生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_シトラス濃縮アロマの製造方法及び得られた香気成分を用いた香気組成物、飲料等の調製方法
出願番号:1999331820
年次:2004
IPC分類:7,C11B9/02,A23L1/222,A23L2/38,A61K7/46


特許情報キャッシュ

川又 伸治 鈴木 紀生 野崎 成 長野 克己 石井 潯 JP 3560519 特許公報(B2) 20040604 1999331820 19991122 シトラス濃縮アロマの製造方法及び得られた香気成分を用いた香気組成物、飲料等の調製方法 高砂香料工業株式会社 000169466 渡辺 一雄 100076761 川又 伸治 鈴木 紀生 野崎 成 長野 克己 石井 潯 20040902 7 C11B9/02 A23L1/222 A23L2/38 A61K7/46 JP C11B9/02 A23L1/222 A23L2/38 A61K7/46 345 7 C11B 9/02 A23L 1/222 A23L 2/38 A61K 7/46 345 JICSTファイル(JOIS) 特開昭59−146562(JP,A) 特開平08−000215(JP,A) 特公平07−022646(JP,B2) ジャパンフードサイエンス,1992年,第31巻,第2号,第42−48頁 Lebensm Wiss Technol,1989年,Vol.22,No.6,p.324−328 香料,1978年,第123巻,第81−85頁 4 2001152180 20010605 12 20020218 近藤 政克 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シトラス果汁を原料として特定の処理をして得られるシトラス濃縮アロマの製造方法並びにこの方法で得られたシトラス濃縮アロマを用いる香料組成物及び飲料等の調製方法に関する。【0002】【従来の技術】通常市販されているシトラス濃縮アロマは、果汁をTASTE(Thermally Accelerated Short Time Evaporator)濃縮装置に付属する香気濃縮装置を用いて500倍強度品まで濃縮されたアルコール含有量8乃至15重量%のものである。また、濃縮アロマの高濃縮品も市販されており、これらは蒸留装置の精留能力を高めコンデンサーに液体アンモニアを流す等して低沸点部留分のロスを防いでいるが、完全には補集できないばかりか、濃縮度を上げるために濃縮作業に長時間を要していた(J.Agric.Food Chem. 1990, 38, 2181参照)。【0003】果汁の香気については水と分離する有機溶媒で抽出して香気成分を得ることも知られていたがコストの面で余り利用されていなかった。一方、低沸点部を効率よく補集し、フレーバーの加熱による変化をふせぐため、向流接触装置(Spinning Cone Column 、以下SCCと略記する)による香気物質の分離とマストランスファー装置に関して、“1st Coference of Food Engineering, 1991, AlChE, Chicago, Illinois ”に説明されている。又、SCCを用いてトマト、リンゴ、ナシ等の野菜、果物を処理して低フレーバーの高粘度成分を得ることがWO90/02493号明細書に開示されている。【0004】SCCのカラムの設計については、“I.Chem. E. Symp. Series, A128, 167−179, 1992 に詳細に記載されている。また、香気等の揮発成分の回収で、発酵した酵母培養液より低温で揮発成分(エタノール)を回収するのにも、用いられている(Process Biochemistry, Vol.31, No. 7, pp.651−658,1995 参照) 。【0005】果汁から香気成分を除去する方法については、特公平7−22646号公報に開示されており、本発明にも用いられているSCCを用いて果汁から芳香を除去する装置は、それらの除去操作を塔内でおこない、風味を除去された果汁は精製及び濾過してから、風味成分を劣化することなしに濃縮する方法であり、果汁を直接SCCに導入してオレンジの場合は流量5,000L/時、運転温度65℃、運転圧力60kPa、回収フレーバー流量 75L/時、全果汁比1:50で行われていた。【0006】アップルとレッドベリーフルーツの香気成分の回収で遊離及び結合亜硫酸の含有量のレベルを5ppm以下のレベルに下げているという報告もある(食品と容器,Vol.39,No.7,pp.406−408,1998 )。フレーバーテック社の香気成分の回収では(米国特許第4,996,945号明細書参照)、ビール、アップル、オレンジ、グレープ、アプリコット、ストロベリーで優れた香気成分の回収率を出している。【0007】【発明が解決しようとする課題】従来のように有機溶媒で抽出すると、この有機溶剤が余分な成分まで抽出してしまうこととコスト的に大変高価な手段となり、水溶性の低分子の成分を十分抽出できない問題がある。シトラスアロマの濃縮の重要な点は、低沸点部を如何に効率良く捕集し、フレーバー加熱による変化を防ぐかにある。【0008】これらを目的として、当初は逆浸透膜を使用し濃縮を検討したが、出発原料の7倍が限度であり、これ以上濃縮をしてゆくと低沸点部が失われる。これに代わるものとして減圧膜濃縮も検討したが、膜の洗浄が難しく、シトラスオイルの酸化臭とされるα−ターピネオールが膜に付着して完全に除去出来なかった。これらを解決する目的でSCCを検討したが果汁を直接SCCで処理すると、混合状態で回収された過剰のエッセンスオイルが濃縮アロマに溶解し、本発明の目的とする上記水溶性低分子から成るシトラス特有な香気成分を得ることができなかった。【0009】本発明は、これらのシトラス特有な香気成分を取得できるシトラスアロマの濃縮方法の提供と、得られた成分を飲料や香気組成物に添加することにより調合品の完成度をたかめ、一万倍の希釈率で用いてもシトラス特有の香気を保持できる香気組成物を調製する方法を提供するものである。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記問題を解決すべく鋭意研究を行っていたところ、果汁を特定の前処理をしてそれを上記のSCCを特定の条件下でうまく利用することにより、単に回収フレーバーを回収するのみでなく、上記問題を解決する香気成分を得ることができた。すなわち、果汁の濃縮過程で回収された香気成分を含む水溶液を特定の倍強度、アルコール含有量の特定重量%まで濃縮する。この濃縮された芳香回収液を濾過して乳化を破壊しエッセンスオイルを浮遊分離させて取り除き、その水層部のアロマ成分を向流接触装置(SCC)に導入してカラム内の温度とストリップ比を特定にして特定の減圧度の条件で処理することを特徴とするシトラス濃縮アロマの製造方法であり、また、得られたシトラス濃縮アロマを用いて調整する香料組成物の調製方法および飲料等の調製方法である。【0011】すなわち、本発明は、以下に示すとおりのものである。(1) 果汁を連続減圧濃縮して果汁のもつ香気成分の100乃至150倍強度、アルコール含有量1乃至7重量%まで濃縮し、この濃縮したシトラス回収液に濾過助剤を加えて濾過しエッセンスオイルを浮遊分離させて取り除き、さらに、このエッセンスオイルを取り除いたシトラス回収液を向流接触装置(SCC)に導入して、カラム内の温度40乃至80℃、ストリップ比1乃至10%、運転圧力40乃至0.2kPa の条件で処理することを特徴とするシトラス濃縮アロマの製造方法。(2) ストリップ比が2乃至8%である前記第1項記載のシトラス濃縮アロマの製造方法。(3) 前記第1項乃至第2項の方法で得られたシトラス濃縮アロマを、香料に5乃至100重量%添加することからなる香気組成物の調製方法。(4) 前記第1項乃至第3項の方法で得られたシトラス濃縮アロマ又は香気組成物を、飲料、冷菓・デザート類および焼き菓子から選ばれた1種に0.01乃至5重量%添加することからなる飲料等の調製方法。【0012】以下に、本発明をさらに詳しく説明する。本発明で用いるシトラス芳香回収液は、オレンジ、グレープフルーツ、レモン等のシトラス果汁濃縮の過程で得られるシトラス特有の香気留分であり、その濃縮度は、原料果汁の種類、品種、生産地や収穫時などにより精油成分含量が異なるので多少変動しなくてはならないが、およそ果汁に由来するエッセンスオイルが十分分離されている事と経済的価格であることが重要で果汁のもつ香気成分の約100乃至150倍強度、アルコール含有量1乃至7重量%まで濃縮する必要がある。【0013】果汁の濃縮に使用する連続減圧装置は、特に特別な装置である必要はなく従来から用いられている連続減圧濃縮装置で十分である。例えば、TASTEの濃縮装置では、濃縮装置の第ニ段のチューブネストの温度が96℃以下、運転圧力が38.5kPa、加熱時間は2分間程度で濃縮することができる。【0014】シトラス芳香回収液からエッセンスオイルを分離するには、次のとおり2次に分けて分離を実施するのが好ましい。まず、1次の分離として、連続減圧濃縮によって香気成分の100乃至150倍強度、アルコール含有量1乃至7重量%まで濃縮されたシトラス回収液を、例えば4℃にコントロールされたコールドウオールタンクにいれ、このように処理することで浮遊してくるエッセンスオイルを分離する。次いで、2次の分離として、第1次の分離後のシトラス回収液(水層)を、冷暗所に約2乃至4日間靜置して水層中に残存するエッセンスオイルの分離性能を促した後(この靜置によって、乳化状態にある1部のエッセンスオイルが浮遊してくる。)、さらに、乳化状態にある大部分のエッセンスオイルを除去するため、これにセライト535、セライト545(いずれもジョンズマンビルズ社の商品名)等の珪藻土を、濾過助剤として、シトラス回収液のおよそ0.1乃至1%重量部加えて、攪拌下に多板式濾過機にフィードして乳化を破壊し浮遊するエッセンスオイルを分離する。このような2次にわたる処理により、シトラス回収液からほとんど大部分のエッセンスオイルを除去することができる。【0015】このような2次にわたる分離によりエッセンスオイルを除去した精製されたシトラス回収液(アロマ)を、すなわち、アロマ中のエッセンスオイルを微量の一定濃度以下にして、SCC装置に導入する。SCC装置は、シトラス回収香気の特徴であるアセトアルデヒドが凝縮液からの揮散による損失を防ぐために充分冷却する必要がある。【0016】精製されたシトラス回収液のフィード量はおよそ4,500乃至6,000L/時である。カラム内の温度は40乃至80℃、好ましくは40乃至60℃であり、50℃近傍が特に好ましい。ストリップ比は1乃至10%、好ましくは2乃至8%、4%近傍が特に好ましい。アロマがさらにフレッシュジュース様となる。運転圧力は40乃至0.2kPa、好ましくは5kPa近傍である。冷媒流量は、アロマの特徴成分であるアセトアルデヒドが真空排気中に逃げず、製品温度を10℃以下に保つため、約4,000乃至6,000kg/時、好ましくは5,000kg/時近傍である。【0017】上記の減圧度は、原料の種類やアルコールの量、ストリップ比等の条件で変えることができる。また、処理時間、即ち、加熱器からカラム本体下部までの濃縮に要する通過時間はほぼ1〜4分間であり、好ましくは2分間程度である。この通過時間はカラム内が定常状態に達してからフィードする量とスプリット比やどの程度の濃度のものをどの程度(量)必要とするかに関係し決定される。【0018】得られるシトラス濃縮アロマのより好ましいものは、イモ臭と言われる加熱臭がなく、ナチュラル感、果汁感、主にアセトアルデヒドおよびグリーンノートに起因するフレッシュ感をもっているものである。そのアルコール含有量は15乃至40重量%、好ましくは20乃至30重量%であり、比重は0.9924乃至0.9641であり、屈折率は1.3344乃至1.3356のものである。【0019】上記した製造方法によって得られたシトラス濃縮アロマは、香料に配合することができる。シトラス濃縮アロマの香料への配合量は、一般にはこの特徴ある匂いを壊さない範囲であり、香料に対しては5乃至100重量%である。添加量が多すぎると効果があがらなくなり、また添加量が少ないと添加の効果が得られない。ここでいう香料とは調合香料のことである。【0020】また、得られたシトラス濃縮アロマまたはこのシトラス濃縮アロマを配合した香料組成物は、飲料、酒類、冷菓・デザート類および焼き菓子等に配合することができる。シトラス濃縮アロマまたは上記した調製方法によって得られた香料組成物の飲料、酒類、冷菓・デザート類および焼き菓子等への添加量は、当該飲料等に対して0.01乃至5重量%であり、この範囲外では天然的な香味を付与することができない。上記と同じである。シトラス濃縮アロマを適用して効果のある飲料等としては、例えば、シトラス含有飲料としての紅茶飲料(無糖、有糖)、乳飲料、果汁飲料、、栄養ドリンク飲料、炭酸飲料(無糖、有糖)、スポーツドリンク(無糖、有糖)、コーラ飲料、ニアウォーター(無糖、有糖)などの飲料、カクテル等の酒類、プリン、ゼリー、ヨーグルト、シャーベット、アイスキャンデー、ガム、飴、タブレット等の冷菓・デザート類、クッキー等の焼き菓子、等がある。又、本発明の方法で得られたトラス濃縮アロマまたはこのシトラス濃縮アロマを配合した香料組成物は香粧品香料としても使用可能である。【0021】【発明の効果】本発明により、広範囲の飲料及び食品に適用できかつ品質に優れ新鮮な青果を想起させる特徴的な香気を持つシトラス濃縮アロマを大量に製造できる。本発明で得られる香気成分は、使用した製品に対して、従来のシトラス香気とは異なる特徴的なフレッシュな香りを付与できる優れた効果ある組成物を調製することが出来る。【0022】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。【0023】1. 実施例で使用した向流接触装置(SCC装置)、測定機器および測定方法は以下のとおりのものである。1) SCC装置:M 10000 フレーバーテック社製 カラム内径1000mm×高さ4000mm2)屈折率の測定精密アッペ屈折計 NAR−3T (ATAGO)3)エタノール含有量の測定ガスクロマトグラフィーヒューレットパッカード社 HP 5890カラムTC−WAX(GL Science)(30m ×0.53mmID, 1.0μmdf)検知器: TCD 温度: 45℃ から210 ℃(10分保持)、昇温5℃/ 分注入量: 2.0 μl 、スプリツト比: 25:1 、注入温度: 230 ℃、検出器温度: 250 ℃4)香気成分の含有量の測定ガスクロマトグラフィーヒューレッドパッカード HP5890カラム:BC−WAX(GL Science)(30m×0.25mmID 1.0μmdf)検出器:FID 温度:40℃(4分保持)〜(1℃/分)〜50℃〜(3℃/分)〜80℃〜(15℃/分)〜230℃(10分保持)注入量: 4.0 μl 、スプリツト比: 100:1 、注入温度:240 ℃検出器温度: 240 ℃、定量法:2−ブタノールを用いた内標定量法【0024】2. 向流接触装置(SCC:M10000)の操作方法とともに、SCC運転開始フローとカラム温度、ストリップ比の調整について、図1および図2を参照して簡単に説明する。使用原料の精油を分離した後、希望製造量に見合った量のシトラス回収香気成分を攪拌機付きSCCフィードタンク(1)に仕込み、良く攪拌し原料が均一になるようにしておく。サンプリングチェック、粘度測定等を行う。先ず、市水を市水タンク(1’)からSCCカラム(6)に流し、フレーバー回収条件の設定を行う。運転操作盤上でフィード量・熱交換器出口の温度、カラムの塔頂温度・塔底温度を設定する。次に真空バルブ開度を調整し、SCCカラム(6)全体の温度(カラムの塔頂温度・塔底温度)を決定する。ストリツプ比の決定は、カラム(6)への蒸気フィルター(5)からの注入蒸気量により調整し、第2コンデンサー(10)より排出される市水量・時間を測定しフィード量に一致した希望ストリップ比が得られていることを確認する。設定条件に見合ったストリップ量が得られたら、市水より原料液に切り換える。次いで、SCC装置のSCCフィードタンク(1)から原料液を、SCCカラム(6)に流し、市水の場合と同様、フレーバー回収条件の設定を行う。原料排液がSCCカラム(6)の排出口より流出し、第二コンデンサー(10)、コンデンセート排出ポンプ(14)経由でフレーバーを含む溶液が出始めたら再度時間あたりの流出量を確認し標準サンプルとの香気を比較確認し(ストリップ比が正確)フレーバーの回収を始める。この時排液の香気の確認も行う。30分程度の間隔でフィード量・熱交換器出口の温度、カラムの塔頂温度・塔底温度、真空度、ストリップ比をチェック記録し運転終了まで行う。運転終了後、直ちにSCCの洗浄を行う。特に第2コンデンサーから第2コンデンセイト排出ポンプまでの系に残臭が無くなるまで充分洗浄する。【0025】【実施例1】100乃至150倍強度のオレンジ芳香回収液の調製オレンジ果汁(フロリダ産(サンピュアー製))をTASTE濃縮装置に27,272kg/hrで流し濃縮装置の第二チューブネストの温度を95℃、運転圧力38.5kPaで濃縮した。香気成分として150倍強度のオレンジ芳香回収液が、TASTE濃縮装置より360kg/hrで流出した。【0026】【実施例2】100乃至150倍強度の濃縮グレープフルーツ芳香回収液の調製実施例1のオレンジ果汁をグレープフルーツ果汁(フロリダ産(サンピュアー製))27,272Kg/hrに代えた他は実施例1と同様に処理して、150倍強度の濃縮グレープフルーツ芳香回収液98kg/hrを流出させた。【0027】【実施例3】芳香回収液よりエッセンスオイルの分離実施例1で得られたオレンジ芳香回収液を、20,000Lの貯蔵タンク(4℃)にいれ2昼夜にわたって上記芳香回収液を循環冷却することで、まず、過剰のエッセンスオイルを浮遊分離した。ついで、このような1次分離にひきつづき次ぎの2次分離を行った。まず、この2次分離の運転操作に先立って予備操作として、エッセンスオイルを1次分離した後の芳香回収液を700kgだけ、別に備えつけたタンクに入れた。そして、この別のタンクにセライト535(ジョンズマンビルズ社商品名)10kgを加え撹拌しながらこの白濁した混合物を濾過機にプレコートした。すなわち、濾過機にはセライト535が徐々に堆積されるとともに精製された芳香回収液が濾液として排出され、そして、濾液を連続的に上記別のタンクにフィードバックして循環させる操作を15分程度行った。プレコート後の上記別のタンク中の混合物は最初は白濁していたが徐々に透明に近い状態となった。このような予備操作の終了後、上記別のタンクに更にセライトを5kg加え、そして、20,000Lの貯蔵タンクから上記別のタンクにオレンジ芳香回収液を連続してフィードしつつ、セライト535で既にプレコートされた濾過機で連続濾過し、濾過されて出てきた濾液(精製された芳香回収液)を、前記予備操作の場合とは異なり、今度は、連続的にSCCフィードタンクに導入した。濾過後の芳香回収液の性状:アルデヒド値 6762(HBS法、J. AGR. FOOD CHEM. VOL.18, NO.5, pp908−910 参照。)なお、濾過前のアルデヒド値は8217(HBS法)であった。同様に、実施例2で得られたグレープフルーツ芳香回収液についても、上記のオレンジ芳香回収液と同様の処理を行って、精製された芳香回収液を得た。実施例3で得られた芳香回収液の性状を、比較のため、実施例1、2で得られた芳香回収液の性状とともに表1に示す。【0028】【実施例4】SCC装置による処理前記した図2のフローに従い、SCCフィードタンクに、上記実施例3で得られた濾過後のオレンジ芳香回収液及び濾過後のグレープフルーツ芳香回収液を用いて、2,800L/時で導入して、カラム頂温度55℃、カラム底温度57℃、ストリップ比を4%でSCC処理を行った。約3時間の運転で9,500Lの原料を処理し、それぞれ380Lのシトラス濃縮アロマが得られた。得られたそれぞれの成分の性状を以下の表1に示す。表中、比重はd2020 、屈折率は nD20の数値である。【0029】【表1】【0030】【試験例1】実施例4の内部標準を用いたシトラス濃縮アロマの香気成分含量を濾過後の芳香回収液の成分含量と比較して次の表に示す。なお、単位は、エタノール、水およびメタノールまでは重量%であり、アセトアルデヒド以下はmg/Kgである。「−」は検出されなかったことを示す。【0031】【0032】【0033】上記表は、ストリップ比4%で濃縮した場合の原料である濾過後の芳香回収液と製品である濃縮アロマの成分比較であるが、オレンジでみると、香料として不要なメタノール、エタノールの濃縮率がそれぞれ4.6倍、5.9倍であるのに対して、果汁感やフレッシュ感を与えるアセトアルデヒド、エチルブチレートの濃縮率はそれぞれ、15.8倍、14.0倍であり、好ましい成分が沸点に関わらず選択的に濃縮されていることがわかる。グレープフルーツに関しても同様の結果が示された。【0034】【官能試験例1】実施例4で得られたシトラス濃縮アロマを100%濃縮還元果汁に賦香し、加熱殺菌処理をおこなった後、その官能特性を専門パネラー(フレーバーリスト経験年数5及至30年男性8名)により、香りの強さ(香り強度)、香調および果汁由来のイモ臭のマスキング効果について評価した。その結果を市販品と対比して下記の表2に示す。【0035】【表2】【0036】【実施例5】実施例4で得られたオレンジ濃縮アロマを用いて下記の処方でオレンジフレーバーを調製した。【0037】なお、上記の他に、グレープフルーツフレーバーについても、同様に調製した。【0038】【実施例6】実施例4で得られたオレンジ濃縮アロマを用いて下記の処方で無果汁飲料(無糖)を調製した。【0039】【0040】【実施例7】実施例4で得られたオレンジ濃縮アロマを用いて下記の処方で30%果汁飲料(有糖)を調製した。【0041】【0042】【官能試験例2】実施例5、実施例6および実施例7で調製したフレーバー及び飲料を前記と同様の専門パネラーにより評価した。その結果、オレンジ濃縮アロマはフレーバー素材として充分な香り強度を有しており、その官能特性であるフレッシュ感、果汁感、ナチュラル感といった要素により、これを使用したフレーバーは、既存のタイプとは異なった、新鮮な果物を連想させる有用なフレーバーとなることがわかった。飲料についても濃縮アロマの特徴がよく現れており、フレッシュ感、果汁感、ナチュラル感に優れていた。また果汁飲料においては、果汁独特のイモ臭のマスキング効果があることが認められた。【0043】上記の結果から、本発明の組成物は、フレッシュ感、果汁感、ナチュラル感を調合品、飲料に付与することができ、従来の香気組成物とは大きく異なることが分かる。【図面の簡単な説明】【図1】向流接触装置(SCC)の概略図である。【図2】向流接触装置(SCC)による回収開始に至るまでの運転開始のフローを示す説明図である。【符号の説明】1.SCCフィードタンク1’.市水タンク2.SCCフィードポンプ3.熱再生交換器4.熱交換器5.蒸気フィルター6.SCCカラム7.固定コーン8.回転コーン9.コンデンサー110.コンデンサー211.排出ポンプ12.冷却器13.サイクロン14.コンデンセート排出ポンプ215.真空ポンプ 果汁を連続減圧濃縮して果汁のもつ香気成分の100乃至150倍強度、アルコール含有量1乃至7重量%まで濃縮し、この濃縮したシトラス回収液に濾過助剤を加えて濾過しエッセンスオイルを浮遊分離させて取り除き、さらに、このエッセンスオイルを取り除いたシトラス回収液を向流接触装置(SCC)に導入して、カラム内の温度40乃至80℃、ストリップ比1乃至10%、運転圧力40乃至0.2kPaの条件で処理することを特徴とするシトラス濃縮アロマの製造方法。 ストリップ比が2乃至8%である請求項1記載のシトラス濃縮アロマの製造方法。 請求項1乃至2の方法で得られたシトラス濃縮アロマを、香料に5乃至100重量%添加することからなる香気組成物の調製方法。 請求項1乃至3の方法で得られたシトラス濃縮アロマ又は香気組成物を、飲料、冷菓・デザート類および焼き菓子から選ばれた1種に0.01乃至5重量%添加することからなる飲料等の調製方法。


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