タイトル: | 特許公報(B2)_琥珀成分含有剤の製造方法 |
出願番号: | 1999313906 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61K 35/10,C09K 15/34,A01N 63/00,A61Q 19/00,A61Q 19/02 |
澤口 希能 澤口 能一 中尾 和朗 JP 4421718 特許公報(B2) 20091211 1999313906 19991104 琥珀成分含有剤の製造方法 澤口 希能 596033956 澤口 能一 599155741 森 義明 100082429 澤口 希能 澤口 能一 中尾 和朗 20100224 A61K 8/97 20060101AFI20100204BHJP A61K 35/10 20060101ALI20100204BHJP C09K 15/34 20060101ALI20100204BHJP A01N 63/00 20060101ALI20100204BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20100204BHJP A61Q 19/02 20060101ALI20100204BHJP JPA61K8/97A61K35/10C09K15/34A01N63/00A61Q19/00A61Q19/02 A61K 8/00〜8/99 A61Q 1/00〜99/00 B01B 1/00〜1/08 B01D 1/00〜8/00 B01D 11/00〜12/00 A61K 35/78〜35/84 CA/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平11−080784(JP,A) 特開平11−286431(JP,A) 特開平09−188620(JP,A) 国際公開第97/046205(WO,A1) 特開平09−248138(JP,A) 特開平09−067259(JP,A) 特開平01−240146(JP,A) 特開平11−333203(JP,A) 特開昭63−274402(JP,A) 特開昭61−119140(JP,A) 特開平09−296361(JP,A) 特開平09−227334(JP,A) 特開平09−220278(JP,A) 3 2001131048 20010515 7 20060622 馳平 裕美 【0001】【産業上の利用分野】 本発明は琥珀を原料とし、その水製エキス或いはその琥珀酢を有効成分とする琥珀成分含有剤の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】琥珀は主にマツ属植物の樹脂(主にC40H6404)の化石で、有機物鉱物の代表でコハク酸を含む。非晶質で団塊或いは滴状の形状をしており、貝殻状断面を呈し脆い。モース硬さ2〜3、密度1.05〜1.10g/cm3で、透明乃至半透明であり、脂肪光沢のある黄色(=コハク色)をしており、白色や赤色を帯びる事がある。そして、紫外線で蛍光を発し、摩擦すると負に帯電して微粉を吸い付ける。熱すると120〜150℃て軟化し、250℃〜300℃で融解する。エタノールやジエチルエーテル或いはベンゼンに少量溶ける。現在では、装飾工芸品、宝石、絶縁材料程度の用途か削りカスをお香にするなどの用途しかない。特に、虫類や果実、葉などの完全化石を含む物は装飾工芸品や宝石として特に珍重されている。【0003】このような従来装飾工芸品や宝石など極めて限定されていた用途しか持たなかった琥珀に対し、発明者らは琥珀の油溶性エキス(例えば、外部エネルギを加えて琥珀を溶融し、これによって得た琥珀の組成成分から有機溶剤によって有機溶剤可溶性成分を抽出除去し、その残渣に外部エネルギを加えて溶融して得た残渣成分を有効成分とするもの)に付いて検討し、琥珀に対して新たな用途を開拓した。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は前回の油溶性エキスのみならず、別異の手法で琥珀の新たな用途を探ろうとするもので、本発明では琥珀の『水溶性エキス』、即ち『水製エキス』や『乾留物』に着目し、抗菌、抗酸化、消臭、手・肌荒れ、抗炎症、美白或いは発毛促進等に関してより優れた新たな効果を見い出そうとするものである。そして、これらをそのまま或いは油脂類や界面活性剤と共に各種製品に配合する事で、『水製エキス』や『乾留物』の有する有効性をそのまま利用し或いは油脂類や界面活性剤の持つ種々の問題点を解消する事で琥珀の有用性をより高める事をその解決課題とする。【0005】【課題を解決するための手段】 『請求項1』の抗菌剤、消臭剤、抗酸化剤及び皮膚外用剤として用いられる琥珀成分含有剤の製造方法は「琥珀をオートクレーブ内で加圧水蒸気にて加熱抽出し、冷却後常圧に戻して溜まった水層を減圧濃縮して得た水製エキスを有効成分とする」事を特徴とし、『請求項2』の抗菌剤、消臭剤、抗酸化剤及び皮膚外用剤として用いられる琥珀成分含有剤の製造方法は「琥珀をオートクレーブ内でn−ブタノールと水を混合した溶媒の加圧蒸気にて加熱抽出し、冷却後常圧に戻して溜まった水層を加熱濃縮して得た水製エキスを有効成分とする」事を特徴とする。また、『請求項3』の抗菌剤、消臭剤、抗酸化剤及び皮膚外用剤として用いられる琥珀成分含有剤の製造方法は「琥珀の300メッシュパス粉末に水を加え、圧力釜で加圧抽出して得た液を濃縮して得た水製エキスを有効成分とする」事を特徴とする。【0007】 琥珀そのものは従来例で述べたように何らの作用・効果を示さず、主として装飾的効果のみが期待されるに過ぎなかったが、加熱された溶媒蒸気により琥珀構成成分の有効成分が水製エキスとして抽出され、これが抗菌性を初めとする各種産業上有効な作用・効果を生じるものであり、前記作用・効果により、その抽出物或いは乾留物を油脂類に添加して、更にはこれらに他の薬剤や化学剤を添加して例えば外用剤(例えばシップ剤、化粧品、医薬部外品、医薬品)、消臭作用による芳香剤、洗浄剤(衣服や台所用洗剤)、毛髪保護剤、発毛剤、美白、抗アトピー剤、ゼンソク治療剤、抗酸化剤として使用する事ができる。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例に付いて詳述する。本発明にかかる実施例はA),B),C),D)の4種類があり、その比較例として琥珀粉末を使用した例と無添加(コントロール)の場合とが示されている。まず、各実施例の製造方法について説明し、次に各効果について言及する。【0009】実施例A)メキシコ産琥珀1kgをオートクレーブに入れ、加圧水蒸気にて180℃とし、1週間連続加熱し、冷却後常圧に戻し、水蒸気が冷却して水滴化して溜まった水層を分離する。約100ミリリットルほど採取出来、それを粘稠になるまで減圧濃縮し、約20gの水製エキスを得た。【0010】実施例B)ドミニカ産琥珀1kgをオートクレーブに入れ、n−ブタノールと水を4:1の混合溶媒の加圧蒸気を用いて実施例(A)と同様、180℃の加圧蒸気で1週間連続加熱し、冷却後常圧に戻し、水蒸気が冷却して水滴化して溜まった水層を分離する。約100ミリリットルほど採取出来、それを粘稠になるまで加熱濃縮し、約30gの水製エキスを得た。【0011】実施例C)メキシコ産琥珀1kgの300メッシュパス粉末に10リットルの水を加え、15日間、105℃にて圧力釜で加圧抽出し、これによって得た液を粘稠になるまで濃縮して水製エキスを得た。【0012】実施例D)ドミニカ産琥珀1kgを窒素充填下で450℃にて乾留し、然る後、冷却して約45gの留液(以後、乾留酢液という)を得た。【0013】次に、実施例A、B、C、Dに示す琥珀から抽出した水製エキス及び琥珀乾留酢液(即ち、琥珀酢)を配合した琥珀成分含有剤の作用効果に付いて検討する。【0014】(1) <抗菌力試験>以下に、琥珀抽出水製エキス又は琥珀乾留酢液を配合した琥珀成分含有剤の抗菌力の実験例データを示す。(表1参照)ここでは最低生育阻止濃度(以下、MICと言う。単位はppm)を測定してその抗菌力をテストした。使用菌類はグラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)、グラム陰性の大腸菌(E.coli)、真菌の黒カビ(アスペルギルス・ニガー=A.niger)である。表1中の比較例として用いた『琥珀の粉末』は300メッシュパスのものを用い、前記比較例及び実施例A、B、C、Dに示す琥珀抽出水製エキス及び琥珀乾留酢液を共に0.1重量%ラウロマクロゴールHLBI4.0に乳化して用いた。【0015】【表1】【0016】表1によれば、比較例として用いた『琥珀の粉末』は、抗菌力としての作用・効果は認められなかった。これに対して実施例A、B、C、Dはいずれも抗菌効果を示した。特に、実施例A、B、Dは黄色ブドウ球菌(S.aureus)、グラム陰性の大腸菌(E.coli)、真菌の黒カビ(A.niger)のいずれにも強い抗菌力を示しており、その抗菌作用により例えば天然食品添加物として日持ち向上剤や防腐剤の用途に、或いは軟膏、クリーム、乳液、美容液、リンスなどの防腐剤として十分なる実用性を示すものと考えられる。【0017】(2) <抗酸化性>次に実施例A、B、C、Dの抗酸化性の効果を、大豆レシチンを5%含有した大豆油を使用して試験を行った。実験例として実施例A、B、Cの水製エキス及び実施例Dを、大豆レシチンを5%含有した大豆油にl00ppm、300ppm、1,000ppm、2,000ppm添加して試験油とし、その比較例としてコントロール(無添加)の大豆レシチンを5%含有した大豆油を用いた。60℃±2℃のオーブン試験を行い、10日後の過酸化物価(以下POVと言う。)を測定した。その結果を下表に示す。実施例Dの琥珀乾留酢液は、無水塩化カリウムデシケータ中で脱水したものを乾留用として使用した。【0018】【表2】【0019】表2によれば、実施例A、B、C、Dはコントロールに比べて高い抗酸化性能を示した。合成抗酸化剤のBHT,BHA等の発癌性や慢性毒性が取りざたされている昨今、天然物による抗酸化剤の開発が望まれており、その意味でも有用な抗酸化剤になり得るものと考えられる。【0020】(3) <消臭試験>次に実施例A、B、C、Dの洗剤における消臭機能を天然系洗浄剤である20重量%ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンナトリウム液(液体洗剤、シャンプー、ボディソープなどでも応用可能)に各実施例A、B、Cの水製エキス及び実施例Dの乾留酢液を0.5重量%含有せしめ臭気除去の感応試験を11人のパネラーにより行った。表3では、各0.lppmの臭気物質を含有する水溶液1ミリリットルに洗浄剤0.1ミリリットルを入れた時の臭気を5段階の評価で表した。比較例としてコントロール(無添加)を採用した。【0021】【表3】【0022】表3によれば、コントロール(無添加)の場合、0.lppmの臭気物質を含有する水溶液は強烈な悪臭を放つのに対し、実施例A、B、C、Dでは、ほとんど臭わなくなることが実証された。特に、本実施例A、B、Dは本発明者らの前回の発明に関する特開平9-227334号で示した琥珀溶融物の消臭作用よりも強い消臭作用を示し、より高い実用性が期待される。【0023】(4) <手荒れ試験>洗剤に含まれる洗浄成分は手を荒らしやすい。特に溶血性の強いラウリル硫酸ナトリウムなどは、化粧品原料基準注解(薬時日報社)にも記載されているように手荒れの原因物質である。本発明の水製エキスを有効成分とする琥珀成分含有剤の手荒れに対する効果を以下において試験した。ラウリル硫酸ナトリウムを20重量%含有する(残部は精製水)ものを台所用洗剤として主婦8人に各7日間使用してもらい、手荒れのアンケートを行った。各台所用洗剤に0.5重量%の実施例A、B、C、Dの有効成分を添加したものと、比較例としてコントロール(無添加)、比較例2として琥珀の粉末を配合したもので5段階の評価で行った。【0024】《評価基準》1.明らかに手が荒れ、発疹、発赤、かゆみ等の症状が出た。2.皮膚が乾燥し、脂肪分が取られ手が荒れた。3.やや手がカサカサ乾燥した状態で手の荒れを感じた。4.わずかに乾燥した軽い手荒れを感じた。5.全く手荒れを感じなかった。【0025】また、コントロール(無添加)のラウリル硫酸ナトリウム20重量%含有台所用洗剤を使用して手が荒れた人に、更に実施例A、B、C、Dの有効成分を0.5重量%添加した台所用洗剤を使い続けてもらった後の手の状態を調べた。【0026】【表4】【0027】 コントロール(有効成分無添加)の台所用洗剤では発疹やかゆみ、乾燥、カサカサなどの手荒れが明確に生じた。琥珀粉末も同様に手荒れが生じた。しかし、実施例A、B、C、Dでは有効成分の存在により、手荒れの程度が緩和され、手荒れにおいても良好な結果を得た。特に実施例A、B、Dでは本発明者らの前回の発明に関する特開平9-227334号で示した琥珀溶融物の手荒れ回復効果よりも強い回復作用を示し、有用でより実用性が高いと思われる。なお、この実施例を通して実施例A、B、Dは魚臭さを消す効果が極めて効果的であった事が感想として多かった事を付記する。【0028】(5) <美白効果試験>次に美白効果について説明する。メラニン色素生成酵素反応液に実施例A、B、C、Dを1000ppmの濃度で混入して検体とした。その比較例としてコントロール(無添加)検体を作成し、メラニン色素を合成するチロシナーゼの抑制率をインビトロの常法に従って測定し美白効果を調べた。その結果を表5に示す。【0029】【表5】【0030】表5の結果によると、実施例A、B、Dにおいて優れた効果があり、実施例Cではある程度の効果があることが分かった。特に実施例A、Bでは本発明者らの前回の発明に関する特開平9-227334号で示した琥珀溶融物の美白効果よりも強い作用を示し、実用性の高い美白クリームや美白エッセンスへの応用が可能である事が判明した。【0031】【発明の効果】本発明は叙上のように、琥珀を原料とした『琥珀水製エキス』や『琥珀乾留物』に抗菌、抗酸化、消臭、手・肌荒れ、抗炎症、美白効果等の顕著な効果を見い出したもので、これらをそのまま或いは油脂類や界面活性剤と共に各種製品に配合し、そのものの持つ種々の問題点を解消する事ができ、琥珀の新たな用途を開拓する事ができた。 琥珀をオートクレーブ内で加圧水蒸気にて加熱抽出し、冷却後常圧に戻して溜まった水層を減圧濃縮して得た水製エキスを有効成分とする事を特徴とする抗菌剤、消臭剤、抗酸化剤及び皮膚外用剤として用いられる琥珀成分含有剤の製造方法。 琥珀をオートクレーブ内でn−ブタノールと水を混合した溶媒の加圧蒸気にて加熱抽出し、冷却後常圧に戻して溜まった水層を加熱濃縮して得た水製エキスを有効成分とする事を特徴とする抗菌剤、消臭剤、抗酸化剤及び皮膚外用剤として用いられる琥珀成分含有剤の製造方法。 琥珀の300メッシュパス粉末に水を加え、圧力釜で加圧抽出して得た液を濃縮して得た水製エキスを有効成分とする事を特徴とする抗菌剤、消臭剤、抗酸化剤及び皮膚外用剤として用いられる琥珀成分含有剤の製造方法。