タイトル: | 特許公報(B2)_夢見促進剤 |
出願番号: | 1999103404 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/685,A61P 25/00,A61P 43/00 |
工藤 聰 酒井 正士 大和矢 秀行 片岡 豪人 JP 4344039 特許公報(B2) 20090717 1999103404 19990409 夢見促進剤 株式会社ヤクルト本社 000006884 工藤 聰 酒井 正士 大和矢 秀行 片岡 豪人 20091014 A61K 31/685 20060101AFI20090917BHJP A61P 25/00 20060101ALI20090917BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090917BHJP JPA61K31/685A61P25/00A61P43/00 A61K 31/00-33/44 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開平07−017855(JP,A) 特開平05−032553(JP,A) 特開平11−080009(JP,A) 特開平03−178931(JP,A) 特開昭63−209560(JP,A) 特開昭63−208524(JP,A) 特表2000−516261(JP,A) 2 2000297039 20001024 7 20050510 小堀 麻子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、入眠前に摂取することにより夢を見る頻度を高め、覚醒時に睡眠中の夢の認識を高めることができる夢見促進剤に関する。【0002】【従来の技術】奇想天外な夢を見ることはそれ自体楽しいことであるが、ケクレによるベンゼン環の発見に代表されるように、夢をヒントに発明や発見に結び付けたり、芸術的な創造に夢を生かした例は多い。また、夢は記憶の処理に関与するとされており、夢見の制御は気分転換や創造性の刺激のみならず脳内の情報処理の面からも意義のある技術と考えられる。【0003】従来、レム睡眠状態にある人に視覚や聴覚などの感覚上の刺激を与えることにより、刺激に応じた夢を見させることができるという観点から、レム睡眠中に刺激を与えて夢の内容を制御する装置(特開昭56−13955号)や、そのためのコンピュータソフトなども考案されている。しかしながら、これは睡眠中に刺激を与える装置を体に取り付ける必要があり、必ずしも満足のゆく方法ではなかった。更に、夢を見る頻度を高めるための方法は未だ提供されていない。また、夢により創造性を刺激するには、覚醒時に夢を覚えている必要があるが、このような目的を達成するための手段も知られていない。【0004】【発明の解決しようとする課題】このように、従来夢見を促進する手段については、要望が高いにもかかわらずこれまで満足できる手段は報告されておらず、夢見を促進し、かつ覚醒時に夢を覚えているための手段が望まれていた。本発明者らは、鋭意研究の結果、ホスファチジル−L−セリンを、入眠前に予め投与することにより、夢見を促進し、かつ覚醒時に夢を覚えていることができることを見出し、本発明に至った。なお、ホスファチジル−L−セリン自体は、アミノ酸を含有する燐脂質として広く生物界に分布するものである(岩波生物学辞典)。【0005】【課題を解決するための手段】 本請求項1に係る発明の夢見促進剤は、ホスファチジル−L−セリン又はその塩を有効成分とするものである。本請求項2に係る発明の夢見促進剤は、大豆レシチン由来の転移型ホスファチジル−L−セリン又はその塩を有効成分とするものである。【0006】【発明の実施の形態】本発明の夢見促進剤は、被検体に入眠前に予めホスファチジル−L−セリン又はその塩を投与することにより、夢見を促進し、かつ覚醒時に夢見を認識することができるものである。【0007】本発明のホスファチジル−L−セリン又はその塩は、いかなる方法により得られたものでも良く、特に製造方法が限定されるものではないが、例えば、大量にまた安価に提供可能な大豆レシチン、菜種レシチン、卵黄レシチン等からホスファチジル−L−セリンを抽出しても良く、或いはこれらを原料として、ホスホリパーゼDによるホスファチジル基転移反応によって得られる転移型ホスファチジル−L−セリンを用いることもできる。【0008】また、牛、豚、羊、鶏、魚等の畜水産物由来、あるいは酵母等の微生物由来のホスファチジル−L−セリンを用いることができる。更には、それらより抽出されたホスファチジル−L−セリンや転移型ホスファチジル−L−セリンに水素添加処理を行ったホスファチジル−L−セリン、あるいは転移型ホスファチジル−L−セリン又水素添加型ホスファチジル−L−セリンの1又は2位の脂肪酸鎖が除かれているリゾ型のホスファチジル−L−セリンを用いることもできる。【0009】また、これらの1種または2種以上を組み合わせたものであっても良い。前記のホスファチジル−L−セリンは、適当な精製処理工程に付し、不純物を除いて用いることが望ましいが、その効果を阻害するような問題がない限り、原料由来や生成工程での不純物を含んだまま用いても良い。本発明のホスファチジル−L−セリンの塩としては、安全性を保てる塩の形であれば特に制約はないものの、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等があり、とりわけナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。【0010】ホスファチジル−L−セリン又はその塩の投与は、経口投与でも静脈内投与でも有効であるが、入眠1〜2時間前に投与されることが好適である。投与量は、成人当たり1日100〜300mg程度で良いが、個人差もありこの範囲に限定されるものではない。また、経口投与は、そのまま、或いは他の脂質、糖、たんぱく質、ビタミン、食物エキス等の賦形剤を混ぜて、扱いやすさや保存性、官能特性等を向上させたカプセル剤、錠剤あるいは顆粒剤に加工したものを用いることができる。【0011】更に、ホスファチジル−L−セリン又はその塩は、安全性の点でも問題がないので、日常摂取する各種飲食品、例えば、飲料類(茶、珈琲、紅茶、ココア、ハーブ茶、清涼飲料、果汁等)、菓子類(ビスケット、チョコレート、飴、ガム等)、乳製品(乳酸菌飲料、発酵乳、チーズ、アイスクリーム等)あるいはその他のパン、米飯、麺類等、種々の飲食品に配合して用いることができる。なお、ホスファチジル−L−セリン又はその塩の投与後、入眠前に視覚的な刺激(例えば、映像や絵画等)を与えたり、入眠後に聴覚的な刺激を与えることも本発明の効果を更に高めるのに有効である。【0012】本発明で用いられるホスファチジル−L−セリンの製造例を示す。先ず、大豆由来の転移型ホスファチジル−L−セリンの製造方法について説明する。大豆レシチン(PC80,BOLEC,Croklaan b.c.,オランダ)50gを300ccバイアル瓶に取り、60mlの酢酸エチルを加えて溶解させた。ここに0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解したL−セリン溶液(0.50g/ml)50mlを加えて混合した後、放線菌由来のホスホリパーゼD溶液(500u/ml,(株)ヤクルト本社製)15mlを加え、スターラーで攪拌しながら50℃で5時間反応させた。【0013】熱水中で酵素を失活させてから、反応液を氷冷して2層に分離させ30分間放置後、上層を除去し、残りの下層をクロロホルムで抽出してから減圧固化した。この標品5gに対してクロロホルム15mlを加えて溶解したものをシリカゲル(Silica gel 60,MERCK)を充填したカラム(Φ32mm×300mm)にアプライし、室温でクロロホルム−メタノール(4:1)を100ml/時間の流速で流して転移型ホスファチジル−L−セリンを含む画分を分取した。【0014】次に、動物組織からのホスファチジル−L−セリンの精製方法について説明する。動物組織(ブタ脳、ヒツジ脳、鶏肉、鶏肝臓、イワシ魚体、サバ血合肉等)を細かく切断し、200g当たり、60mlのアセトンを加え、ワーリングブレンダーでホモジナイズした。これにアセトン200mlを加え、上清を吸引濾過して除いた残渣を800mlのアセトン、400mlのエタノールで洗浄後、800mlの石油エーテルで一晩攪拌しながら脂質を抽出した。抽出物を減圧乾固し、そのうちの5gに対してクロロホルムを加えて溶解したものをシリカゲル(Silica gel 60,MERCK社製)を充填したカラム(Φ32mm×300mm)にアプライし、室温でクロロホルム−メタノール(4:1)を100ml/時間の流速で流してホスファチジル−L−セリンを含む画分を分取した。【0015】次に、水素添加型ホスファチジル−L−セリンの製造方法について説明する。大豆由来の転移型ホスファチジル−L−セリンをn−ヘキサン15gとエタノール3gの混合液に溶解し、ここに0.15gの10%パラジウムカーボンを加え、室温・常圧条件下で振盪しながら約5時間水素添加を行い、水素添加型ホスファチジル−L−セリンを得た。【0016】最後に、リゾホスファチジル−L−セリンの製造方法について説明する。大豆由来の転移型ホスファチジル−L−セリン300mgを6ccバイアル瓶に取り、酢酸エチルを1.2ml、0.25Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を0.20ml、蒸留水1.2ml、ブタ脾臓ホスホリパーゼA2(11,200IU/ml,ノボ・ノルディスク社製)を0.02ml加えてよく混合し、50℃で16時間反応させた。熱湯中に20分間浸漬して酵素を失活させた後、3.0mlのアセトンで3回洗浄操作を行った後、沈殿部を回収して風乾し、リゾホスファチジル−L−セリンを得た。【0017】≪試験例1≫大豆レシチンとL−セリンを原料にホスファチジル基転移反応により製造したホスファチジル−L−セリン(大豆転移PS)を食用油に溶解し、1錠当たり50mgとなるようにゼラチンカプセルに充填した。20名のボランティア(男女、24歳〜56歳)を対象に、入眠の1〜2時間前に上記ゼラチンカプセルを2錠摂取してもらい、翌朝、6項目(爽快感、便通、食欲、体温、寝付き、夢を見たかどうか)についてアンケート方式により調査した。また、プラセボ(食用油のみを充填したゼラチンカプセル)を2錠摂取した場合にも同様のアンケート調査を行った。結果を表1に示す。【0018】【表1】【0019】表1に示すように、ホスファチジル−L−セリンの投与群は、爽快感、便通、食欲、体温、寝付きについては、プラセボ投与群と変わらなかったが、夢見については有意に向上したことが認識された。【0020】≪試験例2≫事前のアンケートにより夢をあまり見ないと申告した20名のボランティア(男女、24歳〜56歳)を対象に、入眠の1〜2時間前に試験例1で用いたホスファチジル−L−セリン入りゼラチンカプセル又はプラセボ(食用油のみを充填したゼラチンカプセル)を投与し、翌朝、覚醒直後に夢を見たかどうかを調査した。試験は2週間にわたって行い、入眠の1〜2時間前に、最初の1週間はプラセボを2錠経口投与し、翌週は、ホスファチジル−L−セリン入りゼラチンカプセルを2錠経口投与した。結果を表2に示す【0021】【表2】【0022】表2に示すように、ホスファチジル−L−セリンの投与週は、プラセボ投与週と比べ有意に夢見が向上することが確認された。【0023】実施例1(ゼラチンカプセル)大豆転移PS(ホスファチジル−L−セリン含量40%)1,000gに中鎖脂肪酸トリグリセリド1,000gとビタミンE550gを配合してホスファチジル−L−セリン含量が50mgになるようにゼラチンカプセルを充填した。【0024】実施例2(栄養ドリンク)栄養ドリンク110mlに大豆転移PS(ホスファチジル−L−セリン含量40%)250mgを分散させ、1本当たりのホスファチジル−L−セリン含量が100mgの栄養ドリンクを調製した。【0025】実施例3(発酵乳)発酵乳125mlに大豆転移PS(ホスファチジル−L−セリン含量40%)250mgを乳化分散させ、1本当たりのホスファチジル−L−セリン含量が100mgの発酵乳を調製した。【0026】実施例4(ホスファチジル−L−セリン強化牛乳)牛乳180mlに大豆転移PS(ホスファチジル−L−セリン含量40%)250mgを乳化分散させ、1本当たりのホスファチジル−L−セリン含量が100mgのホスファチジル−L−セリン強化牛乳を調製した。【0027】実施例5(キャラメル)加熱融解したキャラメル90gに大豆転移PS(ホスファチジル−L−セリン含量40%)10gを加え、よく混合してから冷却し、一粒(2.5g)中に100mgのホスファチジル−L−セリンを含むキャラメルを調製した。【0028】【発明の効果】 本発明のホスファチジル−L−セリンを有効成分とする夢見促進剤によれば、入眠前に摂取することにより夢見頻度を高めることができる。また、覚醒時に睡眠中の夢の認識を高めることができる。本発明の夢見促進剤は、安全性に問題もなく扱いやすいものであるから、各種食品に含有させて用いることができる。更に、本発明の夢見促進剤は、夢見の頻度を向上させることが出来るため、精神科治療等の医学・心理学分野における有効な利用が図れるとともに、娯楽的利用からも極めて優れたものである。 ホスファチジル−L−セリン又はその塩を有効成分とする夢見促進剤。 ホスファチジル−L−セリンが、大豆レシチン由来の転移型ホスファチジル−L−セリンである請求項1の夢見促進剤。