タイトル: | 特許公報(B2)_芳香族炭化水素の水素化触媒組成物 |
出願番号: | 1999260971 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | B01J 29/12,C07B 61/00,C07C 5/02,C07C 13/38 |
葭村 雄二 安田 弘之 佐藤 利夫 木嶋 倫人 川勝 健 中野 宏二 亀岡 隆 JP 4485625 特許公報(B2) 20100402 1999260971 19990914 芳香族炭化水素の水素化触媒組成物 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 友松 英爾 100094466 日揮触媒化成株式会社 000190024 葭村 雄二 597126918 安田 弘之 597126929 佐藤 利夫 597126930 友松 英爾 100094466 川島 利和 100100664 葭村 雄二 安田 弘之 佐藤 利夫 木嶋 倫人 川勝 健 中野 宏二 亀岡 隆 20100623 B01J 29/12 20060101AFI20100603BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100603BHJP C07C 5/02 20060101ALN20100603BHJP C07C 13/38 20060101ALN20100603BHJP JPB01J29/12 ZC07B61/00 300C07C5/02C07C13/38 B01J 21/00 - 38/74 C07B 61/00 C07C 5/02 C07C 13/38 JSTPlus(JDreamII) 特開昭57−030550(JP,A) 特開平06−262084(JP,A) 特開平05−237391(JP,A) 特開平07−308581(JP,A) 特開平05−179260(JP,A) 特開平07−268361(JP,A) 安田弘之 他,Pd-Pt触媒による軽油の芳香族水素化−担体酸性質の影響,第84回触媒討論会討論会A予稿集,触媒学会,1999年 9月 6日,Page158(4D18) 安田弘之 他,Pd-Pt/Al2O3-B2O3触媒による軽油の芳香族水素化,石油学会第42回年会講演要旨 ,石油学会,1999年 5月21日,Page46(B13) 1 2001079416 20010327 7 20060404 佐藤 哲 【0001】【発明の属する技術分野】ディーゼルエンジンは、熱効率が高く、耐久性や信頼性に優れており、商用車に多く用いられてきたが、最近ではRV車をはじめ乗用車への搭載割合が増加している。また、地球温暖化ガスであるCO2の排出量が少ないという点も長所である。しかし、このエンジンの有する経済的優位性や地球環境保全に対する優位性とは裏腹に、ディーゼル排ガスの都市部や道路沿岸域の大気汚染に及ぼす影響は益々深刻になっている。ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質は、すす、有機溶剤不溶成分、硫酸塩、水分等から形成されているが、有機溶剤不溶成分中には種々の多環芳香族類が微量含まれている。これらの多環芳香族類は、人体への影響が懸念されるなどの環境問題を生じている。このため、軽油の品質改善は粒子状物質の総量低減が有効と考えられており、その軽油中の多環芳香族炭化水素の低減を可能にする高性能触媒の開発は重要な課題となってきている。【0002】【従来技術】従来、芳香族炭化水素の水素化触媒組成物については、アルミナにニッケル−モリブデン及びニッケル−タングステンを担持した硫化物触媒が多く用いられてきた。これらの硫化物触媒は原料油中の硫黄化合物に対して優れた耐硫黄被毒性を示すが、活性は貴金属触媒に比較して低いという問題があった。一方、貴金属触媒は高い芳香環水素化活性を有するが、逆に硫黄被毒を受け易いという欠点を持っており、軽油のような高濃度の硫黄(約500wtppm)を含む原料油を対象とする場合には、あらかじめ硫黄濃度を低減(10wtppm以下)させておく必要があった。【0003】この欠点は固体酸性を有する超安定化Y型ゼオライト担体に白金やパラジウムあるいは白金−パラジウムを担持することにより、一部改善できることが本発明の発明者である安田および葭村により(社)石油学会主催の第26回石油・石油化学討論会予稿集(1996)に報告されている。【0004】また、特開平5−179260号公報には、24.20〜24.40Åの単位格子定数並びに10〜150のSiO2/Al2O3モル比を有する変性Y型ゼオライトからなる支持体に1種又はそれ以上の周期律表第VIII族貴金属を担持してなる触媒を用いて、ガス油中に存在する環状構造物の量を低減する方法が開示されている。【0005】本発明者らは、先の特許出願(特願平10−134680号)において、アルミナ−ボリア担体に貴金属成分(Pd−Pt)を担持した触媒組成物が、硫黄含有の芳香族炭化水素油を水素化処理する場合、優れた耐硫黄被毒性を有することを見出し、芳香族炭化水素の水素化触媒組成物を提案した。【0006】さらに、アルミナ−ボリア、シリカ−アルミナ、γ−アルミナ及びシリカの各担体に白金−パラジウムを担持した触媒で、硫黄含有の芳香族炭化水素油を水素化処理する場合、白金−パラジウム/アルミナ−ボリアが最も耐硫黄被毒性に優れていることが(社)石油学会主催の第48回研究発表会(1999)に報告されている。【0007】しかしながら、従来の貴金属成分を活性成分とするゼオライト系触媒では、初期活性は高いものの硫黄化合物に対する耐硫黄被毒性が劣るため触媒寿命が短いという問題があった。また、貴金属成分を活性成分とし、アルミナ−ボリアを担体とする触媒では、耐硫黄被毒性は前述のゼオライト系触媒に比べ優れているものの、活性がやや低いという問題があった。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、軽油中の芳香族炭化水素などの水素化において、高い水素化機能を有し、しかも硫黄化合物に対して耐性を有し活性劣化が少なく寿命の長い芳香族炭化水素の水素化触媒組成物を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高SiO2/Al2O3モル比の超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアとからなる担体に貴金属成分を担持した触媒組成物が、高い水素化活性を有し、優れた耐硫黄被毒性を有することを見出し本発明を完成するに至った。【0010】 即ち、本発明は、SiO2/Al2O3モル比が100〜800の範囲にある超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアとからなり、前記超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアの割合が重量比で30/70〜70/30の範囲にあり、前記アルミナ−ボリアのAl2O3/B2O3の割合が重量比で97/3〜70/30の範囲にある担体に貴金属成分を担持させた芳香族炭化水素の水素化触媒組成物であって、前記貴金属成分がパラジウム及び白金からなり、かつPd/Pt原子比が0.1/1〜10/1の範囲にあり、しかも、前記貴金属成分の担持量が金属として0.1〜10重量%の範囲にあることを特徴とする芳香族炭化水素の水素化触媒組成物に関する。【0011】【発明の実施の形態】本発明での超安定化Y型ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が100〜800の範囲にあることが必要である。該ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が100未満の場合は、水素化反応と共に分解反応の活性が高くなるので好ましくない。また、800を越えた場合は、硫黄化合物に対する耐性が著しく減少するので好ましくない。本発明での超安定化Y型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、好ましくは160〜700、より好ましくは200〜600の範囲にあることが望ましい。【0012】本発明での前述の超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアとからなる担体は、該超安定化Y型ゼオライト/アルミナ−ボリアの割合が重量比で30/70〜70/30の範囲にあることが好ましい。該超安定化Y型ゼオライト/アルミナ−ボリアの割合が重量比で30/70より小さい(アルミナ−ボリアの量が多い)場合は、活性が低下することがあり、また、70/30より大きい(アルミナ−ボリアの量が少ない)場合は、硫黄化合物に対する耐性の改善が減少することがある。好ましい該超安定化Y型ゼオライト/アルミナ−ボリアの割合は、重量比で40/60〜60/40の範囲である。【0013】また、前述のアルミナ−ボリアは、Al2O3/B2O3の割合が重量比で97/3〜70/30の範囲にあることが好ましい。ボリア含有量がAl2O3/B2O3重量比で97/3より少ない場合は、触媒組成物の硫黄化合物に対する耐性の改善が減少することがあり、また、70/30より多い場合は、水素化活性が低下することがある。さらに好ましいAl2O3/B2O3の割合は重量比で95/5〜80/20の範囲である。【0014】本発明の触媒組成物は、前述の担体に周期律表第VIII族貴金属から選ばれた少なくとも一種の貴金属成分を担持したものである。該貴金属成分としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金成分などが例示される。本発明では、前述の貴金属成分の担持量が、金属として0.1〜10重量%の範囲であることが好ましい。該金属成分の担持量が0.1重量%より少ない場合には所望の水素化機能が得られないことがあり、また、10重量%より多くしても水素化機能の増加は少なくコスト高になる。該貴金属成分のさらに好ましい担持量は、金属として0.5〜5重量%の範囲である。【0015】 本発明では、特に、前述の貴金属成分としてパラジウムと白金を組み合わせて使用する。パラジウムと白金を組み合わせて使用することにより、高い水素化機能を維持し硫黄化合物に対する耐性が増大される。これは、パラジウムが硫黄との親和性が高いため白金の硫黄被毒を保護していると推定される。パラジウムと白金の組み合わせは、Pd/Pt原子比で0.1/1〜10/1の範囲とする。【0016】本発明の触媒組成物は、例えば以下の方法により製造することができる。まず、前述のSiO2/Al2O3モル比が100〜800の範囲にある超安定化Y型ゼオライトは、例えば、SiO2/Al2O3モル比が100未満の超安定化Y型ゼオライトを希塩酸溶液中で脱アルミナ処理してSiO2/Al2O3モル比を高める周知の方法で製造することができる。【0017】本発明での前述の超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアからなる担体は、例えば、前述の超安定型ゼオライトとアルミナ−ボリア前駆体とを混合・捏和し、所望の形状に成型した後、乾燥、焼成して製造することができる。【0018】前述のアルミナ−ボリア前駆体は、例えばアルミナ水和物とホウ酸化合物(例えばホウ酸、ホウ酸アンモニウムなど)と混合することにより調製される。アルミナ水和物は、例えば、アルミン酸ソーダ水溶液を硫酸アルミニウム水溶液で中和して擬ベーマイトのアルミナ水和物を生成させ、生成したアルミナ水和物を洗浄、熟成、して得られる。【0019】本発明の触媒組成物は、前述の担体に前述の貴金属成分を通常の方法で担持して製造することができる。例えば、前述の担体に塩化パラジウム、硝酸パラジウム及びそのアンミン錯体や水酸化白金アンミン、白金アンミン錯体などの貴金属成分水溶液を含浸し、乾燥、焼成して触媒組成物を得る。また、前述の超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリア前駆体との混合・捏和工程で貴金属成分水溶液を混練する方法で調製することもできる。【0020】本発明の触媒組成物は、接触分解油、熱分解油、直留軽油、コーカーガスオイル、水素化処理軽油、脱硫処理軽油などに含まれる芳香族炭化水素の水素化に好適に使用される。【0021】また、本発明の触媒組成物の使用に際しては、通常の水素化反応条件が採用可能であり、具体的な水素化条件としては、水素分圧が2.9〜14.7MPa、好ましくは3.9〜7.8MPa、反応温度が473〜673K、好ましくは523〜623K、液空間速度が0.1〜5.0h−1、好ましくは2.0〜4.0h−1などを例示することができる。【0022】【実施例】以下に実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。【0023】実施例1(触媒の調整)市販の超安定化Y型ゼオライト〔東ソー(株)製、HSZ−360HUA、SiO2/Al2O3モル比=14.3、H型ゼオライト〕を用い、塩酸水溶液中で脱アルミナ処理を行いSiO2/Al2O3モル比が228の超安定化Y型ゼオライト調製した。即ち、800g(乾燥基準)のHSZ−360ゼオライトを、2mol/dm3の濃度の塩酸水溶液40dm3に浸漬し、373Kで2時間撹拌した後、濾過し、純水で洗浄した。次いで、383Kで一晩乾燥し、773Kで1時間焼成して、SiO2/Al2O3モル比が228の超安定化Y型ゼオライトを得た。【0024】一方、アルミナとして濃度5重量%のアルミン酸ソーダー水溶液20kgを調合容器に入れ、この水溶液を撹拌しながら濃度2重量%の硫酸アルミニウム水溶液をpHが7になるまで添加し、擬ベーマイトのアルミナ水和物スラリーを生成させた。このスラリーを洗浄、熟成した後、加熱捏和して得た、Al2O3として85重量%の擬ベーマイトアルミナ水和物850g(乾燥基準)とB2O3として15wt%のホウ酸266gを混合捏和して、アルミナ−ボリア捏和物を得た。【0025】次に、前述のSiO2/Al2O3モル比が228の超安定化Y型ゼオライト750g(乾燥基準)を純水で希釈して濃度50重量%としたスラリーと、前述の濃度50重量%に調整したアルミナ−ボリア捏和物750g(乾燥基準)とを混合・捏和した後、直径1/16インチの円柱状に押し出し成型した。該成型物を383Kで16時間乾燥し、823Kで3時間焼成して超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアからなる担体を調製した。【0026】この担体25gにPdとして0.90重量%の[Pd(NH3)4]Cl20.56gとPtとして0.40重量%の[Pt(NH3)4]Cl20.18gを純水に溶解して調製したPd−Pt混合金属塩水溶液を含浸した。次いで、この含浸品を空気気流中(3dm3/min)、333Kで4時間(昇温速度;0.5K/min)乾燥し、空気気流中(3dm3/min)において573Kで3時間(昇温速度;0.5K/min)焼成後、粉砕(粒径:22〜48mesh)して触媒Aを調製した。【0027】比較例1(触媒の調製)(担体が超安定化Y型ゼオライトのみからなるもの)実施例1で調製された超安定化Y型ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比=228)5gにPdとして0.90重量の[Pd(NH3)4]Cl20.11gとPtとして0.40重量%の[Pt(NH3)4]Cl20.037gを純水に溶解して調製したPd−Pt混合金属塩水溶液を含浸した。次いで、この含浸品を真空中において333Kで6時間乾燥し、ディスク成型して粉砕し、粒径を22〜48meshに揃えた。次いで、酸素気流中(2dm3/min・g)において573Kで3時間(昇温速度;0.5K/min)焼成して触媒Bを調製した。【0028】比較例2(触媒の調製)(担体がアルミナ−ボリアのみからなるもの)実施例1と同様にして得た、Al2O3として85重量%の擬ベーマイトアルミナ水和物1700g(乾燥基準)とB2O3として15重量%のホウ酸533gを混合・捏和し、直径1/16インチの円柱状に押し出し成型した。次いで、該成型物を383Kで16時間乾燥し、823Kで3時間焼成してアルミナ−ボリア担体を調製した。この担体を使用して実施例1と同様にして、粒径が22〜48meshの触媒Cを調製した。【0029】比較例3(触媒の調製)(担体が超安定化Y型ゼオライトとアルミナからなる触媒) 実施例1と同様に処理して得たSiO2/Al2O3モル比が228の超安定化Y型ゼオライト750g(乾燥基準)を純水で希釈して濃度50重量%としたスラリーと、実施例1と同様にして調製した擬ベーマイトアルミナ水和物のアルミナ捏和物750g(乾燥基準)を濃度50重量%に調整して、混合・捏和し、直径1/16インチの円柱状に押し出し成型した。次いで、該成型物を383Kで16時間乾燥し、823Kで3時間焼成して超安定化Y型ゼオライトとアルミナからなる担体を調製した。この担体を使用して実施例1と同様にして、粒径が22〜48meshの触媒Dを調製した。【0030】実施例2(触媒の評価)実施例1及び比較例1、2、3で調製した触媒A〜Dを用いて芳香族炭化水素の水素化活性を評価した。触媒を反応管に充填し、水素気流中(常圧、0.2dm3/min)で573Kで3時間(昇温速度;0.5K/min)、反応前に系内で還元した。反応試験は、高圧固定床流通式反応装置(アップフローモード)で、原料油として30wt%テトラリン−0.3wt%ジベンゾチオフェン−69.7wt%n−ヘキサデカン(硫黄濃度500wtppmに相当)を用い、該水素化活性(テトラリンからデカリンへの転化率)を調べた。反応は、触媒量0.25g、水素分圧3.9MPa、反応温度553K、空間速度(WHSV)16h−1、H2/Oil比500Nl/lの条件で行った。液体生成物は定期的に採取し、FID及びキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフで分析した。その結果を表1に、また、転化率の経時変化を図1に示す。【0031】【表1】【0032】【発明の効果】本発明の水素化触媒組成物は、芳香族炭化水素などの水素化において水素化活性と硫黄化合物に対して高い耐性を有し、硫黄化合物が共存する各種の芳香族化合物に対する水素化触媒として用いることができる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例2におけるテトラリンからデカリンへの転化率の経時変化の結果を示す。 SiO2/Al2O3モル比が100〜800の範囲にある超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアとからなり、前記超安定化Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアの割合が重量比で30/70〜70/30の範囲にあり、前記アルミナ−ボリアのAl2O3/B2O3の割合が重量比で97/3〜70/30の範囲にある担体に周期律表第VIII族貴金属から選ばれた少なくとも一種の貴金属成分を担持させた芳香族炭化水素の水素化触媒組成物であって、前記貴金属成分がパラジウム及び白金からなり、かつPd/Pt原子比が0.1/1〜10/1の範囲にあり、しかも、前記貴金属成分の担持量が金属として0.1〜10重量%の範囲にあることを特徴とする芳香族炭化水素の水素化触媒組成物。