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タイトル:特許公報(B2)_免疫測定方法および免疫測定試薬
出願番号:1999359390
年次:2009
IPC分類:G01N 33/53,C12Q 1/42,G01N 33/543


特許情報キャッシュ

五十嵐 浩二 井上 益男 近藤 雅英 JP 4228095 特許公報(B2) 20081212 1999359390 19991217 免疫測定方法および免疫測定試薬 東ソー株式会社 000003300 五十嵐 浩二 井上 益男 近藤 雅英 20090225 G01N 33/53 20060101AFI20090205BHJP C12Q 1/42 20060101ALI20090205BHJP G01N 33/543 20060101ALI20090205BHJP JPG01N33/53 AC12Q1/42G01N33/543 501D G01N 33/53 C12Q 1/42 G01N 33/543 特開平11−125634(JP,A) 特開平04−080657(JP,A) 特公平06−102037(JP,B2) 特表平07−507871(JP,A) 9 2001174460 20010629 15 20061023 竹中 靖典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は低分子物質であるハプテンを免疫学的に測定する方法に関するものであり、抗ハプテン抗体を水不溶性担体に直接結合せず、抗体等を介して間接的に結合し又は結合することにより、標識抗免疫複合体抗体の担体への非特異的な結合を減少させて非特異的なシグナルを低減し、シグナル/ノイズ比(ハプテンに依存したシグナルとハプテンが非存在の場合に観察されるノイズシグナルの比)を向上したハプテン測定を行うための免疫測定方法等に関するものである。【0002】【従来の技術】低分子物質であるハプテンは、通常、競合法とよばれる免疫測定方法にて測定されている。競合法では、抗ハプテン抗体に対し、試料中のハプテンと酵素、化学発光物質或いは放射性同位元素で標識したハプテン(標識ハプテン)を競争的に結合させた後、結合した標識ハプテンの割合から前記試料中のハプテンの存在及び/又は存在量(濃度)を推定する。【0003】競合法では、抗ハプテン抗体の性質が測定結果に大きく影響を与える。例えば、抗ハプテン抗体が試料中に存在するハプテン類似物等と交差反応すると、正確なハプテンの測定は不可能である。このため、前記ハプテン類似体との交差反応性の低い抗ハプテン抗体の取得が必須となるが、このような抗体を取得するのは困難である。【0004】上記のような競合法による免疫測定における課題を解決し得る測定方法として、抗免疫複合体を用いたハプテンの疑似サンドイッチ免疫測定方法が提案されている(例えば特公平6−102037号公報、特許第2793587号参照)。【0005】【発明が解決しようとする課題】前記ハプテンの擬似サンドイッチ免疫測定方法は、抗ハプテン抗体とハプテンとの免疫複合体に対する対する抗体(抗免疫複合体抗体)を用いることにより達成されるものである。この測定では、水不溶性担体に結合した抗ハプテン抗体とハプテンとの間で免疫複合体を形成させ、形成された免疫複合体を免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)と反応させることにより担体上に標識を固定することからなる。【0006】上記のように抗免疫複合体抗体を用いることでハプテンの疑似サンドイッチ免疫測定が可能となるが、しかし、抗免疫複合体抗体は遊離の(免疫複合体を形成していない)抗ハプテン抗体との反応性を有しているため、なおも改善されるべき課題がある。【0007】すなわち、抗免疫複合体抗体とはいうものの、該抗体は遊離のハプテンや遊離の抗ハプテン抗体との反応性を有していないわけではなく、遊離のハプテンや遊離の抗ハプテン抗体との結合と比較した場合、免疫複合体との結合が極めて大きいというものである。このため特に、抗ハプテン抗体の担体への結合に際して何らかの理由によりハプテンとの結合能を失ってしまった場合には、ハプテンとは結合していないにもかかわらずに標識抗免疫複合体抗体と結合してノイズ、すなわちハプテンの存在に依存しないシグナルの原因となる。また、担体に結合した抗ハプテン抗体の量が試料中のハプテン量と比較して大過剰であると、余剰の抗ハプテン抗体が標識抗免疫複合体抗体と結合してしまい、結果的には前記同様にハプテンの存在に依存しないシグナルの原因となってしまうのである。【0008】そこで本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、抗免疫複合体抗体を用いるハプテンの疑似サンドイッチ免疫測定方法において、抗ハプテン抗体をハプテンと反応可能な状態で担体上に結合することで前記ノイズシグナルの低減を図ることにある。【0009】【課題を解決するための手段】前記目的を達成するためになされた本願請求項1の発明は、ハプテンの免疫測定方法に係り、ハプテンを、水不溶性担体に間接的に結合した抗ハプテン抗体及びハプテンと抗ハプテン抗体との免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)を用いて測定することを特徴とする。【0010】本願請求項2の発明は、前記請求項1の発明に係り、前記ハプテンがステロイドホルモン又は薬物であることを特徴とする。【0011】本願請求項3の発明は、前記請求項2の発明に係り、前記ハプテンがエストラジオールであることを特徴とする。【0012】本願請求項4の発明は、前記請求項1の発明に係り、前記抗ハプテン抗体が親和結合を形成する一対の物質の一方と結合し、前記水不溶性担体は前記一対の物質の他方と結合し、当該一対の物質の結合により抗ハプテン抗体は水不溶性担体に間接的に結合したことを特徴とする。【0013】本願請求項5の発明は、前記請求項4の発明に係り、前記抗ハプテン抗体と結合される親和結合を形成する一対の物質の一方がフルオレセイン、ビオチン又はペプチドであることを特徴とする。【0014】本願請求項6の発明は、前記請求項1の発明に係り、前記水不溶性担体には前記抗ハプテン抗体中のハプテンとの結合に関与しない部分と特異的に結合する物質が結合し、該物質の抗ハプテン抗体との結合により抗ハプテン抗体は水不溶性担体に間接的に結合したことを特徴とする。【0015】本願請求項7の発明は、前記抗ハプテン抗体中のハプテンとの結合に関与しない部分に特異的に結合する物質がプロテインA又は抗体であることを特徴とする。【0016】本願請求項8の発明はハプテンを測定するための試薬であって、水不溶性担体に間接的に結合した又は結合する抗ハプテン抗体及びハプテンと抗ハプテン抗体との免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)を含むことを特徴とする。【0017】そして本願請求項9の発明は、前記請求項8の発明に係り、エストラジオールを測定するための試薬であって、水不溶性担体に間接的に結合した又は結合する抗エストラジオール抗体及びエストラジオールと抗エストラジオール抗体との免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)を含むこと、更にはエストロン又はエストリオールとの交差反応性が1%以下であることを特徴とする。【0018】以下、本発明を更に詳細に説明する。【0019】本発明は、(1)親和結合を形成する一対の物質、又は、(2)抗ハプテン抗体中のハプテンとの結合に関与しない部分と特異的に結合する物質、のいずれかを用いることにより、抗ハプテン抗体を水不溶性担体に間接的に結合し又は結合することを特徴とする。【0020】水不溶性担体は、従来の免疫学的測定方法で使用されている多種多様の担体のうち、前記(1)の一方又は(2)の物質を直接結合し得る表面を提供し得れば特に制限なく使用できる。例えばスチレンやラテックス等の熱可塑性樹脂で製造された、ポリマー粒子又は板状の担体や、時には96穴マイクロタイタープレートや試験管等に代表される適当容量の反応容器の内壁自体を本願発明における水不溶性担体とすることもできる。また本願発明では、それ自体は前記物質を直接結合し得ない材料から製造された担体であっても、その表面を例えば適当な樹脂等でコーティングすることにより直接結合し得るように変換し得れば特に制限はない。また水不溶性担体は、例えばその内部に鉄やフェライト等の磁性物質を担持させ、外部から磁力を作用させることによって試料との混合を効率的に実施し得るようにすることもできる。【0021】水不溶性担体の大きさや形状には制限がなく、例えば粒子径が直径数百μm程度の比較的小さいものから、粒子径が直径1cm程度の比較的大きなものまで、任意に選択することができる。形状についても、前記した板状のものや粒子(球)状のもの、容器の内壁状のもの以外にも、楕円、錐状等、任意に選択することができる。【0022】水不溶性担体は、懸濁可能なものであっても懸濁不能なものであっても特に制限はなく、本願発明の免疫測定方法をいわゆる1ステップ方式で行うか2ステップ方式で行うか、等を考慮して適宜決定すれば良い。【0023】本願発明において測定対象とされるハプテンは、例えばテストステロン、エストラジオール、エストリオール、コルチゾール等のステロイドホルモンや、例えばジゴキシン等の薬物等に代表される低分子物質であって、マウス等の哺乳動物に投入することによってそれに対する抗体を誘導し得る物質である。【0024】本願発明において前記担体に間接的に結合し又は結合する抗ハプテン抗体は、前記ハプテンを免疫原として得られるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれかであるが、ハプテンとの反応性の均一さや均一な抗体の継続的製造が容易であることからモノクローナル抗体が特に好ましい。このような、モノクローナル抗体を含む抗ハプテン抗体の製造は従来既知の方法に従うことができる。ポリクローナル抗体を使用する場合には、事前に精製操作を行っておくことが好ましい。なお本願方法に関する開示において、抗ハプテン抗体が担体と「結合した」とは、抗体ハプテン抗体が担体に間接的に結合した状態でハプテン等との免疫反応が生じる場合はもちろん、抗ハプテン抗体が当初は遊離の状態で存在し、免疫反応の過程で担体に間接的に結合するか場合をも包合する意味である。【0025】水不溶性担体と抗ハプテン抗体との間接的結合は、以下(a)又は(b)のようにして達成される;(a)親和結合を形成する一対の物質の一方を抗ハプテン抗体と結合しておき、該一対の物質の他方を水不溶性担体に結合しておく、(b)抗ハプテン抗体中のハプテンとの結合に関与しない部分と特異的に結合する物質を水不溶性担体に結合しておく。【0026】上記(a)の一対の物質としては、例えばアジビンとビオチン、フルオレセインと抗フルオレセイン抗体、ルミノールと抗ルミノール抗体、ペプチドと該ペプチドのレセプター、ペプチドと該ペプチドに対する抗体、そして相補的な2本の核酸等を例示できる。これら一対の物質の一方を抗ハプテン抗体と結合し、他方を担体と結合することにより、最終的には抗ハプテン抗体を該一対の物質を介して担体と間接的に結合した状態とすることができる。抗ハプテン抗体と一対の物質の一方との結合は、例えば抗体中のアミノ基等を利用して化学的に結合すれば良い。また担体と一対の物質の他方との結合も、担体表面の適当な官能基を利用して化学的に結合すれば良い。【0027】上記(b)の物質としては、例えば抗体やプロテインA、プロテインGを例示できる。より具体的には、例えば抗ハプテン抗体がマウスIgGであれば水不溶性担体に抗マウスIgG−Fc領域特異的抗体を結合しておくことが例示できる。これら物質を担体に結合しておくことにより、最終的には抗ハプテン抗体を該物質を介して担体と間接的に結合した状態とすることができる。担体と物質との結合は、例えば物理的な吸着や前記(a)の場合と同様の化学的な結合等を利用すれば良い。【0028】本願発明には、標識抗免疫複合体抗体と抗ハプテン抗体とがハプテン存在・非存在にかかわりなく結合してしまい、結果的にハプテンに依存しないシグナル(ノイズ)が発生し、測定感度が低下することを防止するという効果があるが、標識抗免疫複合体抗体が(抗ハプテン抗体と結合することなく)単に水不溶性担体に吸着等してしまうのを防止するうえで、担体には、前記一対の物質の一方等を結合した後に通常のブロッキング処理を施しておくことが好ましい。このブロッキング処理は、牛血清アルブミン(BSA)等、検出しようとするハプテンと特異的に結合しない蛋白質等の溶液を用い、この溶液に担体を一定時間浸漬する等して実施できる。【0029】本願発明で使用する抗免疫複合体抗体は、例えば特公平6−102037号公報や特許第2793587号の開示に基づき、免疫原としてハプテンと抗ハプテン抗体との免疫複合体を用いることで製造できる。抗免疫複合体抗体はモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であっても良いが、均一性が高く、かつ、いったんハイブリドーマを確立した後は同一の抗体を継続的に製造し得ることからモノクローナル抗体であることが好ましい。標識は、酵素、化学発光物質、蛍光物質、放射性同位元素などの通常の免疫測定で使用されるものであれば良く、特に制限はない。ここで標識は、抗免疫複合体抗体と化学的に結合しても良いし、例えば抗免疫複合体抗体と特異的に結合する抗体と結合しておき、該抗体と抗免疫複合体抗体とを反応させることによって間接的に結合させても良い。後者の場合、以下に説明する本願発明の具体的な操作において、B/F分離を行って遊離の抗免疫複合体抗体を分離した後、分離された抗免疫複合体抗体又は水不溶性担体上に形成された免疫複合体中の抗免疫複合体抗体に標識を間接結合し、標識の測定を行うことも可能である。【0030】以下、本願発明の測定方法について具体的な操作例を説明する。なお説明では、抗ハプテン抗体が免疫反応の過程で水不溶性担体と間接的に結合する例を示すが、これは、前記したように免疫反応に供する以前に担体と混合して間接的に結合しておいても良い。【0031】まず親和結合を形成する一対の物質の一方を抗ハプテン抗体と化学的に結合させる。また前記一対の物質の他方を水不溶性担体と化学的に結合させた後、ブロッキング処理を行う。次に、水不溶性担体及び抗ハプテン抗体を、測定対象であるハプテンを含有すると思われる試料及び標識抗免疫複合体抗体と混合し、免疫反応を生じさせると共に水不溶性担体と抗ハプテン抗体を間接的に結合させ、担体上に抗ハプテン抗体・ハプテン・標識抗免疫複合体抗体からなる免疫複合体を形成させる。これら各成分の混合は、試料の不存在下で抗ハプテン抗体と標識抗免疫複合体抗体が接触しないようにすることが好ましく、このためには前記以外に、(i)まず水不溶性担体、抗ハプテン抗体及び試料を混合し、次いでこの混合物に標識抗免疫複合体抗体を混合する、(ii)まず抗ハプテン抗体及び試料を混合し、次いでこの混合物に水不溶性担体と標識抗免疫複合体抗体を混合する、等することが例示できる。【0032】測定に供する試料は、測定対象であるハプテンの含有が疑われるものであれば制限はなく、血清等の生体液を例示できるが、この生体液はヒト由来のものに制限されず、例えばヒト以外の動物に由来する生体液であっても良い。【0033】上記免疫反応は、例えば室温下で2〜3時間放置することで充分に生じさせることができるが、放置時間は主として測定しようとするハプテンと抗ハプテン抗体間の親和力、及び、ハプテンと抗ハプテン抗体からなる免疫複合体と標識抗免疫複合体抗体間の親和力により変動し、一般的に該親和力が高いほど短い時間とすることができる。また水不溶性担体を攪拌するなどして混合液を攪拌できれば、免疫反応を促進することによりより短時間化することもできる。【0034】免疫反応に充分な時間放置した混合液について、いわゆるB/F分離を行う。ここで免疫反応に充分な時間とは、必ずしも免疫反応が平衡状態に達するのに要する時間をいうわけではなく、免疫反応が平衡状態に達してなくとも、反応の結果形成される免疫複合体の量に再現性があれば良い。B/F分離は、詳しくは混合液中に遊離状態で存在する標識抗免疫複合体抗体を、水不溶性担体上に形成された免疫複合体から分離する操作である。この操作は、混合液のうちの液相成分、即ち水不溶性担体以外の成分を吸引除去することで容易に実施できる。これ以外にも、例えば遠心分離操作を行って上清を除去したり、フィルターを使用して通過成分を除去したりする操作によってもB/F分離は実施し得る。前者は、水不溶性担体として水に非懸濁性のものを使用した場合に容易に実施可能であり、後者は懸濁性・非懸濁性のいずれの水不溶性担体を使用した場合にも実施可能である。また更には、水不溶性担体に磁性物質を担持しておき、磁石を利用して水不溶性担体を混合液から分離したり、磁石によって水不溶性担体を容器の底部に固定しつつ上清をデカンテーションすることも例示できる。【0035】B/F分離操作後には、分離された標識抗免疫複合体抗体又は水不溶性担体上に形成された免疫複合体中の標識抗免疫複合体抗体のいずれかについて、その標識を測定する。標識が酵素であれば酵素基質を添加して基質分解物の増加速度を測定等すれば良いし、標識が蛍光物質であれば蛍光測定を行えば良い。そしてこの測定結果を、既知量(既知濃度)の測定しようとするハプテンを含有する標準液について同一条件下で同一操作を行った結果に基づいて作成される標準曲線と比較等することにより、試料中に測定対象としたハプテンが存在しているか、更にはその存在量を知ることができる。【0036】以上の説明は、いわゆるB/F分離操作を1度行う1ステップ法として本願発明を実施した例であるが、本願発明はB/F分離を2回行ういわゆる2ステップ法として実施することも可能である。【0037】【発明の実施の形態】以下に、本願発明を更に詳細に説明するために発明の実施形態である実施例を記載するが、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0038】実施例1 抗免疫複合体抗体の調製エストラジオール(Sigma社製、Cat.No.E8875)とマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体とを予め免疫反応させて結合させた免疫複合体を抗原とし、フロイント・アジュバンドと共にBalb/cマウスに免役した。最初の免疫から15日、35日、97日後に追加免疫を行い、最終免疫を行った3日後に常法に従ってモノクローナル抗体産生能を有するハイブリドーマを樹立した。【0039】樹立したハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体について結合試験を行い、前記マウス抗エストラジオール抗体に対してエストラジオール存在下で反応性を示し、エストラジオール非存在下で反応性を示さないクローンを選択した。選択されたクローンが産生する抗免疫複合体抗体は、プロテインA固定化担体で精製後Fab化し、SMCC(Succinimidyl−4−[N−maleimidomethyl]−cyclohexane−1−carboxylate)を用いてアルカリ性フォスファターゼと結合して標識抗免疫複合体抗体とした。【0040】実施例2水不溶性担体(内部にフェライトを練り込んだ粒子径約1.5mmのEVA製)に抗フルオレセインモノクローナル抗体を100ng/担体となるよう物理的に吸着させ、BSAを用いてブロッキング処理を行った。一方、実施例1で使用したマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体を6−(fluorescein−5−carboxamido)hexanoic acid succinimidyl esterと混合してフルオレセインと結合させた。なお前記水不溶性担体については、1個当たり約100ngの蛋白質を物理的に吸着可能であることを事前に確認した。【0041】磁力透過性の容器(容量1.2ml)に12個の担体を入れた後、各75、150、300ngのフルオレセイン結合マウス抗エストラジオールモノクローナル抗体と150ngの標識抗免疫複合体抗体含有液(5%水溶性ゼラチン−トリス緩衝液、pH7.5)を加え、凍結乾燥した。【0042】上記のようにして調製した試薬に0ng/lのエストラジオールを含む血清(ゼロ濃度血清)又は1000ng/lのエストラジオールを含む血清を100μl加え、37℃で10分間、水不溶性担体を磁石を用いて運動させ、混合液を攪拌した状態で免疫反応させた。反応後、B/F分離操作を行って遊離の標識抗免疫複合体抗体を分離・除去し、アルカリ性フォスファターゼの基質である4メチルウンベリフェリルリン酸を加え、該基質添加後20秒から295秒までの酵素反応分解物(4メチルウンベリフェロン)の生成速度(nM/秒)を測定した。なお以上の操作は、市販の全自動免疫測定装置(東ソー(株)製、商品名AIA−21)とその専用試薬を用いて実施した。【0043】比較のため、各300、600、1200ngのマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体を前記と同一の担体12個と混合し、担体に物理的に吸着させ、BSAを用いてブロッキング処理を行った。この12個の担体を前記と同一の容器に入れた後、150ngの標識抗免疫複合体抗体含有液(5%水溶性ゼラチン−トリス緩衝液、pH7.5)を加え、凍結乾燥した。【0044】上記のようにして調製した比較試薬に0ng/lのエストラジオールを含む血清(ゼロ濃度血清)又は1000ng/lのエストラジオールを含む血清を100μl加え、前記同様にして4メチルウンベリフェロンの生成速度を測定した。【0045】本願発明による測定結果を表1に、比較のための試薬を用いた測定結果を表2に、それぞれ示す。比較の結果を示す表2からは、水不溶性担体に結合したマウス抗エストラジオール抗体の量に比例して0ng/l血清、1000ng/l血清とも測定値は上昇し、シグナル/ノイズ比は1200ngのマウス抗エストラジオール抗体を結合したときに最大(28.1)となることが分かる。これに対して本願発明の結果を示す表1では、マウス抗エストラジオール抗体の結合量を低減しても、1000ng/l血清の測定結果が飛躍的に大きくなり、表2に示した結果と比較してシグナル/ノイズ比は7倍に向上したことが分かる。【0046】【表1】【0047】【表2】【0048】実施例3担体に間接的に結合させたマウス抗エストラジオール抗体の量を300ngとし、容器に加えた標識抗免疫複合体抗体量をそれぞれ75、150又は300ngとした以外は実施例2における本願発明の試薬と同様の操作で試薬を製造し、同様の測定に供した。【0049】比較のため、担体に吸着させたマウス抗エストラジオール抗体の量を100ngとし、容器に加えた標識抗免疫複合体抗体量をそれぞれ75、150又は300ngとした以外は実施例2における比較のための試薬と同様の操作で試薬を製造し、同様の測定に供した。【0050】本願発明による測定結果を表3に、比較のための試薬を用いた測定結果を表4に、それぞれ示す。比較の結果を示す表4からは、標識抗免疫複合体抗体量を増加するにしたがって0ng/l血清及び1000ng/l血清の測定値は上昇したが、実施例2における比較のための試薬を用いた結果からみてシグナル/ノイズ比の大幅な改善は観察されず、約30で一定であった。これに対して本願発明の結果を示す表3でも、標識抗免疫複合体抗体量を増加するにしたがって0ng/l血清及び1000ng/l血清の測定値は上昇したが、シグナル/ノイズ比は平均値で217となり、比較用の試薬を用いた場合に比べて良好であった。【0051】【表3】【0052】【表4】【0053】実施例4担体に間接的に結合させたマウス抗エストラジオール抗体の量及び容器に加えた標識抗免疫複合体抗体量をそれぞれ285ngとした以外は実施例2における本願発明の試薬と同様の操作で試薬を製造し、エストラジオール濃度が既知の血清6種類(濃度;0、22、62、99、493、1040ng/l)を同様の操作で3回ずつ(ゼロ濃度血清は10回)測定した。結果を表5に示す。【0054】測定結果を3次回帰させて図1に示す検量線を得た。ゼロ濃度血清測定値+(2×標準偏差)を図1の検量線から求めた結果、最小検出感度(MDC)は1.5ng/lであった。【0055】【表5】【0056】実施例5実施例4で製造した本願発明の試薬を用いて、エストロン又はエストリオールを含む、エストラジオールゼロ濃度血清を前記同様の操作で測定した。結果を表6に示す。【0057】表6からは、本願発明の免疫測定試薬のエストロン又はエストリオールとの交差反応性は1%以下であることが分かる。【0058】【表6】【0059】実施例6市販の試薬(VECTOR社製、商品名;NHS−Biotin)を用いてマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体にビオチンを結合した。市販のプレート(NUNK社製、商品名;Black well)にそれぞれエストラジオール濃度が0、5又は10ng/lの血清50μlと前記のようにしてビオチンを結合したマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体溶液50μl(7ng)を加え、37℃にて10分間免疫反応させた。反応後、実施例1で調製した標識抗免疫複合体抗体溶液50μl(10ng)を加えて37℃で更に5分間反応させた。【0060】反応後、ストレプトアビジンを結合した水不溶性担体(Dynal社製、商品名;Streptavidindynabeads)を30μl(担体重量で50μg)加えて37℃で5分間反応させ、ストレプトアビジンとビオチンの結合を介してマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体を間接的に結合した。洗浄液(0.15M NaCl、10mM Tris−HCl、1mM MgCl2、0.05%(w/w)Tween20及び0.05%(w/w)NaN3を含む、pH8.0の溶液)を用いてB/F分離操作後、市販の化学発光基質(Tropix社製、商品名;CSPD Emerald II)を加え、検出装置(BERTHOLD社製、LB96V)により基質を添加してから6分間の発光量をカウントした。【0061】図2にエストラジオール量と発光量カウントの結果を示す。図2の結果から求めたMDCは約1.1ng/lであった。【0062】実施例7エストラジオール濃度が0又は10ng/lの血清50μl、ビオチンを結合したマウス抗エストラジオールモノクローナル抗体溶液50μl(7ng)及び標識抗免疫複合体抗体溶液50μl(10ng)を市販のプレート(NUNK社製、商品名;Black well)に一度に加え、37℃で5分間反応させた以外は実施例6と同様の操作を行って基質を添加してから6分間の発光量をカウントした。【0063】図3にエストラジオール量と発光量カウントの結果を示す。図2の結果から求めたMDCは約1.8ng/lであった。【0064】【発明の効果】本願発明では、抗ハプテン抗体を水不溶性担体に間接的に結合させることにより、抗ハプテン抗体をハプテンと反応可能な状態で担体上に結合することが可能となる。この結果、ハプテンの測定に有効な抗ハプテン抗体量を自由に制御可能となり、不要な抗ハプテン抗体の使用を抑制することができる。この結果、使用する試薬量を低減できるという効果以外に、標識抗免疫複合体抗体がハプテンと結合していない(過剰の)抗ハプテンと結合し、ノイズシグナルを発生することも抑制できる。【0065】また抗ハプテン抗体をハプテンと反応可能な状態で担体上に結合することが可能な本願発明では、標識抗免疫複合体抗体がハプテンとは無関係に抗ハプテンと結合した結果生じるノイズシグナルを抑制することにつながり、最終的にはシグナル/ノイズ比の向上を図ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例4の結果に基づいて作成した検量線である。【図2】図2は、実施例6の結果を示す図である。【図3】図3は、実施例7の結果を示す図である。 ハプテンを、水不溶性担体に間接的に結合した抗ハプテン抗体及びハプテンと抗ハプテン抗体との免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)を用いて測定することを特徴とする、免疫測定方法。 前記ハプテンはステロイドホルモン又は薬物である、請求項1の免疫測定方法。 前記ハプテンはエストラジオールである、請求項2の免疫測定方法。 前記抗ハプテン抗体は親和結合を形成する一対の物質の一方と結合し、前記水不溶性担体は前記一対の物質の他方と結合し、当該一対の物質の結合により抗ハプテン抗体は水不溶性担体に間接的に結合した、請求項1の免疫測定方法。 前記抗ハプテン抗体と結合される親和結合を形成する一対の物質の一方はフルオレセイン、ルミノール、ビオチン又はペプチドである、請求項4の免疫測定方法。 前記水不溶性担体には、前記抗ハプテン抗体中のハプテンとの結合に関与しない部分と特異的に結合する物質が結合し、該物質の抗ハプテン抗体との結合により抗ハプテン抗体は水不溶性担体に間接的に結合した、請求項1の免疫測定方法。 前記抗ハプテン抗体中のハプテンとの結合に関与しない部分に特異的に結合する物質はプロテインA、プロテインG又は抗体である、請求項6の免疫測定方法。 ハプテンを測定するための試薬であって、水不溶性担体に間接的に結合した抗ハプテン抗体及びハプテンと抗ハプテン抗体との免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)を含むことを特徴とする試薬。 エストラジオールを測定するための試薬であって、水不溶性担体に間接的に結合した抗エストラジオール抗体及びエストラジオールと抗エストラジオール抗体との免疫複合体に対する標識した抗体(標識抗免疫複合体抗体)を含むことを特徴とし、エストロン又はエストリオールとの交差反応性が1%以下である請求項8の試薬。


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