タイトル: | 特許公報(B2)_テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法 |
出願番号: | 1999037125 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 27/30,C07C 29/82,C07C 31/20,C07C 67/54,C07C 69/82 |
石田 憲二 石原 健一 長谷川 英雄 JP 4255554 特許公報(B2) 20090206 1999037125 19990216 テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法 帝人ファイバー株式会社 302011711 三原 秀子 100099678 石田 憲二 石原 健一 長谷川 英雄 20090415 C07C 27/30 20060101AFI20090326BHJP C07C 29/82 20060101ALI20090326BHJP C07C 31/20 20060101ALI20090326BHJP C07C 67/54 20060101ALI20090326BHJP C07C 69/82 20060101ALI20090326BHJP JPC07C27/30C07C29/82C07C31/20 AC07C67/54C07C69/82 A C07C 67/48-67/62、69/82 特開昭52−36610(JP,A) 特表平9−508384(JP,A) 特開平8−283185(JP,A) 特開平6−256491(JP,A) 特開平7−258169(JP,A) 5 2000239201 20000905 9 20050824 神野 将志 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとの混合物から、簡便かつ効率よくテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールの各成分を分離・回収する方法に関する。【0002】【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)は、その化学的安定性が優れていることから、繊維、フイルム、樹脂などの生活関連資材、飲料水、炭酸飲料用ボトルなどの食品分野等に大量に生産・使用されている。【0003】しかしながら、生産量、使用量の増大に伴って大量に発生する、繊維、フィルム、樹脂製品などの廃棄物、規格外品のPET(以下、まとめて廃PETと略記することがある。)の処理費用は製品コストにも係わってくるのみならず、これらの処理は現在大きな社会問題となっている。【0004】このような廃PETを、溶融成形により品質グレードの低いものに転化するマテリアルリサイクルは、いわゆる“使い捨て”の状況を大いに改善してはいるものの、最終的にPETの廃棄を回避することは困難である。【0005】一方、廃PETを燃料に転化する、サーマルリサイクルも行われている。この方法は、廃PETの燃料化利用という利点は有するが、廃PETを燃焼させることに他ならないため、PET原料の損失及び二酸化炭素の発生という省資源及び地球環境保全の面からは好ましくない。【0006】上記二種類のリサイクル方法に対して、廃PETをその構成成分へ変換・回収し、再度重合反応によってPETを製造し再利用する、ケミカルリサイクルも検討されている。すなわち、回収した廃PETをメタノール(以下、MeOHと略記することがある。)と反応させ、同時に蒸留してテレフタル酸ジメチル(以下、DMTと略記することがある。)とエチレングリコール(以下、EGと略記することがある。)として回収するケミカルリサイクルは、基本的にロスが無く、化合物を循環再使用するので、本来目的とする資源再利用が可能となる。【0007】しかしながら、廃PETをMeOHで解重合した後の反応生成物から、DMTとEGとを分離・回収することは大変困難である。すなわち、反応生成物から過剰のMeOHを留去させた後のDMTとEGとの混合物から、蒸留によりDMTとEGとを分離・回収しようとすると、常圧では高い温度を必要とするため蒸留途中でDMTとEGとの重合反応が進行するだけでなく、回収されたEGの純度も不十分であるという問題があった。【0008】このような重合反応の進行を防止するため、低温での分離を狙って減圧で蒸留分離することは定法であるが、特公昭48−19876号公報には、EGとDMTとは120℃、43mmHgの減圧蒸留分離においては、EG91重量%、DMT9重量%の共沸混合物を作るため、EGとDMTとの分離は困難であると記載されている。【0009】この問題を解決するために、特表平9-508384号公報では、DMTとEG及びジエチレングリコール(以下、DEGと略記することがある。)の三者の混合物に、EG又はDEGと新しい共沸混合物を形成する共沸剤を添加して蒸留し、DMTを蒸留残渣として回収する方法が提案されている。しかし、この共沸剤としてはメチルベンゾエート(以下、MBと略記することがある。)やパラトルイル酸メチル(以下、MPTと略記することがある。)などが例示されているが、このような回収物質とは異なる共沸物を回収系内に投入することは分離操作を煩雑にするという問題点があった。【0010】DMTとEGとの重合反応を避けるために、解重合反応生成物から予めMeOHを除去するのでなく、MeOHを留出させると同時にEGも留出させる方法も検討されてはいる。しかしこの方法では、留分中には、MeOH、EG以外にDMTも多く含まれており、この含有量を低減しようとすると蒸留塔釜残に残留するEGが増加するという問題があり実用的でない。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、EGとDMTの混合物から簡便な方法でEG及びDMTのそれぞれを効率よく分離・回収できる方法を提供することにある。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、EGとDMTの混合物を、異なった圧力で操作されている2つの蒸留塔を組合せれば簡便且つ安定してEGとDMTを蒸留分離できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。【0013】 すなわち、上記本発明の目的は、エチレングリコールとテレフタル酸ジメチルの混合液を27〜100kPaで操作されている第1蒸留設備(以下、第1蒸留塔と記することがある。)に供給して共沸混合物を留出させ、この第1蒸留塔留分は操作圧力が6.7kPa以上、且つ、第1蒸留塔よりも20〜93kPa低い圧力で操作されている第2蒸留設備(以下、第2蒸留塔と記することがある。)に供給して共沸混合物を留出させ、この共沸混合物は第1蒸留塔に還流する。そして、第1蒸留塔の塔底よりテレフタル酸ジメチルを、また第2蒸留塔の塔底よりエチレングリコールを回収することにより達成することができる。【0014】【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、図1は、本発明を実施するために使用される装置の1例を示す略式図である。本発明においては、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとの混合物を、27〜100kPa、好ましくは40〜93kPaの圧力で操作されている第1蒸留塔に供給する。供給された該混合物は、前記圧力の下で蒸留し、塔底より留残物(以下、蒸留釜残と略記することがある。)としてDMTを取出し、他方、塔頂からはEGとDMTとの共沸混合物(以下、留出物と略記することがある。)を取出す。【0015】ここで、第1蒸留塔の圧力が27kPa未満の場合には、留出物中のDMT含有割合が多くなり、本発明の目的であるEGとDMTとの分離・回収効率が低下するので好ましくない。一方、100kPaを超える場合には、共沸混合物を形成しないので好ましくない。なお、塔底から取り出されたDMTは、定法にしたがってさらに蒸留精製してもよい。【0016】 次に、上記第1蒸留塔からの共沸混合物は、圧力が6.7kPa以上、第1蒸留設備操作圧力未満であり、且つ第1蒸留設備の操作圧力と第2蒸留設備の操作圧力の差が20〜93kPaの範囲となるように設定された圧力で操作されている第2蒸留蒸留塔に供給する。そして、供給された第1蒸留塔の共沸混合物は、該圧力の下で蒸留し、塔底より蒸留釜残としてEGを取出し、他方、塔頂からは第1蒸留塔の共沸混合物よりもDMTの含有量が多いEGとDMTとの共沸混合物を取出す。そして、この第2蒸留塔からの留出物は、第1蒸留塔に循環して再度蒸留分離を実施する。なお、塔底から取出されたEGは、定法にしたがってさらに蒸留精製してもよい。【0017】ここで、第2蒸留塔の圧力が6.7kPa未満の場合には、塔頂温度がDMTの凝固点を下廻るようになり、運転操作が困難になるので好ましくない。一方、第1蒸留塔圧力以上の場合には、第1蒸留塔と第2蒸留塔の共沸混合物組成が不適正となり、本発明の目的であるDMTとEGの効率よい分離・回収が達成できなくなるので好ましくない。【0018】なお、第2蒸留塔の圧力は、第1蒸留塔の圧力よりも低いほど、第2蒸留塔の共沸混合物組成と第1蒸留塔の共沸混合物組成との差が大きくなり、第2蒸留塔から第1蒸留塔への循環量が減少してDMTとEGの分離・回収効率が向上するので好ましいが、あまりに低くなりすぎると、蒸留塔を高真空に保つためのエネルギーが増大し、また、塔内温度がDMTの凝固点を下廻るようになって運転操作が困難になるので、2つの蒸留塔の運転操作圧力差は20〜93kPaの範囲が好ましい。特に、第2蒸留塔から第1蒸留塔への循環量の適正化による必要エネルギーの低減、蒸留塔を高真空に保つためのエネルギーの低減、及びDMTの凝固防止の観点から、該蒸留塔の圧力差は30〜65kPaの範囲とすることがさらに好ましい。【0019】なお、第1及び第2蒸留塔の共沸混合物を保管できる槽を設ければ、1基の蒸留塔で回分式に第1、2蒸留塔の条件で運転することも可能である。【0020】本発明の回収方法が分離・回収の対象とするDMTとEGの混合物は、主としてDMTとEGとから構成されるものであれば任意であるが、特にPET、なかでも廃PETとEGとを溶融槽内に導入し、該溶融槽内にて先ずPETをEGで解重合し、次いで得られた解重合生成物をさらにMeOHで解重合して得られるDMTとEGの混合物が好ましい。【0021】ここで、PETとEGとの解重合反応条件としては、公知の条件を採用すればよいが、通常、解重合温度は220〜280℃、溶融槽内の滞留時間は2〜4時間の範囲が適当であり、圧力は常圧で十分である。一方、該解重合生成物とMeOHとの解重合反応条件も公知の条件を採用すればよいが、通常、反応温度は150〜300℃、反応圧力は0.1〜3.0Mpaである。その際、該解重合生成物とMeOHとは反応器に連続的に供給するのが好ましく、MeOHのPETに対する供給割合は、PETの重量を基準で1〜10倍の範囲が適当である。かくすることによって反応器の上部より、DMT、EG及びMeOHの混合物が、反応器からの留出物として取り出される。【0022】得られた留出物は、前もって定法にしたがって蒸留等によりMeOHを分離除去しておく。例えば、MeOH解重合反応生成物に含まれるMeOHを除去するため、大気圧下で操作される常圧蒸留塔に供給し、留分として得られるMeOH品質に合わせて還流比及び塔頂温度を制御して蒸留する。この様にすると、該蒸留塔の塔底からEGとDMTの混合物が得られるので、塔底温度をこれら各成分が液状を保てる温度、例えば140℃以上にすれば、該液状混合物をそのまま本発明の第1蒸留設備に供給することができるので好ましい。【0023】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらにより何等限定を受けるものではない。なお、実施例中の各数値は以下の方法により測定した。また、実施例中における「部」は、特に断らない限り「重量部」を示す。【0024】(1)DMT、MHET、HEPT含有量(%):解重合を行った後の反応生成物に含有されているDMT、蒸留前後の液に含有されているDMT、蒸留釜残液に含まれているモノヒドロキシエチルテレフタレート(以下、MHETと記載することがある。)、及びパラトルイル酸ヒドロキシエチルエステル(以下、HEPTと記載することがある。)をガスクロマトグラフィー(ヒューレット パッカード社製 HP−5890、キャピラリーカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1701使用)によって定量した。【0025】(2)EG含有量(%):解重合を行った後の反応生成物に含有されているEG、蒸留前後の液に含有されているEG、及び蒸留釜残液に含まれているEGをガスクロマトグラフィー(島津製作所社製 GC−7A、充填式カラム充填剤:ジーエルサイエンス社製 ポリアルキレングリコール−6000使用)によって定量した。【0026】[実施例1]廃PET100部、EG20部及び酢酸マンガン0.1部の重量割合となるように連続的に溶融槽内に供給し、溶融槽内の温度を240℃、圧力を大気圧、平均滞留時間を3時間に設定して溶融物を連続的に抜き出した。【0027】連続的に抜き出した溶融物100部に対し、MeOH640部の重量割合となるように連続的に反応器内へ供給し、温度265℃、圧力490kPa(ゲージ圧)の条件下、平均滞留時間が2時間となるように設定して解重合反応を行い、反応器の上部からMeOH、EG、DMTの三者の混合物を連続的に取出した。この反応生成物は、未反応のMeOH602部とEG43部とDMT62部を含んでいた。この反応生成物を蒸留原料として大気圧下での常圧蒸留を行ってMeOHを留去し、釜残としてEGとDMTの混合物を残留させた。【0028】この釜残液を140℃に加温して、圧力53kPaで操作する減圧蒸留塔(第1蒸留設備)に連続的に供給した。該第1蒸留塔の冷却部は空冷とし、塔内には規則充填物(住友重機(株)製 住友スルーザーラボパッキング標準50mmφ×55H SUS316L相当品)を8段(理論段数20段相当)充填した。なお、蒸留還流比は略2:1とした。得られた第1蒸留留分の主成分はEGで、その中のDMT含有量は3.0%であり、他方第1蒸留釜残の主成分はDMTで、その中のEG含有量は0.3%、MHET含有量は1.0%であった。結果を表1に示す。【0029】次いで、第1蒸留留分を第2蒸留設備に連続的に供給した。該第2蒸留塔は前記第1蒸留塔と同じく、冷却部は空冷とし、塔内には規則充填物(住友重機(株)製 住友スルーザーラボパッキング標準50mmφ×55H SUS316L相当品)を8段(理論段数20段相当)充填した。圧力13kPaで減圧蒸留を実施し、その際の蒸留還流比は略2:1とした。得られた第2蒸留留分の主成分はEGで、その中のDMT含有量は7.6%であり、この留分は前記第1蒸留設備に還流した。他方第2蒸留釜残の主成分はEGで、その中のDMT含有量は0.2%、MHETは検出されなかった。結果を表1に示す。【0030】[実施例2]第2蒸留設備の圧力を40kPaとする以外は実施例1と同様な操作を実施した。第2蒸留留分中のDMTは4.8%であり、釜残中のDMTは0.3%、MHETは検出されなかった。結果を表1に示す。【0031】[比較例1]実施例1において、解重合反応生成物からMeOH留去後のDMTとEGとの混合物からなる釜残液を第1蒸留設備で蒸留する際の操作圧力を大気圧とする以外は同様な操作を実施した。第1蒸留留分中のDMT含有量は5%であり、他方第1蒸留釜残中のEG含有量は0.2%、MHET含有量は7.1%であった。結果を表1に示す。【0032】[比較例2]実施例1において、解重合反応生成物からMeOH留去後のDMTとEGとの混合物からなる釜残液に含有されるEG量と同量のパラトルイル酸メチル(以下、MPTと記載することがある。)を混合すると共に、第1蒸留設備で蒸留する際の操作圧力を大気圧とする以外は同様な操作を実施した。第1蒸留留分中のEG含有量は53%、MPT含有量は44%であった。他方第1蒸留釜残中のEG含有量は0.1%、HEPT含有量は9.8%、MHET含有量は12.2%であった。結果を表1に示す。【0033】[比較例3]実施例2における蒸留操作圧力を5.3kPaとした以外は実施例2と同様な操作を実施した。塔頂温度は120℃であった。蒸留操作を継続実施していると冷却管内部、還流部にDMTの析出が見られ、徐々に蒸留を継続する事が困難となり中断した。留分の温度がDMTの融点以下となったためである。【0034】【表1】【0035】【発明の効果】本発明の方法によれば、エチレングリコールとテレフタル酸ジメチルの混合物から各々の成分であるエチレングリコール及びテレフタル酸ジメチルを、簡便且つ効率よく回収することが可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明を実施するために使用される装置の該略模式図である。 テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールの混合物から各成分を分離・回収するに際し、該混合物を、下記(A)〜(E)の工程を逐次的に通過させることを特徴とする、テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法。 (A)該混合物を圧力が27〜100kPaの範囲にある第1蒸留設備に供給する工程、 (B)第1蒸留操作により、留出物として共沸混合物を抜き出し、他方留残物としてテレフタル酸ジメチルを抜き出す工程、 (C)工程(B)で抜き出された共沸混合物を、圧力が6.7kPa以上、第1蒸留設備操作圧力未満であり、且つ第1蒸留設備の操作圧力と第2蒸留設備の操作圧力の差が20〜93kPaの範囲となるように設定された第2蒸留設備に供給する工程、 (D)第2蒸留操作により、留出物として共沸混合物を抜き出し、他方留残物としてエチレングリコールを抜き出す工程、及び (E)工程(D)で抜き出された共沸混合物を第1蒸留設備へ循環させる工程。 工程(B)で抜き出された留残物としてのテレフタル酸ジメチルを、さらに蒸留精製する請求項1記載のテレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法。 テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールの混合物が、ポリエチレンテレフタレートにエチレングリコールを作用させた後にメタノールを作用させることにより得られる解重合反応生成物から、過剰のメタノールを除去して得た混合物である請求項1記載のテレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法。 ポリエチレンテレフタレートが、廃ポリエチレンテレフタレートである請求項3記載のテレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法。 ポリエチレンテレフタレートにエチレングリコールを作用させる解重合反応が反応温度220〜280℃、常圧下、滞留時間2〜4時間で行われ、該解重合反応生成物にメタノールを作用させる解重合反応が反応温度150〜300℃、反応圧力0.1〜3.0MPa下で行われる請求項3又は4記載のテレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの回収方法。