生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_血中リン濃度低下剤
出願番号:1999156268
年次:2010
IPC分類:A61K 31/722,A61P 13/12,A61P 7/00,C08B 37/08


特許情報キャッシュ

又平 芳春 和田 政裕 JP 4473976 特許公報(B2) 20100312 1999156268 19990603 血中リン濃度低下剤 焼津水産化学工業株式会社 390033145 松井 茂 100086689 又平 芳春 和田 政裕 20100602 A61K 31/722 20060101AFI20100513BHJP A61P 13/12 20060101ALI20100513BHJP A61P 7/00 20060101ALI20100513BHJP C08B 37/08 20060101ALN20100513BHJP JPA61K31/722A61P13/12A61P7/00C08B37/08 A A61K 31/722 C08B 37/08 CA/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平05−213762(JP,A) 特開平08−208489(JP,A) 特開平11−029484(JP,A) 特開昭61−268626(JP,A) 特開昭62−123123(JP,A) 1 2000344802 20001212 7 20060524 福井 悟 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、特に腎機能低下に伴う高リン血症の予防と改善に効果をもたらすキトサンオリゴ糖及び/又はそれらの塩から選ばれた少なくとも1種を有効成分とする血中リン濃度低下剤に関する。【0002】【従来の技術】正常な腎臓では、糸球体で濾過された血中のリンの80〜85%を近位尿細管で再吸収している。この再吸収率は、副甲状腺ホルモン(以下、PTHという)により抑制されているが、腎機能が低下するとPTHの分泌が促進されてリンの再吸収が抑制され、その結果、高リン血症をもたらす。【0003】通常、血中の高濃度の無機リン(リン酸イオン)は、カルシウムイオンと結合してリン酸カルシウム塩となり血中から消失していく。しかし、高リン血症ではリンの蓄積・負荷により腎臓内でのビタミンDの活性化が低下し、PHTの骨に対する作用が低下する。その結果、低カルシウム血症をもたらし、これが刺激となってPTH分泌亢進が生じ、それに伴う腎外性の影響、特に骨病変を誘発する。さらに、PTH分泌亢進は骨病変以外にも細胞内カルシウム濃度を上昇させ、細胞内・外液のカルシウム比、細胞膜の透過性、サイクリックAMP活性に異常をきたし、これらの異常が尿毒症症候群の要因の1つとなっていると考えられる。【0004】また、血中の無機リンは、腎臓で尿を生成する際、その濾過機能に負担をかけるため、腎臓病や透析治療で問題となる。【0005】以上の理由から、腎炎、腎不全などの腎臓病の治療においては、食事療法により水分、タンパク質、食塩、カリウムの摂取を制限すると共に、血中無機リン濃度の上昇抑制が重要である。例えば、タンパク質を制限する場合、献立の工夫や低タンパク食品(澱粉米などの治療用特殊食品)を併用するなどして1日当たりの摂取量を20〜70gの範囲内で調整する必要があるが、タンパク質の中にもリンが多く含まれていること、加工食品(麺類、練り製品、チーズ、冷菓、ジュース類など)の中には、その品質維持、品質改良のためにリン酸塩(ポリリン酸、メタリン酸など)を含む食品が多いことなどから、食事療法だけでリンの摂取を制限することは大変困難である。【0006】そのため、リンの吸着作用のあるアルミニウムやカルシウムの経口吸着剤投与による療法が試みられているが、アルミニウムは透析痴呆やアルツハイマー病の原因物質である可能性が指摘されており、カルシウム製剤も投与量が多くなると高カルシウム血症、カルシウム結石の発症や嚥下困難などの障害を伴うなどの問題があった。【0007】一方、ポリカチオン性天然高分子であるキトサンもリン酸の吸着能を有し、その安全性も高いことから、キトサン及び/又はその塩を有効成分とする血中無機リン濃度低下剤(キチン・キトサン研究、Vol.3,No.2,1997)、リン吸着剤(特開平5−213762号公報)、食品中のリン酸根不活性化剤(特公平6−93825号公報)、腎不全治療剤(特開平8−208489号公報)などが提案されている。【0008】しかし、キトサンは中性下では水に溶解せず、高分子食物繊維特有の物性を有するため製剤加工が難しく、投与方法が制限されるなどの問題があった。【0009】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全性が高く、かつ投与しやすく、十分な血中無機リン濃度の低下作用を有し、腎臓病の予防と改善に役立つ血中リン濃度低下剤を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究した結果、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩が高分子キトサンに比べて血中無機リン濃度を低下する効果が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。【0011】すなわち、本発明の血中リン濃度低下剤は、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。【0012】本発明の血中リン濃度低下剤は、後述する試験例に示されるように、リン高含有食を与えたラットに対して、その血中無機リン濃度を選択的に低下させる効果を発揮することが認められた。したがって、人間を含めた動物に対して血中無機リン濃度低下効果をもたらすことが期待される。【0013】また、本発明の血中リン濃度低下剤は、天然由来の糖類であるキトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも1種を有効成分としているため、安価で安全性が高く、また、水に溶解しやすいため様々な製剤化・投与方法が可能である。【0014】【発明の実施の形態】本発明において、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩とは、カニ、エビ等の甲殻類の殻などから常法によって調製されるキチンを、化学的又は生化学的に処理することによって得られる。例えば、キチンを熱濃アルカリ処理してキトサンとした後、このキトサンを部分加水分解することにより得ることができる。【0015】この場合、キトサンの部分加水分解は、キトサンを塩酸、酢酸、蟻酸などの無機酸や有機酸と共に加熱した後、酸を除去するか、又は中和・脱塩し、結晶化などにより粉末化する方法、あるいはキトサンを希酸に溶解後、キトサナーゼ、D−グルコサミニダーゼなどのキトサン分解酵素を作用させる方法等により行うことができる。【0016】上記方法によって得られるキトサンオリゴ糖の重合度は、通常2〜8糖程度の混合物である。本発明においては、キトサンオリゴ糖を混合物の状態で使用することも可能であるが、カラムクロマトグラフィーや溶剤分画などの方法により所望の重合度のものに分画・精製して用いてもよい。なお、キトサンオリゴ糖又はその混合物は、市販されており、例えば、「COS−Y」(商品名、焼津水産化学工業社製)等を用いることができる。【0017】また、本発明においてキトサンオリゴ糖の塩としては、例えば、塩酸塩や硫酸塩などの無機塩や酢酸塩、乳酸塩、蟻酸塩などの有機酸塩などが好ましく用いられる。【0018】本発明の血中リン低下剤は、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも1種を有効成分として含んでいればよい。キトサンオリゴ糖及びそれらの塩として直接摂取又は投与することができるが、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩は容易に水に溶解するため、添加・配合が容易であり、食品、医薬品、飼料、餌料などに添加・配合して用いることもできる。例えば、医薬品として用いる場合、その投与方法も、経口、静注、筋注などの各種の投与方法を採用することができる。【0019】本発明の血中リン濃度低下剤の摂取・投与量は、動物の種類、投与期間、配合する食品、医薬品、飼料、餌料などの種類により異なるが、キトサンオリゴ糖として、経口投与の場合は0.1〜3,000mg/体重1kg、静注の場合は0.01〜1,000mg/体重1kg、筋注の場合は0.01〜1,000mg/体重1kgが好ましい。また、食品、飼料、餌料へ配合する場合は0.01〜10重量%程度配合することが好ましい。【0020】なお、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩の安全性については既に確認されており、ラットにおける経口投与での急性毒性試験結果によるとLD50>5g/kg以上である。【0021】【実施例】以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例1カニの殻由来のキトサン100gに、12N塩酸400mlを加え、70℃湯浴中で2時間撹拌した後、水400mlを加えて反応を終了させた。この反応液をフィルター濾過して不溶物を除去し、活性炭10gを添加して1時間撹拌した後、フィルター濾過して活性炭を除去して分解脱色液700mlを得た。この分解脱色液を、塩酸を溜去させながら減圧濃縮し、得られたシラップ状濃縮液にメタノール300mlを加え、さらにアセトン900mlを添加して、結晶状沈殿物を析出させた。この沈殿物をフィルター濾過により回収し、真空乾燥してキトサンオリゴ糖混合物120gを得た。【0022】得られたキトサンオリゴ糖の糖組成を分析したところ、D−グルコサミン32重量%、キトビオース20重量%、キトトリオース14重量%、キトテトラオース14重量%、キトペンタオース10重量%、キトヘキサオース4重量%、キトヘプタオース4重量%、キトオクタオース2重量%であった。【0023】実施例2カニの殻由来のキトサン259gに、水5Lと氷酢酸90gを加え、一晩撹拌して粘稠な溶液を得た。このキトサン溶液に、バチルス・パミラス(Bacillus pumilus)起源のキトサナーゼ(明治製菓株式会社製)50mgを添加し、40℃湯浴中で18時間撹拌して反応させた。反応終了後、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、キトサンオリゴ糖溶液を得た。この溶液を噴霧乾燥してキトサンオリゴ糖酢酸塩混合物210gを得た。【0024】このキトサンオリゴ糖混合物の糖組成は、キトビオース酢酸塩25重量%、キトトリオース酢酸塩24重量%、キトテトラオース酢酸塩19重量%、キトペンタオース酢酸塩16重量%、キトヘキサオース酢酸塩8重量%、キトヘプタオース酢酸塩5重量%、キトオクタオース酢酸塩3重量%であった。【0025】試験例(動物実験による効果の確認)6週齢のウイスター系雄ラット(各群16匹)を用いて糞尿が分離採取できる代謝ゲージ内で個別飼育した。飼料は、リンレベルを4,000mg/kgに定めた表1に示す組成のものに、試験群は製造例2で調製したキトサンオリゴ糖酢酸塩混合物を1重量%添加して調製して用いた。また、対照群は、セルロースを同様に添加して調製し、比較群として、キトサン及び/又はキトサン分解物「キトサンPSH−80」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製、分子量約100万)を同様に添加して調製して用いた。これらの飼料を1日当たり20g与え、30日間飼育した。なお、表1中、AIN76ミネラル混合物及びAIN76ビタミン混合物とは、米国国立栄養研究所(American Institute of Nutrition、略してAIN)から発表された、ラット、マウスを用いる栄養実験のための標準精製飼料組成(J. Nutr., 107, 1340 (1977)参照)に基づいて配合したミネラル混合物及びビタミン混合物である。【0026】【表1】【0027】実験初日(0日目)、15日目、実験最終日(30日目)にラットの血液を採取し、除タンパクして血清を得た。そして、血清中無機リン濃度をモリブデンブルー比色法により定量した。また、血清中有機リン濃度は、血清からリン脂質を含む脂質画分を有機溶媒で抽出し、得られた脂質画分を湿式灰化(硫酸−過マンガン酸カリウム分解法)して有機物を分解し、得られたリンについてモリブデンブルー比色法により定量した。その結果を表2に示す。【0028】【表2】【0029】表2から、血清中無機リン濃度は、15日目では、試験群及び比較群は、対照群と比べて有意(p<0.05)に低いことが分かった。そして、30日目では、試験群は、対照群及び比較群と比べて有意(p<0.05)に低いことが分かった。一方、血清中有機リン濃度は、試験群は、対照群及び比較群と比較して有意差は認められなかった。【0030】【発明の効果】以上説明したように、本発明の血中リン濃度低下剤は、リン高含有食を与えたラットに対して、その血中無機リン濃度を低下させる顕著な効果を発揮する。この効果はキトサン及び/又はキトサン分解物よりも強く、血清中の有機リン濃度に影響を及ぼすことなく、無機リン濃度を選択的に低下させるものである。したがって、腎臓病の予防・改善効果、高リン血症の予防効果が期待できる。【0031】特に、現代の食生活において大きなウエイトを占める加工食品には、その品質維持、品質改良のためにリン酸塩を含むものが多く、現代人の酸性体質化を助長していることが懸念されており、腎臓病患者に限らず、血中リン濃度の上昇は、酸性体質化を促進し、骨成長の阻害、副甲状腺機能低下症、成長ホルモン過剰症、ビタミンD中毒症、甲状腺機能亢進障害など様々な疾患を増長する。しかし、本発明の血中リン濃度低下剤を食品に配合したり、あるいは食事の前後に摂取することにより体内リン過剰を防ぐことができ、加工食品の品質を低下させることなく高リン血症を予防する効果が期待できる。【0032】また、天然由来の糖類であるキトサンオリゴ糖及びその塩から選ばれた少なくとも1種を有効成分とするので安価で安全性が高く、水に溶解しやすいため様々な製剤化・投与方法が可能である。 キトサンオリゴ糖及び/又はそれらの塩から選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする血中リン濃度低下剤。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る