タイトル: | 特許公報(B2)_ヒト化抗体およびヒト化抗体の形成法 |
出願番号: | 1998542964 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07K 16/18,C12N 15/02,C12P 21/08 |
ウェルズ,ジェイムズ・エイ バカ,マニュエル プレスタ,レナード・ジー JP 4191258 特許公報(B2) 20080926 1998542964 19980403 ヒト化抗体およびヒト化抗体の形成法 ジェネンテック・インコーポレーテッド 596168317 GENENTECH,INC. 青山 葆 100062144 田村 恭生 100068526 ウェルズ,ジェイムズ・エイ バカ,マニュエル プレスタ,レナード・ジー US 08/833,504 19970407 20081203 C07K 16/18 20060101AFI20081113BHJP C12N 15/02 20060101ALI20081113BHJP C12P 21/08 20060101ALI20081113BHJP JPC07K16/18C12N15/00 CC12P21/08 C12N15/00-15/90 C07K16/00-16/46 REG/CA(STN) BIOSIS/MEDLINE/WPI(STN) EPAT(QUESTEL) 特表平06−508267(JP,A) Nature,1993,362,p.841−844 3 US1998006724 19980403 WO1998045332 19981015 2001502922 20010306 28 19991028 2003013976 20030722 鵜飼 健 種村 慈樹 小暮 道明 本発明の技術分野本発明はヒト化抗体およびヒト化抗体の製造法を指向する。殊に本発明は一価ファージ提示系を使用し、また、必須フレームワーク残基の小さな組合せにランダム的突然変異誘発をしてヒトの単一フレームワークとして製造された抗体の突然変異体を使用する、ヒト化抗体の製造法を指向する。さらに特定的にはこの発明は血管内皮増殖因子(VEGF)に結合するマウス抗体のヒト化を指向する。本発明の背景モノクローナル抗体(mAb)は殊に定義されたシステムを調節するために使用できる時には治療剤として大きな可能性を有する。例えばある環境では、たとえば現存する小血管の壁から新らしい毛細血管が形成される脈管形成のような系を調節することは望ましいであろう。損傷した組織の近辺で毛細管成長の急激な出現が刺激を受けることができるように創傷または感染を受けた後には脈管形成は一般的に重要である。しかしながら、脈管形成は腫瘍の増殖にも重要である。何故なら連続的増殖のためには腫瘍は腫瘍塊に侵入する毛細血管網の形成を誘導しなければならないからである。ある種の増殖因子は脈管形成を調節するものとして確認されている。殊に興味深いものは脈管内皮増殖因子(VEGF)であって、これはある種の腫瘍が豊富な血液供給を獲得するための作因であると思われる。「Molecular・Biology・of・the・Cell(細胞の分子生物学)」、第3版、Albertsほか著、Garland・Publishing社、1154頁(1994年)。それ故、VEGFに対するmAbは、例えば脈管形成の調節における使用、さらに特定的には抗腫瘍剤としての使用を含む種々の理由から有用であることができる。VEGF受容体の結合を遮断するマウス抗VEGFmAb・A4.6.1は以前に報告されている。この抗体が有糸分裂の信号を阻害することが証明されている。Kimほか著、Growth・Factors、7巻:53頁(1992年);Kimほか著、Nature、362巻:841頁(1993年)。前記抗−VEGFを含む殆どのmAbはマウスその他の非ヒト起源から誘導されたものなので、臨床的効能が限定されている。殊に身体は非ヒト抗体に対して免疫反応を起こすことが多く、そこでその抗体はいかなる治療的効果も起きない間に急速に排除される。ヒトに投与した時に発動される非ヒトmAbの免疫原性に加えて、エフェクター機能の動員が弱いという別の限定が発生する。これらの欠点を回避する手段として抗体の「ヒト化」として知られている製法によって非ヒトmAbの抗原結合性能をヒトの抗体に授けることができる。ヒト化抗体はヒトの抗体のフレームワークに移植された元のmAbまたは対応する非ヒトmAbの相補性決定領域(CDR:抗体分子の抗原結合部位)6個のアミノ酸配列を含む。それ故、非ヒト抗体のヒト化は通常CDR移植と呼ばれる。このようなヒト化抗体の中の非ヒト配列の割合を低くする(〜5%)ことが免疫原性を低下させ、ヒトの投与された抗体の血清中半減期を延長するために有効であることが証明されている。とりわけ、ヒト化モノクローナル抗体(「キメラ免疫グロブリン」)は、米国特許第4816567号に開示されている。不都合にもCDR配列の単純な移植は抗原には元の非ヒト化mAbよりもずっと弱く結合するヒト化抗体を与えることが多い。親和性を高く維持するためにはその抗体を微調整するように抗原結合ループの構造をさらに処理しなければならない。これは元のマウス抗体にあるマッチング配列を持つ抗体の可変ドメインのフレームワーク領域にある、鍵となる残基を置換することによって達成される。これらのフレームワーク残基は通常CDRループの立体配座を保持することに関与しているが、フレームワークの残基によってはそれ自体が直接的に抗原と接触するものもあるかも知れない。CDR立体配座に対するフレームワーク残基の重要性に注目した研究が行われて抗原結合に影響を与えることのできるフレームワーク残基全ての網羅的なリストが集積されている。Chothiaほか著、J.Mol.Biol.、224巻:487頁(1992年);Footeほか著、J.Mol.Biol.、224巻:489頁(1992年)。この網羅的な表にはCDR構造に寄与する可能性のある「補助的(vernier)」残基30個(thiry)ほどを包含する。高度な抗原親和性はヒト化抗体内の補助的残基の組合せ全部を対応する元の非ヒト配列にマッチするように編集することから得られると思われるけれども、これは非ヒト配列の要素をそれ以上の追加することによって負わされる免疫原性の危険度が増大するので一般的には望ましくない。そこで、治療的観点からすると、フレームワークの変化を親和性の高いヒト化抗体を与えるための最小の組合せに限定することが望ましい。それ故、結合を最適化するために十分な変化の小さな組合せを確認することは望ましいことであるが、しかしながら必要な変化はヒト化抗体ごとに相違するものと予期される。この所望の結果を達成するためには一つの手段はそのマウス対応物によって置換された「容疑(suspect)」フレームワーク残基を有する一群の突然変異体を構築することによって突然変異の正しい組合せを確認することであった。これらの変異体を個々に形成して抗原に対して試験し、次に望ましい結合親和性を有する別の変異体と結合する。しかしながら、この方法には個々の部位特異的突然変異誘発、分離および検索の反復含み、時間がかかり、退屈なので、それ故に望ましくない。抗体のヒト化を単純化する手段として相異なる手法が多数開発されている。例えばQueenほか著、PNAS・USA、86巻10029頁(1989年);Kettleboroughほか著、Protein・Eng.、4巻:773頁(1991年);Tempestほか著、Biotechnology、9巻:266頁(1991年);Padlan著、Mol.Immunol.、28巻:489頁(1991年);Roguskaほか著、PNAS USA、91巻969頁(1994年);Studnickaほか著、Protein・Eng.、7巻:805頁(1994年);Allenほか著、J.Immunol.、135巻:368頁(1985年);Carterほか著、PNAS USA、89巻4285頁(1992年);Prestaほか著、J.Immunol.、151巻:2623頁(1993年);Eigenbrotほか著、Proteins,18巻:49頁(1994年);Shalabyほか著、J.Exp.Med.、175巻:217頁(1992年);Kabatほか著、「Sequences・of・Proteins・of・Immunological・Interest(免疫学的意義のある蛋白質の配列)」、5版、Public・Health・Service社、NIH、ベセスダ、MD(1991年);およびRosokほか著、J.Biol.Chem.、271巻:22611頁(1996年)参照。本発明の目的の一つはヒト化抗体のそれが連結する抗原への結合を改善して、個々の部位特異的突然変異誘発と検索との反復に基づくフレームワーク最適化を用いている現行の方法を無用にする、フレームワーク突然変異を迅速に選択する一般的手段を提供することにある。また、免疫原性が低い抗体を提供すること、および一般的な骨組として単一なヒトのフレームワークを利用する抗体をヒト化する迅速な方法を提供することも目的の一つである。本発明の別の目的はフレームワークの変化を持たない最初のヒト化抗体と比較して抗原に対する親和性が強化されるように突然変異させたヒト化抗体を提供することにある。これに加えて、本発明の他の目的は排出速度が減少しており、そのために体内に投与した後の保持時間が長く、治療効果を得るために全身投与に必要な物質が低用量になったヒト化抗体を提供することである。VEGFに対するヒト化モノクローナル抗体を提供することは本発明のまた別の目的である。本発明の要約本発明は脈管内皮増殖因子(VEGF)に対するヒト化抗体を提供する。最初のヒト化抗VEGFはヒトの最も豊富なサブクラス、すなわち、VLκサブグループI(VLκI)およびVHサブグループIII(VHIII)の共通配列から誘導されたフレームワークを有し、それに非ヒト抗VEGFからのCDRが移植されたものである。最初の構築物で必須なフレームワーク残基のランダム突然変異誘発をするとフレームワークが変化していなかった最初のヒト化抗体と比較して抗原に対する親和性が125倍も強化された本明細書に記載するヒト化抗VEGFを与える。単一な追加的突然変異で結合がさらに6倍もの改善を与えた。本明細書に記載する方法によって、または本明細書に提供する配列情報が与えられれば慣用的組換え技術によって、このヒト化抗VEGFを再生産できる。本明細書中には連結抗原に対するヒト化抗体の結合を改良するフレームワーク突然変異を迅速に製造、確認する方法を提供する。好適な態様では非ヒトCDRをヒトのVLκI−VHIIIフレームワーク上に移植する。必須なフレームワーク残基の小さな組合せにランダム突然変異誘発も行い、続いて得られた抗体分子のライブラリーを線状ファージの表面にモノバレントディスプレイをさせる。次に最適なフレームワーク配列を親和性に基づく選択によって確認する。所望ならば選択された抗体をさらに突然変異させてVL−VH境界に存在する補助的残基を元の非ヒト抗体にマッチする残基に置換できる。本明細書に記載する方法はいかなる非ヒト抗体にも適用できる。従って本発明によってヒト化抗体が提供される。【図面の簡単な説明】図1はネズミA4.6.1(VLおよびVHの各ドメイン配列:配列番号6および9)、ヒト化A4.6.1変異体hu2.0(VLおよびVHの各ドメイン配列:配列番号7および10)およびヒト化A4.6.1変異体hu2.10(VLおよびVHの各ドメイン配列:配列番号8および11)のアミノ酸配列を示す。各配列の番号付けはKabatほか著、「Sequences・of・Proteins・of・Immunologial・Interest(免疫学的意義のある蛋白質の配列)」、5版、Public・Health・Service社、NIH、ベセスダ、MD(1991年)に従ったもので、ミスマッチは星印(ネズミA4.6.1対hu2.0)または黒丸(hu2.0対hu2.10)で示した。変異体hu2.0はヒトの軽鎖KサブグループI、重鎖サブグループIIIのフレームワークに移植されたマウス抗体からのCDR配列(太字)のみを含む。変異体hu2.10は本明細書中に記載するファージ分類実験から得られた共通ヒト化クローンである。図2はランダム化の標的にしたフレームワーク残基を示す。図3はファージにあるFab−pIII融合体を表面提示させるためのファージミド構築物を示す。このファージミド構築物はM13遺伝子IIIコート蛋白質の一部に融合した抗体A4.6.1に対するFab断片のヒト化変異体をコードする。この融合蛋白質は重鎖のカルボキシル末端で単一グルタミン残基(supE・E.coliにあるアンバーコドンの抑制からの)、続いて遺伝子III蛋白質のC末端領域(残基249〜406)に結合したFabからなる。F+E.coliへの形質転換とそれに続くM13KO7ヘルパーファージによるスーパーインフェクションでファージミド粒子が産生されるが、その粒子ではこれらの小さな割合が融合蛋白質の単一(single)コピーをディスプレイされる。本発明の詳細な説明A.定義「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特性を有する糖蛋白質である。抗体は特定の抗原に結合する特異性を示すが免疫グロブリンは抗体の他に、抗原特異性のない他の抗体様分子も含む。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系によって低濃度で産生され、骨髄腫によってそれよりも高濃度で産生される。「在来型の抗体」および「在来型の免疫グロブリン」は通常約150000ダルトンのヘテロテトラマー性の糖蛋白質であって、2個の同一な軽鎖(L)および2個の同一な重鎖(H)からなる。各軽鎖は1個の共有結合ジスルフィド結合によって重鎖に結合しており、一方ジスルフィド結合の数は異なるアイソタイプに属する免疫グロブリンが持つ重鎖の間では変化が認められる。各重鎖と軽鎖とはまた規則的な間隔で鎖内ジスルフィド橋を持つ。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)とそれに続いて多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)および他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインに並列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖の可変ドメインと重鎖の可変ドメインとの間の界面を形成すると信じられている。Clothiaほか著、J.Mol.Biol.、186巻:651頁(1985年);Novotnyほか、PNAS・USA、82巻:4592頁(1985年)。用語「可変」は可変ドメインのある部分が抗体間で配列が著しく異なり、特定の抗体が特定の抗原に対する結合および特異性に使用されるという事実を示す。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインを通じて均等に分布してはいない。それは軽鎖の可変ドメインおよび重鎖の可変ドメインの双方にある「相補性決定領域」(CDR)または「超可変領域」と呼ばれる3個の分節に集中している。可変ドメインの中で比較的高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれている。在来型の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々4個のFR領域を含み;主にp−シート構造を取り、CDR3個によって結合しており、β−シート構造に結合するループを形成し、場合によってはβ−シート構造の一部を形成する。各鎖内のCDRはFR領域により相互に近くに保たれ、他の鎖からのCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。Kabatほか著、前出。定常ドメインは抗体と抗原との結合には直接的な関与はないが、たとえば依存性細胞傷害性における抗体の寄与のような種々のエフェクター機能を示す。抗体のパパイン消化でFab断片と呼ばれ、各々が単一な抗原結合部位を持つ2個の同一な抗原結合性断片および残りの容易に結晶する性能を示す「Fc」断片という名前の断片が作られる。ペプシン処理は(Fab1)2断片を与えるが、これは抗原結合部位2個を有し、なお抗原と交差結合することができる。「Fv」は完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は重鎖1個および軽鎖可変ドメイン1個の強固で非共有結合的会合によるダイマーからなる。各可変ドメインのCDR3個が相互作用してVH−VLダイマー表面の抗原結合部位を定義付けているのはこの配置である。6個のCDRは集合的にその抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3個のCDRを含むFvの半分)でさえも完全な結合部位よりも親和性は低いが、抗原を認識し、結合する性能を持つ。「Fab」断片は軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)とを含む。Fab1断片は重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に抗体ヒンジ領域からのシステイン1個またはそれ以上を含む数個の残基が追加されている点で、Fab断片とは異なる。ここに、Fab1−SHはFab1であって、その定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するものを示す。(Fab1)2抗体断片は本来一対のFab1断片として産生されたものであるが、これはそれらの間にヒンジのシステインを有する。その他に抗体断片の化学的結合体も知られている。いずれの脊椎動物から得られる抗体(免疫グロブリン)の軽鎖も定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる明らかに相異なるタイプ2種の中の1種に分類できる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスに分類できる。免疫グロブリンには主なクラスが5つある:すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMであって、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、たとえばIgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1、IgA−2などに分類される。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは各々α、デルタ、イプシロン、γおよびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンにあるこれらのサブユニットの構造および三次元配置は良く知られている。用語「抗体」は最も広い定義で使用され、所望の生物学的作用を示す限り、単一なモノクローナル抗体(アゴニスト抗体およびアンタゴニスト抗体を含む)、ポリエピトープ的な特異性を有する抗体、ならびに抗体断片(たとえばFab、F(ab1)2、およびFv)を特異的に包含する。本明細書中に使用する用語「モノクローナル抗体」は実質的に均一な抗体から得られる抗体を示す。すなわち、その集団を構成する各抗体が天然起源の可能性がある僅かな量の突然変異を除いて同一なものである。モノクローナル抗体は高度に特異的であって、単一な抗原部位を指向する。さらにその上、異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体を含む通常の抗体(ポリクローナル抗体)製品とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一な決定基を指向する。その特異性に加えてモノクローナル抗体はハイブリドーマ培養物によって他の免疫グロブリンによる汚染なしに合成される点で有利である。修飾語「モノクローナル」は実質的に均質な抗体集団から得られるというその抗体の特性を示し、およびいずれか特定な方法による抗体の産生が必要であると理解すべきではない。例えば、本発明に従って使用すべきモノクローナル抗体はKohlerほか著、Nature、256巻:495頁(1975年)に初めて記載されたハイブリドーマ法によって産生してもよく、また、組換えDNA法によって製造してもよい。たとえば米国特許第4816567号参照。「キメラ抗体(キメラ免疫グロブリン)」は所望の生物学的活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体の対応する配列または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同的な抗体であり、一方では、その鎖(単数または複数)の残りの部分は他の種から誘導した抗体の対応する配列または他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同的である抗体、ならびにそのような抗体の断片である。米国特許第4816567号。非ヒト(たとえばマウス)抗体の「ヒト化」型はキメラ性免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(たとえば、Fv、Fab、Fab1、F(ab1)2またはその他の抗原結合性抗体のサブ配列のようなもの)であって、最少量の非ヒト免疫グロブリン由来配列を含む。多くの部分でヒト化抗体はヒトの免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエント相補性決定領域からの残基が、たとえばマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種の所望の特異性、親和性および能力を有するCDR(ドナー抗体)からの残基によって置換されている。時にはヒト免疫グロブリン残基のFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基に置換されている。さらにその上、ヒト化抗体はレシピエントの抗体にも、インポートしたCDRまたはフレームワーク配列にも存在しない残基を含むこともある。これらの修飾は抗体のパフォーマンスをさらに精密化し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は実質的に全ての可変ドメイン少なくとも1個、および典型的には2個を含み、そこではCDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、Fv領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである。最適には、ヒト化抗体には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含むこととなろう。さらに詳細な点についてはJonesほか著、Nature、321巻:522頁(1986年);Reichmannほか著、Nature、332巻:323頁(1988年);およびPresta著、Curr.Op.Struct.Biol.、2巻:593頁(1992年)参照。「ヒトで非免疫原性の」は治療的に有効な用量でヒトの適当な組織とヒト化抗体とが接触する時にヒト化抗体に対する過敏性または耐性の状態が投与に際して実質的に示されないことを意味する。本明細書中に使用する「脈管内皮細胞増殖因子」または「VEGF」は米国特許第5332671号に規定している哺乳類の増殖因子であってその特許の図1に記載のアミノ酸配列のものを含むものを意味する。在来型VEGFの生物学的活性はそのいかなる類似体または変異体とも共有されており、それらは脈管内皮細胞の選択的増殖を促進することができるものであるが、ウシ角膜内皮細胞、レンズ上皮細胞、副腎皮質細胞、BHK−21繊維芽細胞またはケラチノサイトのものではなく、または対応する在来型VEGFのエピトープの少なくとも一つに対して産生された抗体と免疫学的交差反応性のある免疫エピトープを有する。「部位特異的突然変異誘発」は当分野で標準的な技術であって、突然変異誘発すべき単一鎖ファージDNAとは所望の突然変異を示す僅かなミスマッチを除いて相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して実行される。略述すれば、合成的オリゴヌクレオチドをファージに相補的な鎖の直接的な合成を指向するプライマーとして使用し、得られた二重鎖DNAでこのファージを支持する宿主細菌を形質転換する。形質転換した細菌の培養物を寒天上に塗布し、ファージを含有する単一細胞からできたプラークを形成させる。理論的には新規プラークの50%が突然変異した型の単鎖のファージを含み、50%が元の配列を有するものである。正しいマッチングはハイブリッド形成できるが、元の鎖とのミスマッチをハイブリッド形成できない温度でキナーゼ処理した合成プライマーとこのプラークとをハイブリッド形成させる。プローブとハイブリッド形成したプラークを次に選択し、培養してDNAを回収する。「発現系」は所望のコード配列および制御配列を作動可能な結合において含むDNA配列を示し、この配列で形質転換した宿主はコードされた蛋白質を産生できるものとする。形質転換を起こすためには、発現系はベクターに含まれていてもよいが、関与するDNAが宿主の染色体に挿入されていてもよい。本明細書に使用する「細胞」、「細胞系列」および「細胞培養物」は互換的に使用され、これらの語句は子孫を全て含む。そこで「形質転換体」および「形質転換した細胞」は初代の細胞および形質転換の回数に拘らずそれから誘導された培養物を包含する。また子孫は故意のまたは偶発的な突然変異のためにDNA含有が正確に同一である必要はないものと理解される。本来の形質転換した細胞について検索したものと同じ機能性を有する突然変異体の子孫も包含する。厳密な命名を意図するものは記載から明らかとなろう。「プラスミド」は先頭に小文字pおよび/または続いて大文字および/または数字で記載する。本明細書に記載する出発プラスミドは公衆が商業的に購入し、制限なしに入手できるか、またはそのような入手可能なプラスミドから発表されている操作法に従って構築できる。それに加えて、その他の等価なプラスミドはこの技術分野で知られており、通常の専門家にとって明らかになろう。「親和性結合」は抗体上にある単一の抗原結合部位と単一なエピトープとの間の非共有結合的相互作用の強さの総計を示す。低親和性抗体は抗原に弱く結合して容易に分離する傾向があるが、高親和性抗体はさらに強く抗原に結合し、結合したままで長時間存在する。「形質転換」はDNAを染色体外エレメントとして、または染色体への挿入によるかのどちらかで、DNAが複製できるように生物体に導入することを意味する。形質転換は使用する宿主細胞に依存してその細胞に適する標準的技術を用いて行われる。Cohen著、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69巻:2110頁(1972年)およびMandelほか著、J.Mol.Biol.、53巻:154頁(1970年)に記載されている塩化カルシウムを用いるカルシウム処理法は一般的に原核生物またはその他の実質的な細胞壁障壁を有する細胞に対して使用する。そのような細胞壁を持たない哺乳類細胞にはGrahamおよびvan・der・Eb著、Virology、52巻:456頁(1978年)に記載の燐酸カルシウム沈殿法が好適である。哺乳類細胞宿主系の形質転換の一般的な側面は、1983年8月16日に発行されたAxelの米国特許第4399216号に記載されている。酵母への形質転換は典型的にはVan.Solingenほか著、J.Bact.、130巻:946頁(1977年)およびHsiaoほか著、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、76巻:3829頁(1979年)の方法に従って実行する。しかしながらDNAを細胞に導入する、たとえば核内注射、電気穿孔法または原形質融合によるようなその他の方法を使用してもよい。所定のDNA断片の制限消化物からの「回収」または「分離」は消化物をポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル上で電気泳動し、易動度を既知分子量のマーカーDNA断片のものと比較して目的とする断片を確認し、所望の断片を含むゲル区分を取出し、ゲルからDNAを分離することを意味する。この操作法は一般に知られている。例えばLawnほか著、Nucleic・Acids・Res.、9巻:6103頁(1981年)およびGoeddelほか著、Nucleic・Acids・Res.、8巻:4057頁(1980年)参照。「連結」は二重鎖核酸断片2個の間にホスホジエステル結合を形成する工程を示す。特段の記載がない限り、連結は、ほぼ等モル量の連結すべき両DNA断片0.5mgにつき、DNAリガーゼT4(「リガーゼ」)10ユニットを既知の緩衝液および条件を使用して達成してもよい。用語「制御配列」はコード配列に作動可能に結合している特定の宿主生物体での発現に必要なDNA配列を示す。原核生物に適する制御配列は、例えばプロモータ、所望によってはオペレータ配列、リボソーム結合部位および場合によってはその他の十分には理解されていない配列を含む。真核生物細胞はプロモータ、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。核酸はその他の核酸配列との機能的関係において配置されている時には「作動できる結合」または「作動可能に結合」している。例えば、プレ配列または分泌リーダーに対するDNAはそれがポリペプチドの分泌に関与するプレ蛋白質として発現されるならポリペプチドのDNAと作動可能に結合しており、プロモーターまたはエンハンサーはそれらが配列の転写に影響を与えるならコード配列と作動可能に結合しており、またリボソーム結合部位はそれが翻訳を促進するように配置されているならコード配列に作動可能に結合している。一般に「作動できる結合」または「作動可能に結合」は結合するDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には隣接しており読取り枠内にあることを意味する。しかしながらエンハンサーは隣接する必要がない。結合は便宜的な制限部位での連結によって達成される。もしそのような部位が存在しなければ、通常の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドのアダプターまたはリンカーを用いる。本明細書中に使用する「代表的な番号で」は特定配列における所定残基の位置番号および種々の配列における対応する位置番号を示す。対応する位置番号は配列内、一般にはヒトの抗体フレームワーク配列内の位置であって、ヒト化抗体の構築に使用する時にはそれらは機能的に代表的な番号での位置と等価である。通常は用語「アミノ酸」は天然起源のL−α−アミノ酸全てを示す。しかし、ある態様では配座的制限を促進するために本発明のポリペプチドまたはペプチドにはD−アミノ酸が存在してもよい。アミノ酸は一文字表記または三文字表記のいずれかで記載される。Asp D アスパラギン酸 Ile I イソロイシンThr T トレオニン Leu L ロイシンSer S セリン Tyr Y チロジンGlu E グルタミン酸 Phe F フェニルアラニンPro P プロリン His H ヒスチジンGly G グリシン Lys K リジンAla A アラニン Arg R アルギニンCys C システイン Trp W トリプトファンVal V バリン Gln Q グルタミンMet M メチオニン Asn N アスパラギン用語「アミノ酸配列変異体」は在来型アミノ酸配列と比較してアミノ酸配列にいくらかの相違を有する分子を示す。置換変異体は在来型配列中のアミノ酸残基少なくとも1個が除去されて異なるアミノ酸をその同じ場所に挿入したものである。この置換は分子内のアミノ酸1個だけが置換された単一置換であってもよく、または同じ分子内のアミノ酸2個またはそれ以上が置換された多重置換であってもよい。ハイブリッド形成は「緊縮条件」下に行うのが好ましい。これは(1)洗浄に低イオン強度と高温、例えば0.015M−塩化ナトリウム/0.0015M−クエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃、を採用する;または(2)ハイブリッド形成の間にたとえばホルムアミドのような変性剤を、例えば50%(v/v)ホルムアミドに0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%ファイコル/0.1%ポリビニルピロリドン/50nM−燐酸ナトリウムのpH6.5緩衝液を750mM−塩化ナトリウム、75mM−クエン酸ナトリウムとともに42℃で採用すること;を意味する。別の例では50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M−NaCl、0.075M−クエン酸ナトリウム)、50mM−燐酸ナトリウム(pH6/8)、0.1%ピロ燐酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理鮭精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDSおよび10%デキストラン硫酸を42℃で使用し、0.2×SSCおよび0.1%SDSで42℃で洗浄する。さらに別の例では10%デキストラン硫酸、2×SSC(NaCl/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミドを55℃で使用するハイブリッド形成を行い、続いてEDTA添加0.1×SSCからなる55℃での高緊縮条件で洗浄する。ある核酸分子の核酸配列が与えられた時には前記条件下にそれとハイブリッドを形成する他の核酸分子はその配列の範囲内にあると考えるものとする。アミノ酸配列が記載される時にはこれらの配列は合成的にアミノ酸配列を最構築することによって、または突然変異によって再現できると理解される。その他に組換え技術を使用してそのアミノ酸配列をコードするDNAが回収されるように使用できるものと理解される。このDNAは所望のアミノ酸配列をコードするDNAから得たライブラリーを形成することによって回収される。次にプローブをそのアミノ酸配列に基づいて作製する。そのプローブにハイブリッド形成するDNAを分離して分析し、そのDNAがコードする産物が所望の産物かどうかを決定する。一般的には細胞をそのDNA(またはRNA)で形質転換して、発現研究を行う。B.ヒト化抗体に関する一般的方策本明細書中に記載する方法はいかなる抗体をヒト化するためにも使用できる。同様にして本明細書中に記載するヒト化抗体であるヒト化抗VEGFは本明細書に記載する方法によってまたは通常のDNA組換え技術によって再生産できると理解される。特定的には、必須なフレームワーク残基の突然変異を本明細書中に記載するので、ヒト化抗体は一価ファージディスプレイ系を使用して再生産しないでも同じ突然変異を持つものを再生産できる。むしろ、ここに記載するアミノ酸配列をコードするDNAは合成または通常のDNA組換え技術による製造ができる。次にそのDNAの産物を発現し、確認し、回収できる。これとは別に当技術分野で知られている方法によって抗体に部位特異的突然変異の誘発を行うか、またはその抗体が本明細書に記載する突然変異を持つように合成することもできる。本明細書に記載するヒト化抗体を製造する特に好適な方法は次のものを含む:ヒトVLκI−Cκ1軽鎖およびヒトVHIII−CH1γ重鎖Fdをコードするベクター上での部位特異的突然変異誘発によって移植したCDR配列を持つFab断片のモノバレントディスプレイのための抗体ファージミドベクターを製造する;抗体Fabファージミドライブラリーを選択した必須フレームワーク残基の小さな組合せのランダム的突然変異誘発によって構築する;このヒト化Fab断片を発現、精製する;ヒト化Fab変異体を選択する;および結合親和性を決定する。これらの工程を特定の順序で行う必要はない。下記の「特定的実施例」の欄にこれらの工程を特定的に記載するが、一般的には次のようにして実行される。Fab断片を1価ディスプレイするための抗体ファージミドベクターの製造最初にヒト化する抗体を選択して相補性決定領域(CDR)を確認する。この抗体のCDR配列はKabatほか著、前出、の配列定義に従って確認できる。このCDR配列をヒトVLκI−Cκ1軽鎖およびヒトVHIII−CH1γ重鎖のFdをコードするベクターへの部位特異的突然変異誘発によって移植する。次にこのFabをコードする配列をファージミドベクターにサブクローニングする。この構築物は最初のヒト化抗体をコードするが、その重鎖のC末端はファージのコート蛋白質のカルボキシル部分に正確に融合される。大腸菌supEサプレッサー株で分泌重鎖または重鎖−遺伝子III融合体双方の発現を提供するファージミドベクターを選択するのが好ましい。抗体Fabのファージミドライブラリーの構築ヒトVLκI−VHIIIフレームワークに非ヒト抗体をヒト化した多数の結果の集積に基づいて抗原の結合を最適化するために必要なフレームワークの変化がいくつかの残基の組合せに限定されると考えた。Carterほか著、PNAS・USA、89巻:4285頁(1992年);Prestaほか著、J.Immunol.、151巻:2623頁(1993年);Eigenbrotほか著、Proteins、18巻:49〜62頁(1994年);Shalabyほか著、J.Exp.Med.、175巻:217頁(1992年)参照。従って新規な残基群をランダム化について選択した。これらの確認された重要なフレームワーク残基をランダム化すると、線状ファージ表面にディスプレイするべき所望のFab変異体のライブラリーを得た。特定的にはVLの残基4および71およびVHの残基24、37、67、69、71、71、75、76、78、93および94を抗原の結合に重要なカギとなるフレームワーク残基として選択して、ランダム化の標的とした。ヒト化Fab断片の発現および精製当技術分野では断片の発現および精製のためには様々な方法が知られている。本明細書に記載するように、非サプレッサーである大腸菌34B8株をファージミドpMB419またはその変異体で形質転換した。単一コロニーをカルベニシリン50μg/mL添加2YT5mL中で一夜37℃で増殖させた。これら培養物をChangほか著、Gene、55巻:189頁(1987年)に記載されているAP5培地200mLにカルベニシリン20μg/mLを添加したもので希釈して、26時間30℃でインキュベーションした。細胞を4000×gでペレット化して−20℃で少なくとも2時間凍結した。次に細胞ペレットを1mM−EDTA添加10mM−トリス−HCl(pH7.6)5mLに再懸濁し、4℃で90分間振盪し、10000×gで15分間遠心分離した。上清液を1mLのストレプトコッカスG蛋白質−セファロースカラム(Pharmacia社製のカラム)に入れて10mM−MES(pH5.5)10mLで洗浄した。結合したFab断片を100mM−酢酸で溶離し、直ちに1M−トリス−HCl、pH8.00.75mLで中和した。Fab製品の緩衝液をPBSと交換し、CENTRICON−30濃縮機(Amicon社製)を用いて濃縮した。Fabの典型的な収量はG蛋白質での精製後に約1mg/培養液Lであった。精製Fab試料をエレクトロスプレー質量分析法によって特性分析し、濃度はアミノ酸分析によって決定した。ヒト化Fab変異体の選択マイクロタイター板に精製標識抗原を被覆する。被覆溶液を廃棄し、ウェルをブロックし、ファージミドの貯蔵液を添加する。所定時間後、ウェルを洗浄し、結合したファージを溶離し、力価を測定する。VEGF被覆ウェルから溶離した残りのファージを培養して次の選択サイクルで使用する。この工程を数回反復して所望数のクローンを得ることができる。例えば個々のクローンを数ダース選択して、配列決定できる。EGF結合親和性の決定VEGFへのヒト化変異体の結合について会合−解離の速度定数を測定する。結合のプロファイルを分析して最高な親和性を示す変異体をいくつか選択する。ヒト化抗VEGFの投与ヒト化抗VEGFの投与はKimほか著、Growth・Factors、7巻:53頁(1992年);Kimほか著、Nature、362巻:841頁(1993年)に記載のマウス抗VEGFについて報告されているデータから外挿できる。殊に、Kimほかの報告はVEGF抗体の毎週2回わずか10μgが腫瘍増殖を顕著に阻害することを証明している。最大の効果は50〜100μgの抗体用量で達成された。以下の実施例は現在知られている本発明を実行するために最善な態様を例示することのみを意図したものであるが、本発明がこの実施例の詳細部分に限定されるものと考えるべきではない。特定的実施例1ファージミドベクターの構築および最初のヒト化抗VEGFマウス抗VEGF・mAb・A4.6.1は以前にKimほか著、Growth・Factors、7巻:53頁(1992年);Kimほか著、Nature、362巻:841頁(1993年)に記載されている。ヒト化A4.6.1の最初のFab変異体、hu2.0をヒトVLκI−Cκ1軽鎖およびヒトVHIII−CH1γ1重鎖Fd断片をコードするプラスミドpAK2のデオキシウリジン添加鋳型を使用する部位特異的突然変異誘発によって構築した。Carterほか著、PNAS・USA、89巻:4285頁(1992年)。移植したA4.6.1CDR配列を、われわれが両配列および構造の定義を含むように即ち、VHの残基26〜35にまで拡張したCDR−H1以外はKabatほか著、「Sequences・of・Proteins・of・Immunological・Interest(免疫学的意義のある蛋白質の配列)」、5版、Public・Health・Service社、National・Institute・of・Health、ベセスダ、MD(1991年)の定義配列に従って選択した。Chothiaほか著、J.Mol.Biol.、196巻:901頁(1987年)。このFabをコードする配列をファージミドベクターphGHamg3にサブクローニングした。BassとWells著、Proteins、8巻:309頁(1990年);Lowmanほか著、Biochem.、30巻:10832頁(1991年)。この構築物、pMB4−19はM13遺伝子IIIのコート蛋白質のカルボキシル部分に正確に融合する重鎖C末端を有する最初のヒト化A4.6.1Fab、hu2.0をコードする。pMB4−19は構築がFab断片を1価ディスプレイするために以前に報告されたプラスミド、pDH188と類似している。Garrardほか著、Biotechn.、9巻:1373〜1377頁(1991年)。pMB4−19とpDH188との間の注目すべき相違点はM13遺伝子III分節(コドン249〜406)が短いことと抗体重鎖Fd断片の直後にアンバー停止コドンを使用することを含む。これが大腸菌supE株で分泌される重鎖または重鎖−遺伝子III融合体の両者の発現を可能にする。ヒトのVLκI−VHIIIフレームワークにA4.6.1からのCDRが移植されている最初のヒト化A4.6.1Fab断片(hu2.0)を図1に示す。hu2.0のVLドメインを配列番号7に記載し、hu2.0のVHドメインを配列番号10に記載する。移植されたCDR以外の残基は全てヒトの配列として維持された。この最初のヒト化抗体とVEGFとの結合は弱すぎて検出できなかった。弱く結合する他のヒト化A4.6.1変異体の相対的な親和性に基づいて(データは記載せず)、hu2.0の結合についてのKDを>7μMと評価した。これはマウスのA4.6.1からの未変化なVLおよびVHドメインとヒトの定常ドメインとからなるキメラFab構築物の親和性である1.6nMとは対照的である。このようにhu2.0のVEGFへの結合はキメラ体と比べて少なくとも4000倍弱かった。抗−VEGF・Fabファージミドライブラリーの設計ヒトVLκI−VHIIIフレームワークを使用する時に抗原結合を最適化するために必要なフレームワーク変化の群を表1および図2に示すように選択した。ヒト化A4.6.1ファージミドライブラリーをKunkelほか著、Methods・Enzymol.、204巻:125頁(1991年)の方法に従って部位特異的突然変異誘発によって構築した。VHの24、37、67および93コドン(配列番号はKabatほか著、前出、による)にTAA停止トリプレットを含むpMB4−19の誘導体を製造して突然変異誘発鋳型として使用した。この修飾は後に野生型配列による背景夾雑物を防止するためのものである。ランダム化の標的としたコドンは4および71位(軽鎖)および24、37、67、69、71、73、75、76、78、93および94位(重鎖)であった。ヒト化A4.6.1ファージミドのライブラリーの設計に際しての懸念はランダム化の標的とした残基がVHとVLとの配列にわたって広く分布していることであった。合成オリゴヌクレオチドの長さについての制限があるためにこれらのフレームワーク位置の各々における同時的なランダム化には多重なオリゴヌクレオチドの使用が必要で、それによってのみ達成できることになった。しかしながらオリゴヌクレオチドの数が増加するとともに、突然変異誘発の効率(すなわち、突然変異誘発オリゴヌクレオチド全てから誘導された配列を挿入して得られる突然変異体の比率)が低下する。この難点を回避するために、ライブラリー構築に2つの改良を導入した。第一に可能なVLフレームワーク結合の各々をコードする4種の異なる突然変異誘発鋳型を製造するものである。これで、限られた多様性の軽鎖フレームワーク(異なる配列4種のみ)を得るのは簡単であったが、これは突然変異誘発戦略からのオリゴヌクレオチド2種についての必要性を排除した点で有益であった。第二に小さな合成断片を予め結合させて126塩基のオリゴヌクレオチドとした。これで短いオリゴヌクレオチド2個でなくて長いオリゴヌクレオチド1個を用いてVHのコドン67、69、71、73、75、76、93および94をランダム化できた。そこで最終的なランダム化突然変異誘発の戦略には異なる鋳型4個に同時にたった2個のオリゴヌクレオチドを採用した。さらに特定的には重鎖のコドン67、69、71、73、75、76、78、93および94を単一な突然変異誘発ヌクレオチドでランダム化するために、鋳型を使用する酵素的連結によって60量体の断片と66量体の断片とを予め結合して126量体のオリゴヌクレオチド2個とした。特定的には1.5ナノモルの5’−ホスホリル化オリゴヌクレオチド GAT TTC AAA CGT CGT NYT ACT WTT TCT AGA GAC AAC TCC AAA AAC ACA BYT TAC CTG CAG ATG AAC(配列番号12)または GAT TTC AAA CGT CGT NYT ACT WTT TCT TTA GAC ACC TCC GCA AGC ACA BYT TAC CTG CAG ATG AAC (配列番号1)と1.5ナノモルのAGC CTG CGC GCT GAG GAC ACT GCC GTC TAT TAC TGT DYA ARG TAC CCC CAC TAT TAT GGG(配列番号2)とを結合した。ランダム化したコドンには下線を付した。NはA/G/T/Cを表し;WはA/Tを表し;BはG/T/Cを表し;DはG/A/Tを表し;RはA/Gを表し;YはC/Tを表す(ここに「/」は「または」を表す)。次に、1.5ナノモルの鋳型オリゴヌクレオトチド CTC AGC GCG CAG GCT GTT CAT CTG CAG GTA(配列番号3)を配列番号12および1の5’末端および配列番号3の3’末端の相補配列を加えて連結結合の各末端をハイブリッド形成させた。この混合物にTaq・ligase(New・England・Biolabs社製の熱安定性リガーゼ)および緩衝液を加え、反応混合物を温度サイクル(1.25分間95℃および5分間50℃)に40回付して鋳型オリゴヌクレオチドを連結および非連結結合の間を循環するようにした。生成した126量体のオリゴヌクレオチドを6%尿素/TBEポリアクリルアミドゲル上で精製し、ポリアクリルアミドから緩衝液で抽出した。2種の126量体オリゴヌクレオチド等モル量を混合し、エタノール沈殿させ、最終的に10mM−トリス−HCl、1mM−EDTAに溶解した。混合した126量体オリゴヌクレオチド産物を504−01と名付けた。選択したフレームワークコドン(VLの4、71位;VHの24、37、67、69、71、73、75、76、93、94位)のランダム化は2段階として行った。第一に、異なる修正鋳型誘導体3種を製造しててVLをランダム化した。軽鎖のフレームワークコドン4および71を突然変異誘発オリゴヌクレオチド GCT GAT ATC CAG TTG ACC CAG TCC CCG (配列番号13)および TCT GGG ACG GAT TAC ACT CTG ACC ATC(配列番号4)を使用して個々にまたは対として置換した。デオキシウリジン添加鋳型をこれらの新らしい誘導体の各々から調製した。元の鋳型とともに、これら4個の構築物は4個の可能な軽鎖フレームワーク配列の組合せの各々をコードする(表1参照)。オリゴヌクレオチド504−01、126量体オリゴヌクレオチド2種の混合物およびCGT TTG TCC TGT GCA RYT TCT GGC TAT ACC TTC ACC AAC TAT GGT ATG AAC TGG RTC CGT CAG GCC CCG GGT AAG (配列番号5)を用い、重鎖フレームワークコドンを前記の鋳型4種を使用してランダム化した。4種のライブラリーを大腸菌XL−1BLUE・CELLS(マーカー細胞、Stratagene社製)に電気穿孔して混合した。独立の形質転換体の全数は>1.2×108個で、ライブラリー中にあるDNA配列の最大数よりも約1500倍も大きいことが推測された。この方策から軽鎖の残基4および71および重鎖の24、37、67、78および93は部分的にランダム化されてマウスのA4.6.1、ヒトのVLκI−VHIII配列、またはその他のヒトおよびマウスのフレームワークに共通に見られる配列の選択を可能にした(表1)。これら残基のランダム化はヒトのVLκI−VHIII共通配列またはA4.6.1フレームワーク配列の間の選択を制限しないことに注目すべきである。むしろヒトおよびマウスの他のフレームワーク配列に共通に見られる別のアミノ酸を加えると追加的な多様性がより強固な結合変異体の選択に導くかもしれない可能性が生じる。重鎖フレームワーク残基のいくつかを二元的様式でヒトのVHIIIおよびネズミA4.6.1フレームワーク配列に従ってランダム化した。VHの残基71、73、75および76は抗原結合部位に隣接するヘアピンループに位置している。VHの71および73位の側鎖は主に規範的抗体構造に埋没しており、CDR−H2およびCDR−H3の立体配座を形成するための潜在的役割はよく知られている。Kettleboroughほか著、Protein・Eng.、4巻:773頁(1991年);Carterほか著、PNAS・USA、89巻:4285頁(1992年);Shalabyほか著、J.Exp.Med.、175巻:217頁(1992年)。一方、VHの75位および76位の側鎖は溶媒に露出しているが(図2)、しかしながらこれら2個の残基も抗原結合に影響を与えることがあるとの観察があり(Eigenbrot著、Proteins、18巻:49頁[1994年])、おそらく、ある種の抗体抗原複合体における抗原との直接的な接触によると思われる。配列内での近接性および相互依存性の可能性のために、VHの71位、73位、75位および76位はこの四分子(テトラド)による可能な結合2種のみが全ヒトVHIIIまたは全ネズミA4.6.1配列のいずれかで選択できるように一括してランダム化された。最後にVHの69位と94位との残基はランダム化されたがVHIIIおよびA4.6.1配列を表すためのみであった。このVHの69および94位は以前の抗体ヒト化で置換されておらず、それらはVHIII共通配列とA4.6.1配列との間では相違しており(図1)、正しい立体配座のために潜在的に重要なことが指摘されているので(Footeほか著、J.Mol.Biol.、224巻:487頁[1992年])、それらもこのランダム化方策に含めた。ファージミド表面にディスプレイされたヒト化A4.6.1Fabライブラリー線状ファージ表面における抗体断片の機能的ディスプレイについては種々の系が開発されている。Winterほか著、Ann.Rev.Immunol.、12巻:433頁(1994年)。これらにはFabまたは、M13バクテリオファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIII外殻蛋白質のいずれかへの融合体としての単鎖Fv(scFv)断片のディスプレイを含む。本明細書で選択する系は、Fab断片を遺伝子III融合体として1価にディスプレイするGarrardほか著、Biotechn.、9巻:1373頁(1991年)に記載のものと類似している(図3)。この系は注目すべき特性2つを有する。殊に、scFvsとは異なり、Fab断片は2量体分子種を形成する傾向を持たず、その存在は親和力効果のために最強固な結合剤の選択が防止されることがある。それに加え、ディスプレイされた蛋白質は1価性なので、そうでなければ各ファージミド粒子に現れる蛋白質の多重コピーの存在に由来する親和力効果の二次的原因の可能性がない。BassとWells、Proteins、8巻:309頁(1990年);Lowmanほか著、Biochemistry、30巻:10832頁(1991年)。ヒト化A4.6.1Fab断片を提示するファージミド粒子を大腸菌XL−1・Blue・cellsで増殖させた。略述すれば、ランダム化pMB4−19構築物が固着した細胞をカルベニシリン50μg/mLおよび約1010個のM13KO7ヘルパーファージ(VieraおよびMessing著、Meth.Enzymol.、153巻:3頁[1987年])添加2YT25mL培地中、37℃で一夜増殖させた。貯蔵ファージミドを培養上清液から食塩水ポリエチレングリコール溶液で沈殿させ、PBS100μL(ファージミド約1014個/mL)に再懸濁することによって精製した。ヒト化A4.6.1Fab変異体の選択精製VEGF121(100μL、10μg/PBSmL)でマイクロタイター板のウェルを一夜4℃で被覆した。被覆溶液を除去し、このウェルおよび非被覆ウェルを6%スキムミルクで1時間ブロックし、0.05%トゥイーン20(洗剤)添加PBSで洗浄した。次に貯蔵ファージミド10μLを0.1%BSAおよび0.05%トゥイーン20添加20mM−トリス(pH7.5)100μLで希釈して各ウェルに加えた。2時間後、ウェルを洗浄して結合したファージを0.1M−グリシン(pH2.0)100μLで溶離し、1M−トリス、pH8.0、25μLで中和した。この適量を使用して溶離したファージの数を力価検定した。VEGF被覆ウェルから溶離した残りのファージは増殖させて次の選択サイクルで使用した。合計8回の選択を行った後、個々のクローン20個を選択して配列決定した(Sangerほか著、PNAS・USA、74巻:5463頁[1977年])。ヒト化A4.6.1Fabファージミドライブラリーから得られた変異体をそれでVEGFとの結合に基づいて選択した。VEGF被覆マイクロタイタープレートウェルと非被覆マイクロタイタープレートウェルとから溶離したファージの力価を比較することによって測定される機能的ファージミドの豊富化は7回目の親和性選択まで進行した。さらに1回区分した後、20個のクローンを配列決定してランダム化した各位置で選択された好適なフレームワーク残基を確認した。表2に示すこれらの結果は選択したクローンの中の強固な共通点を示した。クローン20個の中で10個はhu2.10と命名した同一のDNA配列を持っていた。hu2.10ではランダム化されたフレームワーク位置13個の中で8個の置換が選択されていた(VL:71;VH:37、71、73、75、76、78および94)。興味深いことに、VH37(Ile)残基および78(Val)残基はヒトのVHIII配列またはネズミA4.6.1配列のいずれにおいても選択されなかった。この結果はあるフレームワーク位置が標的とするヒトのおよび元のマウスのフレームワーク配列を超えて多様性を拡大することから利益が得られるかもしれないことを示唆する。分析した残りの10個にある他の独特なアミノ酸配列は:hu2.1、hu2.2、hu2.6およびhu2.7であった。これらのクローンは全てhu2.10に加え、同一のフレームワーク置換をVH37(Ile)、78(Val)および94(Lys)の位置に有していたが、位置24および位置93ではヒトVHIIIの共通配列を保存していた。クローン4個では軽鎖コード配列が失われ、ファージELISA検定法で試験するとVEGFには結合しなかった(Cunninghamほか著、EMBO・J.、13巻:2508頁[1994年])。われわれは時々他のFabファージミドライブラリーで重鎖配列または軽鎖配列の欠損に気付き(未公開データ)、これらのクローンは発現強化のゆえに選択されたものと推測した。このような人為的産物は選択サイクル数の減少によって、またはライブラリーを固相で増殖させることによって削減できることが多い。VEGF結合親和性の決定ヒト化A4.6.1Fab変異体がVEGF121に結合する反応の会合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)をPharmacia社のBIAcore装置を用いる表面プラズモン共鳴法(Karlssonほか著、J.Immunol.Methods、145巻:229頁[1991年])によって測定した。VEGF121はバイオセンサーチップに1級アミノ基を介して共有結合的に固定化した。ヒト化A4.6.1Fab変異体の結合はFabをPBS/0.005%トゥイーン20(洗剤)に溶解した流動溶液を流速20μL/分でチップ上に流して測定した。各結合測定に続いて、50mM−HCl水5μLを3μL/分の流速で洗って固定化リガンドから残留Fabを取出した。結合プロファイルは単純1価結合モデル(BIA・evaluation・software、第2版、Pharmacia社)を使用して非線形回帰式によって分析した。ファージ選択変異体hu2.1、hu2.2、hu2.6、hu2.7およびhu2.10は振盪フラスコを用いて大腸菌で発現し、Fab断片を周縁細胞質の抽出物からG蛋白質親和性クロマトグラフィーによって精製した。これら5種のクローンについて、Fab回収量は0.2(hu2.6)から1.7mg/L(hu2.1)の範囲であった。BIAcore装置を用いる表面プラスモン共鳴によって測定したこれら各変異体の抗原(VEGF)に対する親和性を表3に示す。この結合データの分析で検査した変異体5種中で共通クローンhu2.10がVEGFに最高な親和性を持つことを示された。こうして、われわれのFabファージミドライブラリーは最も強固に結合するクローンを選択的に豊富化した。hu2.10の算出されたKDは55nMであり、フレームワーク変化を含まないhu2.0(KD>7μM)よりも少なくとも125倍強固であった。その他の選択した変異体4種は全てVEGFに対して最低KD360nMまでの範囲の弱い結合を示した。hu2.6のKD、67nMはhu2.10のものよりも僅かに弱かったが、このクローンは配列決定された20クローンの中で1コピーが見出されたのみであったことは興味深い。これはこの変異体の可溶性変異体を発現する場合と同様に発現およびディスプレイのレベルが低いためかも知れない。しかしながら、発現速度が小さいがこの変異体はヒト化抗体として有用である。ヒト化変異体hu2.10の追加的な改良最初のヒト化変異体に行った抗原親和性の大きな改良にも拘らず、hu2.10のVEGFに対する結合はまだネズミA4.6.1VLドメインおよびVHドメインを含むキメラFab断片より35倍も弱かった。このかなり大きい相違はヒト化フレームワークのさらなる最適化が追加的突然変異によって可能であることを示唆していた。Footeほか著、J.Mol.Biol.、196巻:901頁(1992年)が確認した補助的残基について、A4.6.1フレームワークとヒトVLκI−VHIIIフレームワークとの間ではVL46、VH2およびVH48の残基のみが相違していた(図1)が、われわれのファージミドライブラリーではここはランダム化しなかった。ヒト化A4.6.1Fv断片の分子モデルではVL46はVL−VH界面に存在しており、CDRH3の立体配座に影響を与えることがあるかも知れないことが示された。さらにその上、多くのVLκフレームワークではこのアミノ酸はほとんど常にロイシンである(Kabatほか著、前出)が、A4.6.1ではバリンである。そこで、hu2.10を背景にしてこの位置でLeu→Val置換を行った。この新変異体hu2.10Vの結合機構を分析した結果VEGF結合のKDにさらに6倍の改善を示した。hu2.10VのKD(9.3nM)はキメラ体のものの6倍以内となった。VL46とは対照的に、VH2およびVH48をネズミA4.6.1からの対応する残基に置換しても、hu2.10の結合親和性改良は認められなかった。親和性の最後の変化に先行する改良部分は会合速度定数(kon)の増大によるもので、LL46が抗原結合に適するように抗体構造を予備構成することに一定の役割を果たすことを示唆したことは興味深い。抗原親和性に影響を与えた別の突然変異は主に結合の解離速度(koff)の変化によるものであった。hu2.10とhu2.10とを比較するとA4.6.1配列でのVH残基71、73、75、および76の置換に対する親和性に5倍の改良を示した。VL71をA4.6.1配列に変換しても(Phe→Tyr)結合には無視すべき効果を示したが(hu2.2対hu2.7)、一方、VL4のロイシン変異体はA4.6.1フレームワークとヒトのVLκIフレームワークとの双方に天然に存在するメチオニンのもの(hu2.2対hu2.1)よりも僅か(<2倍)に悪化した。本明細書には記載しないが、他のヒト化A4.6.1変異体の比較でVH94Arg→Lysの変化はこの基による直接的抗原接触か、CDR−H3の正しい立体配座を維持する構造的役割かのどちらかによって、KDに5倍の改良を示した。変異体hu2.6は共通クローンhu2.10とは配列に3個の相違を有するが、類似のKDを示し、これら3個の置換が抗原結合には殆ど影響しないことを示唆する。VL4およびVL71における保存的変化の効果が殆どないことは他の変異体に対する結合データと一致するが、なおVH67での変化(Phe→Thr)は結合には殆ど影響がなかった。結語以上に本発明の実行に採用できる特定的方法を詳記した。このような特定的な方法を詳記したので当技術分野の熟練者は本発明の成果を用いて同じ情報に到達するために信頼に足る別法を工夫する方法を十分に知ることとなろう。しかし、以上に詳記したものは文章に表されているが、それが本発明の範囲の全体を限定するものとして理解するべきでなく、本発明の範囲は添付する請求項の合法的な構成によってのみ決定されるべきである。本明細書に引用する文献は全て参考のために明示的に挿入したものである。配列表(1)一般的情報(i) 特許出願人:ジェネンテク・インコーポレイテッド(ii) 発明の名称:ヒト化抗体およびヒト化抗体の形成法(iii) 配列の数:14(iv) 連絡先:(A)名宛人:Flehr, Hohbach, Test, Albritton & Herbert(B)通り:フォー・エンバルカデロ・センター,スイート3400(C)市:サンフランシスコ(D)州:カリフォルニア(E)国:アメリカ合衆国(F)ZIP:94111(v) コンピューター解読書式:(A)媒体型:フロッピー・ディスク(B)コンピューター:IBM PCコンパティブル(C)オペレーティング・システム:PC−DOS/MS−DOS(D)ソフトウェア:PatentIn Release #1.0, Version #1.30(vi) 本出願のデータ:(A)出願番号:PCT HEREWITH(B)出願日:1998年4月2日(C)分類:(vii) 優先権出願データ:(A)出願番号:08/833,504(B)出願日:1997年4月7日(viii) 弁理士/代理人情報:(A)氏名:ドレジャー,ウォルター・エイチ(B)登録番号:24,190(C)参照/整理番号:A−64254(ix) 電話連絡先情報:(A)電話番号:(415)−781−1989(B)ファックス番号:(415)−398−3249(2)配列番号1の情報:(i) 配列の特徴(A)長さ:66塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:不明(D)トポロジー:不明(ii) 配列の種類:DNA(genomic)(xi) 配列:配列番号1:(2)配列番号2の情報:(i) 配列の特徴(A)長さ:60塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:不明(D)トポロジー:不明(ii) 配列の種類:DNA(genomic)(xi) 配列:配列番号2:(2)配列番号3の情報:(i) 配列の特徴(A)長さ:30塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:不明(D)トポロジー:不明(ii) 配列の種類:DNA(genomic)(xi) 配列:配列番号3:(2)配列番号4の情報:(i) 配列の特徴(A)長さ:27塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:不明(D)トポロジー:不明(ii) 配列の種類:DNA(genomic)(xi) 配列:配列番号4:(2)配列番号5の情報:(i) 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配列の特徴:(A)特徴を表す記号:misc_feature(B)存在位置:459..460(D)他の情報:/note=“第459塩基で始まる軽鎖”(ix) 配列の特徴:(A)特徴を表す記号:misc_feature(B)存在位置:1101..1102(D)他の情報:/note=“第1101塩基で始まる重鎖”(ix) 配列の特徴:(A)特徴を表す記号:misc_feature(B)存在位置:1254..1255(D)他の情報:/note=“第1254塩基で始まる重鎖”(ix) 配列の特徴:(A)特徴を表す記号:misc_feature(B)存在位置:2424..2425(D)他の情報:/note=“第2424塩基で始まる重鎖”(xi) 配列:配列番号14: ヒト化抗脈管内皮増殖因子抗体であって、非ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)がVLκサブグループI(VLκI)およびVHサブグループIII(VHIII)を含むヒトのフレームワークに移植されており、そのVLドメインおよびVHドメインが以下の組合せから選択されるアミノ酸配列からなる、ヒト化抗脈管内皮増殖因子抗体:(1)VLドメインは、配列番号7において4番目のメチオニンがロイシンで置換されているアミノ酸配列であり、VHドメインは、配列番号10において37番目のバリンがイソロイシン、68番目のフェニルアラニンがトレオニン、72番目のアルギニンがロイシン、74番目のアスパラギンがトレオニン、76番目のリシンがアラニン、77番目のアスパラギンがセリン、79番目のロイシンがバリン、98番目のアルギニンがリシンで置換されているアミノ酸配列である;(2)VLドメインは、配列番号8のアミノ酸配列であり、VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列である;または(3)VLドメインは、配列番号8において46番目のロイシンがバリンで置換されているアミノ酸配列であり、VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列である。 非ヒト抗脈管内皮増殖因子抗体をヒト化する方法であって、次の工程:非ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)をVLκサブグループI(VLκI)およびVHサブグループIII(VHIII)を含むヒトのフレームワークに移植すること;そのVLドメインでKabat番号付けシステムによる残基4、残基46および残基71の中の少なくとも1個、およびそのVHドメインでKabat番号付けシステムによる残基37、67、71、73、75、76、78および94の中の少なくとも3個を本来その位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換することを含み、それにより該VLドメインおよび該VHドメインが以下の組合せから選択されるアミノ酸配列を有する、方法:(1)VLドメインは、配列番号7において4番目のメチオニンがロイシンで置換されているアミノ酸配列であり、VHドメインは、配列番号10において37番目のバリンがイソロイシン、68番目のフェニルアラニンがトレオニン、72番目のアルギニンがロイシン、74番目のアスパラギンがトレオニン、76番目のリシンがアラニン、77番目のアスパラギンがセリン、79番目のロイシンがバリン、98番目のアルギニンがリシンで置換されているアミノ酸配列である;(2)VLドメインは、配列番号8のアミノ酸配列であり、VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列である;または(3)VLドメインは、配列番号8において46番目のロイシンがバリンで置換されているアミノ酸配列であり、VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列である。 請求項1のヒト化抗体を含む組成物を形成することを含む有糸分裂シグナルを阻止することによって腫瘍の増殖を阻止するために使用するための薬剤を製造する方法。