生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_昆虫発現ベクター
出願番号:1998541010
年次:2005
IPC分類:7,C12N15/09,A01K67/033,C12N5/10,C12P21/02


特許情報キャッシュ

グリグリアッチ、トーマス・エー ティールマン、デイブ・エー フェイファー、トーマス・エー ヘゲダス、ディワイン・ディー JP 3688718 特許公報(B2) 20050617 1998541010 19980326 昆虫発現ベクター ザ・ユニバーシティー・オブ・ブリティッシュ・コランビア 鈴江 武彦 村松 貞男 坪井 淳 橋本 良郎 白根 俊郎 グリグリアッチ、トーマス・エー ティールマン、デイブ・エー フェイファー、トーマス・エー ヘゲダス、ディワイン・ディー US 60/049,946 19970327 CA 2,221,819 19980128 20050831 7 C12N15/09 A01K67/033 C12N5/10 C12P21/02 JP C12N15/00 A A01K67/033 501 C12P21/02 C12N5/00 B 7 BIOSIS/WPI(DIALOG) CA(STN) REGISTRY(STN) 特表平06−502990(JP,A) 国際公開第94/001463(WO,A1) 特開平9−70291(JP,A) 特開昭62−294698(JP,A) Nucleic Acids Res.,Vol.18,No.13(1990)p.4009 Nucleic Acids Res.,Vol.21,No.2(1993)p.191-195 Mol.Gen.Genet,Vol.252,No.5(1996)p.572-579 Virology,Vol.187,No.1(1992)p.84-96 Virology,Vol.180,No.2(1991)p.492-508 J.Exp.Biol.,Vol.199,Pt.5(1996)p.1053-1061 Gene,Vol.207,No.2(1998.Jan.)p.241-249 Gene,Vol.188,No.2(1997.Apr.)p.183-190 Trends Biochem.Sci.,Vol.22,No.3(1997.Mar.11)p.105-106 Virology,Vol.227,No.2(1997.Jan.)p.447-459 J.Biol.Chem.,Vol.269,No.4(1994)p.3034-3040 23 CA1998000282 19980326 WO1998044141 19981008 2001516225 20010925 53 20020509 高堀 栄二 本願は、1997年3月27日出願の同時係属中の米国仮出願第60/049,946号に基づく優先権を主張する。該出願は参照として本明細書に組み込まれる。〔発明の領域〕本発明は、遺伝子工学用ベクターの領域に関する。本発明は、形質転換された細胞、特に安定的に形質転換された昆虫細胞における異種タンパク質の発現を行うためのベクター、該ベクターを用いるための方法、および該ベクターで形質転換された細胞に関する。〔発明の背景〕培養細胞を外来DNA配列で形質転換することは、遺伝子発現の研究、および商業的に重要な異種遺伝子産物、例えば有益タンパク質の作製において有用である。単純なタンパク質は、細菌細胞において作製されうる。しかし、多くの真核生物のタンパク質は、適切に機能するために、原核細胞では行われない翻訳後修飾を必要とする。原核細胞におけるタンパク質の発現に関しては、他の問題も存在する。例えば、いくつかの発現された異種タンパク質は、原核細胞において不溶性の封入体として沈積し、それによりタンパク質の回収が困難となる。原核細胞発現系に関連した問題の多くは、形質転換された哺乳動物細胞培養系を使用して、翻訳後プロセシングを受けたタンパク質を作製することにより克服することができる。しかし、哺乳動物細胞培養は、増殖が遅いために比較的効率が低く、維持が困難で、コストを要する。昆虫細胞の培養における進歩、およびバキュロウイルスを基礎とした発現系の開発により、形質転換された昆虫細胞による異種タンパク質の発現が促進された(Luckow and Summers,Bio/Tech.,6:47−55(1988);Miller,Annu.Rev.Microbiol.,42:177−199(1988))。現在までのところ、形質転換された昆虫セルラインにおける異種タンパク質の発現は、主にバキュロウイルス、オートグラファカリフォルニアマルチキャプシド核多角体病ウイルス(Autographa california multicapsid nucleopolyhedrosis virus)(AcMNPV)由来のベクターを用いて達成されている(Luckow and Summers,Bio/Tech.,6:47−55(1998);Miller,Annu.Rev.Microbiol.,42:177−199(1988))。バキュロウイルスは、典型的な感染周期の最後に、感染された昆虫細胞を溶解させて殺す二本鎖DNAウイルスである。様々なバキュロウイルスが知られており、それぞれが特定の節足動物種に限って感染する。バキュロウイルスは、節足動物門以外の動物においては複製を行うことが知られていない。この領域における先行技術の理解には、バキュロウイルス感染の分子生物学をある程度認識することが必要である。昆虫の自然なバキュロウイルス感染の際の遺伝子発現は、高度に制御されており、規則正しいカスケードとして起こる。ウイルス遺伝子は、この遺伝子発現カスケードにおける位置に従い、前初期(immediate early)(ie)、後初期(delayed early)(de)、後期(late)、および超後期(very late)という4つの異なる群に分類され得る。初期の遺伝子発現は、ウイルスDNA複製の開始前に起こり、後期のウイルス遺伝子発現の誘導に必須であると考えられる(Blissard and Rohrmann,Annu.Rev.Entomol.,35:127−155(1990);Guarino and Summers,J.Viol.,62:463−471(1988);Millerら,Virology,126:376−380(1983))。実験により、バキュロウイルスie遺伝子は、他のウイルス性因子の存在なしに、宿主のRNAポリメラーゼIIにより転写されることが証明されている。従って、バキュロウイルスie遺伝子は、宿主細胞の転写機構により認識されるプロモーターを有していることが理解される。AcMNPV誘導体を基礎とした先行技術の発現系においては、外来遺伝子発現は、一般的に、ポリヘドリン(pol)プロモーターまたはp10プロモーターのような極めて強力な後期ウイルスプロモーターにより行われる。しかし、そのようなバキュロウイルス後期プロモーターからの発現は、ウイルスによりコードされるRNAポリメラーゼを転写に利用しており、許容性の鱗翅目細胞、即ち溶解性バキュロウイルス感染を許容する細胞に制限されている(Carbonellら,J.Virol.,56:153−160(1985))。そのような系により産生された組換えタンパク質の発現、分泌、および回収を最適化するため、多様なバキュロウイルス発現ベクターが設計されている(O’Reillyら,Baculovirus Expression Vectors,W.H.Freeman and Company,New York,NY,USA(1992);JarvisおよびCarringtonの米国特許第5,179,007号;Lenhardら,Gene,169:187−190(1996))。N−グリコシル化、O−グリコシル化、リン酸化、アシル化、タンパク質分解(Kidd and Emery,Appl.Biochem.Biotechnol.,43:137−159(1993))およびアミド化(Andersonsら,Biochem.J.,280:219−224(1991))などの、哺乳動物セルラインにおいて起こることが知られている多くの翻訳後修飾も、AcMNPV誘導体に感染した昆虫セルラインにおいて、少なくともある程度は起こる。AcMNPVを基礎とした発現系を用い、核または細胞質に局在するタンパク質を適当な量で発現させることができる(1993年1月12日にJarvisらに付与された米国特許第5,179,007号)。しかし、小胞体に関連した分泌経路に入るタンパク質は、低レベルに発現されることが多い(Jarvis,Insect Cell Culture Engineering,Marcel Dekker,Inc,New York,NY,USA(1993))。この高度に修飾された膜結合タンパク質および分泌タンパク質のサブセットには、細胞表面レセプター(Chazenbalk and Rapoport,J.Biol.Chem.,270:1543−1549(1995))、抗体(Hsuら,Prot.Expr.Purif.,5:595−603(1994))および分泌型ワクチン成分(Liら,Virology,204:266−278(1994))のような重要な生物活性種が含まれる。この種のタンパク質は、溶解性AcMNPVを基礎とした系において、比較的少ない量で、異質の形態で発現されることが多い。発現レベルの減少およびプロセシングの変化は、感染細胞の正常なタンパク質発現機構に対する障害が溶解性バキュロウイルス感染の進展により引き起こされる結果であるかもしれない(Kretzchmarら,J.Biol.Chem.375:323−327(1994);Jarvis and Finn,Virology,212:500−511(1995);Chazenbalk and Rapoport,J.Biol.Chem.,270:1543−1549(1995))。従って、感染周期の初期にタンパク質を発現することができるバキュロウイルスベクターの作出に向けて研究がなされている(Jarvis and Finn,Nature Biotechnology,14:1288−1292(1996);Jarvisら,Prot.Expr.Purif.,8:191−203(1996))。溶解性バキュロウイルス感染系に関連した問題を克服するため、昆虫セルラインの安定的な形質転換のための方法が開発された。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)シュネイダー(Schneider)細胞が、異種タンパク質発現を行うためのキイロショウジョウバエメタロチオネインプロモーターおよび形質転換体を同定するためのハイグロマイシン選択を利用する系により安定的に形質転換された(Johansenら,Genes Develop.,3:882−889(1989);Culpら,Bio/Technology,9:173−177(1991))。双翅目セルライン(キイロショウジョウバエおよびアエデスアルボピクタス(Aedes albopictus)、カ)が、異種タンパク質発現を行うためのキイロショウジョウバエhsp70プロモーターまたはAcMNPV ie1プロモーターおよび形質転換体を同定するためのメトトレキセート選択を利用する系により安定的に形質転換された(Shotkoskiら,FEBS Lett.,380:257−262(1996))。鱗翅目セルライン(Sf9、フォールアーミーフォーム(fall army worm)スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来)は、異種タンパク質発現を行うためのAcMNPV ie1プロモーターおよび形質転換体を同定するためのゲネチシン(G−418)選択を利用する系により安定的に形質転換されたが、この系における発現は、比較的効率が低いことが見出された(Jarvisら,Bio/Technology,8:950−955(1990);1991年12月31日にGuarinoおよびJarvisに付与された米国特許第5,077,214号)。これらの各形質転換系においては、あるベクター上の選択マーカーが、異種タンパク質発現カセットを保持する別の発現ベクターと共に形質転換された。共形質転換する必要のある別のプラスミドを使用することにより、形質転換過程が複雑になる。なぜなら、選択マーカーを獲得するセルラインの全てが、所望の発現ベクターをも獲得するわけではないためである。従って、選択マーカーおよび発現カセットの両方を提供することができるベクターが、当分野において必要とされている。安定的に形質転換された昆虫細胞において異種タンパク質を発現させるための強力なプロモーターも、当分野において必要とされている。この必要を満たすことを試みて、Ac ie1プロモーターからの発現を増大させるためhrエンハンサー因子が使用された(Shotkoskiら,FEBS Lett.,380:257−262(1996))。hrエンハンサーは、AcMNPVバキュロウイルスのゲノム全体に散在する5つの大きな同種領域として存在し、隣接する遺伝子の転写を活性化するよう機能する(Leisyら,Virology,208:742−752(1995))。しかし、hr因子の作用を調節するためには特異的な細胞性因子またはバキュロウイルスのコードする因子が必要であるかもしれないため、形質転換系におけるhr因子の使用は困難であるかもしれない(Glockerら,J.Virol.,66:3476−3484(1992);Choi and Guarino,J.Virol.,69:4548−4551(1995);Rodems and Friesen,J.Virol.,69:5368−5375(1995))。また、プロモーターにエンハンサー配列を追加することにより、プロモーターの大きさが有意に増大し、必然的に、関連ベクター内の所望の異種遺伝子のための場所が減少する可能性がある。従って、エンハンサー配列を必要とせずに、選択マーカー発現を含む異種タンパク質発現を適当なレベルで行うことができるプロモーターが、当分野において必要とされている。転移因子は、多数の生物における形質転換ベクターとして使用されている。転移因子は、自律複製能を有し、細胞のゲノム内の様々な位置に挿入されうることを特徴とする可動性DNAセグメントである。転移因子には、1)短い逆位繰り返し構造クラスのDNAトランスポゾン(「DNA転移因子」)および2)RNA中間体を経て複製し、転移に逆転写活性を必要とするレトロトランスポゾン(例えば、国際特許公開第88/03169号に開示されているもの)という2つの異なるクラスが存在する。本発明の一つの面は、レトロトランスポゾンとは区別される短い逆位繰り返し構造クラスのDNA転移因子に関する。完全なDNA転移因子は、因子の転移を媒介するトランスポザーゼ酵素をコードする。トランスポザーゼタンパク質は、因子の末端近傍のDNA配列と相互作用する。典型的には、DNA転移因子がトランスポザーゼ酵素に応答できるためには、完全な末端(通常約150から250塩基対)が必要である。DNA転移因子P、hobo、mariner、I、およびHermes(ムスカドメスティカ(Musca domestica)由来のhobo様可動性因子)は全て、ショウジョウバエ、キイロショウジョウバエを形質転換するために使用されている(O’Brochtaら,J.of Cell.Biochemistry−Keystone Symposia Suppl.,21A:195(1995);Pritchardら,Mol.Gen.Genet.,214:533−540(1988))。P因子の非コーディング領域内には外来DNAの大きな断片(>12kb)を組み込むことができ、転移により複製能が損なわれることはない(Meister and Grigliatti,Genome,36:1169−1175(1993))。DNA転移因子Tc1は、回虫カエノラブディテスエレガンス(Caenorhabdites elegans)を形質転換するために使用されている。所望の形質転換体の選択は、いずれの形質転換系においても重要な工程である。栄養要求性相補または優性選択に基づく形質転換系が哺乳動物系での使用のためにいくつか設計されているが、昆虫細胞に適合するものは比較的少ない(Walker,Adv.Cell Cult.,7:87−124(1989);Carlsonら,Annu.Rev.Entomol.,40:359−388(1995))。細菌のジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を用いたキイロショウジョウバエ細胞のメトトレキセート耐性への形質転換は、Bourouis and Jarry,EMBO J.,2:1099−1104(1983)により最初に記述された。その後、Shatkoski and Fallon,Insect Biochem.Molec.Biol.,23:883−893(1993)は、カ細胞において優性選択マーカーとして機能するカのジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を記述した。これらの例において、形質転換用DNAは、反復構造として、そして無秩序に組み込まれた単一コピーとしてゲノムに取り込まれた。しかし、選択圧が存在しない場合には、トランスフェクト用DNAの消失が観察された(Shotkoski and Fallon,Insect Biochem.Molec.Biol.,23:883−893(1993))。細菌のネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ遺伝子の導入後、ゲネチシン(G418)に対する耐性をキイロショウジョウバエ(Steller and Pirotta,EMBO J.,4:167−171(1985))およびその誘導セルライン(Lio and Rubin,Mol.Cell.Biol.,5:1833−1838(1985))の両方、カ(Maisonhaute and Echalier,FEBS Lett.,197:45−49(1986);Lycett and Crampton,Gene,136:129−136(1993))ならびにSf9鱗翅目セルライン(Jarvisら,Bio/Tech.,8:950−955(1990))に与えることができる。しかし、引き続く選択から生じる遺伝子増幅および高頻度の自発的耐性(McGraneら,Am.J.Trop.Med.Hyg.,39:502−510(1988))のため、いくつかの例においてはこの選択系を使用することが困難である。細菌のハイグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼ遺伝子により供給されるハイグロマイシン耐性は、G418に基づく選択系よりも信頼性が高く、選択が迅速であることが報告されている(van der Stratenら,Invertebrate Cell System Applications,CRC Press Inc.,Boca Raton,FL,USA(1989);Carlsonら,Annu.Rev.Entomol.,40:359−388(1995))。しかし、ハイグロマイシン耐性へと形質転換されたカセルラインにおいては、導入されたプラスミドが大いに増幅され、長いタンデムアレイ(tandem arrays)として、または自律複製性の染色体外偽染色体として存在した(Monroeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5725−5729(1992))。遺伝子の再編成、タンデムアレイ、または染色体外因子はいずれも、一旦選択が緩和されると、耐性遺伝子の急速な消失をもたらす。従って、特に安定的に形質転換された昆虫細胞の選択において使用するため、改良された選択系およびDNAを効率的に宿主細胞のゲノムに挿入する方法が必要とされている。ゼオシン(Zeocin)は、ストレプトミセスバーティシラス(Streptomyces verticillus)から単離された、ブレオマイシン(bleomycin)/フレオマイシン(phleomycin)ファミリーの抗生物質の一つである(Berdy,Handbook of Antibiotic Compounds,Vol IV,Part1,Amino Acid and Peptide Antibiotics,CRC Press,Boca Raton,FL,USA(1980))。ゼオシンは、フランス、トゥールーズのS.A.R.L.Caylaの登録商標であり、そこから入手可能である。ゼオシンは、銅がキレート化した化学式C55H83N19O21S2Cuで表される糖ペプチドである。ブレオマイシン/フレオマイシンファミリーの抗生物質に対する耐性は、化学量論的に抗生物質に結合する、ストレプトアロテイカスヒンダスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)ble遺伝子の産物である13.6kDaのタンパク質により付与される(Gatignolら,FEBS Lett,230:171−175(1988))。ble耐性遺伝子は、哺乳動物細胞(Mulsantら,Somat.Cell Mol.Genet.,14:243−252(1988))および植物細胞(Perezら,Plant Mol.Biol.,13:365−373(1989))にゼオシン耐性を付与するための使用に成功している。他の属由来の細胞に対するブレオマイシン/フレオマイシン抗生物質の効果は予測できない。ゼオシンを選択マーカーとして使用することに関しては、多数の問題が考えられる。銅がキレート化した形態の薬物は、不活性である。ゼオシンの作用機序について現在完全には理解されていないが、キレート化した銅をCu2+からCu1+に還元するための適当な条件が標的細胞内で満たされ、細胞内で銅イオンがスルフヒドリル化合物により除去された場合にのみ活性化が起こることが示唆されている。高い塩濃度はゼオシンを不活化する可能性がある。酸性または塩基性の溶液によってもこの薬物は不活化されうる(Invitrogen Corporation ”pZeoSV2(+) or pZeoSV2(−)”製品マニュアル,Version C,San Diego,CA,U.S.A.)。昆虫細胞発現系が重要である大きな理由は、複雑な翻訳後修飾を達成できるためである。しかし、所望のタンパク質への正確な翻訳後修飾の性質には、セルラインによりばらつきが存在する可能性がある。従って、いずれのセルラインが所望のタンパク質を最も多く発現しているかを決定するため、多様な種に由来する多数の形質転換された昆虫セルラインをスクリーニングすることが有用であるかもしれない。そのようなスクリーニング過程を達成するため、ある範囲の昆虫セルラインを安定的に形質転換し強力に異種タンパク質を発現させることができる発現ベクターが当分野において必要とされている。〔発明の概要〕本発明の一つの面は、昆虫セルラインにおける選択系としてのゼオシンの使用に関する。選択系としてのゼオシン耐性の使用は、先行技術の昆虫選択系よりも優れた重要な予想外の利点を提供しうる。これらの利点には、以下のものが含まれる。選択に必要な抗生物質の濃度が比較的低い(結果として細胞培養コストが減少する)。真核生物系および原核生物系の両方で同一の選択スキームが有効である(従って、ベクターは一つの耐性遺伝子のみを保持していればよく、ベクターの大きさを最小限に抑えることができる)。さらに、ble耐性遺伝子の大きさは小さいため(374bp)、小型のクローニングベクターを開発することが可能である(ここでも、ベクターの大きさを最小限に抑え、それによりベクターが異種配列を取り込む能力を最大にすることができる)。もう一つの間接的な利点として、本発明によりゼオシン耐性選択系が利用可能となることにより、昆虫細胞と共に使用するためのオルタナティブ選択スキームのレパートリーが拡大する。オルタナティブ選択系の使用は、例えば、複数の構築物が集合的または連続的に特定の宿主細胞へと導入され、該構築物がそれぞれ異なる選択系を利用するような場合に、特に有用である。比較的小型のゼオシン選択系から得られるさらなる利点は、β−ガラクトシダーゼまたはグリーンフルオレセントプロテインの遺伝子のような、非干渉性(unobtrusive)のレポーター遺伝子配列を本発明のベクターに追加することが可能な点である。本発明の一つの面は、ブレオマイシン/フレオマイシン型抗生物質ファミリーに属する抗生物質に対する耐性を付与する選択マーカー遺伝子の発現を調節するための、バキュロウイルス前初期プロモーター由来のプロモーターの使用に関する。一つの面において、選択マーカー遺伝子は、昆虫細胞にゼオシン耐性を付与することが本明細書において示される、ストレプトアロテイカスヒンダスタナス(Streptoalloteichus hindustanus)ble遺伝子であってもよい。選択マーカー遺伝子からの転写を調節するため、オルギアシュードツガタマルチキャプシド核多角体病ウイルス(Orgyia pseudotsugata multicapsid nucleopolyhedrosis virus)(OpMNPV)のie1遺伝子およびie2遺伝子に由来するie1プロモーターおよびie2プロモーターを、選択マーカー遺伝子に機能的に結合させることができる。プロモーターは、OpMNPV ie2プロモーターの一部分、特にIE2B因子または対GATA−IE2B因子(paired GATA−IE2B element)と名付けられた配列モチーフを含む部分に相同な配列を包含していてもよい。本発明の一つの面は、挿入されたコーディング配列をバキュロウイルス前初期プロモーターに機能的に結合させることができる多重クローニング部位を含む発現ベクターである。この発現ベクターは、異種タンパク質を産生する安定的な昆虫セルラインを構築するため、昆虫セルラインに選択優位性を付与する他のベクターと共に使用することができる。一つの面において、本発明のシャトルベクターは、多重クローニング部位またはバキュロウイルス前初期プロモーターに機能的に結合した異種コーディング配列を含んでいてもよい。本発明のこの面によると、OpMNPVのie1プロモーターまたはie2プロモーターに相同なプロモーターを、形質転換された双翅目セルラインおよび鱗翅目セルラインにおいて異種遺伝子を発現させるため使用することが可能である。昆虫セルラインおよびイー・コリにおいてゼオシン耐性遺伝子を発現させ、真核生物および原核生物の形質転換体両方の選択を可能にするキメラOp ie合成細菌プロモーターを包含する小型シャトルベクターが開示される。広範囲の双翅目および鱗翅目の昆虫細胞における構成性の異種タンパク質発現のため、OpMNPV ie2プロモーターを使用する、一連の広域発現ベクターが開示される。いくつかの面において、本発明のベクターは、双翅目セルラインにおける金属誘導性タンパク質発現のためのキイロショウジョウバエメタロチオネイン(Mtn)プロモーターを包含する。本発明の他の面は、昆虫細胞における誘導性タンパク質発現のための修飾されたlacI/O成分またはtet成分の使用を包含する。Op ie2プロモーターの使用に関連した予想外の利点、例えば広範囲の昆虫細胞宿主における機能、非昆虫セルラインにおける限定された発現、エンハンサー様配列の非存在下での高レベルの発現、および潜在的な原核生物プロモーター機能が開示される。本発明の面には、形質転換された昆虫セルライン中の高度にプロセシングされたグリコシルホスファチジルイノシトール結合型糖タンパク質、ヒトメラノトランスフェリン、分泌型第X因子、および分泌型イオントランスポートペプチドホルモン(ion transport peptide hormone)(ITP)を含む、異種遺伝子の構成性および誘導性の発現のため形質転換されたセルラインが含まれる。本発明のベクターは、形質転換されたセルラインにおけるタンパク質産生能を調査し、それにより高レベルの異種タンパク質を発現するクローナルセルラインまたは細胞集団の回収を促進するために有用な、β−ガラクトシダーゼまたはグリーンフルオレセントプロテイン(GFP)のコーディング遺伝子のような、非干渉性のレポーター遺伝子を包含していてもよい。これらの非干渉性のレポーター遺伝子を、ゼオシン耐性のような抗生物質耐性遺伝子にインフレームのタンパク質融合により結合させ、抗生物質耐性および/またはFACSの両方によりセルラインの分析および選択を可能にすることができる。本発明のベクターは、トランスポゾンを定義する転移因子を包含するトランスポゾンを基礎としたタンパク質発現カセット、選択マーカー遺伝子および/またはトランスポゾン内に存在する異種タンパク質コーディング配列を含んでいてもよい。そのようなベクターをトランスポザーゼ供給源を有するセルラインに導入することができる。トランスポザーゼ供給源を供給するためのいくつかの機序が開示される。一つの実施態様において、誘導性のゲノム由来トランスポザーゼ遺伝子からトランスポザーゼを供給するため、トランスジェニック昆虫セルラインが誘導される。トランスポザーゼが発現すると、酵素はゲノムDNAへとトランスポゾンを侵入させる。トランスポザーゼが発現している間、トランスポゾンを基礎とした発現カセットのコピー数は、新たなゲノム部位へのカセットの重複性転移により次第に増大するかもしれない。トランスポザーゼ発現を調節して、トランスポゾンの移動を制御し、それによりトランスポゾンのコピー数を調節することができる。特定の異種タンパク質の発現レベルは、セルラインが保持するトランスポゾンを基礎とした発現カセットのコピー数を最適化することにより最適化することができる。本発明の一つの面において、Pトランスポゾンを基礎とした発現カセットを、SL2セルラインを形質転換するために使用することができる。ベクターは、トランスポゾンを定義するP因子逆位繰り返し構造トランスポゾン末端を包含していてもよく、トランスポゾン内に、誘導性トランスポザーゼ遺伝子(転移を調節するため)、選択マーカー(形質転換された細胞のみを選択するため)および異種タンパク質発現カセット(多重クローニング部位を含んでいてもよい)を包含していてもよい。他の実施態様において、トランスポザーゼ遺伝子はセルラインのゲノムに安定的に組み込まれてもよい。または、トランスポザーゼ遺伝子は、組み込みを媒介するトランスポザーゼを供給するが、それ自体は転移によりゲノムに組み込まれ得ない形質転換ヘルパープラスミドへと取り込まれてもよい。本発明は、体細胞においてトランスポザーゼが活性を有するようにさせるため第三イントロンが除去されているPトランスポザーゼ遺伝子がゲノムに組み込まれているSL2セルラインを含む(△2−3)。この実施態様において、△2−3トランスポザーゼ遺伝子は、トランスポザーゼ発現が誘導されるよう、メタロチオネイン(Mtn)プロモーターの調節下にある(セルラインはSL2MT△2−3と名付けられる)。いくつかの実施態様において、本発明のトランスポザーゼベクターの因子は、形質転換体を容易に同定するための機序(ゼオシン耐性など)、安定的に組み込まれたベクターのコピー数の増大を誘導するための機序(誘導性トランスポザーゼ)、および異種タンパク質発現が増大している可能性のあるクローンを容易に同定するための機序(異種配列コピー数の指標となる非干渉性のマーカー)を提供するため、組み合わされていてもよい。実際、そのようなベクター内の構造的特徴の新規な組み合わせは、形質転換された昆虫細胞からの異種タンパク質の産生において様々な段階で重要な機能的利点を提供するよう協調作用する。【図面の簡単な説明】図1a CATレポーター遺伝子構築物pIE2CATを用いたOpMNPV ie2プロモーターの欠失解析。グラフは、Sf9(サンプルAおよびB)並びにKc1(C)を用いた2つの代表的なサンプル実験からの相対速度を示している。全ての速度が、欠失−275の値を100%とした相対速度である。グラフの下の数字は、プロモーター欠失構築物の5’末端の、転写開始部位に対する相対位置を示す。グラフの下の概略図は、OpMNPV ie2プロモーターの図、ならびにGATA因子(黒丸)、IE2B因子(白丸)、リピートI BおよびリピートII AおよびB(斜線付の四角)、TATAボックスおよびCAGT転写開始部位(黒四角)を含む特定のモチーフのおよその位置を示す。影付きの矢印は、CATオープンリーディングフレームを示す。グラフと概略図を連結している線は、OpMNPV ie2プロモーター上の欠失の5’末端のおよその位置を示す。図1b CATレポーター構築物を用いたキメラ合成OpMNPV ie2プロモーター構築物の分析。p2ZeoSyn−237と名付けられた基本のプロモーターは、ヌクレオチド−237までのGATA配列およびIE−2B配列を全て含んでいた。この配列を二重化および三重化した効果を、Ld652Yセルライン、Sf9セルライン、Kc1セルラインで比較する。さらに、ie−2遺伝子の3’に見出されるエンハンサー(OpE)の位置的な効果を研究した。様々なセルラインにおける比較結果を図に示す。図2a OpMNPV ie2遺伝子およびAcMNPV ien遺伝子のプロモーター配列の比較(Krappa and Knebel−Morsdorf,J.Virol.,65:805−812(1991))。転写開始部位をヌクレオチド配列の上下の矢印で示す。アラインメントは、ゼロ(zero)のギャップペナルティ(gap penalty)を用いたGAP配列解析プログラム(Devereuら,Nucl.Acids Res.,12:387−395(1984))により作製した。OpMNPV ie2プロモーター内に同定された繰り返し構造因子を二重下線で示し、GATAおよびIE2Bと記した。AcMNPV ienプロモーター(Carsonら,J.Virol.,65:945−951(1991);Krappa and Knebel−Morsdorf,J.Virol.,65:805−812(1991))内の逆位繰り返し構造およびOpMNPV ie2プロモーター内の関連配列を下線で示し、REPEAT I A、REPEAT I B、REPEAT II AおよびREPEAT II Bと記した。縦の線は、同一ヌクレオチド配列を示す。配列の上に、図1に示されたIE−2CATプロモーター欠失の5’末端の位置も示されている。図2b IE2Bプロモーター因子の繰り返し配列のアラインメント。因子のie2転写開始部位に対する相対位置が番号で示されている。逆向きの因子はRで表す。図2bに示されるリピートAからIの位置は、図2aに括弧内の参照文字で表されている。図3 Ac ie1hr遺伝子、Op ie1遺伝子およびOp ie2遺伝子に由来するプロモーター領域を用いてβ−ガラクトシダーゼおよびゼオシン耐性遺伝子(ble)の発現用に構築されたベクター。異なる塗りつぶしパターンは異なるDNA配列を示す。構築物は実際の大きさに比例して描かれていない。図4a Kc1セルライン、SL2セルライン、およびSf9セルラインの様々な濃度のゼオシンでの増殖。ゼオシン濃度(μg/ml)が各セルラインについて図中に示されている。図4b 増加していくゼオシン濃度の存在下でのLd652YセルラインおよびCf1セルラインの生存率。ゼオシン濃度(μg/ml)が各セルラインについて図中に示されている。図5 pAcIE1hrZeo、pAcIE1ZeoBまたはpOpIE2ZeroBで形質転換されたKc1セルライン、SL2セルラインおよびSf9セルラインの様々なゼオシン濃度での増殖。各セルラインが保持するプラスミド構築物および使用されたゼオシン濃度(μg/ml)が図中に示されている。図6 ゼオシン耐性ベクターで形質転換され、増加していくゼオシン濃度で増殖させられたセルラインのゲノミックサザンブロット解析。セルラインおよび形質転換ベクター(ベクターがプローブとしても使用された)が各オートラジオグラフ上に示されている。レーンの上の数字は、培地中のゼオシン濃度(μg/ml)を示し、Kc1は形質転換されていない対照のレーンを示す。分子量マーカーがキロ塩基数で端に示されている。矢じりは、ゼオシン耐性遺伝子の大きさを示す。図7 クローニングシャトルベクターp2Zeoks。10個のクローニングサイトが示されており、アステリスク(*)はこの領域内の2ヶ所を切断するBamHIを示している。図8a ゼオシン耐性遺伝子シャトルカセットを含む昆虫セルラインタンパク質発現ベクター。各プラスミドは頭字語で記されている。pはプラスミド、1Z/2Zはゼオシン耐性遺伝子の発現を行うie1プロモーターまたはie2プロモーター、Op2はタンパク質発現カセット中のie2プロモーター、Mtnはタンパク質発現カセット中のキイロショウジョウバエメタロチオネインプロモーター、AはpAシグナル配列を含まないこと、CはSV40アーリー遺伝子pAシグナル配列、Fはie2遺伝子pAシグナル配列、Bbxはボンビキシン(bombyxin)分泌シグナル、Hbmはミツバチメラチン(mellatin)分泌シグナルである。構築物は実際の大きさに比例して描かれていない。図8b 特別な昆虫セルライン発現ベクター。構築物は実際の大きさに比例して描かれていない。lacOはlacオペレーター配列、H6は6個のヒスチジンアミノ酸、T7はT7ポリメラーゼにより同定される配列、lacRはlacI遺伝子および核移行シグナルをコードする断片、tetOはテトラサイクリンオペレーター配列、tTaはテトラサイクリン転写活性化因子、rTaは逆テトラサイクリン転写活性化因子、UASは上流活性化因子配列である。その他の記号は図8aと同様である。図9 レポーター遺伝子構築物であるp2ZMtnFβ−Galまたはp2ZOpAβ−Galのいずれかで一過性形質転換されたキイロショウジョウバエKc1セルラインおよびSL2セルラインにおける、CuSO4によるβ−ガラクトシダーゼ活性の誘導。パネルAは、細胞ペレット中に存在する酵素活性を示し、パネルBは対応するウェスタンブロット解析を示す。図10 pZOp2Aβ−Galレポーター構築物で形質転換された安定的なクローナル昆虫セルラインおよびポリクローナル昆虫セルラインのゲノミックサザンブロット解析。クローナルSL2系由来のDNAを含むレーンは、SL−C.♯で表され、ポリクローナルセルラインは−PCで表されている。各レーンのセルラインDNAは以下の通りである。SfはスポドプテラフルギペルダSf9、Ldはリマントリアディスパー(Lymantria dispar)(マイマイガ)Ld652Y、SLはキイロショウジョウバエSL2である。形質転換されていないSL2(SL),Sf9(Sf)およびLd652y(Ld)に由来するDNAを含むレーンも示されている。レーン1および2は、それぞれEcoRIまたはPtI−SalIで分解されたDNAをさす。パネルB.2はSf−PCおよびLd−PCのレーンのバンドを増強するためパネルB.1の一部をより長時間感光したものである。左端の矢じりはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(レーン1)およびゼオシン耐性遺伝子(レーン2)の位置を示している。図11 一過性発現したヒトメラノトランスフェリン(p97)(パネルA)、またはMtn(p2ZMtn97)で形質転換し、500μM CuSO4で+/−誘導した後、もしくはie2(p2ZOp2C97)プロモーター−p97遺伝子構築物で形質転換した後の安定的に形質転換された昆虫セルライン中のヒトメラノトランスフェリン(p97)(パネルB)のウェスタンブロット解析。各レーンのセルラインタンパク質は以下の通りである。KcはキイロショウジョウバエKC1、SfはS.フルギペルダSf9、LdはL.ディスパーLd652Y、SLはキイロショウジョウバエSL2である。p97対照のレーンは部分精製されたバキュロウイルス発現p97タンパク質を含む。図12a 形質転換されたSf9細胞の表面上の組換えヒトメラノトランスフェリン(p97)の免疫蛍光位置決定。図12b メラノトランスフェリン(p97)遺伝子から作製され、天然のp97構築物およびニワトリ類似体と比較された欠失構築物。図12c p97欠失構築物のウェスタンブロット解析。ブロットの左側はペレットサンプルを含み、ブロットの右側は対応する上清サンプルを含む。サンプル120.6は上清サンプル中に存在する。図12d 100mlのスピナーフラスコ中で増殖させられた欠失構築物120.6の増殖中の分泌型p97の産生。生存率は左側の縦軸を利用しており、1は100%と等しい。図12e 図12dの欠失構築物120.6の増殖期に採取された上清サンプルのウェスタンブロット解析。Sfは陰性対照、p97は陽性対照である。図13a 様々な昆虫セルラインまたはバキュロウイルスで発現した組換えイオントランスポートペプチドの生物学的活性。アッセイで使用された上清の量が括弧内に示されている。図13b 第X因子構築物で一過性形質転換された、または安定的に形質転換されたポリクローナルセルラインから採取された上清サンプルのウェスタンブロット解析。図14 昆虫セルラインにおけるタンパク質発現用のトランスポゾンを基礎としたベクター。矢じりは逆位繰り返し構造の方向を示している。図15 トランスポゾンを基礎としたタンパク質発現カセットの誘導および増幅の系の概略図。図16a Pトランスポゾンを基礎としたレポーターベクターpDM79OPIE2で形質転換されたSL2MT△2−3ポリクローナルセルラインによるβ−ガラクトシダーゼの数ヶ月にわたる継続的発現。形質転換前に、250μM CuSO4に曝すことによりトランスポザーゼ産生を誘導した。次に、細胞を遠心分離により収集し、形質転換し、何も追加していないTC−100+7.5%胎児ウシ血清培地(−△−)または100 CuSO4を含む培地(−▲−)、100 CuSO4+1mg/ml G−418(−■−)または1mg/ml G−418(−●−)に播いた。18週間後、G−418耐性セルラインを分割し、抗生物質による選択圧の存在下(−■−、−●−)または非存在下(−□−、−○−)で培養した。図16b ベクターpDM79IE−2で形質転換された安定的なセルラインに由来するレスキュー(rescue)されたP因子末端の配列。太字の配列はベクターの配列であり、普通文字はセルライン由来の染色体DNAである。下線で示された分節は8bpの二重化された領域である。染色体配列およびP以外の配列はいずれも、元のベクター由来ではなく、転移イベントが起こったことが証明された。図17 Pトランスポゾンを基礎としたレポーターベクターpDM79IE2GFPで形質転換されたSL2MT△2,3ポリクローナルセルラインによるグリーンフルオレセントプロテインの発現。〔詳細な説明〕昆虫セルラインの成長および生存性におけるゼオシンの効果ゼオシンが、これらの異種昆虫目から得たセルラインに対する標準培養条件で毒性があるかどうかを確認するために、ジプテラン(D.Melanogaster)セルラインKc1およびSL2、および鱗翅目セルラインSf9(エス.フルギペルダ(S.Frugiperda))、Ld652Y(エス.ディスパー(L.dispar))およびCf1(クロストネウラ.フメフラナ(Choristoneura fumeferana))を、ゼオシンに対する感受性について試験した。ゼオシンは二本鎖の破壊を誘導するDNAに結合させることによって、その毒性特性を発揮すると考えられる。このような鎖切断は、すぐに、連続細胞分裂に干渉するDNA複製の中断によって成長を阻害すると考えられる。したがって、すでに分裂に関与した細胞は、DNA複製の次の周期までゼオシンによって影響されることは予測されない。したがって、ゼオシンで処理された細胞は、一端分離するが、それらのDNAが無傷でないので、さらなる有糸分裂に耐えることができないことが予測される。ゼオシンの作用の機構の現在の理解によって、ゼオシンの最小阻害濃度は、1回の二倍増まで培養を限定するために必要とされる抗生物質の量としてここに記載される。Kc1、SL2およびSf9セルライン(図4a)でのゼオシンの阻害濃度を決定するための成長曲線は、27℃で、10%胎児ウシ血清(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、米国、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD、U.S.A.))を有する1mlのTc−100完全培地(pH=6.2)、0.5−1.0×106細胞および可変濃度のゼオシン(インビトロゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California))を含有する1.5mlの遠心分離管を回転させて行った。サンプルを、毎日取出し、0.4%トリパンブルーで染色し、そして生育可能な細胞の数を血球計測器を用いて4重複写物で測定した。Ld652YおよびCf1セルラインに影響を及ぼす最小阻害ゼオシン濃度を、200μlのTC−100完全培地+10%胎児ウシ血清+ゼオシンの総容量で、96穴マイクロタイタープレートのウエルにおよそ5,000細胞を種付けすることによって測定した。個々のウエルを、毎日死滅させ、そして0.4%トリパンブルーで染色して、細胞生存性を測定した(図4b)。D.MelanogasterセルラインKc1およびSL2、およびエル.ディスパー(L.dispar)Ld652Yセルラインは、ゼオシンに対して高度に感受性があり、そしてSL2セルラインの成長は、Kc1のものと同じくらい重度に阻害されはしないが、10μg/mlのゼオシン濃度で成長速度を劇的に減少することを示した。50μg/mlおよび75mg/mlより大きいゼオシン濃度は、それぞれ、Kc1およびSL2セルラインと1回以上の周期の細胞分裂を阻害した。Sf9およびCf1セルラインは、ゼオシンに感受性がなく、そして少なくとも250μg/mlの必要とされる濃度は、さらに細胞分裂を完全に阻害する。800および250μg/mlのゼオシン濃度は、それぞれ、Hi5(ティー.ニ(T.ni))およびC6/36(蚊)セルラインの成長を阻害することが分かった。これらの結果は、ゼオシンが、異種昆虫目から得た昆虫セルラインのための選択系で使用するための候補抗生物質であることを開示する。このような選択系の経路の生育性は、そのような細胞にゼオシン耐性を供与する異種遺伝子から得たそのようなセルラインで適切な発現を首尾よく指示するプロモーターの、以下に検討される同定法に依存する。プロモーター発現を試験するためのベクターの構築様々な双翅類および鱗翅目昆虫セルラインで選択されたプロモーターの効率を評価するβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を使用した。これは、抗生物質耐性または他の異種タンパク質をコードする遺伝子の発現についてそれらを使用する前に、昆虫セルラインでの数種の異なるプロモーターの強度を評価および比較することに備える。プロモーター発現を試験するためのベクター(図3に示される)を、様々なバキュロウイルス即時型遺伝子から由来したプロモーターの下流に、プラスミドpDM79(MismerおよびRubin、Genetics、116:565−578(1987年))からβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を挿入することによって構築した:Ac MNPVie1遺伝子から得たAc ie1プロモーター(Cartierら、J.Virol.、68:7728−7737(1994年)で特徴づけられる);Op MNPVie1遺伝子から得たOpie1プロモーター(TheilmannおよびStewart、Virology、180;492−508(1991年)で特徴づけられる);および、Op MNPV ie2遺伝子から得たOp ie2プロモーター(TheilmannおよびStewart、Virology、187;84−96(1992年)で特徴づけられる)。さらに、SV40およびCMV初期遺伝子(インビトロゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California)から入手可能な市販のベクターから得た)から得た哺乳類ウイルス性プロモーターを、昆虫細胞での発現レベルについて試験した。プロモーター発現を試験するためのこれらのベクターの構築は、以下に開示される。Ac ie1プロモーターを、以下のとおり構築されたプラスミドpAcIE1hrβ−gal内で試験した。D.Melanogasterアルコールデヒドロゲナーゼ5’未翻訳領域およびAUG翻訳開始部位、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、およびSV40転写ターミネーターおよびポリアルデヒド化シグナル(pA)を含むプラスミドpDM79から得た4.2kbのEcoRIフラグメントを、プラスミドpBSIIKS(ストラタジーン社(Stratagene Inc.)、米国カリフォルニア州ラホーラ(La Jolla、CA. U.S.A.))にサブクローン化させた。起点の決定後、PstI−SalIフラグメントを、pIEhr/PAのPstI−SalI部位にクローン化させた(Cartierら、J.Virol. 68:7728−7737(1994年))。これは、β−ガラクトシダーゼ転写融合遺伝子の上流にAc ie1プロモーターおよびエンハンサー要素(hr5)に配置する。Op ie2プロモーターを構築し、転写開始位置に比較して位置−661から+315までのOp ie2プロモーター配列を含んだプラスミドpOpIE2β−galで試験した(図2a参照)。このベクターで、Op ie2遺伝子の第一の94アミノ酸を、β−ガラクトシダーゼ遺伝子に、そして配列番号11:AATAAAAの最初のAが位置+1として設計される、Op ie2ポリアデニル化シグナルに比較して−95から+131までの位置から由来する3’配列に融合させる。これらの配列を、ベクターpBSKS+(ストラタジーン社(Stratagene Inc.)、米国カリフォルニア州ラホーラ(La Jolla、CA. U.S.A.))のPstI−EcoRI部位にクローン化させた。Op ie1プロモーターを、Opie1プロモーターを含むOpMNPVie1遺伝子から得た598bpSalI−BamHIフラグメントを、β−ガラストシダーゼ遺伝子の上流のpDM79(MismerおよびRubin、Genetics、116:565−578(1987年))のSalI−BamHI部位に挿入することによって構築されるプラスミドpDM790pIE1で試験した。pDM790pIE1ベクターから得た発現アッセイの結果との直接的比較を容易にするために、Op ie2プロモーターを、pDM79ベクターバックグラウンドに入れた。Op ie2プロモーターを含むOpMNPVie2遺伝子から得た700bpのHindIII−BamHIフラグメントを、pBSIIKS(ストラタジーン社(Stratagene Inc.)、米国カリフォルニア州ラホーラ(La Jolla、CA. U.S.A.))にサブクローニングすることによって、pDM790pIE2と示されるこの関連のベクターを構築した。この構築物を、SalIおよびBamHIで切断し、そしてOp ie2プロモーターを含むSalI−BamHIフラグメントを、pDM79のSalI−BamHI部位にクローン化させた。プロモーター宿主範囲および効力を試験するg種々のバキュロウイルスプロモーターの相対的強度を、上に記述される構築物:pAcIE1hrβ−gal、pOpIE2β−gal、pDM790pIE1、pDM790pIE2を用いて一過性形質転換発現アッセイで試験した。双翅類D.MelanogasterセルラインKc1およびSL2、および鱗翅目セルラインSf9(エス.フルギペルダ(S.Frugiperda))およびLd652Y(エル.ディスパー(L.dispar))を、これらのベクターの各々に形質転換させた。Kc1、SL2、Ld652YおよびSf9セルラインは、ATCC(米国メリーランド州、ロックビル(Rockville,MD,U.S.A.))から得、そして27℃で10%胎児ウシ血清(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、米国、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD、U.S.A.))で補足したTC−100完全培地で維持した。製造業者のプロトコールにしたがってセルフェクチン(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、米国、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD、U.S.A.))を用いてセルラインの形質転換を行った。セルライン形質転換についてのプラスミドDNAを、CsCl勾配で精製した。2マイクログラムのプラスミドDNAおよび5μlのセルフェクチンを、未補足のグレースの昆虫用培地(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD))中で個々の0.5mlアリコート量として製造し、混合し、そしてその後30分間20℃でインキュベートした。およそ1.0×106細胞を収穫し、ベンチトップ遠心分離で500rpmでペレット化させ、そして5.0mlのプラスチック製試験管内で1.0mlのセルフェクチン/DNA溶液中で穏やかに再懸濁させた。試験管を、細胞がペレット化し、そして10%FBSおよび1×抗生物質−抗菌剤混合物(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD))を補足した3.0mlのTC−100中で再懸濁させる時間である4時間、27℃で水平にインキュベートした。形質転換後、細胞を、6穴組織培養プレートに移行させ、そして27℃でインキュベートした。プラスミドDNAの導入のおよそ48時間後、β−ガラクトシダーゼ活性を、500rpmで0.5mlの細胞をペレット化させ、60mlの0.25MトリスHCl(pH7.4)に再懸濁させ、そして3回凍結−解凍させることによって測定した。細胞の残骸を、微量遠心分離で14,000×gでペレット化させ、そして5−50μlを標準方法(Miller、分子遺伝学についての実験(Experiments in Molecular Genetics)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、米国ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,NY,USA)、(1972年))にしたがって活性について分析した。β−ガラクトシダーゼアッセイの結果を、以下に記述し、そして関連の酵素速度を、表1に要約した。表1。種々のバキュロウイルスプロモーター−レポーター構築物を用いた昆虫セルラインでの相対的β−ガラクトシダーゼ発現内融合pDM790pIE1発現ベクターと形質転換させたKc1、SL2およびSf9セルラインは、8−30単位のβ−ガラクトシダーゼ活性を生じた。pDM790pIE1発現ベクターと形質転換したセルラインは、70−200単位のβ−ガラクトシダーゼ活性を生じた。このアッセイの予想しない結果は、pDM790pIE2ベクター(Op ie2プロモーターを有する)が、pDM790pIE1ベクター(Op ie1プロモーターを有する)より5−10倍多い活性を生じたことである。Op ie2プロモーターは、様々なベクターバックグラウンドでいっそう活性であった。pOpIE2β−galで形質転換したセルラインは、pDM790pIE2で形質転換したセルラインより10−100倍多いβ−ガラクトシダーゼ活性を生じた。800に近づくβ−ガラクトシダーゼ活性のレベルは、それぞれ、形質転換したLd652Y、D.MelanogasterおよびSf9セルラインで2,000と20,000単位が見られた。OpIE2β−gal構築物は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子を有するアミノ末端Opie2コーディング領域の間のフレーム内融合体から構成される。pOpIE2β−galを有するβ−ガラクトシダーゼ発現が増加すると、Op ie2遺伝子内の翻訳開始部位に即時に近傍の配列が、鱗翅目細胞での遺伝子発現の最大レベルを指向する上で重要であることを示す(表1)。この近傍の配列は、先に、他のバキュロウイルス初期遺伝子(BlissadおよびRohrmann、Virology170:537−555(1989年))で同定されたCAGTモチーフを含むが、しかし、図2aで同定されるとおり、翻訳開始部位を挟む配列も含まれる。D.Melanogasterセルラインでは、エンハンサーのないOp ie2プロモーター(ベクターpZOp2Aβ−galで)は、hr5エンハンサーを有するAc ie1プロモーター(ベクターpIEhrβ−gal中で)に適合性があるβ−ガラクトシダーゼレベルの発現を予想外に指向させた。エンハンサーのないOpie2(pZOp2Aβ−gal中で)も、hr5エンハンサーを有するAc ie1プロモーターに適合するβ−ガラクトシダーゼレベルを示した、形質転換Sf9セルラインと同様の結果が得られた。Op ie2プロモーター(pOpIE2β−gal中で)の活性は、D.MelanogasterセルラインにあるよりSf9セルラインで10倍と同じ程度に高かった。プラスミドpZeoSVlacZ(インビトロゲン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California,USA))が、形質転換ベクターとして使用されたとき、SV40プロモーター/エンハンサーは、試験した昆虫セルラインのいずれかで検出可能な活性を示さなかったことが分かった。これは、先に報告されたD.Melanogasterセルライン形質転換研究と一致する(BourouisおよびJarry、EMBO J.、2:1099−1104(1983年))。さらに、ゼオシン耐性遺伝子の発現を起動するCMVプロモーターを使用する、当初のpZeoSVベクターを用いたセルラインの形質転換(以下参照)は、ゼオシン耐性遺伝子の発現を起動するCMVプロモーターを用いており、ゼオシン耐性D.MelanogasterまたはSf9セルラインを生じ損なった。おそらく、哺乳類CMVプロモーターは、昆虫系で適切な転写を指向する能力がある。哺乳類セルラインでOp ie2プロモーターの行動は、製造業者の推奨にしたがって、セルフェクチン(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、米国、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD、U.S.A.))を用いたプラスミドpOpIE2β−galを用いて、ATCC(米国メリーランド州、ロックビル(Rockville,MD,U.S.A.))から得られた数種の哺乳類セルラインを形質転換させることによって決定された。これらのセルラインを、5%CO2下で37℃で10%FBSで補足したMEMまたはDMEM培地(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、米国、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD、U.S.A.))中に維持した。pOpIE2β−gal構築物を有するヒト(CaCO−2およびHEP−G2)、イヌ(MDCK)またはマウス(J774A10)ラインの形質転換の48時間後、β−ガラクトシダーゼ活性は観察されなかった。したがって、遺伝子移入プロトコールおよびβ−ガラクトシダーゼアッセイの限界内で、Op ie2プロモーターは、これらの哺乳類セルラインで機能すると思われない。ゼオシン耐性昆虫シャトルベクターの構築図3は、昆虫および細菌の両方でbleゼオシン耐性遺伝子の発現のために設計されたシャトルベクターの種々の実施形態を例示する。合成細菌EM−7プロモーターの直接上流にバキュロウイルス即時型プロモーターを配置することによって、これらのシャトルベクターを構築した。バキュロウイルス即時型プロモーターおよび原核細胞プロモーターを、ble遺伝子(ベクターpZeoSVから得た、インビトロゲン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California,USA))の下流に操作可能に結合させる。これらの新規シャトルベクターで、バキュロウイルス即時型プロモーターは、形質転換昆虫細胞にあるble遺伝子の発現を指向し、そしてその原核細胞プロモーターは、イー・コリ(E.coli)のような適切な原核細胞宿主での転写を指向する。他の原核細胞プロモーターは、これらの構築物中でEM−7プロモーターに置換される可能性がある。図3で示されるシャトルベクターの構築は、以下に記載される。2つのDNA領域の間の関係を記述する場合、「操作可能に結合された」は、それらが、互いに機能的に関係があることを意味する。例えば、プロモーター配列は、プロモーターが他の配列の転写を制御する場合別の配列に操作可能に結合される。プラスミドpAcIE1hrZeoを、pAcIE1hr/PAのPstI−SalI部位に、合成細菌EM−7プロモーターおよびゼオシン耐性遺伝子を含むpZeoSVから得た500bpのPstI−SalIフラグメントをクローニングすることによって構築した(Cartierら、J.Virol.68:7728−7737)。プラスミドpAcIE1ZeoBを以下のとおり構築した。BamHIでプラスミドpZeoSVを消化させて、SV40エンハンサー−プロモーターおよびポリアデニル化シグナル発現カセットを除去し、そしてその後、再ライゲートさせてpZeoBを形成した。エンハンサー要素なしにAcIE−1プロモーターを含むpAcIE1hr/PAから得た470bpのPstI−NheI(ヤエナリ(mung bean)のヌクレアーゼで平滑末端にされた)フラグメントを、EM−7プロモーターおよびゼオシン耐性遺伝子の上流にあるpZeoBのPstI−SspI部位に配置した。OpIE−2プロモーターを含有する500pbのPstI−BspHIフラグメントを、EM−7プロモーターおよびゼオシン耐性遺伝子の上流にあるpZeoBのPstI−BspHI部位に挿入することによって、プラスミドpOpIE2ZeoBを構築させた。ゼオシン耐性に対する昆虫セルラインの形質転換セルフェクチンを有するセルラインの形質転換を、上述のとおり行った。形質転換後、細胞を6穴組織培養プレートに移し、そしてさらに24時間、27℃でインキュベートした。この時点で、細胞を1:10に分離し、そしてゼオシン耐性セルラインを、150μg/ml(Kc1およびSL2)または500μg/ml(Sf9)のゼオシンを培地に添加することで選択した。これらの濃度は、これらのセルラインについて最小阻害濃度を越えて2−3倍増加することを表す。ディスペラン細胞に関して、これらの濃度は、ハイグロマイシンB選択法(200μg/ml;BlochingerおよびDigglemann、Mol.Cell.Biol.、4:2929−2931(1984年))に使用されるものと類似し、そして、G418−耐性の選択のために数回より少なく一般に使用される(500〜ら1000μg/ml;RioおよびRubin、Mol.Cell.Biol.、5:1833−1838(1985年))。非形質転換細胞形状の顕微鏡下の観察は、影響された細胞が、全体的に拡大し、最終的に完全な状態を失い、そして溶解することを示した。組織培養プレートの表面に正常に装着したままであるSf9およびLd652Yセルラインの場合に、溶解は、装着の損傷の後に来た。ゼオシン感受性細胞中のこの表現型は、かなり有利であり、そして、形質転換細胞を、コロニーを形成するために遊離させながら、非形質転換細胞をプレートの表面から排除したので、単一耐性形質転換コロニーの連続単離を助けた。自然発生的なゼオシン−耐性昆虫細胞が培地中に生じる頻度は、予想外に低い。プラスミドDNAの不在下で、または耐性遺伝子を保有しないプラスミドで行ったモック形質転換は、ゼオシン耐性昆虫細胞のいずれにも生じなかった。本発明のゼオシン選択系のこの予想外のそして有利な特徴は、G−418のような抗生物質を用いる選択系で報告される比較的高い自然発生的な耐性率と対照的である。形質転換の3〜4週間内に、細胞の耐性集団を生じた。その後、耐性細胞を、種々のゼオシン濃度で選択性条件下で元に戻される前に、数種の世代についての選択から取出した。個々のゼオシン耐性クローンを単離しなかった。ゼオシン耐性細胞を、ポリクローナル培養物として維持した。形質転換セルラインについての成長曲線を図5に示す。pAcIE1hrZeo構築物を保持するKc1およびSL2セルラインは、1.0mg/mlを超過する濃度でゼオシンに耐性である。細胞成長の速度は、抗生物質の濃度を増加させながら、基本的に区別可能である。これは、これらのセルラインについての最小阻害濃度を越えて、耐性に10−100倍増加を表す。hrエンハンサー配列を欠くAc ie1プロモーター構築物で形質転換したKc1セルラインは、エンハンサー要素を保持する対応のセルラインより低レベルの耐性を示した。hr要素が、Op ie2プロモーターと組合されている本発明の変異体が構築されることがこれから分かる。エンハンサー要素を欠くAc ie1プロモーターで形質転換したKc1セルラインでは、ゼオシン濃度が、500μg/mlを超過する場合に細胞増殖は観察されなかった。ゼオシン耐性遺伝子の転写を指向する際のOp ie2プロモーターの効力を測定するために、Kc1およびSf9細胞を、プラスミドpOpIE2ZeoBで形質転換した。得られたKc1セルラインは、1.0mg/mlを超過するゼオシン濃度に対して耐性がある。抗生物質の濃度が増加するときの成長速度は、pAcIE1hrZeo構築物と形質転換したKc1セルラインと類似する。Sf9形質転換セルラインは、細胞成長の適切な阻害なしに1.5mg/mlまでのゼオシンレベルで増殖させることができた。これは、エンハンサーのないOp ie2プロモーターが、hrエンハンサー要素を付随しなからAc ie1プロモーターと同様に機能するという驚くべき結果を示す。ゼオシン耐性に対して形質転換された昆虫セルラインのゲノム安定性先に注目したとおり、多くの既知選択系は、形質転換DNA配列が、抗生物質選択の存在下で増幅されるという歓迎されない特徴を示す。これらの増幅DNA配列は、不安定である可能性があり、そして連続的選択の不在下で迅速に失われやすい。この選択は、本発明によって、ゼオシン耐性に対して形質転換された昆虫セルラインでの形質転換配列の安定性を立証する実験を開示する。本発明のセルラインでDNA配列を形質転換する安定性を評価するために、ゼオシン耐性形質転換セルラインを選択し、その後数世代(2〜3週)の間成長し、その後、再度様々の濃度のゼオシンでの選択下で入れ、そして初期定常期(およそ6〜8日)まで成長した。その後、サザンブロッティングを使用して、形質転換DNA配列の安定性を評価した。その後、総ゲノムDNAを、以下のとおりセルラインから単離した:およそ5−10×106細胞を含有する1.5mlアリコート量を、3分間微量遠心分離で、低速度でペレット化させた;細胞ペレットを、0.5ml HB緩衝液[7M尿素、2%SDS、50mMトリスHCl(pH=7.5)、10mM EDTAおよび0.35M NaCl]中に再懸濁させた;生じた溶液を、0.5mlのフェノール−クロロホルム(1:1)で3回抽出させ、そしてDNAを、1/10容積の3M酢酸ナトリウムおよび0.6容積のイソプロパノールを添加させることで沈殿させた;DNAを真空中で乾燥させて、100μlのTE緩衝液[10mMトリスHCl(pH=8.0)、1mM EDTA]に再懸濁させ、そして30分間、37℃で1μlの10mg/ml RNAse(シグマ(Sigma)、ミズーリー州セントルイス(St.Louis,MO))で処理した。DNAを再懸濁させ、70%エタノールで洗浄し、真空で乾燥させ、そして50μlのTE緩衝液で再懸濁させた。5マイクログラムの総ゲノムDNAを、PstIおよびSalIで消化させ、アガロースゲル電気泳動によって分離し、そしてナイロン膜上にブロットした(Sambrookら、1989年)。プローブとして本発明の全プラスミド構築物を用いて、ECL化学発光システム(アマシャム(Amersham)、英国)でサザンブロット分析を行った。ゼオシン構築物で検知された非形質転換SL2およびSf9セルラインDNAのサザンブロットは、なんらハイブリダイゼーションシグナルを示さなかった。形質転換セルラインから得た総ゲノムDNAのサザンブロット分析は、形質転換構築物が、ゲノムDNAに安定に組込まれたことを示す(図6)。セルラインのポリクローナル特性のために、いくつかのバンドは、各レーンで観察される。しかし、バンドの数および強度は、ゼオシン濃度を増しながら定常性を残しており、ポリクローナル集団が、安定であること、そして遺伝子増幅は、ゼオシン耐性を増加させるために選択されないことを示す。したがって、本発明の構築物にあるゼオシン耐性遺伝子の発現を指示するのに使用されたOp ie2およびAc ie1hrプロモーターは、ゼオシンの濃度が上昇して耐性についての十分な遺伝子産物を提供すると結論づけるものがいる。これらの結果は、本発明の予想外の利点、すなわち、形質転換DNA配列の安定性を示す。本発明のセルラインでの形質転換DNAの安定性は、その増殖、および付随のゲノムの不安定性が、先行文献の選択系を用いた場合に起こりうる頻度を開示する上に検討された先行文献の報告と対照的である。ゼオシン耐性シャトルベクターの構築ゼオシン耐性シャトルベクターp2ZeoKsを以下のとおり構築した(図7)。pBSIIKSから得た多重クローニング部位の一部を含む83bpのApaI−NotIフラグメントを、pZeoBのApaI−NotI部位に挿入し、プラスミドpZeoBKSを作製した。その後、pZeoBKSプラスミドを、NotIおよびPstIで消化させ、そして生じた750bpのフラグメントを、pOpIE2ZeoBの1340bpのNotI−PstIフラグメントにライゲートして、シャトルベクターp2Zeoksを得た(図7)。p2Zeoksベクターは、Op ie2遺伝子プロモーターを、当初のpZeoSVベクターから得た、昆虫細胞でのbleゼオシン耐性遺伝子および小型合成EM−7原核細胞プロモーターの発現を起動させるのに利用して、イー・コリのような原核細胞宿主での発現を指向させた。20−25μg/mlゼオシンでの修飾LB(10g/lトリプトン、5g/l酵母抽出物、5g/l塩化ナトリウム、pH7.5)を用いて、形質転換したイー・コリクローンの選択を行うこともできる。昆虫セルラインでの選択は、D.Melanogasterセルラインについては150μg/mlゼオシン、Sf9細胞については250μg/mlゼオシンの存在下で達成することができる。p2Zeoksベクターは、比較的小さく(2090bp)、それは、ベクターにクローン化できる異種配列の大きさを最大限にする。このような異種配列は、クローニングに利用可能な10個の特徴的な制限酵素部位(BamHI、XhoI、ClaI、HindIII、EcoRV、EcoRI、SpeI、XbaI、NotIおよびSacII)を有する多重クローニング部位に挿入できる。構築的昆虫タンパク質発現シャトルベクターの構築p2Zの一連の構築的昆虫発現シャトルベクター(図8a)は、クローニングおよびシャトルベクターp2ZeoKS(図7)から由来する。一連のp2Zは、本発明のベクターが、選択性マーカー遺伝子に操作可能に結合した、バキュロウイルス即時型プラスミドおよび原核細胞プロモーターから構成される化合物プロモーターを使用できることを示す。図8の一連のp2Zで、Op ie2またはOp ie1プロモーターを、ble遺伝子の発現を起動する合成細菌EM−7プロモーターと組合せ、そして昆虫細胞およびイー・コリの両方でゼオシンに対する耐性を付与する。このキメラプロモーターは、イー・コリ、D.MelanogasterセルラインKc1およびSL2、鱗翅目セルラインSf9およびLd652Y並びに蚊セルラインを含めた広範な宿主でゼオシン耐性を指向する能力がある。一連のp2Zのベクターの構築は、以下に記述される。p2ZOp2Aを構築するために、追加のOp ie2プロモーターを、以下のとおりp2ZeoKSに挿入した。プラスミドp2ZeoBを、BamHIで切断し、5’オーバーハングを、クレノーDNAポリメラーゼを用いてdNTPで充填させ、そしてその後、NotIで切断した。Op ie2プロモーターを含むpOpIE−NBamHI(TheilmannおよびStewart、Virology、187:84−96(1992年))から得たHindIII/BamHIフラグメントを、pBKSIIのHindIII/BamHI部位にサブクローニングした。この構築物を、HindIIIで切断し、dNTPを有するクレノーDNAポリメラーゼを用いて平滑末端にし、その後NotIで切断した。Op ie2プロモーターを含んだこのフラグメントを、上から得たpZeoBベクターにライゲートして、p2ZOp2Aを生成した。この新規な構築物は、Op ie2プロモーターの下流に6個の特徴的な制限酵素部位を含む多重クローニング部位を保持する。このベクターは、広範な昆虫セルライン中にポリアデニル化シグナル(pA)を保持する全長cDNAまたはプロモーターなしの遺伝子の発現に適切である。pAシグナルを欠く遺伝子の発現を容易にするか、または異種遺伝子発現でのmRNA安定化シグナルの効果を試験するために、我々は、SV40初期遺伝子pAシグナル(p2ZOp2C)またはOp ie2遺伝子pAシグナル(p2ZOp2F)を有するp2ZOp2Aベクターの変異体を作製した。pZeoSVから得たSV40初期遺伝子pAシグナル配列を含むEcoRI/SacIIフラグメントを、p2ZOp2AのEcoRI/SacII部位に挿入することによって、プラスミドp2ZOp2Cを構築した。プラスミドp2ZOp2Fを以下のとおり構築した。Op ie2遺伝子から得たpAシグナル配列を、オリゴヌクレオチド(5’から3’までと示される)配列番号2:CCGCGGATCGATATCTGACTAAATCTTAGTTTGTATTGTCATGTおよび配列番号3:CGGGTGCGCACGCGCTTGAAAGGAを用いたPCRによって増幅させた。PCR産物を、T4 DNAポリメラーゼを用いて平滑にさせたpsZOp2AのSacII部位にクローン化した。多重クローニング部位を、2組の相補的オリゴヌクレオチドを用いて伸長させた。第一組(配列番号4:AATTTAAACGTTGGTACCCTCGAGCTCAGCTGAATTCTGGATCCTおよび配列番号5:CTAGAAGGATCCAGAATTCAGCTGAGCTCGAGGTACCAAGCTTTA)をアニーリングさせ、そしてEcoRI/XbaI部位に挿入させ、そして第二の組(配列番号6:CTAGACCGGTCATATGCGGGCCGCGGATCGATCGATおよび配列番号7:ATCGATCGATCCGCGGCCGCATATGACCGT)を、XbaI/EcoRV部位に挿入させた。我々は、これを一般に使用されたrecイー・コリ宿主と対抗させなかったが、p2ZOp2C中の2つのSV40pAシグナルのような同じベクターでの相同性配列の存在が、相同性SV40pA配列の間の組換えが起こりうる可能性を起こさせる。当業者は、昆虫由来のpAシグナルの使用が、昆虫に機能的に有利にする可能性があることを理解する。したがって、13個の特徴的な制限酵素部位を有する伸長した多重クローニング部位(MCS)を、Op ie2pAシグナル配列を保有するF由来ベクターに組込んだ。さらに、これらのベクターは、切断遺伝子の発現をさせる全ての3つのリーディングフレームにある翻訳終止コドンをも含む。プライマー配列番号8:5’TCGGGTGCGCACGCGCTTGAAAGGA3’は、Op ie2pAシグナル配列に特異的であり、そしてフレーム内融合領域をシーケンシングするのに使用され、そして指示された3’欠失シリーズの分析に有用である。同じベクター内の相同性配列をさらに排除するために、外来遺伝子発現を指向するのに唯一利用できるOp ie2プロモーターをさらに活性化させるゼオシン耐性遺伝子を起動するOp ie1プロモーターを使用するp1Zシリーズを、開発した。ベクターp1ZOp2Aを、Op ie1プロモーターを含むpOPIE−1B74BamHI(TheilmannおよびStewart、Virology、187;84−96(1992年))から得たSalI/BamHIフラグメントをクローニングすることによって生成し、一過性ベクターのSalI/BglII部位にクローン化した。続いて、ゼオシン耐性遺伝子を指向していたOp ie2プロモーターを置換するNruI/PstIフラグメントをp2ZOp2AのBspHI(クレノーDNAポリメラーゼを用いてdNTPで平滑末端にした)/PstI部位に挿入した。p2ZOp2FのMCSを含む700bpのHaeIIフラグメントを、pIZOp2AのHaeII部位に挿入することによって、プラスミドp1ZOp2Fを作製した。非選択性昆虫発現ベクターの構築Opie2プロモーターの転写下で、しかしゼオシン耐性遺伝子の存在なしに、異種タンパク質を産生する安定なセルラインの選択を可能にするために、別のベクターを構築した。pAMp2Eと称されるこのベクターを以下のとおり構築した(図8a)。多重クローニング部位昆虫ポリA尾部およびColE1区分であるOpie−2プロモーターを含むp2ZOp2Eから得た1553pbのBspHIフラグメントを、アンピシリン耐性遺伝子を含むpBluescriptIIksから得た1.0kbのBspHIフラグメントにライゲートした。B−ラクタマーゼ遺伝子は、アンピシリン選択下で細菌中での選択に必要とされる耐性を供するが、昆虫細胞中での選択のための選択性マーカーは提供されない。このベクターpAMp2Eは、異種タンパク質発現を指向する能力を有し、そしてG418、ハイグロマイシン、メトトレキセートまたはゼオシン耐性遺伝子の存在を示さない同時形質転換実験での他の選択ベクターのような他の選択ベクターと共に使用される可能性がある。ゼオシン選択が可能でない状況で、おそらく、ゼオシン耐性遺伝子を伴うセルラインの先の選択のため、このベクターは、このセルラインの安定な形質転換に利用可能なあらゆる他の選択マーカーで選択しながら異種タンパク質の産生を可能にする。安定な選択セルライン中でタンパク質産生を最大限にするような比率で、あらゆる選択ベクターを伴う異種タンパク質産生ベクターの混合物も考慮する。ベクターのこのような比率は、1:1、2:1、5:1、10:1または最大量の異種タンパク質を産生する安定なセルラインを選択するあらゆる他のこのような組み合わせのような異種発現対選択ベクター比率に関与する。分泌タンパク質発現シャトルベクターの構築異種タンパク質を培養培地に分泌する能力は、タンパク質のプロセシングの下流に有益なものである。本出願でのいくつかの実施例は、昆虫細胞が、多量の異種タンパク質を分泌する能力があることを示す。基本書(メラノトランスフェリン、トランスフェリン、ITP)ですでに示されているシグナルのものの分泌に加えて、ボンビキシンおよびミリチン分泌シグナルの両方を、ベクターに加えた(図8a)。以下の2つのオリゴヌクレオチド配列番号14:BBXF5’−AATTATGAAG ATACTCCTTG CTATTGCATT AATGTTGTCAACAGTAAT GTGGGTGTCA ACAAGCTTA−3’および配列番号15:BBXR5’−CTAGTAAGCT TGTTGACACC CACATTACTGTTGACAACAT TAATGCAATA GCAAGGAGTA TCTTCATをアニーリングすることによって、ボンビシキン分泌シグナルを製造した。このアニールしたフラグメントを、p2ZOp2DのEcoRI/BamHI部位に挿入した。この中間体を、HindIII/Pstで切断し、そしてMCS、ori、およびie−2プロモーターを含むp2ZOp2FのHindIII/PstIフラグメントにアニーリングして、p2ZOp2Gを作製した。蜜蜂のメリチン分泌シグナルを、ベクターpRSETB−HBM(インビトロゲン(Invitrogen)、米国)から50bpのNdeI(TNPおよびクレノーで部分的に充填した)/EcoRIフラグメントとして取出した。これを、HindIII(dATP、dGTP、dCTPおよびクレノーで部分的に充填した)およびEcoRIで切断したp2ZOp2Fにライゲートし、そして上のフラグメントにライゲートしてp2ZOp2Iを作製した。誘導性昆虫タンパク質発現シャトルベクターの構築外来タンパク質の発現、特に真核細胞種境界を越えて機能を維持するものは、総タンパク質発現が相当に減少されるような範囲まで細胞生理学を破壊することができる。これらの有害なタンパク質は、生理学的に耐性なレベル内にタンパク質の量を維持する誘導性プロモーターを用いてセルライン系で産生することができる。例えば、hsp70プロモーターを使用して、ゲートで制御した塩素イオンチャンネルの発現を指向させ(Shotkoskiら、FEBS Lett.、380:257−262(1996年))、そしてMtnプロモーターを使用して、ヒトH−ras癌遺伝子の発現を制御した(Johansenら、Genes Develop.、3:882−889(1989年))。本発明の誘導性昆虫発現シャトルベクターを構築するために、dNTPを伴うクレノーDNAポリメラーゼを用いて平滑末端にされたMtnプロモーターを含むpMT−1(Kovachら、Insect Mol.Biol.、1:37−43(1992年))から得た500bpのSalI/EcoRIフラグメントを、すでに平滑にされたp2ZeoBのBamHI部位に挿入することによって、p2ZMtnFベクターに組込んだ。生じたベクターであるp2ZMtnを、XbaIで切断し、dNTPを有するクレノーDNAポリメラーゼを用いて平滑末端にし、そしてその後、PstIで再切断して、ゼオシン耐性遺伝子およびMtnプロモーターを含んだフラグメントを得た。このフラグメントを、伸長したMCSおよび複製の起点を含むp2ZOp2FのPstI/HindIII(クレノーDNAポリメラーゼおよびdNTPを用いて平滑にした)フラグメントにライゲートして、p2ZMtnFベクターを得た。p2ZMtnFベクターは、Op ie2 pAシグナルと同様に効果的なクローニングのための伸長MCSを含み、そしてD.Melanogasterおよび蚊のセルラインを含めた昆虫セルラインでの制御された誘導性移入遺伝子発現を提供しうる。本発明のベクターにある誘導性プロモーターとしてMtnプロモーターを使用することは、hspプロモーターを使用することより利点がある可能性がある。例えば、タンパク質は、宿主の生理学に劇的な影響を及ぼすことなく、プロモーターを誘導する低レベルのカドミウムまたは銅塩を用いて、Mtnプロモーターから連続的に産生することができる。対照的に、hsp70プロモーターは、構築的に低レベルの産物およびを生成し、そして誘導は、細胞成長を害しうる経時的な加熱ショック(BergerおよびRudolph、脊椎動物の細胞系の応用、CRCプレス社、フロリダ州ボカラトン(Boca Raton,FL)(1989年))を必要とする。LacO/LacR誘導性システムの構築lacレプレッサー系を利用する誘導性発現ベクターを構築した。昆虫細胞でこの系の有効性を評価する、および極度に毒性のあるタンパク質の綿密な制御を供する両方の2つのベクターを構築した。lacO領域、リボソーム結合部位、Hisに続くATG翻訳開始コドン、およびT7タンパク質タグを含むpET28a(ノバジェン(Novagen))から得た235bpのBglII/NotIフラグメントを、p2ZOp2FのBamHI/NotI部位にクローニングすることによって、プラスミドp2ZOp2J−1を構築した。毒性のあるタンパク質については、このベクターは、lacレプレッサーが存在する場合に細菌中の潜在性ie−2プロモーター活性の調節についても付与する。プラスミドp2ZOp2J−3を以下のとおり構築した。3つの内部lacO領域を伴うSV40イントロンを含むpOP13CATから得たBglII/NotIフラグメントを、p2ZOp2AのBamHI/NotI部位にクローン化した。この中間体から、SV40イントロン/lacOの組合わせを含むPstI/NotI(クレノーおよびdNTPで平滑にした)フラグメントを、単離し、そしてp2ZOP2FのPstI/PvuIIフラグメントにライゲートして、p2ZOp2J−39を得た(図8b)。lacレプレッサーを発現するベクターは、以下の方法で構築した。lacレプレッサーを含有するフラグメントを、以下のプライマー配列番号12:5’−TCAGCTGCAG ATGAAGAGGC CTAGACCTAT GAAACCAGTA ACGTTATACG ATGTC−3’;および配列番号13:5’−ACTTAAGCTT ATAGCGATGA CTGCCCGCTT TCCAGTCGGG AAACCTGTCG−3’を用いて、lacI含有ベクターpet21(ノバジェン(Novagen))から増幅させた。第二のプライマーは、lacレプレッサータンパク質を核に指向させるために必要とされる核局在シグナル配列を含む。このフラグメントを、PstI/HindIIIで切断し、そしてpOp1/pAのPstI/HindIII部位に挿入して、pOp1lacRを得た(図8b)。Tet系の構築Tet系は、イー・コリTn10トランスポゾンのテトラサイクリン−耐性オペロンから由来した2つの調節要素:tetレプレッサータンパク質(TetR)およびTetRが結合するTetオペロンDNA配列(tetO)に基づいている。この系は、テトラサイクリンの添加が転写を終止させるときにTet−オフと一般に呼ばれる。代替のTetRは、テトラサイクリンの存在下で転写活性化を起こす数種のアミノ酸改変を含む。この系は、Tet−オンと称される。ベクターp2ZOp2Tは、Opie2プロモーターと、tetOの7つのコピーから構成されるキメラプロモーターを含む。これは、300bpのXhoI/SacI(T4ポリメラーゼおよびdNTPを用いて平滑にした)フラグメントをpTRE(クロンテック(Clontech)から取出し、そしてこれをpBKSOpIE−2のXhoI/NarI(クレノーおよびdNTPを用いて平滑にした)部位に挿入することによって構築される。これは、Opie−2プロモーターの最小プロモーター要素の上流にTetオペレーターを配置する。その後、このクローニング中間体から、TetO/Op ie−2プロモーターを含む800bpのXhoI(クレノーおよびdNTPを用いて平滑にした)/EcoRIフラグメントを、p1ZOp2FBspHI(dNTPを用いて平滑にした)/EcoRI部位に入れて、p1ZOp2Tを得た(図8b)。その系の第二の主要な構成要素は、tet−制御転写アクチベーター(tTA)として知られるハイブリッドタンパク質を発現する「調節」プラスミドである。tTAは、Tetオペレーター配列(tetO)を結合し、そしてそれにより、テトラサイクリンの不在下で転写を活性化させる。したがって、テトラサイクリンが培養培地に添加される場合、転写は、用量依存性方法で終止した。tTAをコードする1kbのEcoRI/BamHIフラグメントを、pTet−オフ(クローンテック、米国)から取出し、そしてp2ZOp2DのEcoRI/BamHI部位にクローン化させて、Tet−オフ系と比較しうるプラスミドp2ZOp2DtTAを得た(図8b)。Tet−オン(クローンテック)から得た1kbのEcoRI/BamHIフラグメントも、p2ZOp2DのEcoRI/BamHI部位にクローン化させて、Tet−オフ系と比較しうるプラスミドp2ZOp2DrtTAを得た(図8b)。Gal4制御系の構築gal4制御系は、2つの段階の系を用いて遺伝子の非常に密接な制御を付与する。異種遺伝子を、gal4遺伝子ファミリーから由来した上流アクチベーター配列(UAS)と、hsp70遺伝子から由来した最小プロモーターの組の後に配置させる。転写は、mtnプロモーターによって制御されるgal4遺伝子産物の存在を必要とする。いったんmtnプロモーターが活性化されると、gal4が作られ、そしてこれは、すぐにUAS部位を結合し、そして異種遺伝子の転写を活性化させる。gal4遺伝子を含むpGaTNから得た3kbのNotIフラグメントを、p2ZmtnFのNotI部位に挿入して、p2ZmtnFgal4を得た(図8b)。このベクターは、本特許で上に記述され、そしてgal4を発現するのに誘導されえたセルラインを構築するのに利用した方法を用いて、gal4遺伝子産物の発現を誘導するのに使用される。他の誘導性プロモーター系は、gal4の産生を起動するのに使用することもできる。ベクターp2ZUASmPF(図8b)を以下のとおり作製した。pP[UAST]から得た5個のUASを含む400bpのSphI(T4およびdNTPを用いて平滑にした)/XbaIフラグメントを、p2ZOp2FのBspHI(クレノーおよびdNTPを用いて平滑にした)/XbaI部位に挿入した。このベクターは、5個のUAS、最小プロモーター、多重クローニング部位を含み、そしてゼオシン下で選択を付与する。B−galレポーター構築物を作製するために、p2ZmtnFB−galから得た3kbのEcoRI B−galフラグメントを、EcoRI部位に入れて、p2ZUASmPFB−galを作製した。宿主スペクトラムおよび産生許容性を評価するためのレポーター遺伝子の発現β−ガラクトシダーゼまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターカセットのいずれかを含むプラスミドを構築(図8)して、多様な昆虫セルラインでの本発明の発現系の有用性を評価した。各々のタンパク質発現ベクターの構築を以下に説明する。D.Melanogasterアルコールデヒドロゲナーゼ5’未翻訳領域およびAUG翻訳開始部位、イー・コリのlacZ遺伝子、およびSV40転写ターミネーターおよびポリアルデヒドシグナル(pA)を含むpDM79から得た4.2kbのEcoRIフラグメントを、p2ZOp2AのEcoRI部位に挿入することによって、プラスミドp2ZOp2Aβ−galを構築した。GFP−コード領域を含むpGFP10.1(Chalfieら、Science、263:802−805(1994年))から得た800bpのEcoRIフラグメントを、p2ZOp2CのEcoRI部位に挿入することによって、プラスミドp2ZOp2C−GFPを作製した。上に記述された4.2kbのEcoRIβ−ガラクトシダーゼ遺伝子フラグメントを、p2ZMtnFのEcoRI部位に挿入することによって、プラスミドp2ZMtnFβ−galを生成した。β−ガラクトシダーゼの活性を定量的に測定できるので、p2ZOp2Aβ−Galレポータープラスミドは、特定のセルラインで産生されうる外来タンパク質の量を推定するのに使用できる。2μgのp2ZOp2Aβ−Galプラスミドおよび10μlの陽イオン性リポゾームセルフェクチン(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD))を用いた一過性発現分析は、800に接近するβ−ガラクトシダーゼ活性のレベルを、Ld652Yで、D.MelanogasterおよびSf9セルラインで、それぞれ3000および20,000単位を繰返し生じる。Ld652Yのように、中程度から高いレベルの内因性β−ガラクトシダーゼ活性を示すセルラインで、GFPレポータープラスミドは、産生許容性を概算するために使用できる。さらに、この控え目なマーカーは、個々の細胞でのタンパク質発現のレベルを測定させる。この小さなレポーターカセットは、Op ie2プロモーター、GFPコーディング領域および転写終結から構成され、そしてpA配列は、異種タンパク質発現ベクターに容易に取込むことができるか、または異種タンパク質発現ベクターと協力して同時形質転換することができる。続いて、高度の蛍光を示す個々の細胞、そして得られる高度な異種タンパク質発現は、細胞の生理学の不可逆な破壊なしに、蛍光活性化細胞篩(FACS)系を用いて選択してもよい。同じベクター内に抗生物質選択カセット、異種タンパク質発現カセットおよびレポーターカセットを組込む能力は、非常に有益であり、そして本発明の個々のカセットおよびベクターが操作される方法の成果である。小さなサイズのこれらのベクターは、扱いにくいサブクローニング、またはコスミドまたはバクテリオファージベクターへの再篩い分けの必要なしに、比較的大きな遺伝子をクローン化させ、操作し、そして発現させる。標識抗体を用いて検出できる膜貫通タンパク質のような他の控え目なマーカーも、本発明の選択系に用いることができる。本発明のベクターによって指向される誘導性発現を、p2ZMtnβ−Galレポータープラスミドを用いた一過性発現アッセイでのD.Melanogasterセルラインで試験した(図9)。形質転換に続いて、100mM保存溶液から得た50−1000μM CuSO4(最終濃度)を添加することによって、Mtnプロモーターを導入した。細胞を、6穴組織培養プレートに移し、そして細胞を収穫するときであるさらに48時間、27℃でインキュベートし、微量遠心分離で4,000×gでベレット化させ、そして60μlの0.25Mトリス−HCl(pH7.4)に再懸濁させた。3回の凍結/解凍によって細胞を溶解させ、残骸をもう一度ペレット化させ、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性を、標準法によって上清で定量した。10μgの細胞タンパク質を、10%SDS−PAGEゲル上で電気泳動的に分離し、そしてニトロセルロース膜に移行させることによって、ウエスタンブロット分析を行った。1/10,000希釈でのマウスのモノクローナル抗−β−ガラクトシダーゼ(プロメガ(Promega)、ウイスコンシン州マディソン(Madison,WI))を一次抗体として、そして1/20,000希釈での二次抗体として西洋ワザビペルオキシダーゼ−接合ヤギ抗マウス抗体(バイオラッド(BioRad)、カリフォルニア州リッチモンド(Richmond,CA))を使用して、β−ガラクトシダーゼを検出し、続いてECL化学発光システム(アマシャム(Amersham)、オークビル(Oakville)、ON)を用いて検出した。誘導なしで、β−ガラクトシダーゼ活性は、内因性バックグラウンド活性(2.5単位)よりほんのわずかに高く(4−7単位)、そしてウエスタンブロット分析を用いて検出できなかった。CuSO4の濃度を増加させながら添加して、形質転換後48時間記録したとおり、β−ガラクトシダーゼ産生に対応する増加を生じた。1000μMのCuSO4濃度を用いた一過性分析で、β−ガラクトシダーゼ発現の誘導は、構築的発現が、Op ie2プロモーターによって指向される、セルラインについて観察されたものよりおよそ5−10倍未満であった。β−ガラクトシダーゼアッセイの感受性限度内で、Mtnプロモーターは、Sf9またはLd652Yセルラインで、構築的に、または誘導を伴うかのいずれかで機能しそこなった。lacI/LacO誘導性系も、昆虫セルラインに使用できる。市販で入手可能なLacR抗体(ストラタジーン(Stratagene)、米国)を用いて、p2ZOp2FlacRまたはpOp1LacRとの形質転換から得た48時間の昆虫細胞ペレットのウエスタンブロット分析は、Lacレプレッサーを昆虫細胞に作ることを示した。lacレプレッサーを発現する安定なクローンを生成するために、このクローンは、一連のp2ZOp2Jベクターで、昆虫セルラインに同時遺伝子導入した。10μlのセルフェクチンと共に1μgの各々のp2ZOp2JおよびpOp1LacRを用いて、同時遺伝子導入を行った。Sf9細胞でレポーターとしてB−ガラクトシダーゼと共にp2ZOp2J−1または−3を利用して、B−galレポーターの抑制は、p2ZOp2J−1構築物(50単位)と共に生じるが、抑制は、p2ZOp2J−3構築物(10単位)と共にあるのが最善である。1ミリモルIPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトシド)を添加することは、系の抑制解除およびp2ZOp2J−1B−galからは400単位そしてp2ZOp2J−3Bgalからは500単位のB−ガラクトシダーゼ産生を供給した。限定されないが、Ld652Y、Hi5およびKc1を含めた他の昆虫セルラインを用いた連続分析は、lacレプレッサー系が、これらの系で十分同等に作用することを示した。tet系も、昆虫細胞で使用することができる。この系から得た発現が、最小プロモーターの作製のため、親ベクターp2ZOp2Fからより低いが、ベクターは、酵素カスケードの発現で重要な役割を果たす密接な調節の別の利益を有する。レポーターとしてB−galを用いて、これらの構築物を、B−ガラクトシダーゼ発現を制御するそれらの能力について試験した。昆虫細胞でのp2ZOp2TB−galおよびp2ZOp2DtTA(Tet−オフ)の同時遺伝子導入は、デオキシサイクリン(テトラサイクリン誘導体)の存在下で、産生されたB−ガラクトシダーゼの量は、バックグラウンドレベルより上ではなかったことを示した。デオキシサイクリンを除去すると、産生したB−galの量で10倍の増加を生じた。昆虫細胞でのベクターp2ZOp2TB−galおよびp2ZOp2DrtTA(Tet−オン)の同時遺伝子導入は、デオキシサイクリン(テトラサイクリン誘導体)の不在下で、産生されたB−ガラクトシダーゼの量も、バックグラウンドより上ではなかった。デオキシサイクリンを添加して、バックグラウンドを越えて産生されたB−galの量で4倍増加になった。これらの実験の両方が、Tet系が、昆虫細胞で誘導性系として機能することを示す。昆虫セルラインでgal4系を試験するために、ベクターp2ZUASmPFB−galを、p2ZmtnFgal4構築物を宿す昆虫セルラインに入れた。代わりに、その構築物を、セルラインに同時遺伝子導入できた。B−gal活性が、一過性および安定な昆虫セルラインのどちらでも検出されなかった。mtnプロモーターを誘導するのに500μMの硫酸銅を添加して、B−gal発現が、この誘導系が昆虫細胞で機能性があることを示す100単位より大きいと分かった。上の形質転換遺伝子を越えたこの誘導系の利点は、厳密なオン/オフ制御を必要とする酵素カスケードまたはシグナル形質導入経路で処理するとき、重要でありうる2段階の制御系である。それは、誘導性遺伝子産物を昆虫細胞に導入するための第三の系を付与する。これは、多重制御点を必要とするカスケード系を研究するときに重大である。異種レポーター遺伝子を発現する安定に形質転換した昆虫セルラインの生成外来遺伝子を発現する本発明の安定な、形質転換したセルラインの能力を、数種のクローナルSL2セルラインと同様にポリクローナルSf9、SL2およびLd652Yセルラインを生成し、pZOp2Aβ−Gal構築物を保有することによって試験した。以下のとおり形質転換を達成した。およそ2×106細胞を、製造業者の推奨によって2μgのCsCl−精製プラスミドおよび10μlのセルフェクチン(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD))と形質転換させた。細胞を、6穴組織培養プレートに移行させ、そして48時間耐性マーカーを回収および発現させた。この時に、細胞を1:10に分け、そして耐性ポリクローナルセルラインを、それぞれ、Ld652Y、D.MelanogasterおよびSf9セルラインと一緒に150、250および1000μgのゼオシン(インビトロゲン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California、USA))を添加して選択した。48時間回収されたクローナルSL2セルラインを限定した希釈、それによって1×103細胞によって生成し、1×104非形質転換フィーダー細胞を伴う96穴マイクロタイタープレートの個々のウエルに入れた。単離クローンは、2−3週内に一部のウエルに現れた。上に記述されるとおり総ゲノムDNAを単離した。5マイクログラムの総ゲノムDNAを、PstIおよびSalIまたはEcoRIのいずれかで消化し、アガロースゲル電気泳動によって分離し、そしてナイロン膜の上にブロットした。全pZOp2Aβ−Galプラスミドをプローブとして用いたECL化学発光系(アマシャム(Amersham)、英国)でサザンブロット分析を行った。サザンブロッティングは、クローナルラインを実際に形成させ、そしてベクターと形質転換させることを確認した。予想されるとおり、非形質転換SL2、Sf9およびLd652Y制御セルラインから単離されたサザンブロットは、なんらハイブリダイゼーションシグナルを示さなかった。定常選択下を維持した場合、「ポリクローナル」Ld652Y、Sf9およびSL2セルラインは、20継代(およそ5ヶ月)後、それぞれ、2、6および5500単位のβ−ガラクトシダーゼを発現した。安定なSL2クローナルラインは、1000−4000単位のβ−ガラクトシダーゼの間で発現した。抗生物質の不在下で、ポリクローナルSL2セルラインによるβ−ガラクトシダーゼ産生は、減少し、最終的におよそ100単位に安定化した。サザンブロット分析は、酵素産生におけるこの減少が、ベクター配列の態様の損失から生じなかったことを示した。これは、発現カセットの画分のゲノムサイレンシングが、移入遺伝子でしばしば観察されるとおり、選択圧の不在下で起こった可能性を上昇させる(Meyer、TIBTECH、13:332−337(1995年))。ポリクローナルおよびクローナルセルラインを発現するβ−ガラクトシダーゼのサザンブロット分析(図10)は、ベクターコピー数と酵素発現との間に相関関係が存在することを示す。異種タンパク質を発現する様々な種から由来したセルラインの相対的許容量は、ベクターDNA取込みおよび組込みを最大限にする形質転換および選択のための条件を発展させることによって増強できる。Op ie2プロモーターにおけるプロモーター要素の特徴Op ie2プロモーターの特徴は、それが、多くの区別できる機能性配列要素を含むことを示す。ここに開示されるデータと一緒に先に公表されたデーダは、Op ie2プロモーターの機能的に重要な配列要素に相同性を示す新規プロモーターが、本発明によって構築されうることを共に示す。Op ie2の5’シス−作用プロモーター配列を、Ld652YおよびSf9鱗翅目昆虫セルライン中のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター構築物を用いた総欠失分析によって当初に分析した(TheilmannおよびStewart、Virology、187;84−96(1992年))。CAT発現レベルは、Sf9細胞でよりいっそう高く、それはOp ie2プロモーターのいっそう感受性のある分析を供与した。予備欠失分析は、Op ie2プロモーターから配列を指向することに関与していると見られる2つの反復要素を確認した(TheilmannおよびStewart、Virology、187;84−96(1992年))。反復要素の共通配列は、GATAおよびIE2B要素と称される、配列番号9:CTTATCGGおよび配列番号10:ACAGGACGCである。GATAおよびIE2B要素を、ie2プロモーターで、それぞれ7および6回反復させた。GATA要素は、OpMNPVefp/gp64およびAcMNPVpe38プロモーターにある細胞因子を結合すると見られるものと同一である(Krappaら、J.Virol.66:3404−3503(1992年))。IE2B要素は、他のいかなるバキュロウイルスプロモーターにも見られなかった。GATAおよびIE2B要素は、Op ie2プロモーター中の対の要素として3回見られる(図1aおよび2)。欠失分析については、BamHIリンカーを用いてOp ie2転写開始部位から20bp下流にCAT遺伝子を入れることによって、Op ie2プロモーターレポータープラスミドであるpIE−2CATを構築した。5’プロモーター領域は、Op ie2配列1−677から由来し、そして3’ポリアデニル化(pA)配列は、Op ie2配列1865から2010までから由来した(TheilmannおよびStewart、Virology、187;84−96(1992年))。CAT遺伝子を、pCATプラスミドのBamHIフラグメントとして得た(Mackettら、J.Virol.、49;857−864(1984年))。ExoIIIおよびヤエナリ(mung bean)またはBal31のエキソヌクレアーゼ(Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル、ニューヨーク州コールド・スプリング・バーバー(1989年);Yanisch−Perronら、Gene、33:103−119(1985年))のいずれかを用いて、欠失サブクローン(5’から3’まで)のプロモーター領域を生成させた。pIE−2CAT5’から3’までの欠失構築物を、Sf9およびKc1細胞に形質移入させ、細胞を収穫し、そしてCAT分析(Neumannら、BioTechniques、5:444−448(1987年))について処理し、そして結果は図1aに要約された。Ld652Y、Kc1およびSf9細胞にあるOp ie2プロモーターからCAT発現の検出可能なレベルを得るために必要とされる最小または基本のプロモーターは、それぞれ、転写開始部位から125bp、46pbおよび98bp上流であった(図1a)。Op ie2特異的調節要素の機能的顕著さを測定するために、Op ie2プロモーター領域の微量欠失分析を行った。177bpまでの欠失は、Sf9およびLd652Y細胞のいずれかにある最大のCAT発現に顕著に影響を及ぼさない(図2aでの−177bpから0bpまでのIE−2の配列は、351bpから527bpまでの配列番号:1に対応する)。位置−152に対するさらなる24塩基対の別の欠失は、CAT発現の75%減少まで生じる。位置−177と−152の間の領域は、GATAおよびIE2B要素対を含む。追加の30bpが位置−154から−125までを欠失させた場合、配列は、10%の最大レベルまでさらに減少させる。この領域は、2つのIE2B要素を含む。GATA−IE2B要素対でのほとんどのGATA配列を排除する塩基対−125から−114までの別の欠失は、ほとんど検出不可能なレベルの発現を生じる。いくつかの実施形態で、Kc1細胞と共に、プロモーター活性での減少と、5’プロモーター欠失の増加との間に相関関係がある可能性がある(図1a)。しかし、鱗翅目セルラインと違い、Kc1細胞での最小の検出可能なプロモーター活性のために、唯一単一GATA配列が必要とされる。GATA−IE2B配列の封入を行うときに、いっそうのGATAコピーの添加が、Kc1細胞でのプロモーター活性を増加させる。反復IIAおよびBが存在する場合、この実施形態での全長プロモーター活性を達成する。これらの結果は、GATA−IE2B対が、Op ie2プロモーターの調節要素であることを示す。これらのデータは、−177から−114の間のOp ie2配列に相同な配列に関与するOp ie2プロモーターの機能的変異体が、本発明にしたがって構築されることを示唆する。特に、GATA IE2B要素対に相同な配列に関与する機能的に新規なプロモーターが設計されうる。プロモーター活性を増加させるために、ie−2プロモーターの構成成分を活用するキメラプロモーターを構築する研究も行った(図1b参照)。−237の5’欠失構築物を塩基(p2ZS237)として利用して、多くの合成キメラプロモーター組合せを行い、そしてCATレポーターを用いて3つのセルラインで試験した。237領域を複写することで、p2ZS237構築物を越えたプロモーター活性で最小の増加を生じた。その領域を三重複写することで、それぞれ、Ld652YおよびSf9細胞でのCAT活性で1.8および1.5倍増加を起こさせた一方で、Kc1細胞では、活性に減少が見られた。Opie−2遺伝子の下流で確認されたエンハンサー配列(OpE)も、プラスまたはマイナス配向性のいずれかで、塩基−プロモーター/CAT遺伝子まで5’または3’のいずれかの構築物に添加した。エンハンサー配列OpEは、66bp要素配列番号16:5’−CCTTT CAAGC GCGTGCGCAC CCGAAAAGCA GGGTCGCCGC TGACGCACTG CTAAAAATA GCACGCG−3’(TheilmannおよびStewart、Virology、187:97−106(1996年))の12の完全なまたは部分的な反復として確認された。全ての場合に、エンハンサーOpEの封入が、Ld652Y細胞にある塩基プロモーターを越えてカッセイでおよそ2倍の増加をさせた。Sf9細胞で、エンハンサーが、マイナス配向でのプロモーターに対して5’であった場合のみに、プロモーター活性の増加が見られた。Kc1細胞は、いずれの配向にあるプロモーターに対するエンハンサー5’で2倍の増加を示した。その遺伝子に対するエンハンサー3’のプラス配向が、活性で1.5倍増加を示す一方で、マイナス配向で、プロモーター活性での減少が見られた。これらの結果は、種々のキメラプロモーターの組合わせが、種々のセルラインからのタンパク質産生を増加させるのに有用である別の証拠を提供し、1つの実施形態では、p2ZS237−OpE5組合せは、セルラインで最も増強された活性を供する。図2は、OpMNPVie2遺伝子から得た一列のプロモーター配列および関連のAcMNPVから得た相同のien遺伝子を示す。UWGCG GAPプログラム(Devereuxら、Nucl.Acids Res.、12:387−395(1984年))を用いて、配列を行った。図2にある配列の配置は、最大のOp ie2活性のために必要とされるOp ie2の−177から−114領域が、AcMNPV ienプロモーターに対するほとんど相同性さないこと含むを示す。ienプロモーターは、Op ie2プロモーターのIE2B要素を含まない。Op ie2およびienプロモーターの間の別の区別が、Op ie2の−275から−257までの領域の欠失の結果から現れた。−275から−257のOp ie2欠失は、Sf9細胞にあるAcMNPV ienプロモーターのための正のシス作用調節要素として示されるAcMNPVienプロモーターにある要素に非常に相同である反復IBを除去する(Carsonら、J.Virol.、65:945−951(1991年))。ここに開示される欠失の結果は、反復IB領域の完全なコピーが、Sf9細胞での高いレベルのOp ie2に必須でないことを示し、それによりAcMNPVienプロモーターから機能的にOp ie2プロモーターを区別した。Op ie2プロモーターの特徴本発明のシャトルベクターにあるOp ie2プロモーターの使用と関連した多数の予想外の利点がある。本発明のシャトルベクターで、上で検討されるとおり、Op ie2プロモーターは、D.Melanogasterまたはスポドプテラ(Spodoptera)セルラインのいずれかにあるエンハンサーなしのAc ie1プロモーターに比較して予想外に高いレベルの相同な遺伝子発現を示す。さらに、ここで開示された形質転換セルラインのβ−ガラクトシダーゼアッセイは、Op ie2プロモーターの活性が、昆虫細胞に限定され、哺乳類セルラインで検出可能な機能を有しないことを示す。この後者の結論は驚くべきことに、反対の結果、すなわち、哺乳類細胞での活性プロモーター機能が、Ac ie1プロモーターについて報告された(Carbonellら、J.Virol.、56:153−160(1985年))ことを示した。Op ie2プロモーターが哺乳類細胞で機能しないという予想外の成果は、哺乳類細胞での機能が可能であるプロモーターを使用する先行文献のベクターを越えて重大な利点を伴う本発明のベクターを付与する。Op ie2プロモーターを組込む本発明のベクターを使用することは、非標的生物に対する活性の相同な遺伝子の不意の移行のための潜在力を最小限にする。したがって、本発明のこのようなベクターを使用することは、適切な遺伝子構築物の特性が、異種遺伝子が未強化宿主に移すか、または発現される可能性を上昇させる移入遺伝子研究で適切に課されて制限の使用を避けることができる。欠失分析によってここで確認されたOp ie2配列は、Op ie2プロモーター:無傷のバキュロウイルスの複製に寛大であり、そして非寛大である両方の広範な昆虫細胞での活性;哺乳類細胞での検出可能な活性の欠如;および他の関連プロモーターのものに匹敵するが、エンハンサー要素のための必要性なしの発現レベルという予想外の特性の要因である可能性がある。当業者は、Op ie2プロモーターを自然に生じる厳密な配列が、同様の結果を供する同じ方法で機能するプロモーターを供給するために、ある程度まで修飾することができることを認識し、このような修飾は、本発明の範囲内である。核酸配列に関してここで使用されるとおり、語句「相同性」または「相同な」は、配列同一性および機能上の類似性の程度を意味する。自然に生じる相同な配列は、それらが共通の祖先の配列を共有するという点で、進化上関連している可能性がある。相同な配列は、合成または突然変異誘発を通して人工的に作製されることもできる。いずれの場合に、ここで同定されるとおりの相同な配列は、その配列に類似の生物学上の機能を供与する十分な程度の配列同一性を示す。語句「相同性」は、2つの配列の間の配列同一性の程度によってここで使用され、その結果、相同な配列は、相同性、すなわち、配列同一性の変化の程度を示す。当業者は、欠失分析によってここで同定されたGATAおよびIE2BOp ie2配列要素のような配列の機能的に重要なセグメントで実質的に相同性を示す配列が、このような配列の他の領域が相当な相同性を示さない場合でさえ、類似の生物学上の特性を示す可能性があることを認識する。相同な配列は、実質的な相同性の領域を示すことが好ましい。配列の間の、または配列の部分の間の実質的な相同性は、このような配列の間に少なくとも75%配列同一性、好ましくは、少なくとも90%配列相同性、そしてさらに好ましくは少なくとも95%配列相同性を意味する。1つの実施形態では、本発明は、即時型バキュロウイルスプロモーターに相同性を示し、そしてそれとして機能する能力のある昆虫プロモーターを含む。このようなプロモーターは、あらゆる自然に生じる即時型バキュロウイルスプロモーターに相同性を示す可能性があり、そしてバキュロウイルス系で遺伝子発現を指向するこのようなプロモーターの場所で機能する能力がある。このようなプロモーターは、好ましくは、欠失分析によって、ここで同定されたGATAおよびIE2B Op ie2配列要素のようなこのような自然に生じるプロモーターの機能的に重要な領域で自然に生じる即時型バキュロウイルスプロモーターに実質的に相同性を示す。代わりに、このようなプロモーター配列は、Op ie2のような全ての自然に生じる即時型バキュロウイルスプロモーターに実質的に相同性を示す。代わりに、即時型バキュロウイルスプロモーターに相同性を示し、そしてそれとして機能する能力のある昆虫プロモーターは、緊縮条件下でこのような即時型バキュロウイルスプロモーターにハイブリッド形成する特性によって特徴付けられうる。このようなハイブリダイゼーションのための緊縮条件は、配列依存性であり、そして様々な環境で異なる。一般に、緊縮条件は、所定のイオン強度およびpHでの特定の配列について溶融点(Tm)より約5℃低く選択される。Tmは、50%の完全に適合した配列がハイブリッド形成する温度(規定されたイオン強度およびpH下で)である。いくつかの実施形態では、緊縮条件は、塩濃度が、pH7で約0.02モルまたはそれ未満であり、そして温度が、比較的短い配列で少なくとも約60℃であるものである。実施例1a)ヒトメラノトランスフェリン(p97)の発現本発明のベクターが高度に修飾された異種タンパク質の発現を行い得ることを、(p97としても知られている)ヒトメラノトランスフェリンをコードするcDNAを構成的なプロモーター(Op ie2)または誘導可能な(Mtn)プロモーターのいずれかの制御下で含有する構築物を作製することによって調べた。メラノトランスフェリンは、典型的な疎水性の膜貫通ドメインによるよりも、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを介して結合する細胞の外側表面に輸送されるシアロ糖タンパク質である(Foodら、J.Biol.Chem.269:3034−3040(1994))。このタンパク質は、メラノーマに特異的な診断マーカー(Brownら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:539−543(1981))として最初に報告されたが、その後、アルツハイマー病患者の脳組織において亢進したレベルで存在することが明らかにされた(Jefferiesら、Brain Res.、712:122−126(1996))。誘導可能なp2ZMtn97および構成的なp2ZOp2C97の構築物を、p97cDNAの完全なタンパク質コード領域を含有するpA3−2から得られるEcoRI−NruIフラグメントを哺乳動物発現ベクターpZeoSVのEcoRI−PvuII部位にクローニングして、pZeoSV97を作製することによって作製した。続いて、p97のコード領域およびSV40のpA配列を含有するEcoRI−BglIIフラグメントをpZeoSV97からp2ZOp2AのEcoRI−BamHI部位にサブクローニングして、p2ZOp2C97(構成的発現構築物)を作製した。別の系列において、pZeoSV97のSpeI−BglIIフラグメントをp2ZMtnのXbaI−BglII部位にサブクローニングして、p2ZMtn97(誘導可能な発現構築物)を作製した。細胞を、2μgのCsCl精製したDNAおよび10μlのセルフェクチンを用いて前記のように形質転換した。一過性アッセイにおいて、細胞を、形質転換の48時間後に集め、微量遠心分離機で4,000×gでペレット化し、50μlの細胞溶解緩衝液[20mM トリス−HCl(pH7.2)、0.15M NaCl、2mM EDTA、1%NP40および0.5mMフェニルメチルスルホニルフルオリド]に再懸濁した。安定的に形質転換されたクローンセルラインを上記のように選択したが、Sf9は、フィーダー細胞のマイクロタイターウエルへの添加を必要としなかった。ウエスタンブロット分析を、10μgのタンパク質を10%非変性SDS−PAGEゲルで電気泳動的に分離し、ニトロセルロース膜に転写することによって行った。p97タンパク質を、L235抗p97モノクローナル抗体を一次抗体としてリン酸緩衝化生理食塩水での培養上清の1/10稀釈で使用し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(BioRad、Richmond、CA)を1/20,000稀釈で使用し、その後、ECL化学発光システム(Amersham、Oakville、ON)での検出を行うことによって検出した。p97特異的モノクローナル抗体を使用する一過性形質転換昆虫セルラインのウエスタンブロット分析により、Sf9、D.melanogaster、およびより少ない程度でLd652Yセルラインは、検出可能な量のp97を発現し得ることが明らかにされた(図11A)。このことは、本発明者らが操作したシステムなどの、様々なセルラインでの発現を可能にするシステムが必要であることを示す。安定的に形質転換されたSf9およびSL2のクローナルセルラインを作製し、これらは、それぞれ、構成的なie2または誘導可能なMtnプロモーターのいずれかを使用してp97を発現する(図11B)。選択下において、これらのセルラインは、3ヶ月間にわたって12回継代した後、p97の発現は低下しなかった。β−ガラクトシダーゼを産生するセルラインの場合と同様に、サザンブロット分析は、ベクターのコピー数とタンパク質発現の相対量との相関を明らかにした。Sf9細胞により産生されるp97の分子量は、バキュロウイルスで産生されるp97の分子量と類似していたが、D.melanogaster細胞において同じ構築物から産生されるp97の分子量はわずかに小さかった。バキュロウイルスシステムから得られるp97は、ヒトp97よりもわずかに小さい分子量を有する。二次元電気泳動により、ヒト細胞で発現するp97とSf9細胞においてバキュロウイルスにより発現するp97との分子量の違いは、複雑な炭水化物修飾が行われないためであることが明らかにされた。最後に、p97を検出するために使用したL235モノクローナル抗体は、タンパク質内にジスルフィド架橋を含むエピトープに特異的である。p97タンパク質は、高度にプロセシングされているだけでなく、高度に折りたたまれており、従って、これらの昆虫セルラインにおける組換えp97の検出は、ポリペプチドを合成するそれらの能力を反映するだけでなく、複雑な二次構造および三次構造をうまく組み立てるそれらの能力を反映する。b)形質転換された昆虫細胞における組換えp97の局在化2つの形態のp97が、哺乳動物において天然に存在する。ヒトp97の約80%は、タンパク質のカルボキシル末端に共有結合したグリコシルホファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して細胞表面に結合している。全p97の約20%を構成する第2の形態は、現在まで知られていない機構によって細胞から細胞外液に運ばれる(Foodら、J.Biol.Chem.、269:3034−3040(1994))。間接的な免疫蛍光法を使用して、昆虫セルラインにおいて発現する異種p97の詳しい細胞局在性が明らかにされた。形質転換細胞を、1mg/mlのポリL−リジン(400,000MW)溶液で予めコーティングされ乾燥させたガラス製カバーガラスに30分間接着させた。スライドガラスをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に浸し、新しく調製した4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、その後、メタノール:アセトンの1:1溶液で45秒間インキュベートした。スライドガラスをPBSで3回洗浄し、次いで0.5%のTriton X−100を含むPBSで10分間インキュベートし、その後、さらに3回PBSで洗浄した。細胞を、20分間、FATS(20%の胎児ウシ血清、0.5%のTween−20を含むPBS)でブロッキングし、その後、60分間のインキュベーションをL235抗p97モノクローナル抗体(未稀釈のハイブリドーマ上清として使用)を用いて加湿室内で行った。スライドガラスを10分かけてPBSで3回洗浄し、次いで二次抗体(FITC結合ヤギ抗マウスFabフラグメントの1/30稀釈物)と60分間インキュベートした。スライドガラスをPBSで3回洗浄し、固定し、蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡のいずれかを使用して観察した。これらの実験により、Sf9セルラインにおいて発現するp97は、細胞の外膜に正しく局在化していることが明らかにされた(図12a)。逆に、形質転換されたSL2またはKclセルラインは、ウエスタンブロット分析によって示されるように相当量のp97が産生しているにもかかわらず、細胞の細胞表面に何ら蛍光を示さなかった。時々、細胞内に斑点状の染色が観察されたが、これは、特定の領域またはオルガネラに局在化し得ず、従って細胞質性であり得る。このような現象は、D.melanogasterセルラインのいずれかの細胞で発現するp97の大きさが減少したことに関連し得る。なぜなら、小胞体における間の複雑な炭水化物のタンパク質への翻訳後修飾による付加が、正しい局在化に関連していることはよく知られているからである。分子量のわずかな減少にもかかわらず、Sf9細胞は、十分なコア修飾を行うことができ、この個々のタンパク質の正しい局在化を可能にする。それに対して、D.melanogasterセルラインはそのようなことができない。しかし、これは、本質的には、細胞質タンパク質の下流工程での精製が、膜成分から解離しなければならないタンパク質の場合よりも一層簡略化される点で著しく有利になり得る。このことは、再度ではあるが、様々な属の昆虫に由来するセルラインにおいて機能し、その結果、そのような異なるセルラインの特異的な翻訳後修飾プロセシング能力を効率的にアッセイし得る昆虫の形質転換システムが必要であることを強調する。c)組換えp97発現の定量形質転換された昆虫セルラインによって産生されるp97の量を、間接的な免疫蛍光アッセイを使用して定量的に測定した。p97を、最初に、GPI特異性酵素ホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)による切断によって細胞表面から遊離し、次いでp97特異的抗体を使用して上清から免疫沈降させた。沈澱物中のp97の量を、標識抗体(この場合、ヤギ抗マウスIgG−FITC)とのインキュベーションにより測定し、蛍光度計を使用して定量した。等しい数の細胞を使用した。Sf9クローン(C.16)は、4,000蛍光度計単位の細胞表面p97を発現したが、FACS選択の増幅組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、細胞表面で約1,000単位を発現した。この2つのセルラインの相対的な大きさおよび表面積を考慮した場合、発現レベルは匹敵し得る。昆虫セルラインは、典型的には、哺乳動物セルラインよりも高密度に生育することができる。このことは、本発明の形質転換された昆虫セルラインは、増幅されたCHO細胞よりも多くのp97を産生しないとしても、p97をそのように生成することを示唆する。形質転換されたSf9細胞からの発現は、多数の方法で最適化することができる:FACS選択によって、改変された形質転換プロトコルによって発現カセットコピー数を増大させることによって、細胞収穫の最適な時間を決定するために増殖期を通して発現を分析することによって、あるいはこれらの方法を組み合わせることによって、非常に多くのクローンがスクリーニングされる。予想されるように、p97は、形質転換されたD.melanogasterセルラインの表面からPI−PLC切断によって遊離されなかった。d)GPI欠損構築物を使用するp97の分泌形質転換されたSf9クローンにおける全長のcDNA構築物から発現するp97の大部分は、細胞壁と結合していた。段階限定的な産生がGPIアンカーのプロセシングおよびその結合にあるかどうかを明らかにするために、一連のカルボキシル末端欠失物を作製して、GPIシグナル配列のコード領域を削除した。内側の3′欠失物を、p97のGPIシグナル配列を除去するために、エキソヌクレアーゼ3/S1ヌクレアーゼ法を使用して作製した(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.1989)。約10mgのプラスミドpA3−2を、停止コドンの87bp下流を切断するNruIで消化し、30秒〜180秒の範囲でエキソヌクレアーゼ3処理を行い、その結果、NruI部位から末端の25アミノ酸(約200bp)を除いた。末端を、クレノーDNAポリメラーゼおよびdNTPsを使用して平滑化し、開始コドンの5′を切断するHindIIIで消化し、各時間から回収したフラグメントをp2ZOp2FのHindIII−EcoRV部位にクローニングした。このベクターは、3′欠失物を作製したときに除去した停止コドンの代わりをする3通りのすべての読み枠での停止コドンを有する。いくつかの関連する欠失物を図12b示す。これらの欠失物は、ニワトリのホモログのアミノ酸配列に関して分類することができる。ヒトp97から末端の16アミノ酸を除去すること(−16構築物および−15構築物)によって、mRNA転写物の異なるスプライシングから生じる分泌型のニワトリ形態[McNagny,K.M.、Rossi,F.、Smith,G.およびGraf,T.1996。好酸球特異的細胞表面抗原EOS47は腫瘍胎児性抗原メラノトランスフェリンのニワトリのホモログである。Blood 87:1343−1352]に効果的に類似するタンパク質が得られる。−20構築物および−21構築物は、GPIシグナル配列の大部分を失っているが、GPIが結合するアラニン残基、および正しいタンパク質折り畳みを確実に行うための最も末端のシステイン残基の両方を保持している。逆に、これらの重要なアミノ酸の両方は、−35構築物および−37構築物においては除去された。構成的なOpIE−2プロモーターの制御下にある欠失構築物を用いたSf9の形質転換により、耐性p97発現クローンが多数得られた。細胞ペレットおよび濃縮した培養上清の対応量のウエスタンブロット分析は、p97の大部分が培養培地に分泌されていることを明らかにした(図12c)。−15、−16、−20および−21の構築物で形質転換された細胞の細胞ペレットは、観測される分子量がわずかに異なる2つのタンパク質を示し、グリコシル化から、あるいはアミノ末端分泌シグナルペプチドのプロセシングから生じる中間体を示していることが考えられる。1個の違ったバンドのみが、培養培地のサンプルにおいて再現性よく観測された。末端のシステイン残基を含有していない−35構築物は、同様に活性的に分泌されたが、ウエスタンブロットで、より大きく拡がったバンドとして現れた。この人為的な結果は、L235モノクローナル抗体を用いてウエスタンブロット分析を行うときには非変性SDS−PAGEを使用しなければならないという事実によるためである。なぜなら、抗体が認識するエピトープは、システインジスルフィド結合を有し、従って、タンパク質は部分的に未変性のままであるからである。−35構築物は、末端のシステイン残基を含有していない。従って、このタンパク質のカルボキシル部分は、自由のままであり、より多くのSDSと結合することができ、その結果、より大きく拡がったバンドが生じる。それにもかかわらず、タンパク質は、細胞の外部に正しく運ばれる。同じ構成的構築物で形質転換を行ったとき、耐性的なDrosophilaセルラインクローンはどれも、検出可能なレベルのp97発現を示さなかった。一過性アッセイにおいて、p97の発現が、細胞ペレットおよび上清の両方においてほぼ等しい比で検出されたが(データ示さず)、タンパク質が分泌されていると結論することはできない。なぜなら、形質転換処理は、それ自体、細胞膜を透過性にし、細胞質内容物の喪失および/または細胞死をもたらす細胞の完全化を含むからである。細胞ペレットと結合したままである認識可能な量のp97は、このことが最もらしいということを示す。p97の分泌をもたらすGPIシグナル配列を除去することによっても同様に合成速度が増大するかどうかを明らかにするために、時間経過実験を行った(図12d)。p97の産生量を、間接的な免疫蛍光アッセイを使用して測定した(Kennardら、Biotechnol.Bioeng.42:480−486(1993))。発現の全体的な最大速度は、初期〜中期の対数期において生じたが、十分に蓄積するように定常期まで続き、細胞死の開始とともに停止するだけであった。培養における総最大蓄積は10mg/mlに達した。これは、Sf9のp97−16およびp97−21に関して、それぞれ、3.3mg/106および5mg/106細胞にほぼ相当する。この量は、低密度のSf9細胞によって産生されたが、形質転換されたSf9細胞で発現する全長のGPIアンカー型形態と比較した場合、6〜7倍の増大した産生を示し、バキュロウイルスと同等である。Sf9の細胞密度を増大させることによって、50mg/mlに達する濃度を得ることができることは明らかである。哺乳動物細胞またはバキュロウイルスシステムのいずれかを使用してGPI欠損型を発現する試みは行わなかったが、生産性が同様に増加することは予想され得る。ウエスタンブロット分析により、タンパク質は、細胞死および細胞溶解の開始にもかかわらず、培養後の培養液中において、数日間、変化を受けないままであることが明らかにされた(図12e)。これらの結果は、天然タンパク質の小さな改変により、細胞内の輸送および/または細胞からの分泌が促進され得ることを明らかにする。類似する構築物は、哺乳動物システムにおいて類似する特性を付与するために適合させることができる。これには、培養で生育する細胞、および適当な哺乳動物発現ベクターを使用するキメラ動物またはトランスジェニック動物の両方が含まれる。実施例2a)昆虫のイオン輸送ペプチド(ITP)の発現本発明の昆虫のタンパク質発現システムの有用性をさらに例示するために、このシステムを使用して、いくつかの昆虫セルラインが分泌型の昆虫のイオン輸送タンパク質ホルモン(ITP)を発現する能力を調べた。インビボにおいてITPは、側心体によって分泌され、バッタ(Shistocerca gregaria)の回腸における塩および水の再吸収を促進する。分泌されることに加えて、このタンパク質はまた、広範囲のアミノ末端およびカルボキシル末端でのタンパク質分解的なプロセシング、ジスルフィド結合の作成、およびおそらくは、カルボキシル末端でのアミド化を活性化のために必要とする(Meredithら、J.Exp.Biol.199:1053−1061(1996))。ITP発現カセットを含有するプラスミドベクターを下記のように構築した:ITPのコード領域を含有する405bpのSmaI−EcoRIのcDNAフラグメントを、pZeoSVのScaI−EcoRI部位に挿入した。次いで、この中間プラスミドをHindIIIで切断し、末端をクレノーDNAポリメラーゼおよびdNTPsで平滑化し、その後、NotIで切断して、SV40の転写終結およびpA配列に融合したITPのオープンリーディングフレームを含有する630bpフラグメントを除いた。このフラグメントを、EcoRIで切断され、クレノーDNAポリメラーゼおよびdNTPsで平滑化され、次いでNotIで再切断されたp2ZOp2Aに挿入し、プラスミドp2ZOp2C−ITPを作製した。いくつかの昆虫セルラインを、2μgのCsCl精製したプラスミドDNAおよび10μgのセルフェクチンを用いて上記のように形質転換した。形質転換の約48時間後に、細胞を低速度(3,000×g)で遠心分離し、Audsleyら、J.Exp.Biol.、173:261−274(1992)に従って生物学的活性について上清をアッセイした。高レベルの活性は、形質転換されたD.melanogasterセルライン、KclおよびSL2の上清で検出されただけであった(図13a)。より一層低いレベルの活性が鱗翅目セルラインSf9で検出された。Ld625YまたはTrichoplusia niセルラインHi5では活性は認められなかった。ITPがAcMNPVバキュロウイルス発現システムで発現される場合、生物学的活性のレベルは、本発明のD.melanogasterセルラインで観測されるレベルの約100倍未満であった。これは、様々な要因によるものであり得るが、バキュロウイルスで発現したITPペプチドの配列決定により、このペプチドのアミノ末端は正しくプロセシングされていないことが明らかにされた。このようなプロセシングは、活性の低下をもたらし得る。さらに、本発明者らは、組換えITPを発現するいくつかの安定的に形質転換されたKcl、SLおよびSf9セルラインを作製した。D.melanogasterセルラインは、生物学的活性に基づいて、高レベルのITPを安定的に発現し分泌したが、Sf9セルラインは、より適度なレベルの生物学的に活性な産物を産生した。これらの結果は、本発明の安定的に形質転換された昆虫セルラインの翻訳後修飾プロセシング能力は溶解性のバキュロウイルス発現システムの翻訳後修飾プロセシング能力と著しく異なることを明らかにする。実施例3a)第X因子の発現本発明の昆虫発現システムはまた、ヒトのトランスフェリン(Tf)分泌シグナルを使用して、ヒト第X因子を分泌するいくつかの昆虫セルラインの能力を試験するために使用された。第X因子は、血液凝固カスケードに参加する血漿の糖タンパク質である(Davieら、Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.48:277−318(1979))。第X因子は、1つのジスルフィド結合によって一緒になっている16.9kDaの軽鎖および42.1kDaの重鎖からなる。第X因子のE2ドメインは、活性化ペプチドおよび触媒活性ドメインを含有し、ヒト第X因子cDNAの399〜1456のDNA配列として規定される(Leytusら、Biochem.25:5098−5102(1986))。第X因子のE2ドメインを含有するプラスミドベクターを下記のように作製した。Tf分泌シグナル、FXのE2ドメインおよびヒスチジン×6標識を含有する1.2kbのHindIII/EcoRIフラグメントを、p2ZOp2FのHindIII/EcoRI部位にクローニングした。いくつかのセルラインを、2ugのQiagen精製したプラスミドDNAおよび10ulのセルフェクチンを用いて上記のように形質転換した。形質転換の約48時間後に、培養物を集め、細胞を低速度(3,000×g)の遠心分離によって除いた。ウエスタンブロット分析を、非変性負荷緩衝液中の20ulの上清を10%SDSポリアクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロースに転写することによって行った。第X因子タンパク質を、市販の抗第X因子ポリクローナル抗体を一次抗体として1/5000稀釈で使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(BioRad、Richmond、CA)を二次抗体として1/20,000で使用し、その後ECL化学発光システム(Amersham、Oakville、ON)による検出を行うことによって検出した。一過性形質転換および安定的な形質転換の両方のポリクローナルセルラインのウエスタンブロット分析により、第X因子は、試験したすべてのセルラインにおいて、トランスフェリンのシグナル配列を使用して、培地に効率よく分泌されることが明らかになった(図13b)。このことは、さらに再度ではあるが、多数の昆虫セルラインに由来する異種タンパク質の発現におけるOp ie−2プロモーターの万能性を明らかにする。昆虫細胞が、ヒトのトランスフェリン分泌シグナルを正しくプロセシングし得ることもまた明らかにされる。産生した第X因子は、ヒスチジン×6配列がNi−NTAアガロースカラム(Qiagen)に結合することによって培地から回収することができる。回収されたタンパク質が活性化ペプチドで切断されると、タンパク質は、天然の活性化ヒト第X因子と同様の活性を有する。このことは、第X因子の正しい翻訳後修飾のすべてが、昆虫細胞において適切に行われていることを示す。トランスポゾンに基づく形質転換/タンパク質発現ベクターの構築トランスポゾンを基礎とする発現ベクターを構築することができる。このベクターは、トランスポゾンの逆方向末端反復に機能的に等価な転位可能な因子DNA部分を正しい方向で含み、そして転位に必要な隣接のDNA配列を含む。転位に必要な隣接配列の量は、トランスポゼース酵素を使用するDNAフットプリンティング分析などの生化学的アッセイおよび/または生物学的機能に関する試験によって予め決定することができる。トランスポゾンに基づく本発明のベクターは、転位に必須な転位可能な因子の領域の内部に置かれた異種タンパク質の発現カセットを含有することができる。本発明のトランスポゾンを基礎とするベクターは、トランスポゼース酵素のコード領域を含むことができ、あるいは含まなくてもよい。トランスポゼース遺伝子は、誘導可能なプロモーターの制御下に置くことができる。1つの実施形態において、トランスポゼース遺伝子は、本発明のベクターを受容することを目的とする宿主昆虫細胞に組み込むことができる。別の実施形態において、誘導可能なトランスポゼース遺伝子は、本発明の発現カセット含有トランスポゾンを用いて同時に形質転換される第2のヘルパープラスミドに置くことができる。そのような実施形態において、トランスポゼース遺伝子を有するヘルパープラスミドは、転位可能な因子の機能的な逆方向末端反復を有しないことがあり、従って、転位により宿主ゲノムに組み込まれ得ない。別の実施形態は、Sindbis発現システムまたはInvitroScriptキャップシステム(Invitrogen CA、USA)などの別のシステムで作製されるRNAによる同時トランスフェクションである。このシステムは、細胞内部でトランスポゼースタンパク質に容易に翻訳されるトランスポゼースのメッセージを、本発明の発現カセット含有トランスポゾンとともに含有する。別の実施形態において、公知の生化学的な技術を使用して精製されたトランスポゼースタンパク質は、本発明の発現カセット含有トランスポゾンを用いて同時形質転換を行うことができる。P因子、hoho、mariner、および昆虫に基づく他のトランスポゾンを含有するDNAプラスミドが知られており、これらは様々な形態で容易に入手することができる。本発明は、P因子、marinerおよびhohoの因子に基づいた、トランスポゾンに基づく発現カセットを含み、双翅類細胞において使用される。別の面により、本発明は、広範囲のセルラインにおいて使用される、marinerおよびhohoを基礎とするトランスポゾン発現ベクターを含む。本発明は、昆虫細胞において転位し得る他のトランスポゾンを使用して機能するように適合させることができる。すべてのそのようなベクターは、転位に機能的に関与している末端逆方向反復を含み、発現カセットの機能に必要なすべての情報は、逆方向反復の機能的な境界域の中に存在する。本発明のゼオシン選択システムをトランスポゾンに基づく本発明の発現ベクターにおける使用に適合させるために、P因子に基づくベクターを構築した。これらのベクターを、p2ZOp2Aπおよびp2ZOp2Bπと称する。ベクターp2ZOp2Aπは、発現カセットをP因子末端の境界域の内部に含有する。このベクターを下記のように構築する:P因子の逆方向末端反復が隣接するD.melanogasterのwhite遺伝子の一部を含有するプラスミドpDM26(MismerおよびRubin、Genetics、116:565−578(1987))の1.8kbのPvuII/NdeIフラグメントを、T4ポリメラーゼを使用して平滑化された発現カセットp2ZOp2AのSacII部位に挿入した。このように挿入された発現カセットは、P因子の逆方向反復が隣接し、外来遺伝子を挿入するための唯一の制限酵素部位を3つ有する(図14)。ベクターp2ZOp2Bπは、外来遺伝子を挿入するための唯一の制限酵素部位をさらに有する。このベクターを、p2ZOp2Aπにおけるその挿入とは逆方向で発現カセットp2ZOp2Aを挿入することによって構築した。p2ZOp2Aπおよびp2ZOp2Bπのトランスポゾンを基礎とするシャトルベクターは、イー・コリにおけるクローニングおよび遺伝子操作のために、そして昆虫セルラインまたは完全な昆虫のいずれかを異種組換えによって、またはトランスポゼース源が存在する場合には転位によって形質転換するために使用することができる(これらのベクターは、完全なD.melangasterを形質転換するために使用されていた)。形質転換体は、ゼオシン耐性によって選択することができる。公知のP因子を基礎とするシャトルベクターは、真核生物および原核生物の異なる選択マーカーを使用する。例えば、真核生物の選択に関しては、D.melanogasterのプロモーターの制御下にあるハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子またはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子が使用され、細菌における選択に関しては、アンピシリン耐性またはカナマイシン耐性などの抗生物質の選択マーカーが使用される。シャトルベクターにおいて別個の選択マーカーを使用することは、そのような従来のベクターの大きさをかなり大きくし、大きな遺伝子の操作および挿入に関するその有用性を制限する。本発明は、キメラ状のOp ie2−EM7プロモーター(または、Op ie2プロモーター単独、これはOp ie2プロモーター配列内から得られる隠された原核生物プロモーター活性を有する)を使用して、真核生物および原核生物の両方における選択を行うためのゼオシン耐性遺伝子を発現させることによってこの問題を解決する。1つの面において、本発明は、hohoの転位可能な因子に基づくゼオシン耐性のタンパク質発現ベクターを含む。プラスミドp1ZOp2Ahohoを、hohoの逆方向末端反復を含有するpUChohoのNarI/PvuIIフラグメントを、T4DNAポリメラーゼで平滑化されたp1Zop2AのSacII部位に挿入することによって構築した(図14)。このベクターにおいて、3つの特徴的な制限部位が、タンパク質をコードする外来遺伝子をie2プロモーターの制御下でクローニングするために利用できる。本発明のトランスポゾンを基礎とする遺伝子発現システムを試験するために、いくつかのレポーター構築物を下記のように構築した(図14):プラスミドpDM79IE1を、Op ie1プロモーター領域を含有するpOPIE−1B74BamHIの650bpのSalI−BamHIフラグメントをpDM79のSalI−BamHI部位に挿入することによって構築した。プラスミドpDM79IE2を、OP ie2プロモーター領域を含有するpOPIE−NΔBamHIの700bpのHindIII−BamHIフラグメントをpBKSIIのHindIII−BamHI部位に挿入し、5′近位領域にSalI部位を置くために中間体pBKOpIE2を作製することによって構築した。次いで、SalI−BamHIフラグメントをpDM79にサブクローニングした。プラスミドpDM79IE2GFPを構築するために、GFPのコード領域を含有するpGFP(Clonetech、Palo Alto、California、USA)の810bpのフラグメントを、SpeIで切断することによって調製した。突出端を、dCTPおよびdTTPを使用してクレノーDNAポリメラーゼで部分的に修復し、その後、BamHIで切断した。得られるフラグメントを、HindIIIで切断され、dATPおよびdGRPを使用してクレノーDNAポリメラーゼで部分的に修復され、次いでBglIIで切断されたpAcIE1hr/PAに挿入した。続いて、このプラスミドpAcIEhrGFPをSalIで切断し、末端を、クレノーDNAポリメラーゼをdNTPsとともに使用して平滑化し、次いでSalI部位を除くために再連結してpAcIEhrGFPSalI-を得た。pDM79内の4.0kbのβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を、GFPのオープンリーディングフレームをコードするpAcIEhrGFPSalI-の850bpのKpnI−EcoRIフラグメントを挿入し、その後、SV40の転写ターミネーターを含有する200bpのEcoRIフラグメントを挿入することによってGFPレポーター遺伝子と置換した。最後に、Op ie2プロモーターを、pBKOpIE2の750bpのSalI−BamHIフラグメントとしてSalI−BamHI部位に挿入して、pDM79GFPを作製した。プラスミドpDM79IE−2−Galを構築するために、Gal4遺伝子の一部のセグメントを含有する500bpのSalI/XhoIフラグメントをpDM79IE−2のSalI部位に挿入した。このベクターは、SL2delta2,3セルラインにおける可動性因子をサザン分析によって検出するのに有用である。なぜなら、プローブとしてgal4セグメントを用いることによって生じるバックグラウンドシグナルは、そのような因子を検出するために使用される他のプローブと比較した場合に無視できるからである。プラスミドp1ZOp1AhohoGFPを、GFPのコード領域を含有するpGFP10.1の800bpのEcoRIフラグメントをp1ZOpp2AhohoのEcoRI部位に挿入することによって構築した。トランスポゼース産生セルラインの構築完全に機能的なトランスポゾン基礎とする発現カセットは、転位および続く再移動によってゲノムDNAに両方が組み込まれ得るが、そのような発現カセットの導入は、トランスポゼース酵素がベクターDNAの送達時に細胞の核内に存在する場合に促進される。このことは、トランスポゼースが存在しない場合、ベクターは、転位によって組み込まれるよりも、異種組換えによって細胞DNAにでたらめに組み込まれる可能性が一層大きくなるために重要である。でたらめに組み込まれることによって、トランスポゾンの完全性は破壊され得る。さらに、異種組換えによって組み込まれたプラスミドDNAは不安定であることがあり、強力な選択圧が付加されない限り、ゲノムから除去されやすい。トランスポゼース酵素は、ベクターDNAの送達時に、多数の方法で得ることができる。そのような方法には、下記の方法が含まれる:1)形質転換の前に、トランスポゼース遺伝子の改変体をセルラインのゲノムに安定的に取り入れることによる方法。この場合、本来の構成的なトランスポゼースのプロモーターは調節可能なプロモーターによって置換され得る;2)ベクターおよびヘルパープラスミドを用いて同時に形質転換することによる方法。ただし、このヘルパープラスミドは、トランスポゼース遺伝子を発現し得るが、ゲノムに転位できない;3)ベクターおよびトランスポゼース酵素自身を用いて同時に形質転換することによる方法;4)ベクターおよびトランスポゼースをコードするmRNAを用いて同時に形質転換することによる方法。ただし、このmRNAは、翻訳されたときにトランスポゼース酵素を産生する;または5)トランスポゼースを発現する不完全昆虫ウイルスを用いた同時トランスフェクションを前もって行うことによる方法。このウイルスは複製することができず、従って、DNAまたはRNAを細胞に送達するために使用することはできない。トランスポゼースが細胞の核の内部で利用できるように機能するこのような方法および他の方法を使用して、ベクターDNAの送達時に、トランスポゾン基礎とするカセットを転位によって組み込ませることができる。本発明の1つの面は、発現カセットによる形質転換を行う前にトランスポゼースを産生するように誘導され得るトランスジェニックセルラインを含む(図15)。この方法を使用して、転位によって組み込まれる確率を最大にすることができる。なぜなら、トランスポゼースの発現は、そのような細胞で、比較的迅速に、典型的には数時間の程度で誘導され得るからである。P因子のトランスポゼースmRNAの天然形態は、体細胞組織では正しくプロセシングされない。従って、天然のトランスポゼース遺伝子は、不死化したセルラインでは機能しない。本発明の1つ面において、エキソン2およびエキソン3の間のイントロンを欠失して、生殖系列および体細胞の両方の組織で活性なトランスポゼースを産生し得るΔ2−3と呼ばれる遺伝子が得られるように改変されているP因子のトランスポゼース源が使用される。本発明のこの面によって、トランスポゼースの産生は、調節される誘導可能なプロモーター、例えば、D.melanogasterの金属応答性メタロチオネイン(mtn)またはガラクトースによる抑制可能な(gal)プロモーターを使用して制御することができる。誘導可能なプロモーターを使用することにより、誘導に応答して、高レベルのトランスポゼースの産生が促進され、誘導因子の非存在下での発現の抑制が容易になる。例えば、mtnプロモーターは、1細胞あたり100コピーを超える遺伝子が存在する場合でも、Δ2−3のトランスポゼース遺伝子を効率的に調節することができる。他のトランスポゼースタンパク質を使用して、トランスポゾン基礎とする発現カセットを他の転位可能な因子と連携して機能させることができる。例えば、他のトランスポゼースは、転位可能な因子のhoho、hermes、minosまたはmarinerと連携して使用することができる。それぞれの場合において、トランスポゼース遺伝子は、調節可能なプロモーターのすぐ下流に置くことができる。プロモーターはまた、ハイグロマイシンB、G−418、メトトレキセートまたはゼオシンのような抗生物質に関する選択可能な耐性マーカーを含有する発現カセットに作動可能に連結することができる。トランスポゼース含有ベクターは、適当なセルラインにトランスフェクションすることができ、選択される。トランスポゼースの産生および調節は、ウエスタンブロット分析またはノーザンブロット分析によって、そしてトランスポゾンに基づく除去指示ベクターを使用する転位の機能的アッセイによってモニターすることができる。P因子のトランスポゼースをmtnプロモーターの制御下で発現するD.melanogasterのSL2セルライン(MTΔ2−3)は、以前に作製され、American Type Culture CollectionからATCC CRL−10901として入手できる(Kaufmanら、Cell、59:359−371(1988))。このトランスポゼース遺伝子が発現構築物に挿入され、そして非常に多くの構築物がセルラインのゲノムに組み込まれた方法は、誘導が行われないときに、検出可能な量でトランスポゼース遺伝子を発現させる。トランスポゼースを構成的に発現するこのようなセルラインは、本発明による形質転換された誘導可能なタンパク質発現セルラインを作製するのに最も好都合な宿主ではあり得ない。しかし、本発明によるこのようなセルラインを使用することによって、トランスポゾン基礎とする発現カセットの導入および増幅を行うことに関する本発明のシステムの有用性がまさに明らかにされる。本発明の別の面により、トランスポゼース構築物が作製され、ATCC CRL−10901細胞の場合よりもさらに低いコピー数でSL2セルラインに挿入され、トランスポゼース産生のより厳密な調節がSL2MTΔ2−3と称する新規なセルラインで得られる。このセルラインを構築するために、2.4kbのΔ2−3P因子のトランスポゼース遺伝子を、PCRによって増幅し、ベクターpMT−2(Kovachら、Insect.Mol.Biol.、1:37−43(1992))に含有されるmtnプロモーターの下流に直接挿入した。このプラスミドは、ハイグロマイシン−B耐性マーカーを含有する。得られるベクターを使用して、D.melanogaster SL2セルラインを形質転換した。mtn−トランスポゼース構築物のコピー数が低いセルラインを選択した。ポリクローナル抗血清をPトランスポゼースタンパク質に対して作製し、SL2MTΔ2−3セルラインが正しい分子量のトランスポゼースを産生し、その発現が誘導的であることを明らかにするために使用した。トランスポゼースの機能を、SL2MTΔ2−3セルラインを除去指示プラスミドで形質転換することによって確認した。この場合、ミニP因子が正確に削除されることによって、白色コロニーよりも、青色コロニーが生成する。分離したP因子を選択し、DNAの配列決定を行うことによって確認した。トランスポゼースを産生する誘導可能なセルラインは、hoho、mariner、minosおよびpiggyBacを含む幅広い範囲のトランスポゼースに関して、ならびに、copia、gypsyおよびTyなどを移動するために逆転写酵素を必要とするレトロトランスポゾンに関して作製することができる。トランスポゼースを発現するセルラインの形質転換操作されたDNA構築物を転位によってゲノムに挿入するために、標識したトランスポゾンを作製した。このトランスポゾンは、Op ie1またはOp ie2をプロモーターとするβ−ガラクトシダーゼレポーターカセット、細菌のアンピシリン耐性遺伝子、複製起点、および熱ショックプロモーター−ネオマイシンホスホトランスフェラーゼの選択可能マーカーカセットのすべてが、P因子逆方向反復と隣接した。この構築物を、SL2MTΔ2−3セルラインにG−418の選択下で導入し、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の発現をモニターした。トランスポゾンを基礎とする発現カセットの転位によるSL2MTΔ2−3セルラインへの組み込みを、中期対数期まで細胞を増殖させ、形質転換の48時間前に0.25mMの硫酸銅を添加してトランスポゼースの発現を誘導することによって行った。約4×106個の細胞を低速度の遠心分離によってペレット化し、10μlのリポソームと2μgのトランスポゾンを基礎とするベクターDNAとを含有する1.0mlのグレース最少培地に再懸濁した。細胞懸濁液を4時間インキュベートし、このとき2mlのTC―100完全培地を添加した。細胞をさらに48時間インキュベートし、次いで、選択を行って、上記のクローナルセルラインまたはポリクローナルセルラインのいずれかを単離した。ゲノム内の多数の独立した部位に組み込まれた発現カセット構築物。トランスポゾン末端反復に隣接する配列のプラスミドレスキューは、構築物の大部分が細胞のゲノムに転位によって挿入され、組換えによらないことを示した。構築物の転位による導入は、形質転換するDNA配列に対する安定性をもたらすために重要である。このように、構築物は、ゲノム全体にわたって独立して広く離れた部位に組み込まれ、前後に並んだ反復によって誘導される組換えから生じる遺伝子増幅または遺伝子喪失などの不安定化作用をあまり受けない。セルラインは安定であり、異種タンパク質の発現は、抗生物質による選択が行われないもとで、数百代の細胞世代の間、衰えることなく継続する。mariner因子およびhoho因子などの他のトランスポゾンに基づく同様なシステムは、本発明の範囲に含まれる。ゲノム組換え事象の分析トランスポゾンカセットがSL2MTΔ2−3セルラインのゲノムDNAに組み込まれることを、個々のゲノム挿入物のプラスミドレスキュー、その後のトランスポゾンの逆方向末端反復に隣接する特徴的なゲノムDNAの配列分析によって確認した(図16b)。これらの実験において、DNAを、pDM79OPIE2で形質転換したポリクローナルSL2MTΔ2−3セルラインから単離した。5′逆方向反復に隣接する配列を、1μgのゲノムDNAをXhoIで消化し、消化したDNAフラグメントを段階稀釈濃度で再連結し、その後、イー・コリDH10Bを再連結DNAで形質転換し、そしてプレート1枚あたり、100μg/mlのアンピシリンおよび50μlの発色性β−ガラクトシダーゼ基質(X−gal)の20mg/ml溶液を補充したLB培地に形質転換イー・コリを播種することによってレスキューした。アンピシリン耐性であり(すなわち、pDM79に存在するβ−ラクタマーゼを含有する)、外見が青色である(Op ie2プロモーター内に位置する隠れた細菌性プロモーターからのイー・コリにおけるβガラクトシダーゼ遺伝子の転写から生じる)コロニーを単離し、プラスミドDNAを分析した。この隠れた細菌性プロモーターの存在は、いくつかの実施形態において、EM7プロモーターが本発明のシャトルベクターにおいて絶対的に必要でないという、驚かずにはいられない全く予想外の結果をもたらす。なぜなら、Op ie2プロモーター内の隠れた細菌性プロモーターは、その位置において同じ機能を示すからである。白色で、アンピシリン耐性のコロニーもまた現れた。これらのコロニーは、mtn−トランスポゼースカセットを導入するために使用された構築物のレスキューから生じる。3′挿入部位に隣接するDNAを、XbaIによる消化、連結、イー・コリDH10Bの形質転換、および100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのカナマイシンを補充したLB培地での播種によって分析した。(上流の配列内に位置する隠れたプロモーターからのイー・コリにおけるネオマイシンホスホトランスフェラーゼの転写による)アンピシリンおよびカナマイシンの両方に耐性なコロニーを同定し、分析した。プラスミドDNAを単離し、500bpのwhite遺伝子を放出するHindIIIで消化した。white遺伝子は、pDM79ベクターにおける5′逆方向反復と3′逆方向反復との間のスペーサーとして作用し、転位の間に失われる。形質転換されたSL2MTΔ2−3セルラインからレスキューされたプラスミドDNAは、この500bpのスペーサーフラグメントを示さなかった。このことは、組込みが、転位によって生じ、異種組換えでないことを示す。配列分析は、トランスポゾンが、「正確な」転位によって、ゲノム内の独立した部位に組み込まれたことを明らかにした。いくつかのトランスポゾンは、熱ショック部位、ヘテロクロマチン領域を含むD.melanogasterのゲノムの十分に特徴づけられた領域に組み込まれ、同様に他のpDM79OpIE2トランスポゾンにも組み込まれた。これらの十分に特徴づけられた領域は、D.melanogasterのゲノムの明らかに異なる領域であることを示し、独立した部位への組込みが確認される。組換えトランスポゾンセルラインの安定性pDM79OpIE1またはpDM79OpIE2で形質転換されたSL2MTΔ2−3セルラインの安定性を、26週間にわたって連続した継代培養(約30代)により測定した。100μMのCuSO4の存在下または非存在下のいずれかにおいて1mg/mlのG−418で選択される細胞集団は、週毎の小さな変化があるだけで、β−ガラクトシダーゼを全期間にわたって継続的に産生した(図16a)。安定性をさらに示すものとして、選択性の抗生物質を除去しても、異種組換えによって導入された構築物について観測されているように、酵素産生は低下しなかった。本発明の1つの面により、異種タンパク質の産生が、例えば、遺伝子の沈静化または関連する現象の結果として、長時間経過した後に低下した場合、タンパク質発現は、発現カセットの新しい転写的に活性なゲノム部位への転位を誘導することによって再活性化することができる。セルラインのその後の凍結解凍サイクルによって、産生の安定性がさらに明らかにされた。サンプルを液体窒素の中に数週間置き、取り出して、β−ガラクトシダーゼ産生について分析した。B−ガラクトシダーゼレベルの低下は、数回の凍結解凍サイクルの間において認められなかった。従って、異種タンパク質の産生レベルが長期間の連続的な継代培養の後に低下する場合、前記の凍結した部分から培養物を再度樹立することは可能である。トランスポゾンを基礎とする発現カセットの増幅本発明のトランスポゾンベクターで形質転換されたポリクローナルセルラインの全体的な異質性を調べるために、そしてそのような細胞のどの部分が、増幅された数の発現カセットを含有するかを明らかにするために、SL2MTΔ2−3セルラインをpDM79IE2GFPレポータープラスミドで形質転換した。セルラインを調べることによって、約20〜30%の細胞が、残りの集団よりも著しく高いレベルのGFPを発現することが示された(図17)。これらの増幅された細胞は、蛍光活性化細胞分別システムを使用するか、あるいは稀釈分析および手による選別によって、発現性の悪い残りの細胞から分離することができる。改変されたトランスポゾンが別の異種遺伝子のカセットをも含有する場合、このタンパク質の発現は、GFP産生と非常に相関することが理解される。実際、本発明は、GFPなどの控えめなマーカーの使用によって、目的の異種タンパク質の発現を増大させ得る形質転換細胞の容易な同定を可能にする。この意味において、「控えめな」は、控えめなマーカーが発現したときに、マーカー遺伝子が形質転換細胞に対して著しく有害でないことを意味する。このような方法はまた、処理の任意の段階で抗生物質を使用することなく、発現カセットの形質転換、選択および増幅を可能にする。最初の選択操作の間において単離された形質転換細胞の発現は、続いて転位機構を誘導することによってさらに増強することができる。いくつかの実施形態において、Mtnプロモーターの制御下におけるトランスポゼース酵素の発現は、0.5mMのCuSO4で24時間誘導することができる。トランスポゼースによって特異的なトランスポゾンが同定され、そしてトランスポゼースは、反復的な転位によって、さらなるコピーのトランスポゾンカセットを増幅し、それを他のゲノム位置に挿入する。クローナルまたはポリクローナルセルラインを樹立し、再度選択して分析する。このような方法は、最適なコピー数のトランスポゾンカセットが得られるまで数回繰り返すことができる。次いで、最適なコピー数のトランスポゾンカセットを有するセルラインは、連続的にタンパク質を製造するために規模を大きくすることができる。遺伝子増幅の他の評価を下記のように行った。発現カセットpDM79IE−2galを含有するトランスポゾンを、SL2MTdelta2−3セルラインに下記のように形質転換した。SL2MTdelta2−3細胞(1×106細胞)を、6ウエル細胞培養プレートの各ウエルにおいて1mlのグレース培地に播種した。細胞を30分間接着させ、CuSO4を500mMの最終濃度に添加した。細胞を3時間インキュベートし、その後、培地を除き、細胞を2mlのグレース培地で1回洗浄した。1ug(P1)、100ng(P2)、10ng(p3)または1ng(P4)のいずれかのプラスミドDNAおよび10ulのセルフェクチンを含有する1mlのグレース培地を、前記のように調製し、SL2MTdelta2−3細胞に加えて、細胞を27℃で4時間インキュベートした。4時間後、培地を細胞から除き、5%のFBS、250ug/mlのG−418、200ug/mlのハイグロマイシンを含有する2mlのTC−100培地と交換した。細胞を40時間インキュベートした。異なる量の形質転換DNAを含有する各ウエルを、ポリクローナルセルラインのように調節した。新しいフラスコに3回の移し換えを行った(約2週間)後に、サンプルをDNA分析およびβ−ガラクトシダーゼ分析のために取り出した。次いで、さらなるサンプルを、500mMのCuSO4で3時間処理し、2mlのグレース培地で洗浄し、2日間回復させ、次いで500ug/mlのG418、200ug/mlのハイグロマイシンに播種した。3回の移し換えを行った(約2週間)後に、サンプルをDNA分析およびβ−ガラクトシダーゼ分析の両方のために取り出した。結果を表2に示す。表2において、初期セルラインは、最初の形質転換後に調節されたポリクローナル株であり、誘導セルラインは、その特定の初期ポリクローナルセルラインの誘導後に調節されたポリクローナルセルラインである。P0は、lugのプラスミドpDM79IE−2gal−HdIIIdelで形質転換されたセルラインである。このプラスミドは、500bpのHindIIIフラグメントを欠失させたpDM79IE−2galであるが、転位に必要なP因子の逆方向反復を含有する。予想されるように、B−ガラクトシダーゼ活性の増大は、トランスポゼースを誘導した後のこのポリクローナルセルラインについて認められなかった。これらの結果は、トランスポゾン内に発現カセットを含有する細胞におけるトランスポゼースの誘導は、発現カセットに含有される組換えタンパク質のより大きな産生を可能にするセルラインをもたらし得ることを明らかにする。結論前記の開示を参照することによって当業者には明らかなように、多くの変化および改変が、本発明の実施において、その精神および範囲から逸脱することなく可能である。本発明の変化は、本明細書中に引用されている参考文献の教示から理解することができる。すべてのそのような参考文献は、参考としてここに組み込まれる。いくつかの実施形態において、本発明のベクターは、様々な抗生物質選択スキームによる使用に適合させることができる。さらなるプロモーター因子を、バキュロウイルスの即時初期プロモーターからの発現を高めるために、本発明に従って使用することができる。Op ie1およびOp ie2遺伝子は、自分自身ならびに他の初期および遅延型初期のバキュロウイルスプロモーターをトランス活性化する転写因子をコードする(TheilmannおよびStewart、Virology、180:492−508(1991);TheilmannおよびStewart、Virology、187:84−96(1992))。さらに、エンハンサー因子が、ie2のコード領域の3′末端の近くに同定されている。これは、ie1遺伝子産物と一緒に機能して、Ld652Y細胞およびSf9細胞において、それぞれ、レポーター構築物からの初期遺伝子発現を10〜17倍増大させる(TheilmannおよびStewart、Virology、187:97−106(1992))。これらの転写アクチベーターを発現する安定的なセルラインは、これらのプロモーターによる発現を高めることができ、あるいはプロモーターが効率的に機能しないセルラインの範囲を広げることができる。いくつかの実施形態において、他のより雑多な転位可能な因子は、発現カセットを、より広い種から誘導されるセルラインに転移させるために適合させることができる。従って、本発明の範囲は、配列表を伴う請求項によって規定される実体に従って解釈しなければならない。配列表(1)一般情報:(i)出願人:(A)名称:ザ・ユニヴァーシティー・オブ・ブリティッシュ・コロンビア、リサーチ・アドミニストレーション、ルーム331、IRCビルディング(B)通り:2194ヘルス・サイエンス・モール(C)市:バンクーバー(D)州:ブリティッシュ・コロンビア(E)国:カナダ(F)郵便コード(郵便番号):V6T 1Z3(G)電話番号:(604)822−8596(H)テレファックス:(604)822−8589(ii)発明の名称:昆虫発現ベクター(iii)配列の数:16(iv)コンピュータ読取り可能な形態:(A)媒体タイプ:フロッピーディスク(B)コンピュータ:IBM・PCコンパチブル(C)オペレーティングシステム:PC−DOS/MS−DOS(D)ソフトウエア:Patent Inリリース#1.0,バージョン#1.30(EPO)(v)パテント・エージェント情報:(A)名称:スマート・アンド・ビガー(B)整理番号:80021−46(2)配列認識番号:1のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:564塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)ハイポセティカル:NO(iv)アンチ・センス:NO(v)起源:(A)生物名:マルチキャプシド・ヌクレオポリヘドロウイルス(B)株名:オルギア・シュードツガタ(Orgyia pseudotsugata)(vi)配列の記載:配列認識番号:1:(2)配列認識番号:2のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:44塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)ハイポセティカル:NO(iv)アンチ・センス:YES(v)起源:(A)生物名:マルチキャプシド・ヌクレオポリヘドロウイルス(B)株名:オルギア・シュードツガタ(Orgyia pseudotsugata)(vi)配列の記載:配列認識番号:2:(2)配列認識番号:3のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:24塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)ハイポセティカル:NO(iv)アンチ・センス:YES(v)起源:(A)生物名:マルチキャプシド・ヌクレオポリヘドロウイルス(B)株名:オルギア・シュードツガタ(Orgyia pseudotsugata)(xi)配列の記載:配列認識番号:3:(2)配列認識番号:4のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:45塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)ハイポセティカル:NO(iv)配列の記載:配列認識番号:4:(2)配列認識番号:5のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:45塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:5:(2)配列認識番号:6のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:36塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(ix)配列の記載:配列認識番号:6:(2)配列認識番号:7のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:30塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:7:(2)配列認識番号:8のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:25塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:8:(2)配列認識番号:9のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:8塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:9:(2)配列認識番号:10のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:9塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:10:(2)配列認識番号:11のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:6塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:11:(2)配列認識番号:12のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:55塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:12:(2)配列認識番号:13のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:50塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:13:(2)配列認識番号:14のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:67塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:14:(2)配列認識番号:15のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:67塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:15:(2)配列認識番号:16のための情報:(i)配列特性:(A)長さ:66塩基対(B)型:核酸(C)鎖の数:一本鎖(D)トポロジー:直鎖状(ii)配列の種類:DNA(iii)配列の記載:配列認識番号:16: 昆虫細胞を形質転換するためのシャトルベクターであって:a.原核性複製起源と;b.昆虫プロモータおよび原核性プロモータ配列を含むプロモータ領域と;c.昆虫細胞および原核細胞内において、夫々昆虫プロモータ配列および原核性プロモータ配列の転写制御下で、ブレオマイシン/フレオマイシン型の抗生物質に対する耐性を与えることができる選択マーカー遺伝子とを具備するシャトルベクター。 請求項1に記載のシャトルベクターであって、前記原核性プロモータ配列は、昆虫プロモータ内の隠れたプロモータであるシャトルベクター。 請求項1に記載のシャトルベクターであって、前記ブレオマイシン/フレオマイシン型の抗生物質がゼオシンであるシャトルベクター。 請求項1に記載のシャトルベクターであって、更に、異種DNAのための挿入部位を具備するシャトルベクター。 請求項4に記載のシャトルベクターであって、前記異種DNAのための挿入部位は、第二の昆虫プロモータの転写制御下にあるシャトルベクター。 請求項5に記載のシャトルベクターであって、更に、前記挿入部位に挿入され且つ前記第二の昆虫プロモータの転写制御下にある異種DNA配列を具備するシャトルベクター。 請求項1に記載のシャトルベクターであって、前記昆虫プロモータは、配列番号10で表されるIE2B要素を具備するシャトルベクター。 請求項7に記載のシャトルベクターであって、前記昆虫プロモータは、配列番号9および配列番号10で表されるGATA−IE2B要素対を具備するシャトルベクター。 請求項8に記載のシャトルベクターであって、前記昆虫プロモータは、配列番号1のbp351〜bp527に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ該プロモータとして機能できる配列を具備するシャトルベクター。 請求項9に記載のシャトルベクターであって、前記昆虫プロモータは、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ該プロモータとして機能できる配列を具備するシャトルベクター。 請求項1に記載のシャトルベクターであって、更に、トランスポゾンを形成するDNA転移性要素を具備するシャトルベクター。 請求項11に記載のシャトルベクターであって、前記選択マーカー遺伝子が前記トランスポゾン内にあるシャトルベクター。 請求項12に記載のシャトルベクターであって、更に、前記トランスポゾン内に異種DNAのための挿入部位を具備するシャトルベクター。 請求項13に記載のシャトルベクターであって、更に、前記挿入部位に挿入され且つ第二の昆虫プロモータの転写制御下にある異種DNA配列を具備するシャトルベクター。 請求項11に記載のシャトルベクターであって、更に、前記トランスポゾン内に誘導性トランポザーゼ遺伝子を具備するシャトルベクター。 請求項1のシャトルベクターで形質転換された昆虫細胞。 請求項11のシャトルベクターで形質転換された昆虫細胞。 昆虫細胞を形質転換させる方法であって:a.昆虫細胞を、昆虫プロモータの転写制御下にある選択マーカー遺伝子を具備する昆虫シャトルベクターを取り込むように誘導すること(ここで、前記選択マーカー遺伝子はブレオマイシン/フレオマイシン型の抗生物質に対する耐性を付与することができ、前記昆虫プロモータは前初期バキュウロウイルスプロモータに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ該プロモータとして機能できる)と;b.ブレオマイシン/フレオマイシン型の抗生物質に対して耐性の形質転換細胞を選択することとを具備する方法。 請求項1のシャトルベクターで形質転換された組換え昆虫細胞であって、メラノトランスフェリンから選択される異種タンパク質を発現する組換え昆虫細胞。 メラノトランスフェリンから選択される異種タンパク質を産生するための方法であって、請求項19の細胞によって前記異種タンパク質を産生させることを特徴とする方法。 請求項1のシャトルベクターで形質転換された組換え昆虫細胞であって、昆虫イオン輸送ペプチドホルモンから選択される異種タンパク質を発現する組換え昆虫細胞。 昆虫イオン輸送ペプチドホルモンから選択される異種タンパク質を産生するための方法であって、請求項21の細胞によって前記異種タンパク質を産生させることを特徴とする方法。 請求項1のベクターで安定に形質転換された細胞を有する昆虫。


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