タイトル: | 特許公報(B2)_核酸増幅用採血管 |
出願番号: | 1998358642 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/48,A61B5/15,C12Q1/68 |
鈴木 賢 岩瀬 芳治 日野 賢樹 JP 3704982 特許公報(B2) 20050805 1998358642 19981217 核酸増幅用採血管 ニプロ株式会社 000135036 鈴木 賢 岩瀬 芳治 日野 賢樹 20051012 7 G01N33/48 A61B5/15 C12Q1/68 JP G01N33/48 J A61B5/14 300B C12Q1/68 A 7 G01N 33/48 A61B 5/15 特開平06−308117(JP,A) 特開平07−333216(JP,A) 特開平09−173321(JP,A) 特開平10−262656(JP,A) 特開平11−118791(JP,A) 特開昭64−23166(JP,A) 特開昭56−118689(JP,A) 特許第3248501(JP,B2) 6 2000176006 20000627 6 20021106 山村 祥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は血液分離剤入り核酸増幅用採血管に関し、より詳しくは、採血管に正確かつ容易に抗凝固剤を充填することができ、採取された血液への抗凝固剤の溶解性の改良された、核酸増幅に適した血液分離剤入り採血管に関する。【0002】【従来の技術】近年、血液生化学検査に際して、採取された全血の核酸を増幅し、その増幅産物から標的核酸を検出して、例えばエイズや肝炎、結核、コレラなどの病気の診断や、遺伝子病などの診断が行われるようになった。全血から分離された血漿中には微量のDNAが含まれているが、この血漿中DNAを利用する場合、抗凝固剤の溶解性が悪いと微小クロットが発生することがあるため、採血管には正確な量の抗凝固剤を溶解し易い状態で充填する必要がある。【0003】そこで、血液試料への抗凝固剤の溶解性が改良され、採血した血液試料中にクロットが発生することのない採血管として、水を溶剤として噴霧塗布法によりEDTA−3Kを内表面に塗布した後、溶剤を除去したものが提案されている(特許第2690261号公報)。しかしながら、このものは、抗凝固剤の溶解性が改良されたとはいうものの、塗布層の厚みにバラツキが生じるため、必ずしも万全のものではなく、また、塗布量の正確性に関しても充分なものではない。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、抗凝固剤の溶解性が充分に改良され、正確な量の抗凝固剤を塗布することのできる血液分離剤入り血液凝固管を提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題に鑑みて鋭意検討の結果、管体に円筒状スリーブを収容し、このスリーブの内壁に抗凝固剤を塗布するようにすることにより、容易かつ経済的に正確な量の抗凝固剤を均一に塗布することができることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、有底の管体と、該管体の口部を閉鎖するゴム栓と、管体の内部に収容された血液分離剤、および、該血液分離剤に近接して収容された円筒状スリーブを含んでなり、該スリーブは、先端と基端を有し、先端で血液分離剤と近接しており、先端側の肉厚が、内径が先端方向にテーパ状に拡径されることにより、薄肉に形成されるとともに、内壁にしぼが形成されて抗凝固剤が塗布されており、前記管体に血液が充填され遠心分離された時に血液分離剤がスリーブの内壁に沿って移動可能である、核酸増幅用採血管である。ここで、遠心分離時の血液分離剤のスムーズな移動のために、スリーブ先端の肉厚は0.8mm以下であるのが好ましい。また、スリーブ内壁のしぼの深さは70μm以下が好ましい。スリーブは遠心分離時に底部に位置するように赤血球より重い比重の合成樹脂で形成されるのが好ましい。また、抗凝固剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のアルカリ金属塩、ヘパリンのアルカリ金属塩、クエン酸ナトリウムの群から選ばれる1つであるのが好ましく、特にEDTAのアルカリ金属塩が好ましい。【0006】【発明の実施の形態】次に本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示す説明図であり、図2は図1に示すスリーブの縦断面図である。本発明の核酸増幅用採血管は、図1に示すように、有底の管体1と、この管体1の口部を閉鎖するゴム栓2と、管体1の内部に収容された血液分離剤4、および、この血液分離剤4に近接して収容された円筒状スリーブ3を含んでなる。スリーブ3は先端31と基端32を有し、先端31が血液分離剤4に近接している。スリーブ3は、先端側の内径が先端方向にテーパ状に拡径されることにより、その肉厚が薄肉に形成されており、しぼ33の形成されたスリーブ3の内壁(図1の斜線部分に対応する内壁部分)には抗凝固剤が塗布されている。そして、管体1に血液が充填され遠心分離された時に、血液分離剤4がスリーブ3の内壁に沿って移動可能になっている。【0007】スリーブ3は赤血球より重い比重の合成樹脂の、例えばABS樹脂やポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート等で円筒状に形成されており、基端32の肉厚は通常1.0〜1.5mmであり、その外径は管体1の内径よりやや小さく、図2に示すように、管体1への挿着を容易にするために先端31側が若干細くなっている。スリーブ3の内壁には塗布された血液分離剤4の剥離を防ぐためにしぼ33が形成されており、そのしぼ33の形成された内壁には抗凝固剤が塗布されている。抗凝固剤としては、例えばEDTAのアルカリ金属塩、ヘパリンのアルカリ金属塩、クエン酸ナトリウム等が採用されるが、血液への溶解性が良いことからEDTAのアルカリ金属塩、例えばEDTA−2K、EDTA−3K、EDTA−2Naが好ましい。抗凝固剤の塗布に際しては、抗凝固剤がスリーブ3に付着し難いので、ゼラチンをバインダーとして使用する必要がある。内壁表面のしぼ33の深さは70μm以下が好ましく、特に10〜70μmが好ましい。しぼが無いと抗凝固剤の付着が悪く、しぼの深さが70μmを超えると抗凝固剤の溶解が悪くなる。スリーブ3は血液分離剤4の移動性を良くするために、先端31側の部分は内径が先端方向にテーパ状に拡径されており、その肉厚が薄肉になっている。先端31の肉厚は0.8mm以下が好ましい。【0008】スリーブ3は、これを血液分離剤4に接触させると気泡が発生するので、その先端31が血液分離剤4から少し離れた位置にくるように血液分離剤4に近接して配置される。管体1に収容される血液分離剤4としては、限定されるものではないが、チキソトロピー性を有する、例えばシリコーンやα−オレフィン−マレイン酸エステル、ポリエステル系重合体、アクリル系重合体、塩素化ポリプデン、シクロペンタジエン樹脂、シクロペンタジエン樹脂に水酸基、エステル基、エーテル基、エポシキ基等を導入した変性シクロペンタジエン樹脂を主成分とするもの等を採用することができる。管体1に血液が充填されると、血液分離剤4はスリーブ3の内壁に沿って移動して血液を上層の血漿と下層の赤血球とに分離する。尚、この時、スリーブ3内壁のしぼ33をスリーブ3の長手方向に縦溝状に形成すると血液分離剤4の移動が若干スムーズになることが確認されている。【0009】〔実験例1〕表1に示す核酸増幅用採血管をそれぞれ6本用意し、それぞれに健常者6名から真空採血された全血5mlを充填して、所要時間5〜6秒の間隔で核酸増幅用採血管を5回転倒して血液と抗凝固剤を混和した後、1300G×5分の遠心を行い、遠心分離後の血液の状態(分離剤の反転性、分離剤の隔壁強度、部材に対する分離剤の付着、フィブリンの析出)を目視で確認したところ、表2に示すような結果が得られた。尚、スリーブの内壁に塗布される抗凝固剤としてはEDTA−2K(和光純薬工業(株)製)を用い、塗布量は8.0mg/管(血液1ml当り1.6mg)であった。表から本発明のスリーブを挿入した核酸増幅用採血管が、良好な血液状態に維持されていることがわかる。また、スリーブ内壁のしぼ33の好ましい深さは10〜70μmの範囲であることがわかる。【0010】【表1】【0011】【表2】【0012】〔実験例2〕表1の実施例1〜5に示す核酸増幅用採血管をそれぞれ3本用意し、それぞれに健常者3名から真空採血された全血5mlを充填し、これに予め用意しておいたDNA片を添加し、所要時間5〜6秒の間隔で核酸増幅用採血管を5回転倒して血液と抗凝固剤を混和した後、1300G×5分の遠心を行い、遠心分離後の血液から血漿のみを採取して、Amp Direct(商品名;(株)島津製作所製)を使用してPCRでDNAの増幅を行った。PCR産物をポリアクリルアミド・ゲルで電気泳動後、エチジウム・ブロマイドで染色し、その結果をデンシトグラフで確認したところ、全てのサンプルについて209bpの目的のバンドを確認することができた。【0013】【発明の効果】以上説明してきたことから明らかなように、本発明の核酸増幅用採血管を採用することにより、血液試験に際して、抗凝固剤の溶解性が充分に改良され、正確な量の抗凝固剤を塗布することのできる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の一実施例を示す説明図である。【図2】 図1に示すスリーブの縦断面図である。【符号の説明】1 管体2 ゴム栓3 スリーブ31 先端32 基端33 しぼ4 血液分離剤 有底の管体と、該管体の口部を閉鎖するゴム栓と、管体の内部に収容された血液分離剤、および、該血液分離剤に近接して収容された円筒状スリーブを含んでなり、該スリーブは、先端と基端を有し、先端で血液分離剤と近接しており、先端側の肉厚が、内径が先端方向にテーパ状に拡径されることにより、薄肉に形成されるとともに、内壁にしぼが形成されて抗凝固剤が塗布されており、前記管体に血液が充填され遠心分離された時に血液分離剤がスリーブの内壁に沿って移動可能である、核酸増幅用採血管。 スリーブの先端の肉厚が0.8mm以下である請求項1に記載の核酸増幅用採血管。 スリーブ内壁のしぼの深さが70μm以下である請求項1または2に記載の核酸増幅用採血管。 スリーブが赤血球より重い比重の合成樹脂で形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の核酸増幅用採血管。 抗凝固剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のアルカリ金属塩、ヘパリンのアルカリ金属塩、クエン酸ナトリウムの群から選ばれる1つである請求項1〜4のいずれかに記載の核酸増幅用採血管。 抗凝固剤がEDTAのアルカリ金属塩である請求項5に記載の核酸増幅用採血管。