タイトル: | 特許公報(B2)_イミダゾリン化合物の製造法 |
出願番号: | 1999209047 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 233/22,B01J 27/16,B01J 27/18,C07B 61/00 |
久保 誠 井元 浩之 JP 4342645 特許公報(B2) 20090717 1999209047 19990723 イミダゾリン化合物の製造法 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 古谷 馨 100063897 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 久保 誠 井元 浩之 20091014 C07D 233/22 20060101AFI20090917BHJP B01J 27/16 20060101ALI20090917BHJP B01J 27/18 20060101ALI20090917BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090917BHJP JPC07D233/22B01J27/16 XB01J27/18 XC07B61/00 300 C07D 233/00-233/96 CA/REGISTRY(STN) 特開平05−059013(JP,A) 特開昭55−083753(JP,A) 特公昭61−039939(JP,B1) 特開平03−163064(JP,A) 特開昭54−063078(JP,A) 2 2001031655 20010206 10 20051117 植原 克典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、副生成物であるジアミド含量が少なく、色相が良好な高品質のイミダゾリン化合物の製造法に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】イミダゾリン環構造を有し、一位をアルキロール基により置換された化合物(以後イミダゾリン化合物と記す)はイミダゾリン型界面活性剤の有用な中間体として知られおり、市販されているシャンプーの一部にはこの界面活性剤が使用されている。特に近年、洗浄剤等に用いられる界面活性剤は、界面活性能の他に生分解性、安全性、皮膚に対して低刺激である等、諸特性に優れたものが要望されており、これらの要件を満たす界面活性剤の一つにイミダゾリン型界面活性剤がある。【0003】イミダゾリン型界面活性剤は優れた起泡力、洗浄力に加え、眼や皮膚に対する刺激が極めて低い特徴があり、近年低刺激性シャンプー等の主要成分としてその使用量が増加している。このように、イミダゾリン化合物は種々のイミダゾリン型界面活性剤の中間体として有用であるのみならず、それ自体も界面活性剤として多用されている。この場合、イミダゾリン化合物の品質に要求される点として、副生成物であるジアミドの含量が低いこと、及び色相の良好なこと等が挙げられる。【0004】イミダゾリン化合物は高級脂肪酸又はそのエステルとジアミンとを脱水縮合させることにより製造され、この縮合反応は、脂肪酸又はそのエステルを使用すると、まずそのアミドアミンが生成し(反応式▲1▼)、次にこれが環化して所定のイミダゾリン環が生成する(反応式▲2▼)。この反応は脂肪酸を原料として用いた場合、次のように例示することができる。【0005】【化2】【0006】(上記一連の反応式中、R はアルキル基、X'はアルキロール基を示す。)かかるジアミドは、水に対する溶解性に乏しく、ジアミド含量の多いイミダゾリン化合物をシャンプー等の最終製品に原料として用いた場合には、製品系での濁りの原因となるばかりでなく、各種添加剤の溶解性を阻害し、商品の外観あるいは商品が本来有する性能をも著しく損ねるケースが多々ある。【0007】低ジアミド含量のイミダゾリン化合物の製造法として、例えば特公昭61−39939 号、特開昭54−63078 号等に記載の方法がある。前者の方法は、ジアミンの蒸気圧より高い特定の圧力下で反応を行い、ジアミド含量の少ないイミダゾリン化合物を得ようとするものであり、この方法の実施例には 3.2〜 4.0重量%程度のジアミドが製品中に含まれるように記載されているが、その方法を実施した場合(本願比較例9参照)、実際には10重量%程度のジアミドが製品中に含まれることが判明し、製品品質として十分に満足されるものではなかった。また、後者の方法は、圧力を時間に対して対数的に低下させる方法であるが、反応時間が長く、色相等の他の品質が損なわれる可能性が高く、しかも反応操作が煩雑であり、合理的な製法とは言えない。【0008】本発明の課題は、ジアミド含量が少なく、色相が良好な高品質のイミダゾリン化合物を簡単な操作で効率的に製造する方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明は、一般式(1)R1COOR2 (1)(式中、R1は炭素数7〜21のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表される高級脂肪酸又はそのエステル(以下高級脂肪酸等(1) と略記)と、一般式(2)H2NC2H4NHX (2)(式中、 Xは炭素数2〜4のアルキロール基を示す。)で表されるジアミン(以下ジアミン(2) と略記)とを反応させ、一般式(3)【0010】【化3】【0011】(式中、R1及び Xは上記一般式(1) 、(2) と同じ)で表されるイミダゾリン化合物(以下イミダゾリン化合物(3) と略記)を製造するに際し、第1リン酸塩、又は亜リン酸もしくはその塩の存在下に反応を行うイミダゾリン化合物の製造法である。【0012】【発明の実施の形態】本発明に用いられる高級脂肪酸等(1) として、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸又はこれらのメチルエステル、エチルエステル等が挙げられ、ジアミン(2)として、例えば、H2NC2H4NHC2H4OH、H2NC2H4NHC3H6OH 等が挙げられる。【0013】本発明に用いられる第1リン酸塩として、リン酸のアルカリ金属塩 (Na塩, K 塩等)又はアンモニウム塩が挙げられる。また亜リン酸もしくはその塩として、一般式(4)M2PHO3 (4)(式中、M は水素原子又は1価の陽イオンを示し、2個のM は同一でも異なっていてもよい。)で表されるものが挙げられ、M で示される1価の陽イオンとして、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、具体的にはNa、K 、NH4 等が挙げられ、亜リン酸が好ましい。【0014】第1リン酸塩、亜リン酸もしくはその塩は最初から、即ち原料の高級脂肪酸等(1) とジアミン(2) を仕込む時に添加しても、或いはアミド化が終了しイミダゾリンの閉環工程に移るまでのいずれかの段階で添加してもよい。また第1リン酸塩は、塩になったものを添加してもよいが、リン酸と塩基(例えばNaOH, KOH,アンモニア水等)とを、第1塩を系内で生成する様に別々に添加してもよく、イミダゾリン化工程で、第1リン酸塩の形で系内に存在する様に仕込めばよい。【0015】本発明の製造法において、高品質のイミダゾリン化合物を得るための反応温度は80〜 220℃が好ましいが、更には、まず第1段階としてのアミド化を80〜 180℃で行うと生成水が急激に大量に留去することがないため好ましく、次いでイミダゾリン化を 180〜 220℃で行うと、ジアミド含量を低下させることができ、また色調の劣化を招かないため好ましい。【0016】また反応圧力は、生成する水又は低級アルコールを効率的に排除でき、かつ原料のジアミンが水と一緒に系外に出ないようにするため、600mmHg 〜1mmHgの範囲が好ましい。特にアミド化では400mHg程度が好ましく、イミダゾリンへの閉環反応では200 mmHg以下が好ましく、更に残存するジアミンの除去の工程では50mmHg以下、好ましくは10mmHg以下まで下げる方が良い。このイミダゾリンの閉環時及びジアミン除去の工程でジアミドが分解し、モノアミド、更にはイミダゾリンへと変換されるのである。【0017】本発明の方法においてジアミン(2) と高級脂肪酸等(1) のモル比は、1:1ないし 1.5:1が好ましく、1:1ないし 1.3:1がより好ましい。また、使用される第1リン酸塩、亜リン酸もしくはその塩の量は、ジアミド含量の低減化及び経済的観点から、高級脂肪酸等(1) に対し0.01〜5モル%が好ましく、 0.05 〜3モル%がより好ましい。【0018】【実施例】実施例14ツ口フラスコに、ラウリン酸200 g (1モル)とアミノエチルエタノールアミン 109.2g(以下AEEAと略記) とを仕込んだ後、還流冷却器に80℃の温水を通しながら攪拌し、 140℃へ加熱した。その後反応圧力を1時間かけて 400mmHgに設定し、2時間反応させアミド化を行なった。その後、N2で常圧に戻し、NaH2PO4 3.0g(0.025 モル) を添加した。次に反応温度を 200℃、圧力を 1.5時間かけて 200mmHgまで下げ、この条件で1時間熟成を行なった。更に圧力を約 1.5時間かけて10mmHgまで下げ、この条件で1時間反応を行い過剰のAEEAを除去した。この間、生成水及びAEEAの蒸気はドライアイス/メタノール冷却トラップに捕集した。反応終了物は、高速液体クロマトグラフィーを用いて組成分析を行なった。また色相をガードナー比色法により評価した。結果を表1に示す。【0019】実施例2実施例1のNaH2PO4 の代わりにKH2PO4 1.36g(0.01モル)を用いる以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0020】実施例3ヤシ油脂肪酸メチルエステル 220.5g(1モル)とAEEA 109.2gを実施例1と同様な反応器に仕込み、 160℃まで約1時間かけて昇温した。その後約1時間かけて 200mmHgまで減圧し、その状態で1時間熟成を行ないアミド化を行なった。次にN2で常圧に戻し、NaH2PO4 0.012g(0.001モル) を添加した。その後反応温度を 200℃、圧力を 1.5時間かけて 200mmHgにし、この条件で1時間熟成を行なった。更に圧力を約 1.5時間かけて10mmHgまで下げ、この条件で1時間反応を行い過剰のAEEAを除去した。この間、生成水、メタノール及びAEEAの蒸気はドライアイス/メタノール冷却トラップに捕集した。反応終了物は、実施例1と同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0021】実施例4実施例3のNaH2PO4 の代わりにNH4H2PO4 2.3g(0.02モル)を用いる以外は実施例3と同じ条件で反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0022】実施例5実施例3でNaH2PO4 1.2g(0.01モル)をメチルエステル及びAEEAと同時に仕込んで、以下実施例3と同じ条件で反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0023】実施例6実施例3でNaH2PO4を添加する代わりに、アミド化終了時、リン酸0.98g(0.01モル) 、CH3ONaの28%メタノール溶液1.93g(0.01モル)を加え、その後の条件は実施例3と同じで反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0024】実施例7実施例1のNaH2PO4 の代わりに亜リン酸0.82g(0.01モル)を用いる以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0025】実施例8実施例3のNaH2PO4 の代わりに亜リン酸2.46g(0.03モル)を用いる以外は実施例3と同じ条件で反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0026】実施例9実施例7で亜リン酸0.08g(0.001モル)をラウリン酸及びAEEAと同時に仕込む以外は実施例7と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0027】実施例10実施例8で亜リン酸0.041 g(0.0005 モル)をヤシ油脂肪酸メチルエステル及びAEEAと同時に仕込む以外は実施例8と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表1に示す。【0028】比較例1実施例1でNaH2PO4 を添加せずに反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0029】比較例2実施例3でNaH2PO4 を添加せずに反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0030】比較例3実施例3でNaH2PO4 の代わりにNa2HPO4 1.4 g(0.01モル)を加え、その後の条件は実施例3と同じで反応を行ない、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0031】比較例4実施例9で亜リン酸の代わりに35%塩酸3.13g(0.03モル)を加え、その後の条件は実施例9と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0032】比較例5実施例9で亜リン酸の代わりに98%硫酸3g(0.03モル)を加え、その後の条件は実施例9と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0033】比較例6実施例9で亜リン酸の代わりにホウ酸1.85g(0.03モル)を加え、その後の条件は実施例9と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0034】比較例7実施例9で亜リン酸の代わりに次亜リン酸1.98g(0.03モル)を加え、その後の条件は実施例9と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0035】比較例8実施例9で亜リン酸の代わりにリン酸2.94g(0.03モル)を加え、その後の条件は実施例9と同じ条件で反応を行い、同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0036】比較例9特公昭61−39939 号の方法に従ってイミダゾリン化合物の合成を行なった。実施例1と同様の反応器を使用し、攪拌しながら200gのラウリン酸とAEEA 109.2gとを仕込み、圧力を下げて 100mmHgに達してから加熱を始めた。フラスコ内の温度が 130℃に達し、反応生成水の流出が始まったら、昇温速度を緩めて 180℃の反応温度まで到達させて3時間反応させた。その後反応圧力を10mmHgまで低下させ、過剰のAEEAを除去した後に冷却した。反応終了物は実施例1と同様に組成を分析し、色相を評価した。結果を表2に示す。【0037】【表1】【0038】【表2】【0039】【発明の効果】本発明によれば、従来極めて困難と考えられていた高品質のイミダゾリン化合物の製造が簡単に達成できた。しかも本発明の方法は工業的な操作は極めて簡単である。また、本発明の製造法によって得られたイミダゾリン化合物は、色相が良好で純度が高く、かつジアミドの含量が低いために高品質のイミダゾリン化合物として各種の用途に後処理を要せずにそのまま使用できる。 一般式(1) R1COOR2 (1)(式中、R1は炭素数7〜21のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表される高級脂肪酸又はそのエステルと、一般式(2) H2NC2H4NHX (2)(式中、X は炭素数2〜4のアルキロール基を示す。)で表されるジアミンとを反応させ、一般式(3)(式中、R1及びX は上記一般式(1) 、(2) と同じ)で表されるイミダゾリン化合物を製造するに際し、リン酸のアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩から選ばれる第1リン酸塩、又は亜リン酸の存在下に反応を行うイミダゾリン化合物の製造法。 第1リン酸塩、又は亜リン酸を、一般式(1)で表される高級脂肪酸又はそのエステルに対し0.01〜5モル%添加する請求項1記載の製造法。