タイトル: | 特許公報(B2)_酸化エチレンの製造方法 |
出願番号: | 1999374886 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07D 301/08,C07D 303/04 |
岡 義久 武松 賢一 JP 3825217 特許公報(B2) 20060707 1999374886 19991228 酸化エチレンの製造方法 株式会社日本触媒 000004628 岡 義久 武松 賢一 20060927 C07D 301/08 20060101AFI20060907BHJP C07D 303/04 20060101ALI20060907BHJP JPC07D301/08C07D303/04 C07D301/08 C07D303/04 WPI CAplus(STN) 特開昭62−083041(JP,A) 特開昭62−087246(JP,A) 4 2001187788 20010710 7 20020205 瀬下 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は酸化エチレンの製造方法に関し、詳しくはエチレンの気相接触酸化反応により酸化エチレンを安定して製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】銀触媒の存在下にエチレンを気相酸化して酸化エチレンを製造することは広く工業的に行われている。この方法は、エチレン原料ガスを反応器に充填した銀含有触媒に接触させて部分酸化を行った後、反応ガス中の酸化エチレンを吸収・回収し、未反応のエチレンを含む反応ガスは循環し、新規なエチレンなどを補充してガス組成を調整した後、エチレン原料ガスとして反応器に導入し、連続的に気相酸化を行うというものである。【0003】この際、エチレンの完全燃焼による二酸化炭素の生成を抑制するために、反応抑制剤として有機ハロゲン化物、例えば二塩化エチレン(EDC)をエチレン原料ガスに添加することが行われている。この有機ハロゲン化物はエチレン原料ガス中に気体として微量添加されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、有機ハロゲン化物を気体で添加する従来方法は、酸化反応それ自体の安定性維持には不十分であり、また酸化エチレン選択率も十分満足できる程度に高くないとの問題があった。【0005】今日の酸化エチレン製造技術における酸化エチレン選択率は既に高いレベルに達しているが、酸化エチレンの生産規模からして、たとえ数%の上昇であっても、その選択率の向上がもたらす経済的効果は大きなものである。【0006】かくして、本発明の目的は、酸化エチレンを安定して、さらには高選択率で製造し得るようにした酸化エチレンの製造方法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記問題の原因について検討を進めたところ、有機ハロゲン化物中にエチレン、窒素などのガスをバブリングし、飽和ガスをエチレン原料ガスに添加する従来方法では、有機ハロゲン化物を常に一定な量でエチレン原料ガスに添加することができないことがその一因となっていることがわかった。それは、有機ハロゲン化物を添加するエチレン原料ガスの流量、圧力の変動などにより、有機ハロゲン化物がミストとなって一度に多量に添加されることがあるからである。そして、有機ハロゲン化物が一度に多量に添加されると、反応が急速に抑制され、時には反応が停止してしまうなど、その反応の制御が著しく困難となり、酸化反応を安定して行うことができなくなる。また、有機ハロゲン化物の添加量が一定でないと、エチレン原料ガス中の有機ハロゲン化物の濃度が均一でなくなり、酸化エチレン選択率が低下するなどの問題が生じることがわかった。【0008】そこで、本発明者らは、有機ハロゲン化物のエチレン原料ガスへの添加量を一定にするなどして、有機ハロゲン化物をエチレン原料ガス中に均一に分散させ、エチレン原料ガス中の有機ハロゲン化物の濃度を実質的に均一にすることについて鋭意検討を行った。【0009】有機ハロゲン化物の添加法には、上記気体で添加する従来方法のほかに、次の方法が考えられる。(1)有機ハロゲン化物を水溶液としてエチレン原料ガスに添加する。(2)有機ハロゲン化物を有機溶媒に溶かしてエチレン原料ガスに添加する。(3)有機ハロゲン化物それ自体を液体としてエチレン原料ガスに添加する。【0010】そして、これら方法(1)〜(3)について、本発明者らの研究により、次のことがわかった。【0011】方法(1)の場合、有機ハロゲン化物は一般に水に対する溶解度が低く、また比重も大きいため、有機ハロゲン化物の水への溶解が不十分となり、時には未溶解の有機ハロゲン化物がそのまま反応系内に入り反応が危険な状態となることがある。また、方法(2)の場合、使用する有機溶媒が酸化反応に悪影響を及ぼし、また製品酸化エチレンの品質を損なう。【0012】これに対し、方法(3)の場合、液状の有機ハロゲン化物をその貯蔵タンクからポンプで圧送し、エチレン原料ガス流に導入すると、貯蔵タンクの圧力は、通常、プロセス圧力(エチレン原料ガスの圧力)より低くできるため、本質的に過剰になることなく、エチレン原料ガス流の変動にも忠実に対応した一定量の有機ハロゲン化物を添加できる。【0013】本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。【0014】すなわち、本発明は、反応抑制剤としての有機ハロゲン化物の存在下にエチレンを気相接触酸化して酸化エチレンを製造するにあたり、該有機ハロゲン化物をエチレン原料ガス流中に液体として添加することを特徴とする酸化エチレンの製造方法である。【0015】【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施態様を示した系統図である。エチレン、酸素、不活性ガスなどを含むエチレン原料ガスをブロワ4、熱交換器5を経てシェル・アンド・チューブ型反応器7に導入し、ここで銀含有触媒と接触させてエチレンを酸化エチレンに部分酸化する。反応ガスは熱交換器5を経て酸化エチレン吸収塔8に導入し、生成した酸化エチレンを吸収・回収する。酸化エチレン吸収塔8からの反応ガスは一部反応器7に循環する。そして、その残りは、一部パージした後、ブロア4を経て炭酸ガス吸収塔9に導入し、炭酸ガスを吸収・分離した後、反応器7に循環する。このように、酸化エチレン吸収塔8および炭酸ガス吸収塔9から循環した反応ガスにエチレン、メタンなどを補充してガス組成を調整した後、エチレン原料ガスとして反応器7に導入して連続的に酸化反応を行う。なお、酸素は、通常、酸化エチレン吸収塔8で補充するとよい。【0016】反応抑制剤としての有機ハロゲン化物は有機ハロゲン化物タンク1から送液ポンプ2により有機ハロゲン化物供給ライン3を経て有機ハロゲン化物添加箇所6で液体として添加する。本発明の特徴は、このように有機ハロゲン化物を液体としてエチレン原料ガス流中に添加する点にある。【0017】本発明において、有機ハロゲン化物は、図1のブロワ4の出口から反応器7の入口にいたる任意の箇所でエチレン原料ガス流中に添加することができるが、ブロワ4の出口から熱交換器5の入口までの箇所に添加するのがよい。【0018】本発明の「エチレン原料ガス」とは、反応器に導入するエチレン、酸素、メタンなどからなる混合ガスを意味する。このエチレン原料ガスは、通常、連続反応において循環する反応ガスに新たにエチレン、メタンなどを補充してガス組成を調整したものである。【0019】本発明においては、エチレン原料ガス流の温度を、このエチレン原料ガスの露点より高い温度、好ましくは露点より2℃以上高く、かつ150℃を超えない温度とするのがよい。このようにすることにより、有機ハロゲン化物はエチレン原料ガス中にほぼ均一に気化、分散され、エチレンの気相酸化を安定して行えるとともに、完全燃焼を効果的に防止することができる。この理由は明らかではないが、エチレン原料ガスの温度が露点または露点以下では、エチレン原料ガス中の水分がミストとなっているか、あるいはミストになる可能性があり、このミストが気化前の有機ハロゲン化物液と衝突し、ドレインとして系外に持ち去られるため、安定したエチレンの部分酸化が妨げられるものと考えられる。本発明においては、エチレン原料ガス流の質量速度を50〜2000kg/m2・秒、好ましくは100〜1000kg/m2・秒とするのがよい。このようにすることにより、有機ハロゲン化物が急速に気化し、エチレン原料ガス中の有機ハロゲン化物の濃度が均一になる。その結果、エチレンの気相酸化を安定して行うことができるとともに、有機ハロゲン化物の反応抑制効果が十分に発揮されて、酸化エチレン選択率が向上する。なお、「質量速度」とは、単位時間あたりに単位断面積を通過するエチレン反応ガスの質量を意味する。【0020】したがって、本発明の好適な態様によれば、温度を露点より高く、かつ質量速度を50〜2000kg/m2・秒に調整・保持してなるエチレン原料ガス流中に、有機ハロゲン化物を液体として添加する。【0021】有機ハロゲン化物は、通常、エチレン原料ガス流に開口してなるノズルから導入するが、特にエチレン原料ガス流に向かって開口してなるノズルから導入するのが好ましく、エチレン原料ガス流の上流方向に向けて開口してなるノズルから導入するのが更に好ましい。図2は、有機ハロゲン化物の噴出口がエチレン原料ガス流の上流方向に向けて設けられているノズルの縦断面概念図である。【0022】このようにエチレン原料ガス流の上流方向に向けて開口してなるノズルから有機ハロゲン化物を導入することにより、有機ハロゲン化物のエチレン原料ガスへの迅速な気化、均一な拡散が促進されて、エチレン原料ガス中の有機ハロゲン化物の濃度を更に均一にすることができる。ノズルの口径は0.1〜5mmが好ましい。口径が大きすぎると、有機ハロゲン化物の添加量を一定に保つのが困難となり、また口径が小さすぎると圧力損失が大きくなるとともに、精密加工が必要となってコスト高となる。なお、噴出口は有機ハロゲン化物の拡散を均一なものとするために、エチレン原料ガスの配管横断面の中央付近に位置するようにするのが好ましい。【0023】本発明で用いる有機ハロゲン化物については、エチレンの気相酸化により酸化エチレンを製造する際に反応抑制剤として一般に用いられている有機ハロゲン化物のうち、液体であって添加時に気化するもの、あるいは気体であっても液化して液体として添加し得るものであればいずれも使用することができる。その代表例としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化ビニル、二塩化エチレンなどを挙げることができる。なかでも、二塩化エチレンが好適に用いられる。【0024】有機ハロゲン化物の添加量については特に制限はなく、有機ハロゲン化物が一般に用いられている範囲内(エチレン原料ガスの0.01〜数十ppm(容量))で適宜選ぶことができる。【0025】エチレンを気相接触酸化して酸化エチレンを製造する方法自体については特に制限はなく、酸化エチレンの製造に一般的に用いられている方法(装置、条件など)にしたがって行うことができる。【0026】【発明の効果】本発明によれば、一定量の有機ハロゲン化物をエチレン原料ガス中に添加することができる。このため、有機ハロゲン化物をエチレン原料ガス中に均一に分散させることができ、エチレン原料ガス中の有機ハロゲン化物の濃度を実質的に均一にすることができる。その結果、酸化反応を安定して行うことができ、また有機ハロゲン化物の反応抑制効果が十分に発揮され、酸化エチレン選択率が向上する。【0027】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。実施例1シェル・アンド・チューブ型反応器のチューブ側に銀含有触媒を充填し、エチレン、酸素、不活性ガスなどからなるエチレン原料ガスを、2.5MPa、220〜240℃で反応器に通して、酸化エチレンを10〜12トン/時間で11ヶ月生産し、その間反応ガス中の二塩化エチレン(EDC)の濃度は2.5ppm(容量)を保つべく、液体EDCを200ml/hを標準として、ブロワ出口から熱交換器の間の配管に連続して加えた。なお、添加量は生産量に応じ変動させた。ブロワ入口のガス温度は20〜33℃、出口のガス温度は36〜45℃、ガスの質量速度は350〜420kg/m2・秒であった。EDC添加ノズルには、1mmの口径を有する噴出口をエチレン原料ガス流の上流方向に向けた配管を用いた。この間、反応は安定し、EDCに起因する反応異常は全く認められなかった。【0028】なお、EDCタンクの定期的な液面の日常チェックにおいても、添加量はポンプの精度以内の数値を示し、また反応温度の、秒、分、時間変動も0.5℃以内であり、安定してEDCが添加されていることを示した。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の一実施態様を示した系統図である。【図2】 本発明で用いるノズルの縦断面概念図である。【符号の説明】1 有機ハロゲン化物タンク2 送液ポンプ3 有機ハロゲン化物供給ライン4 ブロワ5 熱交換器6 有機ハロゲン化物添加箇所7 反応器8 酸化エチレン吸収塔9 炭酸ガス吸収塔10 有機ハロゲン化物添加ノズル 反応抑制剤としての有機ハロゲン化物の存在下にエチレンを気相接触酸化して酸化エチレンを製造するにあたり、該有機ハロゲン化物をエチレン原料ガス流中に液体として添加することを特徴とする酸化エチレンの製造方法。 エチレン原料ガス流の温度を露点より高くする請求項1記載の方法。 エチレン原料ガス流の質量速度を50〜2000kg/m2・秒とする請求項1または2記載の方法。 エチレン原料ガス流中に0.1〜5mmの開孔を有するノズルから有機ハロゲン化物を導入する請求項1、2または3記載の方法。