タイトル: | 特許公報(B2)_(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 |
出願番号: | 1999223796 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 67/08,C07C 67/03,C07C 67/62,C07C 67/58,C07C 69/54 |
木村 幸治 神林 富夫 成岡 宏人 JP 3788495 特許公報(B2) 20060407 1999223796 19990806 (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 東亞合成株式会社 000003034 小島 清路 100094190 木村 幸治 神林 富夫 成岡 宏人 20060621 C07C 67/08 20060101AFI20060601BHJP C07C 67/03 20060101ALI20060601BHJP C07C 67/62 20060101ALI20060601BHJP C07C 67/58 20060101ALI20060601BHJP C07C 69/54 20060101ALI20060601BHJP JPC07C67/08C07C67/03C07C67/62C07C67/58C07C69/54 Z C07C 67/08 C07C 67/03 C07C 67/58 C07C 67/62 C07C 69/54 特開平09−316033(JP,A) 特開昭54−066617(JP,A) 5 2001048831 20010220 11 20020213 吉良 優子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関し、更に詳しくは、(メタ)アクリル酸エステルの収率を向上させると共に、効率的に未反応の(メタ)アクリル酸や触媒として用いた酸性触媒等からなる酸分を除去することにより、品質的に優れた(メタ)アクリル酸エステルを製造することができる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関するものである。 尚、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。【0002】【従来の技術】 従来より、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、(メタ)アクリル酸とアルコールとの脱水エステル化反応や、(メタ)アクリル酸アルキルとアルコールとのエステル交換反応、あるいはエポキシ化合物への(メタ)アクリル酸の付加反応が一般的に行われている。これらのうち、特に、脱水エステル化反応は、(メタ)アクリル酸エステルの製造が容易であると共に、製造可能な(メタ)アクリル酸エステルが多様であることから、有用な製造方法である。 上記脱水エステル化反応による(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の場合は、硫酸、パラトルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸等の酸性触媒が用いられ、また、エステル交換反応による場合には、硫酸が触媒として用いられることがある。【0003】 これら(メタ)アクリル酸エステルの製造方法においては、反応後、通常は生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液に、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより、未反応の(メタ)アクリル酸や、触媒として添加した酸性触媒等からなる酸分を中和し、次いで水層を有機層と分離・除去し、得られた有機層から有機溶媒を除去することにより、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを得ている。【0004】 しかしながら、アルコールとして水酸基が導入された水添ポリブタジエン又はポリプロピレングリコールを使用した場合、得られる(メタ)アクリル酸エステルが、ノニオン系界面活性剤的な性質を有するため、中和又は水洗処理工程において、水層と有機層との分離状態が不良となってしまい、その結果、有機層と水層の分離・除去が困難となるか、あるいは分離に長時間要するようになり、(メタ)アクリル酸エステルの収率低下を引き起こすという問題点がある。また、アルコールと共に高級脂肪酸を併用して脂肪酸変性(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合にも、反応液中の未反応の高級脂肪酸が中和処理中に反応して、アニオン性界面活性剤である高級脂肪酸塩を生成したり、あるいは、得られる脂肪酸変性(メタ)アクリル酸エステル自体がノニオン性界面活性剤的な作用を有することから、同様の問題を有している。【0005】 従来は、かかる乳化を防止するために、反応液に添加するアルカリ性水溶液の量を減少させていたが、この場合は、反応液中の未反応の(メタ)アクリル酸や酸性触媒の中和が不十分となって残留し、製品に臭気が残留する等、製造された(メタ)アクリル酸エステルの品質低下を招くという問題点がある。【0006】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、かかる乳化を防止し、反応液が有機層と水層に分離する時間を短縮して(メタ)アクリル酸エステルの収率を向上させると共に、効率的に酸分を除去し、品質的に優れた(メタ)アクリル酸エステルを製造することができる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記実情に鑑みて(メタ)アクリル酸エステルの製造方法について検討した結果、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液にカチオン性界面活性剤を添加することにより、たとえ中和処理において添加されるアルカリ性水溶液の量を従来よりも増量しても、(メタ)アクリル酸エステルの乳化を防止し、有機層と水層の分離時間を短縮して収率を向上させると共に、未反応の(メタ)アクリル酸や酸性触媒等の酸分を効率的に除去できることを見いだして本発明を完成するに至った。【0008】 本第1発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、(1)(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させるか、又は(2)(メタ)アクリル酸アルキルとアルコールとをエステル交換反応させるかした後、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液を中和又は水洗処理する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、上記アルコールが、水酸基を導入した水添ポリブタジエン又はポリアルキレングリコールであり、上記中和又は水洗処理工程で、上記反応液にカチオン性界面活性剤を添加することを特徴とする。 また、本第2発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、(メタ)アクリル酸とアルコールと脂肪酸とを、エステル化反応させた後、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液を中和又は水洗処理する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、上記中和又は水洗処理工程で、上記反応液にカチオン性界面活性剤を添加することを特徴とする。【0009】 本第1発明における (1)(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル化反応〔以下、「反応(1)」という〕、及び(2)(メタ)アクリル酸アルキルとアルコールとのエステル交換反応〔以下、「反応(2)」という〕は、常法に従って行えば良い。また、本第2発明における(メタ)アクリル酸とアルコールと脂肪酸とのエステル化反応も、反応(1)と同様に行えば良い。【0010】 本第1発明における上記反応(1)としては、酸性触媒の存在下に、(メタ)アクリル酸とアルコールとを加熱・攪拌する方法等が挙げられる。 酸性触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸等が挙げられる。また、反応温度は、使用する化合物及び目的に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは70℃〜140℃である。この反応温度が70℃未満の場合は反応が遅くなり、一方、反応温度が140℃を超える場合は、反応系が不安定になって、不純物が生成したり、ゲル化をする場合がある。【0011】 当該反応に際しては、エステル化反応で生成する水との溶解度が低い有機溶媒を使用し、水を共沸させながら脱水を促進することが好ましい。好ましい有機溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、並びにメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン等が挙げられる。 また、有機溶媒は、反応後に減圧で留去してもよいが、臭気の問題がない溶媒を使用した場合には、組成物の粘度調整のために留去することなくそのまま使用してもよい。【0012】 本第1発明において、上記反応(1)におけるアルコールは、水酸基を導入した水添ポリブタジエン又はポリアルキレングリコールであり、前者としては、水添ポリブタジエンのモノオール及び水添ポリブタジエンのジオール等が挙げられる。また、後者としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられる。 本第2発明におけるアルコールとしては、種々の化合物が使用可能であり、具体的には、以下に示す1価アルコール及び多価アルコール等が挙げられる。[1]1価アルコール(i)メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソオクチルアルコール、n−ノニルアルコール及びイソノニルアルコール等のアルキルアルコール(ii)フェノール等の芳香族アルコール、ノニルフェノール等の長鎖アルキル基を有する芳香族アルコール及びこれら芳香族アルコールのアルキレンオキサイド付加物(iii)水添ポリブタジエンのモノオール及びステアリルアルコール等の分岐状又は直鎖状長鎖アルキルモノオール[2]多価アルコール(i)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等のグリコール(ii)水添ポリブタジエンのジオール等の分岐状又は直鎖状長鎖アルキルジオール(iii)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(iv)ビスフェノールA及びビスフェノールF等のビスフェノール、並びにビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物(v)トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等のポリオール、並びにこれらポリオールのアルキレンオキサイド付加物(vi)トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート 尚、上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。【0013】 また、(メタ)アクリル酸エステルとして、脂肪酸変性(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合において用いられる脂肪酸としては、ラウリル酸及びステアリン酸等の炭素数10〜20の高級脂肪酸並びにダイマー酸等が挙げられる。【0014】 上記反応(2)の例としては、触媒の存在下に、(メタ)アクリル酸アルキル及びアルコールを加熱、攪拌する方法が挙げられる。上記反応(2)における(メタ)アクリル酸アルキルの好ましい例としては、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチル等が挙げられ、アルコールの例としては、上記と同様のものが挙げられる。 上記反応(2)において用いられる触媒としては、エステル交換反応において通常使用されるものであればよく、例えば、テトラブチルチタネート、硫酸等が挙げられる。また、上記反応(2)における反応温度は、使用する原料及び目的に応じて適宜設定すればよい。【0016】 また、上記反応(1)及び(2)においては、得られる(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止する目的で、反応液に重合防止剤を添加することができる。このような重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール及びフェノチアジン等が挙げられる。【0017】 本第1発明は、上記反応(1)及び(2)で得られる(メタ)アクリル酸エステルの中でも、それ自身が乳化性を有するか、原料が乳化性を有するか、又は未反応原料が中和工程で乳化性となる(メタ)アクリル酸エステルの製造に好ましく適用できるものである。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、水添ポリブタジエンのモノオール又はジオールのモノ又はジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。 また、本第1発明は、原料として(メタ)アクリル酸を使用し、触媒として酸性触媒を使用する上記反応(1)に特に好ましく適用される。【0018】 反応液に添加される上記「カチオン性界面活性剤」は、有機層と水層の界面付近で生じた乳化状態を破壊し、乳化を抑えるという作用効果を奏する。これにより、中和又は水洗処理後、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含む有機層とアルカリ成分等を含む水層とが速やかに分離し、水層を除去することが容易になり、その結果、(メタ)アクリル酸エステルの収率を向上させることができる。【0019】 上記「カチオン性界面活性剤」としては、有機層に溶解する性質を有するカチオン性の界面活性剤であれば特に限定はない。このようなカチオン性界面活性剤に該当するものとしては、例えば、以下の式(1)に示す構造を有する塩化ベンザルコニウムや、以下の式(2)に示す長鎖アルキル基を1又は2以上有する脂肪族4級アンモニウム塩、あるいは以下の式(3)に示すエチレンオキサイド付加型アンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩及びイミダゾリニウム塩等が挙げられる。尚、上記「カチオン性界面活性剤」を反応液に添加する場合には、上記に例示されるようなカチオン性界面活性剤の1種だけでなく、2種以上を併用してもよい。【0020】【化2】【化3】【化4】【0021】 上記式(1)において、R1は炭素数8〜20のアルキル基である。 また、上記式(2)において、R2は炭素数8〜20のアルキル基であり、R2’は炭素数1〜20のアルキル基である。 更に、上記式(3)において、R3は炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜20、mは0〜20で且つn+mは1〜20である。【0022】 反応液に添加する上記「カチオン性界面活性剤」の量は、本第3発明に示すように、通常は、反応液の液量に対して0.01〜2重量%、好ましくは0.03〜1重量%である。この添加量が、反応液の液量に対して0.01重量%未満では、乳化状態の破壊が不十分となり、有機層と水層との分離が困難となり、一方、2重量%を超えると、最終的に製造された(メタ)アクリル酸エステルが混濁して、品質低下を引き起こすおそれがあるので好ましくない。 上記「カチオン性界面活性剤」は、中和又は水洗処理に先立って添加したり、あるいは中和又は水洗処理の際に同時に添加してもよい。【0023】 上記反応(1)を行った場合、あるいは硫酸等を触媒として反応(2)を行った場合、反応の終了後、反応液中の酸分の中和処理を行う当該中和工程は常法に従って行えばよく、例えば、反応液に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加し、攪拌、混合する方法等が挙げられる。この場合、アルカリ成分の量は、通常は、反応液の酸分に対してモル比にて1倍以上、好ましくは1.1〜1.6倍である。この添加量が、反応液の酸分に対してモル比にて1倍未満では、酸成分の中和が不十分となるので好ましくない。また、水洗処理工程も常法に従って行えばよく、上記反応液又は中和工程後の反応液に水を添加し、攪拌、混合する方法等が挙げられる。 上記中和処理又は水洗処理後、生成した(メタ)アクリル酸エステル類を含有する有機層を分離し、次いで、この有機層から有機溶媒を公知の方法で除去することにより、(メタ)アクリル酸エステルを得る。尚、必要に応じて、この(メタ)アクリル酸エステルを精留により精製することができる。【0024】【発明の実施の形態】 以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。 下記の実施例1〜3及び比較例1〜3において、得られたアクリル酸エステルの収量と、中和処理後の有機層と水層の分離時間及び水洗処理後の有機層と水層の分離時間を測定し、この結果を以下の表1にまとめた。尚、表1の収量の項で、「−」とは、製品を得るには至らなかったことを示す。【0025】(1)実施例1、比較例1A及び比較例1B <1>エステル化反応(実施例1、比較例1A及び比較例1Bとも共通) 原料として、ジペンタエリスリトールを400g(1.58mol)、ラウリン酸を250g(1.25mol)、ステアリン酸を88g(0.31mol)及びアクリル酸を669g(9.29mol)用いた。溶媒としてトルエン775gを用い、これに上記原料と、触媒である硫酸を17g及び重合禁止剤であるハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MQ」という。)を2.2g添加して、100℃、10時間という反応条件で、反応液の酸価が0.95meq/gを下回るまでエステル化反応を行った(転化率98%)。 <2>中和処理 上記反応終了後、トルエン1690gを添加し、ろ紙を用いて反応液をろ過し、その後、蒸留水875gで洗浄を行い、次いで、実施例1では、カチオン性界面活性剤である塩化ベンザルコニウム型逆性石けん(花王株式会社製、商品名「サニゾールB50」。尚、以下の実施例において、「上記カチオン性界面活性剤」とあるのは、全てこの「サニゾールB50」を意味する。)18.0g(反応液の液量に対して0.49重量%)及び10%NaOH水溶液800gを水洗後の反応液に添加し、室温で1時間の条件で中和処理を行った。 一方、比較例1Aでは、上記カチオン性界面活性剤を添加せず、10%NaOH水溶液を520g添加して、実施例1と同様に中和処理を行った。また、比較例1Bでは、上記カチオン性界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に中和処理を行った。 <3>水洗処理 上記中和処理後、有機層と水層が分離してから水層を除去し、更に過剰なNaOHを除去する目的で蒸留水360gを添加し、実施例1では更に上記カチオン性界面活性剤9.0gを添加して水洗処理を行った。その後、有機層と水層が分離してから水層を除去した。その後、50mmHg以下の減圧下で、溶媒であるトルエンを留去してアクリル酸エステルを得た。 一方、比較例1A、1Bでは、上記カチオン性界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に水洗処理を行った。【0026】(2)実施例2及び比較例2 <1>エステル化反応(実施例2及び比較例2とも共通) 原料として、ポリプロビレングリコール(分子量400、日本油脂株式会社製PEG#400)を1000g(2.30mol)とアクリル酸を441g(6.12mol)用いた。溶媒としてトルエン633gを用い、これに上記原料と、触媒であるパラトルエンスルホン酸を42.6g及び重合禁止剤であるMQを3.2g添加して、100℃、8時間という反応条件で、酸価が0.82meq/gを下回るまでエステル化反応を行った(転化率98%)。 <2>中和処理(実施例2及び比較例2とも共通) 上記反応終了後、トルエン1070gを添加し、ろ紙を用いて反応液をろ過し、その後、10%NaOH水溶液を1070g添加して、室温で1時間という条件で中和処理を行った。 <3>水洗処理 上記中和処理後、有機層と水層が分離してから水層を除去し、次いで、過剰なNaOHを除去するために、実施例2では上記カチオン性界面活性剤15.5g(反応液の液量に対して0.52重量%)を添加し、蒸留水300gにて水洗処理を行った。その後、有機層と水層が分離してから水層を除去し、50mmHg以下の減圧下で、溶媒であるトルエンを留去してアクリル酸エステルを得た。 一方、比較例2では、上記カチオン性界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様に水洗処理を行った。【0027】(3)実施例3及び比較例3 <1>エステル化反応(実施例3及び比較例3とも共通) 原料として、水酸基を導入した水添ポリブタジエン(Shell製、商品名「Kraton Liquid L−1203」)を1099g(0.29mol)とメタクリル酸を27g(0.31mol)用いた。溶媒としてトルエン1150gを用い、これに上記原料と、触媒であるパラトルエンスルホン酸を11.6g及び重合禁止剤であるMEHQを1.2g添加して、110℃、3時間という反応条件で、酸価が0.07meq/gを下回るまでエステル化反応を行った(転化率98%)。 <2>中和処理 上記反応終了後、トルエン970gを添加して反応液をろ過し、その後、実施例3では、反応液に上記カチオン性界面活性剤1.6g(反応液の液量に対して0.049重量%)及び5%NaOH水溶液80gを添加して、室温で1時間という条件で中和処理を行った。 一方、比較例3では、上記カチオン性界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様に中和処理を行った。 <3>水洗処理 上記中和処理後、有機層と水層が分離してから水層を除去し、次いで、過剰なNaOHを除去するために、実施例3では、上記カチオン性界面活性剤0.8gを添加し、蒸留水330gにて水洗処理を行った。その後、有機層と水層が分離してから水層を除去し、50mmHg以下の減圧下で溶媒であるトルエンを留去して、アクリル酸エステルを得た。 一方、比較例3では、上記カチオン性界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様に水洗処理を行った。【0028】【表1】【0029】(3)実施例の効果 表1より、アルコールと脂肪酸を併用して脂肪族変性アクリル酸エステルを製造した実施例1と、比較例1A及び比較例1Bを対比すると、中和工程及び水洗工程でカチオン性界面活性剤を添加した実施例1では、中和工程及び水洗工程のいずれにおいても、有機層と水層が30分以内という短時間に分離していることが分かる。 これに対し、比較例1Aでは、有機層と水層の分離時間が1時間以内であり、収量も1100gと、実施例1とほぼ同程度であるが、中和のための10%NaOH水溶液は、実施例1より少ない520gであることから、実施例1よりも酸の中和が不十分となり、アクリル酸臭の強いものとなった。また、10%NaOH水溶液の量を実施例1と同量とした比較例1Bの方では、中和段階で24時間以上たっても有機層と水層が分離できず、結局、アクリル酸エステルが得られなかったことが分かる。【0030】 アルコールとしてポリプロピレングリコールを用いた実施例2と比較例2を対比すると、両者は中和工程ではカチオン性界面活性剤を使用していないので、有機層と水層の分離時間が共に30分以内と、ほぼ同じくらいの時間であることが分かる。 これに対し、水洗工程でカチオン性界面活性剤を使用した実施例2では、有機層と水層の分離時間が60分という短時間であったのに対し、カチオン性界面活性剤未使用の比較例2では、得られたアクリル酸エステルの収量こそほぼ実施例2と同量であるが、有機層と水層の分離に24時間以上かかっていることから、アクリル酸エステルの製造効率という点では、比較例2の方が劣るものであることが分かる。【0031】 アルコールとして、水酸基が導入された水添ポリブタジエンを用いた実施例3と比較例3を対比すると、実施例3(中和工程及び水洗工程でカチオン性界面活性剤を添加)では、中和工程で5分以内、水洗工程では1.5時間で有機層と水層が分離していることが分かる。 これに対し、比較例3(カチオン性界面活性剤未使用)では、有機層と水層の分離時間が中和工程で60分以上かかり、しかも水洗工程では24時間以上経っても分離せず、最終製品を得ることができなかったことが分かる。【0032】 以上の結果より、中和処理や水洗処理においてカチオン性界面活性剤を添加すると、中和のために添加されるアルカリ性水溶液の量を増量しても、有機層と水層が短時間で分離し、酸分が十分に中和された(メタ)アクリル酸エステルが効率的に得られることが分かる。【0033】 尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。【0034】【発明の効果】 本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によれば、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液を中和又は水洗処理する際に、カチオン性界面活性剤を添加することにより、有機層と水層の界面付近での乳化を防止して、有機層と水層の分離時間を短くすることができる。 その結果、(メタ)アクリル酸エステルの収率が向上すると共に、効率的に未反応の(メタ)アクリル酸や酸性触媒を除去し、品質的に優れた(メタ)アクリル酸エステルを製造することができる。 (1)(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させるか、又は(2)(メタ)アクリル酸アルキルとアルコールとをエステル交換反応させるかした後、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液を中和又は水洗処理する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、 上記アルコールが、水酸基を導入した水添ポリブタジエン又はポリアルキレングリコールであり、 上記中和又は水洗処理工程で、上記反応液にカチオン性界面活性剤を添加することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 (メタ)アクリル酸とアルコールと脂肪酸とを、エステル化反応させた後、生成した(メタ)アクリル酸エステルを含有する反応液を中和又は水洗処理する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、上記中和又は水洗処理工程で、上記反応液にカチオン性界面活性剤を添加することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 上記カチオン性界面活性剤の添加割合が、上記反応液の液量に対して0.01〜2重量%である請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 上記カチオン性界面活性剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する塩化ベンザルコニウムである請求項1乃至3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基である。〕 上記脂肪酸が、炭素数10〜20の高級脂肪酸及びダイマー酸から選ばれたものである請求項2乃至4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。