生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法
出願番号:1999337427
年次:2010
IPC分類:C07D 309/32,B01J 31/24,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

宮野 壮太郎 服部 徹太郎 鈴木 雄高 板井 松治 JP 4552245 特許公報(B2) 20100723 1999337427 19991129 4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法 チッソ株式会社 000002071 宮野 壮太郎 服部 徹太郎 鈴木 雄高 板井 松治 20100929 C07D 309/32 20060101AFI20100909BHJP B01J 31/24 20060101ALI20100909BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100909BHJP JPC07D309/32B01J31/24 XC07B61/00 300 C07D 309/32 B01J 31/24 C07B 61/00 CA/CASREACT/REGISTRY(STN) 特開平11−322736(JP,A) 米国特許第02478388(US,A) Young, Frank G.,The reaction of ketene with unsaturated ketones,Journal of the American Chemical Society,1949年,Vol.71,p.1346-8 Bosch, J.,Reaction of ketene with α,β-unsaturated ketones: synthesis of hexen-5-olides. I,Anales de Quimica, Serie C: Quimica Organica y Bioquimica,1982年,Vol.78,No.2,p.228-31 Stevenson, Robert,Synthesis of (±)-parasorbic acid and (±)-massoilactone from Meldrum's acid,Journal of Natural Products,1988年,Vol.51,No.6,p.1215-19 3 2001151766 20010605 7 20060801 安藤 倫世 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医薬、農薬、香料、染料などの合成原料として有用な4−不飽和δ−ラクトン類を選択性良く製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】δ−ラクトンの合成に関する報告はあまり多くないが、例えば4−不飽和δ−ラクトン類の一種であるイソパラソルビン酸(3,6−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン)の合成法として、クロトンアルデヒドにメルドラム酸を作用させる方法(J.Nat.Prod.51,6,1215−9(1988))、L−ラムノースを出発物質とする合成法(Carbohydr.Res.(1984),132(2),C1−C4)などが報告されている。しかしながら、4−不飽和δ−ラクトンの収率はどちらも非常に低いものであり、到底工業的に利用できるものではない。【0003】また、飽和アルデヒド(R−CHO)とケテンの反応によるβ―ラクトンの合成は古くから知られており、下記の式で表されるβ−ラクトンが得られることは周知の事実である。【化2】例えば特開昭44−44383には、テトラヒドロフランを溶媒とし三フッ化硼素を触媒として、アセトアルデヒドとケテンを反応させるとβ−ブチロラクトンが得られることが記載されており、米国特許US2580714には、エチルエーテルを溶媒としゼオライトを触媒として、飽和アルデヒドとケテンを反応させるとβ−ラクトンが容易に合成されることが記載されている。【0004】また米国特許US2478388には、α,β−不飽和アルデヒド(R3−CH=CR4−CHO)とケテンを反応させると、主生成物として下記の化3で表されるβ―ラクトンが、また副生成物として化4で表される5−不飽和δ−ラクトンが得られることが記載されている。【化3】【化4】【0005】また、(J.Mol.Structure(Theochem),109(1984)293−303)にも、α,β−不飽和アルデヒドとケテンを反応させるとβ―ラクトンが生成すると記載され、更にJ.O.C.,Vol.35,No.7,1970には、酢酸亜鉛などの有機酸金属塩触媒を用いてα,β−不飽和アルデヒドとケテンを反応させると、対応するβ―ラクトンは生成するものの、β―ラクトンは非常に不安定であり、直ちに開環重合してポリエステルになることが記載されている。しかしながら、これらのどの文献にもα,β−不飽和アルデヒドとケテンを反応させて4−不飽和δ−ラクトンが得られることは記載されていない。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、4−不飽和δ−ラクトン類を効率よく製造する方法を提供することであり、このラクトンから加水分解・脱水によって容易に2,4−不飽和カルボン酸に導くことができる。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、不飽和アルデヒドとケテン(CH2=CO)を反応させて得られるβ−ラクトンを、4−不飽和δ−ラクトン類に異性化する方法について研究を進めた結果、触媒としてルイス酸錯体化合物を使用すると、生成したβ―ラクトンの一部はポリエステルになるものの、大部分は分子内で異性化を起こして一般式(1)で表される4−不飽和δ−ラクトン類となることを見いだし、本発明を完成させた。【0008】ルイス酸錯体触媒による分子内異性化の反応式を下記に示す。【化5】【0009】即ち、本発明は下記のような構成を有する。(1)下記の一般式R1−CH=CR2−CHO(式中、R1は炭素数1〜5の分岐してもよいアルキル基、またはフェニル基を示し、R2は水素、炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基、またはフェニル基を示す。)で表されるα,β−不飽和アルデヒドとケテンを、ルイス酸錯体化合物を触媒として反応させることを特徴とする一般式(1)【化6】(式中、R1およびR2は前記の一般式におけるものと同じ意味を示す。)で表される4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法。【0010】(2)ルイス酸錯体化合物が一般式(2)[MLnX2]Y2 (2)(式中、Mはパラジウム、ロジウム、ルテニウムまたは白金を示し;Lは三級ホスフィン化合物を示し;Xは炭素数1〜5の低級アルキルニトリル、ベンゾニトリル、フタロニトリル、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトンを示し;Yはハロゲン原子、BF4、ClO4、CF3SO3、PF6またはBPh4(Phはフェニル基を示す。)を示し;nは、Lが単座ホスフィン配位子である場合は2を、二座ホスフィン配位子である場合は1を示す。)で表される化合物であることを特徴とする、前記(1)項に記載の4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法。【0011】(3)一般式(2)におけるMがパラジウムであることを特徴とする、前記(2)項に記載の4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法。【0012】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明で使用されるα,β−不飽和アルデヒドとしては、例えば、クロトンアルデヒド、2−メチル−クロトンアルデヒド、2−エチル−クロトンアルデヒド、2−ペンテナール、2−メチル−2−ペンテナール、2−エチル−2−ペンテナール、2−ヘキセナール、2−メチル−2−ヘキセナール、2−エチル−2−ヘキセナール、2−ヘプテナール、2−メチル−2−ヘプテナール、2−エチル−2−ヘプテナール、2−オクテナール、2−メチル−2−オクテナール、2−エチル−2−オクテナール、シンナムアルデヒドなどが挙げられる。【0013】本発明ではルイス酸錯体化合物を触媒として使用することが好ましく、具体的には前記の一般式(2)で表される化合物を示すことができる。この式中のLで示される三級ホスフィン化合物は,単座ホスフィン配位子、二座ホスフィン配位子のいずれでもよく、単座ホスフィン配位子としては、例えばトリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィンやトリフェニルホスフィン、トリ(トリル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン等が挙げられる。二座ホスフィン配位子としては、例えばdppe(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノエタン))、dppp(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノプロパン))、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノブタン))、dppf(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン))、BINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)、T−BINAP(2,2’−ビス(ジトリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)等が挙げられる。これらのうち、二座ホスフィン配位子が好ましい。【0014】触媒の使用量は、4−不飽和δ−ラクトン類の収率を考慮すると、使用するα,β−不飽和アルデヒドに対して0.01モル%〜100モル%であることが好ましいが、0.1モル%〜10モル%が更に好ましい。反応させるケテンの使用量は、α,β−不飽和アルデヒドに対してモル比で1〜5倍程度とすることが好ましく、1.5〜3倍程度とすることが特に好ましい。反応温度は0℃〜50℃が好ましく、20〜40℃が更に好ましい。なお、本発明の製造法においては無溶媒でも反応が進行するが、溶媒を用いる場合には、触媒を溶解し不活性なものであれば特に問題なく使用できる。中でもハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、塩化メチレン、クロロホルム、エチレンジクロリドなどの低分子量の溶剤が更に好ましい。【0015】【実施例】以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1(イソパラソルビン酸の合成)窒素気流下、二口フラスコに0.05mmolの[Pd(dppb)(PhCN)2](BF4)2を入れた後、塩化メチレン200mlを加えて触媒を溶解し、クロトンアルデヒド1mmolを加えた。この溶液に、室温にてクロトンアルデヒドに対して2.5当量のケテンガスを0.5mmol/minの流量で加えた。ケテンガスを加えた後1時間攪拌して、1N塩酸10mlを加え反応を停止した。反応終了液を塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾過し溶媒を留去した後で、ガスクロマトグラフィーによる内部標準で分析したところ、イソパラソルビン酸(3,6−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン)の収率は81%であり、カラムクロマトグラフィーを用いて単離した後の収率は70%であった。【0016】実施例2(3,6−ジヒドロ−6−フェニル−2H−ピラン−2−オンの合成)窒素気流下、二口フラスコに0.05mmolの[Pd(dppb)(PhCN)2] (BF4)2を入れた後、塩化メチレン200mlを加え触媒を溶解し、シンナムアルデヒド1mmolを加えた。この溶液に、室温にてシンナムアルデヒドに対して2.5当量のケテンガスを0.5mmol/minの流量で加えた。ケテンガスを加えた後1時間攪拌して、1N塩酸10mlを加えて反応を停止した。反応終了液を塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾過し溶媒を留去した後で、ガスクロマトグラフィーによる内部標準で分析したところ、δ−ラクトン(3,6−ジヒドロ−6−フェニル−2H−ピラン−2−オン)の収率は86%であり、カラムクロマトグラフィーを用いて単離した後の収率は77%であった。【0017】実施例3(5−エチル−3,6−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オンの合成)窒素気流下、二口フラスコに0.05mmolの[Pd(dppb)(PhCN)2](BF4)2を入れた後、塩化メチレン200mlを加え触媒を溶解し、2−エチルクロトンアルデヒド1.1mmolを加えた。この溶液に、室温にて2−エチルクロトンアルデヒドに対して2.5当量のケテンガスを0.5mmol/minの流量で加えた。ケテンガスを加えた後1時間攪拌して、1N塩酸10mlを加えて反応を停止した。反応終了液を塩化メチレンで抽出を行い、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾過し溶媒を留去した後で、ガスクロマトグラフィーによる内部標準で分析したところ、δ−ラクトン(5−エチル−3,6−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン)の収率は75%であり、カラムクロマトグラフィーを用いて単離した後の収率は66%であった。【0018】実施例4(3,6−ジヒドロ−6−ペンチル−2H−ピラン−2−オンの合成)窒素気流下、二口フラスコに0.05mmolの[Pd(dppb)(PhCN)2](BF4)2を入れた後、塩化メチレン200mlを加え触媒を溶解し、 trans−2−オクテナール1mmolを加えた。この溶液に、室温にてtrans−2−オクテナールに対して2.5当量のケテンガスを、0.5mmol/minの流量で加えた。ケテンガスを加えた後1時間攪拌して、1N塩酸10mlを加えて反応を停止した。反応終了液を塩化メチレンで抽出を行い、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾過し溶媒を留去した後で、ガスクロマトグラフィーによる内部標準で分析したところ、δ−ラクトン(3,6−ジヒドロ−6−ペンチル−2H−ピラン−2−オン)の収率は67%であり、カラムクロマトグラフィーを用いて単離した後の収率は58%であった。【0019】比較例1(イソパラソルビン酸の合成)窒素気流下、二口ナスフラスコにクロトンアルデヒド12.3g(17.5モル)、メルドラム酸10.5g(7.6モル)、モレキュラーシーブス4A(2mmビーズ)10g、ピリジン4ml、酢酸9ml、ベンゼン200mlを入れ、2日間還流させた。反応液に水を加えてエーテルで抽出を行い、有機相を飽和炭酸水素ナトリイム水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾過し溶媒を留去した後で、ガスクロマトグラフィーによる内部標準で分析したところ、イソパラソルビン酸(3,6−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン)の収率は15%であり、カラムクロマトグラフィーを用いて単離した後の収率は9%であった。【0020】【発明の効果】本発明により、α、β−不飽和アルデヒドとケテンから4−不飽和δ−ラクトン類を選択的に効率良く製造することが可能になった。4−不飽和δ−ラクトン類は、医薬、農薬、香料、染料などの合成原料として広く使われる有用な化合物であり、例えば、加水分解した後に脱水すると、容易に2,4−不飽和カルボン酸とすることができる。 下記の一般式R1−CH=CR2−CHO(式中、R1は炭素数1〜5の分岐してもよいアルキル基、またはフェニル基を示し、R2は水素、炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基、またはフェニル基を示す。)で表されるα,β−不飽和アルデヒドとケテンを、ルイス酸錯体化合物を触媒として反応させることを特徴とする一般式(1)(式中、R1およびR2は前記の一般式におけるものと同じ意味を示す。)で表される4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法。 ルイス酸錯体化合物が一般式(2)[MLnX2]Y2 (2)(式中、Mはパラジウム、ロジウム、ルテニウムまたは白金を示し;Lは三級ホスフィン化合物を示し;Xは炭素数1〜5の低級アルキルニトリル、ベンゾニトリル、フタロニトリル、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトンを示し;Yはハロゲン原子、BF4、ClO4、CF3SO3、PF6またはBPh4(Phはフェニル基を示す。)を示し;nは、Lが単座ホスフィン配位子である場合は2を、二座ホスフィン配位子である場合は1を示す。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法。 一般式(2)におけるMがパラジウムであることを特徴とする、請求項2に記載の4−不飽和δ−ラクトン類の製造方法。


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