生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_グリニャール試薬の調製確認方法
出願番号:1999249685
年次:2007
IPC分類:G01N 21/75,C07F 3/02,G01N 31/00


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福本 毅彦 山下 美与志 岩井 大祐 佐藤 一臣 JP 3936498 特許公報(B2) 20070330 1999249685 19990903 グリニャール試薬の調製確認方法 信越化学工業株式会社 000002060 奥山 尚男 100060069 有原 幸一 100096769 奥山 尚一 100099623 福本 毅彦 山下 美与志 岩井 大祐 佐藤 一臣 20070627 G01N 21/75 20060101AFI20070607BHJP C07F 3/02 20060101ALI20070607BHJP G01N 31/00 20060101ALI20070607BHJP JPG01N21/75 ZC07F3/02 BG01N31/00 Z G01N21/00-21/83 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) CAPlus(STN) 特開平02−290535(JP,A) M.R. Hamelin 外1名,“CHIMIE ORGANOMETALLQUE. - Etude par spectroscopie infrarouge de la solvatation dans les solutions de Grinard”,Comptes Rendus Hebdomadaires des Seances de l'Academie des Sciences,1961年,Vol.252,pp.1616-1618 湯川 外1名,“グリニャール反応”,化学大辞典3,1963年 9月15日,p.124,ISBN:4-320-04017-1 3 2001074662 20010323 7 20050223 ▲高▼場 正光 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、様々な有機化合物合成のための、産業上有用な反応技術の一つであるグリニャール(Grignard)試薬の生成反応の開始、継続を非破壊状態で確認し、反応の暴走による事故を防ぐための安全制御技術のひとつのモニターによる確認方法に関するものである。【0002】【従来の技術】現代の有機合成化学において有機金属化合物の利用は欠かすことができないものとなっている。とりわけ、グリニャール反応は、産業上も実用性が高く、有用である。しかしながら、有機ハロゲン化合物と金属マグネシウムとの反応で調製されるグリニャール試薬は、反応系に特定の不純物が存在した場合、それが反応阻害剤となり、反応の開始が難しい場合も多く、そのような状態で有機ハロゲン化合物を大量に加えると、突然反応が開始され、暴走し事故につながる可能性が大きい。現在、グリニャール試薬の生成反応の確認では、これを下記反応式で示されるように水で加水分解し、生成する相応した炭化水素化合物をGC分析等の手段で確認することが一般的である。R−MgX + H2O → R−H + MgX(OH)しかしながら、グリニャール試薬は空気や湿気に鋭敏であり、サンプリング操作自体が空気の混入の可能性を否定できない。また、作業上、細心の注意が必要であるなどの煩雑さからしても好ましいものではない。このような背景からグリニャール反応の開始、進行を非破壊状態で確認する方法が望まれていた。【0003】【発明が解決しようとする課題】物質を破壊することなく分析するには、分光法による測定が有用である。特に近年、その感度、精度のすぐれたフーリエ変換型赤外分光装置の利用が期待されている。とりわけ、全反射法(ATR法)が有用である。グリニャール反応をモニターする場合、まずは反応する有機ハロゲン化合物の炭素−ハロゲン結合の吸収をモニターし、反応の進行によって、これが逐次減少していくことを追跡していくことが考えられる。しかし、炭素−ハロゲン結合はグリニャール反応に関与しないフッ素を除けば概ね赤外光の吸収領域の端である500〜900cm-1であり(「有機化合物のスペクトルによる同定法」東京化学同人)、且つ吸収強度もさほど強くない。本領域は、赤外光の透過しにくい領域で、また指紋領域と呼ばれ化合物に特有の特徴的パターンを示すことも多いため、化合物の置換基の影響を受けやすい。この炭素−ハロゲン吸収の減少を追跡する方法は、誤認につながりやすく、一般的に通用する確認方法とは言いがたい。従って、スペクトル測定で普遍的に反応の開始、進行を確認できる方法の開発が望まれていた。【0004】【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、溶媒の吸収に着目した。グリニャール反応では、一般に、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒が主として用いられることが多く、ヘキサンやベンゼンなどの無極性溶媒は溶解度が低く用いられることは少ない。グリニャール試薬の構造は未だ確定されてはいないが、そのエーテル系溶媒はグリニャール試薬R−MgXと溶液中である種の平衡状態として存在し、R−MgX中のマグネシウムがエーテル系溶媒の酸素と下記のような相互作用をして付加体を形成していることが知られている(Menschutkin, B., Z. anorg. Chem., 49, 34(1906))。【0005】【化1】【0006】我々は、この通説に基づき、グリニャール反応の前後のエーテル系溶媒の吸収に着目しフーリエ変換赤外線吸収スペクトルで観察を続けたところ、エーテル系溶媒の炭素−酸素−炭素の非対称伸縮振動である850〜1100cm-1付近が反応の前後で大きく変化することを見出した。そして、この吸収シフトをモニターすることでグリニャール反応の開始と進行を非破壊状態で確認することができることに発展させ、本発明を完成した。【0007】本発明は、グリニャール試薬の調製において、赤外吸収スペクトルを用いてグリニャール試薬の生成をモニターするグリニャール試薬の調製確認方法を提供する。特に、フーリエ変換赤外吸収スペクトルを用いるグリニャール試薬の生成のモニターが、グリニャール試薬の調製に使用されるエーテル系溶媒の炭素−酸素−炭素の伸縮振動の変化をモニターすることを特徴とする。【0008】【発明の実施の形態】本発明は、赤外吸収スペクトルを用いて、グリニャール試薬の生成をモニターし、グリニャール試薬の調製を確認する方法に関する。グリニャール試薬は、RMgX型有機マグネシウム化合物の総称であり、金属マグネシウムと有機ハロゲン化物RXとの反応で調製される。Rとしては、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、アルキニル基の炭化水素基等が挙げられ、Xは、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子を示す。グリニャール試薬の調製には、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が用いられる。グリニャール試薬の調製においては、ハライドが臭素である場合や特別なケースを除けば、反応開始剤が一般的に使用される。特にハライドが塩素の場合には、反応開始剤の使用は有効である。反応開始剤としては、メチルマグネシウムクロライド、エチルブロミド、1,2−ブロモエタン、ヨウ素などが挙げられる。【0009】 本発明においては、グリニャール試薬の生成は、赤外吸収スペクトルを用いて、使用するエーテル系溶媒であるTHFの炭素−酸素−炭素の伸縮振動の変化をモニターすることにより確認できる。エーテル系溶媒の炭素−酸素−炭素の非対称伸縮振動は、850〜1100cm-1付近に存在する。【0010】グリニャール試薬の調製に最も頻繁に使用されるTHFにおいては、反応前の1060及び907cm-1の吸収は、各々グリニャール反応後には約30cm-1低波数側へシフトし、1030、877cm-1に吸収が生じる。また、この現象は、有機ハロゲン化合物の種類にかかわらず観察でき、一般性が高い。従って、グリニャール試薬の生成反応をTHF中で行うと、反応の進行に伴い、1060および907cm-1の吸収が減少し、1030、877cm-1が著しく増加することがわかる。これにより、Mgとハライドが反応を開始したことが確認できる。反応が開始されてしまえば、通常、Mgとハライドとの反応が途中で停止することはなく、反応は進行する。反応の進行は、Mgとハライドの反応によって生ずる反応熱のモニター等により確認できる。本発明のグリニャール試薬の調製確認方法は、THF以外のエーテル系溶媒においても、同様に適用できる。【0011】赤外吸収スペクトルとしては、測定対象領域のスペクトルを短時間で観測することができ、干渉波の積算や差スペクトル測定などでスペクトルを質的に向上させることが可能であるなどの理由により、フーリエ変換赤外吸収スペクトルが好ましい。本発明に用いるフーリエ変換赤外吸収装置は、特に限定されないが、好ましくは全反射法(ATR法)によるものである。測定は、まず、Mgとエーテル系溶媒を仕込んだ反応容器に、窒素ガス雰囲気下、エレメントのついたプローブを挿入しエレメントが充分反応液に浸る状態でバックグランド測定を行う。次いで、ハロゲン化物を加え、必要に応じて反応開始剤を加え、グリニャール試薬の生成反応を開始させる。なお、エレメントについては、その素材により透過波数範囲が異なり、また浸食される溶媒も異なるので注意を要するが、一般にグリニャール反応の場合、アルカリにも強いZnSeを用いることが望ましい。また、Mg固体は除去する必要はなく、エレメントが溶媒に浸っていれば測定は可能である。反応開始時の発熱は、反応系が5〜10℃の昇温の範囲内でおさまるハライド量を投入する。この発熱範囲であれば、FT−IR測定への影響はほとんどない。【0012】【実施例】以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実験に用いた機器等実験には、横河電機社製のラボ用フーリエ変換赤外吸収スペクトル装置FT−IR1000型を用いた。全反射法のATRには、反応モニタリング用ZnSe結晶2回反射を用いた。反応溶媒は、市販のTHF(試薬特級)をモレキュラシーブで乾燥して用いた。Mgは市販品を、各種ハライドは合成品を用いた。【0013】実施例1200ml四つ口フラスコにMg(38g)、THF(100g)を仕込み、窒素ガス雰囲気下、この状態でフラスコ上部からエレメントのついたプローブを挿入しエレメントが充分反応液に浸る状態でバックグランド測定を行った(1測定2秒、64回積算)。次いで、ハライドとして30mmolに相当する3−オクテニルクロライド(4g)を加え、予め調製しておいたメチルマグネシウムクロライド1.0MTHF溶液2mlを加えて、60℃に安定化させ同様にFT−IR測定を実施した。なお、メチルマグネシウムクロライドは、反応開始剤である。その結果、図1に示すように、反応の進行に伴い、1063および906cm-1の吸収が減少し、1031、877cm-1が著しく増加した。これにより、Mgとハライドが反応を開始したことが確認できた。なお、図1は、THF−Mgの状態でバックグランドを測定し(図1(a))、次いで3−オクテニルハライドと反応開始剤投入後から2分おきに測定し、バックグランドとの差スペクトルとして表示したものである(図1(b)〜(e))。まず、ハライドと開始剤が入った時点で、通常のTHF由来の1063および906cm-1は相対的に薄くなり、負のピークとして現れるが、まだ反応してないので1031、877cm-1の正のピークは現れていない。時間の経過とともに反応が進行し、1063および906cm-1は吸収が減少するため負(下)のピークが大きくなり、一方1031、877cm-1は増加し、正(上)のピークとなって現れる。もし正常に反応が開始していない場合は、この変化がみられない。1031、877cm-1が正のピークとして現れたときに、反応が開始したと考えられる。【0014】比較例1本反応液の一部をサンプリングし、5%塩化アンモニウム水溶液で加水分解したのち、その有機相をPEG20M 30m×0.25mmキャピラリーカラムを装着したGC分析装置にかけ、原料の3−オクテニルクロライドが消失し、新たに3−オクテンの生成を確認した。【0015】実施例2ハライドとして3−オクテニルクロライドの代わりに2−クロロヘキサン3.3gを用いる以外は実施例1と全く同様の操作を行ったところ、図2に示すように1060、907cm-1の吸収が減少し、1030、877cm-1の増加が観察された。【0016】【発明の効果】本発明によれば、従来グリニャール反応の開始、継続の確認は、有機ハロゲン化合物の種類にかかわらず、フーリエ変換赤外吸収スペクトルの測定で、用いるエーテル系反応溶媒の炭素−酸素−炭素非対称伸縮振動の吸収の変化をモニターすることにより、間接的ではあるが非破壊状態で行うことができる。【図面の簡単な説明】【図1】THF中における3−オクテニルクロライドとMgとの反応(実施例1)をフーリエ変換赤外吸収スペクトルを用いてモニターした図を示す。バックグランドを(a)に示し、反応開始剤添加後から2分おきに測定した差スペクトルを(b)〜(f)の順序で示す。【図2】THF中における2−クロロヘキサンとMgとの反応(実施例2)をフーリエ変換赤外吸収スペクトルを用いてモニターした図を示す。反応開始剤添加後から2分おきに測定した差スペクトルを(a)〜(g)の順序で示す。 THF溶媒中のグリニャール試薬の調製において、赤外吸収スペクトルの1060及び907cm-1の吸収の減少と、1030及び877cm-1の吸収の増加を用いて、該グリニャール試薬の生成をモニターするグリニャール試薬の調製確認方法。 上記赤外吸収スペクトルが、フーリエ変換赤外吸収スペクトルである請求項1に記載のグリニャール試薬の調製確認方法。 上記グリニャール試薬が、金属マグネシウムと有機塩化物との反応で調製される請求項1又は請求項2に記載のグリニャール試薬の調製確認方法。


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