タイトル: | 特許公報(B2)_芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法 |
出願番号: | 1999344033 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 37/60,B01J 21/06,C07C 39/08,C07B 61/00 |
元山 吉夫 猪木 哲 諫山 滋 JP 4056187 特許公報(B2) 20071221 1999344033 19991203 芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法 三井化学株式会社 000005887 元山 吉夫 猪木 哲 諫山 滋 20080305 C07C 37/60 20060101AFI20080214BHJP B01J 21/06 20060101ALI20080214BHJP C07C 39/08 20060101ALI20080214BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080214BHJP JPC07C37/60B01J21/06 XC07C39/08C07B61/00 300 C07C 37/60 C07C 39/08 特開2001−009291(JP,A) 特開平01−149744(JP,A) 特開平05−170684(JP,A) 5 2001158756 20010612 5 20040528 松本 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は芳香族ジヒドロキシ化合物の製造法、詳しくはフェノール類を過酸化水素でヒドロキシル化し、対応する芳香族ジヒドロキシ化合物を製造する方法に関する。本発明の方法で得られる芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えばハイドロキノンやカテコールなどであって、種々の有機合成中間体又は原料物質として有用であり、還元剤、ゴム薬、染料、医薬、農薬、重合禁止剤、酸化抑制剤等の分野に利用される。【0002】【従来の技術】フェノール類を過酸化水素を用いてヒドロキシル化する方法には、古くから2価の鉄イオンの存在下に反応させる方法 [Nature, 165, 401(1950)]、またはフッ化水素酸を用いる方法[J. Org. Chem., 35, 4028 (1970)]等が知られている。これらの方法は、触媒が均一の為、反応生成物から触媒を分離し、目的物を単離するのが煩雑であったり、腐食性の高い酸の後処理に塩基が必要などの問題があった。【0003】その後、反応系から触媒を容易に分離できる不均一系の触媒、たとえば結晶性チタノシリケートを用いる方法が提案された[EP314582、特開平2−298350、特開平4−66546]。これらの方法において、MFI構造の結晶性チタノシリケートを用いる方法が記載されており、反応後の生成物から単に触媒を物理的に分離すれば良く、工業的には有利な方法である。しかしながら、いずれの場合もハイドロキノンとカテコールがほぼ等量生成し、かつ、この二つの化合物以外の不明物の生成によりフェノールを基準とする選択率が低い問題点が有った。【0004】更に、ハイドロキノンの選択率を改善する方法として、特開平5−170684号公報に、溶媒としてジオキサンと水の混合物を用いる技術が報告されている。しかし、過酸化水素基準のハイドロキノンの選択率は66%と向上するものの、カテコールの選択率は9%で、2つを合わせた合計選択率は73%であり、我々が追試した結果ではフェノール基準の選択率はハイドロキノンが71%、カテコールは10%であり、ハイドロキノンとカテコールの合計選択率は81%と工業的に満足できるものではない。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、フェノール類を過酸化水素を用いてヒドロキシル化する際に、上記の欠点のない製造方法、具体的には、ハイドロキノン類とカテコール類の合計選択率を改善さりた芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法を提供する。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、結晶性チタノシリケートの存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させることにより対応する芳香族ジヒドロキシ化合物を製造するに際し、ハイドロキノン類及びカテコール類の合計選択率を向上させる方法を鋭意検討した結果、結晶性チタノシリケート及び脂肪族ポリエーテル化合物の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させる方法を見出し、本発明を完成するに至った。【0007】すなわち、本発明は、[1]結晶性チタノシリケート及び脂肪族ポリエーテル化合物の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法であり、[2]結晶性チタノシリケート、脂肪族ポリエーテル化合物及び水の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法であり、[3]脂肪族ポリエーテル化合物と水との質量比が6/4から8/2である[2]に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法であり、[4]脂肪族ポリエーテル化合物が、エチレングリコールジアルキルエーテルである[1]から[3]に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法であり、[5]脂肪族ポリエーテル化合物が、エチレングリコールジメチルエーテルである[1]から[3]に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法である。【0008】【発明の実施の形態】本発明で用いるフェノール類とは、無置換のフェノール及び置換フェノールを意味する。ここで置換フェノールとは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1から6の直鎖または分枝アルキル基あるいはシクロアルキル基で置換されたアルキルフェノールを意味し、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノールが例示されるが特に、フェノールが好ましい。尚、フェノール類の2位と6位の両方に置換値を有している場合には、生成物はハイドロキノン誘導体のみとなる。【0009】本発明で用いる結晶性チタノシリケートの組成は(SiO2)x・(TiO2)(1-x)で示される構造のものをさす。この場合x/(1-x)の値の範囲は、5〜1000、好ましくは10〜500のものが用いられる。その製造法としては、US 4,410,501号公報、特開平4−66546号公報に記載されているようにケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドを4級アンモニウム塩などの存在下、水熱合成する方法が一般的である。用いる4級アンモニウム塩がテトラプロピルアンモニウム塩の場合、得られる結晶性チタノシリケートがMFI構造となり、好適に使用される。またMFI型チタノシリケートは、(SiO2)x・(TiO2)(1-x)が所定の範囲のものであれば、市販されているものを用いても差し支えない。【0010】結晶性チタノシリケート触媒の使用量は反応混合物に対して、0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲である。これより少ない場合は、反応が完結するための時間が長くなり、生産性が低下するので好ましくない。これより多い場合は、生産性が向上せず、経済的でない。【0011】本発明で用いられる脂肪族ポリエーテル類としては、エチレングリコールジアルキルエーテルが好ましく、具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテルを挙げることができる。特にその中でも、エチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。【0012】この脂肪族ポリエーテル化合物の使用量としては、原料であるフェノール類に対して質量比(脂肪族ポリエーテル化合物/フェノール類)で、1/100〜1/100の範囲、好ましくは10/100〜80/100の範囲が特に好ましい。この範囲よりも小さい場合、十分な添加効果が見られず、また大きい場合脂肪族ポリエーテルの回収量が増えるため経済的に好ましくない。【0013】本発明で用いられる脂肪族ポリエーテル類は水との混合物で使用することが好ましい。脂肪族ポリエーテル類と水との質量比(水/脂肪族ポリエーテル類)は、5/5から9/1の範囲が好ましく、特に6/4から8/2の範囲が好ましい。【0014】反応温度は、30℃〜130℃の範囲、好ましくは40℃〜100℃の範囲である。この範囲以外の温度でも反応は進行するが、生産性、過酸化水素基準の2価フェノール類の選択性、収率の向上の観点から上記範囲が好ましい。【0015】また本反応は、回分式で行っても良く、連続的に反応を行っても良い。連続的に行う場合は、懸濁式の均一混合槽で行なっても良く、固定床流通式のプラグフロー形式で行っても良い。また反応生成物をリサイクルし、再度反応原料として用いても良い。【0016】このような形式では過酸化水素をフェノール類に対して、モル比で0.5以下、特に0.3以下にすることが好ましい。また、用いる過酸化水素の濃度は特に限定しないが、通常の30%濃度の水溶液を用いても良いし、さらに高濃度の過酸化水素水をそのまま、あるいは反応系において不活性な溶媒で希釈して用いても良い。希釈に用いる溶媒としては、エチレングリコールジメチルエーテルなどの脂肪族ポリエーテル化合物、水などが挙げられる。【0017】【実施例】以下に具体例によってさらに本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1冷却器、温度計、滴下ロート、及びマグネチックスタラーチップを備えた内容積100mlの3つ口フラスコに特開平4−66546号公報に記載の方法で調整したチタノシリケート(TS−1)触媒1.3g、フェノール13g、エチレングリコールジメチルエーテル7.0g、及び水3.0gを仕込み、スターラーで攪拌しながら水浴中で70℃に加熱した。ここに、30%過酸化水素水3.0gを滴下ロートから1.5時間かけて滴下し、そのまま0.5時間保持した。反応液を冷却後、触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、また、残存フェノールと生成物をGCで定量した。【0018】その結果、フェノールの転化率は16%、過酸化水素の転化率は99%であった。ハイドロキノンとカテコールの選択率はそれぞれ、62%、30%(フェノール基準)であり、合計選択率は92%であった。【0019】比較例1エチレングリコールと水の混合物の代わりに水10gを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、フェノールの転化率は16.8%、過酸化水素の転化率はほぼ100%であった。ハイドロキノン及びカテコールの選択率はそれぞれ51%、33%となり、合計選択率は84%であった。【0020】比較例2エチレングリコールと水の混合物の代わりにジオキサンと水をそれぞれ4gと6g使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、フェノールの転化率は18.4%、過酸化水素の転化率はほぼ100%であった。ハイドロキノン及びカテコールの選択率はそれぞれ71%、10%となり、合計選択率は81%であった。【0021】【発明の効果】結晶性チタノシリケートを用いて、フェノール類を過酸化水素と反応させることにより対応する芳香族ジヒドロキシ化合物を製造するに際し、脂肪族ポリエーテル化合物の存在下で行うことにより、ハイドロキノン類及びカテコール類の合計選択率を向上させることができ、原料を無用な廃棄物にすることを回避でき有効利用が可能となる。 親油化されていない結晶性チタノシリケート及び脂肪族ポリエーテル化合物の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。 親油化されていない結晶性チタノシリケート、脂肪族ポリエーテル化合物及び水の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。 脂肪族ポリエーテル化合物と水との質量比が6/4から8/2である請求項2に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。 脂肪族ポリエーテル化合物が、エチレングリコールジアルキルエーテルである請求項1から3に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。 脂肪族ポリエーテル化合物が、エチレングリコールジメチルエーテルである請求項1から3に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。