行い、これを酢酸エチルを用いて加温下に抽出し、濃縮及び/又は蒸留して、3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフランを取得する。【0067】【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、分析は、液体クロマトグラフィー(カラム:ALLTIMA C8 5μm,φ4.6mm×250mm、カラム温度:30℃、移動相:アセトニトリル/蒸留水[3/97]、検出:RI)、及び、ガスクロマトグラフィー(カラム:PEG20M 10% ChromosorbWAW,φ3.2mm×3.1m、カラム温度:130℃、検出:FID)により行った。【0068】実施例1水素化ホウ素ナトリウム104.1gをトルエン2300mL中に懸濁し、40℃で攪拌しながら4−クロロ−3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチル(光学純度99.4%ee)458.5gを1時間かけて添加し、さらに攪拌を続け約20時間反応させた。反応混合物を10℃以下に冷却し、濃塩酸286.7gと水940mlを加えて攪拌した。30%水酸化ナトリウム水溶液88.6gを用いてpH7.0±0.2に調整し、静置後、トルエン相を分液除去して、4−クロロ−1,3−(S)−ブタンジオール321.8g(収率94%)を含む水相を得た。【0069】この水相を74℃まで加熱すると、約2時間でpHは2以下となり、この後さらに74〜90℃で20時間反応させた。10℃以下に冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液327gを用いてpH7.0±0.2に調整した混合物を70℃に加熱し、酢酸エチル2Lを用いて、70℃で連続的に抽出及び減圧濃縮操作を行った。得られた残留物にメタノール460gを加え、濃縮後に残留物を減圧蒸留して無色の3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフラン198.8g(収率87%、総合収率82%)を得た。純度99%以上、光学純度99%以上。【0070】実施例2水素化ホウ素ナトリウム22.0gを酢酸エチル528ml中に懸濁し、50〜60℃で攪拌しながら4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル96.8gを1時間かけて添加し、さらに攪拌を続け約2時間反応させた。反応混合物を10℃以下に冷却し、濃塩酸60.5gと水100mlを加えてよく攪拌した。30%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを用いてpH7.0±0.2に調整し、静置後、酢酸エチル相を分液した。酢酸エチル相を水50mlで抽出し、水相と混合して、4−クロロ−1,3−ブタンジオール66.6g(収率92%)を含む水相を得た。【0071】実施例3実施例1に従って取得した4−クロロ−1,3−(S)−ブタンジオール38.5gを含有する水相192.5g(濃度20.0重量%)を70℃まで加熱すると、約1時間でpHは4となり、この後、30%水酸化ナトリウム水溶液を逐次滴下しつつ反応混合物のpHを4に維持して、70〜90℃で20時間反応させた。得られた反応混合物を10℃以下に冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0±0.2に調整して222.5gの水溶液を得た。この水溶液は、3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフランを11.5重量%(25.7g、収率95%)含有した。【0072】実施例4実施例3と同様にして、反応混合物のpHを表1に示すpHに調整維持しながら反応し、生成した3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の収率と、残存する4−クロロ−1,3−ブタンジオール(2)の残存率を求め、環化反応に於けるpHの影響を調べた。結果を表1に示す。【0073】【表1】【0074】実施例54−クロロ−3−(S)−ヒドロキシ酪酸エチル(光学純度99.4%ee)144.7gをトルエン720mL中に溶解し、45℃で攪拌しながら水素化ホウ素ナトリウム32.9gを約10時間かけて添加し、さらに攪拌を続け約5時間反応させた。反応混合物を20℃以下に冷却し、5℃以下に冷却した濃塩酸90.5gと水215mlの混合液に加え攪拌した。30%水酸化ナトリウム水溶液38gを用いてpH7.0±0.2に調整して、4−クロロ−1,3−(S)−ブタンジオール104.0g(収率96%)を含む水とトルエンの混合液を得た。【0075】この混合液を85℃まで加熱すると約1時間でpHは4となり、この後30%水酸化ナトリウム水溶液を逐次滴下しつつ反応混合物のpHを4±0.5に維持して、同温度で20時間反応させると、4−クロロ−1,3−(S)−ブタンジオールの残存率は0.8%となった。10℃以下に冷却した混合液を30%水酸化ナトリウム水溶液100gを用いてpH7.0±0.2に調整し、静置後、トルエン相を分液除去した。得られた水相を約68℃に加熱し、酢酸エチル1Lを用いて、68℃で連続的に抽出、減圧濃縮操作を行った。残留物にメタノール80gを加えて減圧濃縮した残留物に、メタノール80gと濃塩酸0.8gを加えて約2時間加熱還流した。溶剤を減圧濃縮し、得られた残留物に炭酸水素ナトリウム1.2gを加え、減圧下に精留して、無色の3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフラン60.9g(収率83%、総合収率80%)を得た。純度99%以上、光学純度99%以上。【0076】実施例6実施例1に従い、環化反応終了後の3−ヒドロキシテトラヒドロフラン水溶液を取得した。この水溶液10gに表2に示す各溶剤10mlを加え、各温度で10分間攪拌し、10分間静置後、分液して、抽出率を求め、抽出温度と抽出率の関連を調べた。結果を表2に示す。【0077】【表2】【0078】実施例7実施例1に従い、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの酢酸エチル抽出液を濃縮して、残留物を取得した。この残留物10gに、表3に示す所定量のアルコール類を加えて蒸留し、加えたメタノール分が蒸発した後に残存するホウ酸量を求めるとともに、さらに蒸留して、蒸留回収率を求め、各アルコールの効果を調べた。結果を表3に示す。なお、表中、PEG 300は、平均分子量300のポリエチレングリコールを表す。また共存するホウ酸量は、ソルビトール共存下に一塩基酸として中和滴定する方法にて測定した。(新実験化学講座9 分析化学I丸善株式会社発行)(方法)精秤したサンプルを蒸留水25mlに溶解してpHを7に調整し、これに数滴のフェノールフタレイン指示薬とソルビトール約5gを加えた溶液を、0.1N水酸化ナトリウム水溶液で溶液が微赤色を呈するまで滴定を行い、予め所定量のホウ酸を用いて作成した検量線からホウ酸量を定量した。【0079】【表3】【0080】実施例8実施例5に従い取得した3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフランのメタノール濃縮物10gを120℃に加熱し、炭酸水素ナトリウム0.2gを添加した場合としない場合の3−(S)−ヒドロキシテトラヒドロフランの残存率を経時的に求めて、塩基の添加効果を調べた。結果を表4に示す。【0081】【表4】【0082】【発明の効果】本発明は、上述の構成よりなるので、入手容易な4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを原料として、複数回の濃縮や固液分離といった煩雑な操作を省略し、高純度の3−ヒドロキシテトラヒドロフランを高収率で、簡便かつ工業的に有利な方法で製造することができる。また、光学純度の高い3−ヒドロキシテトラヒドロフランを得ることも可能である。 一般式(1):(式中、Rはエステル型保護基を表す。Xはハロゲン原子を表す)で表される4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを還元し、得られる一般式(2):(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表される4−ハロ−1,3−ブタンジオールを環化することによる、式(3):で表される3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法であって、第一工程:4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)を、水と相溶性のない有機溶剤中で水素化ホウ素化合物及び/又は水素化アルミニウム化合物を還元剤として用いて還元し、第二工程:得られた反応混合物を酸及び水を用いて処理して、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)に変換するとともに、該化合物を含有する水溶液を取得し、第三工程:前記水溶液において、4−ハロ−1,3−ブタンジオール(2)の環化反応を行い、第四工程:得られた3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を含有する水溶液から、水と相溶性のない有機溶剤を用いて3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を抽出し、第五工程:得られた溶液を濃縮及び/又は蒸留して、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)を単離することを特徴とする、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの製造方法。 一般式(1)のRは、炭素数1〜4のアルキル基である請求項1記載の製造方法。 一般式(1)及び(2)のXは、塩素、臭素又はヨウ素である請求項1又は2記載の製造方法。 第一工程で用いられる水と相溶性のない有機溶剤は、炭化水素類又は酢酸エステル類である請求項1、2又は3記載の製造方法。 第一工程で用いられる水と相溶性のない有機溶剤は、トルエン、又は、酢酸の炭素数1〜4のアルキルエステルである請求項4記載の製造方法。 第一工程の還元反応は20〜80℃の温度で行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。 第一工程の還元反応は、還元剤を4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)の溶液へ逐次添加しながら行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。 還元剤は水素化ホウ素アルカリ金属塩である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。 水素化ホウ素アルカリ金属塩は水素化ホウ素ナトリウムである請求項8記載の製造方法。 第二工程で用いられる酸は、鉱酸である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。 鉱酸は、塩酸又は硫酸である請求項10記載の製造方法。 第二工程で酸及び水を用いて処理することにより、反応混合物を酸性〜中性条件に調整する請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。 第三工程の環化反応は、40℃以上の温度で行われる請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。 第三工程の環化反応は、酸性〜中性条件下で行われる請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。 第三工程の環化反応を中性条件から開始する請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。 第三工程の環化反応は、発生する酸成分を中和しながら、pH2〜7に維持しつつ行われる請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。 第三工程の環化反応は、水と相溶性のない有機溶剤が共存する二相系で行われる請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。 環化反応後に有機相を30℃以下で分液除去して、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の水溶液を分離する請求項17記載の製造方法。 第三工程で得られた3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の水溶液を、水と相溶性のない有機溶剤で30℃以下で洗浄する請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法。 第四工程の抽出操作は40℃以上の温度で行われる請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法。 第四工程の抽出操作を酸性〜中性条件下で行う請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法。 第四工程の抽出操作を中性条件下で行う請求項21記載の製造方法。 第四工程の抽出操作は、第三工程から得られる水溶液を一旦塩基性化した後に、中和してから行われる請求項21又は22記載の製造方法。 第四工程で用いられる水と相溶性のない有機溶剤は、芳香族炭化水素類、酢酸エステル類、又は、炭素数4〜8の一価アルコール類である請求項1〜23のいずれか1項に記載の製造方法。 第四工程で用いられる水と相溶性のない有機溶剤は、酢酸の炭素数1〜4のアルキルエステルである請求項24記載の製造方法。 第五工程で蒸留を行うにあたって、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の溶液及び/又は濃縮物を、炭素数1〜3の一価アルコール類又は炭素数6以上の多価アルコール類を用いて処理する請求項1〜25のいずれか1項に記載の製造方法。 炭素数1〜3の一価アルコール類を用いて処理し、共存するホウ素化合物及び/又はアルミニウム化合物を、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の10モル%以下に低下させることを特徴とする請求項26記載の製造方法。 第五工程で蒸留を行うにあたって、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(3)の溶液及び/又は濃縮物に酸を加えて処理する請求項1〜27のいずれか1項に記載の製造方法。 第五工程の蒸留を、塩基共存下に実施する請求項1〜28のいずれか1項に記載の製造方法。 塩基はアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩である請求項29記載の製造方法。 塩基は炭酸水素ナトリウムである請求項30記載の製造方法。 一般式(1):(式中、Rはエステル型保護基を表す。Xはハロゲン原子を表す)で表される4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを、水と相溶性のない有機溶剤中で水素化ホウ素化合物及び/又は水素化アルミニウム化合物を還元剤として用いて還元し、得られた反応混合物を酸及び水を用いて処理して、一般式(2):(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表される4−ハロ−1,3−ブタンジオールに変換するとともに、該化合物を含有する水溶液を取得することを特徴とする、4−ハロ−1,3−ブタンジオールの製造方法。 一般式(1)のRは、炭素数1〜4のアルキル基である請求項32記載の製造方法。 一般式(1)及び(2)のXは、塩素、臭素又はヨウ素である請求項32又は33記載の製造方法。 水と相溶性のない有機溶剤は、水と相溶性のない非プロトン性有機溶剤である請求項32、33又は34記載の製造方法。 水と相溶性のない有機溶剤は、炭化水素類又は酢酸エステル類である請求項35記載の製造方法。 水と相溶性のない有機溶剤は、トルエン、又は、酢酸の炭素数1〜4のアルキルエステルである請求項36記載の製造方法。 還元剤は水素化ホウ素アルカリ金属塩である請求項32〜37のいずれか1項に記載の製造方法。 水素化ホウ素アルカリ金属塩は水素化ホウ素ナトリウムである請求項38記載の製造方法。 還元反応は40℃以上の温度で行われる請求項32〜39のいずれか1項に記載の製造方法。 還元反応は、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)及び/若しくは還元剤を逐次添加又は分割添加して行われる請求項32〜40のいずれか1項に記載の製造方法。 還元反応は、還元剤を4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(1)の溶液へ逐次添加しながら行われる請求項41記載の製造方法。 添加は1時間以上かけて行われる請求項41又は42記載の製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る