タイトル: | 特許公報(B2)_ピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法 |
出願番号: | 1999038231 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 69/716,B01J 31/02,C07C 67/313,C07C 69/732,C07B 61/00 |
大野 孝衛 舩橋 圭子 今村 伸三 JP 4207173 特許公報(B2) 20081031 1999038231 19990217 ピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法 東レ・ファインケミカル株式会社 000187046 岩見 知典 100104950 大野 孝衛 舩橋 圭子 今村 伸三 JP 1998053035 19980305 20090114 C07C 69/716 20060101AFI20081218BHJP B01J 31/02 20060101ALI20081218BHJP C07C 67/313 20060101ALI20081218BHJP C07C 69/732 20060101ALI20081218BHJP C07B 61/00 20060101ALN20081218BHJP JPC07C69/716 ZB01J31/02 102ZC07C67/313C07C69/732 ZC07B61/00 300 C07C 69/716 B01J 31/02 C07C 67/313 C07C 69/732 C07B 61/00 特開平03−058956(JP,A) 特開平05−058945(JP,A) 特開平08−027114(JP,A) 7 1999315052 19991116 8 20021010 山田 泰之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明で得られるα−ケトカルボン酸エステルの代表物質であるピルビン酸エステルは各種の有機化合物の中間体として有用な物質であり、特に医薬品、農薬、化粧品などの分野で今後需要の増大が期待される。またピルビン酸アルキルを加水分解することで得られるピルビン酸は生体内代謝経路の中間体であり、飲料の添加物や培地成分として有用ある。またベンジルピルビン酸エステルは数種類の血圧降下剤の原料として利用されており、α−ケトカルボン酸構造を持った化合物は今後も合成原料として利用される可能性が高い。【0002】【従来の技術】乳酸エステルからピルビン酸エステルを製造する従来技術としては、触媒の存在下空気または酸素と気相で反応させる提案が特開昭52−39624、特公昭57−24336、特公昭61−41503、特開平5−17404などで知られているが、いずれも特殊な触媒と200℃以上で反応させる設備が必要である。一方、比較的反応温度が低い液相法の提案として特開昭58−61236と特開平1−242554があるが、前者は転化率が30〜50%と低く、後者は取扱が難しい過酸化水素を酸化剤とし、好ましくは反応を加速するために光の照射を必要とする。またα−ヒドロキシカルボン酸エステルをα−ケトカルボン酸エステルに変換する方法として特開昭60−184050と特開平1−305053が知られているが、ルテニウムのような高価な金属触媒が必要な上に、ヒドロペルオキシドや臭素酸塩など危険な薬品を使用し、工業的な製法と言い難い。また特公平7−10806には炭素数6以上のα−ケトカルボン酸エステルの製法として、ニトロキシラジカルの存在下、次亜塩素酸で酸化する方法が開示されている。しかし、使用するニトロキシラジカル化合物は、高価なうえまとまって入手する事が困難であり、工業的な製造法に適用するのは難しい。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、特別な反応装置や危険な薬品を使用せず、汎用的な薬剤で出来るだけ温和な条件かつ高収率でα−ヒドロキシカルボン酸エステルをα−ケトカルボン酸エステルに変換する方法を製造する工業的製造法を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題解決について鋭意検討の結果、パルプや繊維の漂白剤や水処理剤として大量に生産されており取扱も比較的容易で安価な次亜塩素酸アルカリ金属塩の水溶液を酸化剤として用い、工業的に入手容易なヒンダード2級アミンを触媒に用い、水と混合しない有機溶媒中で反応させるとα−ヒドロキシカルボン酸エステルからα−ケトカルボン酸エステルを温和な条件で製造出来ること見いだし、本発明が完成するに至った。また、酸化剤を加える前に触媒であるヒンダード2級アミンと過酸または過酸化水素と接触させるとさらに触媒活性が増大し、触媒の使用量を削減出来る事を見いだした。【0005】すなわち本発明は、一般式(1)【0006】【化4】(式中、R1はメチル基を表し、R2はメチル基またはエチル基を表す。)で示されるα−ヒドロキシカルボン酸エステルを、一般式(2)または(3)で示されるヒンダード2級アミンの存在下、水と混合しない溶媒中、pH6以下の酸性条件で、次亜塩素酸で酸化することを特徴とするピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法であって、かつ次亜塩素酸で酸化反応させるのに先立ち溶媒とヒンダード2級アミンの混合液に、ヒンダード2級アミンに対し1〜5倍モルの過酸および/または過酸化水素と2〜10倍モルの酢酸を加えることを特徴とするピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法である。【0007】【化5】(式中、R3はH、炭素数18以下のアルキル基、炭素数18以下のアルコキシ基、または炭素数18以下のアシルオキシ基を示す。)【0008】【化6】(式中、nは4〜10の整数を表す。)【0009】【発明の実施の形態】本発明で原料として用いる乳酸エステルは前記一般式(1)で表される化合物であり、R2は炭素数4以下の低級アルキル基である。R2としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基があげられが好ましのはメチル基またはエチル基である。また、R1はアルキル基、シクロアルキル基、非置換もしくは置換アリール基またはアラルキル基を表す。R1は炭素数1から20のものが好ましく用いられる。特に、乳酸メチル、乳酸エチルを原料とする場合に本発明は有用である。【0010】酸化剤として次亜塩素酸を使用する。次亜塩素酸のアルカリ金属塩水溶液を使用するのが好ましく、この時は反応系を酸性に保つために、予めまたは反応の途中で酸を加えるのが好ましい。使用する酸化剤は1当量以上必要であるが、1.5当量以下、好ましくは1〜1.1当量使用する。また次亜塩素酸アルカリ金属塩水溶液中の次亜塩素酸アルカリ金属塩の濃度は市場で流通している6〜15%のものをそのまま使用しても良いが、5〜25%の範囲に調製して使用することが出来る。【0011】触媒として用いるヒンダード2級アミンの作用機構は明確でないが、反応系が水と水と混合しない有機溶媒の2層系であるので、界面活性機能を持つ脂溶性置換基を持つヒンダード2級アミンが特に優れている。触媒の量はα−ヒドロキシカルボン酸エステル1モルに対し2モル%あれば十分であるが、過酸または過酸化水素またはその混合物と酢酸を反応前に加えるかあるいはこれらの薬剤で別途処理する場合には、0.5モル%以下の使用量で十分目的は達成される。酢酸と過酸化物の処理は、ヒンダード2級アミンを酸化反応に使用する溶媒の存在下あるいは溶媒なしで前述の酢酸と過酸化物を混合し、室温で30分以上撹拌すれば良い。【0012】ヒンダード2級アミンとしては、前記一般式(2)または一般式(3)で示されるものが使用できる。特に好ましいものとして、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルドデカノエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオクタノエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルヘキサノエートなどが挙げられる。【0013】反応溶媒は、水と混合せず次亜塩素酸と反応しないものであれば使用出来るが、ハロゲン化炭化水素または脂肪酸エステルが好ましく、具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、こはく酸ジメチル、こはく酸ジエチルなど、ジクロルメタン、クロロホルム、ジクロルエタンなどが好ましく使用される。【0014】反応温度は25℃近辺で円滑に実施出来るが、生産性等の配慮から反応温度を上げる場合、60℃近辺までは副反応を伴う事なく実施出来る。また若干の反応速度の低下を覚悟すれば、5℃近辺まで下げる事が出来る。【0015】この反応系で特に重要な要件として、反応系のpHがある。反応系を酸性に保つ事が必要であり、pHで表すと6以下、好ましくは5以下である。特に次亜塩素酸で酸化する場合は、次亜塩素酸塩の水溶液が利用出来るが、この水溶液は強いアルカリ性であるので、予め鉱酸あるいは鉱酸の酸性塩を添加しておくか、次亜塩素酸塩の水溶液の供給に併せて添加しpHを調整する必要がある。【0016】反応は連続でも回分式でも実施出来るが、この酸化反応は大きな発熱を伴うので、回分式で行う場合は、酸化剤あるいは酸化剤とα−ヒドロキシカルボン酸エステルの両方を逐次添加して反応温度を調節する方が好ましい。【0017】反応の経過ならびに終結はガスクロマトグラフィー分析で判定できるので、終了後必要な場合は重炭酸ナトリウムなどで中和した後、過剰の酸化剤を重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤で酸化剤を失活させ、有機層にあるピルビン酸エステルを蒸留などの通常の単離・精製法で取り出す。【0018】反応は、光を照射しながら行っても良いが、遮光下であっても十分本発明の効果が期待できる。【0019】【実施例】【0022】【実施例1】 0〜5℃の水で冷却できるコンデンサー、温度計、pHメーターの端子、次亜塩素酸ソーダ水溶液が定量的に供給できる供給口を装着した200mlの4つ口フラスコに片山化学工業株式会社の試薬一級の酢酸0.5g(8.3ミリモル)と片山化学工業株式会社の試薬一級の34.5%過酸化水素水溶液1.25g(12.7ミリモル)を仕込みマグネチックスターラーで撹拌し、この間反応温度を約22℃に保ち約3時間撹拌した後、この反応液に片山化学工業株式会社の試薬一級の酢酸エチル47.2gと三共株式会社のSanolLS−770(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)0.24g(0.5ミリモル)を加え、反応温度を約22℃に保ち更に約3時間撹拌した。次に、この反応液に片山化学工業株式会社の試薬一級の乳酸エチル11.8g(100ミリモル)と片山化学工業株式会社の試薬特級の硫酸水素ナトリウム2.1g(15ミリモル)を仕込み、フラスコ外部をアルミホイルで覆い遮光状態にし、内温を25℃に保ちながら日本軽金属業株式会社の有効塩素13.0%,遊離アルカリ0.7%、NaCl11.2%の次亜塩素酸ソーダ水溶液63.0gを2.5時間かけて定量ポンプで仕込んだ。仕込み終了後同じ温度でさらに1時間加熱を継続した。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にピルビン酸エチル11.0g(収率95%)、原料の乳酸エチル0.1g存在していた。【0023】【実施例2】 <触媒調製> 200mlの3つ口フラスコに片山化学工業株式会社の試薬一級の酢酸2.0g(33ミリモル)と片山化学工業株式会社の試薬一級の34.5%過酸化水素水溶液5.0g(51ミリモル)を仕込みマグネチックスターラーで撹拌し、この間反応温度を約22℃に保ち約20時間撹拌した後、この反応液に片山化学工業株式会社の試薬一級の酢酸エチル100gと三共株式会社のSanolLS−770(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)4.8g(10ミリモル)を加え、反応温度を約22℃に保ち更に約20時間撹拌し触媒調製液111.8gを得た。【0024】<酸化反応>0〜5℃の水で冷却できるコンデンサー、温度計、pHメーターの端子、次亜塩素酸ソーダ水溶液が定量的に供給できる供給口を装着した200mlの4つ口フラスコに触媒調製液の1.4g(触媒調製液の1/80量)、片山化学工業株式会社の試薬一級の乳酸エチル11.8g(100ミリモル)、片山化学工業株式会社の試薬一級の酢酸エチル4702g、片山化学工業株式会社の試薬特級の硫酸水素ナトリウム2.1g(15ミリモル)を仕込み、マグネチックスターラーで撹拌し、フラスコ外部をアルミホイルで覆い遮光状態にし、内温を25℃に保ちながら日本軽金属業株式会社の有効塩素13.0%,遊離アルカリ0.7%、NaCl11.2%の次亜塩素酸ソーダ水溶液63.0gを2.5時間かけて定量ポンプで仕込んだ。仕込み終了後同じ温度でさらに1時間加熱を継続した。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にピルビン酸エチル11.0g(収率95%)、原料の乳酸エチル0.1g存在していた。【0025】【実施例3】 実施例2の触媒調製液を1.4gから4.2g(触媒調製液の1/26.6量)に変更し、酸化反応温度を40℃にした以外は実施例2と同じ装置、同じ方法で酸化反応を実施した。この酸化反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にピルビン酸エチルが10.8g(収率93%)、原料の乳酸エチルが0.1g存在していた。【0026】【実施例4】 実施例1と同じ装置、同じ方法で、酢酸エチルを片山化学工業株式会社の試薬一級のこはく酸ジエチルに代えて実施した。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にピルビン酸エチルが10.9g(収率94%)、原料の乳酸エチルが0.1g存在していた。【0027】【実施例5】 実施例1と同じ装置、同じ方法で、乳酸エチルを片山化学工業株式会社の試薬一級の乳酸メチル10.4(100ミリモル)に代えて実施した。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にピルビン酸メチルが9.6g(収率94%)、原料の乳酸メチルが0.1g存在していた。【0028】【実施例6】 200mlの3つ口フラスコに片山化学工業株式会社の試薬一級の2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール15.7g(100ミリモル)、片山化学工業株式会社の試薬一級のn−カプリル酸メチル13.0g(100ミリモル)、片山化学工業株式会社の試薬特級のn−オクタン100g、片山化学工業株式会社の試薬リチウムアミド0.12gを仕込み、冷却器付きディーンスタークをセットし、マグネチックスターラーで撹拌し、n−オクタンの沸点(約126℃)まで加熱し、n−オクタンを冷却還流させながらメタノールが留去しなくなるまで続けた後、室温まで冷却し、反応液を水20gで水洗し、n−オクタン層を分液する。次に、このn−オクタン層を蒸留し、138〜139℃/0.013kPaの留分を17.5gとる。この留分は質量分析、NMR分析より2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルn−オクタノエートと同定した。【0029】 この2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルn−オクタノエート0.26g(1ミリモル)をSanolLS−770(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)に代え実施例1と同じ装置、同じ方法で実施した。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にピルビン酸エチルが10.9g(収率94%)、原料の乳酸エチルが0.1g存在していた。【0030】【発明の効果】本発明によれば、汎用の反応装置を用いて、工業的に安価に利用可能な薬剤で、α−ヒドロキシカルボン酸エステルからα−ケトカルボン酸エステルを高収率で製造することができる。 一般式(1)(式中、R1はメチル基を表し、R2はメチル基またはエチル基を表す。)で示されるα−ヒドロキシカルボン酸エステルを、一般式(2)または(3)で示されるヒンダード2級アミンの存在下、水と混合しない溶媒中、pH6以下の酸性条件で、次亜塩素酸で酸化するピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法であって、かつ次亜塩素酸で酸化反応させるのに先立ち溶媒とヒンダード2級アミンの混合液に、ヒンダード2級アミンに対し1〜5倍モルの過酸および/または過酸化水素と2〜10倍モルの酢酸を加えることを特徴とするピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。(式中、R3はH、炭素数18以下のアルキル基、炭素数18以下のアルコキシ基、または炭素数18以下のアシルオキシ基を示す。)(式中、nは4〜10の整数を表す。) ヒンダード2級アミンがビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルドデカノエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオクタノエートまたは2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルヘキサノエートである請求項1記載のピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。 溶媒とヒンダード2級アミンの混合液に、ヒンダード2級アミンに対し1〜5倍モルの過酸および/または過酸化水素と2〜10倍モルの酢酸を加え混合した液を用いて、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを次亜塩素酸で酸化させることを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載のピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。 ヒンダード2級アミンの使用量が原料であるα−ヒドロキシカルボン酸エステルに対して2モル%〜0.01モル%である請求項1から3のいずれか1項記載のピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。 水と混合しない溶媒がハロゲン化炭化水素または脂肪酸エステルである請求項1から4のいずれか1項に記載のピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。 水と混合しない溶媒がジクロルメタン、ジクロルエタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、こはく酸ジエチルまたはアジピン酸ジメチルである請求項5記載のピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。 反応温度が0℃〜50℃である請求項1から6のいずれか1項記載のピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチルの製造方法。