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タイトル:特許公報(B2)_フォンヴィルブランド因子を主成分とする血小板減少に伴う出血疾患の予防・治療用医薬組成物
出願番号:1999368123
年次:2011
IPC分類:A61K 38/36,A61P 7/04


特許情報キャッシュ

荒木 辰也 友清 和彦 中冨 靖 手嶋 かおり 渡辺 朋子 中垣 智弘 JP 4643783 特許公報(B2) 20101210 1999368123 19991224 フォンヴィルブランド因子を主成分とする血小板減少に伴う出血疾患の予防・治療用医薬組成物 一般財団法人化学及血清療法研究所 000173555 荒木 辰也 友清 和彦 中冨 靖 手嶋 かおり 渡辺 朋子 中垣 智弘 20110302 A61K 38/36 20060101AFI20110209BHJP A61P 7/04 20060101ALI20110209BHJP JPA61K37/46A61P7/04 A61K 38/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表平10−506988(JP,A) 国際公開第93/006840(WO,A1) 特表平09−502714(JP,A) GUERIN,V. et al,High level of plasmatic von Willebrand factor limits the bleeding time in thrombopenic HIV-infected patients,Thromb Haemost,1995年,Vol.74, No.2,p.803-4 4 2001181200 20010703 6 20061213 伊藤 基章 【0001】【産業上の利用分野】本願発明は、血液に由来する成分を主たる有効成分とする医薬品に関する。詳細には、血小板障害、例えば血小板減少或いは血小板機能異常を原因とする出血症状に対する医薬組成物に関する。さらに詳細には、フォンヴィルブランド因子(以下、vWFと称することがある)を有効成分として含有する血小板障害に伴う出血症状の予防・治療用医薬組成物に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】止血は血管、血小板及び血液凝固因子が正常に機能して初めて達成される。よって、これらの機能の低下は出血傾向を惹起し、著しい低下は過度の出血を起こし生命を危うくする。血小板は、血中に13〜36万/μL存在し、傷害を受けた血管損傷部位にいち早く集まり、止血を司る重要な役割を担っている。しかしながら、この血小板の止血機能において異常が生じていたり、又は種々の原因で循環血小板数が5万/μL以下に減少したりすると、出血傾向が惹起される。1万/μL以下の重症の血小板減少になると自然出血を起こすようになり、出血量が増大して生命に影響を与えることも起こりうる。特に、近年増え続けている抗癌化学療法に伴い発症する血小板減少症は深刻な副作用であり、その止血管理は癌治療上の重要な課題になっている(西村純二. 医学の歩み 184: 448-452, 1998)。【0003】血小板減少を機序別に分類すると、4つに大別することができる。1)骨髄での血小板産生の低下が原因となるもので、再生不良性貧血や抗癌剤投与後の骨髄造血抑制状態、急性白血病などにより正常造血組織が腫瘍に置き換えられている場合などがある。2)血小板の破壊の亢進によるもので、代表的な疾患としては特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP)がある。そのほか薬剤アレルギーによる血小板減少症や血小板の血液型不適合妊娠による新生児血小板減少症などがある。3)血小板の消費の亢進によるものがある。播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)や血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP)の場合には末梢の血栓形成部位に大量の血小板が消費されるために血小板減少をきたす。4)血小板の分布の異常によるものがある。正常人において骨髄で新生された血小板が末梢に放出されると約1/3は末梢を循環されることなく脾臓で捕捉される。一方、肝硬変や巨大脾腫がある場合には新生された血小板の大半が脾臓で捕捉されてしまう。その結果、骨髄で血小板を産生しても末梢に十分血小板を供給することができないため血小板減少をきたす(倉田義之. 総合臨床47: 2742-2748, 1998)。なお、血小板の機能異常症としては血小板膜蛋白のIIb/IIIa欠損によって引き起こされる血小板無力症やIb欠損のBernard-Soulier症などが知られている。【0004】血小板障害に伴う止血障害は、鼻・口腔領域或いは胃腸経路からの粘膜出血並びに傷、潰瘍及び注射部位からの浸出において示される増大した出血傾向を生ずる。血小板減少による出血は広範であり、特に外科手術に際し、術中術後において血小板減少症は深刻な問題となる。血小板数が5万/μL以下に低下すると、抜歯などの小さな手術でさえも深刻な出血を引き起こすことがある。1万/μL以下の更に著しく低い血小板数においては、手術や外傷等の特別なイベントがなくても自然出血を起こすようになり、例えば、頭蓋内に出血が起こると致死的でさえある。【0005】ところで、現在、血小板減少或いは血小板機能異常を原因とする出血症状に対しては、臨床上、血小板濃縮物の輸血が唯一有効な治療法とされている。実際の治療態様としては、外科手術時または活動性出血を認める場合には5万/μL以上になるように、それ以外の場合には2万/μL以上になるように投与することが基本となっている(厚生省薬務局・日本赤十字社:血小板製剤の適正使用について)。しかし、そのような濃縮物を大量及び頻回に投与する場合には、複数の供血者から集められた血小板が使用される。その結果、血小板輸血を繰り返し受ける患者の多くは、混入した白血球のHLA抗原や血小板の血液型に対する同種抗体を発生し、血小板輸血の効果が弱くなる血小板輸血不応状態に陥る。さらに、血小板濃縮物の中には、輸血後GVHDの原因であるリンパ球や、肝炎やAIDSの原因となるウイルスの混入が完全には否定できない。従って、現在、血小板減少或いは血小板機能異常を原因とする出血症状には、血小板輸血が唯一の有効な治療法ではあるが、血小板輸血に代わるより安全に止血管理が可能な薬剤が切望されている。【0006】【発明の構成】【課題を解決するための手段】上記課題を鑑み、本願発明者らは血小板障害に伴う出血症状に対する予防・治療剤を開発するべく鋭意研究した結果、驚くべきことに、従来試みられることのなかった精製したvWFを、血小板がほとんど存在しない動物に生体内投与することによって低下した止血能を改善するという知見を得、血小板減少あるいは機能異常に伴う止血障害の予防・治療用医薬組成物として充分に適応できることを見出し、本願発明を完成するに至った。【0007】本願発明の医薬組成物の主たる成分であるvWFは2050残基のアミノ酸からなる分子量約25万の単一サブユニットが2〜数十個結合し、分子量50万〜2千万におよぶ巨大マルチマー分子として存在する。vWFは、ずり応力(shear stress)に応じてvWF分子内の異なる認識部位を使って種々のコラーゲンと相互作用する。コラーゲンに結合したvWFは、ずり応力によって立体構造を変化させ血小板GPIbとの結合部位を露出し、血小板と結合するとされている(Ruggeri,Z.M.et al. J Clin Invest 99: 559-564, 1997)。また、コラーゲンに固定化されたvWF上を血小板がローリングするうちに弱いGPIb−vWF間の刺激が血小板に蓄積し、やがてGPIIb/IIIaが活性化されるとvWF内のRGDS配列を介した強固な結合に変わるとも考えられている。いずれにしても、vWFは傷害された血管壁のコラーゲンと血小板間の接着分子として働くことで血小板の粘着・凝集に重要な役割を果たす。従ってvWFの欠損(フォンヴィルブランド病)患者は血小板粘着凝集不良による出血傾向を示す。またvWFは、循環血液中で血液凝固第VIII因子(FVIII)のキャリアー蛋白質としても機能している。しかしながら、血小板がほとんど存在しない状態で、vWFそのものが低下した止血能を改善するという知見はこれまで報告されていない。【0008】本願発明の医薬組成物の主成分であるvWFを製造する方法は特に限定されることなく、例えばヒト血液より分離する方法、あるいは遺伝子組換え技術により作製する方法などによって製造することができる。血液由来のvWFの製法としては以下の方法が挙げられる。例えば、新鮮凍結ヒト血漿を冷融解することによって得られるクリオプレシピテートから、陽イオン交換クロマトグラフィーによりvWF/FVIII複合体として精製後、高塩濃度下でのゲル濾過によりvWFを単離する方法(Weiss, H.J.et al.,Science 182:1149-1151,1973)や、抗vWFモノクローナル抗体を用いてのアフィニティークロマトグラフィーによってvWFを精製する方法がある(Fulcher, C.A., et al.,Proc. Natl.Acad. Sci.USA 79:1648-1652, 1982)。【0009】上述の方法で調製されたvWFの活性を最大限に維持するために、好適な安定化剤と共に凍結乾燥して保存することができるし、さらには、vWF溶液を凍結し保存することも可能である。本発明では、かかる有効成分としてのvWFと公知の適当な賦形剤を組み合わせ、公知の方法で本発明の血小板減少に伴う止血障害に対する予防・治療用製剤とすることができる。【0010】本発明のvWF含有製剤の投与対象は、血小板減少あるいは機能低下に伴う止血障害のある患者であれば特に限定されることはない。vWFの有効投与量は、例えば投与対象者の年齢、症状及び重症度などにより変動するが、vWFの効果には用量依存性が認められており、Rcof活性で10単位〜400単位/kgの範囲で止血効果が期待できる。投与方法は単回投与(ボーラス)あるいは点滴の静脈内投与が最適である。血小板減少に伴う止血障害の予防・治療法としてvWFを使用する場合、vWFを単独で投与することもできるし、FVIIIとの併用投与あるいはvWF/FVIII複合体のままでも効果を増大させるための有効な手段として期待できる。【0011】今回の実施例に使用した血液由来のvWFは、FVIIIを分離除去したvWF、もしくは、FVIIIを含有するvWF/FVIII複合体であり、そのマルチマーパターンは血漿のそれと同様である。vWF/FVIII複合体については臨床現場において血友病あるいはフォンビルブランド病患者に投与されており安全性が確認されている。【0012】以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものではない。【0013】調製例新鮮凍結ヒト血漿を冷融解することによって得られたクリオプレシピテートを溶解後、陽イオン交換クロマトグラフィー及び沈殿分画によりvWF/FVIII複合体として精製し、引き続き350mM塩化カルシウム存在下でのSephacryl S-500を用いるゲル濾過によりvWFとFVIIIとを解離しvWFを単離した。【0014】実施例1(血小板減少動物モデルを用いた本願医薬組成物の効果)vWF投与による血小板減少に起因する出血傾向に対する止血効果が以下の実施例により確認できた。本実験は、主として、抗癌剤投与に伴う血小板減少を反映するモデルとして確立されている方法(Kuter,D.J. et al. Blood 85: .2720-2730, 1995)に準じて実施されたものであり、実際的な血小板減少出血モデルとして適した評価系と考えられる。ラット(Wistar系、雄性、体重180〜230g)の背部皮下に抗癌剤であるBusulfan を12.5mg/kgの量で投与し、血小板減少状態を誘導した。血小板数の低下が最も著しい14日目に、ペントバルビタールで麻酔下、背位に固定し、尻尾直径3mm部をカッター刃にて切断し出血させた。出血血液はフィルターに吸わせ、ヘモグロビン定量により出血量を求め、評価した。血小板数約60万/μLの正常ラットの出血量は112.2±61.0μLであるのに対し、被検動物は血小板数が低下するにつれて出血量は増大し、血小板数が0.1±0.1万/μLのとき1202.8±188.3μLと著しく増大した。【0015】対照動物と同様にラットを血小板減少症(血小板数が0.1±0.1万/μL)にし、次いでヒトvWFを投与した。ヒトvWFの投与用量はRcof活性で40, 80, 160U/kgとしてラット外頚静脈より評価開始の10分前に投与した。同様に、ヒトFVIIaを500U/kgで投与して評価した。結果を表1及び図1にまとめる。血小板減少ラットの出血量は、対照動物群と比べ、投与したvWFの用量に依存して著しく減少した。vWFを投与した動物の約半数例においては、30分の観察時間内に完全に止血した。特公平7−80783に止血効果が示されている500U/kgの高用量のFVIIaを投与した群についても出血量の低減が観られたが、vWFの投与はその効果を凌駕していた。【0016】【表1】【図面の簡単な説明】【図1】血小板減少動物モデルを用いた本願医薬組成物の効果を示す図である。 止血のための有効量のフォンヴィルブランド因子(以下、vWFと称することがある)を主たる成分とする組成物であって、血液凝固因子欠陥またはvWF欠陥を主因とせず、1万個/μL以下の血小板数を呈する循環血小板数の低下または血小板機能異常により惹起される出血疾患の予防・治療用医薬組成物。 前記循環血小板数の低下が0.1万個/μL以下の血小板数を呈することを特徴とする、請求項1記載の出血疾患の予防・治療用医薬組成物。 vWFを少なくともリストセチンコファクター(以下、Rcofと称することがある)活性で5単位/mLの濃度で含んでなる請求項1もしくは請求項2記載の出血疾患の予防・治療用医薬組成物。 止血に必要な投与量として、Rcof活性単位で10単位〜400単位/kg体重に相当するvWFを含んでなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の出血疾患の予防・治療用医薬組成物。


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