タイトル: | 特許公報(B2)_経口用メラニン生成抑制組成物及び美白効果を有する食品 |
出願番号: | 1999219313 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 36/28,A23L 1/30,A61K 8/97,A61Q 19/02,A61P 17/16,A61P 43/00 |
阿部 高樹 桑田 敦子 松末 隆志 JP 3818483 特許公報(B2) 20060623 1999219313 19990802 経口用メラニン生成抑制組成物及び美白効果を有する食品 日本油脂株式会社 000004341 内山 充 100075351 阿部 高樹 桑田 敦子 松末 隆志 20060906 A61K 36/28 20060101AFI20060817BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060817BHJP A61K 8/97 20060101ALI20060817BHJP A61Q 19/02 20060101ALI20060817BHJP A61P 17/16 20060101ALI20060817BHJP A61P 43/00 20060101ALI20060817BHJP JPA61K35/78 TA23L1/30 BA61K8/97A61Q19/02A61P17/16A61P43/00 111 A61K 36/28 A23L 1/30 A61K 8/97 特開平08−099859(JP,A) 特開平07−025746(JP,A) 特開平09−194386(JP,A) 特開平10−120585(JP,A) 特開平11−116492(JP,A) 1 2001048801 20010220 7 20050909 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、バラあるいはキクの抽出エキスを有効成分として含有する経口用メラニン生成抑制組成物及び該組成物を含有する食品に関する。【0002】【従来の技術】一般に、日焼けによる色黒、シミ、ソバカス等は、黒褐色無定形の色素であるメラニンの生成により生ずるものである。また、生まれつき肌が色黒の人も、メラニン生成度の大きい体質の人と考えられる。生理的に、皮膚にメラニンが生成する原因は、未だ完全には解明されてはいないが、その成因の一つとして、皮膚が紫外線などの外的刺激を受けると、皮膚のメラニンを産生するメラノサイトの細胞内に存在するチロシナーゼ(チロシン酸化酵素)が活性化し、タンパク質構成アミノ酸の一種であるチロシンが酸化されて生成する機構が解明されている。体質的に色黒の人は、このチロシナーゼの活性化が鋭敏な体質と推定することができる。このことから、メラニン生成に関与するチロシナーゼの活性を抑制することにより肌を白くする効果が期待されるため、チロシナーゼ活性抑制成分の化粧料への配合が提唱されてきた。このような観点から、シミ・ソバカスの防止剤として、紫外線吸収剤の他に、アスコルビン酸やハイドロキノン誘導体等の還元剤、コウジ酸やリノール酸等のチロシナーゼ阻害剤(特開昭63−284109号公報、特開平1−85907号公報を参照)、カテコール配糖体等を主成分とする美白剤(特開平4−1115号公報を参照)、フラボノイドを主成分とする美白剤(特開昭55−92305号公報を参照)、イソフエルラ酸を主成分とする美白剤(特開昭62−10312号公報を参照)、アゼライン酸を主成分とする美白剤(特開昭61−85307号公報を参照)等が開発されてきた。一方、バラ科植物由来の生薬の抽出エキスが配合された美白化粧料(特開平3−127714号公報を参照)、バラ科植物の抽出エキスが配合された美白化粧料(特開平9−227353号公報を参照)等が開発されているが、これらはいずれも皮膚外用剤であり、経口用の美白用メラニン生成抑制組成物は知られていない。【0003】【発明が解決しようとする課題】前記の従来技術の美白剤は、いずれも皮膚外用剤であり、皮膚外用剤の場合、美白効果は塗布した局所的な部分のみの効果しか期待できないため、全身的美白効果を必要とする人には、不十分であった。さらに、美容上、特に関心の高い顔等の部分的美白効果を希望する人の場合も、発汗や物理的摩擦作用によって効果が低下あるいは消失することがあり、短時間毎に塗布しなければならないので不便であった。本発明は、このような現状において、常用しても副作用がなく、全身的美白効果があり、発汗及び摩擦によって美白作用効果が低下しない美白手段を提供することを目的とするものである。【0004】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、従来の美白剤の欠点は、皮膚に塗布するために起こる欠点であることに着目して、経口的に服用して、美白効果があるものを見いだせば、これらの欠点は同時に解決できることに着目して、従来より経皮的に効果のあるものの中から、服用しても毒性がなく、服用しても有効に作用効果が存在するものを鋭意研究した結果、バラ及びキクの抽出エキスを経口的に摂取しても顕著なメラニン産生抑制作用を持つことを発見し、この知見に基づき本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は、バラ(ただし、タイワンノイバラを除く)の抽出液を濃縮した乾燥粉末組成物を有効成分として含有する経口用メラニン生成抑制組成物を提供するものである。【0005】【発明の実施の形態】本発明経口用メラニン生成抑制組成物は、日焼けによるシミ・ソバカス、色黒等の発生並びに体質的な色素沈着を予防及び改善することを目的とした経口用組成物の形態で使用される。本発明に用いるバラ及びキクは、その花弁は食用又は薬用としても既に使用されていて、服用しても毒性のないことは知られている。本発明の抽出エキスの一つであるバラの抽出エキスは、バラ科バラ属に属する植物から抽出されるが、この植物から抽出したものであれば、茎、根、葉、花、種子のいずれからの抽出エキスであってもよい。本発明のバラの抽出エキスは、バラ科バラ属(Rosa spp.)に属する植物から抽出されたエキスを使用することができる。例えば、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、ロサ・モスカタ(Rosa moschata)、ロサ・フォエティダ(Rosa foetida)、ロサ・ギガンテア(Rosa gigantea)、ノイバラ(Rosa multiflora)、テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)等の野生種、またはこれらを交配して得られた園芸種の花、葉または茎を用いることができる。本発明に用いる他の抽出エキスであるキクの抽出エキスは、キク科キク属に属する植物から抽出されるエキスであるが、この植物から抽出したものであれば、茎、根、葉、花、種子のいずれからの抽出エキスであってもよい。本発明のキクの抽出エキスに用いる植物は、キク科キク属に属するキク(Chrisanthemum spp.)を使用することができる。例えば、イエギク(ショクヨウギク、Chrisanthemum morifolium)の花、葉または茎を用いることができる。本発明組成物に用いる抽出エキスとしては、バラ抽出エキスの方法がキク抽出エキスよりも美白効果が優れている。一般に植物から抽出エキスの抽出媒体としては、冷水、熱水、メタノールやエーテル等の有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを使用することができる。有機溶媒としては、通常抽出に使用する溶剤は制限なく使用でき、特に、アセトン、メタノール等の水溶性溶剤を使用することができ、また、これら有機溶剤と水との混合溶剤を使用することができる。本発明の植物抽出エキスは、例えば次のような製造方法によって製造することができる。植物試料をよく乾燥させた後、ミル等で細かくすり潰して粉砕し、70℃の熱水を用いて抽出する。抽出時間は、20〜60分程度であり、時間が長いほど収量が増加するが、60分を越えるとあまり増加しない。次いで、ガラスフィルターでろ過し固形物を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮又は凍結乾燥を行ない熱水抽出凍結乾燥粉末エキス組成物若しくは濃縮エキスを得ることができる。本発明の経口用メラニン生産抑制組成物は、バラあるいはキク抽出エキスの配合量は特に制限されないが、上記乾燥粉末組成物をそのまま薬剤のように粉剤、錠剤、シロップ剤又はカプセル剤の形状にして服用することができる。また、水又は液状若しくは固体増量剤に添加した美白組成物として、服用することができる。この場合は、砂糖等の甘味料、香料、ビタミン又はクエン酸等の栄養剤を添加して、ドリンク剤として摂取することができる。さらに、本発明組成物を、慣用の食品、例えば炭酸飲料、果実飲料、コーヒー、紅茶、牛乳、乳酸飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、飴、ガム、菓子、パン、めん類等に混合して経口的に摂取することができる。この場合は、添加される慣用食品の風味を壊さない程度の添加量にするのが望ましい。美白効果と風味との関係で、通常1〜50重量%、好ましくは10〜30重量%含有させることができる。本発明の美白効果を得るためには、成人1日の摂取量は、前記濃縮エキスとして、0.05g以上、好ましくは1g以上を摂取するのが望ましい。本発明の組成物は、少量でも毎日の規則的摂取量に応じた美白効果があり、大量に摂取しても毒性がないので、可能な限り多量に摂取するほど美白効果が向上する。体質的な色黒肌の場合は、最初は大量に服用して、美白効果が得られた後は、摂取量を減少させることができる。本発明組成物は副作用がないので、自由に摂取量を変更できる。【0006】【実施例】 以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例により限定されるものではない。実施例1 洗浄後、1本のバラの樹木(茎、根、葉、花、種子を含む)を乾燥して得たバラ原料100gをミル等で細かく粉砕し、フラスコに入れ熱水1000mlを添加して、70℃の温度で撹拌しながら30分間抽出処理する。次いで、抽出処理物をガラスフィルターでろ過し、固形物を取り除き、ろ液を減圧濃縮によって、18.2gのバラ抽出濃縮エキスを得た。参考例1 洗浄後、1本のキク樹木(茎、根、葉、花、種子を含む)を乾燥して得たキク原料100gをミル等で細かく粉砕し、熱水1000mlを添加し、70℃で撹拌しながら30分間抽出処理する。次いで抽出物をガラスフィルターで濾過し、固形物を取り除き、ろ液を凍結乾燥によって濃縮し、20.8gのキク抽出エキスを得た。実施例3 培養したマウス由来のB16メラノーマ細胞から抽出したチロシナーゼ粗酵素液を用い、バラ抽出エキスとキク抽出エキスのチロシナーゼ活性阻害の測定を行なった。 なお、チロシナーゼ活性の測定は、基質であるL−DOPA(ジヒドロキシフェニルアラニン)からチロシナーゼにより生産されるドーパクロムを、490nmの吸光度測定によって定量する方法を用いた。ウエルプレート[FALCON社製]の13×100mmの試験管にバラ抽出エキスあるいはキク抽出エキスを入れ、PBS緩衝液で溶解した1mML−DOPA(ジヒドロキシフェニルアラニン)1mlとチロシナーゼ粗酵素液0.05mlを添加した。最終濃度は、抽出エキスが1.2、0.8、0.4%となるようにした。37℃で30分間インキュベーション後、分光光度計を用いて490nmの吸光度を測定した。対照群(PBS緩衝液のみ)の吸光度に対する比率を算出して、試料のチロシナーゼ活性阻害率とした。結果を第1表に示した。【0007】【表1】【0008】第1表からもわかるように、バラ抽出エキス及びキク抽出エキスは、濃度依存的にチロシナーゼ活性抑制作用を有することが確認された。実施例4マウス由来のB16メラノーマ細胞を使用し、細胞白色化効果の評価を行った。メラノーマ細胞を直径10cmの培養皿内に1×105個/皿の密度でまき、そしてウシ胎児血清を10%含むダルベッコ変法イーグル培地を使用して37℃において24時間培養した。その後、バラ抽出エキスあるいはキク抽出エキスをその培地中濃度が1%、0.5%、および0.2%となるように添加し、さらに6日間培養した。対照として、生理食塩水を添加したものを用いた。培養終了後、該培地を捨てて各ウエルプレートに1mlの生理食塩水を加え、スクレーパーを用いてウエルの底面に付着している細胞をかきとるように懸濁させた。次にピペットを用いて該細胞懸濁液をマイクロ遠心チューブ[1.5ml容量、エッペンドルフ社製]に移し、遠心分離(1000G、15分間)した。次に、ペレットとなった細胞の白色化の度合いを目視で比較し、メラニン生成抑制効果の判定を行った。その際、対照群の細胞の白色化度合を±とし、これよりやや白色の場合は+、これよりはっきりと白色の度合が強い場合を++として、3段階の判定を行った。なおその結果は第2表に示した。【0009】【表2】【0010】第2表からもわかるように、バラ抽出エキス及びキク抽出エキスは、濃度が大きいほどメラニン生成抑制作用を有することが確認された。この試験方法における細胞白色化効果は経皮的に塗布する方法の美白効果に密接に関係する。従って、経皮的な塗布方法による場合は、キク抽出エキスの方がバラ抽出エキスよりも美白効果があると認められる。実施例5PUVA処置により有色モルモットA−1を用いたバラ抽出エキス、キク抽出エキスの表皮内チロシナーゼ活性阻害効果について検討した。本試験に使用した有色モルモットA−1は、English系の有色モルモットJY−8とハートレー系アルビノモルモットとの交配種であり、シナモン色の被毛を持つ。4週齢の雄性該被験動物(体重60g)に、バラ抽出エキスあるいはキク抽出エキスの10%水溶液、5%水溶液、および1%水溶液を1日当り5ml経口投与し、2週間飼育した。対照はバラ抽出エキスあるいはキク抽出エキスの代りに水を投与し、同様に2週間飼育した。その後、背部被毛をバリカンとシェーバーで剃毛した後、外科的に2×2cmの正方形の皮膚を採取し、ディスパーゼに浸すことにより表皮を剥離した。2mlのPBS中でホモジナイズし、チロシナーゼ活性測定用の試料とした。この試料0.05mlを1mlの1mML−DOPA溶液中に添加し、37℃で30分間インキュベート後、分光光度計を用いて490nmの吸光度を測定した。対照群の吸光度に対する比率を算出して、試料のチロシナーゼ活性阻害率とした。結果を第3表に示した。有色モルモットの肌の褪色の有無は対照との対比で、色の褪色が目視観察で感知できるものを「有」とした。【0011】【表3】【0012】第3表からもわかるように、バラ抽出エキス及びキク抽出エキスは、経口投与において投与量に依存して、表皮のチロシナーゼ活性を阻害することが確認された。これは2週間の摂取期間であるので、長期にわたって常用する場合は、人間に対する1日の摂取量は、50mg以上と考えられる。本実施例の結果は、経口的に摂取した場合の美白効果に対応するものである。本実施例の結果は、経口的に摂取した場合は、美白作用効果はバラ抽出エキスの方が優れていて、実施例4の経皮的摂取の場合と逆転していることを示している。実施例6実施例1で得たバラ抽出濃縮エキスを用いて、次の処方で風味が良好な飲料を製造した。水 40gバラ抽出濃縮エキス 100mg果糖ブドウ糖液糖 10gクエン酸 250mgビタミンC 50mgクエン酸三ナトリウム 50mg香料 10mg【0013】【発明の効果】本発明は、経口的に摂取する美白組成物によって、副作用がなく、全身的美白効果及び発汗及び摩擦によって影響されない美白効果を得ることを可能としたものであり、美白美容方法にとって有用な発明である。さらに、季節的な日焼け防止効果のみならず、体質的なメラニン発生防止(体質的色黒肌の褪色)を得るために、長期間の服用によっても副作用がない利点がある。 バラ(ただし、タイワンノイバラを除く)の抽出液を濃縮した乾燥粉末組成物を有効成分として含有する経口用メラニン生成抑制組成物。