生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_放線菌由来の環状プラスミドDNA
出願番号:1999032729
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09


特許情報キャッシュ

井上 敏 高木 博史 中森 茂 JP 4258874 特許公報(B2) 20090220 1999032729 19990210 放線菌由来の環状プラスミドDNA チッソ株式会社 000002071 井上 敏 高木 博史 中森 茂 20090430 C12N 15/09 20060101AFI20090409BHJP JPC12N15/00 A C12N 15/00-90 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq UniProt/GeneSeq BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 米国特許第04621061(US,A) 特開昭59−143589(JP,A) 特開昭60−217895(JP,A) 特開昭63−049075(JP,A) 特開昭61−124386(JP,A) M. Redenbach, et al.,A set of ordered cosmids and a detailed genetic and physical map for the 8 Mb Streptomyces coelicolor A3(2) chromospme,Mollecular Microbiology,1996年,Vol.21(1),pages 77-96 4 2000228981 20000822 10 20060120 冨士 良宏 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、ε−ポリリジン生産能を有する放線菌由来のプラスミドDNAに関する。【0002】【従来の技術】放線菌は、抗生物質や様々な生理活性物質に代表されるような二次代謝産物を生産する能力を持ち、その遺伝子的背景の解明は、工業生産の開発において非常に重要である。それは、従来より行われてきた菌株改良に理論的根拠を与え、より合理的な戦略を提供するからである。具体的には、抗生物質の代謝経路に関与する遺伝子を人為的に操作することにより、最終産物の構造を積極的に改変したり、またその生産に関与する酵素の遺伝子発現の制御を変更することにより、生産の向上も望める。一般的に、放線菌はしばしば遺伝学的に不安定なことがあり、形質を支配する遺伝子を組換え操作により安定な系に移して保存解析も可能である。このことから、放線菌を宿主にした遺伝子組換え系で必須であるプラスミドベクターの開発が望まれている。しかし、放線菌のプラスミドベクター系は、主に特定の菌株でのみでの開発が行われている。一方、放線菌の大きな特徴は、菌種によりその性質が非常にことなることから、現在汎用されている大腸菌の場合と異なって、スタンダードの宿主−ベクター系では不十分であり、個々の研究対象の菌種に合った宿主−ベクター系の開発が必要である。現在までに、抗菌食品添加剤として、急速に波及しているε−ポリリジンは、特定の放線菌が産生しているリジンのポリマー誘導体であり、他の一般的保存剤と知られているソルビン酸やグリシン等に比べ、その価格は10倍以上高価である。ε−ポリリジンの生産性を上げるため古典的変異剤処理により、高生産性菌株の分離を試みて来たが、ε−ポリリジンの生産価格を飛躍的に押し下げるまでには至っていない。そこで、遺伝子組換え手法の導入による生産性向上が必須であると考えられ、そのためには、ε−ポリリジンの生産菌での使用可能なベクター系の開発が急務である。しかし、今日まで、ε−ポリリジンを生産する放線菌を宿主としたプラスミドベクターに関する研究開発は全く行われていない。【0003】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは、現在工業的に製造に使用しているε−ポリリジンの生産能を有する放線菌株ストレプトマイセス属でのさらなる生産性向上のために、該菌株での宿主−プラスミドベクター系に使用可能な新規プラスミドの単離およびその利用を可能とすべく鋭意研究を行った。その結果、ε−ポリリジンを生産能を有する放線菌ストレプトマイセス アルブラスの細胞内で複製可能なプラスミドを見い出し、本発明に至った。以上の記述から明らかなように、本発明の目的は、下記(1)〜(4)に示されるポリリジン製造用のプラスミドを提供することである。本発明の目的は、また、下記(5)に示される形質転換体とこれを用いたε−ポリリジンの生産能増強方法を提供することである。【0004】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は下記(1)〜(5)の構成を有する。(1)全長約37kbの塩基対からなり、図1に示される制限酵素地図で示されることを特徴とするプラスミドpNO33。(2)配列番号1で示される塩基配列の少なくとも一部を有することを特徴とするプラスミドpNO33。(3)配列番号2または配列番号3で示されるアミノ酸配列の少なくとも一部を有するタンパク質またはそれと実質的に同等の機能を有するタンパク質をコードするプラスミドpNO33。(4)ε−ポリリジンの生産能を有する放線菌内で安定的に複製可能な前記(1)〜(3)に記載のプラスミドpNO33。(5)ε−ポリリジンの生産向上に関与するタンパク質あるいはペプチド遺伝子を挿入された前記(1)〜(3)に記載のプラスミドpNO33。【0005】【発明の実施の形態】 以下、さらに詳細に本発明を説明する。本発明のプラスミドpNO33は、ストレプトマイセス属に属するε−ポリリジンの生産菌から得られる環状プラスミドである。 具体的には、本発明のプラスミドは、例えばε−ポリリジンの生産能を有するストレプトマイセス アルブラス(Streptomycesalbulus)IFO14147から得ることができ、全長約37kbよりなり、且つ表1、表2及び図1に示す制限酵素をもつ複製可能な環状プラスミドである。【0006】【表1】【0007】図1において、決定された制限酵素の位置は、制限酵素HindIII の位置を起点として、時計周りの距離は表2のとおりである。【0008】【表2】【0009】 明らかに、本発明のプラスミドpNO33は各種の制限酵素による切断部位を有しており、この事実は、本プラスミドを修飾して多くの有用なベクターを開発することを示している。また、このプラスミドあるいはその誘導プラスミドに目的とする遺伝子等、たとえばε−ポリリジンの生産酵素系を組み込み、これを適当な細菌に導入してその宿主を形質転換することも可能である。【0010】 さらに、本発明により得られたプラスミドが新規性があるかどうか判断するには、本発明のプラスミドpNO33部分塩基配列を決定し、既知のストレプトマイセス属由来のプラスミドと比較することにより、容易に異なることが判断できる。そこで、本発明者らは、プラスミドpNO33由来のDNA断片を適当なプラスミドにサブクローニング後、その塩基配列を決定し、塩基配列1に示すように決定した。得られた塩基配列1を用いて、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターおよび米国National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデーターベース保有のすべでの塩基配列に対してホモロジー検索を行った結果、塩基配列が同一のものは検出できなかった。また、細菌由来の塩基配列の相同性が40%以上でかつプラスミド配列由来の塩基配列も全く検出できなかった。すなわち、プラスミドpNO33部分塩基配列は、現在まで全く知られていない塩基配列であり、ストレプトマイセス属由来プラスミドpNO33は新規のプラスミドDNAであることが明らかとなった。【0011】 さらに、決定した塩基配列1内に、機能遺伝子としての翻訳可能領域が存在するかどうか調べた結果、配列2、配列3に示される翻訳可能領域が存在することが明らかとなった。アミノ酸配列2は、塩基配列1の1576番から1803番に相当する翻訳可能領域で、76アミノ酸残基より構成されるタンパク質様ポリペプチドである。アミノ酸配列3は、塩基配列1の641番から1576番に相当する翻訳可能領域で、312アミノ酸残基より構成されるポリペプチド様物質である。 このことは、本プラスミドpNO33は、他の翻訳可能遺伝子を組み込むことが可能であることの証明である。すなわち、目的とする有用遺伝子,たとえばε−ポリリジンの生産酵素系を組み込み、これを適当な宿主を形質転換することにより、ε−ポリリジンの生産の増強が期待できる。【0012】 一方、その配列番号2および配列番号3を用いて同様にゲノムセンターのデーターベースにホモロジー検索を行った結果、特に配列番号2に関して、ストレプトマイセス属セリカラー種(Streptomyces coelicolor)の染色体に存在し、抗生物質アクチノホヂン(Actinorhodin)の産生調節に関与する遺伝子ORF−D(75アミノ酸残基)と約36%の相同性が見い出された。このことは、本発明プラスミドpNO33は、抗生物質等の二次代謝産物に関与する調節する遺伝子として存在する可能性があり、産業上利用できる。【0013】【実施例】次に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。【0014】実施例1 ストレプトマイセス アルブラス(Streptomyces albulus)IFO14147からのプラスミドpNO33の単離。 ストレプトマイセス アルブラス(Streptomyces albulus)IFO14147の一白金耳の灰色胞子を、500mlを坂口フラスコにいれた液体培地(たとえば、バクトトリプトン10g、イーストエクストラクト5g、食塩5gを1Lの水道水に溶解後、pHを7.3に調整した培地)50mlに接種し、振盪速度140rpm、30℃で16時間培養した。 培養液から菌体を遠心5000g集菌し、TE緩衝液(25mMトリス(ヒドロキシ)アミノメタン(以下トリス)、25mM EDTA:pH8.0)で洗浄後、溶菌液(0.3M ショ糖、25mMトリス、25mM EDTA、2mg/mlリゾチーム)で20mlに懸濁し、4℃で5分間放置し、2%ラウリル硫酸ナトリウムと0.3N水酸化ナトリウムからなる溶液10mlを添加し、ゆっくり混合後、さらに4℃で5分放置した。 この溶菌液に15mlの5M酢酸アンモニウムを中和混合し、4℃で10分放置した後、10分間の12000gでの高速遠心分離し、上清を分取した。この上清に等量のTE緩衝液飽和のフェノールを加え、5分間激しく混合し、10分間の12000gでの高速遠心分離後、水溶性画分を分取した。この水溶性画分に等量のクロロホルムを添加後、5分間激しく混合し、10分間の12000gでの高速遠心分離後、水溶性画分を分取した。 分取水溶性画分に、0.1倍容の3M酢酸ナトリウムと2倍容のエタノールを添加し、−20℃に30分放置後、析出した白色沈殿物(核酸画分)を12000gでの高速遠心により回収し、適当量のTE緩衝液に溶解した。リボ核酸除去のため、本核酸画分溶液に、最終濃度が50ug/mlになるように、リボ核酸分解酵素を加え、37℃で30分反応し、さらに、0.6倍容の20%ポリエチレングリコール/5M食塩混合液を加え、4℃で一時間放置した。 生成した白色沈殿物を高速遠心により回収し、適当量のTE緩衝液に溶解し、画分にプラスミド画分を得た。これを0.7%アガロースゲル電気泳動(100ボルト、20分)に供し、ゲルを臭化エチジュウムで染色することにより高分子核酸の存在を確認した。さらに、この高分子核酸画分を制限酵素HindIII (日本ジーン社製)で消化後、バイオラッド社製のパルスフィールド電気泳動装置(泳動条件は、バイオラッド社製により提供されている条件、200ボルト、16時間)に供し、酵母染色体を分子量マーカーとして約37kbpのプラスミドpNO33由来のDNA断片を確認した。【0015】実施例2 プラスミドpNO33の詳細な制限酵素地図の作製。 実施例1で取得したプラスミドpNO33の詳細な制限酵素地図作製は、市販の各種制限酵素(日本ジーン社製あるいは宝酒造社製)によってpNO33を単一消化、二重消化、あるいは三重消化して得られたDNA断片を0.7%のアガロースゲル電気泳動あるいはバイオラッド社製のパルスフィールド電気泳動に供し、その移動度から分子量を求めた。 酵素の反応条件は、供給者によって決められた条件に従った。また、分子量は、ラムダファージDNAを制限酵素HindIII で消化して得られた分子量マーカー(日本ジーン社製)および酵母染色体を分子量マーカー(バイオラッド社製)の標準移動度をもとに決定した。これらの結果から、前記載の図1であるプラスミドpNO33の詳細な制限酵素地図を決定した。【0016】実施例3プラスミドpNO33の塩基配列の決定。実施例1で取得したプラスミドpNO33の塩基配列を決定するため、プラスミドpNO33DNAを制限酵素, EcoRIまたはSmaIで消化後、その断片を大腸菌で複製可能な公知プラスミドベクターpGreen19(Inouyeら、Gene vol.189、pp159−162:1997)あるいはpBluescript SK+(ストラッテジーン社製)のEcoRIまたはSmaI部位に、常法によりサブクローン化を行った。挿入断片の確認は、実施例1記載のプラスミド単離法に基づきプラスミド分離し、EcoRIまたはSmaIで消化後、0.7%のアガロースゲル電気泳動法により確認した。挿入断片の塩基配列は、ダイターミネーターサイクルシークエンシング法を用い、アプライド バイオシステム社の蛍光シークセンサー(ABI373)にて決定した。前記載の決定塩基配列番号1に基づき、宝酒造社製のDNASIS Ver.3.6遺伝子解析ソフトウエアを使用することにより、翻訳可能領域を検索し、前記載のアミノ酸配列番号2および前記載のアミノ酸配列番号3を見い出した。【0017】実施例4配列番号1−3に関する遺伝子データーベース相同性の検索。塩基配列番号1−3に基づき、世界規模で構築されている全ての遺伝子データーベースに対して、その相同性があるかどうか、インターネット経由でゲノムネットホームページ(http://www.genome.ad.jp/あるいはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で、解析ソフトはFASTA、BLAST等を用いて検索を行った。塩基配列番号1は、全てのエントリー遺伝子配列に対して行い、アミノ酸配列番号2、3は、エントリーアミノ酸配列およびエントリー遺伝子配列より翻訳されるアミノ酸配列に対して行った。その結果、塩基配列番号1と著しく相同性のある遺伝子配列は検出できなかった。一方、アミノ酸配列番号2、3についても、顕著な相同性は見い出されなかった。しかし、配列番号2に関しては、ストレプトマイセス属セリカラー種(Streptomyces coelicolor)の染色体に存在し、抗生物質アクチノホヂン(Actinorhodin)の生産に関与する遺伝子ORF−Dと約36%の相同性が見い出された。このことは、本発明プラスミド上に、抗生物質等の二次代謝産物遺伝子が存在することを示唆し、産業上利用できることを示している。【0018】【発明の効果】本発明のプラスミドは種々の制限酵素による開裂部位を有しており、本プラスミドを修飾し、ストレプトマイセス属細菌に使用可能な、多くの有用なベクターを開発することができる。また、このプラスミドに有用遺伝子を組込み、ストレプトマイセス属細菌に導入して宿主を形質転換させ、有用物質の生産が可能となる。【配列表】【配列表】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】 本発明のプラスミドpNO33の制限酵素地図を示す。黒色部分は、塩基配列1の決定部分である。 ストレプトマイセス属に属する放線菌由来の環状プラスミドであって分子量が約37Kbpであり、図1に示される制限酵素認識部位を有するプラスミドpNO33。 ストレプトマイセス属に属する放線菌由来の環状プラスミドであって分子量が約37Kbpであり、配列番号1で示される塩基配列を含むプラスミドpNO33。 ストレプトマイセス属に属する放線菌が、ε−ポリリジン生産能を有する請求項1または2に記載のプラスミドpNO33。 ε−ポリリジン生産能を有する微生物が、ストレプトマイセス アルブラス(Strepto myces albulus)IFO14147である請求項1または2に記載のプラスミドpNO33。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る