タイトル: | 特許公報(B2)_ホタルルシフェリンの安定化方法 |
出願番号: | 1999059536 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12Q 1/66 |
高安 進 井場 俊彦 JP 4379644 特許公報(B2) 20091002 1999059536 19990308 ホタルルシフェリンの安定化方法 栄研化学株式会社 000120456 高安 進 井場 俊彦 20091209 C12Q 1/66 20060101AFI20091119BHJP JPC12Q1/66 C12Q 1/00 - 3/00 C12N 9/00 - 9/99 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 国際公開第99/011766(WO,A1) 2 2000253899 20000919 6 20060302 ▲高▼ 美葉子 【0001】【産業上の利用分野】本発明はホタルルシフェリンの安定化に関するものである。【0002】【従来の技術】ホタルルシフェリンは、ホタルルシフェラーゼによる発光反応の基質であり、酸素、ATP、およびマグネシウムイオンの存在下に酸化されて発光する。ホタルルシフェラーゼとホタルルシフェリンによる発光反応は、ATPがごく微量であっても進行することから、ATPを高感度に検出することができ、特に生物由来のATPの高感度・簡易検出法に利用されている。【0003】細菌検査の分野においては、菌体内のATPをホタルルシフェラーゼとホタルルシフェリンによる発光反応で検出することにより、細菌の有無を培養を必要とせずに迅速かつ高感度に検出可能である。また、食品加工現場においては器具や設備に付着した食材に由来するATPを検出する清浄度検査に利用されている。【0004】ホタルルシフェラーゼとホタルルシフェリンの発光反応の別の利用法としては、ホタルルシフェラーゼを標識物質とした微量物質の測定が挙げられる。特に生体内に存在するホルモン等の物質を免疫学的に測定する生物発光酵素免疫測定法では、高感度であることに加えて測定範囲も広いことから、従来の酵素免疫測定法やラジオイムノアッセイに代わるものとして注目されている。【0005】しかしながら、ホタルルシフェラーゼとホタルルシフェリンはどちらも不安定な物質である。特にホタルルシフェリンは、ホタルルシフェラーゼの非共存下では溶解後2週間(pH8.0、室温)で活性が40%程度まで低下することが知られている。生物発光酵素免疫測定法では、標識物質であるホタルルシフェラーゼを検出するという反応系の性質から、ホタルルシフェリンを含む試薬にはホタルルシフェラーゼを共存させることができないため、溶液状態でのホタルルシフェリンの安定性が悪いことは大きな問題であった。【0006】一般的に酵素とその基質が共存する状態では、それぞれが単独で存在するよりも安定性が向上することはよく知られた事実である。ホタルルシフェラーゼとホタルルシフェリンが共存する場合の安定化技術としては、安定化剤としてポリオールを添加し、pHを5.5から7.4としたホタルルシフェラーゼ・ホタルルシフェリンの水溶液[1]が知られている。しかしながら、ホタルルシフェリン単独の状態でも同様に安定性が向上するかどうかは全く知られていない。【0007】また、ウミホタルルシフェリンをpH6.0以下の溶液で保存する方法[2]も知られているが、ウミホタルルシフェリン(化学式1)とホタルルシフェリン(化学式2)では全く構造が異なるため、そのままホタルルシフェリンに適用できるとは言い難い。【0008】【化1】【0009】【化2】【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明が解決すべき課題は、新たなホタルルシフェリンの安定化方法と、その方法を用いた安定なホタルルシフェリン溶液の提供である【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題の解決のために検討を行った結果、pH5.5から6.8の溶液中ではホタルルシフェリン単独の場合でも安定性が向上することを見いだした。【0012】【発明の実施の形態】本発明において、pH5.5から6.8の溶液を調製するために用いられる緩衝液は、前記のpHの範囲で緩衝能を持つものであればどのような緩衝液でも使用できる。具体的には以下の緩衝液を用いることができるが、これらに限定されるものではない。N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝液ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)緩衝液酢酸緩衝液リン酸水素ナトリウム−クエン酸緩衝液上にあげた緩衝液の中では、ADA、Bis-Tris、および酢酸緩衝液が好ましい。【0013】本発明において使用する緩衝液成分の濃度に特に制限はなく、その緩衝液成分が通常使用される濃度領域であれば、どのような濃度でもかまわない。緩衝液成分の濃度は使用する緩衝液のpHを考慮した上で適宜決定されるが、発光反応時にはpHを至適である8.0付近に変化させることを考慮すると、あまり濃度の高いものは実用的ではなく、pH5.5から6.8を維持できる最低限の濃度であれば十分である。【0014】【実施例】実施例1(各種緩衝液成分の検討)・ホタルルシフェリン溶液の調製470μM ホタルルシフェリン(シグマ製)、1.25mg/ml DTT、0.13mM EDTA-2Na、0.08% サッカロースを含むpH6.5の溶液を、以下に挙げる緩衝液成分(濃度はすべて20mM)で調製した。N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝液ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)緩衝液酢酸緩衝液リン酸水素ナトリウム−クエン酸緩衝液トリシン緩衝液(対照品、pH8.0)・安定性試験調製したホタルルシフェリン溶液を凍結乾燥し2群に分け、凍結乾燥品の1群はそのまま4℃で保存し、もう1群は精製水で溶解後、25℃で2週間保存した。・発光反応保存しておいたホタルルシフェリン溶液に発光試薬(100ng/ml ホタルルシフェラーゼ(シグマ製) 、0.2% BSA、0.02% Casein、1mM ATP、8mM 硫酸マグネシウム、0.1mM ピロりん酸カリウムを含む20mMトリシン緩衝液(pH8.0))を加え、ルミネッセンスリーダーで発光量を測定した。凍結乾燥保存品も精製水で溶解してから発光試薬を加えて、ルミネッセンスリーダーで発光量を測定した。凍結乾燥品の発光量を100%として、同じ緩衝液成分のホタルルシフェリン溶液の残存活性の割合を算出した。【0015】・結果2週間保存後のホタルルシフェリンの残存活性を表1に示す。対照品のpH8.0のホタルルシフェリン溶液では、凍結乾燥保存品に対して40%の活性しか残っていないのに対して、pH6.5で保存したホタルルシフェリン溶液は50〜80%の活性を維持している。中でもADA、Bis-Tris、酢酸緩衝液中で保存した場合には、70%以上の活性が残っていた。【0016】【表1】【0017】実施例2(至適pHの検討)・ホタルルシフェリン溶液の調製470μM ホタルルシフェリン(シグマ製)、1.25mg/ml DTT、0.13mM EDTA-2Na、および0.08% サッカロースを含むホタルルシフェリン溶液を調製した。pHの設定と緩衝液の種類は以下の通り。pH 緩衝液(濃度は全て20mM)5.0 酢酸緩衝液5.7 〃6.1 ADA緩衝液6.5 〃6.7 〃7.0 〃7.4 HEPES緩衝液8.0 トリシン緩衝液8.2 〃その他の試薬、操作は実施例1と同一である。【0018】・結果2週間保存後のホタルルシフェリンの残存活性を図1に示す。pH7.0以下の領域ではpH8.0よりも高い残存基質活性を維持しているが、pH5.5からpH6.8の領域では基質活性が70%以上残っていることがわかる。【0019】【発明の効果】以上に説明したように、本発明が提供する安定化方法は溶液中のホタルルシフェリンの安定性を向上させ、従来よりも長期間にわたって活性を維持することが可能である。本発明はホタルルシフェラーゼが共存しない状態での安定化方法なので、生物発光酵素免疫測定系において特に有用であると考えられる。【0020】参考文献[1]WO 9411528[2]特開平 8-154699【図面の簡単な説明】【図1】各種pHにおける25℃、2週間保存後の残存基質活性 ホタルルシフェラーゼを含まず、緩衝液成分としてN-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸を用い、pHを6.1から6.7にすることを特徴とするホタルルシフェリン溶液の安定化方法。 ホタルルシフェラーゼを含まず、緩衝液成分としてN-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸を含み、pHが6.1から6.7であることを特徴とするホタルルシフェリン溶液。