生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_菌の分離・検出方法
出願番号:1999360583
年次:2010
IPC分類:C12Q 1/04,C12Q 1/34,C12N 1/02


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田代 茂 JP 4472078 特許公報(B2) 20100312 1999360583 19991220 菌の分離・検出方法 三菱化学メディエンス株式会社 591122956 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 田代 茂 20100602 C12Q 1/04 20060101AFI20100513BHJP C12Q 1/34 20060101ALI20100513BHJP C12N 1/02 20060101ALI20100513BHJP JPC12Q1/04C12Q1/34C12N1/02 C12Q 1/00-3/00CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed JSTPlus(JDreamII) 5 2001169799 20010626 8 20060830 冨永 みどり 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、検出しようとする目的の菌を選択的に分離・検出する方法に関する。特に病原性大腸菌O157を選択的に分離、検出する方法に好適である。【0002】【従来の技術】近年、年間を通して下痢症状を伴う食中毒様患者が発生しており、その症状が細菌性食中毒なのか、あるいはウイルス性下痢症なのかを的確に判断することが重要視されている。例えば、細菌性食中毒が発生した場合、治療方針の決定、感染経路の解明さらには食中毒予防のためにも、食中毒原因細菌の検出あるいは分離が必須となる。検体試料中の特定菌の存在を知るためには幾つかの方法が行われている。そのひとつは目的菌に適した培地を用いて培養により原因菌を分離同定する方法で、検体試料を直接、あるいはあらかじめ増菌した培養液から分離培養により疑わしい集落を生化学的、血清学的性状に基づいて同定する方法がある。また、他の方法として、免疫学的に特定菌特異的抗原を検出することに基づくELISA法やイムノクロマトグラフィ等の方法あるいは、特定菌の特異的DNAを増幅し検出するPCR法などがとられている。免疫学的方法やPCR法は迅速性の面では有利であるが、死菌の混入の可能性があるので、最終的な原因菌の特定、判断には分離培養法の結果が不可欠である。【0003】臨床検体または食品から菌を分離するには、その栄養要求性や抗生物質等への感受性、酸素への応答などの特性を生かして、対象となる菌の増殖に有利な培地を作製し適当な環境下で選択的に培養してコロニ−を形成させている。例えば、シュードモナス アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)は、培地に添加する炭素源としてアセトアミドだけを用いれば増殖できるが、それを利用できない菌は発育しないため、シュードモナス アエルギノサを容易に選択的に分離できる。また、適当な量の抗菌性、殺菌性あるいは静菌性物質、例えば抗生物質等(ノボビオシン、セフェキシム、亜テルル酸等)を培地に加えた場合、大腸菌は他の菌に比べこれらの物質への感受性が弱いので大腸菌の選択・分離培養ができる。【0004】こうして分離してきた菌を鑑別するには、その生物学的、遺伝学的、生化学的、血清学的性状等を調べている。例えば病原性大腸菌O157と他の血清型の大腸菌を鑑別するには、病原性大腸菌O157因子血清による凝集反応や特異酵素であるβ―グルクロニダーゼの産生性を調べている。病原性大腸菌O157はβ―グルクロニダーゼ陰性だが、病原性大腸菌O157以外の大腸菌は原則としてβ―グルクロニダーゼ陽性である。従って、この酵素活性の有無を調べることで、分離した菌が病原性大腸菌O157なのか、それ以外の大腸菌なのかを判別することができる。【0005】この特異酵素を確認する試薬として、酵素基質と色素団の結合物、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド、ρ−ニトロフェニル−β−D−グルクロニド、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニドなどがある。これらは酵素(例えばβ−グルクロニダーゼ)によって分解されると発色または紫外線下で蛍光を発する色素が生成する。また、色素団に結合している酵素基質が変われば、別の特異酵素が確認できる。これらを平板培地に添加した場合、形成されたコロニー自体が着色されるので、培地上で病原性大腸菌O157と他の血清型他の菌との区別は可能である。酵素基質が糖であればその代謝で産生した酸を、特異酵素がデカルボキシラーゼであれば生成したアミンをpH指示薬の色調変化で検出し、菌を鑑別することもできる。【0006】【発明が解決しようとる課題】しかしながら、抗生物質等への感受性を利用して菌を選択培養する方法は、その選択性が種属間の生化学的性状(例えば、代謝機構や細胞成分)の差に基づいているので、目的の菌とそれ以外の菌との性状の差が大きい必要があり、種や血清型だけが異なるという場合は不可能であった。一方、特異酵素は種や血清型が異なればある程度の差があり、平板培地上で目的の菌とそれ以外の菌を区別できるものの、一枚の平板培地上で形成されるコロニ−の数にも限界があり、夾雑菌が多い場合には目的とする菌の選択・分離培養はできない。特異性の極めて高い選択剤を使用し、目的とする菌と種や血清型だけが異なるというように、性状が似ている夾雑菌が大多数を占める検体から少数の目的とする菌の選択・分離培養を可能にする方法を確立することを目標とし、鋭意検討の結果本願を完成するに至った。【0007】【課題を解決するための手段】前記課題は、化合物X−Y(Xは目的の菌及び/又は夾雑菌類に作用する殺菌性、抗菌性あるいは静菌性を有する物質、Yは目的の菌以外の菌類由来酵素が作用する基質であり、YはXが失活する部位に結合している)を含む平板培地上で菌を培養することを特徴とする、目的の菌を選択的に分離・検出する方法、により解決することができる。また、本発明は、化合物X−Y(Xは目的の菌及び/又は夾雑菌類に作用する殺菌性、抗菌性あるいは静菌性を有する物質、Yは目的の菌以外の菌類由来酵素が作用する基質であり、YはXが失活する部位に結合している)を含むことを特徴とする、目的の菌を選択的に分離・検出するための平板培地、にも関する。以下、本発明を詳述する。【0008】【発明の実施の形態】本発明の趣旨は、ある菌の特異酵素が作用する基質と抗生物質や合成抗菌物質の結合物で、この誘導体自体は抗菌活性を示さないが特異酵素による分解を受けると抗菌活性のある抗生物質や合成抗菌物質が遊離し、菌の発育を阻害または抑制するような化合物を、平板培地に添加し菌を培養する。その結果、この特異酵素を持ちこの化合物を分解できる菌は遊離してくる抗生物質や合成抗菌物質のために発育を阻害または抑制されコロニーは形成されないかもしくは形成されてもその大きさが小さくなる。一方この特異酵素を持たない菌は発育を阻害または抑制されないため通常のコロニー形成がみられるため、目的とする微生物の選択・分離培養が容易になる。【0009】このような手法により、例えば病原性大腸菌O157を除く大腸菌の発育を阻害ないしは抑制することができる。本発明はこれにとどまらず、適用範囲は広範で、その他発育を阻害ないしは抑制することができる菌として、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、コリネバクテリウム ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)、バチルス アントラシス(Bacillus anthracis)、クロストリジウム(Clostridium)等のグラム陽性菌、ネイセリア ゴノルローア(Neisseria gonorrhoeae)、ネイセリア メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、ヘモフィルス インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア マルセスセンス(Serratia marcescens)、プロテウス(Proteus)、エンテロバクター(Enterobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、シュードモナス アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、バクテロイデス(Bacteroides)等のグラム陰性菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、スピロヘータ(Spirochaeta)、トレポネーマ(Treponema)、リケッチア(Rickettsiae)、クラミジア(Chlamydiae)、カンジダ(Candida)等が挙げられる。【0010】菌を鑑別するために利用できる特異酵素としては、L−ピログルタミン酸アミノペプチダーゼなどの各種アミノペプチダーゼ、フォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、β−D−グルクロニダーゼ、カプリル酸エステラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ等があり、菌の種類と特異酵素及びその基質は公知である。例えばL−ピログルタミン酸アミノペプチダーゼはストレプトコッカス ピオゲネスやネイセリア ゴノルローアの特異酵素であり、その基質はピログルタミン酸である。また、β−D−グルクロニダーゼは大腸菌の特異酵素でその基質はグルクロン酸である。特に病原性大腸菌O157の分離・検出には当該酵素活性を好適に用いることができる。[Thompson,J.S.,O.S.Hodge,A.A.Borczyk:J. Clinical Microbiol.28(10)2165−2168(1990)]【0011】本発明の化合物X−Yは、Xが目的の菌及び/又は夾雑菌類に作用する殺菌性、抗菌性あるいは静菌性を有する物質で、Yは目的の菌以外の菌類由来酵素が作用する基質である。例えば、Xは抗生物質であり、そこに前記特異酵素の基質Y(例えば糖類)を結合した化合物である。Xとして用いることができる抗生物質は公知であり、具体的には、カナマイシン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、リビドマイシン、ブチロシン、フォルチミシン、アミカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ジベカシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、アプラマイシン、クロラムフェニコール等が挙げられる。(田中信夫、中村昭四郎 著「抗生物質大要 第3版増補」東京大学出版会)【0012】化合物X−YのY、即ち基質となると物質としては、前記の特異酵素の公知基質、例えば、L−ピロリドンカルボキシリル酸、リン酸、D−ガラクトース、D−グルクロン酸、カプリル酸、デオキシリボヌクレイン酸等が挙げられる。目的とする菌の特性によって適宜抗菌性物質と基質を選択し、基質を前述の抗菌性物質が失活する部位にペプチド結合、エステル結合、グリコシド結合等の共有結合で結合し化合物X−Yを得ることができる。【0013】化合物X−Yを調製するにあたり、従来周知の操作により化学修飾されると抗菌活性を失うXの特定部位にYを結合させることが必要である。前記の各抗生物質において、抗菌性を失活できる部位は公知である。例えばカナマイシンはその構造式の炭素番号2’、2’’、3、3’、4’、6’のいずれかの部位を修飾すると抗菌活性を失う。また、クロラムフェニコールは、その構造式の炭素番号1あるいは3の部位を修飾すると抗菌活性を失う。[J.D.Davis, R.Rownd:Science,176,758,(1972)]【0014】こうして得た化合物X−Yを、例えば寒天培地の調製時にその組成物として添加しても良いし、あるいは、メタノール等の有機溶媒、精製水あるいはそれらの混合液に溶解して平板培地へ直接または濾紙などにしみこませて間接的に添加しても良い。検体から採取した菌を化合物X−Yを直接あるいは間接的に含ませた寒天培地上に常法により塗抹し、約37℃で18〜48時間程度培養する方法を例示することができる。目的とする菌以外の夾雑菌類が存在した場合、当該夾雑菌の酵素が基質物質と反応すると、失活していた抗菌性物質の活性が復活(発現)し、抗菌作用が働き、これに耐性が無い菌は増殖しない。目的の菌が耐性を有していれば目的とする菌だけが培養されて増殖するので、選択的に目的の菌を分離・検出することができる。また、抗菌性物質が夾雑菌のみならず目的とする菌が抗菌性物質に耐性が無い場合は、夾雑菌の特異酵素による化合物X−Yの分解で遊離した抗菌性物質が寒天を含む培地の中を拡散して目的とする菌の発育を阻害または抑制する可能性があるが、遊離した抗菌物質の作用により夾雑菌の当該酵素の産生を含む生理活動が停止するため、抗菌物質はある濃度より上昇せず、また、抗菌性物質の濃度はその移動距離が長ければ長いほど低下し目的とする菌の発育を阻害または抑制しないか、発育を阻害または抑制しても抗菌物質を遊離させた夾雑菌に比べればその作用は少ないと考えられる。夾雑菌と目的とする菌の間の距離が極端に狭い場合は目的とする菌も発育を阻害または抑制されるであろうが、平板培地上である程度の距離が確保されていれば発育を阻害または抑制されたとしても菌が発育しコロニーを形成できるため、目的とする菌だけが培養されて増殖したり、夾雑菌の発育が阻害または抑制されるので、選択的に目的の菌を分離・検出することができる。これは、本発明の重要な要件である化合物X−Yを平板培地に適用することで初めて可能となるものである。このような観点から、本発明に用いる抗菌物質として拡散能の低い抗菌物質を使用すれば、夾雑菌の酵素活性で遊離した当該抗菌物質が目的とする菌の発育を阻害または抑制する可能性を更に低くすることができる。【0015】上記の化合物X−Yを添加できる細菌培養用基礎培地としては、細菌培養用として汎用される公知のいかなる培地を使用してもよく、例えば普通寒天培地、トリプトソ−ヤ培地、ミュ−ラ−ヒントン培地、ハ−トインフュ−ジョン培地、ブレインハ−トインフュ−ジョン培地等を使用すればよい。これらの細菌培養用基礎培地は、必要により添加される成分としては周知のいかなる成分を添加してもよく、そのような成分として例えば抗生物質やビタミン類等が挙げられる。本発明の細菌培養用培地は、寒天を加えた寒天平板培地として製造される。例えば、X−Yという化合物を除く上記の各成分および培地の全重量に対して1〜2重量%の寒天と適当量の精製水を加えて高圧蒸気滅菌を行い、50〜60℃程度に冷却した後にX−Yという化合物の水溶液を無菌的に添加し、得られた培地を滅菌済みのシャ−レに分注し、冷却、固化させることにより製造することができる。また、冷却固化した後にX−Yという化合物の水溶液を上記培地表面に滴下し浸透させたり、濾紙等の吸水性のある担体に含ませた物をそのまま、あるいは乾燥させた物を上記培地表面に置くという方法で添加してもよい。また、各成分が予め含有された乾燥粉末培地として製造しておき、用時に調製してもよい。この時、細菌培養用培地に含有される化合物X−Yの配合量は、一般に培地全重量に対して0.0001〜15.0重量%、好ましくは2.5〜5.0重量%とすればよい。【0016】被検体としては、ヒトや家畜の血液、随液、糞便、尿等の全ての生体由来試料、食肉や卵等の食品、あるいは飲料水や生活環境由来の試料等が挙げられる。これらをそのまま、あるいは必要に応じて希釈、濃縮、ホモジナイズ、洗浄、ふき取り、濾過、磁気ビーズ等を用いた集菌等の行程を経た処理物(前処理)を用いることができる。【0017】【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。【実施例1】血清型の違いと抗菌作用の関係(A)試験菌の分離と同定出血性大腸菌感染症が疑われる患者の便を直接マッコンキーソルビトール寒天培地(SMAC:日水製薬)に塗沫し、37℃で18時間培養後、白色コロニーを釣菌した。これをトリプルシュガーアイアン寒天培地(TSI:ビービーエル)とリジンインドールモーティリティー寒天培地(LIM:栄研化学)に接種し、37℃で18時間培養後、大腸菌の性状を示した株について毒素産生性試験(大腸菌ベロトキシン検出用キット:デンカ生研)と血清凝集反応(病原大腸菌免疫血清「生研」:デンカ生研)を行った。その結果、毒素型はStx2単独で、血清型がO157:H7であることがわかった。また、念のため腸内細菌用同定キット(アピ20E:ビオメリュー)を用いて菌種を確認した結果、これらは大腸菌であったことことから、本試験菌は病原性大腸菌O157:H7と同定した。【0018】(B)分離・検出法上記の臨床材料より分離した病原性大腸菌O157:H7と同定済みの大腸菌実験室保存株O1:H7(JCM1649:理化学研究所微生物系統保存施設)をハートインフュージョン培地(ディフコ)に接種し、37℃で7時間培養した。その培養液1mlをハートインフージョン寒天培地(ディフコ)を用いて作製した平板培地に塗末した。次いで、抗菌性物質であるクロラムフェニコールに大腸菌の特異酵素β−D−グルクロニダーゼの基質グルクロン酸を修飾したクロラムフェニコール−グルクロニド(シグマ)の濃度が0、6.4、12.8、25.6、50.0、100.0mg/mlとなるように調製した各水溶液25μlを含むペーパーディスク(ディフコ、φ=6mm)をその上に載せて37℃で一夜培養し、生育阻止円の形成を観察した。結果を表1に示す。表中の「−」は陰性、「+」は陽性を意味する。【0019】【表1】【0020】病原性大腸菌O157:H7はβ―グルクロニダーゼを産生せずクロラムフェニコール−グルクロニドを分解できずクロラムフェニコールを遊離させなかったため生育阻止円は形成されなかったが、大腸菌O1:H7はβ―グルクロニダーゼを産生しクロラムフェニコール−グルクロニドを分解したためにクロラムフェニコールが遊離し生育阻止円を形成させたと考えられる。このクロラムフェニコール−グルクロニドは、血清型が異なる大腸菌に対する作用が異なっていた。つまり、この化合物を25.6mg/ml以上含む培地で病原性大腸菌O157:H7と大腸菌O1:H7が混存した試料を培養した場合、大腸菌O1:H7の発育が抑制されるために病原性大腸菌O157が選択的に培養できることを示唆している。【0021】【実施例2】夾雑菌存在下での本発明の効果(A)試験菌の分離と同定大腸菌 血清型O157:H7と大腸菌 血清型O1:H7(JCM1649)は実施例1のものを用いた。(B)実験方法市販牛ミンチ肉25gに病原性大腸菌O157:H7と大腸菌O1:H7の一夜培養菌液をそれぞれ105倍希釈液を0.5mlずつ接種し、増菌培地としてノボビオシン加モディファイエスケリキアコリ培地(N−mEC、メルク)を225ml加え、(各菌の終濃度はそれぞれ13.2cfu/ml、21.8cfu/mlであった。)ストマッカー処理後、37℃で18時間培養した。この菌液を白金耳で終濃度が25.6mg/ml(2.56重量%)になるようクロラムフェニコール−グルクロニド水溶液を無菌的に添加して調製したマッコンキー寒天培地(ディフコ)に画線塗抹し、37℃で一夜培養した。比較例として、クロラムフェニコール−グルクロニドを含まないマッコンキー寒天培地を用いて同様に操作した。そして赤色のコロニーを両培地から10ヶづつ選択し、スライドグラス上で病原大腸菌免疫血清「生研」(デンカ生研)を用いて凝集反応させ、病原性大腸菌O157:H7の検出率を基に両培地の分離能を比較した。結果を表2に示す。【0022】【表2】【0023】クロラムフェニコ−ルグルクロニドを含む培地では病原性大腸菌O157:H7が釣菌できた一方、これを含まない培地では釣菌できなかった。従って、本発明によれば夾雑菌の影響を受けずに目的の菌(病原性大腸菌O157:H7)を選択的に分離・検出する確率を高めることができた。【0024】【発明の効果】本発明によれば、目的とする菌(例えば病原性大腸菌O157)と種や血清型だけが異なるというように、性状が似ている夾雑菌が大多数を占める検体から少数の目的とする菌の選択・分離培養が可能となる。本発明においては、極めて特異性の高い化合物X−Yを適宜選択して使用することができるため、目的の菌(例えば病原性大腸菌O157)を迅速、簡便かつ高精度に分離・検出ができるという、格別なる効果を有する。 化合物X−Y(Xは、少なくとも目的の菌以外の菌類に殺菌性、抗菌性あるいは静菌性を有する物質、Yは目的の菌以外の菌類由来酵素が作用する基質であり、YはXが失活する部位に結合している)を含む平板培地上で菌を培養することを特徴とする、目的の菌を選択的に分離する方法。 前記Yが、グルクロン酸、ピログルタミン酸、リン酸、D−ガラクトース、D−グルクロン酸、カプリル酸、及びデオキシリボヌクレイン酸からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の分離方法。 前記Yがグルクロン酸であり、そして目的の菌が病原性大腸菌O157である、請求項1又は2に記載の分離方法。 Xが抗生物質であり、Yが糖類であることを特徴とする、請求項1に記載の分離方法。 化合物X−Y(Xは、少なくとも目的の菌以外の菌類に殺菌性、抗菌性あるいは静菌性を有する物質、Yは目的の菌以外の菌類由来酵素が作用する基質であり、YはXが失活する部位に結合している)を含むことを特徴とする、目的の菌を選択的に分離するための平板培地。


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