タイトル: | 特許公報(B2)_スチレン類の重合抑制方法 |
出願番号: | 1998365081 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C7/20,C07C15/44,C07C15/46,C08F2/40 |
柏原 邦夫 大西 則彦 谷崎 青磁 JP 3539713 特許公報(B2) 20040402 1998365081 19981222 スチレン類の重合抑制方法 伯東株式会社 000234166 田中 政浩 100085109 柏原 邦夫 大西 則彦 谷崎 青磁 20040707 7 C07C7/20 C07C15/44 C07C15/46 C08F2/40 JP C07C7/20 C07C15/44 C07C15/46 C08F2/40 7 C07C 7/20 C07C 15/44 C07C 15/46 C08F 2/40 C07B 63/04 国際公開第96/029311(WO,A1) 国際公開第98/13346(WO,A1) 特開平08−059524(JP,A) 特開平06−166636(JP,A) 2 2000186052 20000704 8 20000203 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、スチレン類の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、スチレン類あるいはこれを含有するプロセス流体の重合を抑制する方法を提供するものである。【0002】【従来の技術】スチレン類、特にスチレンはポリスチレン、合成ゴム、ABS樹脂などの製造原料として産業上非常に重要な化合物であり、工業的に多量に生産されている。【0003】スチレン類は極めて重合しやすく、その製造あるいは精製工程において、熱が加わるなどの要因により重合物を生じ、目的物であるスチレン類モノマーの収率を低下させ、さらに関連設備の中にファウリング(汚れ)を生じ設備の運転上支障を来すなどの問題がある。その対策として、プロセス流中に重合抑制剤を添加する方法が提案され、実用に供されている。このような重合抑制剤として、 例えばフェノール類、ニトロソフェノール類、ニトロフェノール類(例えば、特開昭63−316745号公報)、ピペリジン−1−オキシル類(例えば、特開平1−165534号公報)、ピペリジン−1−オキシル類とニトロフェノール類との組み合わせ(例えば、特開平6−166636号公報)などが提案されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】酸素は重合停止機能を持っていることから、スチレン類の製造、精製工程では通常重合抑制の観点から工程内は不活性ガスで強制置換は行わず、空気の存在下で運転を行うことが多い。ピペリジン−1−オキシル類は炭素ラジカルの捕捉に対しては極めて活性が高く、重合禁止には効果があるが、過酸化物ラジカルの捕捉機能がほとんどなく、系内には過酸化物ラジカルが多くなると、そこから重合が進行するのでピペリジン−1−オキシル類の重合抑制能に限界がある。【0005】そこで、本発明は炭素ラジカルのみならず、過酸化物ラジカルの捕捉にも効果を示しスチレン類の重合抑制する方法を提供するためになされたものである。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、スチレン類の重合反応の特性を詳しく研究した結果、或る特定のピペリジン−1−オキシルと2及び6位に立体障害性置換基を有する或る特定のピペリジンとを組み合わせて適用することにより、極めて効果的に重合抑制が達せられることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。【0007】すなわち、本請求項1に係る発明は、スチレン、メチルスチレンまたはジビニルベンゼンの製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、(A)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのうちから選ばれたピペリジン−1−オキシルと、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのうちから選ばれた2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジンとを組み合わせて添加することを特徴とするスチレン、メチルスチレンまたはジビニルベンゼンの重合抑制方法であり、請求項2に係る発明は、(A)ピペリジン−1−オキシル100重量部に対し、(B)2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン1〜10重量部を組み合わせて添加する請求項1記載のスチレン、メチルスチレンまたはジビニルベンゼンの重合抑制方法である。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。【0009】本発明におけるスチレン類とは、スチレン、メチルスチレンおよびジビニルベンゼンである。【0010】本発明における(A)成分のピペリジン−1−オキシルとは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのうちの1種あるいは2種以上である(以下、これらを一括して「ピペリジン−1−オキシル類」と総称する)。【0011】本発明における(B)成分の2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジンとは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのうちの1種あるいは2種以上である(以下、これらを一括して「2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類」と総称する)。【0012】本発明はピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類を組合わせてスチレン類の製造、精製、貯蔵、あるいは輸送工程に添加するものであり、両者の混合比は任意に選べるが、両者の組み合わせによる相乗効果を期待するには、ピペリジン−1−オキシル類100重量部に対し2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類を好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜7重量部である。【0013】ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類の該工程への添加量は、対象とする工程の条件、重合抑制の必要度などにより異なり、一律に決められるものではないが、一般的には対象とするスチレン類に対し、ピペリジン−1−オキシル類を1〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm、さらに好ましくは20〜200ppmであり、2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類は、ピペリジン−1−オキシル類との混合比を鑑みて決定される。これらの添加量は、対象とするスチレン類の重合抑止効果を発揮する上で適当な範囲として見いだされたものであり、この範囲より小さいと効果が充分でなく、またこの範囲より多くとも効果は充分にあるが、添加量の割に効果は大きくならず、経済的見地から好ましくない場合がある。【0014】本発明におけるピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類を該工程に添加する場所、およびその方法は、本発明で限定されるものではないが、スチレン類が重合しファウリングとして問題化する箇所よりプロセスの上流部に添加する。例えばスチレンは一般にエチルベンゼンの脱水素反応によって製造され、生成したスチレンと未反応エチルベンゼンを連続的に蒸留分離しており、そのエチルベンゼン脱水素後の蒸留塔群に供給する。【0015】添加に際して、ある特定箇所に一括添加するか、あるいはいくつかの箇所に分けて分散添加するなどの方法が適宜選択される。この際、ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類をそれぞれ別々に添加することもできるが、両者を適正な混合比でそのプロセス流体と同じ液体、例えばスチレンの場合にはエチルベンゼンや粗スチレンに溶解して添加するのが実際上好都合である。【0016】本発明において、 ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類以外に、 本発明の効果を損なわない範囲において公知の他の重合抑制剤、例えばニトロフェノール類を併せて用いることになんら制限を加えるものではない。【0017】本発明におけるピペリジン−1−オキシル類は主に炭素ラジカルと結合し該ラジカルを不活性にし、一方2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類は主に系内の過酸化物ラジカルを捕捉する。2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類は過酸化物ラジカルと反応すると、酸素原子を得てピペリジン−1−オキシル類に変換し、この変換したピペリジン−1−オキシル類も又系内の炭素ラジカル捕捉に使われるので、非常に効率的である。【0018】【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0019】[実施例に用いたピペリジン−1−オキシル]TEMPO :2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルH−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルO−TEMPO:4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルM−TEMPO:4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルC−TEMPO:4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル【0020】[実施例に用いた2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン]TEMP :2,2,6,6−テトラメチルピペリジンH−TEMP:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンO−TEMP:4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンM−TEMP:4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンC−TEMP:4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン【0021】1.スチレンの重合抑制(実験方法)還流冷却器を備えた4っ口セパラブルフラスコにスチレンモノマー100gを入れ、重合抑制剤を所定量加えて110℃に保持し、一定時間毎に内容物の一部を取り出してスチレン中のポリマー生成量を測定した。尚、スチレンモノマーは実験を始める前に、アルカリ洗浄しモノマー中に含まれている重合抑制剤を除き、水洗、乾燥した。また、ポリマー生成量は、サンプリングしたスチレンモノマーに9倍量(容量)のメタノールを加えると、ポリマーが液中に懸濁状態に析出してくるので、これを濾過してそのポリマー重量を秤量し、モノマー中のポリマー生成重量%として求めた。【0022】(実験結果)得られた結果を表1に示す。【0023】【表1】【0024】この結果から、ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類とを組み合わせることによって、スチレンの重合が効率よく抑制されていることがわかる。特に、ピペリジン−1−オキシル類は初期の重合をよく抑制し、これと、単独ではさしたる重合抑制効果しか示さない2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類を組み合わせることによって、相乗効果が発揮され、長時間に亙って重合抑制効果が持続することが了解されよう。【0025】2.メチルスチレンの重合抑制(実験方法)前記スチレンと同様にして、メチルスチレンについて重合抑制試験を行った。【0026】(実験結果)得られた結果を表2に示す。【0027】【表2】【0028】この結果から、ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類とを組み合わせて添加することによって、相乗効果が認められメチルスチレンの重合抑制が長時間に亙って持続することがわかる。【0029】3.ジビニルベンゼンの重合抑制(実験方法)前記スチレンと同様にして、ジビニルベンゼンについて重合抑制試験を行った。【0030】(実験結果)得られた結果を表3に示す。【0031】【表3】【0032】この結果から、ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類とを組み合わせることによって、相乗効果が認められ、ジビニルベンゼンの重合抑制が長時間にわたって持続されていることがわかる。【0033】【発明の効果】スチレン類の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、ピペリジン−1−オキシル類と2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン類とを組み合わせて添加することによって、スチレン類あるいはこれを含有するプロセス流体の重合を効率よく抑制し、且つその効果が長く持続し、関連装置内のファウリング(汚れ)発生量は極小化し、設備の安全運転を容易にすることを可能とした。 スチレン、メチルスチレンまたはジビニルベンゼンの製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、(A)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのうちから選ばれたピペリジン−1−オキシルと、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのうちから選ばれた2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジンとを組み合わせて添加することを特徴とするスチレン、メチルスチレンまたはジビニルベンゼンの重合抑制方法。 (A)ピペリジン−1−オキシル100重量部に対し、(B)2及び6位に立体障害性置換基を有するピペリジン1〜10重量部を組み合わせて添加する請求項1記載のスチレン、メチルスチレンまたはジビニルベンゼンの重合抑制方法。