タイトル: | 特許公報(B2)_アクチノールの微生物による産生 |
出願番号: | 1999231143 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12P 7/26,C12N 1/20,C12R 1/01,C12R 1/06,C12R 1/15 |
清水 昌 和田 大 JP 3897489 特許公報(B2) 20070105 1999231143 19990818 アクチノールの微生物による産生 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 503220392 山田 行一 100094318 野田 雅一 100123995 清水 義憲 100128381 清水 昌 和田 大 EP 98115564.1 19980819 20070322 C12P 7/26 20060101AFI20070301BHJP C12N 1/20 20060101ALI20070301BHJP C12R 1/01 20060101ALN20070301BHJP C12R 1/06 20060101ALN20070301BHJP C12R 1/15 20060101ALN20070301BHJP JPC12P7/26C12N1/20 AC12P7/26C12R1:01C12P7/26C12R1:06C12P7/26C12R1:15C12N1/20 AC12R1:01C12N1/20 AC12R1:06C12N1/20 AC12R1:15 C12P 7/26 特開昭64−67193(JP,A) 特開昭63−59895(JP,A) 特開平10−94399(JP,A) 3 FERM BP-6449 FERM BP-6448 FERM BP-6447 IFO 15880 IFO 12678 2000069986 20000307 18 20040409 中島 庸子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、(6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンジオン(以後レボジオンと記載する)からの(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン(以後アクチノールと記載する)の微生物による生産方法に関する。アクチノールは、ゼアキサンチンのようなカロテノイドの合成に有用である。より詳細には、本発明は、レボジオンのC−4位のカルボニル基を選択的に不斉還元することができる特定の微生物を利用した、微生物によるアクチノールの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】従来アクチノールは、アクチノールのジアステレオ異性体混合物の光学分割により調製されてきた。しかし、この方法は、金属触媒によるレボジオンの水素化と、それに続く無水マレイン酸のような分割剤を用いた化学的手段での光学分割を必要とする(T.Ohashiら、“分子キラリティー1996”紀要(the proceedings of the symposium“Molecular Chirality 1996”)1996年5月30日と31日開催、東京、日本、47〜50ページ、“生物触媒を利用した実用的合成(Practical Syntheses using Biocatalysts))。そのため、この方法は工業目的には経済的に実用的でない。【0003】レボジオン自体からアクチノールを酵素的に調製する方法は公知である。例えば、Bacillus thermophilusは、ラセミ体のジヒドロオキソイソホロンを、4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンの4種類の異性体、すなわちシス(4R,6S)−、シス(4S,6R)−、トランス−(4R,6R)−、及びトランス−(4S,6S)−異性体に変換することができる。得られたこれら異性体の量比は68:25:5:2である(J. Biotechnol., 9 (2), 117-128, 1989)。したがって、(4R,6R)−異性体、アクチノールの含有量は、全異性体の5%に過ぎず、この方法もまた、工業目的には経済的に実用的でない。【0004】【発明が解決しようとする課題】レボジオンの選択的不斉還元に関する精力的な研究の結果、今回ある種の微生物を利用した選択的不斉還元と、それに続く反応混合液からの回収により、アクチノールをレボジオンから効率的に得ることができることが見出された。本発明はこの発見に基づく。【0005】【課題を解決するための手段】したがって、本発明は、アクチノールの製造方法であって、レボジオンを、Cellulomonas属、Corynebacterium属、Planococcus属及びArthrobacter属からなる微生物群より選択され、かつレボジオンをアクチノールに選択的に不斉還元することができる微生物と接触せしめ、生成したアクチノールをその反応混合物から回収する方法を提供する。【0006】【発明の実施の形態】スクリーニングは、それ自体公知の方法にて実施した。例えば、微生物は、炭素源としてグルコース及びショ糖のような糖類、エタノール及びグリセロールのようなアルコール、オレイン酸及びステアリン酸のような脂肪酸もしくはそのエステル、又はナタネ油及びダイズ油のような油;窒素源として硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、ペプトン、アミノ酸、コーン浸漬液、ふすま、酵母抽出液など;無機塩源として硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウムなど;その他の栄養源として麦芽エキスや肉エキスなどを含む栄養培地中、通常の方法で培養した。培養は、好気性条件下、通常は、pH3〜9の培地で1〜7日間の期間、10〜40℃の培養温度で行うことができる。培養後、細胞は遠心分離又は濾過により集められる。こうして得た細胞とレボジオンは、水、リン酸カリウム緩衝液、アセトニトリル、エタノールなどの溶媒中で一緒にし(接触)、適当な反応条件下(レボジオン濃度:400〜2,000mg/g乾燥細胞/リットル、pH域:4〜9、温度域:20〜50℃、反応期間:10分〜80時間)で反応を開始させる。反応混合物を酢酸エチル、n−ヘキサン、トルエン、酢酸n−ブチルなどの有機溶媒で抽出した。抽出液を適当なクロマトグラフィーにかけ、アクチノールの生産性を測定する。【0007】スクリーニングの結果、Cellulomonas属、Corynebacterium属、Planococcus属及びArthrobacter属に属する微生物が、レボジオンを選択的に不斉還元することができることを発見した。特に好適な微生物は、Cellulomonas sp. AKU672、Corynebacterium aquaticum AKU610、Corynebacterium aquaticum AKU611、Planococcus okeanokoites AKU152及びArthrobacter sulfureus AKU635であり、特に先頭から3種類の微生物が好適である。上記5種類の微生物のうち、Corynebacterium aquaticum AKU611が、最も好ましい。【0008】微生物Cellulomonas sp. AKU672、Corynebacterium aquaticum AKU610、及びCorynebacterium aquaticum AKU611は、日本国、福井県の真名姫湖で採取した土壌サンプルより分離された。これら微生物は、ブダベスト条約に従い、次の名称により1998年、8月4日に日本の工業技術院生命工学工業技術研究所(the National Institute of Bioscience and Human-Technology, Agency of Industrial Science and Technology)に寄託された。Cellulomonas sp. AKU672(FERM BP−6449)Corynebacterium aquaticum AKU610(FERM BP−6447)Corynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)【0009】これら3種類の微生物、並びにPlanococcus okeanokoites AKU152及びArthrobacter sulfureus AKU635は新規であり、本発明の更なる面を表す。【0010】上記の株AKU672(FERM BP−6449)は以下の分類上の特徴を有する:【0011】Cellulomonas sp. AKU672株の典型的な多型性は、電子顕微鏡による観察で認められる。当該株の古い培養体は、図1に示す如く球状であった。Cellulomonas sp. AKU672株は、栄養寒天斜面培地上、28℃で4日間生育させた。洗浄した細胞を真空下で乾燥し、クロムでシャドウイングした。若い培養株では、不規則な桿状細胞が多く見られた(図2)。細胞は、栄養ブロス上で培養した。当該株の形態学的、生理学的そして生化学的特徴を表IとIIにまとめた。【0012】【表1】【0013】【表2】【0014】Cellulomonas sp. AKU672株は、グラム陽性の好気性で、“コリネフォルム細菌”(coryneform bacteria)の群に属するものとして分類できる。この株は、1本の鞭毛を有する運動性である。細胞壁内には主要アミノ酸としてオルニチンが認められた。ガスクロマトグラフィー(GC)による含有量は、74.7%であった。屈曲型(bending like)細胞分裂が観察された。この株は、4日間広い範囲の糖からガス形成なしに酸を産生した。この株はセルロース分解性を示さなかった。【0015】コリネフォルム細菌の分類は十分に確立されていない。最近、YamadaとKomagata〔J. Gen. Appl. Microbiol., 18, 417 (1992)〕は、細胞分裂の基本形、細胞壁の組成とGCによるDNA含有量に基づいて、コリネフォルム細菌を7つの群に分類することを提言した。かれらは、セルロース分解性の欠如にもかかわらず、他の群から第4群を区別した。この群の細菌の細胞分裂は屈曲型で、細胞壁中の主要アミノ酸はオルニチンである。GCによるその含有量は、71〜73%と狭い範囲に高度に分布している。これら細菌は、広範囲の糖から発酵により酸を産生する。かれらの提言に従えば、セルロース分解性を示さないCellulomonas sp. AKU672株は、第4群に属するはずである。この株のその他の分類学上の特徴は第4群の特徴によく一致することから、本株はCellulomonas sp. AKU672と仮称した。【0016】上記のAKU610及びAKU611株は、以下の分類学上の特性を有する:1)増殖可能温度: 15〜40℃2)至適増殖温度: 30℃3)絶対好気性のグラム陰性菌4)胞子形成: なし5)培養中に多型性と典型的な桿−球菌周期が観察される。6)運動性: なし【0017】更に、Biologシステム(Biolog Inc., 3447 Investment Blvd., Suite3, Hayward, California 94545, USA: Nature Vol.339, 157-158, May 11, 1989)による各種炭素源の同化に基づき、Corynebacterium aquaticum AKU610及びAKU611株を以下のように同定した:【0018】それぞれの株の細胞を96ウエルのマイクロタイタープレートに接種し、28℃で24時間培養した。各ウエルは、96種類の炭素源のうちの1種類をBUGM+B培地(Biolog Universal Growth Media+Blood; Biolog Inc.)に含んでいる。【0019】培養後、各株は炭素源について以下の同化を示した:【0020】【表3】【0021】【表4】【0022】A1:水 A2:α−シクロデキストリンA3:β−シクロデキストリン A4:デキストリンA5:グリコゲン A6:イヌリンA7:マンナン A8:TweenR 40A9:TweenR 80 A10:N−アセチル−D−グルコサミンA11:N−アセチル−D−マンノサミンA12:アミグダリン B1:L−アラビノースB2:D−アラビトール B3:アルブチンB4:セロビオース B5:D−フルクトースB6:L−フコース B7:D−ガラクトースB8:D−ガラクツロン酸 B9:ゲンチオビオースB10:D−グルコン酸 B11:α−D−グルコースB12:m−イノシトール C1:α−D−ラクトースC2:ラクツロース C3:マルトースC4:マルトトリオース C5:D−マンニトールC6:D−マンノース C7:D−メレチトースC8:D−メリビオース C9:α−メチルD−ガラクトシドC10:α−メチル−D−ガラクトシド C11:3−メチル−グルコースC12:α−メチル−D−グルコシド D1:β−メチル−D−グルコシドD2:α−メチルD−マンノシド D3:パラチノースD4:D−プシコース D5:D−ラフィノースD6:L−ラムノース D7:D−リボースD8:サリシン D9:セドヘプツロースD10:D−ソルビトール D11:スタキオースD12:ショ糖 E1:D−タガトースE2:D−トレハロース E3:ツラノースE4:キシリトール E5:D−キシロースE6:酢酸 E7:α−ヒドロキシ酪酸E8:β−ヒドロキシ酪酸 E9:γ−ヒドロキシ酪酸E10:p−ヒドロキシフェニル酢酸E11:α−ケト−グルタル酸 E12:α−ケト−吉草酸F1:ラクトアミド F2:D−乳酸メチルエステルF3:L−乳酸 F4:D−リンゴ酸F5:L−リンゴ酸 F6:ピルビン酸メチルF7:コハク酸モノメチルエステル F8:プロピオン酸F9:ピルビン酸 F10:スクシンアミド酸F11:コハク酸 F12:N−アセチル−L−グルタミン酸G1:アラニンアミド G2:D−アラニンG3:L−アラニン G4:L−アラニル−グリシンG5:L−アスパラギン G6:L−グルタミン酸G7:グリシル−L−グルタミン酸 G8:L−ピログルタミン酸G9:L−セリン G10:プトレッシンG11:2,3−ブタンジオール G12:グリセロールH1:アデノシン H2:2′−デオキシアデノシンH3:イノシン H4:チミジンH5:ウリジン H6:アデノシン−5′−1リン酸H7:チミジン−5′−1リン酸H8:ウリジン−5′−1リン酸H9:フルクトース−6−リン酸 H10:グルコース−1−リン酸H11:グルコース−6−リン酸 H12:DL−α−グリセロールリン酸【0023】上記結果より、両株はCorynebacterium aquaticumと同定され、それぞれCorynebacterium aquaticum AKU610及びAKU611と命名された。【0024】上記の他の微生物は、いずれの人間でも日本国、発酵研究所(Institute for Fermentation, Osaka、IFO)のような公的寄託機関(培養コレクション)から請求により入手することができる。このような寄託株の例として、Planococcus okeanokoites AKU152(IFO 15880)及びArthrobacter sulfureus AKU635(IFO 12678)がある。【0025】本発明の選択的不斉還元法は、水中、又は一般には水と混和でき、レボジオンの溶解性を高め、酵素反応に不活性である、0.01〜0.5Mリン酸カリウム緩衝液、pH範囲4〜10のその他の緩衝液、アセトニトリル、エタノール、又はN,N′−ジメチルホルムアミドのような溶媒中で、バッチ法、半バッチ法、又は連続的に行うことができる。レボジオンの濃度は、好都合には400〜2000mg/1g乾燥細胞/リットルであり、好ましくは400〜800mg/1g乾燥細胞/リットルである。選択的不斉還元法は、pH域4〜9、好ましくは6〜7で、温度域20〜50℃、好ましくは30〜40℃で、10分〜80時間、好ましくは8時間〜24時間、行うことができる。【0026】本発明の選択的不斉還元法は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)のような補因子の存在下、又は当該補因子とグルコース及びグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)の存在下に好都合に行うことができる。このような補因子の反応溶媒中の濃度は、300mM/l以上が好ましく、より好ましくは700mM/l〜900mM/lである。更に、アクチノールの収率は、反応混合物に界面活性剤を加えることによって上昇させることができる。SpanR 20、SpanR 80、TweenR 20、TweenR 40(いずれも和光純薬、大阪市道修町3−1−2より入手できる)などが、使用できる界面活性剤の例である。反応溶媒中の界面活性剤の量は、好都合には2〜20mM/lであり、好ましくは約8mM/lである。【0027】選択的不斉還元終了後、得られたアクチノールは、アクチノールを容易に溶解する酢酸エチル、n−ヘキサン、トルエン又は酢酸n−ブチルのような水−不溶性(水に混合しない)有機溶媒で抽出することにより回収できる。抽出物を濃縮してアクチノールを直接結晶化させるか、又は薄層クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び/又はゲル濾過クロマトグラフィーのような各種クロマトグラフィーを組み合わせることで、アクチノールを更に精製することができる。必要に応じ、高速液体クロマトグラフィーも利用できる。アクチノールの結晶を得るための好適な回収方法としては、アクチノールを酢酸エチルで抽出し、当該抽出物を濃縮してアクチノール結晶を得ることが挙げられる。【0028】上記“休止細胞反応”法に変わる方法として、アクチノールは、レボジオンの存在下、栄養培地中での上記微生物の発酵、すなわち“増殖細胞反応”により生成することができる。両方法はともに本発明の方法に包含される。【0029】“増殖細胞反応”法の栄養培地としては、炭素源としてグルコース及びショ糖のような糖類、エタノール及びグリセロールのようなアルコール、オレイン酸及びステアリン酸のような脂肪酸もしくはそのエステル、ナタネ油及びダイズ油のような油;窒素源として硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、ペプトン、アミノ酸、コーン浸漬液、ふすま、酵母抽出液など;無機塩源として硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウムなど;その他の栄養源として麦芽エキスや肉エキスなどを含むものが利用できる。本発明の別の観点として、アクチノールは、レボジオンの存在下、栄養培地中で上記微生物の発酵により生成できる。【0030】発酵は、好気的に、通常は培養期間1〜7日間、培地pH3〜9、そして発酵温度10〜40℃で行うことができる。【0031】発酵に利用する微生物はいずれの形でもよく、例えば液体培地中の株の発酵により得られた培養体、液体培地から分離した細胞、細胞又は培養物の処理により得られた乾燥細胞、又は固定化細胞が挙げられる。【0032】【実施例】以下の実施例により本発明を例示する。【0033】実施例10.5%の1,4−シクロヘキサンジオン((6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンジオンの構造類似体;スクリーニングに利用)、0.5%TweenR 20、0.1%(NH4)2SO4、0.1%K2HPO4、0.02%MgSO4・7H2O及び0.02%酵母抽出物を含む液体培地(pH7.0)を試験管内に5ml加え、次に121℃で20分間滅菌した。これらの試験管のそれぞれに土壌サンプル約0.3gを加え、30℃で24時間培養した。得られた培養体の0.1mlを上記と同じである新しい試験管培地に接種し、この作業を2回繰り返して目的微生物を増やした。得られた増殖培地を食塩水で希釈し、上記と同じ成分を含む寒天培地上に広げた。同時に食塩水中の土壌の懸濁液の上清を適当に希釈し、同様にして寒天培地上に広げた。このプレートを30℃で48時間培養した。プレート上の増殖コロニーを用い、1.0%グルコース、0.3%K2HPO4、0.02%MgSO4・7H2O、1.5%ペプトン(三国化学産業株式会社、東京都中央区日本橋室町4−1−6)、0.2%NaCl及び0.1%酵母抽出物(ナカライテスク株式会社、京都市中京区二条通烏丸西入)を含む液体培地(pH7.0)5mlの入った試験管に接種した。試験管を30℃で24時間培養した後、遠心分離により細胞を集め、食塩水で洗浄した。得られた細胞を引き続きスクリーニングに用いた。上記微生物に加え、栄養培地中で培養した微生物の空気乾燥細胞もスクリーニングに使用した。【0034】実施例20.6mgのNAD(オリエンタル酵母株式会社、東京都板橋区小豆沢3−6−10)、0.6mgのNADP(オリエンタル酵母株式会社)、50mgのD−グルコース及び0.2mgのD−グルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬株式会社、名古屋市中区錦1−2−7)を含む反応混合液(pH7.0の0.1Mリン酸カリウム緩衝液)を調製した。実施例1で調製した細胞約0.3gを1mlの反応混合物に加え、次いで十分量の(6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンジオンを最終濃度0.5%になるように加えた。反応混合物を振とうしながら30℃で24時間インキュベーションした。インキュベーション後、反応混合物を1mlの酢酸エチルで抽出し、濃縮した。(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチル−シクロヘキサノンの収率と光学純度は、ガスクロマトグラフィー〔カラム:HR−20M(Shinwa Chemical Ind., 京都市伏見区景勝町)直径0.25mm×30m、カラム温度:160℃(一定)、インジェクター温度:250℃、キャリアーガス:He(約1ml/分)〕で分析した。結果を表IIIに示す。【0035】【表5】【0036】実施例3反応混合液へのNAD又はNADPの添加の効果を、表IIIの微生物を用いて検討した。基本の反応混合物は、NADとNADPを除く実施例2記載の成分を全て含んでいた。本実施例で用いた微生物の細胞を、空気乾燥し、その細胞塊10mgを反応混合物に加えた。反応は30℃で24時間行った。結果は表IVに示した。表中の光学純度の値(%e.e.)は(4R,6R)−異性体についてのものであり、表V(実施例4)ならびにVI(実施例5)も同様である。【0037】【表6】【0038】実施例4反応混合物中の各種界面活性剤(最終濃度:0.1w/v%)の効果について、表IIIの微生物を用いて検討した。基本の反応混合物は、実施例2記載の全成分を含んでいた。本実施例で用いた微生物の細胞を空気乾燥し、その細胞塊10mgを反応混合物に加えた。反応は30℃で24時間行った。結果を表Vに示す。【0039】【表7】【0040】【表8】【0041】実施例5反応に対する基質濃度の影響を、0.5%、1.0%及び1.5%の濃度で検討した。基本の反応混合物は、実施例2記載の全成分を含んでいた。本実施例では、Corynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)の細胞を空気乾燥し、その細胞塊10mgを反応混合液に加えた。反応は30℃で24時間行った。結果を表VIに示す。【0042】【表9】【0043】実施例6Corynebacterium aquaticum AKU611(FERM BM−6448)を、30リットルのジャー発酵装置を用いて、0.1%酵母抽出物、1.5%ペプトン、2.0%D−グルコース、0.02%MgSO4・7H2O、0.3%K2HPO4及び0.2%NaClを含む培地20リットル中、400rpmで振とうしながら毎分0.5リットル通気して、30℃で24時間培養した。その後培養物を5,000gで5分間遠心分離して、細胞を集めた。このようにして得られた細胞のペーストの重量は、400gであった。次に、レボジオン12g及びD−グルコース120gを細胞ペーストに加え、イオン交換水で容積を2.4リットルとした。2.0%NaOH溶液でpHを7.0に調整した。反応混合物を2リットルのフラスコに移し、30℃で15時間、220rpmで振とうしながらインキュベーションした。インキュベーション後、反応混合物を12,000gで5分間遠心分離することによって分離した。こうして得られた反応混合物の容積は2.2リットルであり、アクチノールの光学純度、収率及び濃度は、それぞれ96%e.e.、93%及び4.6g/lであった。【0044】実施例7実施例6に記載のように調製した反応混合物(10リットル)を酢酸エチル(10リットル)と混合して、アクチノールを抽出した。酢酸エチル相(7.5リットル)を分離し、脱色のためにそれに350gの活性炭粉末を加えた。10分間撹拌後、活性炭粉末を濾過により除去した。無水Na2SO4600gを6.5リットルの酢酸エチル溶液に加えて脱水した。数分間撹拌したのち、Na2SO4を濾過により除去した。酢酸エチル溶液(6.0リットル)を減圧下、30℃で50mlに濃縮した。こうして得た濃縮液に5リットルのn−ヘキサンを加え、混合物を5分間撹拌した後5℃まで冷却し、同温度で12時間保持して、アクチノールを結晶化させた。結晶化したアクチノールを濾過により集め、乾燥した。こうして得たアクチノール結晶の重量は32gであり、アクチノールの純度、光学純度、収率は、それぞれ96%、96%e.e.、70%であった。【0045】実施例8Corynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)の種培養ブロス(150ml)を、0.1%酵母抽出物、1.5%ペプトン、2.0%グルコース、0.02%MgSO4・7H2O、0.3%K2HPO4、0.2%NaCl及び0.3%のレボジオンを含む3リットルの発酵培地に接種した。5リットルのジャー発酵装置を用いて、250rpmで撹拌しながら、毎分1.5リットルの空気を通気して、30℃で48時間発酵させた。発酵ブロスのpHは、NH3ガスにより7.0に調整した。発酵後、このブロスを除去し、細胞を12,000gで5分間遠心分離することにより集めた。本ブロス中のアクチノールの光学純度、収率、及び濃度は、それぞれ96%e.e.、71%及び2.1g/lであった。【0046】本発明の実施態様は、以下のとおりである。1. (4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法であって、(6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン−ジオンを、Cellulomonas属、Corynebacterium属、Planococcus属及びArthrobacter属からなる微生物群より選択され、かつ(6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンジオンを(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンに選択的に不斉還元することができる微生物と接触せしめ、生成した(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンをその反応混合物から回収する方法。2. 微生物が、Cellulomonas sp. AKU672(FERM BP−6449)、Corynebacterium aquaticum AKU610(FERM BP−6447)、及びCorynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)からなる群から選択され、好ましくはCorynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)である、上記1の方法。3. 微生物が、Planococcus okeanokoites AKU152(IFO 15880)又はArthrobacter sulfureus AKU635(IFO 12678)である、上記1の方法。4. 選択的不斉還元を、NAD、NADP、あるいはグルコース及びGDHと共にNAD又はNADPの存在下で行う、上記1〜3のいずれか1の方法。5. 選択的不斉還元を、界面活性剤の存在下で行う、上記1〜4のいずれか1の方法。6. 選択的不斉還元を、pH域4〜9、温度域20〜50℃で、10分間〜80時間行う、上記1〜5のいずれか1の方法。7. 得られた(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンの反応混合物からの回収を、(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンを酢酸エチルで抽出し、得られた抽出液を濃縮して(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンの結晶を得ることによって行う、上記1〜6のいずれか1の方法。8. Cellulomonas sp. AKU672(FERM BP−6449)、Corynebacterium aquaticum AKU610(FERM BP−6447)、又はCorynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)。9. Planococcus okeanokoites AKU152(IFO 15880)又はArthrobacter sulfureus AKU635(IFO 12678)。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、Cellulomonas sp. AKU672株の電子顕微鏡写真である。Cellulomonas sp. AKU672株は、栄養寒天斜面培地上、28℃で4日間生育させた。洗浄した細胞を真空下で乾燥し、クロムでシャドウイングした。【図2】図2は、Cellulomonas sp. AKU672株の多型性を示す。細胞は、栄養ブロス上で培養した。 (4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法であって、(6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンジオンを、Cellulomonas属、Corynebacterium属、Planococcus属及びArthrobacter属からなる微生物群より選択され、かつ(6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンジオンを(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンに選択的に不斉還元することができる微生物と接触せしめ、生成した(4R,6R)−4−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンをその反応混合物から回収する方法。 Cellulomonas sp. AKU672(FERM BP−6449)、Corynebacterium aquaticum AKU610(FERM BP−6447)又はCorynebacterium aquaticum AKU611(FERM BP−6448)。 Planococcus okeanokoites AKU152(IFO 15880)又はArthrobacter sulfureus AKU635(IFO 12678)。