タイトル: | 特許公報(B2)_X線回折装置及びX線ロッキングカーブの測定方法 |
出願番号: | 1999104476 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 23/207 |
菊池 哲夫 JP 3944330 特許公報(B2) 20070413 1999104476 19990412 X線回折装置及びX線ロッキングカーブの測定方法 株式会社リガク 000250339 鈴木 利之 100091421 菊池 哲夫 20070711 G01N 23/207 20060101AFI20070621BHJP JPG01N23/207 G01N23/00-23/227 特開平04−301800(JP,A) 特開平10−048159(JP,A) 特開平08−271451(JP,A) 特開平09−145641(JP,A) 特開平06−249803(JP,A) 特開平02−061544(JP,A) 特開平06−229954(JP,A) 特開平05−074907(JP,A) 特開平09−304307(JP,A) 3 2000292379 20001020 15 20050624 横井 亜矢子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は単結晶基板上のエピタキシャル薄膜の格子面間隔の面内分布を測定するためのX線回折装置及びX線ロッキングカーブの測定方法に関する。【0002】【従来の技術】単結晶基板上にエピタキシャル成長させた単結晶薄膜の格子定数を調べるために、X線回折を利用したX線ロッキングカーブ測定法が盛んに行われている。結晶の格子定数は、面指数とその格子面間隔が分かれば求めることができる。X線ロッキングカーブ測定法では、目的の面指数による回折ピークについて、その回折角度位置を精密に測定することで格子面間隔を求めることができる。この格子面間隔から結晶の格子定数を決定できる。【0003】図14は試料の格子面間隔の面内分布を精密に測定するための従来のX線回折装置の平面図である。このX線回折装置は、「実験物理学講座20 X線回折」、高良和武・責任編集、共立出版、1988年、第477頁、に記載されている。このX線回折装置は、2結晶法を用いて試料のX線回折ロッキングカーブを精密に測定するものである。X線源10から出たX線は、第1結晶12で反射し、可動スリット14の開口部を通り抜けて、試料28(第2結晶に相当する)のP点に当たる。P点からの回折X線はX線検出器18(例えばシンチレーションカウンタ)で検出される。試料28を微小角度範囲でω回転させながら回折X線の強度をX線検出器18で検出すると、目的の回折ピークのロッキングカーブ(試料へのX線入射角を横軸に、試料からの回折X線強度を縦軸にとって、回折ピークのピークプロファイルを表したもの)を求めることができる。このロッキングカーブから、試料によるX線の回折角度を求めることができ、その回折角度から試料の格子面間隔を求めることができる。【0004】可動スリット14をX線に対して垂直な方向に移動させると、試料28の別の位置Q点にX線を当てることができ、これにより、Q点におけるロッキングカーブを測定できる。このように、可動スリット14の位置を移動することで試料28上のX線照射位置を変更することができるので、この方法によって試料28の各位置におけるロッキングカーブを次々と測定していけば、試料28の格子面間隔の面内分布を測定することができる。【0005】【発明が解決しようとする課題】上述した従来のX線回折装置には次の問題がある。(1)試料上の多くの地点についてそれぞれロッキングカーブを測定する(すなわち、エリアマップ測定をする)には、各地点について順番にロッキングカーブを測定していくので膨大な時間がかかる。このようなエリアマップ測定で得られた結果を、均一組成を得るための成膜条件にフィードバックするような場合には、測定結果を迅速に得る必要があるが、従来装置では時間がかかり過ぎる。【0006】(2)可動スリット14の開口部は通常、幅が0.5〜2.0mm程度で、高さが5〜10mm程度である。第1結晶12から試料28まではX線は平行に進むので、試料28上の照射領域の寸法は、可動スリット14の開口部の寸法にほぼ等しい。X線検出器18で検出される回折X線強度は、試料28上のそのときのX線照射領域内のすべての地点からの回折X線強度の合計である。したがって、このロッキングカーブから得られる格子面間隔は、試料28上のX線照射領域における平均的な値である。上述の標準的な照射領域よりももっと狭い領域について格子面間隔を精密に測定しようとすれば、可動スリットの開口部をもっと小さくする必要がある。試料上28の照射領域の面積をいろいろと変更するには、開口部の面積を変えた多くの可動スリット14を準備しなければならない。【0007】(3)格子面間隔の面内分布を測定するには、可動スリット14をその平面内で2次元的に移動させる必要があるので、可動スリット14の移動機構が必要になる。なお、可動スリット14を使う代わりに、試料28をその平面内で移動させてもよい。その場合には、試料28をその平面内で2次元的に移動させる機構が必要である。【0008】(4)格子面間隔の面内分布を知るには、試料上のどの位置にX線が照射されているのかを確認する手段が必要となる。【0009】(5)試料上の特定の微小領域(例えば数十μm程度の大きさ)だけにX線を照射したい場合には、X線ビームをスリットによって細く絞る必要がある。さらに、X線のわずかな発散角も照射野のボケとなるので、スリットをなるべく試料に近づける必要がある。したがって、特別のスリットが必要になる。【0010】(6)試料上の特定の微小領域だけにX線を照射しようとすれば、細く絞ったX線ビームを、数μm程度の位置精度をもってその微小領域に正確にX線を照射しなければならない。このような位置精度でX線を照射するには、顕微鏡などの位置決め手段が必要になるし、また、可動スリットまたは試料の移動機構を非常に高精度にしなければならない。さらに、そのような位置決め作業の操作は面倒である。【0011】本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、試料の格子面間隔の面内分布を短時間で測定できるX線回折装置を提供することにある。本発明の別の目的は、スリットまたは試料を並進移動させるための機械的な移動機構を必要せずに試料の格子面間隔の面内分布を測定できるX線回折装置を提供することにある。【0012】【課題を解決するための手段】本発明のX線回折装置は、次の(イ)〜(ホ)を有する。(イ)X線源。(ロ)試料を保持するための試料ホルダーであって、試料の表面に平行なω軸の回りに回転可能な試料ホルダー。(ハ)前記X線源で発生したX線のうちの所望の波長のX線を反射する結晶コリメータであって、その反射X線を前記試料に照射するようにした結晶コリメータ。(ニ)前記試料からの回折X線を検出するための2次元の位置敏感型のX線検出器。(ホ)前記試料の前記ω軸の回りの所望の回転角度ピッチごとに、前記X線検出器の検出面の各位置におけるX線検出強度を同時に記録して、これによって前記検出面の各位置におけるロッキングカーブを得るようにした記録装置。【0013】 また、本発明のX線ロッキングカーブの測定方法は、次の(イ)〜(ニ)の各段階を有する。(イ)X線源から出たX線のうちの所望の波長のX線を結晶コリメータで反射させる段階。(ロ)前記結晶コリメータで反射したX線を試料に照射する段階。(ハ)前記試料からの回折X線の強度を2次元の位置敏感型のX線検出器で検出する段階。(ニ)前記試料の表面に平行なω軸の回りの前記試料の所望の回転角度ピッチごとに、前記X線検出器の検出面の各位置における前記回折X線の強度を同時に記録して、これによって前記検出面の各位置におけるロッキングカーブを得る段階。【0014】本発明によれば、格子定数の精密測定法において2次元の位置敏感型のX線検出器を用いたので、試料上の各位置におけるX線ロッキングカーブを一挙に得ることができて、試料上の格子定数のエリアマップを短時間で測定することが可能になった。【0015】本発明における結晶コリメータは、単一の単結晶板に限るものではなくて、複数の結晶コリメータを組み合わせて配置したものであってもよい。【0016】【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施形態を示す斜視図であり、図2はその平面図である。このX線回折装置を説明するに当たって、GaAs(ガリウム砒素)単結晶基板の上に成膜したエピタキシャル薄膜の格子面間隔の面内分布を測定することを想定して説明する。図1において、X線源10を出たX線は第1スリット20の開口部22を通過してから第1結晶12に当たる。第1結晶12で反射したX線は第2スリット24の開口部26を通過してから試料28に当たる。試料28で回折したX線は2次元の位置敏感型X線検出器30で検出される。X線検出器30の出力は記録装置で記録することができて、この記録装置によりロッキングカーブを得ることができる。【0017】X線源10のターゲット材質は銅であり、特性X線のCuKαを測定に使っている。X線源10の見かけの焦点サイズは、幅が1mm、高さが0.5mmである。これは、通常のノーマルフォーカスX線管のポイントフォーカス取り出しの寸法である。【0018】X線源10から距離L3(=550mm)だけ離れた位置に第1スリット20がある。第1スリット20の開口部22の寸法は、幅が1mm(X線源の見かけの焦点サイズの幅と同じ)、高さがH3(=約7mm)である。第1スリットの高さH3は、試料の大きさやX線検出器の有感面積を考慮に入れて決定する。第1結晶12の中心から距離L4(=100mm)だけ離れた位置には第2スリット24がある。第1スリット24の開口部26の寸法は、幅が10mm、高さがH4(=約9mm)である。【0019】X線源10から距離L1(=650mm)だけ離れた位置に第1結晶12の中心がある。第1結晶12としてはSi(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)などの完全結晶を利用する。第1結晶12は、試料28に入射するX線を単色化する働きとともに、平行化するコリメータとしての働きを持つので、結晶コリメータと呼ばれる。第1結晶12で反射するときの格子面間隔を、試料の測定対象の格子面間隔に近いものに設定すると、角度分解能の高い測定ができる。例えば、GaAs試料の(004)反射を測定する場合には、第1結晶12としてGeの(004)反射を用いるとよい。この場合、擬似的に、2結晶法の(+,−)平行配置になっている。なお、本発明は非平行配置でも構わない。【0020】第1結晶12は、非対称反射を利用して、試料に照射するX線ビームの幅を広げている。すなわち、第2図に示すように、第1結晶12の表面に対して、X線を入射角度α(=5度)で入射すると、この入射X線に対して2θm(=66度)の角度の方向に反射X線が出てくるようになっている。この場合、第1結晶12のGe(004)面は、結晶表面に対して28度だけ傾斜している(すなわち、そのように作られている)。第1結晶12に入射するX線の幅Fが1mmのときに、この第1結晶12から反射するX線の水平面内での幅Wは約10mmになる。したがって、第1結晶12により、X線の幅が約10倍になっており、単色化かつ平行化された幅広のX線ビームが得られる。【0021】図1において、上下方向のX線の広がりを説明すると、X線源10を出たX線は上下方向には単調に発散していき、第1結晶12で反射した後もそのまま発散していく。X線の上下方向の広がりは、第1スリット20の開口部22と第2スリット24の開口部26のそれぞれの高さ寸法によって制限されることになる。例えば、試料28上で所定の高さ(例えば10mm)になるように、スリットの開口部22、26の高さが定められる。本実施形態では、第1スリット20の開口部22の高さ寸法H3は約7mmであり、第2スリット24の開口部26の高さ寸法H4は約9mmである。【0022】第1結晶12の中心から距離L2(=150mm)だけ離れた位置に試料28の中心がある。試料28はGaAs単結晶基板上にGaAs系の薄膜をエピタキシャル成長させたものである。測定対象はGaAs(004)面に該当する結晶格子面からの回折ピークである。なお、測定対象の結晶格子面は試料28の表面に対して平行である。試料28は試料ホルダーに保持されていて、この試料ホルダーはω軸32の回りを回転できる。このω回転により、試料28の表面に入射するX線の入射角ωを変更できる。ω軸は、試料28の表面に平行であって上下方向に延びている。また、試料28をχ軸34(水平方向に延びている)の回りに回転させることができて、これにより試料28のチルト角χを調整することができる。ω角とχ角を正しく調整すると、回折条件が整い、試料28上のX線照射領域から回折X線が出てくる。【0023】図2において、第1結晶12からやって来るX線は、試料28の表面に対して入射角度ωで入射する。この入射角度ωが、ブラッグの反射条件を満足する特定の入射角度θ(=約33度)に等しくなると、入射X線に対して2θ(=約66度)の角度の方向に回折X線が出てくる。試料28はω軸32の回りを微小角度の範囲内で回転させる(すなわち、スキャンさせる)。このスキャンによってロッキングカーブを測定することができる。【0024】図1において、試料28の中心から距離L5(=50mm)の位置にX線検出器30の検出面31がある。X線検出器30は2次元の位置敏感型X線検出器であり、この実施形態ではX線用のCCD(電荷結合素子)カメラを用いている。このX線検出器30を用いると、試料28上の各位置からの回折X線の強度をそれぞれの位置毎に同時に検出することができる。X線検出器30はω軸32の回りに回転させることができる。この回転により、回折X線が出てくる角度方向にX線検出器30を設定することができる。【0025】次に、このX線回折装置の動作を説明する。図1において、X線源10から出たX線は第1スリット20で制限されて第1結晶12に入射する。第1結晶12上でのX線照射領域13の寸法は、幅が約10mm、高さが約8mmである。第1結晶12で反射したX線は第2スリット24を通過して試料28に当たる。試料28上でのX線照射領域29の寸法は、幅が約10mm、高さが約10mmである。このX線照射領域29は、図13に示すように、ABCDを頂点とするほぼ四角形の形をしている。このX線照射領域29で回折したX線はX線検出器30で検出される。その際、検出面31の各画素毎にX線強度を検出することができる。X線照射領域29で回折したX線は、X線検出器30の検出面31に到達するまで、互いに平行に進むので、試料28上のX線照射領域29内の位置と、X線検出器30の検出面31上の位置とは、1対1に対応する。すなわち、試料28上のA点で反射したX線は検出面31上のAa点に到達し、B点、C点、D点で反射したX線は、それぞれ、Ba点、Ca点、Da点に到達する。【0026】ここで、試料28として、GaAs単結晶基板の上にGaAsP系の薄膜をエピタキシャル成長したものを考える。そして、このエピタキシャル薄膜は、試料上の位置によってAsとPの比率が少しずつ異なっているものとする。すなわち、試料上の位置によってエピタキシャル薄膜の格子面間隔がわずかに異なっている。このような試料28を用いて、GaAs(004)面が反射条件を満足するような入射角度θ=33度の付近で試料28を微小角度範囲だけスキャンさせて、試料28からの回折X線の強度を検出する。そうすると、X線検出器30の各画素において、エピタキシャル膜の回折ピークのロッキングカーブを同時に得ることができる。このように、本発明を用いると、多数の地点のロッキングカーブを一挙に得ることができる。従来装置では、試料へのX線照射位置を変えながら多数のスキャン測定を行わなければならなかったが、本発明では一度のスキャンで、原理的にはCCD画素の数だけのロッキングカーブを一度に測定できるので、大幅な時間短縮となる。【0027】図3はこのようにして得られたロッキングカーブのグラフである。図3(A)は検出面31上のAa点で測定した(すなわち試料上のA点で回折した)X線のロッキングカーブである。縦軸は回折X線の検出強度であり、横軸は試料のω回転の角度である。回折ピーク36は基板のGaAs結晶の(004)面の回折ピークである。それよりも小さな回折ピーク38aはその上のエピタキシャル薄膜からの回折ピークである。このように、測定対象の回折ピーク38aと、基準となるGaAs(004)面の回折ピーク36とを同じロッキングカーブ上で測定すると、基板の回折ピーク36の角度位置を基準として、測定対象の回折ピーク38aの角度位置を正確に決定することができる。【0028】図3(B)は検出面31上のBa点で測定した(すなわち試料上のB点で回折した)X線のロッキングカーブである。大きな回折ピーク36は基板のGaAs結晶の(004)面の回折ピークであって、図3(A)と全く同じ回折角度位置に出現する。一方、それよりも小さな回折ピーク38bはエピタキシャル薄膜の回折ピークであり、その回折角度位置は、図3(A)における回折ピーク38aの位置からわずかにずれている。その理由は、試料上のA点とB点ではエピタキシャル薄膜の組成がわずかにずれている(格子面間隔がわずかに異なっている)からである。【0029】図3(C)は検出面31上のCa点で測定した(すなわち試料上のC点で回折した)X線のロッキングカーブである。図3(C)における回折ピーク38cも、その角度位置が図3(A)における回折ピーク38aとは角度位置がずれている。【0030】図3では三つの地点ABCについてそのロッキングカーブを例示したが、実際には、試料28からの回折X線が到達する検出面領域のすべての画素のそれぞれについて、同様のロッキングカーブを得ることができる。これらのロッキングカーブから、試料上の各位置におけるエピタキシャル薄膜の回折角度位置を正確に求めることができ、これに基づいて、試料上の各位置におけるエピタキシャル薄膜の格子面間隔を求めることができる。すなわち、格子面間隔のエリアマップを得ることができる。【0031】なお、狭い角度範囲でロッキングカーブを得るのであれば、図1において、試料28を所定の回転角度ピッチでステップ回転させて回折X線強度を測定していく間に、X線検出器30は静止させておいても構わない。これに対して、超格子構造を調べる場合のように、数度の角度範囲にわたって試料28をステップ回転させていくときは、X線検出器30も試料28に連動させるのが好ましい。すなわち、試料28の回転角度ピッチの2倍の回転角度ピッチでX線検出器30をステップ回転させていく。【0032】得られたロッキングカーブ・データは、次のような処理をしている。まず、コサイン効果による距離の歪みを補正して(これについては後述する)、検出面上の位置を試料上の位置に換算し、CCDの画素と試料上の位置との対応付けをする。さらに、必要に応じて、複数の画素をひとまとめにして複数画素でのX線強度を平均化したり積算化したりする処理を施す。【0033】選択成長をさせた試料(すなわち、試料上の特定の領域だけにエピタキシャル薄膜を成長させたような試料)では、その選択成長させた領域だけからの回折X線像をトポグラフ的に確認できる。その場合、その選択成長領域に対応する検出面上の画素(複数個の画素であってもよい)をあらかじめ調べておいて、その画素についてのX線強度データをプロットすれば、極めて容易にロッキングカーブを得ることができる。【0034】ウェーハ内の薄膜の均一性を調べるには、広い面積についての測定が必要になるが、その場合は、ビーム幅をさらに広げる工夫をしたり、大口径のCCDカメラを使ったりすることで対応できる。【0035】CCDカメラで取り込んだX線強度情報は、試料上の各位置に注目すれば、回折角度に応じたX線強度情報であり、これはロッキングカーブデータとなる。一方、試料の特定の回転角度位置に注目すれば、そのときの2次元のX線強度情報は、その角度位置における試料のX線トポグラフ像となる。したがって、本発明は、X線トポグラフ法とロッキングカーブ測定法とを包含するものになる。このような観点で言えば、本発明は、従来は定量的評価法とはみなされていないX線トポグラフ法を、一挙に定量性を持たせた手法に格上げしたものと言える。【0036】次に、このX線回折装置を数値的に解析して説明する。図7において、第1結晶12で反射したX線ビームの幅Wは次式で与えられる。W=F・sin(2θm−α)/sinαここで、FはX線源10の見かけの焦点の幅、θmは第1結晶12のブラッグ反射角、αは第1結晶12の表面に対するX線の入射角である。使用する特性X線をCuKα1とし、第1結晶12の反射格子面をGe(004)面とすると、2θm=約66度となる。第1結晶12のGe(004)面が結晶表面に対して28度だけ傾斜するように第1結晶12を作ると、この第1結晶12に対してX線を入射角α=5度で入射させたときに、CuKα1線が第1結晶12で反射する。X線源10の見かけの焦点の幅Fを1mmにすると、第1結晶12で反射するX線ビームの幅Wは約10mmになる。すなわち、非対称反射の第1結晶12によりX線ビームの幅を約10倍にすることができる。【0037】次に、図2において、試料28上のX線照射領域の幅Sは次式で与えられる。S=W/sinωここで、ωは試料28の表面に対するX線の入射角である。このωが、CuKα1線を用いたときのGaAs(004)面のブラッグ反射角θ=約33度に等しくなったときに、試料28でX線が回折し、X線検出器30で検出される。W=10mm、ω=θ=33度を上式に代入すると、S=約18mmとなる。【0038】次に、図2において、X線検出器30の検出面31上のX線像の幅Tは次式で与えられる。T=S・cosΦ=S・cos(90°−2θ+ω)ここで、角度Φは図2に示した部分の角度である。ω=θ=33度を代入すると、T=約9.8mmとなる。すなわち、試料上の幅S=約18mmの照射領域がX線検出器の検出面31上では、コサイン効果によりT=約9.8mmに圧縮される。【0039】次に、CuKα1線とCuKα2線の分離について説明する。図4は第1結晶を用いてCuKα1線とCuKα2線を分離するときの条件を説明するための平面図である。まず、理想的な点状(見かけの焦点幅がゼロ)のX線源10aを考えると、このX線源10aを出たX線は第1結晶12aに入射する。CuKα1線は入射角θ1のときにブラッグ条件を満足して第1結晶12a上のP1点で回折する。一方、CuKα2線は入射角θ2のときにブラッグ条件を満足して第1結晶12a上のP2点で回折する。したがって、二つの特性X線は第1結晶12a上の異なる位置でブラッグ条件を満足する。第1結晶12aでCuKα1線だけを反射させて、CuKα2線を反射させないようにするには、第1スリットを用いてCuKα2線の入射方向をさえぎればよい。【0040】一方、第1スリットの開口部の幅については、次のような考えから、あらかじめ定まっている。実際にはX線源10aには有限の幅Fがあり、X線源10aからのX線を有効に活用するには、第1スリットの幅をX線源10aの幅と同程度にする。【0041】このような状況において、二つの特性X線を分離するための条件を考えると、第1結晶12aのところでの分離幅εが第1スリットの開口部の幅(Fに等しい)を越えればよいことになる。したがって、次式が成立する。ε=L・Δθ>Fここで、Δθはθ1とθ2の角度差である。第1結晶12aの反射面をGe(004)面とすると、θ1=32.91度、θ2=33.01度である。F=1mmを代入すると、L>573mmとなる。そこで、本実施形態では、余裕を見て、図1のL1を650mmとしている。このようにL1を長くすることにより、CuKα1線だけを第1結晶で反射させることができる。以上の説明は、対称反射の第1結晶を用いた場合であるが、非対称反射の第1結晶でも同様である。【0042】次に、このX線回折装置の分解能を説明する。本発明の装置は試料の各位置での格子面間隔のエリアマップを得るものであるから、空間分解能も重要である。図5は縦分解能(上下方向の分解能)を説明する正面図である。縦分解能は、X線源10の焦点の高さFvに依存しており、いわゆる幾何ボケである。X線源10の焦点は有限の高さを持っているので、試料上の一点からの情報は、検出面31上ではRvの広がりをもつ。この点を以下に詳しく説明する。上下方向のX線の進行に関しては、上述のように、第1結晶12及び試料28は影響を与えない。したがって、図5に示すように、X線源10の見かけの焦点の高さFvは、試料28上の特定の地点で反射した後は、X線検出器の検出面31において高さRvの像となる。Rvは次式で与えられる。Rv=Fv・L5/(L1+L2)ここで、Fv=0.5mm、L5=50mm、L1=650mm、L2=150mmを代入すると、Rvは約30μmとなる。したがって、X線源の見かけの焦点の大きさに起因する、検出器上での縦分解能は、約30μmである。【0043】次に、横分解能を説明する。図6は横分解能(水平方向の分解能)を説明する平面図である。横分解能は、X線源の焦点の大きさには無関係で、CuKα1の波長分散に起因する広がりである。この点を以下に詳しく説明する。試料28上の特定の地点で回折するX線は、CuKα1線の波長分散の影響で、X線検出器30の検出面31上では幅Rhの広がりとなる。Rhは次式で与えられる。Rh=L5・Δθ=L5・(Δλ/λ)tanθBここで、(Δλ/λ)はCuKα1線の波長分散を表わし、3.8×10のマイナス4乗である。θBは試料基板のGaAs(004)面のブラッグ反射角(33度)である。L5は50mmである。これらの値を代入すると、Rh=約12μmとなる。【0044】上述の説明から明らかなように、縦分解能においても横分解能においても、距離L5を小さくすれば(すなわち、X線検出器30を試料28に近づければ)、分解能は向上する。【0045】次に、試料結晶に反りがある場合を説明する。図8は試料結晶に反りがあるときの状況を示す平面図である。試料結晶に反り(その曲率半径をRとする。)があると、試料28上の位置によって結晶格子面に対するX線入射角が異なる。したがって、試料28を回転していった場合に、試料上のX線照射領域のうちの特定の地点の近傍だけがブラッグの反射条件を満足することになる。ここでは、試料表面は凸に湾曲していると仮定する。試料28を回転していった場合に、ある回転角度位置では、試料28上のP点の近傍だけがブラッグの反射条件を満足する。ほかの位置ではブラッグの反射条件を満足しない。P点の近傍で回折したX線は、X線検出器30の検出面31上のPa点に到達する。次に、試料28をω軸の回りにΔωだけ回転させると、今度は試料28上のQ点の近傍だけがブラッグの反射条件を満足する。Q点の近傍で回折したX線は、検出面31上のQa点に到達する。Δω回転前のP点とΔω回転後のQ点との距離はΔSである。なお、図8及び後述の図9では、図面を見易くするために試料結晶の反りを誇張して描いてある。【0046】本発明のX線回折装置を利用すると、上述のΔSをもとにして試料結晶の曲率半径を求めることができる。図9は図8の試料付近を拡大して示した拡大図である。試料28の曲率半径はRであり、曲率の中心はO点である。試料28上のP点においてブラッグの反射条件を満足していたものが、試料28をΔωだけ回転させると、今度はQ点でブラッグの反射条件を満足する。P点を中心にして試料28をΔωだけ回転させたと仮定すると、試料28の曲率の中心はO点からOa点に移る。Δω回転前のP点におけるX線入射角とΔω回転後のQ点におけるX線入射角は等しいので、O点とP点を結ぶ直線と、Oa点とQ点を結ぶ直線は、互いに平行である。したがって、Oa点とP点を結ぶ直線とOa点とQ点を結ぶ直線とのなす角度はΔωに等しい。ゆえに、曲率半径Rは次式で求められる。R=ΔS/Δωそして、ΔSは、図8のX線検出器30の検出面31上のPa点とQa点との距離ΔTから簡単に求めることができる。結局、反りのある試料結晶があった場合に、この試料をΔωだけ回転させて、回転前における回折X線の検出位置Paと、回転後における回折X線の検出位置Qaとを確認すれば、その試料結晶の反りの曲率半径Rを知ることができる。さらに、反りが試料表面に対して凸か凹かも、回転後の検出位置QaがPaの位置からどちらの方向に移動したかで分かる。【0047】ところで、単結晶基板上のエピタキシャル薄膜の格子面間隔を精密に測定する場合に、単結晶基板に反りがあると、得られた格子面間隔のデータに、反りの影響による誤差が生じる恐れがある。しかしながら、この点は次のように問題がない。図10はX線検出器の検出面上のPa点とQa点で測定したロッキングカーブを模式的に示したグラフである。Pa点で測定したロッキングカーブでは、単結晶基板の回折ピーク42aと、その上のエピタキシャル薄膜の回折ピーク44aとが現れている。一方、Qb点で測定したロッキングカーブでは、単結晶基板の回折ピーク42bと、エピタキシャル薄膜の回折ピーク44bとが現れている。もし単結晶基板に反りがなければ、本来、回折ピーク42aと42bは同じ回折角度位置に現れるはずである。しかし、反りがあるために、両者はΔωだけ回折角度位置がずれている。ところで、エピタキシャル薄膜の回折ピーク44a、44bの角度位置は、単結晶基板の回折ピーク42a、42bの角度位置を基準にして、偏差Δθとして測定することができる。なぜならば、エピタキシャル薄膜も単結晶基板と同じように反っているからである。これにより、単結晶基板の反りの影響を排除して、エピタキシャル薄膜の格子面間隔を精密に測定できる。【0048】検出面上の位置が異なると基板結晶からの反射が同じ角度位置に現れない現象は、上述の反り以外の原因でも生じることがある。例えば、マグネシア(MgO)基板は、方位がわずかに異なるいくつかのドメインで構成されていることがある。また、α−Al2O3やSrTiO3の基板では、場所によって方位が連続的に変化している、いわゆるリネージ構造を示す場合がある。さらに、非平行配置の2結晶法では、高さ方向の中心付近と上下位置とではブラッグ反射の角度にわずかな相違がある。このように、試料上の場所によって基板結晶からの反射の角度位置がわずかに異なるさまざまな状況が想定されるが、基板結晶からの回折ピーク位置を基準にしてその上のエピタキシャル薄膜の回折ピークの角度位置を決定するようにすれば、測定精度には問題がない。【0049】次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図11は第2の実施形態を示す平面図である。この実施形態では試料28とX線検出器30の間にアナライザ結晶46を挿入している。アナライザ結晶46とX線検出器30は2θ回転台48に載っている。試料28はω回転台50に載っている。試料28からの回折X線はアナライザ結晶46で反射してから、2次元の位置敏感型のX線検出器30で検出される。アナライザ結晶46を挿入すると、格子定数の変化(格子歪み)と方位変化とを区別して観察できる。通常は、逆格子空間強度マップの形でデータを得る。逆格子空間強度マップは、多数のスキャンを組み合わせて行うために、1本のデータを得るだけでも1〜10時間がかかる。したがって、従来装置を使って逆格子空間強度マップのエリアマップを得ようとすれば、膨大な時間を必要とする。本発明のように2次元の位置敏感型のX線検出器を用いれば、1本のデータを得るだけで、エリアマップを作ることができる。【0050】図12は本発明の第3の実施形態におけるX線源と結晶コリメータとを示した平面図である。これ以外の部分は第1の実施形態と基本的に同じである。この第3の実施形態では、試料に幅の広いX線ビームを照射するために、ライン状のX線源を使用している。ライン状のX線源52の見かけの焦点サイズの寸法は、幅Fが10mmで高さが0.05mmのものがよく使われる。このようなライン状のX線ビームを用いると、Kα2の除去が問題となる。これについては(+,+)配置を含む複結晶配置の結晶コリメータを用いることで、Kα2を簡単に除去できる。ライン状のX線源52から出たX線は第1スリット54を通過してから第1の結晶コリメータ56に入射する。この第1の結晶コリメータ56は対称反射の結晶である。第1の結晶コリメータ56で反射したX線は、さらに第2の結晶コリメータ58で反射することでX線ビームの幅Wが広がる。第2の結晶コリメータ58は非対称反射の結晶であり、これにより10mmの幅のX線ビームが50mmの幅のX線ビームとなる。このような結晶コリメータ・システムを使うことで、例えば2〜3インチのウェーハの全域をカバーするような幅広のX線ビームを照射することも可能になる。もし(+,+)配置でビームが回り込んでくるのが気に入らなければ、このような結晶コリメータ・システムを使う代わりに、チャンネルカット結晶素子を使う方法もある。さらに、ワイドビーム幅の4結晶モノクロ・コリメータを使う方法もある。【0051】次に、2次元の位置敏感型のX線検出器について述べる。上述の実施形態で使用したX線用CCDカメラは、最近、急速に発達してきた技術であり、本発明における2次元の位置敏感型のX線検出器として十分実用になるレベルに達している。X線用CCDカメラにはいろいろな種類があるが、上述の実施形態で用いたものは、X線を直接、CCD素子に入射させるタイプのものである。このタイプは高効率であり、分解能も画素サイズである。受光面の寸法は10〜20mm角程度であり、画素サイズは12μmや24μmである。このような画素が縦横に512個ないし1024個配列されて受光面が形成されている。このようなCCD素子は、ペルチェ効果を利用した電子冷却装置や液体窒素によって冷却するのが一般的である。このような冷却により、データを時間蓄積しても、素子間に電荷のにじみが生じなくなり、4桁程度のダイナミックレンジを確保できる。【0052】広い受光面積が必要な場合には、いったんX線像を蛍光体層で光に変換して、この光をテーパーファイバー(入り口が広い面積であり、出口が狭い面積である)を通してからCCDに入射させる方法もある。あるいは、レンズで縮小撮像する方法もある。【0053】X線用CCDカメラ以外の2次元の位置敏感型X線検出器としては、アモルファスSeやアモルファスSiを用いた検出器や、MSGC(Micro Strip Gas Chamber)や、MWPC(Multi-Wire Proportional Counter)を利用できる。X線イメージインテンシファイアとCCD・TVを組み合わせたシステムを用いてもよい。この場合は、CCDは蓄積モードではなくて、TVレートで動作する。ダイナミックレンジは小さいけれども、従来からある高感度X線テレビカメラを用いる方法もある。回折ピークの位置さえ分かれば十分だというような応用分野もあるので、そのような場合には高感度X線テレビカメラで高速に測定することにも意味がある。【0054】また、イメージングプレート(蓄積性蛍光体)やX線フィルムは、X線検出強度を即時的に得ることはできないが、原理的には本発明におけるX線検出器として利用できる。【0055】試料の格子面間隔の面内分布を測定する用途としては次のようなものが考えられる。(1)Ga−As−P系(ガリウム・砒素・リン系)の化合物半導体では、その組成と格子面間隔との間に特定の法則が成立する。したがって、格子面間隔を精密に測定することにより、AsとPの比率を求めることができる。このことを利用すると、基板上に成膜したGa−As−P系化合物半導体薄膜について、その格子面間隔の面内分布を測定することにより、組成比の面内分布を得ることができ、組成比が均一な薄膜であるかどうかの評価が可能になる。【0056】(2)いろいろな機能性材料を効率良く探索するために、共通の単結晶基板上に組成の異なる多数のエピタキシャル薄膜を領域毎に分けて成長させる手法がある。このような場合に、共通の単結晶基板上の薄膜について格子面間隔の面内分布を測定することにより、それぞれのエピタキシャル薄膜の格子面間隔を求めることができる。【0057】(3)半導体デバイスの製造においては、選択成長領域や特定のデバイス領域についての情報を得たいことがある。その場合、数十〜数百μmの幅と長さを持った限られた領域だけから情報を得る必要がある。そのようなときに本発明のX線回折装置を利用すると、X線ビームを細く絞って目的の領域だけにX線を照射するといった作業をせずに、単に、2次元の位置敏感型のX線検出器の検出面上の特定の領域についてのX線強度情報を取り出すだけで、目的の領域からの情報を得ることができる。【0058】【発明の効果】本発明によれば、格子定数の精密測定法において2次元の位置敏感型のX線検出器を用いたので、試料上の各位置におけるX線ロッキングカーブを一挙に得ることができて、試料上の格子定数のエリアマップを短時間で測定することが可能になった。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。【図2】図1のX線回折装置の平面図である。【図3】X線ロッキングカーブのグラフである。【図4】第1結晶で二つの特性X線を分離する条件を説明するための平面図である。【図5】図1のX線回折装置の縦分解能を説明する正面図である。【図6】図1のX線回折装置の横分解能を説明する平面図である。【図7】第1結晶での反射を示した拡大平面図である。【図8】試料結晶に反りがあるときの状況を示す平面図である。【図9】図8の試料付近を拡大して示した拡大図である。【図10】X線検出器の検出面上の二つの地点で測定したロッキングカーブを模式的に示したグラフである。【図11】本発明の第2の実施形態を示す平面図である。【図12】本発明の第3の実施形態におけるX線源と結晶コリメータとを示した平面図である。【図13】試料上のX線照射領域とX線検出器の検出面上の検出位置との対応関係を示した斜視図である。【図14】試料の格子面間隔の面内分布を精密に測定するための従来のX線回折装置の平面図である。【符号の説明】10 X線源12 第1結晶20 第1スリット24 第2スリット28 試料30 2次元の位置敏感型X線検出器32 ω軸 次の(イ)〜(ホ)を有するX線回折装置。(イ)X線源。(ロ)試料を保持するための試料ホルダーであって、試料の表面に平行なω軸の回りに回転可能な試料ホルダー。(ハ)前記X線源で発生したX線のうちの所望の波長のX線を反射する結晶コリメータであって、その反射X線を前記試料に照射するようにした結晶コリメータ。(ニ)前記試料からの回折X線を検出するための2次元の位置敏感型のX線検出器。(ホ)前記試料の前記ω軸の回りの所望の回転角度ピッチごとに、前記X線検出器の検出面の各位置におけるX線検出強度を同時に記録して、これによって前記検出面の各位置におけるロッキングカーブを得るようにした記録装置。 請求項1に記載のX線回折装置において、前記X線検出器がX線用のCCDカメラであることを特徴とするX線回折装置。 次の(イ)〜(ニ)の各段階を有するX線ロッキングカーブの測定方法。(イ)X線源から出たX線のうちの所望の波長のX線を結晶コリメータで反射させる段階。(ロ)前記結晶コリメータで反射したX線を試料に照射する段階。(ハ)前記試料からの回折X線の強度を2次元の位置敏感型のX線検出器で検出する段階。(ニ)前記試料の表面に平行なω軸の回りの前記試料の所望の回転角度ピッチごとに、前記X線検出器の検出面の各位置における前記回折X線の強度を同時に記録して、これによって前記検出面の各位置におけるロッキングカーブを得る段階。