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タイトル:特許公報(B2)_タンパク質の活性化方法及び該装置
出願番号:1999055715
年次:2006
IPC分類:C07K 1/02,C07K 14/485,C12N 15/09,C12N 1/16,C12N 1/20


特許情報キャッシュ

宮内 明 小澤 良 吉田 雅人 水上 誠 JP 3734634 特許公報(B2) 20051028 1999055715 19990303 タンパク質の活性化方法及び該装置 ヒゲタ醤油株式会社 000112060 戸田 親男 100075775 宮内 明 小澤 良 吉田 雅人 水上 誠 20060111 C07K 1/02 20060101AFI20051215BHJP C07K 14/485 20060101ALI20051215BHJP C12N 15/09 20060101ALI20051215BHJP C12N 1/16 20060101ALN20051215BHJP C12N 1/20 20060101ALN20051215BHJP JPC07K1/02C07K14/485C12N15/00 AC12N1/16 AC12N1/20 A C07K1/00-19/00 C12N15/00-15/90 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) EUROPAT(QUESTEL) JICSTファイル(JOIS) 米国特許第04304857(US,A) Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology,21,p.208-214,1998 5 FERM BP-1087 2000256393 20000919 9 20020125 伏見 邦彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、正常な生物活性を有する天然型(native)タンパク質が、その立体構造が生物学的に天然型とは異なった高次構造となっているため、あるいはその他の理由により生物学的に不活性な非天然型(non-native)の状態になっているとき、この生物学的に不活性な状態で生産されたタンパク質を活性を有する天然型(native)タンパク質に変換する方法に関するものである。【0002】本発明は、例えば正常な立体構造をとっていれば生物活性を有しているタンパク質が、何等かの理由により生物学的に不活性な状態になっていたものを生物学的に活性のあるタンパク質に変換する方法及び該装置に関するものである。更に詳細には、例えば、遺伝子工学的手法に基づいて、形質転換微生物で生産されたタンパク質の場合、天然型タンパク質とその立体構造が異なって生産されたことによって生物学的に不活性な状態になっていたタンパク質を活性化する方法に関するものである。【0003】【従来の技術】生物由来の酵素、サイトカインの様な生物活性を有するペプチド及びタンパク質は遺伝子工学的手法を適用することにより微生物、動植物の培養細胞を用いて大量に製造することが可能となった。しかし、細菌等を宿主として用いて発現された異種タンパク質は、しばしば宿主細胞内で変性し、沈殿物として生物学的に不活性な状態で存在することが知られている。また、細胞外に分泌生産されたとしても同様に生物学的に不活性な状態にあるペプチドやタンパク質の存在も知られている。これは、タンパク質の一次構造が天然型の正しい構造をとってはいるが、その立体構造が生物学的に正しく構築されていない為、生物活性を有する構造になっていないことが原因のひとつと考えられている。【0004】また、化学合成されたポリペプチドや細胞抽出液中(Cell free系)で生合成されたタンパク質もしばしば正しい立体構造をとることが出来ず、例えば、ジスルフィド結合を欠く比較的折り畳みの少ない不活性な構造をとっていることが知られている。【0005】ジスルフィド結合が不完全なことが原因で正しい立体構造がとれず、生物学的に不活性な状態のタンパク質の活性を回復させる方法として、特開昭59−161321号公報には、沈殿した不活性なタンパク質を強力な変性剤を用いて可溶化し、この可溶化液を希釈し、あるいは弱い変性溶液と置換することにより活性型とし、生物学的に活性のあるタンパク質に換え回収する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、タンパク質溶液の容量の著しい増加をもたらすこと、また、活性化するために長時間を要する等の欠点を有している。また、この方法は種々のタンパク質を活性化する上で共通する一般原理を導くことがむつかしく、対象とするタンパク質毎に活性化の条件を試行錯誤の上見出すことが必要で、多くの努力を払わなければならないのが現実であって、充分に満足できる方法は未だ開発されていない。【0006】【発明が解決しようとする課題】タンパク質の生産において、その生産収量を上げるために、例えば組換えDNA技術においては、シグナルペプチドの改変等遺伝子の改良や形質転換体の培養方法の改良等によって目的タンパク質の生産量を高める方策が従来より行われている。これに対して本発明者らは、このようにいわば直接的にタンパク質の収量を上げるのではなく、生産され培養物中に混在する非活性型のタンパク質を活性型に変換することにより目的タンパク質の収量を上げるいわば間接的な方法に改めて着目したものであって、本発明の目的は、活性のある立体構造がとれていないあるいはその他すべての理由によって生物学的に活性を持たない(不活性化された)タンパク質を活性化する方法であって、提案されあるいは実施されてきた方法と比べると極めて容易にかつ短時間で生物学的に活性のあるタンパク質に変換することが出来るタンパク質の活性化方法および該装置を提供することである。【0007】また、本発明は生物学的に不活性な状態で生産したタンパク質が例えばジスルフィド結合のかけ違いで起こる場合において、生物学的に活性のあるタンパク質と不活性な状態で生産したタンパク質を含む溶液から、生物学的に不活性な状態で生産したタンパク質を特異的に凝集、沈殿させ回収することを特徴とする該タンパク質の分別、分取方法を提供するものである。もちろん、このようにして分別、分取した不活性タンパク質も、上記した活性化方法により活性化することができる。【0008】【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、本発明者らは、鋭意研究の結果、正常な立体構造をとれていないがために生物学的な活性を有していないタンパク質(多量体EGF)をブレビバチルス属細菌の培養細胞の懸濁液中でインキュベートしたところ、立体構造が正常化して生物活性が回復して活性型(native)EGFに変換されることをはじめて見出した。そして更に検討の結果、遂に完成されたものである。【0009】すなわち本発明は、生物学的に不活性な状態で生産されたタンパク質を、生物の培養細胞と接触させることにより、生物学的に活性のあるタンパク質に変換させることを特徴とするタンパク質の活性化方法に関するものであって、立体構造が生物学的に正しくないという理由に限らずその他すべての理由によりともかくその詳細なメカニズムは問わず、生物学的な活性を有していない非天然型(non-native)タンパク質をすべて活性化して、細胞との接触という極めて簡便な操作により天然型(native)タンパク質に変換するきわめて効率的、工業的な方法を提供するものである。以下、本発明について詳述する。【0010】(1)本発明に用いられる生物の培養細胞は、動物細胞ではヒト腎臓癌組織由来のヒト株化細胞、マウスミエローマ細胞、各種ハイブリドーマ細胞等が使用できる。植物細胞では、タバコ細胞、イネ培養細胞等が使用できる。微生物の細胞では、原核生物細胞を有する大腸菌属細菌、バチルス属細菌、ブレビバチルス属(Brevibacillus)細菌等が使用出来、また、真核細胞を有する、サッカロミセス属(Saccharomyces属)酵母、ピチア属(Pichia属)酵母、アスペルギルス属(Aspergillus属)の糸状菌等が利用出来る。【0011】以上のような培養細胞が適宜使用出来るが、特に、工業的に実施するためには、大量に培養可能な細胞であることが好ましく、例えば、好気的条件下での培養条件が好ましい、糸状菌、酵母、細菌の細胞がより好ましい。特に、工業的な大量培養法が確立している大腸菌属、Bacillus属、Brevibacillus属、酵母類がより好ましく適用できる。Brevibacillus属の中でも培養液中にタンパク質分解酵素を生産しないBrevibacillus choshinensis HPD31(なお、この菌株はバチルス・ブレビスH102(Bacillus brevis H102)FERM BP−1087として寄託を継続中である。また、この菌株はバチルス・ブレビスHPD31(Bacillus brevis HPD31)と同一菌株である。インターナショナル ジャーナル オブ システマティック バクテリオロジー(International Journal of Systematic Bacteriology)、第46巻、第939〜946頁(1996)において分類学的位置の変更があった。)の菌体を使用することにより生物学的に活性を有しないタンパク質が変換され、正常な立体構造を有する活性化されたタンパク質となり、反応中に分解を受けることなく蓄積するため非常に効率よく本発明方法を実施出来る。更に、培地中にタンパク質分解酵素が存在しない為、培養物をそのまま、または、遠心分離等によって集めた菌体をそのまま利用しても、被活性化タンパク質が分解を受けることに配慮する必要がない等非常に有利に使用可能である。【0012】(2)培養方法は、細胞の属、種によって異なっているが、一般的な生物の培養法によって培養し、増殖する培地であれば如何なるものでもよい。例えば、液体振とう培養法、寒天平板培養法、固体培養法、通気攪拌培養法等で増殖させた培養細胞等何れの方法によって収獲された培養細胞でも利用できる。培養後の細胞は、細胞を含んだ培養物そのままでもよいし、また、培養液を遠心分離法やMF膜等で濾過することによって細胞を集め、そのまま使用してもよいが、種々の緩衝液で洗浄して使用してもよい。集めた菌体は、凍結乾燥し、必要なときに緩衝液に懸濁し使用することができるし、凍結保存用の緩衝液に懸濁し、凍結保存し、同様必要なとき解凍し使用してもよい。上述のように、本発明に使用する培養細胞は培養液、遠心等で集菌した細胞、凍結乾燥した細胞、凍結乾燥細胞を適当な緩衝液に懸濁した状態の細胞、培養細胞を凍結保存し解凍した後の懸濁細胞等のいずれでもよいが、非破砕(非破壊)細胞として使用する。【0013】(3)被活性化タンパク質としては、ペプチド合成機によって化学的に合成された種々のポリペプチド、ウサギ網状赤血球抽出液を用いたin vitroタンパク質合成系により合成された種々のタンパク質、組換えDNA技術により生産された種々のタンパク質やそ(れら)の含有物等の例がある。また、組換えDNA技術により生産されるタンパク質としては、同タンパク質自体のほか、同生産培養物(形質転換体培養物)全体、同生産培養物から分別、分取した生物学的に不活性なタンパク質、そ(れら)の含有物等が挙げられる。【0014】このようなものの例としては、酵素、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、受容体その他があり、更に具体的な例として、ウロキナーゼ、インシュリン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、エリスロポイエチン、インターロイキン受容体等及び種々の成長因子、成長因子に類するタンパク質としては上皮細胞成長因子やインシュリン様成長因子、免疫グロブリン、一本鎖抗体などが挙げられる。特に、大腸菌を宿主として組換えDNA技術により生産されるタンパク質のあるものは大量に生産されるが、タンパク質本来の立体構造が構成できずに菌体内に不溶性の顆粒として存在する例が数多く知られている。【0015】また、菌体外に分泌される組換えタンパク質の場合でもその種類により菌体外で不溶化したり、本来の構造が構成できないことにより、タンパク質同士が会合し高分子状態で生産される場合もある。これらのタンパク質は通常ジスルフィド結合が正常に架けられておらず、間違えた結合をしている為、タンパク質の一次構造は同じであるが、立体構造が異なるために生物活性を有していないものである。本発明は上記のような被活性化タンパク質を培養細胞と接触させることにより正常なジスルフィド結合に戻し、生物学的に活性のあるタンパク質にすること、すなわち、生物学的に不活性な状態で生産したタンパク質を活性化する方法に関するものである。【0016】(4)本発明を実施するには、被活性化タンパク質と細胞とを接触させればよい。生物学的に不活性な状態で生産されたタンパク質と生物の培養細胞との接触は、細胞菌体自体のほか、培養菌体を含む培養物、洗浄細胞、固定化細胞、凍結乾燥細胞、そ(れら)の懸濁物等のうちいずれかの1以上の選択された細胞を該タンパク質に接触させることからなるものである。本発明に係る活性化の詳細なメカニズムは今後の研究にまたねばならないが、ジスルフィド結合が正常化することがひとつの原因と考えられる。【0017】本発明のタンパク質の活性化の方法において、生物学的に不活性な状態で生産したタンパク質に接触させる培養細胞の量、接触の形態は適宜最良の方法を選択することが出来る。例えば、培養細胞に原核細胞を有する微生物を使用する場合、微生物の細胞を適当な緩衝液、例えばトリス塩酸緩衝液に懸濁後、過剰量を不活性な状態で生産したタンパク質に加え、よく混合し、好ましくは15〜60℃、より好ましくは25〜45℃で1〜2時間反応させることで生物学的に不活性な状態で生産されたタンパク質が活性化される。【0018】反応させる際、微生物の細胞をMF膜等で閉じた空間に固定化し緩衝液等で溶解させたタンパク質溶液を通過させることによって接触させてもよいし、また疎水性の多孔性樹脂であるHP−20(三菱化学社製)の様な担体に菌体を吸着させることによって固定化し、固定化カラムとし、この固定化カラムにタンパク質溶液を供給することによって微生物の細胞と接触させてもよい。【0019】本発明に係る活性化装置は、上記した工程を具体的に実現するものであって、培養細胞をMF膜や不溶性の担体に固定化し、ポンプ等の溶液供給装置によりタンパク質溶液をこの固定化細胞に供給し、接触させることにより生物学的に不活性な状態で生産されたタンパク質の活性化装置である。本装置において、細胞の固定は、上記によるほか、従来より行われている酵素、各種蛋白質、微生物の担体への固定化技術が適宜利用可能である。すなわち、無機又は有機、天然又は合成、高分子又は低分子、生物系又は非生物系等各種担体を用い、共有結合法、イオン結合法、物理的吸着法等による従来既知の固定化技術が適宜利用可能である。【0020】例えば担体としては、アガロース、セルロース、デキストラン、セファローズ、セファデックス等の多糖類(誘導体)、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン等の合成高分子物質、(多孔質)ガラス、(多孔質)セラミックス、活性炭、シリカゲル、アルミナ、粘土鉱物等の無機ないしセラミックス系物質が適宜利用される。これらの担体は、そのまま、あるいは臭化シアン、水素化シアノホウ素等で処理したり、架橋剤や縮合試薬で処理したりして、常法にしたがって細胞との固定化を更に推進せしめてもよい。【0021】また、培養細胞と生物学的に不活性な状態で生産されたタンパク質でジスルフィド結合の架け違い等によって不活性化されているタンパク質と接触、反応させるときに、還元型グルタチオンやシステインのようなスルフヒドリル基を持つ化合物を0.1〜50mM添加するとより有効に本発明の効果を向上させることが可能である。【0022】更にまた、被活性化タンパク質が単離されておらず、天然型(native)タンパク質と非天然型(non-native)タンパク質とが混在している場合において、本発明は、生物学的に活性のあるタンパク質と不活性な状態で生産したタンパク質を含む溶液を、生物学的に活性のあるタンパク質の等電点以下のpHに調製することにより、生物学的に不活性な状態で生産したタンパク質を特異的に凝集、沈殿させ回収することを特徴とする該タンパク質の分別、分取方法を提供するものであって、この方法によれば、目的とする活性タンパク質を精製することができることはもちろんのこと、回収した不活性タンパク質は被活性化タンパク質として使用することができる。【0023】本発明に係る上記分別、分取方法の1例として生物学的に不活性な状態のタンパク質がジスルフィド結合のかけ違いで起こる場合において、該タンパク質が組換え上皮細胞成長因子であることを特徴とする分別、分取方法、及び生物学的に不活性な状態で生産された組換え上皮細胞成長因子を含む溶液をpH3に調整することにより凝集、沈殿させ回収することを特徴とする分別、分取方法が挙げられる。【0024】以下本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これは例示的なものであり、本発明はこれに限定されるものではない。【0025】【実施例1:培養細胞の調製】(1)大腸菌菌体の調製大腸菌(Escherichia coli)JM109(宝酒造(株))をポリペプトン4g、酵母エキス0.5g、ブドウ糖2g、水100ml(pH7.0)の液体培地で30℃、24時間振とう培養し、遠心分離にて集菌し、得られた菌体を4%ポリペプトン溶液100mlに懸濁する。【0026】(2)枯草菌菌体の調製枯草菌(Bacillus subtilis)IFO13719をポリペプトン4g、酵母エキス0.5g、ブドウ糖2g、水100ml(pH7.0)の液体培地で30℃、24時間振とう培養し、遠心分離にて集菌し、得られた菌体を4%ポリペプトン溶液100mlに懸濁する。【0027】(3)ブレビバチルス チョーシネンシス菌体の調製ブレビバチルス チョーシネンシス(Brevibacillus choshinensis)HPD31(FERM BP−1087)をポリペプトン4g、酵母エキス0.5g、ブドウ糖2g、水100ml(pH7.0)の液体培地で30℃、24時間振とう培養し、遠心分離にて集菌し、得られた菌体を4%ポリペプトン溶液100mlに懸濁する。【0028】(4)酵母菌体の調製サッカロミセス セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)IFO10217をペプトン1g、酵母エキス0.5g、ブドウ糖4g、KH2PO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.2g、水100ml(pH7.0)の液体培地で30℃、24時間振とう培養し、遠心分離にて集菌し、得られた菌体を1%ペプトン溶液100mlに懸濁する。【0029】【実施例2:不活性な状態で生産したタンパク質の分別、分取方法】(1)不活性な状態で生産したヒト組換え上皮細胞成長因子(h−rEGF)の調製ミヤウチ(Miyauchi)らの作製したヒト組換え上皮細胞成長因子遺伝子を含むプラスミドpHT110EGF(ジャーナル オブ インダストリアル マイクロバイオロジー アンド バイオテクノロジー(Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology)、第21巻、第208〜214頁(1998))を保有するブレビバチルス チョーシネンシスHPD31を同文献記載の培養条件で65時間液体培養し、遠心分離により、上澄みを回収した。それを6M塩酸でpH3.0に調整し、不活性な状態で生産したヒト組換え上皮細胞成長因子を特異的に凝集させ、この沈殿を遠心分離で回収した。0.1M Tris-HCl(pH7.0)の緩衝液で沈殿を溶解後、再度6M塩酸でpH3.0に調整し、沈殿を遠心分離し回収した。更に、沈殿を蒸留水に懸濁し、水酸化ナトリウム溶液でpH7.0に調整後、凍結乾燥し、不活性なヒト組換え上皮細胞成長因子(h−rEGF)を調整した。本不活性化ヒト組換え上皮細胞成長因子はEGF分子中のシステイン残基が近傍のEGF同志のCysが分子間でS−S結合を形成することによって生じたと推定される(EGF生産培養上清のSDS−PAGE/Western Blot法分析による)多量体EGFであり、これは非天然型(non-native) EGFである。【0030】【実施例3:不活性化タンパク質の活性化】(1)不活性組換えヒト上皮細胞成長因子(h−rEGF)のブレビバチルス チョーシネンシス菌体による活性化実施例2−(1)で得られた不活性ヒト組換え上皮細胞成長因子を溶解した溶液(乾燥物3.6mg/ml最終濃度)に、Tris-HCl(pH8.0)緩衝液(最終濃度0.1M)、還元型グルタチオン(2mM最終濃度)及びブレビバチルス チョーシネンシス菌体懸濁液を添加し、最終液量を200μlとし30℃で保温した後、不活性型である多量体EGFから活性型である天然型EGFへの変換を経時的に調べた。多量体EGFから天然型EGFへの変換はHPLCを用いて定量した。HPLC分析の条件は、メルク社製リクロスフェアー100、RP−18カラム(4×125mm)を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの25%から34%への濃度勾配で行った。流速は1.0ml/分、検出は280nmで行った。標準hEGFの溶出時間に出現するピークの面積の増加を天然型EGFへの変換量とした。多量体EGFから天然型EGFへの変換を図1に時間(分、横軸)と天然型EGF生成量(mg/ml、縦軸)の関係で示す。変換反応液にブレビバチルス チョーシネンシス菌体懸濁液50μl(▲)、20μl(△)、5μl(●)添加した場合と無添加の対照(○)の結果を示した。ブレビバチルス チョーシネンシス菌体を加えた場合、天然型EGFの出現が促進され、その変換量はブレビバチルス チョーシネンシス菌体濃度が高くなるに依存し増加した。【0031】(2)不活性組換えヒト上皮細胞成長因子(h−rEGF)の枯草菌菌体による活性化実施例2−(1)で得られた不活性ヒト組換え上皮細胞成長因子を溶解した溶液(乾燥物3.6mg/ml最終濃度)に、Tris-HCl(pH8.0)緩衝液(最終濃度0.1M)、還元型グルタチオン(2mM最終濃度)及び枯草菌菌体懸濁液50μlを添加し、最終液量を200μlとし30℃で保温した後、不活性型である多量体EGFから活性型である天然型EGFへの変換を経時的に調べた。多量体EGFから天然型EGFへの変換の定量は実施例3−(1)で示した方法で行った。多量体EGFから天然型EGFへの変換を図2に時間(分、横軸)と天然型EGF生成量(mg/ml、縦軸)の関係で示す。変換反応液に枯草菌菌体懸濁液を添加した場合(▲)と無添加の対照(○)の結果を示した。枯草菌菌体を加えた場合、天然型EGFの出現が促進された。【0032】(3)不活性組換えヒト上皮細胞成長因子(h−rEGF)の大腸菌菌体による活性化0.45μm孔経のメンブレン(材質デュラポア)をセットしたタンジェンシャルフロー型ろ過装置のミニタンII(ミリポア社製)を固定化細胞反応装置として使用した。実施例2−(1)で得られた不活性ヒト組換え上皮細胞成長因子を溶解した溶液(乾燥物3.6mg/ml最終濃度)100mlに、1M Tris-HCl(pH8.0)緩衝液100ml、大腸菌菌体懸濁液50mlを混合し、還元型グルタチオン(2mM最終濃度)を添加した反応液1000mlを30℃の恒温室内で固定化細胞反応装置に10ml/分の流速で供給した。循環液出口の圧力を調節して透過液(再活性化液)の回収量を調節した。透過液の回収速度を1ml/分に調節すると同時に、大腸菌菌体のみを含まない反応液を1ml/分の流速で循環液に加えた。透過液を経時的に回収し、多量体EGFから天然型EGFへの変換の定量は実施例3−(1)で示した方法で行った。多量体EGFから天然型EGFへの変換の経時的な変化を図3に時間(分、横軸)と天然型EGF生成量(mg/ml、縦軸)の関係で示す。反応開始時に大腸菌菌体を加えた場合(▲)、天然型EGFへの変換量は加えない場合(○)に比べて促進され、しかも長時間にわたり、連続的に天然型EGFが回収された。【0033】(4)不活性組換えヒト上皮細胞成長因子(h−rEGF)の酵母菌体による活性化実施例2−(1)で得られた不活性ヒト組換え上皮細胞成長因子を溶解した溶液(乾燥物3.6mg/ml最終濃度)に、Tris-HCl(pH8.0)緩衝液(最終濃度0.1M)、還元型グルタチオン(2mM最終濃度)及び酵母菌体懸濁液50μlを添加し、最終液量を200μlとし30℃で保温した後、不活性型EGFから活性型である天然型EGFへの変換を経時的に調べた。不活性型EGFから天然型EGFへの変換の量は実施例3−(1)で示した方法で行った。不活性型EGFから天然型EGFへの変換を図4に時間(分、横軸)と天然型EGF生成量(mg/ml、縦軸)の関係で示す。変換反応液に酵母菌体懸濁液を添加した場合(▲)と無添加の対照(○)の結果を示した。酵母菌体を加えた場合、天然型EGFの出現が促進された。【0034】【発明の効果】本発明によれば、非活性型タンパク質を細胞と接触させるというきわめて簡便な処理によって活性型タンパク質に変換することができる。したがって、本発明に係る活性化方法によれば、化学合成、生合成、組換えDNA技術等によって生産されるタンパク質(この中には非活性型タンパク質が含有されている場合が多く、したがって、活性型タンパク質の収量は低くなり、場合によっては皆無ということもある)において、例えば生産培養物を細胞と共にインキュベートすることにより、非活性型タンパク質を活性化することができ、その結果、活性を有する天然型タンパク質の収量を高めることができる。【図面の簡単な説明】【図1】ブレビバチルス チョーシネンシス菌体による不活性型EGFから活性型(天然型)EGFへの変換を表す図である。【図2】枯草菌菌体による不活性型EGFから活性型(天然型)EGFへの変換を表す図である。【図3】固定化大腸菌菌体反応装置による不活性型EGFから活性型(天然型)EGFへの変換を表す図である。【図4】酵母菌体による不活性型EGFから活性型(天然型)EGFへの変換を表す図である。 ジスルフィド結合のかけ違いにより生物学的に不活性な分取された上皮細胞成長因子(EGF)を、ブレビバチルス・チョーシネンシス、枯草菌、大腸菌、酵母のうちのいずれかの培養細胞と、スルフヒドリル基を持つ化合物を含む溶液中で接触させることにより、生物学的に活性のあるEGFに変換させることを特徴とするジスルフィド結合のかけ違いにより生物学的に不活性な分取されたEGFの活性化方法。 スルフヒドリル基を持つ化合物が、還元型グルタチオンまたはシステインであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 ジスルフィド結合のかけ違いにより生物学的に不活性な分取されたEGFが、化学的に合成されたEGF、in vitroタンパク質合成系により生物学的に合成されたEGF、組換えDNA技術により生産されたEGFから選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 ジスルフィド結合のかけ違いにより生物学的に不活性な分取されたEGFが、ジスルフィド結合のかけ違いにより生物学的に不活性な状態で生産された組換えEGFを含む溶液のpHをEGFの等電点以下のpHに調整することにより凝集、沈澱させ回収することにより分取したEGFであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 EGFの等電点以下のpHが、pH3であることを特徴とする請求項4に記載の方法。


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