タイトル: | 特許公報(B2)_検体の処理方法 |
出願番号: | 1999122341 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/543 |
新村 和夫 横井 正之 篠田 潤一郎 JP 4260980 特許公報(B2) 20090220 1999122341 19990428 検体の処理方法 積水化学工業株式会社 000002174 新村 和夫 横井 正之 篠田 潤一郎 20090430 G01N 33/543 20060101AFI20090409BHJP JPG01N33/543 581 G01N33/48〜33/98 特開平04−350559(JP,A) 特開平06−088821(JP,A) 特許第2684069(JP,B2) 特許第3003118(JP,B2) 特開昭62−209362(JP,A) 特開2000−310639(JP,A) 特開平11−051938(JP,A) 特開平02−001554(JP,A) 特公平07−050108(JP,B2) 1 2000310640 20001107 8 20060126 三木 隆 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法における検体の処理方法、特に検体中に糖質を含有させることで、測定感度を向上させること等を目的とした検体の処理方法に関する。【0002】【従来の技術】従来より、 抗原−抗体による特異的反応を利用して、検体中における特定の抗原または抗体を分析する免疫学的分析法が知られている。特に、ラテックス粒子等の担体を用いた免疫学的アッセイ法は、単純な目視により被分析対象物質を検出する試験や、測定装置を用いた定量的な分析方法の何れにも使用することができるので、免疫学的分析法の主流となっている。【0003】上記のようなラテックス粒子等の担体を用いた免疫学的アッセイ法は、被分析対象物質に対する抗体もしくは抗原を結合させたラテックス粒子を使用する方法であり、例えば免疫凝集反応測定法や免疫クロマトグラフィー法(米国特許第4168146号、第4094847号、第42356601号、第4361537号等)が知られている。【0004】しかしながら、ラテックス粒子は、 疎水性表面をもつため、測定系中で非特異反応などを起こしやすい。この結果、 免疫凝集反応測定法においては、溶液中でラテックス粒子が非特異的な凝集を起こし、 測定感度の低下や大きな誤差の発生をもたらすという問題点があった。また、免疫クロマトグラフィー法においても、ラテックス粒子は、一般に金属コロイド等の他の担体に比べて粒子径が大きく、 非特異反応により、多孔性メンブレン中で目詰まりを起こし、粒子が流れなくなり、この結果感度低下を起こしたり、正確な判定ができないという重大な問題点があった。特に検体として、 血清または血漿を用いた場合には、 これらの非特異反応が大きく、測定結果に大きな影響を与え、 大きな誤差を生じる原因になっていた。【0005】上記問題点を解決するために、 粒子径を小さくして測定に与える影響を少なくする試みもなされているが、同時に測定感度も低下するといった問題点があった。また、免疫クロマトグラフィー法では、多孔性膜の孔径を大きくする等の種々の検討がなされてきたが、孔径を大きくすると検体等の展開速度が増進し、検出感度が低下するなどの恐れがあった。 また、血清・血漿等を分析するのに際して、 展開促進液や希釈液等を用いる方法も検討されているが、検体が希釈されるため測定感度が低下する等の問題点があった。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み、ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法において、ラテックス粒子の非特異反応を防止し、 測定感度の向上、誤差の低減、信頼性の向上を図るための検体の処理方法を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、 ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法における検体の処理方法であって、検体に糖質が含有され、該糖質の含有量が、検体100重量部に対し、2〜40重量部となされていることを特徴とする検体の処理方法である。【0008】請求項2記載の発明は、 免疫学的分析法が、免疫凝集反応測定法または免疫クロマトグラフィー法であることを特徴とする請求項1記載の検体の処理方法である。【0009】請求項3記載の発明は、 糖質が単糖類、二糖類及びオリゴ糖からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の検体の処理方法である。【0010】請求項4記載の発明は、 糖質がグルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース及びセロビオースからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の検体の処理方法である。【0011】本発明は、ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法における検体の処理方法であって、検体に糖質が含有され、該糖質の含有量が、検体100重量部に対し、2〜40重量部となされていることを特徴とするものである。以下、本発明について説明する。【0012】上記免疫学的分析法としては、例えば、 溶液中での凝集反応を利用した免疫凝集反応測定法や、固相での毛管現象による展開移動を利用した免疫クロマトグラフィー法などが挙げられるが、ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法であれば特にこれらのみに限定されるものではない。【0013】上記免疫凝集反応測定法に用いられる免疫凝集反応測定測定試薬、あるいは上記免疫クロマトグラフィー法に用いられる免疫クロマトグラフィー装置は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。【0014】上記ラテックス粒子としては特に限定されないが、例えば、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル系モノマーの単一重合体や共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等のブタジエン系共重合体等の微粒子等が挙げられ、特にスチレン系のものが好ましい。【0015】上記ラテックス粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、50〜5000nmが好ましい。【0016】上記検体としては、全血、血清、血漿等生体関連の試料ならば特に限定されないが、血清若しくは血漿であるのがより好ましい。【0017】本発明においては、検体中に糖質が含有される。また、その含有量は、検体100重量部に対し、2〜40重量部となされる。この結果、ラテックス粒子の非特異反応を防止し、 測定感度の向上、誤差の低減、信頼性の向上を図ることが可能となる。なお、検体中における糖質のより好ましい含有量は、検体100重量部に対して、4〜20重量部である。【0018】上記糖質は、免疫学的分析が行われる前に、検体中に含有されていればよく、含有される方法としては特に限定されない。ここで、免疫学的分析が行われる前とは、上記免疫凝集反応測定法においては、検体中に免疫凝集反応測定試薬を添加する前または添加する時点を意味し、また、上記免疫クロマトグラフィー法においては、検体を免疫クロマトグラフィー装置に添加する前または添加する時点を意味するものとする。【0019】従って、本発明の検体の処理方法において、上記糖質を検体に含有させる方法としては、所定量の糖質を直接、あるいは緩衝液若しくは水などの液体に溶解したものを予め検体に添加する方法や、検体が収容される容器等に予め所定量の糖質を添加しておく方法など挙げられる。【0020】上記糖質としては、多価アルコール・単糖類・二糖類・オリゴ糖等、一般的に糖質に分類される物質であればよいが、特に単糖類、二糖類及びオリゴ糖を用いるのが好ましい。なお、多価アルコール・単糖類・二糖類・オリゴ糖には、これらの修飾体も含まれるものとする。【0021】上記多価アルコールとしては、例えば、ソルビトース、マンニトール等が挙げられる。【0022】上記単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、エリスリトール等が挙げられる。【0023】上記二糖類としては、例えば、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、セロビオース等が挙げられる。【0024】上記オリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ポリデキストロース等が挙げられる。【0025】上記糖質の中でも、特に、単糖類であるグルコース、フルクトース、マンノース、二糖類であるスクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、セロビオースから選ばれる少なくとも1種を用いるのがより好ましい。【0026】本発明の検体の処理方法においては、検体中に糖質を含有させる前後あるいは同時点において、検体中に、ブロッキング剤、緩衝液、血液凝固促進剤、血液抗凝固剤、 界面活性剤等を添加してもよい。【0027】【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。(A)免疫凝集反応測定法における検体の処理方法[実施例1]1)免疫凝集反応測定試薬の調製ラテックス粒子分散液(ラテックスN−400 10%(w/v)、粒子径400nm、積水化学工業社製)1.0mlに100mMリン酸緩衝液(pH7.5)9mlを加え、 15000rpmで20分間遠心分離を行った。 得られた沈渣に、0.5mg/ml濃度のHBs抗原を含有する10mMトリス緩衝液(pH7.4)を1ml加え、 十分混和して、室温にて1時間攪拌した。 未反応のHBs抗原を除去するため、15000rpmにて20分間遠心分離を行ない、 沈渣を100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2.5mlに懸濁させ、 再度遠心分離を行った。さらに、1%(w/v)濃度の牛血清アルブミンを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2.5mlに、この沈渣を懸濁させ、 室温で1時間攪拌し、ブロッキング処理を行った。 その後、 15000rpmにて20分間遠心分離を行ない、 1%(w/v)濃度の牛血清アルブミン及び0.01%(w/v)濃度のアジ化ナトリウムを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2mlに、沈渣を懸濁させ、冷蔵保存した。【0028】2)検体の処理2μg/μl濃度のスクロースを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)1μlをHBs抗体陰性血清50μlに添加した。 (血清100重量部当りスクロース3.9重量部。但し、 血清の比重は、1.028で算出した)【0029】3)免疫学的分析0.5%(w/v)濃度のHBs抗原感作ラテックス粒子、1%(w/v)濃度の牛血清アルブミン及び0.01%(w/v)濃度のアジ化ナトリウムを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)50μlと、上記2)でスクロースを添加した検体とを混合し、 凝集反応測定板(積水化学工業社製)にて3分間ゆるやかに攪拌した後、 凝集を目視にて観察し、 凝集しないものを0、凝集が著しいものを5として6段階で評価した。 3名の判定者の平均値を凝集強度とし、結果を表1に示した。【0030】[実施例2]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り39重量部に変えたこと以外、実施例1と同様にして行った。 結果を表1に示した。【0031】[比較例1]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り1.3重量部に変えたこと以外、実施例1と同様にして行った。 結果を表1に示した。【0032】[比較例2]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り50重量部に変えたこと以外、実施例1と同様にして行った。 結果を表1に示した。【0033】(B)免疫クロマトグラフィー法における検体の処理方法[実施例3]1)免疫クロマトグラフィー装置の調製Hi−FlowTMニトロセルロースメンブレン(SRHF:Millipore 社製)を幅5mm、長さ50mmに裁断し、その上端より30mmの部位に、2.0mg/ml濃度のHBs抗原を含有する10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)1μlを円形状に塗布し、室温で2時間乾燥した。この後、牛血清アルブミン(DIFCO社製)を1%(w/v)濃度で含有する100mMリン酸(pH7.5)に1時間浸漬し、ブロッキング処理を行った後、0.1%(w/v)濃度のラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄して、室温で乾燥した。【0034】青色着色ラテックス粒子分散液(カラーラテックスC−300B、10%(W/V)、粒子径300nm、積水化学工業社製)1.0mlに100mMリン酸緩衝液(pH7.5)9mlを加え、15000rpmで20分間遠心分離を行った。得られた沈渣に、0.5mg/mlのHBs抗原を含有する10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)を1ml加え、 十分混和して、 室温にて1時間攪拌した。 未反応のHBs抗原を除去するため、15000rpmにて20分間遠心分離を行ない、 沈渣を100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2.5mlに懸濁させ、 再度遠心分離を行った。1%(w/v)濃度の牛血清アルブミンを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2.5mlに、沈渣を懸濁させ、 室温で1時間攪拌し、ブロッキング処理を行った。 その後、 15000rpmにて20分間遠心分離を行ない、 牛血清アルブミンを1%(w/v)及びアジ化ナトリウムを0.01%(w/v)含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2mlに、沈渣を懸濁させ、冷蔵保存した。【0035】HBs抗原を感作させた青色ラテックス粒子を0.1%(w/v)、牛血清アルブミンを1%(w/v)、アジ化ナトリウムを0.01%(w/v)含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)を調製し、 この液20μlを幅5mm、長さ15mmのガラス繊維フィルター(GFF:Millipore社製)に含漬させ、室温で乾燥させた。【0036】上記HBs抗原を感作させたニトロセルロースメンブレンを5mm、長さ60mmの粘着基材に貼り、 下端に上記HBs抗原を感作させた青色ラテックス粒子を含漬させたガラス繊維フィルターと5mm重なるようにして装着し、テープにて圧着して、免疫クロマトグラフィー装置を調製した。【0037】2)検体の処理2μg/μl濃度のスクロースを含有する100mMリン酸緩衝液(pH7.5)2μlをHBs抗体陰性血清100μlに添加した。(血清100重量部当りスクロース3.9重量部、但し血清の比重1.028で算出)【0038】3)免疫学的分析上記スクロースを添加した検体を上記免疫クロマトグラフィー装置のガラス繊維フィルターに添加し、 青色のスポットが検出されるかどうかを判定した。 また、ガラス繊維フィルターと重なる部位のメンブレン上で、目詰まりして移動しない青色粒子を目視にて観察し、 目詰まりしないものを0、目詰まりが著しいものを5として6段階で評価して、目詰まり強度を算出した。 なお、目詰まり強度は3名の評価者による平均値を算出し、結果を表2に示した。【0039】[実施例4]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り19.5重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0040】[実施例5]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り39.0重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0041】[実施例6]上記2)において、スクロースの代わりにトレハロースを用い、トレハロースの含有量を、血清100重量部当り19.5重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0042】[実施例7]上記2)において、スクロースの代わりにトレハロースを用い、トレハロースの含有量を、血清100重量部当り39.0重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0043】[比較例3]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り1.3重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0044】[比較例4]上記2)において、スクロースの含有量を、血清100重量部当り50重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0045】[比較例5]上記2)において、スクロースの代わりにトレハロースを用い、トレハロースの含有量を、血清100重量部当り1.3重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0046】[比較例6]上記2)において、スクロースの代わりにトレハロースを用い、トレハロースの含有量を、血清100重量部当り50重量部にした以外は、 実施例3と同様に行った。 結果を表2に示した。【0047】【表1】【0048】【表2】【0049】【発明の効果】本発明の検体の処理方法を実施することにより、ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法において、ラテックス粒子の非特異反応を防止することができ、 この結果、測定感度の向上、誤差の低減及び分析結果の信頼性の向上を図ることが可能となった。 ラテックス粒子を用いた免疫学的分析法における検体の処理方法であって、免疫学的分析法が免疫クロマトグラフィー法であり、かつ、検体に糖質が含有され、該糖質がグルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース及びセロビオースからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、かつ、該糖質の含有量が、検体100重量部に対し、2〜40重量部となされていることを特徴とする検体の処理方法。