タイトル: | 特許公報(B2)_溶血試薬及びこれを用いたヘモグロビン類の測定方法 |
出願番号: | 1999191928 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 30/06 |
瀬戸口 雄二 大石 和之 嶋田 一彦 JP 4094776 特許公報(B2) 20080314 1999191928 19990706 溶血試薬及びこれを用いたヘモグロビン類の測定方法 積水化学工業株式会社 000002174 瀬戸口 雄二 大石 和之 嶋田 一彦 20080604 G01N 30/88 20060101AFI20080515BHJP G01N 30/06 20060101ALI20080515BHJP JPG01N30/88 QG01N30/06 Z G01N 30/88 G01N 30/06 G01N 33/48 JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開平11−072497(JP,A) 特開平08−501321(JP,A) 特開平09−152431(JP,A) 特開平02−042969(JP,A) 特開2000−088835(JP,A) 特開平10−227780(JP,A) 特開昭58−000760(JP,A) 特開2000−055899(JP,A) 特開2000−146941(JP,A) 3 2001021555 20010126 13 20060420 河野 隆一朗 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬及びこれを用いたヘモグロビン類の測定方法に関する。【0002】【従来の技術】糖化ヘモグロビン、特にヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)は糖尿病診断の指標として広く利用されている。HbA1cとは血液中の糖が赤血球に入った後に、ヘモグロビンと不可逆的に結合して生成したものであり、過去1〜2カ月間の血液中の平均的な糖濃度を反映する。【0003】このHbA1cの測定方法としては、一般に液体クロマトグラフィー法や免疫法が用いられている。【0004】液体クロマトグラフィー法によるHbA1cの測定は、主にカチオン交換液体クロマトグラフィー法により行われている(特公平8−7198号公報など)。溶血液試料をカチオン交換液体クロマトグラフィーにより分離すると、通常、ヘモグロビンA1a(以下、HbA1aという)及びヘモグロビンA1b(以下、HbA1bという)、ヘモグロビンF(以下、HbFという)、不安定型HbA1c、安定型HbA1c並びにヘモグロビンA0(以下、HbA0という)などのピークが出現する。なお、糖尿病の診断の指標として使用されているHbA1cは、最近では、上記のうちの安定型HbA1cであり、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)として求められている。【0005】しかし、安定型HbA1cピークと不安定型HbA1cピークの分離が困難であるため、特開昭63−298063号公報では、赤血球および/または、ヘモグロビンを含む試料を、リン酸縮合体および/またはリン酸縮合体の塩を含む解離溶媒質と接触させて、不安定型ヘモグロビンをヘモグロビンとグルコースに解離して測定する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、安定型HbA1cの分離が不十分なため、測定精度が悪いという欠点があった。【0006】また、液体クロマトグラフィー法でのヘモグロビン類の測定方法においては、アセチル化ヘモグロビン(以下、AHbという)やカルバミル化ヘモグロビン(以下CHbという)などの修飾ヘモグロビンの影響を受けると言われ、AHbやCHbのピークも安定型HbA1cピーク付近に溶出するため、従来法によっては、短時間での分離が困難であった。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記ヘモグロビン類の測定方法の問題点に鑑み、従来法より安定型HbA1cを精度良く分離可能な、また、さらに短時間に測定可能な溶血試薬及びこれを用いたヘモグロビン類の測定方法を提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、カオトロピックイオンを含有することを特徴とする溶血試薬を提供する。また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の溶血試薬であって、さらに緩衝剤を含有し、pHが5.0〜10.0であることを特徴とする溶血試薬を提供する。また、請求項3記載の本発明は、請求項1または2記載の溶血試薬を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法を提供する。以下に本発明を詳細に説明する。【0009】本発明における溶血試薬とは、赤血球より低張な水溶液であれば良い。また、ここで言う溶血とは、赤血球膜が破れ、血色素などの内容物(例えば、ヘモグロビン類)が赤血球外に出ることである。【0010】本発明におけるカオトロピックイオンとは、水溶液に解離して生じたイオンにより、水の構造が破壊され、疎水性物質と水が接触したときに起こる、水のエントロピー減少を抑制するもので、具体的には、陰イオンとしては、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン等が挙げられ、またその他に尿素等が挙げられる。また、陽イオンとしては、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、グアニジンイオン等が挙げられる。安定型HbA1cの測定精度を向上させるためには、より好ましくは、陰イオンとして、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる、陽イオンとしては、グアニジンイオン等が挙げられる。【0011】上記カオトロピックイオンの溶血試薬中の濃度は、0.1mM〜3000mMが好ましく、1mM〜1000mMがより好ましい、より好ましくは、10mM〜500mMである。0.1mMより低いとヘモグロビン類の測定において、分離効果が低下し、測定精度が悪くなる。また、3000mMよりも高くてもヘモグロビン類の分離効果はそれ以上向上しないので、測定精度は向上しない。また、これらカオトロピックイオンは、単独でもまた、複数種混合して用いてもよい。【0012】本発明の溶血試薬は、請求項2記載の如くカオトロピックイオンの他にさらに緩衝剤を含むpH5.0〜10.0の溶血試薬であることが好ましい。上記緩衝剤としては無機酸、有機酸もしくはこれらの塩又は有機物が挙げられる。上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等が挙げられる。上記有機酸・有機物としては、例えば、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アニリンまたはアニリン誘導体、アミノ酸、アミン、イミダゾール、ピリジン、カコジル酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリシルグリシン、ピロリン酸等が挙げられる。【0013】上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β、β−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸等が挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。上記アニリンまたはアニリン誘導体としては、ジメチルアニリン等が挙げられる。上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシン等が挙げられる。上記アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、等が挙げられる。上記イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、5(4)−メチルイミダゾール、2,5(4)−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。【0014】上記無機酸または有機酸の塩としては、公知のものでよく、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。【0015】また、上記緩衝剤としては、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(Tris)、等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものを組成する物質も使用できる。【0016】上記無機酸、有機酸又はこれらの塩としては、単独でもまた、複数混合して用いても良く、無機酸と有機酸を混合して用いてもよい。【0017】上記緩衝剤の溶血試薬中の濃度は、水に溶解された状態で緩衝作用がある範囲であればよく、0.1mM〜1000mMであり、好ましくは1〜500mM、より好ましくは2〜200mMである。【0018】請求項2記載の本発明の溶血試薬のpHは、pH5.0〜10であり、好ましくはpH5.5〜9.5であり、より好ましくは、6.0〜9.0である。pHが5.0より低くても、また10より高くても、ヘモグロビンが変性する。【0019】上記溶血試薬には、以下の物質を添加してもよい。(1)無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜1500mMである。(2)pH調節剤として、公知の酸、塩基を添加してもよい。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等が挙げられ、また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カドミウム等が挙げられる。 これらの酸、塩基の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜500mMである。(3)メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンなどの水溶性有機溶媒と混合してもよい。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0〜80体積%であり、カオトロピックイオン、無機酸、有機酸、これらの塩などが析出しない程度で用いるのが好ましい。【0020】(4)界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を添加してもよい。界面活性剤を用いることにより、溶血を効率よく行うだけでなく、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で測定を行う場合、溶血試薬の通過する流路等を洗浄する効果がある。上記界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤が使用され、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表す。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチルーステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でもまた複数混合して用いてもよい。【0021】これらの界面活性剤の添加量は、好ましくは0.01〜10重量%である。【0022】請求項3の本発明は、上述の請求項1または2記載の溶血試薬を用いるヘモグロビン類の測定方法である。【0023】本発明におけるカチオン交換液体クロマトグラフィーで用いられる溶離液は、上記緩衝剤と同様の無機酸、有機酸もしくはこれらの塩又は有機物を水溶液に溶解して用いられる。【0024】上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等が挙げられる。上記有機酸・有機物としては、例えば、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アニリンまたはアニリン誘導体、アミノ酸、アミン、イミダゾール、ピリジン、カコジル酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリシルグリシン、ピロリン酸等が挙げられる。【0025】上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β、β−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸等が挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。上記アニリンまたはアニリン誘導体としては、ジメチルアニリン等が挙げられる。上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシン等が挙げられる。上記アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、等が挙げられる。上記イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、5(4)−メチルイミダゾール、2,5(4)−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。【0026】上記無機酸または有機酸の塩としては、公知のものでよく、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。【0027】上記無機酸、有機酸又はこれらの塩としては、単独でもまた、複数混合して用いても良く、無機酸と有機酸を混合して用いてもよい。【0028】上記緩衝剤の溶離液中の濃度は、水に溶解された状態で緩衝作用がある範囲であればよく、0.1mM〜1000mMであり、好ましくは1〜500mM、より好ましくは2〜200mMである。【0029】本発明に用いられる溶離液のpHは、通常pH4.0〜13.5であり、好ましくはpH4.5〜12.0であり、より好ましくは、5.0〜10.0である。pHが4.0より低くても、また13.5より高くても、ヘモグロビンが変性する。上記溶離液中の緩衝剤としては、酸解離定数(pKa)が1.5〜6.8と6.8〜13の両方にあるものを用いるのが良い。この場合、緩衝液組成として、複数の物質を含有している場合でも、それぞれの物質のpKa値が1.5〜6.8と6.8〜13の両方にあればよい。また一種類の物質でpKa値が1.5〜6.8と6.8〜13の両方にある緩衝液でも良い。【0030】また、本発明の測定方法において、溶離液を測定途中で切り替えたり、グラディエント溶出、ステップアップグラディエント溶出を行ってもよい。【0031】本発明のカチオン交換液体クロマトグラフィーにおいて用いられる充填剤は、少なくとも1種以上のカチオン交換基を有している粒子よりなるものであり、例えば、高分子粒子にカチオン交換基を導入することで得られる。【0032】該カチオン交換基は、公知のものでよく特に制限はない。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのカチオン交換基等が挙げられる。また、このカチオン交換基は、複数種導入しても良い。【0033】上記粒子の直径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜8μmである。また、粒度分布は、変動係数値(CV値)(粒径の標準偏差÷平均直径×100(%))として、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。【0034】上記高分子粒子としては、例えば、シリカ、ジルコニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリアクリル酸エステルなどの合成高分子粒子などが挙げられる。上記高分子粒子は、導入されるイオン交換基以外の構成成分は、より親水性であることが好ましい。また耐圧性・耐膨潤性の点から架橋度の高いものが好ましい。【0035】上記高分子粒子へのカチオン交換基の導入は、公知の方法により行うことができるが、例えば、高分子粒子を調製後、粒子が有する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基など)に、化学反応でカチオン交換基を粒子に導入させる方法により行うことができる。また、カチオン交換基を有する単量体を重合して高分子粒子を調製する方法によってもカチオン交換充填剤を調製できる。例えば、カチオン交換基含有単量体と架橋性単量体等とを混合し、重合開始剤の存在下に重合する方法などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの重合性カチオン交換基含有エステルを架橋性単量体などと混合し、重合開始剤存在下で重合した後、得られた粒子を加水分解処理し、エステルをカチオン交換基に変換させてもよい。更に、特公平8−7197号公報に記載のように、架橋重合体粒子を調製した後、カチオン交換基を有する単量体を添加して、重合体粒子の表面付近に、該単量体を重合させても良い。【0036】上記充填剤はカラムに充填されて液体クロマトグラフィー測定に用いられる。カラムのサイズは、内径0.1〜4mm、長さ5〜200mmのものが好ましく、より好ましくは、内径0.3〜3mm、長さ7〜18mmである。カラムサイズは、内径0.1mm、長さ5mmより小さくなると作業性が悪く分離機能も悪くなる。また、内径4mm、長さ200mmより大きくなると使用する充填剤量が多くなるだけでなく、分離機能も悪くなる。【0037】充填剤のカラムへの充填方法は、公知の任意の方法が使用できるがスラリー充填法がより好ましい。具体的には、例えば、充填剤粒子を溶離液などの緩衝液に分散させたスラリーを送液ポンプなどによりカラムに圧入することにより行う。【0038】上記カラムの素材としては、公知のステンレス等の金属、ガラス、PEEK等の樹脂などが用いられる。また、カラムの充填剤とカラム本体が接する部位を、不活性な素材で被覆してもよく、その素材としては、例えばPEEK、ポリエチレン、テフロン、チタン化合物、珪素化合物、シリコン膜等が挙げられる。【0039】上記測定に使用される液体クロマトグラフは、公知のものでよく、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、カラム、検出器などから構成される。また、他の付属装置(カラム恒温槽や溶離液の脱気装置など)が適宜付属されてもよい。【0040】上記測定方法における、他の測定条件としては、公知の条件でよく、溶離液の流速は、好ましくは0.05〜5ml/分、より好ましくは0.2〜3ml/分である。ヘモグロビン類の検出は、415nmの可視光が好ましいが、特にこれのみに限定されるわけではない。測定試料は、通常、界面活性剤など溶血活性を有する物質を含む溶液により溶血された溶血液を希釈したものを用いる。液体クロマトグラフへの試料注入量は、希釈倍率により異なるが、好ましくは0.1〜100μl程度である。【0041】【実施例】次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。【0042】(実施例1)〔充填剤1の調製:カルボキシル基〕テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及びメタクリル酸(和光純薬社製)150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。【0043】〔カラムの充填〕得られた充填剤1をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH5.8)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(4.6φ×30mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力300kg/cm2 で定圧充填した。【0044】〔ヘモグロビン類の測定〕得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。【0045】(測定試料:A)健常人血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10mg/mlとなるよう添加した。これに、150倍量の溶血試薬(界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血し、測定試料とした。(測定試料B;AHb)健常人血10mlにフッ化ナトリウムを添加し(10mg/ml)、さらに0.3重量%アセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mlを添加し、37℃で3時間反応させた。これに、150倍量の溶血試薬(0.1重量%トリトンX−100と100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血し、測定試料とした。【0046】(測定結果)上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図1、2に示す。図1は、試料Aを測定した結果、図2は、試料Bを測定した結果を示す。ピーク1はHbA1a及びb、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHbを示す。図2では、ピーク4と6とが良好に分離されている。また、上記測定試料A、Bを5検体測定し安定型HbA1cの測定精度(SD;標準偏差、CV;変動係数値)を求めた結果を表1に示す。【0047】【表1】【0048】(実施例2)溶血試薬に以下の試薬を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でヘモグロビン類の測定を行った。溶血試薬(pH8.0)(0.1重量%トリトンX−100と80mMチオシアン酸及び10mMリン酸緩衝溶液)で測定試料A、Bを溶血し、150倍に希釈して測定試料とした。得られたクロマトグラムは図2と同様に良好であった。【0049】(実施例3)溶血試薬に以下の試薬を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でヘモグロビン類の測定を行った。溶血試薬(pH8.0)(0.1重量%トリトンX−100と40mM過塩素酸及び10mMリン酸緩衝溶液)で測定試料A、Bを溶血し、150倍に希釈して測定試料とした。得られたクロマトグラムは図2と同様に良好であった。【0050】(実施例4)溶血試薬に以下の試薬を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でヘモグロビン類の測定を行った。溶血試薬(pH8.0)(0.1重量%トリトンX−100と50mM尿素及び10mMリン酸緩衝溶液)で測定試料A、Bを溶血し、150倍に希釈して測定試料とした。得られたクロマトグラムは図2と同様に良好であった。【0051】(実施例5)〔充填剤2の調製及び充填:スルホン酸基〕重合性単量体としてメタクリル酸のかわりに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸150gを用いたこと以外は、実施例1と同様にし、充填剤を得た。また、カラムへの充填も実施例1と同様に行った。【0052】〔ヘモグロビン類の測定〕得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。測定システムは、実施例1と同様のものを使用した。(測定試料)溶血試薬に以下の試薬を用いヘモグロビンの測定を行った。溶血試薬(pH8.0)(0.1重量%トリトンX−100と60mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液)で測定試料A、Bを溶血し、150倍に希釈して測定試料とした。得られたクロマトグラムは図2と同様に良好であった。(比較例1)溶離液を以下の溶離液としたこと及び溶血試薬を以下の試薬を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作してヘモグロビン類の測定を行った。(測定試料)溶血試薬(pH8.0)(0.1重量%トリトンX−100と0.1重量%ポリリン酸及び10mMリン酸緩衝溶液)で測定試料A、Bを溶血し、150倍に希釈して測定試料とした。(測定結果)試料Bを測定して得られたクロマトグラムを図3に示したが、ピーク4と6の分離が悪かった。また、表2に示すように、実施例1〜5では、測定試料A及びBのHbA1cのCV値は、ほぼ一致しているが、比較例1では、測定試料Aに比べBの分離が悪くCV値が大きくなっており、測定試料AとBの差が大きい結果となった。【0053】【発明の効果】請求項1記載の本発明の溶血試薬は、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、カオトロピックイオンを含有するので、安定型HbA1cの分離が良好となった。請求項2記載の本発明の溶血試薬は、請求項1記載の溶血試薬であって、さらに緩衝剤を含有し、pHが5.0〜10.0であるので、ヘモグロビン類の分離を短時間に高精度に行うことが可能となった。請求項3記載の本発明のヘモグロビン類の測定方法は、請求項1または2記載の溶血試薬を用いるので、安定型HbA1cの分離が良好となり、またはヘモグロビン類の分離を短時間に高精度に行うことが可能となった。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1の測定条件により、ヘモグロビン類の測定(試料A)を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。【図2】実施例1の測定条件により、ヘモグロビン類の測定(試料B)を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。【図3】比較例1の測定条件により、ヘモグロビン類の測定(試料B)を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。【符号の説明】1 HbA1a及びbのピーク2 HbFのピーク3 不安定型HbA1cのピーク4 安定型HbA1cのピーク5 HbA0のピーク6 AHbのピーク カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、カオトロピックイオンを含有することを特徴とする溶血試薬。 請求項1記載の溶血試薬であって、さらに緩衝剤を含有し、pHが5.0〜10.0であることを特徴とする溶血試薬。 請求項1または2記載の溶血試薬を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。